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特開2025-2068防火措置具、及び、防火措置構造、及び、防火措置工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002068
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】防火措置具、及び、防火措置構造、及び、防火措置工法
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20241226BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20241226BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F16L5/04
F16L5/02 B
A62C3/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101986
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000119830
【氏名又は名称】因幡電機産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】竹村 康高
(72)【発明者】
【氏名】古賀 誠一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 正広
(72)【発明者】
【氏名】別納 俊夫
(57)【要約】
【課題】床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に対して簡単且つ短時間で防火措置を講じることのできる施工性に優れた防火措置具、防火措置構造、防火措置工法を提供する。
【解決手段】床2に形成されて長尺体3が挿通される貫通孔4に設置可能な樹脂製で筒状のスリーブ材8と、スリーブ材8に挿通される長尺体3のスリーブ材8よりも上方側の部分とスリーブ材8とに亘る状態で長尺体3を囲繞可能な可撓性及び不燃性を有するシート材9とを備え、スリーブ材8に、その内面にスリーブ用熱膨張性耐火材11を備え、シート材9に、その内面にシート用熱膨張性耐火材14を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に設置可能な樹脂製で筒状のスリーブ材と、
前記スリーブ材に挿通される前記長尺体の前記スリーブ材よりも上方側の部分と前記スリーブ材とに亘る状態で前記長尺体を囲繞可能な可撓性及び不燃性を有するシート材とを備え、
前記スリーブ材は、その内面にスリーブ用熱膨張性耐火材を備え、
前記シート材は、その内面にシート用熱膨張性耐火材を備えている防火措置具。
【請求項2】
前記スリーブ材は、上下方向の中間部に位置して前記床の上面に載置可能なフランジ部を備えると共に、前記フランジ部を挟んで上下方向の両側に亘る状態で前記スリーブ用熱膨張性耐火材を備えている請求項1に記載の防火措置具。
【請求項3】
前記シート材は、前記シート材の内面において前記スリーブ材に取り付けられるスリーブ材側端部と前記長尺体に取り付けられる長尺体側端部との間の位置に前記シート用熱膨張性耐火材を備えている請求項1又は2に記載の防火措置具。
【請求項4】
前記スリーブ材は、当該スリーブ材の周方向において複数のスリーブ部分に分割可能に構成されている請求項1又は2に記載の防火措置具。
【請求項5】
前記スリーブ材は、上下方向の中間部に位置して前記床の上面に載置されるフランジ部と、前記フランジ部の下方側に備えられて前記貫通孔内に設置される筒状の下部分と、前記フランジ部より上方側に備えられた筒状の上部分とを備え、
前記上部分は、その上下方向の幅が前記床上に増し打ちされる増し打ち部の想定厚みより広く形成されている請求項1又は2に記載の防火措置具。
【請求項6】
床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に防火措置具が設置され、
前記防火措置具は、
前記貫通孔に設置された樹脂製で筒状のスリーブ材と、
前記スリーブ材に挿通される前記長尺体の前記スリーブ材よりも上方側の部分と前記スリーブ材とに亘る状態で前記長尺体を囲繞する可撓性及び不燃性を有するシート材とを備え、
前記スリーブ材は、その内面にスリーブ用熱膨張性耐火材を備え、
前記シート材は、その内面にシート用熱膨張性耐火材を備えている防火措置構造。
【請求項7】
床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に防火措置具を設置する防火措置工法であって、
前記防火措置具は、
前記貫通孔に設置可能な樹脂製で筒状のスリーブ材と、
