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  • 特開-車両用バックドア構造 図1
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  • 特開-車両用バックドア構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020723
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】車両用バックドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
B60J5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124263
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】福山 拓郎
(57)【要約】
【課題】塗装工程時に車両用バックドアの意匠面に塗料が垂れ落ちる液だれを防止することができる車両用バックドア構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる車両用バックドア構造100は、窓枠104が形成された車両用バックドア102の外面を構成するアウタパネル106と、アウタパネルに組み付けられ車両用バックドアの内面を構成するインナパネル108とを備える車両用バックドア構造において、アウタパネルは、窓枠の高さ範囲内で上下に分割されたアッパパネル110およびロアパネル112を有し、アッパパネルは、ロアパネルに車外側から重なって接合され、ロアパネルとともに接合部114を形成し、接合部は、窓枠に近づくほど下方に傾斜していることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠が形成された車両用バックドアの外面を構成するアウタパネルと、該アウタパネルに組み付けられ該車両用バックドアの内面を構成するインナパネルとを備える車両用バックドア構造において、
前記アウタパネルは、前記窓枠の高さ範囲内で上下に分割されたアッパパネルおよびロアパネルを有し、
前記アッパパネルは、前記ロアパネルに車外側から重なって接合され、前記ロアパネルとともに接合部を形成し、
前記接合部は、前記窓枠に近づくほど下方に傾斜していることを特徴とする車両用バックドア構造。
【請求項2】
前記ロアパネルは、
前記接合部から下方にわたって車外側に膨出した膨出部と、
前記膨出部のうち前記窓枠側の端面に形成され前記接合部から下方に向かうほど前記窓枠に近づくように傾斜した傾斜部と、
前記窓枠に到達した前記傾斜部の下端を切り欠いた切欠部とを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用バックドア構造。
【請求項3】
前記ロアパネルの上端部は、前記接合部において上方に向かうほど互いに遠ざかるように湾曲した一対の稜線を有し、
前記一対の稜線はそれぞれ、後方に向かうほど前記アッパパネルの下端部に漸近するように湾曲し丸みを帯びた丸み部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用バックドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バックドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の車両用バックドアは、その外面を構成するアウタパネルと、アウタパネルに組み付けられ内面を構成するインナパネルとを備える(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の車両のドア構造では、アウタパネルを上側アウタパネルと下側アウタパネルとに分割して構成している。
【0003】
特許文献1では、アウタパネルが上側アウタパネルと下側アウタパネルとに分割して構成されているので、上側アウタパネルと下側アウタパネルとを、各々より小型の成形型を用いて別々に成形することができ、アウタパネルの成形性および成形工程での作業性を向上させることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-104376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1の車両のドア構造では、塗装工程において上側アウタパネルと下側アウタパネルとの合わせ目(接合部)に塗料が溜まり、接合部に残留した塗料が例えば乾燥時や運搬時に車両用バックドアの外面(意匠面)に垂れ落ちる液だれが生じる場合がある。