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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020621
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】電力需給運用代行装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20250205BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20250205BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/00 180
H02J3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124111
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】高田 一輝
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AA05
5G066AE09
5G066DA03
5G066KA01
5G066KA04
5G066KA06
5G066KB01
5G066KB05
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電力需給運用の代行業務を効率的に実施可能とする電力需給運用代行装置を提供する。
【解決手段】装置は、需給運用業務に係る業務を代行する事業者が業務を代行する電気事業者に属する発電設備の発電量及び需要家の需要量のそれぞれに関する実績値と、インバランス料金単価を含む市況データを取得し、実績値から発電量及び需要量のそれぞれに関して実際の電力需給が行われる時点における予測値を算出し、実績値と予測値とを含む運用データ、市況データ及び需給運用業務の業務委託契約に関する契約情報の少なくともいずれかを用いて業務委託契約毎に需給運用業務をまとめた業務グループの優先順位を決定し、優先順位の高い順に業務グループを並べた一覧画面を生成して表示装置201に表示させ、一覧画面から需給運用業務毎の詳細情報を表す監視画面に遷移することなく需給運用業務に関する指示を入力する操作画面へ直接遷移させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需給運用に係る業務を代行する事業者が前記業務を代行する電気事業者に属する発電設備の発電量及び需要家の需要量のそれぞれに関する実績値と、インバランス料金単価を含む市況データとを取得するデータ取得部と、
前記実績値から前記発電量及び前記需要量のそれぞれに関して実際の電力需給が行われる時点における予測値を算出する予測算出部と、
前記実績値と前記予測値とを含む運用データ、前記市況データ、及び前記業務の代行に係る業務委託契約の契約情報の少なくともいずれかを用いて、前記業務委託契約ごとに前記業務をまとめた業務グループの優先順位を決定する優先順位評価部と、
前記優先順位の高い順に前記業務グループを並べた一覧画面を生成して表示装置に表示させる業務一覧生成部と、
前記一覧画面から前記業務ごとの詳細情報を表す監視画面に遷移することなく前記業務に関する指示を入力する操作画面へ直接遷移させる業務処理部と、
を備える電力需給運用代行装置。
【請求項2】
前記契約情報は、前記業務委託契約の優先順位の情報を含み、
前記優先順位評価部は、前記業務グループの前記優先順位を前記業務委託契約の優先順位の情報に従って決定することを特徴とする請求項1に記載の電力需給運用代行装置。
【請求項3】
前記契約情報は、前記業務委託契約ごとの契約金額の情報を含み、
前記予測算出部は、前記発電量及び前記需要量の少なくともいずれかに関して計画値と前記予測値との差により想定インバランス量を算出し、実際の電力需給が行われる時点における前記インバランス料金単価の推定値である想定インバランス料金単価を算出し、前記想定インバランス量と前記想定インバランス料金単価との積により想定インバランス料金を算出し、
前記優先順位評価部は、前記契約金額が大きい前記業務グループの前記優先順位を高く設定するか、前記想定インバランス料金が大きい前記業務グループの前記優先順位を高く設定するか、又は前記契約金額と前記想定インバランス料金との差により求まる正味の委託収入が大きい前記業務グループの前記優先順位を高く設定することを特徴とする請求項1に記載の電力需給運用代行装置。
【請求項4】
前記予測算出部は、前記発電量及び前記需要量の少なくともいずれかに関して計画値と前記予測値との差により想定インバランス量を算出し、実際の電力需給が行われる時点における前記インバランス料金単価の推定値である想定インバランス料金単価を算出し、前記想定インバランス量と前記想定インバランス料金単価との積により想定インバランス料金を算出し、
前記優先順位評価部は、前記想定インバランス料金が大きい前記業務の前記優先順位が高くなるように、前記業務グループごとに前記業務の前記優先順位をさらに決定し、
前記業務一覧生成部は、前記業務グループごとに、前記業務を前記優先順位の高い順に前記一覧画面にさらに並べることを特徴とする請求項1に記載の電力需給運用代行装置。
【請求項5】
前記優先順位評価部は、予め設定された実施期限に近い前記業務の前記優先順位が高くなるように、前記業務グループごとに前記業務の前記優先順位をさらに決定し、
前記業務一覧生成部は、前記業務グループごとに、前記業務を前記優先順位の高い順に前記一覧画面にさらに並べることを特徴とする請求項1に記載の電力需給運用代行装置。
【請求項6】
前記業務ごとの所要時間を記憶する業務実績記憶部と、
前記所要時間及び予め設定した前記業務に掛かる時間当たりの作業費用から業務コストを算出し、前記業務委託契約ごとに積算する業務コスト算出部と、
前記業務委託契約ごとの前記業務コスト及び前記業務委託契約ごとの契約金額から前記業務委託契約に係る収益を算出する収益算出部と、
を備える請求項1に記載の電力需給運用代行装置。