前記スリーブ材に挿通される前記長尺体の前記スリーブ材よりも上方側の部分と前記スリーブ材とに亘る状態で前記長尺体を囲繞可能な可撓性及び不燃性を有するシート材とを備え、
前記スリーブ材は、その内面にスリーブ用熱膨張性耐火材を備え、
前記シート材は、その内面にシート用熱膨張性耐火材を備え、
前記貫通孔に前記スリーブ材を設置するとともに前記スリーブ材に前記シート材を取り付ける、又は、前記貫通孔に前記シート材のスリーブ材側端部が取り付けられた前記スリーブ材を設置する防火措置具配置工程と、
前記防火措置具配置工程の後に実行する工程であって、前記長尺体の前記スリーブ材より上方側の部分に前記シート材を取り付ける長尺体側シート材取付工程と、を行う防火措置工法。
【請求項8】
前記スリーブ材は、上下方向の中間部に位置して前記床の上面に載置されるフランジ部と、前記フランジ部の下方側に備えられて前記貫通孔内に設置される筒状の下部分と、前記フランジ部より上方側に備えられた筒状の上部分とが備えられ、
前記上部分は、その上下方向の幅が前記床上に増し打ちされる増し打ち部の想定厚みより広く形成され、
前記防火措置具配置工程の後に行う工程であって、前記スリーブ材の前記上部分を型枠にして前記床上に増し打ち部を増し打ちする増し打ち工程を行う請求項7に記載の防火措置工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に設置可能な樹脂製で筒状のスリーブ材を備えた防火措置具、又は、防火措置構造、又は、防火措置工法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、床(床スラブY)に形成された貫通孔(H)に設置する防火措置具が示されている。この特許文献1の防火措置具は、貫通孔に設置された長尺体(挿通体P)の周囲に形成される隙間(S)に設置される耐熱部材(1)及び耐熱パテ剤(2)と、これら耐熱部材及び耐熱パテ剤を支持する受け部材(4)とを備えており、貫通孔の周縁部に引っ掛ける状態で受け部材を貫通孔に設置し、隙間の形状に合わせた耐熱部材及び耐熱パテ剤を受け部材上に設置することで、下階で生じた火災の火炎や熱が隙間を通じて上階に漏洩することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-243552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の防火措置具では、受け部材を貫通孔に設置した上で、長尺体の周囲に形成される隙間を閉塞するように、耐熱部材と充てん材(耐熱性を持つものも含む)とを設置しなければならず、その設置作業が煩雑で複雑な作業となり、防火措置を講じるのに手間と時間がかかる問題があった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に対して簡単且つ短時間で適切に防火措置を講じることのできる施工性に優れた防火措置具、防火措置構造、防火措置工法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に設置可能な樹脂製で筒状のスリーブ材と、
前記スリーブ材に挿通される前記長尺体の前記スリーブ材よりも上方側の部分と前記スリーブ材とに亘る状態で前記長尺体を囲繞可能な可撓性及び不燃性を有するシート材とを備え、
前記スリーブ材は、その内面にスリーブ用熱膨張性耐火材を備え、
前記シート材は、その内面にシート用熱膨張性耐火材を備えている点にある。
【0007】
本構成によれば、貫通孔に設置されたスリーブ材とこのスリーブ材と長尺体とに亘る状態で長尺体を囲繞するシート材とによって長尺体の周囲に形成される隙間を塞ぐことができる。そして、火災が発生した場合には、火災の熱によってスリーブ用熱膨張性耐火材やシート用熱膨張性耐火材が膨張することでスリーブ用熱膨張性耐火材やシート用熱膨張性耐火材によって長尺体の周囲に形成される隙間を適切に塞ぐことができる。
【0008】
本構成では、スリーブ材の内面とシート材の内面の上下両側に熱膨張性耐火材を備えているので、上下両側の二段階で床と長尺体との間の隙間を塞ぐ機能を発揮させることができ、好適な防火措置を講じることができる。しかも、本構成では、上述の如くスリーブ材の内面とシート材の内面の上下両側に熱膨張性耐火材を備えているので、仮に、火災時の火炎がスリーブの内部を通過してシート材の内部を通して上昇しようとしても、火災時の熱の上昇により上方側のシート材用熱膨張性耐火材が膨張して上方側を閉塞することでスリーブ材及びシート材の内部に熱だまりを生じさせ、その熱だまりによって下方側のスリーブ用熱膨張性耐火材が膨張し易い環境とすることができる。そのために、製造や設置性の面で優位な樹脂製のスリーブ材を用いても、そのスリーブ材が溶融する前にスリーブ用熱膨張性耐火材を早期に膨張させることができるメリットも考えられる。
【0009】
