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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020720
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】スクリーン
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/60 20140101AFI20250205BHJP
   G02B 5/124 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
G03B21/60
G02B5/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124258
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若生 一広
(72)【発明者】
【氏名】三橋 蓮
【テーマコード(参考)】
2H021
2H042
【Fターム(参考)】
2H021BA02
2H042EA03
2H042EA05
2H042EA20
(57)【要約】
【課題】光利用効率を向上させることができるスクリーンを得ること。
【解決手段】微小光学系1を備えるスクリーンであり、微小光学系1は、第1~第6の面を有し、第1の面Sは第2の面Sおよび第3の面Sと交差し、第2の面は第1の面および第3の面と交差し、第3の面は第1の面および第2の面と交差し、第4の面は第1の面と第2の面とが交差する第1の辺と交差するとともに第1の面および第2の面に交差し、第5の面は第1の面と第3の面とが交差する第2の辺と交差するとともに第1の面および第3の面に交差し、第6の面は第2の面と第3の面とが交差する第3の辺と交差するとともに第2の面および第3の面に交差し、第1の辺の端点から第4の面までの長さは第1の辺の長さの半分より短く、第2の辺の端点から第5の面までの長さは第2の辺の長さの半分より短く、第3の辺の端点から第3の面までの長さは第3の辺の長さの半分より短い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタから自身の表面に入射される光を反射させて出射するスクリーンであって、
複数の微小光学系を備え、
前記複数の微小光学系のうちの少なくとも1つの前記微小光学系は、
第1の面、第2の面、第3の面、第4の面、第5の面および第6の面を有し、
前記第1の面は、前記第2の面および前記第3の面と交差し、前記第2の面は前記第1の面および前記第3の面と交差し、前記第3の面は前記第1の面および前記第2の面と交差し、
前記第4の面は、前記第1の面と前記第2の面とが交差する辺である第1の辺と交差するとともに前記第1の面および前記第2の面に交差し、前記第5の面は、前記第1の面と前記第3の面とが交差する辺である第2の辺と交差するとともに前記第1の面および前記第3の面に交差し、前記第6の面は、前記第2の面と前記第3の面とが交差する辺である第3の辺と交差するとともに前記第2の面および前記第3の面に交差し、
前記第1の辺の2つの端点のうち前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面が交差する交点の反対側となる端点と、前記第1の辺と前記第4の面とが交差する点との間の前記第1の辺に沿った長さは、前記第1の辺の長さの半分より短く、
前記第2の辺の2つの端点のうち前記交点の反対側となる端点と、前記第2の辺と前記第5の面とが交差する点との間の前記第2の辺に沿った長さは、前記第2の辺の長さの半分より短く、
前記第3の辺の2つの端点のうち前記交点の反対側となる端点と、前記第3の辺と前記第3の面とが交差する点との間の前記第3の辺に沿った長さは、前記第3の辺の長さの半分より短い、
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記第1の面、前記第2の面、前記第3の面、前記第4の面、前記第5の面および前記第6の面は平面であり、
前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面は、互いに直交し、
前記第4の面、前記第1の面および前記第2の面は、互いに直交し、
前記第5の面、前記第1の面および前記第3の面は、互いに直交し、
前記第6の面、前記第2の面および前記第3の面は、互いに直交する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面のうち少なくとも1つは、曲面であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【請求項4】
前記第4の面、前記第5の面および前記第6の面のうち少なくとも1つは曲面であることを特徴とする請求項3に記載のスクリーン。
【請求項5】
前記第3の面および前記第4の面は曲面であり、前記第4の面の曲面率は、前記第3の面の曲面率と異なることを特徴とする請求項4に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面のうち少なくとも1つは、前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面のうち自身を除く2つの面の交差する辺に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1、3、4、5のいずれか1つに記載のスクリーン。
【請求項7】
前記第4の面は、前記第1の辺に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする請求項6に記載のスクリーン。
【請求項8】
前記第3の面は、前記第1の辺に直交する面に対して傾斜し、前記第4の面の傾斜角と前記第3の面の傾斜角とは異なることを特徴とする請求項6に記載のスクリーン。
【請求項9】
前記第5の面は、前記第2の辺に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする請求項7に記載のスクリーン。
【請求項10】
前記第6の面は、前記第3の辺に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする請求項9に記載のスクリーン。
【請求項11】
前記複数の微小光学系は、隣接する2つでユニットを構成し、
前記ユニットを構成する2つの前記微小光学系は、前記第3の面が互いに向き合うように隣接し、
前記ユニットを構成する2つの前記微小光学系の前記第3の面は、前記第1の辺に直交する面に対して互いに異なる傾斜角で傾斜していることを特徴とする請求項6に記載のスクリーン。
【請求項12】
