(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020720
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】スクリーン
(51)【国際特許分類】
G03B 21/60 20140101AFI20250205BHJP
G02B 5/124 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
G03B21/60
G02B5/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124258
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若生 一広
(72)【発明者】
【氏名】三橋 蓮
【テーマコード(参考)】
2H021
2H042
【Fターム(参考)】
2H021BA02
2H042EA03
2H042EA05
2H042EA20
(57)【要約】
【課題】光利用効率を向上させることができるスクリーンを得ること。
【解決手段】微小光学系1を備えるスクリーンであり、微小光学系1は、第1~第6の面を有し、第1の面S
1は第2の面S
2および第3の面S
3と交差し、第2の面は第1の面および第3の面と交差し、第3の面は第1の面および第2の面と交差し、第4の面は第1の面と第2の面とが交差する第1の辺と交差するとともに第1の面および第2の面に交差し、第5の面は第1の面と第3の面とが交差する第2の辺と交差するとともに第1の面および第3の面に交差し、第6の面は第2の面と第3の面とが交差する第3の辺と交差するとともに第2の面および第3の面に交差し、第1の辺の端点から第4の面までの長さは第1の辺の長さの半分より短く、第2の辺の端点から第5の面までの長さは第2の辺の長さの半分より短く、第3の辺の端点から第3の面までの長さは第3の辺の長さの半分より短い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクタから自身の表面に入射される光を反射させて出射するスクリーンであって、
複数の微小光学系を備え、
前記複数の微小光学系のうちの少なくとも1つの前記微小光学系は、
第1の面、第2の面、第3の面、第4の面、第5の面および第6の面を有し、
前記第1の面は、前記第2の面および前記第3の面と交差し、前記第2の面は前記第1の面および前記第3の面と交差し、前記第3の面は前記第1の面および前記第2の面と交差し、
前記第4の面は、前記第1の面と前記第2の面とが交差する辺である第1の辺と交差するとともに前記第1の面および前記第2の面に交差し、前記第5の面は、前記第1の面と前記第3の面とが交差する辺である第2の辺と交差するとともに前記第1の面および前記第3の面に交差し、前記第6の面は、前記第2の面と前記第3の面とが交差する辺である第3の辺と交差するとともに前記第2の面および前記第3の面に交差し、
前記第1の辺の2つの端点のうち前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面が交差する交点の反対側となる端点と、前記第1の辺と前記第4の面とが交差する点との間の前記第1の辺に沿った長さは、前記第1の辺の長さの半分より短く、
前記第2の辺の2つの端点のうち前記交点の反対側となる端点と、前記第2の辺と前記第5の面とが交差する点との間の前記第2の辺に沿った長さは、前記第2の辺の長さの半分より短く、
前記第3の辺の2つの端点のうち前記交点の反対側となる端点と、前記第3の辺と前記第3の面とが交差する点との間の前記第3の辺に沿った長さは、前記第3の辺の長さの半分より短い、
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記第1の面、前記第2の面、前記第3の面、前記第4の面、前記第5の面および前記第6の面は平面であり、
前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面は、互いに直交し、
前記第4の面、前記第1の面および前記第2の面は、互いに直交し、
前記第5の面、前記第1の面および前記第3の面は、互いに直交し、
前記第6の面、前記第2の面および前記第3の面は、互いに直交する、
ことを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面のうち少なくとも1つは、曲面であることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【請求項4】
前記第4の面、前記第5の面および前記第6の面のうち少なくとも1つは曲面であることを特徴とする請求項3に記載のスクリーン。
【請求項5】
前記第3の面および前記第4の面は曲面であり、前記第4の面の曲面率は、前記第3の面の曲面率と異なることを特徴とする請求項4に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面のうち少なくとも1つは、前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面のうち自身を除く2つの面の交差する辺に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1、3、4、5のいずれか1つに記載のスクリーン。
