(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020624
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】スライドドア駆動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/662 20150101AFI20250205BHJP
E05F 15/643 20150101ALI20250205BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20250205BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
E05F15/662
E05F15/643
B60J5/04 C
B60J5/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124116
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】北 真一郎
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA15
2E052KA17
(57)【要約】
【課題】部品点数及び作業工数の増加を抑制したスライドドア駆動装置を提供する。
【解決手段】スライドドア駆動装置20は、駆動用モータ30と、減速機構50と、開用ドラム611を有する開用ドラム機構61と、閉用ドラム621を有する閉用ドラム機構62と、一端がスライドドア14に連結して開用ドラム611に巻き付けられる開用ケーブル21と、一端がスライドドア14に連結し閉用ドラム621に巻き付けられる閉用ケーブル22と、を備える。開用ドラム611は、開用ケーブル21を巻き付ける側の回転方向に付勢されており、閉用ドラム621は閉用ケーブル22を巻き付ける側の回転方向に付勢されている。開用ドラム611と閉用ドラム621との間に、開用ドラム611及び閉用ドラム621の双方の回転を規制可能な規制部材80が開用ドラム611及び閉用ドラム621に係脱可能に設けられている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用モータと、
前記駆動用モータから出力される回転動力を減速する減速機構と、
第1ドラムを有し、前記減速機構と噛合する第1ドラム機構と、
第2ドラムを有し、前記減速機構と噛合する第2ドラム機構と、
一端がスライドドアに連結し、他端が前記第1ドラムに固定され、前記第1ドラムに巻き付けられる第1ケーブルと、
一端が前記スライドドアに連結し、他端が前記第2ドラムに固定され、前記第2ドラムに巻き付けられる第2ケーブルと、
を備え、
前記第1ドラム機構において、前記第1ドラムは、前記第1ケーブルを巻き付ける側の回転方向に付勢されており、
前記第2ドラム機構において、前記第2ドラムは、前記第2ケーブルを巻き付ける側の回転方向に付勢されている、
スライドドア駆動装置であって、
前記第1ドラムと前記第2ドラムとの間に、前記第1ドラム及び前記第2ドラムに係合することによって前記第1ドラム及び前記第2ドラムの双方の回転を規制可能な規制部材が前記第1ドラム及び前記第2ドラムに係脱可能に設けられている、
スライドドア駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドドア駆動装置であって、
前記第1ドラムは、
回転軸の周方向に沿って複数形成された回転軸方向に延出した第1リブと、
隣り合う前記第1リブの間に形成された回転軸方向に窪んだ第1溝部と、を有し、
前記第2ドラムは、
回転軸の周方向に沿って複数形成された回転軸方向に延出した第2リブと、
隣り合う前記第2リブの間に形成された回転軸方向に窪んだ第2溝部と、を有し、
前記規制部材は、
前記第1溝部に挿入されることによって前記第1ドラムの回転を規制可能な第1スナップ部と、
前記第2溝部に挿入されることによって前記第2ドラムの回転を規制可能な第2スナップ部と、
を備える、スライドドア駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスライドドア駆動装置であって、
前記第1スナップ部は、
前記第1ドラムの回転方向に互いに離隔して形成された第1脚部と第2脚部とを有し、
前記第1脚部と前記第2脚部とが前記第1溝部に挿入されることによって前記第1ドラムの回転を規制し、
前記第2スナップ部は、
前記第2ドラムの回転方向に互いに離隔して形成された第3脚部と第4脚部とを有し、
前記第3脚部と前記第4脚部とが前記第2溝部に挿入されることによって前記第2ドラムの回転を規制する、
スライドドア駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のスライドドア駆動装置であって、
少なくとも前記第1ドラム及び前記第2ドラムを収容する収容ケースを備え、
前記規制部材には、爪部が設けられており、
前記収容ケースには、前記規制部材の前記爪部が係合可能な係合部が設けられており、
前記爪部は、前記規制部材が前記第1ドラム及び前記第2ドラムから離脱した位置で前記収容ケースの前記係合部に係合し、前記規制部材を前記第1ドラム及び前記第2ドラムから離脱した位置に保持する、
スライドドア駆動装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のスライドドア駆動装置であって、
少なくとも前記第1ドラム及び前記第2ドラムを収容する収容ケースを備え、
前記収容ケースは、
前記第1ドラムを収容する第1ドラム収容部と、
前記第2ドラムを収容する第2ドラム収容部と、を備え、
前記第1ドラム収容部には、内部に進入した液体を排出する第1排液口が設けられており、
前記第2ドラム収容部には、内部に進入した液体を排出する第2排液口が設けられており、
前記規制部材は、少なくとも一部が前記第1排液口及び前記第2排液口を挿通して、前記第1ドラム及び前記第2ドラムの双方の回転を規制する、
スライドドア駆動装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載のスライドドア駆動装置であって、
前記第1ドラムの回転軸と前記第2ドラムの回転軸とは、互いに平行であり、
前記規制部材は、前記第1ドラムの回転軸及び前記第2ドラムの回転軸の双方に直交し、且つ、前記第1ドラムの回転軸と前記第2ドラムの回転軸とを通る仮想直線と平行な回動軸を中心に回動する、