車両内のピラーに設けられることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタにより映像または画像が投影されるスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタにより映像をスクリーンに投影するシステムにおいて、入射された光を再帰反射するスクリーンが用いられる場合がある。入射された光を再帰反射するスクリーンを用いることで、コントラスト比の向上を図ることができる。例えば、特許文献1には、コーナーキューブリフレクタ(CCR:Corner Cube Reflector)がアレイ状に配置されたスクリーンが開示されている。CCRに入射した光は、直交する3つの面で反射することで、投影機の方向に出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-28502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CCRでは、3方の端部のエリアにおいて、入射する光は2面でしか反射しない。このため、端部のエリアに入射した光は所望の方向へ出射しないことになり、十分な光利用効率が得られない場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光利用効率を向上させることが可能なスクリーンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、プロジェクタから自身の表面に入射される光を反射させて出射するスクリーンであって、複数の微小光学系を備え、前記複数の微小光学系のうちの少なくとも1つの前記微小光学系は、第1の面、第2の面、第3の面、第4の面、第5の面および第6の面を有し、前記第1の面は、前記第2の面および前記第3の面と交差し、前記第2の面は前記第1の面および前記第3の面と交差し、前記第3の面は前記第1の面および前記第2の面と交差し、前記第4の面は、前記第1の面と前記第2の面とが交差する辺である第1の辺と交差するとともに前記第1の面および前記第2の面に交差し、前記第5の面は、前記第1の面と前記第3の面とが交差する辺である第2の辺と交差するとともに前記第1の面および前記第3の面に交差し、前記第6の面は、前記第2の面と前記第3の面とが交差する辺である第3の辺と交差するとともに前記第2の面および前記第3の面に交差し、前記第1の辺の2つの端点のうち前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面が交差する交点の反対側となる端点と、前記第1の辺と前記第4の面とが交差する点との間の前記第1の辺に沿った長さは、前記第1の辺の長さの半分より短く、前記第2の辺の2つの端点のうち前記交点の反対側となる端点と、前記第2の辺と前記第5の面とが交差する点との間の前記第2の辺に沿った長さは、前記第2の辺の長さの半分より短く、前記第3の辺の2つの端点のうち前記交点の反対側となる端点と、前記第3の辺と前記第3の面とが交差する点との間の前記第3の辺に沿った長さは、前記第3の辺の長さの半分より短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光利用効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明にかかる実施例1のスクリーンを構成する微小光学系の構成例を示す図である。
図2図2は、実施例1の微小光学系の原理を説明するための図である。
図3図3は、微小光学系の配列の一例を示す図である。
図4図4は、実施例1のシミュレーション結果を示す図である。
図5図5は、実施例1のシミュレーション結果を示す図である。
図6図6は、実施例2の微小光学系における各面を説明するための図である。
図7図7は、実施例2の微小光学系における曲面率を示す最大傾斜角を説明するための図である。
図8図8は、実施例2のシミュレーション結果を示す図である。
図9図9は、実施例2のシミュレーション結果を示す図である。
図10図10は、実施例3にかかるプロジェクションシステムを横方向すなわち水平方向からみた図である。
図11図11は、車両のピラーを示す図である。
図12図12は、ピラーを車両内からみた図である。
図13図13は、実施例3の傾斜角の定義を示す図である。
図14図14は、実施例3のシミュレーション結果を示す図である。
図15図15は、第2の微小光学系の傾斜角を変えた実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
図16図16は、第2の微小光学系の曲面率を変えた実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
図17図17は、実施例5のシミュレーションの条件を示す図である。
図18図18は、実施例5のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例0010】
図1は、本発明にかかる実施例1のスクリーンを構成する微小光学系の構成例を示す図である。本実施例のスクリーンは、図1に示す微小光学系1を1つの単位とし、これを複数配列することによりスクリーンを構成する。本実施例のスクリーンは、例えば、プロジェクタから自身の表面に入射される光を反射させて出射するスクリーンである。微小光学系1の表面には薄い金属膜などの高反射材を付着させるなどして光を反射する機能をもたせる。
【0011】
図1に示すように、本実施例の微小光学系1は、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sを備える。第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sは、互いに直交し、3つの面で構成される一般的なCCRと同等であり、このCCRを第1の微小光学系とも呼ぶ。本実施例の微小光学系1は、第1の微小光学系の3方の端部に、第1の微小光学系より小さな3つの第2の微小光学系11,12,13がそれぞれ設けられている。第2の微小光学系11,12,13も直交する3つの面で構成され、CCRと同等である。本実施例では、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sは例えば平面であり、第2の微小光学系11,12,13を構成する面も例えば平面である。第2の微小光学系11,12,13を個別に区別せずに示すときには、第2の微小光学系と呼ぶ。
【0012】