【請求項7】
前記第4の面は、前記第1の辺に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする請求項6に記載のスクリーン。
【請求項8】
前記第3の面は、前記第1の辺に直交する面に対して傾斜し、前記第4の面の傾斜角と前記第3の面の傾斜角とは異なることを特徴とする請求項6に記載のスクリーン。
【請求項9】
前記第5の面は、前記第2の辺に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする請求項7に記載のスクリーン。
【請求項10】
前記第6の面は、前記第3の辺に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする請求項9に記載のスクリーン。
【請求項11】
前記複数の微小光学系は、隣接する2つでユニットを構成し、
前記ユニットを構成する2つの前記微小光学系は、前記第3の面が互いに向き合うように隣接し、
前記ユニットを構成する2つの前記微小光学系の前記第3の面は、前記第1の辺に直交する面に対して互いに異なる傾斜角で傾斜していることを特徴とする請求項6に記載のスクリーン。
【請求項12】
車両内のピラーに設けられることを特徴とする請求項1に記載のスクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタにより映像または画像が投影されるスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタにより映像をスクリーンに投影するシステムにおいて、入射された光を再帰反射するスクリーンが用いられる場合がある。入射された光を再帰反射するスクリーンを用いることで、コントラスト比の向上を図ることができる。例えば、特許文献1には、コーナーキューブリフレクタ(CCR:Corner Cube Reflector)がアレイ状に配置されたスクリーンが開示されている。CCRに入射した光は、直交する3つの面で反射することで、投影機の方向に出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、CCRでは、3方の端部のエリアにおいて、入射する光は2面でしか反射しない。このため、端部のエリアに入射した光は所望の方向へ出射しないことになり、十分な光利用効率が得られない場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光利用効率を向上させることが可能なスクリーンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、プロジェクタから自身の表面に入射される光を反射させて出射するスクリーンであって、複数の微小光学系を備え、前記複数の微小光学系のうちの少なくとも1つの前記微小光学系は、第1の面、第2の面、第3の面、第4の面、第5の面および第6の面を有し、前記第1の面は、前記第2の面および前記第3の面と交差し、前記第2の面は前記第1の面および前記第3の面と交差し、前記第3の面は前記第1の面および前記第2の面と交差し、前記第4の面は、前記第1の面と前記第2の面とが交差する辺である第1の辺と交差するとともに前記第1の面および前記第2の面に交差し、前記第5の面は、前記第1の面と前記第3の面とが交差する辺である第2の辺と交差するとともに前記第1の面および前記第3の面に交差し、前記第6の面は、前記第2の面と前記第3の面とが交差する辺である第3の辺と交差するとともに前記第2の面および前記第3の面に交差し、前記第1の辺の2つの端点のうち前記第1の面、前記第2の面および前記第3の面が交差する交点の反対側となる端点と、前記第1の辺と前記第4の面とが交差する点との間の前記第1の辺に沿った長さは、前記第1の辺の長さの半分より短く、前記第2の辺の2つの端点のうち前記交点の反対側となる端点と、前記第2の辺と前記第5の面とが交差する点との間の前記第2の辺に沿った長さは、前記第2の辺の長さの半分より短く、前記第3の辺の2つの端点のうち前記交点の反対側となる端点と、前記第3の辺と前記第3の面とが交差する点との間の前記第3の辺に沿った長さは、前記第3の辺の長さの半分より短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光利用効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明にかかる実施例1のスクリーンを構成する微小光学系の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施例1の微小光学系の原理を説明するための図である。
【
図3】
図3は、微小光学系の配列の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施例1のシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例1のシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】