スライドドア駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等のスライドドアを開閉するためのスライドドア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワンボックスカー、やワゴン車等においては、後部ドアに引き戸式のスライドドアが採用されているものが多い。そして、近年では、そのスライドドアの開閉動作について、自動化が図られてきている。スライドドアを自動開閉する車両用ドア開閉装置の一般的な構成の1つとして、ボディ側面に沿って設けられたレール部材と、レール部材に沿って駆動されることによりドアを開閉するケーブルと、ケーブルを巻き取るためのスライドドア駆動装置と、を備えるものが知られている。一般的にスライドドア駆動装置は、動力源としてのモータと、該モータの回転を減速させる減速機構と、減速機構によって回転されてケーブルの巻き取り及び繰り出しを行う回転ドラムを備える。
【0003】
この種のスライドドア駆動装置においては、車両に組み付ける際に、スライドドアにケーブルを配索しやすくするために、スライドドアと接続するケーブルを弛ませた状態で組付けて、スライドドア駆動装置を組付けた後にケーブルの弛みを解消する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、リンクを操作する事でケーブルガイド及びアウタケーシングが押し上げられ、ケーブルの経路長が長くなることで弛みをつくることが可能であり、また、リンクを戻すことでドラムに設けたトーションスプリングにより巻き取られ、弛みが解消するスライドドア駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のスライドドア駆動装置の場合、開用ケーブル及び閉用ケーブルのそれぞれにリンクを設ける必要があるため、部品点数が多くなることに加え、開用ケーブル及び閉用ケーブルのそれぞれのリンクを操作する必要があり、作業工数が増加するという課題があった。
【0007】
本発明は、部品点数及び作業工数の増加を抑制したスライドドア駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
駆動用モータと、
前記駆動用モータから出力される回転動力を減速する減速機構と、
第1ドラムを有し、前記減速機構と噛合する第1ドラム機構と、
第2ドラムを有し、前記減速機構と噛合する第2ドラム機構と、
一端がスライドドアに連結し、他端が前記第1ドラムに固定され、前記第1ドラムに巻き付けられる第1ケーブルと、
一端が前記スライドドアに連結し、他端が前記第2ドラムに固定され、前記第2ドラムに巻き付けられる第2ケーブルと、
を備え、
前記第1ドラム機構において、前記第1ドラムは、前記第1ケーブルを巻き付ける側の回転方向に付勢されており、
前記第2ドラム機構において、前記第2ドラムは、前記第2ケーブルを巻き付ける側の回転方向に付勢されている、
スライドドア駆動装置であって、
前記第1ドラムと前記第2ドラムとの間に、前記第1ドラム及び前記第2ドラムに係合することによって前記第1ドラム及び前記第2ドラムの双方の回転を規制可能な規制部材が前記第1ドラム及び前記第2ドラムに係脱可能に設けられている、
スライドドア駆動装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1ドラム及び第2ドラムの双方の回転を規制可能な規制部材を備え、1つの規制部材で、第1ケーブル及び第2ケーブルの双方について弛んだ状態を維持及び解消できるので、部品点数及び作業工数の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置が搭載された車両の左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置について、車内側ハウジングを取り外した状態で車内側斜め後方から見た斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置を車内側から見た側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置を車内側下方から見た斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置について、車外側ハウジング及び規制部材を取り外した状態で車外側下斜め前方から見た斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置について、収容ケース、駆動用モータ、ECU、及び、規制部材を取り外した状態で車内側上斜め前方から見た斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置について、収容ケース、駆動用モータ、ECU、及び、規制部材を取り外した状態で車外側下斜め前方から見た斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置について、車外側ハウジング、開用ドラム、及び、閉用ドラムを取り外した状態で車外側上斜め後方から見た斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置を車外側斜め前方から見た斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置について、車外側ハウジングを取り外した状態で車外側上斜め前方から見た斜視図であり、規制部材が開用ドラム及び閉用ドラムに係合した状態を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態のスライドドア駆動装置を車外側下斜め後方から見た斜視図であり、規制部材の爪部が収容ケースの係合部に係合し、規制部材が開用ドラム及び閉用ドラムから離脱した位置に保持された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のスライドドア駆動装置の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、スライドドア駆動装置が搭載された車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
図1に示すように、スライドドア駆動装置20は、車両Vに搭載されており、車両Vに取り付けられたスライドドアをスライドさせて自動開閉させるものである。本実施形態では、スライドドア駆動装置20は、車両Vの左側部に取り付けられたスライドドア14を前後方向にスライドさせて自動開閉させる。
【0013】
スライドドア14は、車両Vの左側部に取り付けられ、車両Vに対して前後方向にスライド可能となっている。スライドドア14は、アッパーレール16a、センターレール16b及びロワーレール16cによって三点を支持され、前後方向にスライドすることによって開閉する。センターレール16bは、車両Vの左側部後方に設けられるクオータパネル18の上下方向略中間高さに設けられている。
【0014】
スライドドア駆動装置20は、クオータパネル18の室内側に配置され、センターレール16bに近い箇所でクオータパネル18に固定されている。
【0015】