そして、本構成によれば、軽量な樹脂製のスリーブ材を床の貫通孔に設置するとともにスリーブ材と長尺体とに亘る状態でシート材にて長尺体を囲繞することで、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に対して長尺体の周囲を塞いだ状態で設置することができるので、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に対して簡単且つ短時間で適切に防火措置を講じることができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記スリーブ材は、上下方向の中間部に位置して前記床の上面に載置可能なフランジ部を備えると共に、前記フランジ部に対して上下方向の両側に亘る状態で前記スリーブ用熱膨張性耐火材を備えている点にある。
【0011】
スリーブ材が、貫通孔の上端部に設置した状態において床の上面よりも下方側の部分だけにスリーブ用熱膨張性耐火材を備えている場合には、火災時に火炎に晒されやすいスリーブ材の下方側の部分が先に溶融することでスリーブ用熱膨張性材が下階側に脱落する可能性も考えられる。本構成によれば、スリーブ材は、上下方向の中間部に位置して床の上面に載置されるフランジ部を挟んで上下方向の両側に亘る状態でスリーブ用熱膨張性耐火材を備えているので、その上下方向の中間部のフランジ部を床の上面に載置して貫通孔の上端部に設置した状態において、たとえスリーブ材の下方側の部分が溶融しても、溶融せずに残るスリーブ材の上方側の部分の内面に備えられるスリーブ用熱膨張性耐火材を膨張させて長尺体の周囲を閉塞することが可能となる。
また、仮に、スリーブ材が溶融しても、スリーブ用熱膨張性耐火材におけるフランジ部より上方側の部分の膨張具合によっては、そのスリーブ用熱膨張性耐火材自体が床の貫通孔等に引っ掛かり、下階側に脱落し難くなることも考えられる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記シート材は、前記シート材の内面において前記スリーブ材に取り付けられるスリーブ材側端部と前記長尺体に取り付けられる長尺体側端部との間の位置に前記シート用熱膨張性耐火材を備えている点にある。
【0013】
本構成によれば、シート材におけるスリーブ側端部と長尺体側端部との間の位置にシート用熱膨張性耐火材が備えられているので、スリーブ側端部のスリーブへの取り付けや長尺体側端部の長尺体への取り付けを行う際にシート用熱膨張性耐火材が邪魔になり難く、これらの取り付けを作業性良く適切に行うことができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記スリーブ材は、当該スリーブ材の周方向において複数のスリーブ部分に分割可能に構成されている点にある。
【0015】
本構成によれば、既に貫通孔に長尺体が挿通されている状態でも、分割させた複数のスリーブ部分を長尺体を囲うように結合させることで、スリーブ材に長尺体を挿通させることができる。よって、貫通孔に長尺体が挿通される前だけでなく、貫通孔に長尺体が挿通された後からでも、防火措置を講じることができる。
【0016】
本発明の第5特徴構成は、前記スリーブ材は、上下方向の中間部に位置して前記床の上面に載置されるフランジ部と、前記フランジ部の下方側に備えられて前記貫通孔内に設置される筒状の下部分と、前記フランジ部より上方側に備えられた筒状の上部分とが備えられ、
前記上部分は、その上下方向の幅が前記床上に増し打ちされる増し打ち部の想定厚みより広く形成されている点にある。
【0017】
長尺体が挿通される貫通孔が形成された床の上にモルタル等を増し打ちをする場合には、床の貫通孔の周縁部にボイド等の型枠材を別途に設置した状態で増し打ちすることで、床の貫通孔を塞ぐことなく増し打ち部を形成することが行われている。これに対し、本構成によれば、貫通孔の上端部にスリーブを設置した状態で増し打ちするだけで、スリーブ材の上部分が型枠となってモルタル等が床の貫通孔に侵入するのが防止されるので、ボイド等の型枠材を別途に設置することなく、簡単に増し打ち部を形成することができる。
【0018】
本発明の第6特徴構成は、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に防火措置具が設置され、
前記防火措置具は、
前記貫通孔に設置された樹脂製で筒状のスリーブ材と、
前記スリーブ材に挿通される前記長尺体の前記スリーブ材よりも上方側の部分と前記スリーブ材とに亘る状態で前記長尺体を囲繞する可撓性及び不燃性を有するシート材とを備え、
前記スリーブ材は、その内面にスリーブ用熱膨張性耐火材を備え、
前記シート材は、その内面にシート用熱膨張性耐火材を備えている点にある。
【0019】