【請求項7】
前記業務実績記憶部は、前記業務の発生日時、並びに前記業務に対応する前記運用データ及び前記市況データをさらに記憶し、
前記業務実績記憶部から取得した前記発生日時、前記運用データ、及び前記市況データを用いて前記業務の発生条件を機械学習により学習し、前記業務の発生予測モデルを作成する業務発生学習部と、
前記発生予測モデルから出力される前記業務の発生確率を用いて将来の前記業務の発生を予測し、予測された前記業務を前記表示装置に表示させる業務予測出力部と、
を備える請求項6に記載の電力需給運用代行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力需給運用に係る代行業務に用いる電力需給運用代行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気事業者が行う電力需給運用業務に関して、特に人員リソースやノウハウが乏しい小規模事業者から当該業務の代行を受託する電力需給運用代行事業者が市場参入している。電力需給運用代行事業者は、複数の委託元電気事業者の発電設備や需要家に関して、需給バランス変動やシステムトラブルに対する迅速な対応が求められる。
【0003】
電力系統システムなどの広域なエリアに配置された設備の監視制御を行う監視制御装置において、例えば特許文献1では、運転員が個々に使用する個別表示装置と複数の運転員が協調して作業する大画面表示装置とに業務を分担して、緊急な対処が必要である運転状態変化に対して迅速な対応ができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-148236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の監視制御装置では、複数の監視対象設備に異常が発生した場合に対処の優先度を提示せず、さらに設備ごとの監視画面で異常の詳細情報を確認した上で操作画面へ遷移するため、対処の実行が非効率となっていた。
【0006】
本開示は上記の課題を解決するためになされたものであり、複数の電気事業者の電力需給運用に関する情報を一括して表示するとともに、優先度の高い電気事業者の業務を明示し、さらに当該業務の操作画面へ直接遷移して、電力需給運用の代行業務を効率的に実施可能とする電力需給運用代行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電力需給運用に係る業務を代行する事業者が業務を代行する電気事業者に属する発電設備の発電量及び需要家の需要量のそれぞれに関する実績値と、インバランス料金単価を含む市況データを取得するデータ取得部と、実績値から発電量及び需要用のそれぞれに関して実際の電力需給が行われる時点における予測値を算出する予測算出部と、実績値と予測値とを含む運用データ、市況データ、及び業務の代行に係る業務委託契約の契約情報の少なくともいずれかを用いて、業務委託契約ごとに業務をまとめた業務グループの優先順位を決定する優先順位評価部と、優先順位の高い順に業務グループを並べた一覧画面を生成して表示装置に表示させる業務一覧生成部と、一覧画面から業務ごとの詳細情報を表す監視画面に遷移することなく業務に関する指示を入力する操作画面へ直接遷移させる業務処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電力需給運用代行装置によれば、複数の電気事業者の電力需給運用の代行に係る業務を効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における電力需給運用代行装置を示すブロック図
図2】実施の形態1における委託契約情報保持部が記憶する契約情報のデータテーブルの一例を示す図
図3】実施の形態1における電力需給運用代行装置を実現するコンピュータシステムのハードウェア構成を示すブロック図
図4】実施の形態1における電力需給運用業務の一覧画面の表示例を示す図
図5】実施の形態1における電力需給運用業務の一覧画面を表示する処理を示すフローチャート
図6】実施の形態1における電力需給運用業務の操作画面の表示例を示す図
図7】実施の形態1における想定インバランス料金を用いて業務グループ4の優先順位を決定する処理を示すフローチャート
図8】実施の形態2における電力需給運用代行装置を示すブロック図
図9】実施の形態2における業務実績記憶部が記憶する業務実績データのデータテーブルの一例を示す図
図10】実施の形態2における業務発生予測モデルを用いて需要運用業務の発生を予測する処理を示すフローチャート
図11】実施の形態3における電力需給運用代行装置を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1について図1を用いて詳細に説明する。図1は実施の形態1に係る電力需給運用代行装置100の構成を示すブロック図である。電力需給運用代行装置100は、電気事業者が管理する発電設備及び需要家の電力需給運用に係る業務を、電力需給運用代行事業者が代行する場合に用いる装置である。電力需給運用に係る業務の具体例として、気象予報などに基づく需要量及び発電量の予測、需要量及び発電量の予測値に基づく需給計画、不足電力又は余剰電力の市場取引、需給に関する計画提出、需給実績の監視制御などが挙げられる。以降、これらの電力需給運用に係る業務を需給運用業務と記載する。電力需給運用代行事業者は、複数の需給運用業務を包括した業務委託契約2を複数の電気事業者から受託し、電気事業者に代わって需給運用業務を行う。以降、業務委託契約2の委託元である電気事業者を単に委託元事業者と記載する。ここで、委託元事業者と業務委託契約2とは必ずしも1対1に対応する必要はなく、1の委託元事業者に対して2以上の業務委託契約2があってもよい。
【0011】