スライドドア駆動装置20は、開用ケーブル21及び閉用ケーブル22を備える。スライドドア14には、不図示のサポートフレームが設けられている。開用ケーブル21と閉用ケーブル22の各一端部は、スライドドア14のサポートフレームに固定されている。サポートフレームは、センターレール16b内で転動する走行ローラを備える。開用ケーブル21及び閉用ケーブル22は、例えばステンレス製の縒線ワイヤである。スライドドア駆動装置20は、開用ケーブル21及び閉用ケーブル22を巻き取り及び繰り出すことによってスライドドア14を開閉する。車両Vには、スライドドア14を全開位置や全閉位置で保持する保持手段を設ける。
【0016】
図2及び
図5に示すように、スライドドア駆動装置20は、一端がスライドドア14に連結する開用ケーブル21と、一端がスライドドア14に連結する閉用ケーブル22と、駆動用モータ30と、駆動用モータ30を制御するECU(Electric Control Unit)40と、駆動用モータ30から出力される回転動力を減速する減速機構50と、減速機構50に噛合する開用ドラム機構61及び閉用ドラム機構62と、を備えた1つのユニットとなっている。
【0017】
以下、説明を簡潔且つ明確にするために、左右方向を車幅方向ということもあり、左右方向において、右側を車内側、左側を車外側ということもある。
【0018】
スライドドア駆動装置20は、駆動用モータ30、ECU40、減速機構50、開用ドラム機構61及び閉用ドラム機構62を収容する収容ケース70を備える。収容ケース70は、ベース部材71と、ベース部材71の車外側を覆う車外側ハウジング72と、ベース部材71の車内側を覆う車内側ハウジング73と、を有する。
【0019】
ベース部材71は、上下方向及び前後方向に延在する。
【0020】
図2から
図4に示すように、スライドドア駆動装置20において、ベース部材71の車内側には、駆動用モータ30とECU40とが配置されている。ベース部材71の車内側において、駆動用モータ30は、ベース部材71の上部領域に固定されており、ECU40は、車内側から車幅方向に見て、駆動用モータ30の下側領域の径方向外側を取り囲むように配置されている。
【0021】
駆動用モータ30は、例えば、瞬時に正転・逆転の切り替えができるリバーシブルモータである。また、駆動用モータ30は、例えば、インナーロータ型で扁平薄型のブラシレスモータである。駆動用モータ30の軸方向から見て、径方向外側の端部には、軸方向に貫通した挿通孔30bが設けられた取付台座部30aが、周方向に沿って複数(本実施形態では3つ)設けられている。駆動用モータ30は、ボルト等の締結部材を取付台座部30aの挿通孔30bに挿通させてベース部材71に締結させることによって、ベース部材71に固定されている。
【0022】
本実施形態において、駆動用モータ30は、インナーロータ型のブラシレスモータであり、コイルが外周側に配置されることから、放熱性に優れるとともに回転イナーシャが小さい。駆動用モータ30は、ブラシレスモータであることから扁平形状にすることができ、従来この用途に用いられてきた駆動用モータよりも薄型化が達成されている。駆動用モータ30は、薄型化されることによりスライドドア駆動装置20に対して一体化させやすくなる。
【0023】
駆動用モータ30は、ブラシレスモータの特性として、停止状態においても保持トルクを発生させる停止保持制御を行うことができる。これにより、ある程度の傾斜地においてもスライドドア14を停止状態で保持することができ、スライドドア14の位置を保持するための部材(例えば、クラッチ等)を別途設ける必要がなく、スライドドア駆動装置20を小型化、薄型化することができる。また、駆動用モータ30は、ステッピングモータのようなステップ制御を行うことができて制御性や回転精度に優れる。また、駆動用モータ30は正弦波駆動することも可能であり、トルク変動を低減させることができる。
【0024】
駆動用モータ30では、スライドドア14のスライド作動中に急制動する必要が発生した場合、上記の停止保持制御を行うことにより、強制ブレーキ力を作用させて強い制動力が得られる。また、駆動用モータ30では、ベクトル制御により永久磁石の磁力を変化させることができ、スライドドア14の種類やその他の仕様により、高トルク低回転運転や低トルク高回転運転を行うことができる。さらに、高電圧低回転制御によりステッピングモータのような動作が得られる。低電圧高回転制御では、スライドドア14の手動開閉モードにおいて人手による開閉操作のアシストをすることができる。
【0025】
ECU40は、制御回路基板をケースで覆った機器であり、駆動用モータ30を制御するインバータ回路を備える。ECU40は、車幅方向に薄型の厚さを有する箱形状を有する。ECU40は、車内側から車幅方向に見て、駆動用モータ30の下側領域の径方向外側を取り囲むように上方に向かって開口した略U字形状を有する。ECU40の下面には、下方向を向くコネクタ41が設けられている。コネクタ41には、不図示のハーネスが接続される。ECU40には、コネクタ41を介して、ハーネスから電力やセンサ信号が供給される。コネクタ41は、下方を向くようにECU40の下面に設けられているので、ハーネスを車幅方向に突出しないようにコネクタ41に接続することができる。そして、ECU40と駆動用モータ30とは、三相線42によって電気的に接続されており、ECU40は、ハーネスから供給された電力を変換して、U相、V相、W相の3相の電力を駆動用モータ30に供給する。
【0026】
駆動用モータ30及びECU40は、車外側の面がベース部材71に覆われており、車内側の面と前後上下の面とが車内側ハウジング73で覆われている。
【0027】
車内側ハウジング73は、上側領域が、ボルト等の締結部材によって、3か所の固定部731でベース部材71に固定されており、下側領域が、ベース部材71から車内側に延出する4つの爪部711と係合することによって、4か所でベース部材71に固定されている。
【0028】
車内側ハウジング73の下端部は、下方に向かって開口する開口部732を有する。開口部732には、下方を向くコネクタ41が挿通しており、不図示のハーネスが下方からコネクタ41に接続可能になっている。
【0029】
図5から
図8に示すように、スライドドア駆動装置20において、ベース部材71の車外側には、減速機構50と、開用ドラム機構61及び閉用ドラム機構62と、が配置されている。ベース部材71の車外側において、減速機構50が車内側、開用ドラム機構61及び閉用ドラム機構62が車外側となるように、車幅方向に並んで配置されている。
【0030】
駆動用モータ30は、モータ出力軸31が車外側に向かって車幅方向に延出している。モータ出力軸31には、モータ出力ギヤ32が設けられている。モータ出力軸31は、ベース部材71の車内側に設けられている駆動用モータ30からベース部材71に設けられた不図示の挿通孔を挿通している。そして、モータ出力ギヤ32は、ベース部材71よりも車外側に配置された減速機構50と噛合する。
【0031】
減速機構50は、駆動用モータ30の回転を減速して開用ドラム機構61及び閉用ドラム機構62に伝達する。減速機構50は、モータ出力ギヤ32と噛合する入力側減速ギヤ51と、入力側減速ギヤ51よりも小径且つ少ない歯数であり、入力側減速ギヤ51と同軸で一体に回転する出力側減速ギヤ52と、を備える。