車両用バックドアの意匠面に液だれが生じると、塗装工程時に修正作業すなわち意匠面を研ぐ研ぎ工程が必要となり、作業性が損なわれてしまう。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、塗装工程時に車両用バックドアの意匠面に塗料が垂れ落ちる液だれを防止することができる車両用バックドア構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用バックドア構造の代表的な構成は、窓枠が形成された車両用バックドアの外面を構成するアウタパネルと、アウタパネルに組み付けられ車両用バックドアの内面を構成するインナパネルとを備える車両用バックドア構造において、アウタパネルは、窓枠の高さ範囲内で上下に分割されたアッパパネルおよびロアパネルを有し、アッパパネルは、ロアパネルに車外側から重なって接合され、ロアパネルとともに接合部を形成し、接合部は、窓枠に近づくほど下方に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗装工程時に車両用バックドアの意匠面に塗料が垂れ落ちる液だれを防止することができる車両用バックドア構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施例に係る車両用バックドア構造が適用される車両用バックドアを概略的に示す図である。
図2図1の車両用バックドア構造の要部を示す図である。
図3】本発明の第2実施例に係る車両用バックドア構造の要部を示す図である。
図4図3の車両用バックドア構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用バックドア構造は、窓枠が形成された車両用バックドアの外面を構成するアウタパネルと、アウタパネルに組み付けられ車両用バックドアの内面を構成するインナパネルとを備える車両用バックドア構造において、アウタパネルは、窓枠の高さ範囲内で上下に分割されたアッパパネルおよびロアパネルを有し、アッパパネルは、ロアパネルに車外側から重なって接合され、ロアパネルとともに接合部を形成し、接合部は、窓枠に近づくほど下方に傾斜していることを特徴とする。
【0012】
上記構成では、接合部は、上下に分割されたアッパパネルの下端部とロアパネルの上端部が重なることで形成され、さらに窓枠に近づくほど下方に傾斜している。このため、一例として塗装工程時にロアパネルの上端部に付着した塗料は、接合部のロアパネルの傾斜した上端部に沿って窓枠に向かって流れる。なお塗料とは、車体塗装ラインでの浸漬処理にて付着する電着液や洗浄液を含む。
【0013】
このため、アッパパネルとロアパネルの接合部に塗料が溜まりにくくなり、残留した塗料が車両用バックドアの外面(意匠面)に垂れ落ちる液だれを防止することができる。その結果、車両用バックドアの意匠面に液だれによる不良が発生することを低減でき、塗装工程時に修正作業すなわち意匠面を研ぐ研ぎ工程が不要となり、工数を削減することができる。
【0014】
上記のロアパネルは、接合部から下方にわたって車外側に膨出した膨出部と、膨出部のうち窓枠側の端面に形成され接合部から下方に向かうほど窓枠に近づくように傾斜した傾斜部と、窓枠に到達した傾斜部の下端を切り欠いた切欠部とを有する。
【0015】
これにより、塗装工程時に接合部のロアパネルの上端部に付着した塗料は、ロアパネルの傾斜した上端部に沿って窓枠に向かって流れ、さらにロアパネルの膨出部に形成された傾斜部に流れ込む。そして傾斜部に流れ込んだ塗料は、傾斜部の下端の切欠部からロアパネルとインナパネルとの間に排出される。
【0016】
このように上記構成によれば、車両用バックドアの意匠面に塗料が垂れ落ちることを防止して、意匠面に液だれによる不良が発生することを低減することができる。このため、塗装工程時に修正作業が不要となり、工数を削減することができる。また傾斜部の切欠部からロアパネルとインナパネルとの間に塗料を排出するため、塗料を目立たないようにすることができる。
【0017】
上記のロアパネルの上端部は、接合部において上方に向かうほど互いに遠ざかるように湾曲した一対の稜線を有し、一対の稜線はそれぞれ、後方に向かうほどアッパパネルの下端部に漸近するように湾曲し丸みを帯びた丸み部を有する。
【0018】
これにより接合部において、ロアパネルの上端部の一対の稜線の間と、アッパパネルの下端部との間で隙間を確保することができる。このため、塗装工程時にロアパネルの上端部に付着した塗料は、接合部に溜まらずに隙間から積極的に排出される。したがって、意匠面に液だれによる不良が発生することを低減し、塗装工程時に修正作業が不要となり、工数を削減することができる。