電力需給運用代行装置100は、各業務委託契約2に属する発電設備又は需要家に設置された複数の端末1とインターネットなどのネットワーク200を介して接続される。さらに電力需給運用代行装置100は、図示しない一般送配電事業者、不足電力又は余剰電力の取引の場である図示しない日本卸電力取引所(以降、JEPXと記載する)、電気事業者各社の電力の需給状況を管理して電気事業者間の電力の融通を指示する図示しない電力広域的運用推進機関(以降、OCCTOと記載する)、電力の需給計画と実績との間のインバランスに対して発生するインバランス料金単価を公表するインバランス料金情報公表ウェブサイトを提供する図示しないサーバ(以降、インバランス料金公表サーバと記載する)、及び天気の予報及び実績の情報を提供する天気情報サーバとネットワーク200を介してさらに接続される。ここで、接続先はこれらに限られず、例えば電力需給運用代行装置100の図示しない内部時計を補正するために時刻情報サーバとネットワーク200を介して接続されてもよい。
【0012】
さらに電力需給運用代行装置100は、表示装置201及び入力装置202が接続される。表示装置201は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)であり、需給運用業務に関する情報を表示する。入力装置202は、例えばキーボードやマウスであり、操作者の指示やデータ入力に用いる。ここで、表示装置201と入力装置202とは、一体化されてタッチパネルなどにより実現されてもよい。
【0013】
次に電力需給運用代行装置100の内部構成について説明する。電力需給運用代行装置100は、ネットワーク200を介して接続された接続先からデータを取得するデータ取得部10、データ取得部10が取得したデータを用いて需給運用業務に係る演算処理を行う予測算出部11、業務委託契約2の契約情報を記憶する委託契約情報保持部12、需給運用業務の優先順位を決定する優先順位評価部13、複数の需給運用業務を一覧画面301として表示装置201に表示させる業務一覧生成部14、及び各需給運用業務の操作画面302を提供する業務処理部15を備える。
【0014】
データ取得部10は、運用データとして、端末1から例えば発電設備の発電量及び需要家の需要量のそれぞれに関する実績値を、天気情報サーバから例えば天気予報を取得する。ここで、端末1から取得するデータは、端末1が発電設備又は需要家からデータを取得した時刻、及び発電設備又は需要家を識別するために端末1に固有に割り振られた識別子である端末ID(Identifier)に関連付けられてデータ取得部10に送信される。また、取得する発電量及び需要量それぞれに関する実績値は、端末1からの直接取得に限られず、一般送配電事業者を経由して取得されてもよい。さらにデータ取得部10は、市況データとしてインバランス料金公表サーバからインバランス料金単価を取得する。データ取得部10は、市況データとしてJEPXから電力取引価格をさらに取得してもよい。
【0015】
予測算出部11は、データ取得部10が取得した発電量及び需要量のそれぞれに関する実績値から発電量及び需要量のそれぞれに関する予測値を推定する。詳細には、例えば発電量及び需要量のそれぞれに関して、時刻をパラメータとする予測関数を予め曜日ごとに設定し、この関数と日時情報とを用いて実際の電力需給(以降、実需給と記載)が行われる時点における予測値を算出する。さらに、この関数から算出された過去時刻の予測値と実測値とを比較して、その差分を補正して予測精度を向上させる。ただし、予測値の算出方法はこの例に限られず、天気情報サーバから取得した気温をパラメータに含めた関数を用いるなど、天気予報の情報を考慮して決定してもよい。以降、発電量及び需要量のそれぞれに関する予測値も運用データに含めるものとする。
【0016】
委託契約情報保持部12には、業務委託契約2に関する契約情報が予め入力され、記憶される。詳細には、委託契約情報保持部12は、図2に一例を示すとおり、業務委託契約2を識別する識別子である契約IDと、業務委託契約2の契約金額、業務委託契約2の優先順位、及び各業務委託契約2に属する発電設備又は需要家の端末IDとを関連付けて記憶する。ここで、図2では、契約情報が1つのテーブルに記憶される例を示したが、これに限られず、契約IDとその他の項目を関連付けることができる範囲で複数のテーブルに分けて記憶されてもよい。例えば、契約IDと契約金額とを並べたテーブル、契約IDと優先順位とを並べたテーブル、及び契約IDと端末IDとを並べたテーブルの3つのテーブルに分けて記憶されてもよい。
【0017】
優先順位評価部13は、需給運用業務を業務委託契約2ごとに業務グループ4としてまとめる。さらに優先順位評価部13は、運用データ、市況データ、及び契約情報の少なくともいずれかを用いて、需給運用業務を業務委託契約2ごとにまとめた複数の業務グループ4の優先順位を決定する。
【0018】
業務一覧生成部14は、複数の業務グループ4を優先順位の高い順に並べた一覧画面301を生成して表示装置201に表示させる。操作者が実施する需給運用業務を入力装置202により選択すると、業務処理部15は選択された需給運用業務の操作画面302を表示装置201に表示させる。
【0019】
電力需給運用代行装置100は、表示装置201の表示画面を制御するディスプレイコントローラ121及び操作者からの入力を受け付けるデバイスコントローラ122をさらに備える。詳細には、ディスプレイコントローラ121は、業務一覧生成部14及び業務処理部15でそれぞれ生成された一覧画面301及び操作画面302を例えばLCDなどの表示装置201に表示させる。デバイスコントローラ122は、操作者による例えばマウスやキーボードの入力装置202による操作を受け付け、その操作内容を業務処理部15に出力する。
【0020】
次に、本実施の形態の電力需給運用代行装置100のハードウェア構成について図3を用いて説明する。図3は、電力需給運用代行装置100を実現するコンピュータシステムの構成例を示すブロック図である。電力需給運用代行装置100は、コンピュータシステム上で電力需給運用代行装置100が行う処理が記述されたプログラム(以降、需給運用代行プログラムと呼ぶ)が実行されることにより実現される。このコンピュータシステムは、図3に示すように演算装置101、記憶装置102、通信装置103、ディスプレイコントローラ121、及びデバイスコントローラ122を備え、これらはシステムバス111を介して接続される。ここで、電力需給運用代行装置100が単一のコンピュータシステムにより実現される例を示しているが、複数のコンピュータシステムやクラウドシステムにより実現されてもよい。