【0032】
入力側減速ギヤ51は、モータ出力ギヤ32の下方に設けられており、モータ出力ギヤ32と噛合する。
【0033】
出力側減速ギヤ52は、入力側減速ギヤ51と同軸で入力側減速ギヤ51の車外側に設けられている。出力側減速ギヤ52は、入力側減速ギヤ51のボス部に形成されている。
【0034】
入力側減速ギヤ51及び出力側減速ギヤ52の回転軸は、モータ出力軸31の下方に位置し、モータ出力軸31と平行となっている。
【0035】
開用ドラム機構61は、開用ドラム611と、開用ドラム611の車内側の面に設けられ、開用ドラム611と同軸で回転する開用ドラム入力ギヤ612と、を備える。開用ドラム入力ギヤ612は、開用ドラム611の車内側の面に取り付けられている。開用ドラム611及び開用ドラム入力ギヤ612の回転軸は、入力側減速ギヤ51及び出力側減速ギヤ52の回転軸の後斜め上方に位置し、モータ出力軸31並びに入力側減速ギヤ51及び出力側減速ギヤ52の回転軸と平行となっている。
【0036】
開用ドラム611は、回転軸を中心とする扁平の円筒形状を有している。開用ドラム611の外周面には、開用ケーブル21が巻き付けられる。
【0037】
開用ドラム入力ギヤ612は、開用ドラム611よりも大径のディスク状となっており、減速機構50の出力側減速ギヤ52と噛合する。
【0038】
閉用ドラム機構62は、閉用ドラム621と、閉用ドラム621の車内側の面に設けられ、閉用ドラム621と同軸で回転する閉用ドラム入力ギヤ622と、を備える。閉用ドラム入力ギヤ622は、閉用ドラム621の車内側の面に取り付けられている。閉用ドラム621及び閉用ドラム入力ギヤ622の回転軸は、入力側減速ギヤ51及び出力側減速ギヤ52の回転軸の前斜め上方に位置し、モータ出力軸31並びに入力側減速ギヤ51及び出力側減速ギヤ52の回転軸と平行となっている。
【0039】
閉用ドラム621は、回転軸を中心とする扁平の円筒形状を有している。閉用ドラム621の外周面には、閉用ケーブル22が巻き付けられる。
【0040】
閉用ドラム入力ギヤ622は、閉用ドラム621よりも大径のディスク状となっており、減速機構50の出力側減速ギヤ52と噛合する。
【0041】
本実施形態では、開用ドラム機構61と閉用ドラム機構62とは、車幅方向から見て、モータ出力軸31と入力側減速ギヤ51及び出力側減速ギヤ52の回転軸とを結ぶ仮想直線を軸に線対称の形状及び配置となっている。
【0042】
開用ケーブル21の一端は、前述したようにスライドドア14に連結しており、開用ケーブル21の他端は、開用ドラム611の外周面に固定されている。開用ケーブル21は、他端を始点として、車外側から車幅方向に見て反時計回りに開用ドラム611の外周面に巻き付けられている。したがって、車外側から車幅方向に見て、開用ドラム611が反時計回りに回転すると開用ケーブル21が繰り出され、開用ドラム611が時計回りに回転すると開用ケーブル21が巻き取られる。
【0043】
閉用ケーブル22の一端は、前述したようにスライドドア14に連結しており、閉用ケーブル22の他端は、閉用ドラム621の外周面に固定されている。閉用ケーブル22は、他端を始点として、車外側から車幅方向に見て時計回りに閉用ドラム621の外周面に巻き付けられている。したがって、車外側から車幅方向に見て、閉用ドラム621が時計回りに回転すると閉用ケーブル22が繰り出され、閉用ドラム621が反時計回りに回転すると開用ケーブル21が巻き取られる。
【0044】
開用ドラム611の内部には、開用ドラム611の回転軸を中心に巻回する捩りコイルばね613が収容されている。そして、捩りコイルばね613の一端が開用ドラム入力ギヤ612に係止しており、捩りコイルばね613の他端が開用ドラム611に係止している。開用ドラム機構61において、開用ドラム611は、捩りコイルばね613の弾性力によって、開用ドラム入力ギヤ612に対して、開用ケーブル21を巻き付ける側の回転方向に付勢されている。本実施形態では、開用ドラム611は、車外側から車幅方向に見て、開用ドラム入力ギヤ612に対して、時計回り方向に付勢されている。
【0045】
開用ドラム機構61において、車外側から車幅方向に見て、開用ドラム入力ギヤ612が時計回りに回転すると、開用ドラム611は、開用ドラム入力ギヤ612と一体に時計回りに回転し、開用ケーブル21が巻き付けられる。一方、車外側から車幅方向に見て、開用ドラム入力ギヤ612が反時計回りに回転すると、開用ドラム611は、捩りコイルばね613による付勢力とバランスしながら、開用ドラム入力ギヤ612と連動して反時計回りに回転し、開用ケーブル21が繰り出される。
【0046】
開用ドラム611が、車外側から車幅方向に見て、開用ドラム入力ギヤ612に対して、時計回り方向に付勢されていることによって、スライドドア駆動装置20の組付作業者等が、開用ケーブル21を引っ張って、開用ケーブル21を繰り出した場合、開用ドラム入力ギヤ612が回転することなく、捩りコイルばね613の付勢力に抗って、開用ドラム611のみが車外側から車幅方向に見て反時計回りに回転する。そして、スライドドア駆動装置20の組付作業者等が、開用ケーブル21から手を離すと、捩りコイルばね613の付勢力によって、開用ドラム入力ギヤ612が回転することなく、開用ドラム611のみが車外側から車幅方向に見て時計回りに回転して元の位置に戻る。これにより、組付作業者等が、開用ケーブル21を引っ張って、開用ケーブル21を繰り出してスライドドア駆動装置20の組付作業を行うことが容易となり、スライドドア駆動装置20の組付性が向上する。
【0047】
閉用ドラム621の内部には、閉用ドラム621の回転軸を中心に巻回する捩りコイルばね623が収容されている。そして、捩りコイルばね623の一端が閉用ドラム入力ギヤ622に係止しており、捩りコイルばね623の他端が閉用ドラム621に係止している。閉用ドラム機構62において、閉用ドラム621は、捩りコイルばね623の弾性力によって、閉用ドラム入力ギヤ622に対して、閉用ケーブル22を巻き付ける側の回転方向に付勢されている。本実施形態では、閉用ドラム621は、車外側から車幅方向に見て、閉用ドラム入力ギヤ622に対して、反時計回り方向に付勢されている。
【0048】
閉用ドラム機構62において、車外側から車幅方向に見て、閉用ドラム入力ギヤ622が反時計回りに回転すると、閉用ドラム621は、閉用ドラム入力ギヤ622と一体に反時計回りに回転し、閉用ケーブル22が巻き付けられる。一方、車外側から車幅方向に見て、閉用ドラム入力ギヤ622が時計回りに回転すると、閉用ドラム621は、捩りコイルばね623による付勢力とバランスしながら、閉用ドラム入力ギヤ622と連動して時計回りに回転し、閉用ケーブル22が繰り出される。
【0049】
