(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002062
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】罠システム
(51)【国際特許分類】
A01M 23/24 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A01M23/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101980
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】520139561
【氏名又は名称】有限会社オーエスピー商会
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】日和佐 憲厳
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BA32
2B121BA51
(57)【要約】
【課題】 罠が発動したときにバネ部で生じる力が効率よく使用することに適した罠システムを提供する。
【解決手段】 罠システム1は、トリガー装置3が備えるトリガー部品9を踏んだ獲物の足を、ワイヤ装置5が備えるワイヤ本体部14に形成されたループ部19をバネ部12によって縮めて保定する。ワイヤ本体部14の一方の端の側は、バネ部12を通ってループ部19を形成する。罠システム1は、ワイヤ本体部14においてループ部19とは反対側の端からバネ部12までの一部又は全部を地面及び/又は地面の定着物に固定する固定装置7を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガー装置が備えるトリガー部品を踏んだ獲物の足を、ワイヤ装置が備えるワイヤ本体部に形成されたループ部をバネ部によって縮めて保定する罠システムであって、
前記ワイヤ本体部の一方の端の側は、前記バネ部を通って前記ループ部を形成し、
ワイヤ本体部において前記ループ部とは反対側の端から前記バネ部までの一部又は全部を地面及び/又は地面の定着物に固定する固定装置を備える罠システム。
【請求項2】
前記ワイヤ本体部は、前記ワイヤ本体部の一方の端の側は、前記ワイヤ本体部に固定されるワイヤ止部、ワイヤ側固定部材、及び、前記バネ部を通って前記ループ部を形成し、
前記固定装置は、前記ワイヤ側固定部材を地面及び/又は地面の定着物に固定する、請求項1記載の罠システム。
【請求項3】
前記ワイヤ側固定部材は、第1ワイヤ側固定部品と、第2ワイヤ側固定部品を備え、
前記第1ワイヤ側固定部品は、前記ワイヤ本体部が通される穴を備え、
前記第1ワイヤ側固定部品と前記第2ワイヤ側固定部品は、軸の周りに回転でき、
前記固定装置は、前記第2ワイヤ側固定部品を、地面及び/又は地面の定着物に固定する、請求項2記載の罠システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、罠システムに関し、特に、トリガー装置が備えるトリガー部品を踏んだ獲物の足を、ワイヤ装置が備えるワイヤ本体部に形成されたループ部をバネ部によって縮めて保定する罠システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発明者らが発明した罠が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1などの罠では、獲物の足を保定するためのワイヤが自由に動くことができ、罠が発動したときにワイヤの無駄な動きが生じていた。
【0005】
よって、本発明は、罠が発動したときにバネ部で生じる力を効率よく使用することに適した罠システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の第1の側面は、トリガー装置が備えるトリガー部品を踏んだ獲物の足を、ワイヤ装置が備えるワイヤ本体部に形成されたループ部をバネ部によって縮めて保定する罠システムであって、前記ワイヤ本体部の一方の端の側は、前記バネ部を通って前記ループ部を形成し、ワイヤ本体部において前記ループ部とは反対側の端から前記バネ部までの一部又は全部を地面及び/又は地面の定着物に固定する固定装置を備える。