第2の微小光学系11の紙面に向かって左側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって左側の面である第1の面Sの一部であり、第2の微小光学系11の紙面に向かって右側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって右側の面である第2の面Sの一部である。すなわち、第2の微小光学系11は、第1の面Sの一部と、第2の面Sの一部と、境界面Bとを有する。第2の微小光学系12の紙面に向かって左側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって左側の面である第1の面Sの一部であり、第2の微小光学系12の底面は、第1の微小光学系の底面である第3の面Sの一部である。すなわち、第2の微小光学系12は、第1の面Sの一部と、第3の面Sの一部と、境界面Bとを有する。第2の微小光学系13の紙面に向かって右側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって右側の面である第2の面Sの一部であり、第2の微小光学系13の底面は、第1の微小光学系の底面である第3の面Sの一部である。すなわち、第2の微小光学系13は、第2の面Sの一部と、第3の面Sの一部と、境界面Bとを有する。境界面B,B,Bは、第2の微小光学系を構成する3つの面のうち、第1の微小光学系を構成する第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sと共通しない面であり、微小光学系1を正面からみた正面図における中心側に位置する面である。以下、境界面B,B,Bを個別に区別せずに示すときには、境界面と呼ぶ。
【0013】
このように、本実施例の微小光学系1は、境界面B,B,Bをそれぞれ第4の面、第5の面および第6の面とすると、第1の面S、第2の面S、第3の面S、第4の面、第5の面および第6の面を有し、第1の面Sは、第2の面Sおよび第3の面Sと交差し、第2の面Sは第1の面Sおよび第3の面Sと交差し、第3の面Sは第1の面Sおよび第2の面Sと交差する。また、第4の面(境界面B)は、第1の面Sと第2の面Sとが交差する辺である第1の辺と交差するとともに第1の面Sおよび第2の面Sに交差し、第5の面(境界面B)は、第1の面Sと第3の面Sとが交差する辺である第2の辺と交差するとともに第1の面Sおよび第3の面Sの面に交差し、第6の面(境界面B)は、第2の面Sと第3の面Sとが交差する辺である第3の辺と交差するとともに第2の面Sおよび第3の面Sに交差する。
【0014】
また、第1の辺の2つの端点のうち第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sが交差する交点の反対側となる端点と、第1の辺と第4の面とが交差する点との間の第1の辺に沿った長さである第1の長さは、第1の辺の長さの半分より短い。第2の辺の2つの端点のうち交点の反対側となる端点と、第2の辺と第5の面とが交差する点との間の第2の辺に沿った長さである第2の長さは、第2の辺の長さの半分より短い。第3の辺の2つの端点のうち交点の反対側となる端点と、第3の辺と前記第3の面とが交差する点との間の第3の辺に沿った長さである第3の長さは、第3の辺の長さの半分より短い。なお、図1では、第2の微小光学系11,12,13の大きさが同一である例を示しているが、第2の微小光学系11,12,13のうちの少なくとも1つの大きさが、他の第2の微小光学系11,12,13の大きさと異なっていてもよい。すなわち、第1の辺の長さに対する第1の長さの比と、第2の辺の長さに対する第2の長さの比と、第3の辺の長さに対する第3の長さの比とは、同一でなくてもよい。
【0015】
本実施例では、図1に示すように、微小光学系1が第2の微小光学系11,12,13を有することで、光利用効率を向上させることができる。図2は、本実施例の微小光学系1の原理を説明するための図である。図2に示したCCR200は、通常の直交する3つの面を有するCCRである。CCR200は、エリア201では、入射した光が直交する3つの面で反射するが、エリア202では入射した光が2つの面でしか反射しないため、エリア202に入射した光は所望の方向に出射せず利用できないことになる。このため、エリア202は不要なエリアであり、本実施例では、図2に示すように、エリア202の代わりに第2の微小光学系11,12,13を設けることで、第2の微小光学系11,12,13に入射した光を所望の光へ出射させることができる。光線追跡のシミュレーション結果等に基づく経験則によれば、CCR200に正面から光を入射させた場合に、2/3程度の光が所望の方向に出射するため利用できることになり、1/3程度の光が利用できない。すなわち、CCR200を構成する3つの面の合計の面積のうち、1/3程度の面積に相当する部分で反射する光を利用することができない。なお、第2の微小光学系11,12,13においても、それぞれの3方の端部には入射した光を利用できないエリアが発生するが、図2に示したCCR200のエリア202よりは狭いエリアとなる。したがって、第2の微小光学系11,12,13を設けることで、図2に示した通常のCCR200に比べて光利用効率を向上させることができる。
【0016】
なお、第2の微小光学系11,12,13のサイズは、エリア202に相当するサイズであることが好ましいが、それより小さくても大きくてもよい。大きすぎる場合には、第2の微小光学系11,12,13が元の第1の微小光学系に近づいてしまい光利用効率を向上させる効果が薄れると考えられるため、上述したように、例えば、第1の長さが第1の辺の長さの半分より短く、第2の長さが第2の辺の長さの半分より短く、第3の長さが第3の辺の長さの半分より短い範囲としている。第1の長さ、第2の長さ、第3の長さが、それぞれ第1の辺の長さ、第2の辺の長さ、第3の辺の長さの半分程度までであれば、第2の微小光学系11,12,13を設けない場合に比べて光利用効率が向上すると想定される。
【0017】
本実施例の微小光学系1を複数配列することで本実施例のスクリーンが構成される。なお、スクリーンを構成する複数の微小光学系1のうちの少なくとも1つが本実施例の微小光学系1であればよい。図3は、微小光学系1の配列の一例を示す図である。図3(a)に示すように、例えば、上下の向きを逆にした1組の微小光学系1を、正面からみた形状がひし形となるように配置する。この1組の微小光学系1をユニット2とし、図3(b)に示すように、複数のユニット2を配列することでスクリーンを構成する。図3(b)に示した例では上下の端部に微小光学系1が配置されることで端部を直線状にしており、このようにユニット2と微小光学系1とを組み合わせて配置してもよい。図3(b)は、スクリーンの一部を示しており、スクリーンの大きさに応じた数のユニット2が配列される。図3に示した例では、スクリーンを構成する複数の微小光学系1の形状は全て同一としている。図3は、微小光学系1の配置の一例であり、微小光学系1の配置方法は図3に示した例に限定されない。
【0018】