【実施例0019】
図1は、本発明の第1実施例に係る車両用バックドア構造100が適用される車両用バックドア102を概略的に示す図である。図1(a)は、車両用バックドア102を車両後方から見た様子を示している。図1(b)は、図1(a)の車両用バックドア構造100のA-A断面を模式的に示す図である。
【0020】
以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。なお以下の説明では、図1(a)の車両用バックドア102の右側の車両用バックドア構造100を例示するが、車両用バックドア102の左側に本実施例を適用してもよい。
【0021】
車両用バックドア構造100は、図1(a)に示すように窓枠104が形成された車両用バックドア102に適用され、アウタパネル106とインナパネル108(図2参照)とを備える。アウタパネル106は、車両用バックドア102の外面(意匠面)を構成する。インナパネル108は、アウタパネル106に組み付けられ車両用バックドア102の内面を構成する。
【0022】
アウタパネル106は、窓枠104の高さ範囲内で上下に分割されたアッパパネル110およびロアパネル112を有する。アッパパネル110は、図1(b)に示すようにロアパネル112に車外側から重なって接合され、ロアパネル112とともに接合部114を形成する。接合部114は、アッパパネル110の下端部116とロアパネル112の上端部118が重なることで形成されている。
【0023】
ここで車両用バックドア102を含む車体を塗装する塗装工程では、図1(b)に示すように接合部114のロアパネル112の上端部118に塗料Wが溜まる場合があり得る。なお塗料とは、車体塗装ラインでの浸漬処理にて付着する電着液や洗浄液を含む。
【0024】
このような場合、接合部114に残留した塗料Wが、例えば乾燥時や運搬時に矢印Bに示す経路を通って、ロアパネル112の車外側の面である車両用バックドア102の意匠面120に垂れ落ちる液だれを生じる場合がある。車両用バックドア102の意匠面120に液だれが生じると、塗装工程時に意匠面120を研ぐ研ぎ工程(修正作業)が必要となり、作業性が損なわれてしまう。
【0025】
そこで本実施例の車両用バックドア構造100では、アッパパネル110とロアパネル112の接合部114に塗料Wが溜まりにくくなり、接合部114に残留した塗料Wが車両用バックドア102の意匠面120に垂れ落ちる液だれを防止することができる構成を採用した。
【0026】
図2は、図1の車両用バックドア構造100の要部を示す図である。車両用バックドア構造100では、接合部114が窓枠104に近づくほど下方に傾斜している。具体的には、接合部114のロアパネル112の上端部118が点線Cに示すように窓枠104に近づくほど下方に傾斜している。また接合部114のアッパパネル110の下端部116も窓枠104に近づくほど下方に傾斜している。このため、アッパパネル110とロアパネル112の接合部114による見切りも傾斜している。
【0027】
このため、塗装工程時にロアパネル112の上端部118付着した塗料W(図1(b)参照)は、ロアパネル112の傾斜した上端部118に沿って図2の点線Dに示す経路を通って窓枠104に向かって流れる。
【0028】
したがって車両用バックドア構造100では、接合部114に塗料が溜まりにくくなり、接合部114に残留した塗料が車両用バックドア102の意匠面120に垂れ落ちる液だれを防止することができる。その結果、意匠面120に液だれによる不良が発生することを低減できるため、塗装工程時に修正作業が不要となり、工数を削減することができる。
【0029】
ロアパネル112はさらに、膨出部122と、傾斜部124と、切欠部126とを有する。膨出部122は、接合部114から下方にわたって車外側に膨出した部位である。傾斜部124は、膨出部122のうち窓枠104側の端面128に形成され、接合部114から下方に向かうほど窓枠104に近づくように傾斜している。切欠部126は、窓枠104に到達した傾斜部124の下端130を切り欠いて形成されている。
【0030】
このため塗料は、ロアパネル112の傾斜した上端部118に沿って点線Dに示す経路を通って窓枠104に向かって流れるだけでなく、さらに点線E、Fに示す経路を通って膨出部122の傾斜部124に流れ込む。そして傾斜部124に流れ込んだ塗料は、傾斜部124の下端130を切り欠いた切欠部126から、点線Gに示す経路を通って、パネル内部すなわちロアパネル112とインナパネル108との間に排出される。
【0031】