【0007】
本願発明の第2の側面は、第1の側面の罠システムであって、前記ワイヤ本体部は、前記ワイヤ本体部の一方の端の側は、前記ワイヤ本体部に固定されるワイヤ止部、ワイヤ側固定部材、及び、前記バネ部を通って前記ループ部を形成し、前記固定装置は、前記ワイヤ側固定部材を地面及び/又は地面の定着物に固定する。
【0008】
本願発明の第3の側面は、第2の側面の罠システムであって、前記ワイヤ側固定部材は、第1ワイヤ側固定部品と、第2ワイヤ側固定部品を備え、前記第1ワイヤ側固定部品は、前記ワイヤ本体部が通される穴を備え、前記第1ワイヤ側固定部品と前記第2ワイヤ側固定部品は、軸の周りに回転でき、前記固定装置は、前記第2ワイヤ側固定部品を、地面及び/又は地面の定着物に固定する。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の各側面によれば、固定装置によりワイヤ本体部を地面などに固定することにより、バネ部が伸びる向きを定めて、バネ部の移動の速さ及びループ部が締める強さを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本願発明の実施の形態に係る罠システム1の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1のトリガー装置3の例を説明するための図である。
【
図3】固定装置を使用しない場合に罠を発動させたときのループ部が保定した位置を示す。
【
図4】固定装置を使用した場合に罠を発動させたときのループ部が保定した位置を示す。
【
図5】本願発明の他の実施の形態に係る罠システム41の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図5の罠システム41の試作品を示す第1図である。
【
図7】
図5の罠システム41の試作品を示す第2図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0012】
図1は、本願発明の実施の形態に係る罠システム1の構成の一例を示す図である。
【0013】
罠システム1は、獲物(シカ、イノシシなどの野生動物)を捕らえるためのものである。罠システム1は、トリガー装置3と、ワイヤ装置5と、固定装置7を備える。
【0014】
トリガー装置3は、トリガー部品9を備える。トリガー装置3は、
図2(a)に示す踏み板式と、
図2(b)に示す二重パイプ式が知られている。
【0015】
ワイヤ装置5は、ワイヤ部と、リング部材11と、バネ部12と、ワイヤ止部13を備える。ワイヤ部は、ワイヤ本体部14と、撚り戻し部材15と、ワイヤ固定部16を備える。
【0016】
固定装置7は、バネ部12よりも撚り戻し部材15の側にあるワイヤ本体部14の部分(ワイヤ本体部14においてループ部19とは反対側の端からバネ部12までの一部又は全部)を罠システム1の周囲の地面及び/又は地面の定着物(木などの地面の定着物)に固定する。例えば、U字状の部材であって、ワイヤ本体部14を上から覆うように地面などに両端を刺して固定するものである。
【0017】
リング部材11は、リング状の部材であり、ワイヤ本体部14が通過する穴が形成されている。ワイヤ本体部14の一方の端は、リング部材11の穴を通って、リング部材11に固定される。
【0018】
バネ部12は、ワイヤ本体部14に沿って伸び縮みするバネであって、両端から力を加えると縮まり、力を取り戻すと元の長さに戻る。例えばコイルバネであり、ワイヤ本体部14の周りにコイルバネが巻いた状態になるように、コイルバネにワイヤ本体部14を通したものである。バネには、縮んだ状態のバネを収納することができる筒状のケースが取り付けられる。
【0019】
ワイヤ止部13は、ワイヤ本体部14の所定の位置に固定される。バネ部12は、ワイヤ本体部14において、ワイヤ止部13とは反対側に伸び縮みする。
【0020】