本構成によれば、貫通孔に設置されたスリーブ材と長尺体とに亘る状態で長尺体を囲繞するシート材とによって長尺体の周囲に形成される隙間が塞がれている。そして、火災が発生した場合には、火災の熱によってスリーブ用熱膨張性耐火材やシート用熱膨張性耐火材が膨張することで耐火性を有する熱膨張性耐火材やシート用熱膨張性耐火材によって長尺体の周囲の隙間を適切に塞ぐことができる。
【0020】
本構成では、スリーブ材の内面とシート材の内面の上下両側に熱膨張性耐火材を備えているので、上下両側の二段階で床と長尺体との間の隙間を塞ぐ機能を発揮させることができ、好適な防火措置を講じることができる。しかも、本構成では、上述の如くスリーブ材の内面とシート材の内面の上下両側に熱膨張性耐火材を備えているので、仮に、火災時の火炎がスリーブの内部を通過してシート材の内部を通して上昇しようとしても、火災時の熱の上昇により上方側のシート材用熱膨張性耐火材が膨張して上方側を閉塞することでスリーブ材及びシート材の内部に熱だまりを生じさせ、その熱だまりによって下方側のスリーブ用熱膨張性耐火材が膨張し易い環境とすることができる。そのために、製造や設置性の面で優位な樹脂製のスリーブ材を用いても、そのスリーブ材が溶融する前にスリーブ用熱膨張性耐火材を早期に膨張させることができるメリットも考えられる。
【0021】
そして、本構成によれば、軽量な樹脂製のスリーブ材を床の貫通孔に設置するとともにスリーブ材と長尺体とに亘る状態でシート材にて長尺体を囲繞することで、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に対して長尺体の周囲を塞いだ状態で設置することができるので、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に対して簡単且つ短時間で適切に防火措置を講じることができる。
【0022】
本発明の第7特徴構成は、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に防火措置具を設置する防火措置工法であって、
前記防火措置具は、
前記貫通孔に設置可能な樹脂製で筒状のスリーブ材と、
前記スリーブ材に挿通される前記長尺体の前記スリーブ材よりも上方側の部分と前記スリーブ材とに亘る状態で前記長尺体を囲繞可能な可撓性及び不燃性を有するシート材とを備え、
前記スリーブ材は、その内面にスリーブ用熱膨張性耐火材を備え、
前記シート材は、その内面にシート用熱膨張性耐火材を備え、
前記貫通孔に前記スリーブ材を設置するとともに前記スリーブ材に前記シート材を取り付ける、又は、前記貫通孔に前記シート材のスリーブ材側端部が取り付けられた前記スリーブ材を設置する防火措置具配置工程と、
前記防火措置具配置工程の後に実行する工程であって、前記スリーブ材に挿通される前記長尺体の前記スリーブ材より上方側の部分に前記シート材を取り付ける長尺体側シート材取付工程と、を行う点にある。
【0023】
本構成によれば、防火措置具配置工程を実行してスリーブ材とシート材を貫通孔に設置し、長尺体側シート材取付工程を実行してシート材の長尺体側端部を長尺体に取り付けることで、防火措置具によって長尺体と床との間に形成される隙間を塞ぐことができる。火災が発生した場合には、火災の熱によってスリーブ用熱膨張性耐火材やシート用熱膨張性耐火材が膨張することで耐火性を有する熱膨張性耐火材やシート用熱膨張性耐火材によって長尺体の周囲に形成される隙間を適切に塞ぐことができる。
そして、本構成によれば、上述した防火措置具配置工程及び長尺体側シート材工程において、軽量な樹脂製のスリーブ材を床の貫通孔に設置するとともにスリーブ材と長尺体とに亘る状態でシート材にて長尺体を囲繞することで、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に対して長尺体の周囲を塞いだ状態で設置することができるので、床に形成されて長尺体が挿通される貫通孔に対して簡単且つ短時間で適切に防火措置を講じることができる。
【0024】
本発明の第8特徴構成は、前記スリーブ材は、上下方向の中間部に位置して前記床の上面に載置されるフランジ部と、前記フランジ部の下方側に備えられて前記貫通孔内に設置される筒状の下部分と、前記フランジ部より上方側に備えられた筒状の上部分とが備えられ、
前記上部分は、その上下方向の幅が前記床上に増し打ちされる増し打ち部の想定厚みより広く形成され、
前記防火措置具配置工程の後に行う工程であって、前記スリーブ材の前記上部分を型枠にして前記床上に増し打ち部を増し打ちする増し打ち工程を行う点にある。
【0025】
スリーブ材が設置された床に対して増し打ち部を形成するに当たり、ボイド等の型枠材を別途設置した状態で増し打ち部を増し打ちすることで増し打ち部に長尺体を挿通させるための孔を形成することが考えられる。しかしながら、本構成によれば、防火措置配置工程を行うことで、貫通孔の上端部にスリーブ材を設置することができるので、その防火措置配置工程の後に増し打ち工程を行って増し打ち部を増し打ちすることで、ボイド等の型枠材を別途設置することなく、スリーブ材の上部分を型枠として利用しながら、増し打ち部に長尺体を挿通させるための孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】防火措置構造の斜視図