【0021】
演算装置101は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサであり、需給運用代行プログラムを実行する。記憶装置102は、RAM(Random Access Memory)などの各種メモリ及びハードディスクなどのストレージデバイスを含み、演算装置101が実行する需給運用代行プログラムや処理の過程で得られた必要なデータなどを記憶するとともに、プログラムの一時的な記憶領域として使用される。通信装置103は、通信処理を実施する受信機及び送信機である。ここで、図3は一例であり、コンピュータシステムの構成は図3の例に限定されない。
【0022】
図1に示す予測算出部11、優先順位評価部13、業務一覧生成部14、及び業務処理部15は、需給運用代行プログラムが図3に示す演算装置101により実行されることで実現される。図1に示す委託契約情報保持部12は、図3に示す記憶装置102の一部である。図1に示すデータ取得部10は、図3に示す通信装置103により実現される。
【0023】
次に、電力需給運用代行装置100が行う需給運用業務について説明する。電気事業者が実施する需給運用業務のひとつである需給計画は、年間計画、月間計画、週間計画、前日計画、当日計画という段階に分けて実施される。このうち前日計画において電気事業者は、発電設備、需要家、又はその両方について例えば30分ごとの発電量及び需要量の予測値を確認し、JEPXの1日前市場で不足電力又は余剰電力の取引を行った上で発電計画及び需要計画をOCCTOに提出する。さらに当日計画において電気事業者は、例えば降雨による太陽光発電の発電量低下のように前日計画における計画値に対して発電量及び需要量の少なくともいずれかの予測値に差が生じた場合、JEPXの当日市場の定められた期間内にさらに不足電力又は余剰電力の取引を行い、最終的な発電計画及び需要計画をOCCTOに提出する。以降、需給運用業務を行う例えば30分刻みの時間単位をコマと記載し、例えば不足電力又は余剰電力の発生のように需給運用業務が発生しているコマの開始日時を単に発生日時と記載する。
【0024】
ここで、例えば発電所トラブルなどの不測の事象により、OCCTOへ提出した発電量及び需要量の計画値に対して実績値に不足又は余剰が発生することがある。この不足電力及び余剰電力は、それぞれ不足インバランス及び余剰インバランス(以降、不足インバランスと余剰インバランスをまとめてインバランスと記載する)と呼ばれ、一般送配電事業者により調整される。インバランスを発生させた電気事業者は、解消の対価として一般送配電事業者へインバランス料金を支払う。インバランス料金は、インバランスの電力量(以降、インバランス量と記載する)と時々刻々変化するインバランス料金単価との積により求まる。インバランス料金単価は、データ取得部10がネットワーク200を介してインバランス料金公表サーバから取得する。このように一連の需給運用業務の実施結果、つまり需給バランスの調整の成否は、最終的にインバランス料金により精算される。
【0025】
ここで、インバランス量、インバランス料金単価、及びインバランス料金は、実需給が行われた後に確定するものであるため、これらの想定値を区別して、それぞれ想定インバランス量、想定インバランス料金単価、及び想定インバランス料金と定義する。想定インバランス量は、発電量及び需要量の少なくともいずれかに関するOCCTOに提出した計画値と予測値との差分である。想定インバランス料金単価は、実需給が行われる時点におけるインバランス料金単価の推定値であり、例えば予め曜日ごとに設定された時刻をパラメータとした関数と実需給が行われる日時情報とを用いて算出される。ただし、想定インバランス料金単価の算出方法はこの例に限られず、天気情報サーバから取得した気温をパラメータに含めるなど、天気予報の情報を考慮して決定してもよい。想定インバランス料金は、想定インバランス量と想定インバランス料金単価との積により算出される。想定インバランス量、想定インバランス料金単価、及び想定インバランス料金は、予測算出部11により算出される。
【0026】
次に、需給運用業務の一覧画面301の表示及び一覧画面301に表示する業務グループ4の優先順位の決定方法について、図4を用いて説明する。図4は表示装置201に表示される需給運用業務の一覧画面301の表示例である。
【0027】
一覧画面301において需給運用業務は、業務委託契約2ごとにまとめて表示される。この表示のまとまりを業務グループ4と記載する。詳細には、一覧画面301には、需給運用業務の操作画面302に遷移する操作画面呼出ボタン3が表示される。さらに同一の業務グループ4に属する需給運用業務の操作画面呼出ボタン3は、水平方向に並べて表示される。操作画面呼出ボタン3には需給運用業務の名称が記載され、実施する需給運用業務の内容を操作者が視認できるようにしている。さらに一覧画面301において複数の業務グループ4は、その業務グループ4の優先順位が高い順に並べて表示される。
【0028】
業務グループ4の優先順位は、優先順位評価部13により決定される。具体的には、優先順位評価部13は、委託契約情報保持部12に記憶された業務委託契約2の優先順位を参照し、その業務グループ4に対応する業務委託契約2の優先順位と同一に業務グループ4の優先順位を設定する。
【0029】
次に、本実施の形態の動作について図5を用いて説明する。図5は需給運用業務の操作画面302を表示するまでの処理を示すフローチャートである。電力需給運用代行装置100は、複数の業務委託契約2について例えば当日の需給計画を作成する当日計画業務を実施する。ここで、当日計画業務は、多数ある需給運用業務のうちのひとつである。
【0030】