図6は、実施例2の微小光学系における各面を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施例2の微小光学系における曲面率を示す最大傾斜角を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施例2のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】
図9は、実施例2のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例3にかかるプロジェクションシステムを横方向すなわち水平方向からみた図である。
【
図14】
図14は、実施例3のシミュレーション結果を示す図である。
【
図15】
図15は、第2の微小光学系の傾斜角を変えた実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
【
図16】
図16は、第2の微小光学系の曲面率を変えた実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
【
図17】
図17は、実施例5のシミュレーションの条件を示す図である。
【
図18】
図18は、実施例5のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例0010】
図1は、本発明にかかる実施例1のスクリーンを構成する微小光学系の構成例を示す図である。本実施例のスクリーンは、
図1に示す微小光学系1を1つの単位とし、これを複数配列することによりスクリーンを構成する。本実施例のスクリーンは、例えば、プロジェクタから自身の表面に入射される光を反射させて出射するスクリーンである。微小光学系1の表面には薄い金属膜などの高反射材を付着させるなどして光を反射する機能をもたせる。
【0011】
図1に示すように、本実施例の微小光学系1は、第1の面S
1、第2の面S
2および第3の面S
3を備える。第1の面S
1、第2の面S
2および第3の面S
3は、互いに直交し、3つの面で構成される一般的なCCRと同等であり、このCCRを第1の微小光学系とも呼ぶ。本実施例の微小光学系1は、第1の微小光学系の3方の端部に、第1の微小光学系より小さな3つの第2の微小光学系11,12,13がそれぞれ設けられている。第2の微小光学系11,12,13も直交する3つの面で構成され、CCRと同等である。本実施例では、第1の面S
1、第2の面S
2および第3の面S
3は例えば平面であり、第2の微小光学系11,12,13を構成する面も例えば平面である。第2の微小光学系11,12,13を個別に区別せずに示すときには、第2の微小光学系と呼ぶ。
【0012】
第2の微小光学系11の紙面に向かって左側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって左側の面である第1の面S1の一部であり、第2の微小光学系11の紙面に向かって右側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって右側の面である第2の面S2の一部である。すなわち、第2の微小光学系11は、第1の面S1の一部と、第2の面S2の一部と、境界面B1とを有する。第2の微小光学系12の紙面に向かって左側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって左側の面である第1の面S1の一部であり、第2の微小光学系12の底面は、第1の微小光学系の底面である第3の面S3の一部である。すなわち、第2の微小光学系12は、第1の面S1の一部と、第3の面S3の一部と、境界面B2とを有する。第2の微小光学系13の紙面に向かって右側の面は、第1の微小光学系の紙面に向かって右側の面である第2の面S2の一部であり、第2の微小光学系13の底面は、第1の微小光学系の底面である第3の面S3の一部である。すなわち、第2の微小光学系13は、第2の面S2の一部と、第3の面S3の一部と、境界面B3とを有する。境界面B1,B2,B3は、第2の微小光学系を構成する3つの面のうち、第1の微小光学系を構成する第1の面S1、第2の面S2および第3の面S3と共通しない面であり、微小光学系1を正面からみた正面図における中心側に位置する面である。以下、境界面B1,B2,B3を個別に区別せずに示すときには、境界面と呼ぶ。
【0013】
このように、本実施例の微小光学系1は、境界面B1,B2,B3をそれぞれ第4の面、第5の面および第6の面とすると、第1の面S1、第2の面S2、第3の面S3、第4の面、第5の面および第6の面を有し、第1の面S1は、第2の面S2および第3の面S3と交差し、第2の面S2は第1の面S1および第3の面S3と交差し、第3の面S3は第1の面S1および第2の面S2と交差する。また、第4の面(境界面B1)は、第1の面S1と第2の面S2とが交差する辺である第1の辺と交差するとともに第1の面S1および第2の面S2に交差し、第5の面(境界面B2)は、第1の面S1と第3の面S3とが交差する辺である第2の辺と交差するとともに第1の面S1および第3の面S3の面に交差し、第6の面(境界面B3)は、第2の面S2と第3の面S3とが交差する辺である第3の辺と交差するとともに第2の面S2および第3の面S3に交差する。