図2】防火措置具のスリーブ材の斜視図
図3】スリーブ材を分解させた状態を示す斜視図
図4】防火措置具のシート材の斜視図
図5】貫通孔にスリーブ材を設置した状態を示す側面図
図6】スリーブ材にシート材を取り付ける作業途中の状態を示す斜視図
図7】床上に増し打ち部を増し打ちした状態を示す側面図
図8】防火措置工法のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る防火措置具、及び、防火措置構造、及び、防火措置工法の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1に示すように、防火措置構造1は、床2に形成されて長尺体3が挿通される貫通孔4に防火措置具5が設置されている。防火措置具5は、貫通孔4に設置された樹脂製で筒状のスリーブ材8と、スリーブ材8に挿通される長尺体3のスリーブ材8より上方側Z1の部分とスリーブ材8とに亘る状態で長尺体3を囲繞する可撓性及び不燃性を有するシート材9とを備えている。
【0029】
図1及び図2に示すように、スリーブ材8は、その内面にスリーブ用熱膨張性耐火材11を備えている。
図1及び図4に示すように、シート材9は、スリーブ材側端部12と長尺体側端部13とを備えて、スリーブ材側端部12がスリーブ材8に取り付けられ、且つ、長尺体側端部13が長尺体3に取り付けられている。また、シート材9は、その内面にシート用熱膨張性耐火材14を備えている。
【0030】
図1に示すように、床2は、例えば鉄筋コンクリート造の床スラブ等から構成されている。そして、床2に形成されている貫通孔4の上端部に対して防火措置具5が設置されている。また、床2上に、モルタル等で構成されている増し打ち部15が増し打ちされている。床2に形成されている貫通孔4は、床2を上下方向Zに貫通する円形状の孔によって形成されており、増し打ち部15には、貫通孔4と同様に上下方向Zに貫通する円形状の増し打ち孔16が形成されている。
床2の貫通孔4に挿通される長尺体3としては、給排水用又は空調装置用等の各種の配管や電気ケーブル等の各種の配線を例示することができる。
【0031】
貫通孔4に設置されたスリーブ材8とこのスリーブ材8及び長尺体3に取り付けられたシート材9とによって長尺体3の周囲に形成される隙間が塞がれているため、下階で生じた火災の火炎や熱が上階に漏洩することが防止されている。
そして、下階で火災が発生した場合には、その火災の熱によって耐火性を有するスリーブ用熱膨張性耐火材11及びシート用熱膨張性耐火材14が膨張することで、下階で生じた火災の火炎や熱が上階に漏洩することをより適切に防止される。
【0032】
次に、防火措置具5について説明を加える。
図1に示すように、防火措置具5のスリーブ材8は、床2に形成される貫通孔4に設置可能な樹脂製で筒状に構成されている。説明を加えると、図2及び図3に示すように、スリーブ材8は、ポリプロピレン等の樹脂材によって貫通孔4の内面に沿った円筒状に形成されており、貫通孔4に対して上方側Z1から嵌合することで貫通孔4の上端部に設置できるように構成されている。なお、スリーブ材8を形成する樹脂材としては、ポリプロピレンに限らず、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等の各種の樹脂材を用いることができる。
【0033】
スリーブ材8には、上下方向Zの中間部に位置して床2の上面に載置されるフランジ部8Aと、フランジ部8Aの下方側Z2に備えられて貫通孔4内に設置される筒状の下部分であるスリーブ材下部分8Bと、フランジ部8Aより上方側Z1に備えられた筒状の上部分であるスリーブ材上部分8Cとが備えられている。
【0034】
フランジ部8Aは、貫通孔4の内径より大径の円環形状に形成されており、貫通孔4の周縁部7の全周囲に亘って載置可能に構成されている。また、フランジ部8Aには、切り取り可能な切り取り部18が備えられており、フランジ部8Aの本体部と切り取り部18との境界部17は、フランジ部8Aの他の部分より薄く形成されており、カッター等によって切断し易くなっている。そして、境界部17を切断して切り取り部18を切り取ることで、フランジ部8Aの幅を小さくすることができるため、複数の防火措置具5を比較的狭い間隔で並べた場合でも隣接する防火措置具5のフランジ部8A同士が干渉し難くなり、また、防火措置具5を壁近傍に設置した場合でもフランジ部8Aが壁に干渉し難くなる。尚、切り取り部18は、フランジ部8Aにおける軸心に対して対称となる2か所に備えられている。
【0035】