次に、本実施例の微小光学系1を用いたシミュレーション結果について説明する。ここでは、図2に示した通常のCCR200を比較例とし、比較例のCCR200と本実施例の微小光学系1とのモデルを用いて光線追跡のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、第2の微小光学系11,12,13のサイズは、第1の微小光学系に対して、約2/5となるサイズとした。すなわち、ここでは、第2の微小光学系11,12,13は第1の微小光学系と相似であるとし、第1の微小光学系と第2の微小光学系11,12,13との相似比は5:2であるとした。図4および図5は、本実施例のシミュレーション結果を示す図である。図4(a)は、比較例のCCR200に光を入射させた場合の出射光の強度分布を示しており、図4(b)は、本実施例の微小光学系1に光を入射させた場合の出射光の強度分布を示している。図5は、比較例のCCR200に光を入射させた場合の光利用効率と、本実施例の微小光学系1に光を入射させた場合の光利用効率とを示している。
【0019】
また、図5に示したシミュレーションでは、微小光学系1を構成する各面は平面であり、互いに直交していると仮定した。すなわち、第1の面S、第2の面S2、第3の面S、第4の面、第5の面および第6の面は平面であり、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sは、互いに直交し、第4の面、第1の面Sおよび第2の面Sは、互いに直交し、第5の面、第1の面Sおよび第3の面Sは、互いに直交し、第6の面、第2の面Sおよび第3の面Sは、互いに直交しているとした。なお、シミュレーションでは、光線の入射方向は、各光学系がスクリーンを構成する場合にスクリーンに垂直に入射する方向、すなわち各光学系の入射側の3つの端部を含む面に直交する方向とした。
【0020】
図5において、入射本数は、シミュレーションにおいて各光学系に入力させた光線の数である。反射本数は、シミュレーションの結果として得られる各光学系で反射して出射した光線のうち、光線の入射方向を0°とした場合に、入射方向とのなす角が0°から40°までの円錐状となる範囲に、出射した光の本数を示す。光利用効率の計算値は、上述した過去の経験則から、CCR200に入射した光の2/3が利用できるとして計算した結果を示している。本実施例の微小光学系1については、光利用効率の計算値は、CCR200と同様に入射した光の2/3が利用できるとともに、第2の微小光学系11,12,13においてにおいても同様に2/3の光が利用できるとして計算した結果である。光利用効率のシミュレーション結果は、入射本数に対する反射本数(0°から40°までの範囲に出射した光線の数)の比率を百分率で示したものである。図4および図5からわかるように、本実施例の微小光学系1では、比較例のCCR200に比べて光利用効率が向上する。具体的には、図5に示すように、比較例のCCR200が66.4%の光利用効率であるのに対し、本実施例の微小光学系1では光利用効率が86.1%に向上する。
【0021】
なお、第2の微小光学系11,12,13のサイズの第1の微小光学系のサイズに対する比は、2/5に限定されない。第2の微小光学系11,12,13のサイズの第1の微小光学系のサイズに対する比を2/5程度とすると、CCR200を構成する3つの面の合計の面積の1/3に相当する部分に第2の微小光学系11,12,13を配置することになる。このため、CCR200において2つの面でしか反射されないエリア202に対応する領域全体に第2の微小光学系11,12,13が配置されることになり、光利用効率の向上の効果が大きくなる。一方で、上記のサイズの比を2/5未満とした場合であっても、上記のサイズの比を2/5程度とした場合より光利用効率は低下するものの、CCR200において2つの面でしか反射されないエリア202のうちの一部については光利用効率を向上させることができるため、同様に、第2の微小光学系11,12,13を設けない場合に比べて光利用効率を向上させることができる。
【0022】
なお、微小光学系1のサイズは、例えば、スクリーンに投影される映像の画素より小さいことが望ましい。また、本実施例の微小光学系1で構成されるスクリーンの材質としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック材料や、ガラス、金属、セラミックス等を用いることができる。スクリーンの材質は、上記に限定されず、微小光学系1を形成可能な材料ならばどのようなものを用いてもよい。また、各微小光学系1の開口に丸いアパーチャーパターン(パターン部分は透過、パターン以外の部分は黒く光を透過させない)を設けることによって迷光を吸収し、光学の信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)を高くするようにしてもよい。
【0023】
以上述べたように、本実施例では、CCRである第1の微小光学系の3方の端部に、第1の微小光学系より小さな3つのCCRである第2の微小光学系11,12,13を設けることで、通常のCCR200に比べて光利用効率を向上させることができる。
【実施例0024】
次に実施例2について説明する。実施例1では、スクリーンを構成する微小光学系1の第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sが平面であり、第2の微小光学系11,12,13を構成する面も平面である例を説明した。微小光学系1の各面を平面で構成すると、光の出射方向では映像が明るく見えるが、観察できる範囲すなわち視野角は極めて狭い。用途によっては、ある程度の範囲でスクリーンから出射する光の強度がなるべく均一になるように望まれる場合がある。すなわち、観察できる範囲を広げることがある。このため、本実施例では、微小光学系1を構成する面のうちの少なくとも一部を曲面とすることで、観察できる範囲の拡大を図る。
【0025】
図6は、本実施例の微小光学系1における各面を説明するための図である。図6の左側には、本実施例の比較例として、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの3つの面を備えるD-CCR(Diverted-CCR)200aを示している。D-CCR200aは、通常のCCRであるCCR200から、光を拡散させるための変更が施されたものを示す。本実施例では、D-CCR200aは、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの3つの面のうち少なくとも1面を曲面とすることで、光を拡散させて観察できる範囲を広げる。D-CCR200aは、光を拡散させることができるものの、実施例1のCCR200と同様に、3方の端部で不要なエリアが存在する。このため、本実施例においても、実施例1と同様に図6の右側に示すように、微小光学系1には、第2の微小光学系11,12,13が設けられる。
【0026】