閉用ドラム621が、車外側から車幅方向に見て、閉用ドラム入力ギヤ622に対して、反時計回り方向に付勢されていることによって、スライドドア駆動装置20の組付作業者等が、閉用ケーブル22を引っ張って、閉用ケーブル22を繰り出した場合、閉用ドラム入力ギヤ622が回転することなく、捩りコイルばね623の付勢力に抗って、閉用ドラム621のみが車外側から車幅方向に見て時計回りに回転する。そして、スライドドア駆動装置20の組付作業者等が、閉用ケーブル22から手を離すと、捩りコイルばね623の付勢力によって、閉用ドラム入力ギヤ622が回転することなく、閉用ドラム621のみが車外側から車幅方向に見て反時計回りに回転して元の位置に戻る。これにより、組付作業者等が、閉用ケーブル22を引っ張って、閉用ケーブル22を繰り出してスライドドア駆動装置20の組付作業を行うことが容易となり、スライドドア駆動装置20の組付性が向上する。
【0050】
車外側から車幅方向に見て、駆動用モータ30が正転又は反転駆動してモータ出力軸31が時計回りに回転すると、減速機構50において、モータ出力ギヤ32と噛合する入力側減速ギヤ51が反時計回りに回転し、出力側減速ギヤ52も入力側減速ギヤ51と一体に反時計回りに回転する。そして、出力側減速ギヤ52と噛合する開用ドラム機構61の開用ドラム入力ギヤ612及び閉用ドラム機構62の閉用ドラム入力ギヤ622は、いずれも時計回りに回転する。このとき、出力側減速ギヤ52は、入力側減速ギヤ51よりも小径且つ少ない歯数であるので、駆動用モータ30の回転動力は、減速機構50で減速されて開用ドラム機構61の開用ドラム入力ギヤ612及び閉用ドラム機構62の閉用ドラム入力ギヤ622に伝達される。そして、開用ドラム機構61の開用ドラム入力ギヤ612及び閉用ドラム機構62の閉用ドラム入力ギヤ622が、いずれも時計回りに回転すると、開用ドラム機構61の開用ドラム611が時計回りに回転して開用ケーブル21が開用ドラム611に巻き取られるとともに、閉用ドラム機構62の閉用ドラム621が時計回りに回転して閉用ケーブル22が閉用ドラム621から繰り出される。これにより、スライドドア14は、開動作する。
【0051】
一方、車外側から車幅方向に見て、駆動用モータ30が反転又は正転駆動してモータ出力軸31が反時計回りに回転すると、減速機構50において、モータ出力ギヤ32と噛合する入力側減速ギヤ51が時計回りに回転し、出力側減速ギヤ52も入力側減速ギヤ51と一体に時計回りに回転する。そして、出力側減速ギヤ52と噛合する開用ドラム機構61の開用ドラム入力ギヤ612及び閉用ドラム機構62の閉用ドラム入力ギヤ622は、いずれも反時計回りに回転する。このとき、出力側減速ギヤ52は、入力側減速ギヤ51よりも小径且つ少ない歯数であるので、駆動用モータ30の回転動力は、減速機構50で減速されて開用ドラム機構61の開用ドラム入力ギヤ612及び閉用ドラム機構62の閉用ドラム入力ギヤ622に伝達される。そして、開用ドラム機構61の開用ドラム入力ギヤ612及び閉用ドラム機構62の閉用ドラム入力ギヤ622が、いずれも反時計回りに回転すると、開用ドラム機構61の開用ドラム611が反時計回りに回転して開用ケーブル21が開用ドラム611から繰り出されるとともに、閉用ドラム機構62の閉用ドラム621が反時計回りに回転して閉用ケーブル22が閉用ドラム621に巻き付けられる。これにより、スライドドア14は、閉動作する。
【0052】
開用ドラム611の車外側の回転軸方向端面には、回転軸の周方向に沿って、回転軸方向外側に向かって突出した第1リブ611aが複数形成されている。複数の第1リブ611aは、開用ドラム611の回転軸の周方向に沿って、回転軸を中心に径方向に放射状に延在している。そして、隣り合う第1リブ611aの間には、回転軸方向内側に窪んだ第1溝部611bが形成されている。第1溝部611bを設けることで軽量化を図りつつ、第1リブ611aを設ける事で強度を確保できる。
【0053】
閉用ドラム621の車外側の回転軸方向端面には、回転軸の周方向に沿って、回転軸方向外側に向かって突出した第2リブ621aが複数形成されている。複数の第2リブ621aは、閉用ドラム621の回転軸の周方向に沿って、回転軸を中心に径方向に放射状に延在している。そして、隣り合う第2リブ621aの間には、回転軸方向内側に窪んだ第2溝部621bが形成されている。第2溝部621bを設けることで軽量化を図りつつ、第2リブ621aを設ける事で強度を確保できる。
【0054】
図9から
図11に示すように、減速機構50、開用ドラム機構61、及び、閉用ドラム機構62は、車内側の面がベース部材71に覆われており、車外側の面と前後上下の面とが車外側ハウジング72で覆われている。
【0055】
車外側ハウジング72は、ボルト等の締結部材によって、5か所の固定部72aでベース部材71に固定されている。
【0056】
車外側ハウジング72は、ベース部材71の車外側の面と対応するベース部720と、ベース部720から車外側に向かって円筒状に窪んでおり、開用ドラム機構61を収容する開用ドラム収容部721と、ベース部720から車外側に向かって円筒状に窪んでおり、閉用ドラム機構62を収容する閉用ドラム収容部722と、開用ドラム収容部721の後斜め上部から、前斜め上方に向かって延在し、開用ケーブル21の車外側、上側、及び、下側を覆う開用ケーブル収容部723と、閉用ドラム収容部722の前斜め上部から、後斜め上方に向かって延在し、閉用ケーブル22の車外側、上側、及び、下側を覆う閉用ケーブル収容部724と、を有する。なお、減速機構50は、車外側ハウジング72のベース部720とベース部材71との間に収容されている。
【0057】
開用ドラム収容部721の車外側の面の下端部には、開用ドラム収容部721の内部に進入した水等の液体を排出する第1排液口721aが設けられている。第1排液口721aは、開用ドラム収容部721を車幅方向に貫通した孔であり、車外側から開用ドラム611の回転軸方向に見て、開用ドラム611の一部と重なる位置に設けられている。
【0058】
閉用ドラム収容部722の車外側の面の下端部には、閉用ドラム収容部722の内部に進入した水等の液体を排出する第2排液口722aが設けられている。第2排液口722aは、閉用ドラム収容部722を車幅方向に貫通した孔であり、車外側から閉用ドラム621の回転軸方向に見て、閉用ドラム621の一部と重なる位置に設けられている。
【0059】
収容ケース70の車外側ハウジング72には、開用ドラム収容部721及び閉用ドラム収容部722の下方に、規制部材80が設けられている。
【0060】
規制部材80は、開用ドラム611と閉用ドラム621との並び方向である前後方向において、開用ドラム611と閉用ドラム621との間に設けられている。
【0061】
規制部材80は、開用ドラム611の回転軸及び閉用ドラムの回転軸の双方に直交し、且つ、開用ドラム611の回転軸と閉用ドラム621の回転軸とを通る仮想直線VL1と平行な回動軸を中心に回動する。本実施形態では、開用ドラム611の回転軸及び閉用ドラムの回転軸は、いずれも車幅方向に延在しており、開用ドラム611の回転軸と閉用ドラム621の回転軸とは前後方向に並んでいるので、仮想直線VL1は、前後方向に延在する。したがって、本実施形態では、規制部材80は、前後方向に延在する回動軸を中心に回動する。