【0014】
また、第1の辺の2つの端点のうち第1の面S
1、第2の面S
2および第3の面S
3が交差する交点の反対側となる端点と、第1の辺と第4の面とが交差する点との間の第1の辺に沿った長さである第1の長さは、第1の辺の長さの半分より短い。第2の辺の2つの端点のうち交点の反対側となる端点と、第2の辺と第5の面とが交差する点との間の第2の辺に沿った長さである第2の長さは、第2の辺の長さの半分より短い。第3の辺の2つの端点のうち交点の反対側となる端点と、第3の辺と前記第3の面とが交差する点との間の第3の辺に沿った長さである第3の長さは、第3の辺の長さの半分より短い。なお、
図1では、第2の微小光学系11,12,13の大きさが同一である例を示しているが、第2の微小光学系11,12,13のうちの少なくとも1つの大きさが、他の第2の微小光学系11,12,13の大きさと異なっていてもよい。すなわち、第1の辺の長さに対する第1の長さの比と、第2の辺の長さに対する第2の長さの比と、第3の辺の長さに対する第3の長さの比とは、同一でなくてもよい。
【0015】
本実施例では、
図1に示すように、微小光学系1が第2の微小光学系11,12,13を有することで、光利用効率を向上させることができる。
図2は、本実施例の微小光学系1の原理を説明するための図である。
図2に示したCCR200は、通常の直交する3つの面を有するCCRである。CCR200は、エリア201では、入射した光が直交する3つの面で反射するが、エリア202では入射した光が2つの面でしか反射しないため、エリア202に入射した光は所望の方向に出射せず利用できないことになる。このため、エリア202は不要なエリアであり、本実施例では、
図2に示すように、エリア202の代わりに第2の微小光学系11,12,13を設けることで、第2の微小光学系11,12,13に入射した光を所望の光へ出射させることができる。光線追跡のシミュレーション結果等に基づく経験則によれば、CCR200に正面から光を入射させた場合に、2/3程度の光が所望の方向に出射するため利用できることになり、1/3程度の光が利用できない。すなわち、CCR200を構成する3つの面の合計の面積のうち、1/3程度の面積に相当する部分で反射する光を利用することができない。なお、第2の微小光学系11,12,13においても、それぞれの3方の端部には入射した光を利用できないエリアが発生するが、
図2に示したCCR200のエリア202よりは狭いエリアとなる。したがって、第2の微小光学系11,12,13を設けることで、
図2に示した通常のCCR200に比べて光利用効率を向上させることができる。
【0016】
なお、第2の微小光学系11,12,13のサイズは、エリア202に相当するサイズであることが好ましいが、それより小さくても大きくてもよい。大きすぎる場合には、第2の微小光学系11,12,13が元の第1の微小光学系に近づいてしまい光利用効率を向上させる効果が薄れると考えられるため、上述したように、例えば、第1の長さが第1の辺の長さの半分より短く、第2の長さが第2の辺の長さの半分より短く、第3の長さが第3の辺の長さの半分より短い範囲としている。第1の長さ、第2の長さ、第3の長さが、それぞれ第1の辺の長さ、第2の辺の長さ、第3の辺の長さの半分程度までであれば、第2の微小光学系11,12,13を設けない場合に比べて光利用効率が向上すると想定される。
【0017】
本実施例の微小光学系1を複数配列することで本実施例のスクリーンが構成される。なお、スクリーンを構成する複数の微小光学系1のうちの少なくとも1つが本実施例の微小光学系1であればよい。
図3は、微小光学系1の配列の一例を示す図である。
図3(a)に示すように、例えば、上下の向きを逆にした1組の微小光学系1を、正面からみた形状がひし形となるように配置する。この1組の微小光学系1をユニット2とし、
図3(b)に示すように、複数のユニット2を配列することでスクリーンを構成する。
図3(b)に示した例では上下の端部に微小光学系1が配置されることで端部を直線状にしており、このようにユニット2と微小光学系1とを組み合わせて配置してもよい。
図3(b)は、スクリーンの一部を示しており、スクリーンの大きさに応じた数のユニット2が配列される。
図3に示した例では、スクリーンを構成する複数の微小光学系1の形状は全て同一としている。
図3は、微小光学系1の配置の一例であり、微小光学系1の配置方法は
図3に示した例に限定されない。
【0018】
次に、本実施例の微小光学系1を用いたシミュレーション結果について説明する。ここでは、
図2に示した通常のCCR200を比較例とし、比較例のCCR200と本実施例の微小光学系1とのモデルを用いて光線追跡のシミュレーションを行った。シミュレーションでは、第2の微小光学系11,12,13のサイズは、第1の微小光学系に対して、約2/5となるサイズとした。すなわち、ここでは、第2の微小光学系11,12,13は第1の微小光学系と相似であるとし、第1の微小光学系と第2の微小光学系11,12,13との相似比は5:2であるとした。