データ取得部10は、端末1から発電設備の発電量及び需要家の需要量のそれぞれに関する実測値を取得する(ステップS11)。データ取得部10は、天気情報サーバから天気予報をさらに取得してもよい。この場合、取得する天気予報は、例えば当日の天候及び気温である。データ取得部10は、市況データをさらに取得する(ステップS12)。具体的には、インバランス料金公表サーバからインバランス料金単価を取得する。ここで、データ取得部が取得するデータは、どのコマに対応するデータであるかを関連付ける時刻情報とともに送信される。データ取得部10は取得したデータを記憶装置102に出力し、これらのデータを記憶装置102に記憶させる。ここで、ステップS11及びステップS12の順序は互いに入れ替えられてもよい。
【0031】
予測算出部11は、データ取得部10が取得した発電量及び需要量の実績値から予測値を算出する(ステップS13)。予測算出部11は、算出した発電量及び需要量のそれぞれに関する予測値を記憶装置102に出力し、これらのデータをステップS11で取得したデータとともに運用データとして記憶装置102に記憶させる。ここで、ステップS12及びステップS13の順序は互いに入れ替えられてもよい。
【0032】
優先順位評価部13は、需給運用業務を業務委託契約2ごとに分類し、業務グループ4にまとめる(ステップS14)。詳細には、需給運用業務に係る運用データの取得元の端末1が属する業務委託契約2に一致するように、需給運用業務が属する業務委託契約2を決定して分類する。ここで、端末1と業務委託契約2との属否関係は、委託契約情報保持部12が記憶する契約ID及び端末IDの情報により特定できる。さらに優先順位評価部13は、委託契約情報保持部12に記憶された業務委託契約2の優先順位の情報に従って、需給運用業務を業務委託契約2ごとにまとめた業務グループ4の優先順位を決定する(ステップS15)。
【0033】
業務一覧生成部14は、業務グループ4を優先順位の高い順に並べた一覧画面301を生成し、ディスプレイコントローラ121を介して表示装置201に表示させる(ステップS16)。業務一覧生成部14は、この一覧画面301を生成するために、委託契約情報保持部12に記憶された契約情報を用いる。操作者は、例えばマウスなどの入力装置202を用いて、表示装置201に表示された一覧画面301から実施する需給運用業務の操作画面呼出ボタン3を選択する。デバイスコントローラ122は、入力装置202による操作入力を取得して業務処理部15へ出力する(ステップS17)。
【0034】
業務処理部15は、操作者が選択した需給運用業務について操作画面302を生成し、ディスプレイコントローラ121を介して表示装置201に表示させる(ステップS18)。この操作画面302は、選択された需給運用業務に関して操作者が入力装置202を用いて例えばJEPXの1日前市場へ入札する電力量を入力できる画面であり、需給運用業務ごとの詳細情報として例えば発生している想定インバランス量を表示するのみで需給運用業務の操作(例えば、前述のJEPXの1日前市場への入札する電力量の入力)ができない監視画面や、操作画面302へ進む又は一覧画面301へ戻る操作のみが可能な遷移画面ではない。操作画面302は記憶装置102に記憶されたデータ、例えば、運用データや市況データを用いて生成される。
【0035】
次に、需給運用業務の操作画面302について図6を用いて説明する。図6は一覧画面301で選択した需給運用業務について想定インバランス量を解消する処理を行う操作画面302の表示例である。操作画面302には、時間帯ごとの電力の取引単価及び取引する電力量が表示されるデータ表示領域311、需給運用業務の対象日が表示される日付表示領域312、需給運用業務の処理におけるエラーメッセージが表示されるメッセージ表示領域313、及び処理を確定させる実行ボタン314が表示される。例えば前日計画業務において操作者は、想定インバランス量を解消するためにJEPXの1日前市場で取引する電力量を操作画面302の上で決定する。
【0036】
データ表示領域311は、操作者が一覧画面301で選択した需給運用業務について、時間帯ごとの電力の取引単価及び取引する電力量を表形式で表示する。データ表示領域311には取引する電力量としてその時間帯の想定インバランス量が表示されるが、この数値は入力装置202を用いて操作者により任意に変更できる。詳細には、変更したい数値を例えばマウスにより選択して、変更後の数値を例えばキーボードにより入力する。ここで、表示される取引単価は、データ取得部10が取得する例えばJEPXの1日前市場における取引価格である。さらにデータ表示領域311には、右端にデータ表示領域311の表示を上下自在にスクロールできるスクロールバーが備わるが、これに限られず、スクロールバーを右端に設けてもよく、さらに上端又は下端に設けて左右自在にスクロールさせてもよい。
【0037】
日付表示領域312には需給運用業務の対象日が表示される。日付表示領域312の左端及び右端には、需給運用業務の対象日を変更させる日付変更ボタン312a,312bが備わる。日付表示領域312の左端の日付変更ボタン312a及び右端の日付変更ボタン312bを、例えばマウスなどの入力装置202により押下することで、需給運用業務の対象日をそれぞれ1日前又は1日後に変更できる。
【0038】
ここで、データ表示領域311は、時間帯ごとの電力の取引単価及び取引する電力量が表形式で表示されたが、この例に限られず、例えば折れ線グラフなどのグラフで表示されてもよい。さらに、データ表示領域311、日付表示領域312、メッセージ表示領域313、及び実行ボタン314のそれぞれの配置、つまり画面レイアウトは、図6の例に限られず、互いに上下左右を入れ替えて位置が変更されてもよい。
【0039】
このように、データ取得部10により発電設備の発電量及び需要家の需要量のそれぞれに関する実績値と市況データとを取得し、予測算出部11により発電量及び需要量のそれぞれに関する予測値を推定し、優先順位評価部13により実績値と予測値を含む運用データ、市況データ、及び業務委託契約2の契約情報の少なくともいずれかを用いて複数の業務グループ4の優先順位を決定し、業務一覧生成部14により業務グループ4を優先順位の高い順に並べて一覧画面として表示する構成としたため、複数の委託元事業者の需給運用業務を一括して表示するとともに、優先度の高い需給運用業務を明示し、さらに需給運用業務の操作画面302へ直接遷移して、需給運用業務を効率的に実施可能とする電力需給運用代行装置100を提供することができる。