【0062】
規制部材80は、開用ドラム611の第1溝部611bに挿入されることによって開用ドラム611に係合して開用ドラム611の回転を規制可能な第1スナップ部81と、閉用ドラム621の第2溝部621bに挿入されることによって閉用ドラム621に係合して閉用ドラム621の回転を規制可能な第2スナップ部82と、を備える。
【0063】
規制部材80は、組付作業者等による操作によって、後方から見て時計回り方向に回動すると、第1スナップ部81が車外側ハウジング72の第1排液口721aを挿通して開用ドラム収容部721の内部に進入して開用ドラム611の第1溝部611bに挿入されることによって開用ドラム611に係合するとともに、第2スナップ部82が車外側ハウジング72の第2排液口722aを挿通して閉用ドラム収容部722の内部に進入して閉用ドラム621の第2溝部621bに挿入されることによって閉用ドラム621に係合する。これにより、開用ドラム611及び閉用ドラム621の双方の回転が規制部材80によって規制される。
【0064】
このようにして、規制部材80は、開用ドラム611の第1溝部611bと閉用ドラム621の第2溝部621bとに挿入されて開用ドラム611及び閉用ドラム621に係合することによって、開用ドラム611及び閉用ドラム621の双方の回転を規制可能となっている。
【0065】
また、規制部材80は、開用ドラム611の第1溝部611bと閉用ドラム621の第2溝部621bとに挿入されて開用ドラム611及び閉用ドラム621に係合した状態から、組付作業者等による操作によって、後方から見て反時計回り方向に回動すると、開用ドラム611及び閉用ドラム621から離脱して、第1スナップ部81及び第2スナップ部82も、それぞれ開用ドラム収容部721及び閉用ドラム収容部722の外部に離脱する。
【0066】
このようにして、規制部材80は、開用ドラム611及び閉用ドラム621に係脱可能に設けられている。
【0067】
したがって、スライドドア駆動装置20の組付作業者等が、開用ケーブル21を引っ張ると、捩りコイルばね613の付勢力に抗って、開用ドラム611が車外側から車幅方向に見て反時計回りに回転して、開用ケーブル21が繰り出される。同様に、スライドドア駆動装置20の組付作業者等が、閉用ケーブル22を引っ張ると、捩りコイルばね623の付勢力に抗って、閉用ドラム621が車外側から車幅方向に見て時計回りに回転して、閉用ケーブル22が繰り出される。この状態で、組付作業者等が規制部材80を後方から見て時計回り方向に回動させると、第1スナップ部81が開用ドラム611の第1溝部611bに挿入されて開用ドラム611に係合するとともに、第2スナップ部82が閉用ドラム621の第2溝部621bに挿入されて閉用ドラム621に係合する。これにより、開用ドラム611及び閉用ドラム621の双方の回転が規制部材80によって規制され、開用ケーブル21と閉用ケーブル22とが繰り出された状態が維持される。
【0068】
開用ドラム611及び閉用ドラム621の双方の回転が規制部材80によって規制され、開用ケーブル21と閉用ケーブル22とが繰り出された状態が維持されて、開用ケーブル21と閉用ケーブル22とが弛んだ状態でスライドドア駆動装置20を車両Vに組付ける。そして、スライドドア駆動装置20の車両Vへの組付けが完了した後、組付作業者等が規制部材80を後方から見て反時計回り方向に回動させると、規制部材80は、開用ドラム611及び閉用ドラム621から離脱する。すると、開用ドラム611は、捩りコイルばね613の付勢力によって、開用ケーブル21を巻き付ける側の回転方向、車外側から車幅方向に見て時計回り方向に回転して、開用ケーブル21を巻き取るので、開用ケーブル21の弛みは解消される。同様に、閉用ドラム621は、捩りコイルばね623の付勢力によって、閉用ケーブル22を巻き付ける側の回転方向、車外側から車幅方向に見て反時計回り方向に回転して、閉用ケーブル22を巻き取るので、閉用ケーブル22の弛みは解消される。
【0069】
このように、スライドドア駆動装置20は、開用ドラム611及び閉用ドラム621の双方の回転を規制可能な規制部材80を備え、1つの規制部材80で、開用ケーブル21及び閉用ケーブル22の双方について弛んだ状態を維持及び解消できるので、部品点数及び作業工数の増加を抑制できる。
【0070】
また、規制部材80は、開用ドラム611の第1溝部611bに挿入されることによって開用ドラム611に係合して開用ドラム611の回転を規制可能な第1スナップ部81と、閉用ドラム621の第2溝部621bに挿入されることによって閉用ドラム621に係合して閉用ドラム621の回転を規制可能な第2スナップ部82と、を備えるので、開用ドラム611及び閉用ドラム621に、規制部材80が係合する部位を新たに加工する必要がない。これにより、スライドドア駆動装置20の製造コストを低減できる。加えて、スライドドア駆動装置20の車両Vへの組付けが完了した後に、規制部材80を開用ドラム611及び閉用ドラム621から離脱させる作業を忘れてしまった場合、規制部材80によって開用ドラム611及び閉用ドラム621の双方の回転が規制されたままの状態となるため、スライドドア駆動装置20を駆動させてもスライドドア14は動作しない。これにより、規制部材80を開用ドラム611及び閉用ドラム621から離脱させる作業を忘れたことを認識できるので、規制部材80を開用ドラム611及び閉用ドラム621から離脱させる作業を忘れてしまうことを防止できる。
【0071】
また、車外側ハウジング72において、第1排液口721a及び第2排液口722aを、それぞれ規制部材80の第1スナップ部及び第2スナップ部82の挿入口として兼用できるので、車外側ハウジング72の加工コストを低減できる。
【0072】
さらに、スライドドア駆動装置20の組付作業者等が規制部材80を操作する際、位置合わせ等が不要で、規制部材80を回動させるのみで容易且つ確実に開用ドラム611及び閉用ドラム621の双方の回転を規制することができるので、スライドドア駆動装置20を車両Vに組付ける際の組付け性が向上する。
【0073】
第1スナップ部81は、開用ドラム611の回転方向、本実施形態では、開用ドラム611の下端部における前後方向に互いに離隔して形成された第1脚部81aと第2脚部81bとを有する。本実施形態では、第1脚部81aが前方、第2脚部81bが後方に位置し、第1脚部81aと第2脚部81bとが前後方向に離隔して形成されている。そして、第1脚部81aと第2脚部81bとが開用ドラム611の第1溝部611bに挿入されることによって開用ドラム611の回転を規制する。これにより、規制部材80の軽量化を図ることができる。
【0074】