スリーブ材下部分8Bは、外径が貫通孔4の内径より僅かに小さい円筒状に形成されている。スリーブ材下部分8Bの外面には、その外面から径方向の外側に突出する抜け止め突起19が備えられている。抜け止め突起19は、スリーブ材下部分8Bの外面における上下方向Zの中間箇所に周方向に沿って複数備えられている。そのため、図5に示すように、床2の貫通孔4に対してスリーブ材下部分8Bを嵌合させたときに、抜け止め突起19は撓み変形しながら貫通孔4内に入り込み、その撓み変形した抜け止め突起19の先端が貫通孔4の内面に弾性的に食い込み気味に接触することで、スリーブ材8の抜け出しが抑制される構成となっている。
【0036】
図2及び図3に示すように、スリーブ材上部分8Cは、外径がスリーブ材下部分8Bと同じ大きさの円筒状に形成されている。スリーブ材上部分8Cには、シート材9が取り付けられる被取付部20が備えられている。被取付部20は、シート材9に形成された取付用孔27(図4参照)に挿通可能な突起状に形成されており、図1及び図6に示すように、シート材9の取付用孔27に被取付部20を挿通させた状態でその被取付部20に抜け止め用のワッシャー部材21を嵌合させることで、シート材9をスリーブ材8に取り付けるように構成されている。尚、被取付部20は、スリーブ材上部分8Cにおける軸心に対して対称となる2か所に備えられている。
【0037】
図2及び図3に示すように、ワッシャー部材21は、脆弱部22を介してスリーブ材上部分8Cの本体部に分離可能に一体形成されており、脆弱部22で分離させることで、図6に示すように被取付部20に嵌合させることができるように構成されている。尚、ワッシャー部材21は、スリーブ材上部分8Cに被取付部20と同数(2個)備えられている。また、ワッシャー部材21と内径が同じものであれば、ワッシャー部材21に代えて市販されている金属製のワッシャーを用いることができる。
【0038】
また、スリーブ材上部分8Cは、その上下方向Zの幅が床2上に増し打ちされる増し打ち部15の想定厚みより広く(例えば、想定厚み40mmに対して上下方向Zの幅が50mm)形成されている。そのため、床2の貫通孔4にスリーブ材8を設置した状態で、図1及び図7に示すように、床2上に増し打ち部15を増し打ちすることで、スリーブ材上部分8Cによって貫通孔4と連通する増し打ち孔16を有する増し打ち部15を形成することができる。
【0039】
図1及び図2に示すように、スリーブ材8は、貫通孔4の上端部に設置した状態において、床2の上面に対して上下方向Zの両側に亘る状態でスリーブ用熱膨張性耐火材11を備えている。
スリーブ用熱膨張性耐火材11は、床2の上面に対して上方側Z1に位置する部分が、床2の上面に対して下方側Z2に位置する部分よりも上下方向Zの幅が広くなるように、スリーブ材8の内面に備えられている保持部10によって保持されていると共に、スリーブ材8の内面にスリーブ材8の周方向の全周に亘って備えられている。また、スリーブ用熱膨張性耐火材11は、上下方向Zにおいてスリーブ材下部分8Bの中央部からスリーブ材上部分8Cの中央部まで存在している。よって、フランジ部8Aを挟んで上下方向Zの両側に亘る状態で備えられており、床2の貫通孔4にスリーブ材8を設置した状態では、スリーブ用熱膨張性耐火材11は床2の上面に対して上下方向Zの両側に亘る状態で存在する。
【0040】
図3に示すように、スリーブ材8は、当該スリーブ材8の周方向において複数のスリーブ部分23に分割可能に構成されている。
本実施形態では、スリーブ材8は2つのスリーブ部分23に分割可能に構成されている。2つのスリーブ部分23は同一形状であり、これら同一形状のスリーブ部分23を向かい合わせた状態で結合することで円筒状のスリーブ材8が形成されるように構成されている。
スリーブ部分23の周方向の端部には、接続部24又は被接続部25が備えられている。接続部24は、嵌合孔24Aと、被案内部24Bとを備え、被接続部25は、嵌合孔24Aに対して径方向内側から嵌合する突出部25Aと、被案内部24Bが径方向内側から当接する案内部25Bと、上下方向Zにおける案内部25Bを除くスリーブ部分23の略全幅に備えられて接続部24と径方向に重なる重複部分25Cとを備えている。スリーブ材8は、スリーブ部分23を向かい合わせた状態で結合させる際に一方のスリーブ部分23の被案内部24Bがもう一方のスリーブ部分23の案内部25Bに案内されることで、スリーブ部分23同士の結合を容易に行えるようになっており、スリーブ部分23同士を結合させた状態では、一方のスリーブ部分23の嵌合孔24Aともう一方のスリーブ部分23の突出部25Aとの嵌合することで、図2に示すように、2つのスリーブ部分23に結合させた状態で保持するように構成されている。
そして、被案内部24Bと案内部25Bとに加えて、スリーブ部分23の重複部分25Cが別のスリーブ部分23の接続部24と重複しているため、スリーブ部分23同士の結合部分が適切に閉塞されてスリーブ材8の内側に水等が侵入することが防止されている。