図4および
図5は、本実施例のシミュレーション結果を示す図である。
図4(a)は、比較例のCCR200に光を入射させた場合の出射光の強度分布を示しており、
図4(b)は、本実施例の微小光学系1に光を入射させた場合の出射光の強度分布を示している。
図5は、比較例のCCR200に光を入射させた場合の光利用効率と、本実施例の微小光学系1に光を入射させた場合の光利用効率とを示している。
【0019】
また、
図5に示したシミュレーションでは、微小光学系1を構成する各面は平面であり、互いに直交していると仮定した。すなわち、第1の面S
1、第2の面S
2、第3の面S
3、第4の面、第5の面および第6の面は平面であり、第1の面S
1、第2の面S
2および第3の面S
3は、互いに直交し、第4の面、第1の面S
1および第2の面S
2は、互いに直交し、第5の面、第1の面S
1および第3の面S
3は、互いに直交し、第6の面、第2の面S
2および第3の面S
3は、互いに直交しているとした。なお、シミュレーションでは、光線の入射方向は、各光学系がスクリーンを構成する場合にスクリーンに垂直に入射する方向、すなわち各光学系の入射側の3つの端部を含む面に直交する方向とした。
【0020】
図5において、入射本数は、シミュレーションにおいて各光学系に入力させた光線の数である。反射本数は、シミュレーションの結果として得られる各光学系で反射して出射した光線のうち、光線の入射方向を0°とした場合に、入射方向とのなす角が0°から40°までの円錐状となる範囲に、出射した光の本数を示す。光利用効率の計算値は、上述した過去の経験則から、CCR200に入射した光の2/3が利用できるとして計算した結果を示している。本実施例の微小光学系1については、光利用効率の計算値は、CCR200と同様に入射した光の2/3が利用できるとともに、第2の微小光学系11,12,13においてにおいても同様に2/3の光が利用できるとして計算した結果である。光利用効率のシミュレーション結果は、入射本数に対する反射本数(0°から40°までの範囲に出射した光線の数)の比率を百分率で示したものである。
図4および
図5からわかるように、本実施例の微小光学系1では、比較例のCCR200に比べて光利用効率が向上する。具体的には、
図5に示すように、比較例のCCR200が66.4%の光利用効率であるのに対し、本実施例の微小光学系1では光利用効率が86.1%に向上する。
【0021】
なお、第2の微小光学系11,12,13のサイズの第1の微小光学系のサイズに対する比は、2/5に限定されない。第2の微小光学系11,12,13のサイズの第1の微小光学系のサイズに対する比を2/5程度とすると、CCR200を構成する3つの面の合計の面積の1/3に相当する部分に第2の微小光学系11,12,13を配置することになる。このため、CCR200において2つの面でしか反射されないエリア202に対応する領域全体に第2の微小光学系11,12,13が配置されることになり、光利用効率の向上の効果が大きくなる。一方で、上記のサイズの比を2/5未満とした場合であっても、上記のサイズの比を2/5程度とした場合より光利用効率は低下するものの、CCR200において2つの面でしか反射されないエリア202のうちの一部については光利用効率を向上させることができるため、同様に、第2の微小光学系11,12,13を設けない場合に比べて光利用効率を向上させることができる。
【0022】
なお、微小光学系1のサイズは、例えば、スクリーンに投影される映像の画素より小さいことが望ましい。また、本実施例の微小光学系1で構成されるスクリーンの材質としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック材料や、ガラス、金属、セラミックス等を用いることができる。スクリーンの材質は、上記に限定されず、微小光学系1を形成可能な材料ならばどのようなものを用いてもよい。また、各微小光学系1の開口に丸いアパーチャーパターン(パターン部分は透過、パターン以外の部分は黒く光を透過させない)を設けることによって迷光を吸収し、光学の信号対雑音比(SNR:Signal to Noise Ratio)を高くするようにしてもよい。
【0023】
以上述べたように、本実施例では、CCRである第1の微小光学系の3方の端部に、第1の微小光学系より小さな3つのCCRである第2の微小光学系11,12,13を設けることで、通常のCCR200に比べて光利用効率を向上させることができる。
また、高視野角を得るために、微小光学系1の表面を透明樹脂で充填してもよい。透明樹脂としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマー等のプラスチック材料や、ガラス、透明セラミックス等を用いることができる。透明樹脂で充填する代わりに、透明樹脂等の基板の一面に微小光学系1を形成し、微小光学系1が形成されていない側の面すなわち裏面を、スクリーンの表面として用いてもよい。これにより、スクリーンの表面を透明樹脂で充填した場合と同様の効果を奏することができる。