加えて、車外側から車幅方向に見て、開用ドラム611が反時計回り方向に回転しようとするときは、第1脚部81aが開用ドラム611の第1リブ611aに弾性的に当接して、開用ドラム611の反時計回り方向への回転を規制し、回転力が大きい場合には第1脚部81aは第2脚部81bに当接して回転を規制し、開用ドラム611が時計回り方向に回転しようとするときは、第2脚部81bが開用ドラム611の第1リブ611aに弾性的に当接して、開用ドラム611の反時計回り方向への回転を規制し、回転力が大きい場合には第2脚部81bは第1脚部81aに当接して回転を規制する。これにより、開用ドラム611の回転を第1脚部81aと第2脚部81bとで荷重を分散して規制することができるとともに、第1脚部81a及び第2脚部81bは、第1リブ611aに当接した際の荷重を弾性的に受け止めることができる。
【0075】
同様に、第2スナップ部82は、閉用ドラム621の回転方向、本実施形態では、閉用ドラム621の下端部における前後方向に互いに離隔して形成された第3脚部82aと第4脚部82bとを有する。本実施形態では、第3脚部82aが前方、第4脚部82bが後方に位置し、第3脚部82aと第4脚部82bとが前後方向に離隔して形成されている。そして、第3脚部82aと第4脚部82bとが閉用ドラム621の第2溝部621bに挿入されることによって閉用ドラム621の回転を規制する。これにより、規制部材80の軽量化を図ることができる。
【0076】
加えて、車外側から車幅方向に見て、閉用ドラム621が反時計回り方向に回転しようとするときは、第3脚部82aが閉用ドラム621の第2リブ621aに弾性的に当接して、閉用ドラム621の反時計回り方向への回転を規制し、回転力が大きい場合には第3脚部82aは第4脚部82bに当接して回転を規制し、閉用ドラム621が時計回り方向に回転しようとするときは、第4脚部82bが閉用ドラム621の第2リブ621aに弾性的に当接して、閉用ドラム621の反時計回り方向への回転を規制し、回転力が大きい場合には第4脚部82bは第3脚部82aに当接して回転を規制する。これにより、閉用ドラム621の回転を第3脚部82aと第4脚部82bとで荷重を分散して規制することができるとともに、第3脚部82a及び第4脚部82bは、第2リブ621aに当接した際の荷重を弾性的に受け止めることができる。
【0077】
規制部材80には、収容ケース70の車外側ハウジング72と係合する爪部83が設けられている。本実施形態では、爪部83は、規制部材80の前側領域と後側領域とにそれぞれ設けられている。したがって、本実施形態では、規制部材80には、前後方向に並んで2つの爪部83が設けられている。
【0078】
車外側ハウジング72の下端部には、規制部材80の爪部83が係合可能な係合部725が設けられている。本実施形態では、規制部材80に設けられた前後方向に並んだ2つの爪部83に対応して、車外側ハウジング72の下端部には、前後方向に並んで2つの係合部725が設けられている。
【0079】
規制部材80の各々の爪部83は、規制部材80が開用ドラム611及び閉用ドラム621から離脱した位置、本実施形態では、第1スナップ部81及び第2スナップ部82も、それぞれ開用ドラム収容部721及び閉用ドラム収容部722の外部に離脱した位置で、車外側ハウジング72の対応する係合部725に係合し、規制部材80を開用ドラム611及び閉用ドラム621から離脱した位置に保持する(
図11参照)。
【0080】
これにより、スライドドア駆動装置20を車両Vに組付けた後に、規制部材80が開用ドラム611及び閉用ドラム621から離脱した位置で変位することを防止できるので、スライドドア駆動装置20を車両Vに組付けた後に、規制部材80が変位して他の部材に衝突することや、規制部材80から異音が発生することを防止できる。
【0081】
開用ケーブル21は、スライドドア駆動装置20の外部では、チューブ状の開用アウタケーシング231の中空部分に収容されている。開用アウタケーシング231の一端部には、開用ケーシングキャップ241が外嵌されている。
【0082】
車外側ハウジング72において、開用ケーブル収容部723の前上端面723aには、開用ケーシングキャップ241が係合する。開用ケーシングキャップ241が車外側ハウジング72の前上端面723aに係合することによって、開用アウタケーシング231の一端部が車外側ハウジング72に固定されている。
【0083】
閉用ケーブル22は、スライドドア駆動装置20の外部では、チューブ状の閉用アウタケーシング232の中空部分に収容されている。閉用アウタケーシング232の一端部には、閉用ケーシングキャップ242が外嵌されている。
【0084】
車外側ハウジング72において、閉用ケーブル収容部724の後上端面724aには、閉用ケーシングキャップ242が係合する。閉用ケーシングキャップ242が車外側ハウジング72の後上端面724aに係合することによって、閉用アウタケーシング232の一端部が車外側ハウジング72に固定されている。
【0085】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0086】
例えば、本実施形態では、駆動用モータ30のモータ出力軸31、開用ドラム611の回転軸、及び、閉用ドラム621の回転軸は、車幅方向に延在するものとしたが、上下方向や前後方向に延在してもよいし、斜め方向等、三次元の任意の方向に延在してもよい。
【0087】
また、例えば、本実施形態では、開用ドラム機構61と閉用ドラム機構62とは、開用ドラム機構61が後方、閉用ドラム機構62が前方となるように前後方向に並んで配置されているものとしたが、開用ドラム機構61が前方、閉用ドラム機構62が後方となるように前後方向に並んで配置されていてもよい。
【0088】
また、例えば、本実施形態では、規制部材80により開用ドラム611及び閉用ドラム621の双方の回転を規制するものとしたが、スライドドア駆動装置20の組付作業者等が、開用ケーブル21を引っ張って、本実施形態よりも開用ケーブル21を繰り出し、規制部材80により開用ドラム611の回転のみを規制してもよいし、閉用ケーブル22を引っ張って、本実施形態よりも閉用ケーブル22を繰り出し、規制部材80により閉用ドラム621の回転のみを規制してもよい。
【0089】
また、例えば、本実施形態では、規制部材80は、開用ドラム611と閉用ドラム621との並び方向、すなわち、前後方向における開用ドラム611と閉用ドラム621との間に設けられているものとしたが、規制部材80は、開用ドラム611と閉用ドラム621との並び方向に限らず、例えば、機能的観点における開用ドラム611と閉用ドラム621との間に設けられていてもよい。
【0090】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0091】
(1) 駆動用モータ(駆動用モータ30)と、
前記駆動用モータから出力される回転動力を減速する減速機構(減速機構50)と、
第1ドラム(開用ドラム611)を有し、前記減速機構と噛合する第1ドラム機構(開用ドラム機構61)と、
第2ドラム(閉用ドラム621)を有し、前記減速機構と噛合する第2ドラム機構(閉用ドラム機構62)と、