このように車両用バックドア構造100によれば、車両用バックドア102の意匠面120に液だれによる不良が発生することを低減して、塗装工程時の修正作業を不要とするだけでなく、傾斜部124の切欠部126からパネル内部に塗料を排出するため、塗料を目立たないようにすることができる。
【0032】
図3は、本発明の第2実施例に係る車両用バックドア構造100Aの要部を示す図である。図3(a)は、図2に対応させて車両用バックドア構造100Aを示している。図3(b)は、図3(a)の車両用バックドア構造100Aの一部を拡大して示す図である。図3(c)は、図3(b)のH-H断面図である。
【0033】
車両用バックドア構造100Aは、接合部114Aにおいてロアパネル112Aの上端部118Aとアッパパネル110の下端部116との間に隙間132を確保した点で、上記の車両用バックドア構造100と異なる。
【0034】
ロアパネル112Aの上端部118Aは、図3(a)および図3(b)に示すように接合部114Aにおいて上方に向かうほど互いに遠ざかるように湾曲した一対の稜線134、136を有する。一対の稜線134、136はそれぞれ、図3(b)に示す丸み部138、140を有する。丸み部138、140は、図3(c)に示すように後方に向かうほどアッパパネル110の下端部116に漸近するように湾曲し丸みを帯びた形状を有する。
【0035】
このようにして車両用バックドア構造100Aでは、ロアパネル112Aの上端部118Aの一対の稜線134、136の間と、アッパパネル110の下端部116との間で隙間132を確保することができる。
【0036】
このため塗料は、ロアパネル112Aの傾斜した上端部118Aに沿って点線Iに示す経路を通って窓枠104に向かって流れて、さらに点Jに示す経路を通って接合部114Aに確保された隙間132から傾斜部124に流れ込むことができる。
【0037】
このように車両用バックドア構造100Aでは、塗装工程時にロアパネル112Aの上端部118Aに付着した塗料が、接合部114Aに溜まらずに隙間132から積極的に排出される。したがって、車両用バックドア102Aの意匠面120に液だれによる不良が発生することを低減し、塗装工程時に修正作業が不要となり、工数を削減することができる。
【0038】
一例として車両用バックドア構造100Aでは、稜線134、136の丸み部138、140の丸みの曲率半径を、稜線134、136の湾曲形状の曲率半径よりも大きく、特に2倍程度となるように形成することで、塗料をより排出され易くすることができる。
【0039】
図4は、図3の車両用バックドア構造100Aの変形例を示す図である。変形例である車両用バックドア構造100Bは、接合部114Bが傾斜していない点で上記の車両用バックドア構造100Aと異なる。
【0040】
接合部114Bは、図示のようにアッパパネル110Aの下端部116Aとロアパネル112Bの上端部118Bが重なることで形成されていて、これらはいずれも傾斜していない。しかし接合部114Bは、ロアパネル112Bの上端部118Bの一対の稜線134A、136Aの間と、アッパパネル110Aの下端部116Aとの間で隙間132Aを確保している。
【0041】
このため車両用バックドア構造100Bにおいて、塗料は、ロアパネル112Bの上端部118Bに沿って点線Kに示す経路を通り、さらに点Lに示す経路を通って接合部114Bに確保された隙間132Aから傾斜部124に流れ込むことができる。
【0042】
したがって車両用バックドア構造100Bによれば、塗装工程時にロアパネル112Bの上端部118Bに付着した塗料を、接合部114Bの隙間132Aから積極的に排出することができる。その結果、車両用バックドア102Bの意匠面120に液だれによる不良が発生することを低減し、塗装工程時に修正作業が不要となり、工数を削減することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、車両用バックドア構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
100、100A、100B…車両用バックドア構造、102、102A、102B…車両用バックドア、104…窓枠、106、106A、106B…アウタパネル、108…インナパネル、110、110A…アッパパネル、112、112A、112B…ロアパネル、114、114A、114B…接合部、116、116A…アッパパネルの下端部、118、118A、118B…ロアパネルの上端部、120…車両用バックドアの意匠面、122…膨出部、124…傾斜部、126…切欠部、128…膨出部の端面、130…傾斜部の下端、132、132A…隙間、134、134A、136、136A…稜線、138、140…稜線の丸み部
図1
図2
図3
図4