撚り戻し部材15は、撚りを戻すための部品である。この例では、ワイヤ本体部14とワイヤ固定部16の間で撚りを戻すためのものである。撚り戻し部材15は、第1撚り戻し部品17と第2撚り戻し部品18を含む。第1撚り戻し部品17には、ワイヤ本体部14の一方の端が固定される。例えば、第1撚り戻し部品17に穴が形成されており、穴にワイヤ本体部14の一方の端を通して結ぶなどによって固定することができる。第2撚り戻し部品18には、ワイヤ固定部16の一方の端が固定される。例えば、第2撚り戻し部品18に穴が形成されており、穴にワイヤ固定部16の一方の端を通して結ぶなどによって固定することができる。第1撚り戻し部品17と第2撚り戻し部品18は、軸の周りに回転でき、ワイヤ本体部14とワイヤ固定部16の間で撚りを戻すことができる。
【0021】
ワイヤ固定部16は、ワイヤ本体部14において獲物を捕らえたときに逃がさないために、木などに結びつけられる。
【0022】
ワイヤ本体部14は、一方の端が撚り戻し部材15に取り付けられる。他方の端の側は、ワイヤ止部13、バネ部12及びリング部材11を通って、リング部材11に固定されることにより、ループ部19を形成する。
【0023】
バネ部12は、リング部材11とワイヤ止部13の間に存在する。バネ部12は、ワイヤ本体部14において、ループ部19の側で伸び縮みする。バネ部12が縮むとループ部19が大きく広がる。バネ部12が伸びるとループ部19は小さくなる。
【0024】
罠を仕掛けるときには、作業者は、トリガー装置3をけもの道(獲物が通る道)に置く。作業者は、バネ部12を縮めてループ部19を広げて、ループ部19をトリガー部品9の周りに掛けた状態にする。バネ部12は、地表に平行に置く。
【0025】
獲物がトリガー部品9を踏んで罠が発動すると、ループ部19はトリガー部品9から外れる。トリガー部品9を踏んだ獲物の足は、ループ部19の中にある。バネ部12が伸びてループ部19が小さくなり、ループ部19において獲物を保定することができる。
【0026】
罠の設計では、3つの重要なポイントがある。一つ目は、トリガー部品9及びバネ部12を、地面を掘って埋めなくてよいことである。匂いの問題(新しい土の匂い)、物理的問題(木や石)を回避できるためである。二つ目は、バネ部12の長さを短くして、偽装が不要にすることである。三つ目は、機構を簡単にして使いやすいものにすることである。
【0027】
固定装置7がない状態では、バネ部12の両端は自由に移動することができる。そのため、バネ部12は、罠が発動したときに伸びて、両端が広がるように逆向きに移動する。バネ部12は、長くして、獲物を保定する力を強くする必要があった。
【0028】
固定装置7によってバネ部12よりも撚り戻し部材15の側にあるワイヤ本体部14の部分を固定することにより、バネ部12は、撚り戻し部材15の側には移動せず、ループ部19の側にのみ伸びて、獲物を保定する。さらに、ループ部19がトリガー部品9によって跳ね上げられるため、バネ部12は、斜め上へと伸びて力を生じることになる。そのため、獲物の足の高い位置を保定することができるようになる。
【0029】
よって、固定装置7を利用することによって、ループ部19を上に飛び上がるようにでき、さらに、バネ部12が伸びる向きを定めて、バネ部12の移動の速さ及びループ部19が締める強さを高めることができる。そのため、バネ部12の長さを短くして偽装を不要にすることなどができる。
【0030】
図2は、トリガー装置3の例を説明するための図である。
図2(a)は踏み板式を、
図2(b)は二重パイプ式を示す。
【0031】
図2(a)を参照して、トリガー部品は、踏み板23、アーム25及び安全バー27を備える。ワイヤは、ワイヤ本体部とワイヤ固定部34が撚り戻し部材33によって繋がれたものである。バネ部31は、コイルバネと、コイルバネを囲う塩ビパイプを備える。
【0032】
ワイヤ本体部には、バネ部31を通ってループ部29が形成されている。バネ部31は、ワイヤ止部32によって、ループ部29の側で伸び縮みする。
【0033】
罠を設置するとき、作業者は、トリガー部品を、外パイプ21の上に、アーム25を開いて安全バー27が掛かった状態で設置する。この状態では、アーム25を横から見ると、ハの形になっている。アーム25の周りには、ワイヤ本体部のループ部29を上に掛けるための部材が設けられ、溝が形成されている。作業者は、ワイヤのループ部29を、広げた状態で、アーム25の周りに掛ける。バネ部31のコイルバネは、縮んだ状態である。作業者は、安全バー27を外す。
【0034】