【0040】
なお、業務グループ4の優先順位を業務委託契約2の優先順位により決定する例を示したが、これに限られず、業務委託契約2の契約金額の大小により優先順位を決定してもよい。具体的には、優先順位評価部13は、委託契約情報保持部12に記憶された業務委託契約2の契約金額を参照し、契約金額が大きい順にその業務委託契約2に対応する業務グループ4の優先順位を設定する。これにより、大口の業務委託契約2に属する需給運用業務を迅速に処理して、大口の業務委託契約2を結んだ電気事業者に対して効率良くサービスの満足度を向上させることができる。
【0041】
また、業務グループ4の優先順位は業務グループ4に属する需給運用業務の想定インバランス料金の総和により決定してもよい。詳細な優先順位の決定動作について、図7を用いて説明する。図7は想定インバランス料金を用いて業務グループ4の優先順位を決定する処理を示すフローチャートである。予測算出部11は、記憶装置102が記憶する発電量及び需要量の少なくともいずれかに関して計画値と予測値との差により想定インバランス量を算出する(ステップS101)。さらに予測算出部11は、記憶装置102が記憶するインバランス料金単価に関する履歴から想定インバランス料金単価を算出する(ステップS102)。ステップS101とステップS102は互いに順序が入れ替えられてもよい。さらに予測算出部11は、想定インバランス量と想定インバランス料金単価との積により需給運用業務で発生する想定インバランス料金を算出する(ステップS103)。優先順位評価部13は、業務グループ4ごとに想定インバランス料金を積算し(ステップS104)、総和が大きい業務グループ4の優先順位を高く設定する(ステップS105)。これにより、電力需給運用代行事業者のコスト影響度の大きい業務委託契約2に属する需給運用業務を効率よく処理することができる。ここで、業務グループ4の優先順位は、業務グループ4に属する需給運用業務に関して想定インバランス量と想定インバランス料金単価の積を取らず、単に想定インバランス量の総和又は想定インバランス料金単価の総和で決定してもよい。この場合、優先順位評価部13は、業務グループ4ごとに需給運用業務の想定インバランス量のみ、又は想定インバランス料金単価のみを積算する。
【0042】
また、業務委託契約2の優先順位、業務委託契約2の契約金額、又は業務グループ4に属する需給運用業務の想定インバランス料金の総和により業務グループ4の優先順位を決定する例を示したが、これらに限られず、これらを組み合わせて複合的に優先順位を決定してもよい。例えば、業務委託契約2の契約金額と想定インバランス料金の総和との差により決定する。詳細には、予測算出部11は、ステップS101~S103と同様の動作により需給運用業務ごとの想定インバランス料金を算出する。優先順位評価部13は、ステップS104と同様に業務グループ4ごとに想定インバランス料金を積算する。さらに優先順位評価部13は、委託契約情報保持部12に記憶された業務委託契約2の契約金額を参照する。さらに優先順位評価部13は、業務グループ4に対応する業務委託契約2の契約金額と業務グループ4ごとに積算した想定インバランス料金との差し引きにより業務委託契約2に係る正味の委託収入を求め、この委託収入の大きい順に業務グループ4の優先順位を決定する。これにより、電力需給運用代行事業者の収益を効率的に向上させることができる。
【0043】
また、これまで業務グループ4の優先順位を決定する例を示したが、これに限られず優先順位評価部13は、需給運用業務の優先順位を業務グループ4の中でさらに決定してもよい。この場合、業務一覧生成部14は、需給運用業務が業務グループ4の中で優先順位が高い順に左から右へ並べた一覧画面301を、優先順位評価部13が決定した需給運用業務の優先順位に従って生成する。
【0044】
ここで、各業務グループ4における需給運用業務の優先順位は、例えば需給運用業務の想定インバランス料金により決定される。詳細には、予測算出部11は、ステップS101~S103と同様の動作により需給運用業務ごとの想定インバランス料金を算出する。優先順位評価部13は、需給運用業務ごとの想定インバランス料金が大きい順に需給運用業務の優先順位を高く設定する。これにより、特に優先順位の高い業務グループ4が多数の需給運用業務を抱えている場合にもコスト影響度の大きい需給運用業務から効率良く処理を行うことができる。業務グループ4の優先順位を高く設定する。これにより、電力需給運用代行事業者のコスト影響度の大きい業務委託契約2に属する需給運用業務を効率よく処理することができる。
【0045】
さらにここで、各業務グループ4における需給運用業務の優先順位は、需給運用業務の実施期限に対する至近性により決定されてもよい。例えば、優先順位評価部13は、JEPXの当日市場の入札締め切り時刻までの時間が短い順に需給運用業務の優先順位を高く設定する。詳細には、JEPXの当日市場の入札締め切り時刻は、実需給が行われるコマの開始日時に対して例えば1時間前と一律に設定される。このため優先順位評価部13は、需給運用業務が発生したコマの開始日時の1時間前を需給運用業務の実施期限として、現在時刻からの時間が短い順に需給運用業務の優先順位を高く設定する。ここで、需給運用業務が発生したコマの開始時刻は、運用データが包含する時刻情報から特定できる。これにより、特に優先順位の高い業務グループ4が多数の需給運用業務を抱えている場合にも実施期限が迫っている需給運用業務から効率よく処理を行うことができる。
【0046】
また、一覧画面301では優先順位の高い業務グループ4から上から下に並べて表示する例を示したが、この例に限られず、優先順位の高い需給運用業務を左から右に順に並べて表示してもよい。業務グループ4の中でさらに需給運用業務の優先順位を決定する場合には、需給運用業務は優先順位の高いものから順に上から下に並べて表示することが好ましい。これにより、表示装置201のサイズや縦横比に応じて操作者が視認しやすい表示方法を選択することができる。
【0047】
実施の形態2.