本実施例においても、第2の微小光学系11の紙面に向かって左側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって左側の面である第1の面Sの一部であり、第2の微小光学系11の紙面に向かって右側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって右側の面である第2の面Sの一部である。同様に、第2の微小光学系12の紙面に向かって左側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって左側の面である第1の面Sの一部であり、第2の微小光学系12の底面は、第1の微小光学系の底面である第3の面Sの一部である。同様に、第2の微小光学系13の紙面に向かって右側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって右側の面である第2の面Sの一部であり、第2の微小光学系13の底面は、第1の微小光学系の底面である第3の面Sの一部である。
【0027】
したがって、第2の微小光学系11,12,13を構成する面のうち上記の面は、第1の微小光学系を構成する第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの形状に依存して決定されることになり、残りの面SS,SS,SS(面SSは境界面Bであり、面SSは境界面Bであり、面SSは境界面Bである)は第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sとは独立に形状を設定することが可能である。すなわち、図6の右側に示す微小光学系1は、図6の左側に示すD-CCR200aである第1の微小光学系の内部に面SS,SS,SSが設けられたものに相当する。面SS,SS,SSは、全てを平面としてもよいし、少なくとも一部を曲面としてもよい。
【0028】
次に、本実施例の光線追跡のシミュレーション結果について説明する。図7は、本実施例の微小光学系1における曲面率を示す最大傾斜角を説明するための図である。ここでは、図7に示した最大傾斜角θsによって曲面率を示すこととする。図6および図7を用いて、最大傾斜角θsについて説明する。図6に示すように、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの3つの面が交差する点を点Oとし、点O以外の第1の微小光学系の3つの端点を点A,B,Cとする。すなわち、点Aは、実施の形態1で述べた第1の辺の2つの端点のうち交点Oの反対側となる端点に相当し、点Bは、実施の形態1で述べた第2の辺の2つの端点のうち交点Oの反対側となる端点に相当し、点Cは、実施の形態1で述べた第3の辺の2つの端点のうち交点Oの反対側となる端点に相当する。点Dは、第3の面Sの入射側の辺の中点である。図7は、点Oと点Dとを通る切断面で切断した断面を概念的に示したものである。図7(a)は、第3の面Sが凹曲面となる場合の最大傾斜角θsを示し、図7(b)は、第3の面Sが凸曲面となる場合の最大傾斜角θsを示している。図7に示すように、凹曲面、凸曲面のいずれの場合も、最大傾斜角θsは、点Oにおける第3の面Sの接線3と、点Dと点Dを結ぶ直線4とのなす角の最大値である。図7に示した例では、第3の面Sの断面は円弧であるが、第3の面Sの断面は円弧に限定されない。なお、最大傾斜角θsを、正負の符号を付して示す場合には、時計回りを正とする。このため、断面が円弧となる凹面の場合に、最大傾斜角θsが正となる。
【0029】
また、ここでは、面SS,SS,SSについても、図7と同様に最大傾斜角θsを定義する。このため、例えば、第3の面Sと面SSとで最大傾斜角θsの値が同じであれば、面SSの方が第3の面Sより曲率半径は小さくなる。面SS(第4の面)の曲面率は、第3の面Sの曲面率と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
次に本実施例のシミュレーション結果について説明する。第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sと面SS,SS,SSとの全ての面を断面が円弧上の曲面とした例について、光線追跡のシミュレーションを行った。具体的には、本実施例の微小光学系1において第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sと面SS,SS,SSとの全ての面を、最大傾斜角θsを+4°としてシミュレーションを行った。また、比較例として、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの全てを凸曲面とした場合のD-CCR200aと、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの全てを凹曲面とした場合のD-CCR200aとの2つについてもシミュレーションを行った。比較例においても、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの最大傾斜角θsを+4°とした。なお、光の入射方向は、実際例1と同様であり、各光学系の入射側の3つの端部を含む面に直交する方向、すなわち、点A、点Bおよび点Cを含む面に直交する方向とした。
【0031】
図8および図9は、本実施例のシミュレーション結果を示す図である。図8(a)は、比較例として全面を凸曲面としたD-CCR200aに光を入射させた場合の出射光の強度分布を示しており、図8(b)は、比較例として全面を凹曲面としたD-CCR200aに光を入射させた場合の出射光の強度分布を示している。図8(c)は、本実施例の微小光学系1に光を入射させた場合の出射光の強度分布を示している。図9は、比較例として全面を凹曲面としたD-CCR200aに光を入射させた場合の光利用効率と、本実施例の微小光学系1に光を入射させた場合の光利用効率とを示している。
【0032】
図9において、入射本数、出射本数および光利用効率の定義は、図5と同様である。図8および図9からわかるように、本実施例の微小光学系1では、比較例のD-CCR200aに比べて光利用効率が向上する。なお、凹曲面と凸曲面との2つの比較例を比較すると、凹曲面の方が凸曲面より均一に光が拡散している。このため、本実施例のシミュレーションでは、本実施例の微小光学系1の各面を凹曲面とした。図9に示すように、凹曲面とした比較例が70.4%の光利用効率であるのに対し、本実施例の微小光学系1では光利用効率が95.0%に向上する。また、実施例1の図4および図5と、本実施例の図8および図9とを、比較するとわかるように、本実施例の方が実施例1に比べて、入射方向に対する角度が40°以内の範囲において光の強度が均一化されており、光利用効率も向上している。図8および図9では、微小光学系1の全ての面を曲面とする例を説明したが、これに限らず、微小光学系1を構成する面のうち少なくとも1つの面を曲面とすることで、全ての面を平面とする場合に比べて光を拡散させることができる。