一端がスライドドア(スライドドア14)に連結し、他端が前記第1ドラムに固定され、前記第1ドラムに巻き付けられる第1ケーブル(開用ケーブル21)と、
一端が前記スライドドアに連結し、他端が前記第2ドラムに固定され、前記第2ドラムに巻き付けられる第2ケーブル(閉用ケーブル22)と、
を備え、
前記第1ドラム機構において、前記第1ドラムは、前記第1ケーブルを巻き付ける側の回転方向に付勢されており、
前記第2ドラム機構において、前記第2ドラムは、前記第2ケーブルを巻き付ける側の回転方向に付勢されている、
スライドドア駆動装置(スライドドア駆動装置20)であって、
前記第1ドラムと前記第2ドラムとの間に、前記第1ドラム及び前記第2ドラムに係合することによって前記第1ドラム及び前記第2ドラムの双方の回転を規制可能な規制部材(規制部材80)が前記第1ドラム及び前記第2ドラムに係脱可能に設けられている、
スライドドア駆動装置。
【0092】
(1)によれば、スライドドア駆動装置は、第1ドラム及び第2ドラムの双方の回転を規制可能な規制部材を備え、1つの規制部材で、第1ケーブル及び第2ケーブルの双方について弛んだ状態を維持及び解消できるので、部品点数及び作業工数の増加を抑制できる。
【0093】
(2) (1)に記載のスライドドア駆動装置であって、
前記第1ドラムは、
回転軸の周方向に沿って複数形成された回転軸方向に延出した第1リブ(第1リブ611a)と、
隣り合う前記第1リブの間に形成された回転軸方向に窪んだ第1溝部(第1溝部611b)と、を有し、
前記第2ドラムは、
回転軸の周方向に沿って複数形成された回転軸方向に延出した第2リブ(第2リブ621a)と、
隣り合う前記第2リブの間に形成された回転軸方向に窪んだ第2溝部(第2溝部621b)と、を有し、
前記規制部材は、
前記第1溝部に挿入されることによって前記第1ドラムの回転を規制可能な第1スナップ部(第1スナップ部81)と、
前記第2溝部に挿入されることによって前記第2ドラムの回転を規制可能な第2スナップ部(第2スナップ部82)と、
を備える、スライドドア駆動装置。
【0094】
(2)によれば、第1ドラム及び第2ドラムに、規制部材が係合する部位を新たに加工する必要がないので、スライドドア駆動装置の製造コストを低減できる。加えて、規制部材を第1ドラム及び第2ドラムから離脱させる作業を忘れてしまった場合、規制部材によって第1ドラム及び第2ドラムの双方の回転が規制されたままの状態となり、スライドドア駆動装置を駆動させてもスライドドアは動作しないので、規制部材を第1ドラム及び第2ドラムから離脱させる作業を忘れてしまうことを防止できる。
【0095】
(3) (2)に記載のスライドドア駆動装置であって、
前記第1スナップ部は、
前記第1ドラムの回転方向に互いに離隔して形成された第1脚部(第1脚部81a)と第2脚部(第2脚部81b)とを有し、
前記第1脚部と前記第2脚部とが前記第1溝部に挿入されることによって前記第1ドラムの回転を規制し、
前記第2スナップ部は、
前記第2ドラムの回転方向に互いに離隔して形成された第3脚部(第3脚部82a)と第4脚部(第4脚部82b)とを有し、
前記第3脚部と前記第4脚部とが前記第2溝部に挿入されることによって前記第2ドラムの回転を規制する、
スライドドア駆動装置。
【0096】
(3)によれば、規制部材の軽量化を図ることができることに加え、第1脚部及び第2脚部において、第1リブに当接した際の荷重を弾性的に受け止めることができるとともに、第3脚部及び第4脚部において、第2リブに当接した際の荷重を弾性的に受け止めることができる。
【0097】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載のスライドドア駆動装置であって、
少なくとも前記第1ドラム及び前記第2ドラムを収容する収容ケース(収容ケース70)を備え、
前記規制部材には、爪部(爪部83)が設けられており、
前記収容ケースには、前記規制部材の前記爪部が係合可能な係合部(係合部725)が設けられており、
前記爪部は、前記規制部材が前記第1ドラム及び前記第2ドラムから離脱した位置で前記収容ケースの前記係合部に係合し、前記規制部材を前記第1ドラム及び前記第2ドラムから離脱した位置に保持する、
スライドドア駆動装置。
【0098】
(4)によれば、スライドドア駆動装置を組付けた後に、規制部材が第1ドラム及び第2ドラムから離脱した位置に保持することができるので、スライドドア駆動装置を組付けた後に、規制部材が変位して他の部材に衝突することや、規制部材から異音が発生することを防止できる。
【0099】
(5) (1)から(3)のいずれかに記載のスライドドア駆動装置であって、
少なくとも前記第1ドラム及び前記第2ドラムを収容する収容ケース(収容ケース70)を備え、
前記収容ケースは、
前記第1ドラムを収容する第1ドラム収容部(開用ドラム収容部721)と、
前記第2ドラムを収容する第2ドラム収容部(閉用ドラム収容部722)と、を備え、
前記第1ドラム収容部には、内部に進入した液体を排出する第1排液口(第1排液口721a)が設けられており、
前記第2ドラム収容部には、内部に進入した液体を排出する第2排液口(第2排液口722a)が設けられており、
前記規制部材は、少なくとも一部が前記第1排液口及び前記第2排液口を挿通して、前記第1ドラム及び前記第2ドラムの双方の回転を規制する、
スライドドア駆動装置。
【0100】
(5)によれば、第1排液口及び第2排液口を、規制部材の挿入口として兼用できるので、収容ケースの加工コストを低減できる。
【0101】
(6) (1)から(3)のいずれかに記載のスライドドア駆動装置であって、
前記第1ドラムの回転軸と前記第2ドラムの回転軸とは、互いに平行であり、
前記規制部材は、前記第1ドラムの回転軸及び前記第2ドラムの回転軸の双方に直交し、且つ、前記第1ドラムの回転軸と前記第2ドラムの回転軸とを通る仮想直線と平行な回動軸を中心に回動する、
スライドドア駆動装置。
【0102】
(6)によれば、スライドドア駆動装置の組付作業者等が規制部材を操作する際、位置合わせ等が不要で、規制部材を回動させるのみで容易且つ確実に第1ドラム及び第2ドラムの双方の回転を規制することができるので、スライドドア駆動装置を組付ける際の組付け性が向上する。
【符号の説明】
【0103】
14 スライドドア
20 スライドドア駆動装置
21 開用ケーブル(第1ケーブル)
22 閉用ケーブル(第2ケーブル)
30 駆動用モータ
50 減速機構
61 開用ドラム機構(第1ドラム機構)
611 開用ドラム(第1ドラム)
611a 第1リブ
611b 第1溝部
62 閉用ドラム機構(第2ドラム機構)
621 閉用ドラム(第2ドラム)
621a 第2リブ
621b 第2溝部
70 収容ケース
721 開用ドラム収容部(第1ドラム収容部)
721a 第1排液口
722 閉用ドラム収容部(第2ドラム収容部)
722a 第2排液口
725 係合部
80 規制部材
81 第1スナップ部
81a 第1脚部
81b 第2脚部
82 第2スナップ部
82a 第3脚部
82b 第4脚部
83 爪部