【0041】
図1に示すように、防火措置具5のシート材9は、長尺体3のスリーブ材8よりも上方側Z1の部分を囲繞可能な可撓性及び耐火性を有している。
また、図1及び図4に示すように、シート材9は、上下方向Zを短辺とし、左右方向を長辺とする矩形状に形成されている。そして、シート材9は、スリーブ材8に取り付けられる下方側Z2のスリーブ材側端部12と、長尺体3に取り付けられる上方側Z1の長尺体側端部13とを備えており、これらスリーブ材側端部12と長尺体側端部13とは上下方向Zに間隔を空けた状態で備えられている。シート材9の内面に備えているシート用熱膨張性耐火材14は、スリーブ材側端部12と長尺体側端部13との間の位置で、長尺体側端部13に近接する位置に備えられている。
そのため、スリーブ材側端部12をスリーブ材8に取り付けた状態において、上下方向Zにおいてスリーブ材8が存在している範囲にはシート用熱膨張性耐火材14は備えられておらず、シート材9とスリーブ材8との間にシート用熱膨張性耐火材14が挟まらない状態でシート材9をスリーブ材8に取り付けることができる。また、上下方向Zにおいてシート材9におけるシート用熱膨張性耐火材14が備えられている位置よりも上方側Z1の部分を、緊締材28によって長尺体3に取り付けることで、シート材9と長尺体3との間にシート用熱膨張性耐火材14が挟まらない状態でシート材9を長尺体3に取り付けることができる。
【0042】
シート材9は、アルミグラスクロス等の可撓性があり且つ不燃性を有するシート状の部材によって構成されている。シート材9は、その左右方向の幅(長さ)がスリーブ材8におけるシート材9を巻き付ける部分であるスリーブ材上部分8Cの外周の長さより長い形状に形成されている。そのため、シート材9のスリーブ材側端部12をスリーブ材上部分8Cに巻き付けて囲繞させることができるように構成されている。
そして、シート材9は、スリーブ材上部分8Cに巻き付けた状態でスリーブ材上部分8Cの被取付部20に対応する位置に取付用孔27が形成されており、図6に示すように、左右方向の一端部と他端部が重合した状態でシート材9のスリーブ材側端部12をスリーブ材上部分8Cに巻き付けて囲繞させると共に、スリーブ材側端部12の取付用孔27にスリーブ材上部分8Cの被取付部20を挿通させ、この状態で被取付部20にワッシャー部材21を嵌合させることで、図1に示すように、シート材9をスリーブ材上部分8Cに囲繞させた状態でスリーブ材上部分8Cに取り付けられるようになっている。
【0043】
また、長尺体3の外径はスリーブ材8の内径より小さいため、スリーブ材8の外周面に囲繞可能なシート材9は、その長尺体側端部13を長尺体3に囲繞させることができるようになっている。
そして、図1に示すように、このようにシート材9の長尺体側端部13を長尺体3に囲繞させた状態で結束バンド等の緊締材28によって緊締することで、シート材9を長尺体3に囲繞させた状態で長尺体3に取り付けられるようになっている。
【0044】
防火措置工法について説明する。
図8の防火措置工法のフローチャートに示すように、防火措置工法では、貫通孔4にスリーブ材8を上方側Z1から設置するスリーブ材設置工程S1と、スリーブ材8にシート材9のスリーブ材側端部12を取り付ける第1シート材取付工程S2と、スリーブ材設置工程S1及び第1シート材取付工程S2の後に実行する工程であって、長尺体3のスリーブ材8より上方側Z1の部分にシート材9の長尺体側端部13を取り付ける第2シート材取付工程S4と、を行う。
また、防火措置工法では、スリーブ材設置工程S1及び第1シート材取付工程S2の後に行う工程であって、スリーブ材8のスリーブ材上部分8Cを型枠にして床2上に増し打ち部15を増し打ちする増し打ち工程S3を行う。
尚、スリーブ材設置工程S1及び第1シート材取付工程S2が、貫通孔4にスリーブ材8を設置するとともにスリーブ材8にシート材9のスリーブ材側端部12を取り付ける防火措置具配置工程に相当する。また、第2シート材取付工程S4が、防火措置具配置工程の後に実行する工程であって、スリーブ材8に挿通される長尺体3のスリーブ材8より上方側Z1の部分にシート材9の長尺体側端部13を取り付ける長尺体側シート材取付工程に相当する。
【0045】
本実施形態では、防火措置工法において、スリーブ材設置工程S1、第1シート材取付工程S2、増し打ち工程S3、第2シート材取付工程S4の順に行う。
つまり、まず、スリーブ材設置工程S1を行って、図5に示すように床2に形成されている貫通孔4にスリーブ材8を設置した後、第1シート材取付工程S2を行って、図6に示すように貫通孔4に設置されているスリーブ材8にシート材9を取り付ける。そして、このように貫通孔4に防火措置具5が設置された状態で、増し打ち工程S3を行って、図7に示すように増し打ち部15を増し打ちした後に貫通孔4及び増し打ち孔16に長尺体3を挿通させ、その後、第2シート材取付工程S4を行って、図1に示すようにシート材9を長尺体3に取り付ける。