【0033】
また、高視野角を得るために、微小光学系1の表面を透明樹脂で充填してもよい。透明樹脂としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック材料や、ガラス、透明セラミックス等を用いることができる。透明樹脂で充填する代わりに、透明樹脂等の基板の一面に微小光学系1を形成し、微小光学系1が形成されていない側の面すなわち裏面を、スクリーンの表面として用いてもよい。これにより、スクリーンの表面を透明樹脂で充填した場合と同様の効果を奏することができる。
【実施例0034】
次に実施例3について説明する。実施例2では、スクリーン21を構成する微小光学系1から出射する光を拡散させる例を説明したが、光を拡散させるだけでなく、さらに微小光学系1から出射する光の中心の方向を所望の方向に設定することが要求される場合もある。
【0035】
図10は、本実施例のプロジェクションシステムの構成例を示す図である。図10では、微小光学系1から出射する光を拡散させるとともに、微小光学系1から出射する光の中心の方向を所望の方向に設定することが要求される例を示している。図10は、本実施例にかかるプロジェクションシステムを横方向すなわち水平方向からみた図を示している。図10において、上下方向は、垂直方向を示している。図10に示すように、プロジェクタ22は、スクリーン21の前方に配置される。図10に示すように、観測者はプロジェクタ22から出射されてスクリーン21で反射された光を観測する。
【0036】
例えば、観測者が、図10に示した映像視認可能範囲23のどこにおいても、プロジェクタ22から出射されてスクリーン21で反射された光を良好に視認できるようにするためには、出射される光の分布を広げることが望ましい。具体的には、例えば、2θaを、プロジェクタ22に入射した光がスクリーン21で反射拡散される中心角となす方向を示す角度とし、プロジェクタ22の位置と所望の映像視認可能範囲23すなわち拡散角θbを定める。拡散角θbは、観測者がプロジェクタ22から出射されてスクリーン21で反射された光を良好に視認できる映像視認可能範囲23を、スクリーン21の反射点を中心とした角度で示したものであり、映像視認可能範囲23は2θbの範囲に対応する。なお、図10に示した映像視認可能範囲23およびプロジェクタ22の配置位置は一例であり、映像視認可能範囲23およびプロジェクタ22の配置位置は図10に示した例に限定されない。例えば、実施例1で述べた微小光学系1を用いると、プロジェクタ22の方向では観察者がスクリーン21で反射された光を良好に視認できるが、それ以外の方向では観察者がスクリーン21で反射された光を視認できなくなる。
【0037】
本実施例では、映像視認可能範囲23およびプロジェクタ22の配置位置を定めた後、微小光学系1から出射される光が映像視認可能範囲23内で拡散されるように、微小光学系1の形状が設計される。実施例2で述べたように微小光学系1を構成する面を曲面とすることで光を拡散させることができるが、本実施例では、さらに、微小光学系1を構成する面に傾きを与えることで、微小光学系1から出射される光の中心方向を制御する。この際に、実施例1,2と同様に、第2の微小光学系11,12,13を設けることで、第2の微小光学系11,12,13を設けない場合に比べて光利用効率を向上させることができる。これにより、観察者により観察される映像の明るさを確保しつつ、視野角を広げることができる。
【0038】
また、本実施例のスクリーン21は、車両のピラー用のスクリーンとして用いられてもよい。例えば、ピラー用のスクリーンとして用いる場合には、微小光学系1のサイズは、観察者が微小光学系1を認識できない程度のサイズが好ましい。例えば、微小光学系1のサイズは、数百μm程度である。なお、微小光学系1のサイズは、これに限定されず、用途に応じて適宜サイズを設定すれば良い。
【0039】
図11は、車両のピラーを示す図である。図11に示すように、車両には、ピラー101,102,103が設けられている。これらのピラー101,102,103は、運転者の視野の妨げとなる。図12は、ピラー101を車両内からみた図である。前方に設けられるピラー101は、進行方向の視野の妨げとなり、影響が大きい。
【0040】
そこで、ピラー101の外側を撮影するカメラを設け、カメラにより撮影された画像を車両内に設けられたプロジェクタ22でピラー101に設けられたスクリーン21に投影する技術が検討されている。本実施例のスクリーン21は、ピラー101に貼付される、またはピラー101の一部として形成されることにより、車両内に設けられたプロジェクタ22から投影された画像を車両内の所望の映像視認可能範囲23に投影することができる。これにより、画像の明るさを確保しつつ、運転者の座席の高さが変更されても、運転車は画像を視認することができる。また、プロジェクタ22を、天井、ヘッドレストをはじめとして車両内の任意の位置に設置することができる。なお、ここでは、本実施例のスクリーン21が、ピラー101に設置される例を説明したが、これに限らず、本実施例のスクリーン21がピラー102,103に設置され、ピラー102,103のそれぞれの外部を撮影した画像の投影に使用されてもよい。または、ピラー101,102,103の外部を撮影した画像だけでなく他の画像がプロジェクタ22により投影される場合に、本実施例のスクリーン21が用いられてもよい。
【0041】
また、助手席側のドアの内側に本実施例のスクリーン21を貼付するまたは助手席側のドアとスクリーン21が一体化されて形成されてもよい。本実施例では、プロジェクタ22を任意の位置に配置できるため、助手席に人がいる場合でも、助手席側のドアにプロジェクタ22から投影された画像を運転者が視認することができる。
【0042】
本実施例では、図10図12を用いて説明した例のように、微小光学系1から出射する光の中心の方向を所望の方向に設定することが望まれる場合も考慮し、微小光学系1を構成する面に傾きを与える。本実施例では、微小光学系1は実施例2と同様に微小光学系1を構成する面のうち少なくとも1つを曲面とするとともに、さらに、微小光学系1を構成する面のうち少なくとも1つを傾斜させる。例えば、図10に示した例において、第3の面Sおよび面SSを傾斜させる。なお、ここでは、実施例3の微小光学系1を図10図12に示したスクリーン21に用いる例を説明したが、同様に、実施例1および実施例2の微小光学系1を図10図12に示したスクリーン21に用いてもよい。
【0043】