獲物が踏み板23の黒い部分を踏み、外パイプ21にアーム25が当たり、アーム25は上側に形状が変わる(逆ハの形になる)ことで、罠が発動する。ループ部29は上に跳ね上げられ、バネ部31が伸び、ループ部29が締まる。ループ部29は、獲物の足を保定することができる。
【0035】
固定装置は、バネ部31と撚り戻し部材33との間のワイヤ本体(例えば位置35)を固定する。
【0036】
図2(b)にあるように、二重パイプ式のものでも、固定装置は、バネ部36と撚り戻し部材37との間のワイヤ本体(例えば位置38)を固定する。
【0037】
図3は、固定装置を使用しない場合に罠を発動させたときのループ部が保定した位置を示す。棒に設けられたテープの下から2番目の位置付近を保定している。
【0038】
図4は、固定装置を使用した場合に罠を発動させたときのループ部が保定した位置を示す。棒に設けられたテープの下から3番目の位置付近を保定している。そのため、固定装置39を使用することにより、バネ部が伸びる向きを定めて、バネ部の移動の速さ及びループ部が締める強さを高めることができる。
ワイヤ装置45は、ワイヤ部と、リング部材51と、バネ部53と、ワイヤ側固定部材55と、ワイヤ止部57を備える。ワイヤ部は、ワイヤ本体部63と、撚り戻し部材65と、ワイヤ固定部67を備える。
リング部材51は、リング状の部材であり、ワイヤ本体部63が通過する穴が形成されている。ワイヤ本体部63の一方の端は、リング部材51の穴を通って、リング部材51に固定される。
ワイヤ側固定部材55は、撚り戻し部材と同様の構成である。ワイヤ側固定部材55は、第1ワイヤ側固定部品59と第2ワイヤ側固定部品61を含む。第1ワイヤ側固定部品59には、穴が形成されており、ワイヤ本体部63をこの穴に通すことができる。固定装置47は、第2ワイヤ側固定部品61を周囲にある地面及び/又は地面の定着物に固定する。例えば、第2ワイヤ側固定部品61には穴が形成されており、固定装置47を穴に通して周囲にある地面及び/又は地面の定着物に刺して固定することができる。第1ワイヤ側固定部品59と第2ワイヤ側固定部品61は、軸の周りに回転できる。
ワイヤ止部57は、ワイヤ本体部63の所定の位置に固定される。バネ部53は、ワイヤ本体部63において、ワイヤ止部57とは反対側(ループ部の側)に伸び縮みする。
ワイヤ本体部63は、一方の端が撚り戻し部材65に取り付けられる。他方の端の側は、ワイヤ止部57、第1ワイヤ側固定部品59、バネ部53及びリング部材51を通って、リング部材51に固定されることにより、ループ部69を形成する。
バネ部53は、リング部材51とワイヤ止部57の間に存在する。バネ部53は、ワイヤ本体部63において、ループ部69の側で伸び縮みする。バネ部53が縮むとループ部69が大きく広がる。バネ部53が伸びるとループ部69は小さくなる。
罠を仕掛けるときには、作業者は、トリガー装置43をけもの道に置く。作業者は、バネ部53を縮めてループ部69を広げて、ループ部69をトリガー部品49の周りに掛けた状態にする。バネ部53は、地表に置く。作業者は、固定装置47を、第2ワイヤ側固定部品61の穴に通して地面などに刺すことによって、周囲にある地面及び/又は地面の定着物に固定する。
獲物がトリガー部品49を踏んで罠が発動すると、ループ部69はトリガー部品49から外れる。トリガー部品49を踏んだ獲物の足は、ループ部69の中にある。バネ部53が伸びてループ部69が小さくなり、ループ部69において獲物を保定することができる。
固定装置47によって固定されているため、バネ部53は、ループ部69の側にのみ伸びて、獲物を保定する。さらに、ループ部69がトリガー部品49によって跳ね上げられるため、バネ部53は、斜め上へと伸びて力を生じることになる。そのため、獲物の足の高い位置を保定することができるようになる。
よって、固定装置47を利用することによって、ループ部69を上に飛び上がるようにでき、さらに、バネ部53がループ部69の側と反対向きに移動しないようにして、伸びる向きを定めて、バネ部53の移動の速さ及びループ部69が締める強さを高めることができる。
なお、本願発明において、ワイヤ側固定部材は、撚り戻し部材とは異なる構成のものであってもよい。また、バネ部は、説明した押しバネ(コイルバネ)によるものだけでなく、例えば、ネジリバネによるものであってもよい。