実施の形態2について図8を用いて詳細に説明する。図8は実施の形態2に係る電力需給運用代行装置100の構成を示すブロック図である。実施の形態2において電力需給運用代行装置100は、需給運用業務の処理に掛かる例えば人件費などの費用(以降、業務コストと記載する)を業務委託契約2ごとに算出し、業務委託契約2の契約金額からの差し引きにより業務委託契約2に係る収益を算出する。さらに電力需給運用代行装置100は、取得したデータ及び過去に実施された需給運用業務の実績に基づいて、需給運用業務の発生を予測する業務発生予測モデルを作成し、将来の需給運用業務の発生を予測して表示する。
【0048】
電力需給運用代行装置100は、需給運用業務の実績に関する情報を記憶する業務実績記憶部21、業務実績記憶部21が記憶する情報を用いて需給運用業務の処理に掛かる作業費用を算出する業務コスト算出部22、及び業務コスト算出部22で算出された作業費用と委託契約情報保持部12に記憶される委託契約の契約金額とにより業務委託契約2に係る収益を算出する収益算出部23を備える。さらに電力需給運用代行装置100は、業務実績記憶部21が記憶する情報に基づいて需給運用業務の発生予測モデルを作成する業務発生学習部31、及び発生予測モデルにより将来の需給運用業務の発生を予測し、予測した需給運用業務を表示装置201に表示させる業務予測出力部32を備える。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同様の構成については説明を省略する。図8中の図1と同一符号は、同一又は相当部分を示す。
【0049】
業務実績記憶部21は、業務処理部15が出力する需給運用業務の実績に関するデータ(以降、業務実績データと記載する)を記憶する。業務実績データは、図9に一例を示すとおり、業務ID、発生日時、契約ID、所要時間、運用データ、及び市況データを含む。ここで、業務IDは、業務実績データを識別するための識別子であり、新たな業務実績データを記憶するたびに業務処理部15で生成される。運用データは、例えば天候と気温からなる天気情報である。ここで、図9では、業務実績データが1つのテーブルに記憶される例を示したが、これに限られず、業務IDとその他の項目を関連付けることができる範囲で複数のテーブルに分けて記憶されてもよい。例えば、業務IDと発生日時と契約IDとを並べたテーブル、業務IDと所要時間とを並べたテーブル、業務IDと運用データとを並べたテーブル、及び業務IDと市況データとを並べたテーブルの4つのテーブルに分けて記憶されてもよい。
【0050】
業務処理部15は、需給運用業務の発生日時及び需給運用業務が属する業務委託契約2の契約IDを業務IDと関連付けて業務実績記憶部21に記憶させる。以降、業務ID、発生日時、及び契約IDをまとめて業務属性と記載する。ただし、業務実績記憶部21が記憶する業務属性はこれらに限られず、例えば需給運用業務が発生した一般送配電事業者の供給区域など、任意の情報を追加してもよい。
【0051】
さらに業務処理部15は、需給運用業務の処理に要した時間(以降、所要時間と記載する)を業務IDと関連付けて業務実績記憶部21に記憶させる。詳細には、需給運用業務を処理するために操作者が操作を開始した時刻及び処理が完了した時刻の差から所要時間を算出する。途中で処理操作が中断された場合は、中断した時刻及び再開した時刻の差分をさらに差し引いて所要時間とする。さらに業務処理部15は、需給運用業務ごとに運用データ及び市況データを業務IDと関連付けて業務実績記憶部21に記憶させる。
【0052】
業務コスト算出部22は、各需給運用業務について、業務実績記憶部21が記憶した所要時間と予め設定した例えば人件費などの時間当たりの作業費用との積により需給運用業務の処理に掛かる業務コストを算出し、業務IDと関連付けて記憶装置102に記憶させる。さらに業務コスト算出部22は、記憶装置102に記憶した需給運用業務ごとの業務コストを業務委託契約2ごとに積算する。ここで、積算にあたって必要となる需給運用業務ごとの業務コストの各業務委託契約2に対する属否は、業務IDと契約IDとが関連付けられて業務実績記憶部21に記憶された業務実績データにより確認できる。
【0053】
収益算出部23は、委託契約情報保持部12が記憶する業務委託契約2ごと契約金額と、業務コスト算出部22が算出する業務委託契約2ごとの業務コストとの差から、当該業務委託契約2に係る収益を算出する。ここで、収益の算出に関わるコストは業務コストのみに限られず、例えば需給運用業務の実施結果として電力需給運用代行事業者が一般送配電事業者に支払ったインバランス料金を含めてもよい。この場合、業務実績記憶部21は、一般送配電事業者に支払ったインバランス料金をさらに記憶する。ただし、一般送配電事業者に支払ったインバランス料金が、業務委託契約2の委託元事業者により補填される場合、インバランス料金を収益の算出に関わる業務コストに含めないことが好ましい。
【0054】
さらに収益算出部23は、算出された業務委託契約2に係る収益を、ディスプレイコントローラ121を介して表示装置201に表示させる。ここで、表示装置201における表示方法に制限はなく、例えば専用の表示画面を設けてもよいし、需給運用業務の一覧画面301や操作画面302の上にポップアップ表示として表示してもよい。これにより操作者は、過去に実施した需給運用業務の収益性を顧みることができ、将来実施する需給運用業務の収益性向上に役立てることができる。
【0055】
業務発生学習部31は、例えばニューラルネットワークモデルを用いた機械学習における教師あり学習により需給運用業務の発生条件を学習し、学習済みモデルである業務発生予測モデルを作成する。ここで、教師あり学習は、入力データと教師データとの組を大量に与えることで、それらのデータの組にある特徴を学習して入力データから結果を推定するモデルをいう。詳細には、需給運用業務が発生した場合の入力データとして、業務実績記憶部21が記憶する需給運用業務の発生日時、運用データ、及び市況データを業務発生学習部31に与える。この場合、教師データとして1を業務発生学習部31にさらに与える。一方、需給運用業務が発生しなかった場合の入力データとして、記憶装置102が記憶する運用データ及び市況データとその時刻情報とを業務発生学習部31に与える。この場合、教師データとして0を業務発生学習部31にさらに与える。このように業務発生学習部31に与える教師データは、需給運用業務の発生有無を表す1又は0の離散値とする。
【0056】