【0046】
なお、防火措置具5の製作工場等で予めシート材9をスリーブ材8に取り付けておいたり、スリーブ材設置工程S1の前に第1シート材取付工程S2を行って予めシート材9をスリーブ材8に取り付けておき、スリーブ材設置工程S1においてシート材9が取り付けられたスリーブ材8を貫通孔4に設置するようにしてもよい。
また、スリーブ材設置工程S1の前に貫通孔4に長尺体3を挿通させている場合は、スリーブ材設置工程S1において、図3に示すように、分割させた2つのスリーブ部分23を長尺体3を囲うように結合させた後にスリーブ材8を貫通孔4に設置してもよい。
また、増し打ち工程S3は、第1シート材取付工程S2と第2シート材取付工程S4との間ではなく、第2シート材取付工程S4を行った後に行ってもよい。
【0047】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0048】
(1)上記実施形態では、既に形成されている床2の貫通孔4に防火措置具5を設置する構成を例として説明した。しかし、例えば、マンション等で各種メーター類を収納するメーターボックスの床用等のプレキャストコンクリート製床材を製作工場等で製作する際に防火措置具5を設置するようにしてもよい。この場合、プレキャストコンクリート用ベッド内(型枠内)にコンクリートを打設する前に防火措置具5を貫通孔形成箇所に設置しておくことで、防火措置具5を貫通孔4用の型枠として利用してプレキャストコンクリート製床材に貫通孔4を形成しながら貫通孔4に防火措置具5を設置することができる。
【0049】
具体的には、例えば、プレキャストコンクリート用ベッド内の貫通孔形成箇所に円柱状の鋼製スリーブを立設するとともに、その鋼製スリーブの上に防火措置具5を設置する。この際、スリーブ材8にはシート材9を取り付け、そのシート材9をスリーブ材8の内側に折り込んで収納した状態で、スリーブ材8の上方側Z1の開口を蓋体で閉じておく。そして、その蓋体と鋼製スリーブの上部や蓋部分とを例えば全ネジボルト等の固定具で固定した状態でプレキャストコンクリート用ベッド内にコンクリートを打設し、コンクリートの養生後に鋼製スリーブと蓋体と固定具を取り除く。このようにして、防火措置具5によってプレキャストコンクリート製床材に貫通孔4(詳しくは、貫通孔4の上側部分)を形成するとともにその貫通孔4に防火措置具5を設置する。なお、スリーブ材8の内側に折り込んで収納したシート材9は、例えば施工現場にてプレキャストコンクリート製床材を設置し、長尺体3を挿通する前にスリーブ材8から引き出すことができる。
【0050】
(2)上記実施形態では、スリーブ材8が床2の上面に対して上下方向Zの両側に亘る状態でスリーブ用熱膨張性耐火材11を備える構成を例として説明した。しかし、スリーブ材8における床2の上面より下方側Z2にのみスリーブ用熱膨張性耐火材11を備える等、スリーブ材8におけるスリーブ用熱膨張性耐火材11を備える位置は適宜変更してもよい。
【0051】
(3)上記実施形態では、シート材9が、スリーブ材側端部12と長尺体側端部13との間の位置にシート用熱膨張性耐火材14を備える構成を例として説明した。しかし、シート材9が、長尺体側端部13の内側にシート用熱膨張性耐火材14を備える等、シート材9がシート用熱膨張性耐火材14を備える位置は適宜変更してもよい。
【0052】
(4)上記実施形態では、スリーブ材8を複数のスリーブ部分23に分割可能に構成する例を説明したが、例えば、スリーブ材8を、2つのスリーブ部分23の一端部を上下方向Zに沿う軸心周りに揺動可能に連結した構成とする、又は、スリーブ材8を1つの部材で構成する等、スリーブ材8を分割できない構成としてもよい。
【0053】
(5)上記実施形態では、増し打ち工程S3の後に貫通孔4に長尺体3を挿通させたが、増し打ち工程S3を行わない場合は、第1シート材取付工程S2を行う後で且つ第2シート材取付工程S4を行う間に、床2の貫通孔4に長尺体3を挿通させてもよい。また、増し打ち工程S3を行うか否かに関わらず、スリーブ材設置工程S1を行う前に、床2の貫通孔4に長尺体3を挿通させてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 防火措置構造
2 床
3 長尺体
4 貫通孔
5 防火措置具
8 スリーブ材
8A フランジ部
8B スリーブ材下部分(下部分)
8C スリーブ材上部分(上部分)
9 シート材
11 スリーブ用熱膨張性耐火材
12 スリーブ材側端部
13 長尺体側端部
14 シート用熱膨張性耐火材
23 スリーブ部分
Z 上下方向
Z1 上方側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8