図13は、本実施例の傾斜角の定義を示す図である。図13における点Oは、傾斜がない場合に3つの面が交差する点を示す。すなわち、点Oは、通常のCCR200において3つの面が交差する点に相当する。図13における点Oは、傾斜角θdが正の値の場合に、3つの面が交差する点を示し、図13における点Oは、傾斜角θdが負の値の場合に、3つの面が交差する点を示す。図13における点Oおよび点Oは、それぞれ、図6における3つの面が交差する点Oの一例である。図13に示すように、3つの面が交差する点が点Oである場合、傾斜角θdは、点Oと点Dを結ぶ線30と、点Oと点Dを結ぶ線31とのなす角であり、微小光学系1の奥側(光の入射する側と反対側)に近づくにしたがって線30より上に上がるように傾いている場合を正としている。3つの面が交差する点が点Oである場合も、傾斜角θdは、同様に、点Oと点Dを結ぶ線30と、点Oと点Dを結ぶ線とのなす角であるが、この場合、傾斜角θdの値は負となる。
【0044】
なお、ここでは、第3の面Sの傾斜角θdを例に挙げて説明したが、傾斜させる面は第3の面Sに限定されない。すなわち、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sのうち少なくとも1つが、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sのうち自身を除く2つの面の交差する辺に直交する面に対して傾斜していてもよい。また、面SSが、第1の辺に直交する面に対して傾斜していてもよいし、面SSが、第2の辺に直交する面に対して傾斜していてもよいし、面SSが、第3の辺に直交する面に対して傾斜していてもよい。
【0045】
次に本実施例のシミュレーション結果について説明する。第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sと面SS,SS,SSとの全ての面を曲面とし、第3の面Sおよび面SSを傾斜させて、光線追跡のシミュレーションを行った。具体的には、本実施例の微小光学系1において第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sと面SS,SS,SSとの全ての面を、最大傾斜角θsを+4°とし、第3の面Sおよび面SSの傾斜角θdを+5°としてシミュレーションを行った。また、比較例として、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの全てを凸曲面として第3の面Sを傾斜角θd+5°で傾斜させた場合のD-CCR200aと、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの全てを凹曲面として第3の面Sを、傾斜角θdを+5°として傾斜させた場合のD-CCR200aとの2つについてもシミュレーションを行った。比較例においても、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの最大傾斜角θsを+4°とした。なお、光の入射方向は、実際例1と同様であり、各光学系の入射側の3つの端部を含む面に直交する方向とした。
【0046】
図14は、本実施例のシミュレーション結果を示す図である。図14(a)は、比較例として全面を凸曲面として第3の面Sを傾斜させたD-CCR200aに光を入射させた場合の出射光の強度分布を示しており、図14(b)は、比較例として全面を凹曲面として第3の面Sを傾斜させたD-CCR200aに光を入射させた場合の出射光の強度分布を示している。図14(c)は、本実施例の微小光学系1に光を入射させた場合の出射光の強度分布を示している。
【0047】
図14(b)に示した全面を凹曲面として第3の面Sを傾斜させたD-CCR200aに光を入射させた場合の比較例では、光利用効率が64.79%であるのに対し、本実施例の微小光学系1では光利用効率は91.03%であった。したがって、本実施例の微小光学系1では、図14(b)に示した全面を凹曲面として第3の面Sを傾斜させたD-CCR200aに光を入射させた場合の比較例より利用効率が向上する。また、第3の面Sを傾斜させることで、実施例2に比べて、10°程度の角度範囲において微小光学系1で反射される光のゲインの差が少なく、より均一に光が広がっている。したがって、実施例3の微小光学系を用いたスクリーンを観察する観察者は、所望の範囲内でゲインの差が少ない映像を視認することができ、映像を見やすくなる。
【0048】
なお、ここでは、微小光学系1の各面を曲面とした上で、微小光学系1を構成する面のうちの少なくとも1つを傾斜させるようにしたが、これに限らず、微小光学系1の各面を平面とした上で、微小光学系1を構成する面のうちの少なくとも1つを傾斜させるようにしてもよい。
【実施例0049】
次に実施例4について説明する。本実施例では、スクリーン21を構成する微小光学系1における第2の微小光学系11,12,13のそれぞれの形状を個別に設定する例を説明する。実施例1および実施例2では、第2の微小光学系11,12,13の形状を第1の微小光学系に連動して決定した。例えば、実施例3では、第3の面Sの傾斜角θdと、第2の微小光学系11の面SSの傾斜角θdとを同一としたが、第2の微小光学系11,12,13のそれぞれの形状を個別に設定することも可能である。例えば、第3の面Sの傾斜角θdを面SSの傾斜角θdと異ならせてもよい。
【0050】
本実施例では、第2の微小光学系11,12,13のうち1つの第2の微小光学系のみに、光線を入射させるシミュレーションを行い、各第2の微小光学系11,12,13の形状の影響を確認した。具体的には、1つの第2の微小光学系における境界面の傾斜角θdを変えたシミュレーションを行った。なお、光の入射方向は、実際例1と同様であり、各光学系の入射側の3つの端部を含む面に直交する方向とした。
【0051】
図15は、第2の微小光学系の傾斜角θdを変えた本実施例のシミュレーション結果を示す図である。図15の上段には、図6の右側の図における上部の第2の微小光学系11のみに光線を入射させ、第2の微小光学系11の面SSの傾斜角θdを+1°から+4°まで+1°刻みで変化させた場合のシミュレーション結果を示している。図15の中段には、図6の右側の図における紙面に向かって左側の第2の微小光学系12のみに光線を入射させ、第2の微小光学系12の面SSの傾斜角θdを+1°から+4°まで+1°刻みで変化させた場合のシミュレーション結果を示している。図15の下段には、図6の右側の図における紙面に向かって右側の第2の微小光学系13のみに光線を入射させ、第2の微小光学系13の面SSの傾斜角θdを+1°から+4°まで+1°刻みで変化させた場合のシミュレーション結果を示している。
【0052】
図15に示すように、光線を入射した第2の微小光学系によって、反射する光の強度分布が異なっている。すなわち、光線を入射した第2の微小光学系によって、ゲインが高くなる位置(方向)および広がり方が異なっている。また、傾斜角θdによっても、ゲインが高くなる位置および広がり方が異なっている。したがって、スクリーンの用途に応じて、第2の微小光学系11,12,13の傾斜角θdをそれぞれ個別に設定することで、反射光を所望の方向に所望の広がり方で反射させることができる。