業務発生学習部31における機械学習に関して、入力データとして運用データ及び市況データを与えたが、これは需給運用業務の発生とこれらのデータが相互に関連性の強いものであるためである。運用データに含まれる天気情報は電力需給を大きく左右する情報であり、例えば夏期の気温上昇や冬季の降雪は特に需要量を増大させるため、不足電力の調達などの需給運用業務を発生させる。市況データについても同様に、例えばインバランス料金やJEPXにおける電力の取引価格は、全体の発電量に対して需要量が過多な場合に上昇するため、市況データが上昇するときに需要量の調整などの需給運用業務が発生する。このように運用データ及び市況データは、需給運用業務が発生有無には密接に関係しておいるため、業務発生学習部31の入力データとして用いる。これにより業務発生学習部31は、需給運用業務の発生条件を機械学習により学習し、業務発生予測モデルを作成する。業務予測出力部32は、業務発生学習部31により生成された業務発生予測モデルと、データ取得部10が取得したデータとを用いて需給運用業務の発生を予測する。
【0057】
ここで、図8に示す業務コスト算出部22、収益算出部23、業務発生学習部31、及び業務予測出力部32は、これらの機能を具備する需給運用代行プログラムが図3に示した演算装置101により実行されることで実現される。図8に示す業務実績記憶部21は、図3に示した記憶装置102の一部である。図8中のその他の構成と図3中のハードウェア構成との対応は、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0058】
次に、業務予測出力部32における需給運用業務の発生の予測動作について、図10を用いて説明する。図10は、業務予測出力部32が業務発生予測モデルを用いて需給運用業務の発生を予測する処理を示すフローチャートである。
【0059】
業務予測出力部32は、データ取得部10が取得する運用データ及び市況データと、需給運用業務の発生を予測する任意の日時とを業務発生学習部31が作成した業務発生予測モデルに入力する(ステップS21)。業務予測出力部32は、業務発生予測モデルが出力した0から1までの数値で表される需給運用業務の発生確率が所定の閾値を超える場合に需給運用業務の発生の可能性があると判断する(ステップS22)。例えば、閾値が0.8であれば、業務発生予測モデルからの出力された需給運用業務の発生確率が0.8を超えた場合に需給運用業務が発生すると判断し、ディスプレイコントローラ121を介して表示装置201に表示させる(ステップS23)。
【0060】
このように構成された電力需給運用代行装置100も同様に、複数の委託元事業者の需給運用業務を一括して表示するとともに、優先度の高い需給運用業務を明示し、さらに需給運用業務の操作画面302へ直接遷移して、需給運用業務を効率的に実施することができる。さらに、過去に実施した業務実績データを蓄積し、その業務実績データから業務発生予測モデルを作成する構成としたため、既に発生している需給運用業務に加えて発生が予測される需給運用業務を表示することができる。したがって、操作者は予め業務処理の段取りを行うことができ、現在の需給運用業務に加えて未来の需給運用業務についても効率的に実施することができる。
【0061】
実施の形態3.
実施の形態3について図11を用いて詳細に説明する。図11は実施の形態3に係る電力需給運用代行装置100の構成を示すブロック図である。実施の形態1及び実施の形態2では、業務委託契約2に属する端末1がネットワーク200を介して電力需給運用代行装置100に接続される例を示したが、実施の形態3では一部の業務委託契約2aに属する端末1aが電力需給運用装置41にネットワーク200を介して接続され、端末1aのデータが電力需給運用装置41で集約される例を示す。
【0062】
図11において、電力需給運用代行装置100は、ネットワーク200を介して電力需給運用装置41と接続される。電力需給運用装置41はさらにネットワーク200を介して業務委託契約2aに属する発電設備又は需要家に設置された端末1aと接続される。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同様の構成については説明を省略する。図11中の図1と同一符号は、同一又は相当部分を示す。ここで、図11において電力需給運用装置41が1つの例を示したが、これに限られず、電力需給運用装置41は複数あってもよい。
【0063】
ここで、実施の形態3は、電力需給運用装置41を用いて需給運用業務を行っていた電気事業者が、設備更新をすることなく、需給運用業務を電力需給運用代行事業者へ業務委託契約2aとして委託することを想定した実施例である。このため、電力需給運用装置41は、電力需給運用代行装置100と同様に、1の電気事業者に属する発電設備及び需要家に限って需給運用業務を実施する機能を持つ。
【0064】
データ取得部10は、端末1に加えて、端末1aから取得された運用データを電力需給運用装置41から取得する。ここで、電力需給運用装置41から取得する運用データは、端末1aが発電設備又は需要家からデータを取得した時刻に対応付けられるとともに、発電設備又は需要家を識別するために端末1aに固有に割り振られた端末IDと対応付けられてデータ取得部10に送信される。
【0065】
委託契約情報保持部12には、業務委託契約2及び業務委託契約2aの契約情報が予め入力され、記憶される。優先順位評価部13は、業務委託契約2と業務委託契約2aとを区別せずに優先順位を決定する。ここで、優先順位の決定方法は実施の形態1と同様である。業務一覧生成部14は、業務委託契約2及び業務委託契約2aを優先順位の高い順に並べた一覧画面301を表示装置201に表示させる。
【0066】
このように構成された電力需給運用代行装置100も同様に、複数の電気事業者の需給運用業務を一括して表示するとともに、優先度の高い需給運用業務を明示し、さらに需給運用業務の操作画面302へ直接遷移して、需給運用業務を効率的に実施することができる。さらに、業務委託契約2aに属する端末1aが電力需給運用装置41で集約される場合も、業務委託契約2及び業務委託契約2aを区別せずに需給運用業務を表示できる。したがって、業務委託契約2及び業務委託契約2aの需給運用業務を一括して効率的に実施することができる。
【0067】
また、実施の形態3に対して、実施の形態2で示した業務実績記憶部21、業務コスト算出部22、収益算出部23、業務発生学習部31、及び業務予測出力部32を組み合わせることも可能である。さらにこの組み合わせ以外にも、各実施の形態に記載された特徴が矛盾しない限り、各実施の形態の任意の構成要素の自由な組み合わせ、変形、又は省略が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 データ取得部、11 予測算出部、12 委託契約情報保持部、13 優先順位評価部、14 業務一覧生成部、15 業務処理部、21 業務実績記憶部、22 業務コスト算出部、23 収益算出部、31 業務発生学習部、32 業務予測出力部、41 電力需給運用装置、100 電力需給運用代行装置、201 表示装置、202 入力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11