【0053】
図16は、第2の微小光学系の曲面率を変えた本実施例のシミュレーション結果を示す図である。図16に示した例では、各第2の微小光学系の全ての面を断面が円弧上の凹面の曲面とした例を示している。各面の曲面率を実施例2と同様に、最大傾斜角θsで示す。図16の上段には、図6における上部の第2の微小光学系11のみに光線を入射させ、第2の微小光学系11の面SSの最大傾斜角θsを+1°から+4°まで+1°刻みで変化させた場合のシミュレーション結果を示している。図16の中段には、図6における紙面に向かって左側の第2の微小光学系12のみに光線を入射させ、第2の微小光学系12の面SSの最大傾斜角θsを+1°から+4°まで+1°刻みで変化させた場合のシミュレーション結果を示している。図16の下段には、図6における紙面に向かって右側の第2の微小光学系13のみに光線を入射させ、第2の微小光学系13の面SSの最大傾斜角θsを+1°から+4°まで+1°刻みで変化させた場合のシミュレーション結果を示している。
【0054】
図16に示すように、光線を入射した第2の微小光学系によって、図15に示した例と同様に、反射する光の強度分布が異なっている。また、最大傾斜角θsすなわち曲面率によっても、ゲインが高くなる位置および広がり方が異なっている。したがって、スクリーンの用途に応じて、第2の微小光学系11,12,13の曲面率を個別に設定することで、反射光を所望の方向に所望の広がり方で反射させることができる。本実施例の微小光学系1も、実施例3の図10図12に示したスクリーン21に用いることができる。
【0055】
以上のように、第2の微小光学系11,12,13の形状を個別に設定し、これらを組み合わせて微小光学系1を構成することで、所望の方向に所望の広がり方で反射させたり、所望の方向の光の強度を高くしたりといった調整を行うことができる。すなわち、目的に応じて高い自由度で調整を行うことができる。
【実施例0056】
次に実施例5について説明する。本実施例では、形状の異なる2種類の微小光学系1を組み合わせてスクリーン21を構成する例を説明する。以下では、2種類の微小光学系1のうち、一方をAタイプ、他方をBタイプと呼ぶこととする。本実施例では、Aタイプのみ、Bタイプのみ、AタイプとBタイプとの組み合わせについて、それぞれシミュレーションを行った結果を説明する。AタイプとBタイプとの組み合わせは、上述したユニット2に相当する。
【0057】
図17は、本実施例のシミュレーションの条件を示す図である。図17に示した、比較例は、第2の微小光学系11,12,13を設けていないD-CCR200aであり、Aタイプは、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの3面を有し、Bタイプは、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの3面を有する。なお、第3の面Sは、第3の面Sと形状が異なるため、区別するためにSの添え字を4としているが、Bタイプの微小光学系1における第3の面である。Aタイプの第1の面Sおよび第2の面Sと、Bタイプの第1の面Sおよび第2の面Sとはそれぞれ同一であるが、Aタイプの第3の面SとBタイプの第3の面Sとは傾斜角θdが異なる。第1の面S、第2の面S、第3の面Sおよび第3の面Sはいずれも凹面の円弧状の曲面であり、最大傾斜角θsは+4°である。また、AタイプおよびBタイプの第1の面Sおよび第2の面Sの傾斜角θdは、-4°である。Aタイプの第3の面Sの傾斜角θdは+5°であり、Bタイプの第3の面Sの傾斜角θdは+1°である。
【0058】
「Aタイプ+Bタイプ」は、AタイプとBタイプとを組み合わせたものであり、図17に示すように、Aタイプの第3の面Sの入射側の端辺とBタイプの第3の面Sの入射側の端辺とが向き合うように接続されている。
【0059】
本実施例では、比較例と同様に、第1の微小光学系は、Aタイプでは、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの3面を有し、Bタイプでは、第1の面S、第2の面Sおよび第3の面Sの3面を有する。第1の面S、第2の面S、第3の面Sおよび第3の面Sの最大傾斜角θsおよび傾斜角θdは比較例と同様である。本実施例では、さらに、第2の微小光学系11,12,13が設けられている。第2の微小光学系11の境界面Bは、第3の面Sと最大傾斜角θsおよび傾斜角θdが同一であるため図17ではSと記載している。第2の微小光学系12の境界面Bは、第2の面Sと最大傾斜角θsおよび傾斜角θdが同一であるため図17ではSと記載している。第2の微小光学系13の境界面Bは、第1の面Sと最大傾斜角θsおよび傾斜角θdが同一であるため図17ではSと記載と記載している。実施例5における「Aタイプ+Bタイプ」は、ユニット2に相当し、ユニット2は隣接する2つの微小光学系1で構成され、ユニット2を構成する2つの微小光学系1は、例えば、第3の面Sが互いに向き合うように隣接し、ユニット2を構成する2つの微小光学系1の第3の面Sは、第1の辺に直交する面に対して互いに異なる傾斜角θdで傾斜している。なお、光の入射方向は、実際例1と同様であり、各光学系の入射側の3つの端部を含む面に直交する方向とした。
【0060】
図18は、本実施例のシミュレーション結果を示す図である。図18では、上段に比較例のシミュレーション結果を示し、下段に本実施例のシミュレーション結果を示している。Aタイプ、Bタイプ、AタイプとBタイプとの組み合わせのいずれの場合も、本実施例では比較例に比べて明るく見える範囲が広がっている。また、AタイプとBタイプとを組み合わせると、Aタイプ、Bタイプを単独で用いる場合より明るく見える範囲が広がっていることがわかる。したがって、本実施例の2種類の微小光学系1の組み合わせを複数用いてスクリーン21を構成することで、観測者は、ある程度の範囲内で移動しても明るい映像を見ることができる。本実施例の微小光学系1も、実施例3の図10図12に示したスクリーン21に用いることができる。例えば、本実施例の微小光学系1を用いたスクリーン21をピラー101,102,103に設けることで、画像の明るさを確保しつつ、運転者の座席の高さが変更されても、運転車は画像を視認することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 微小光学系、2 ユニット、3 接線、4,31 直線、11,12,13 第2の微小光学系、21 スクリーン、22 プロジェクタ、23 映像視認可能範囲、101,102,103 ピラー、200 CCR、200a D-CCR、201,202 エリア。
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