(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020770
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】麺食品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A21C 11/24 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
A21C11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124347
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信一
(72)【発明者】
【氏名】富本 文
【テーマコード(参考)】
4B031
【Fターム(参考)】
4B031CA02
4B031CA04
4B031CA05
4B031CH09
(57)【要約】
【課題】互いに峻別可能な2種類以上の麺線を含む麺食品を効率的に製造する新たな技術的手段を提供する。
【解決手段】第1の切刃と、該第1の切刃から得られる麺線と峻別可能な麺線が得られる第2の切刃とを備える製麺機を用いて、互いに峻別可能な第1の麺線および第2の麺線を少なくとも含む麺食品を製造する方法であって、
第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を準備する工程、
上記第1の被細断麺帯を上記第1の切刃で細断して少なくとも第1の麺線を得る工程、および
上記第2の被細断麺帯を上記第2の切刃で細断して少なくとも第2の麺線を得る工程、
を含む、方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の切刃と、該第1の切刃から得られる麺線と峻別可能な麺線が得られる第2の切刃とを備える製麺機を用いて、互いに峻別可能な第1の麺線および第2の麺線を少なくとも含む麺食品を製造する方法であって、
第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を準備する工程、
前記第1の被細断麺帯を前記第1の切刃で細断して少なくとも第1の麺線を得る工程、および
前記第2の被細断麺帯を前記第2の切刃で細断して少なくとも第2の麺線を得る工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の麺線を得る工程および前記第2の麺線を得る工程のうちの少なくとも一方が、麺線をちぢれさせる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の切刃および前記第2の切刃とは、細断する麺線の断面形状、細断する麺線の太さ、細断した麺線に与えるちぢれ具合のうち、少なくとも1つを異ならせることで、互いに峻別可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記準備する工程が、ベース麺帯を幅方向に複数に分割し、少なくとも第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得る工程であり、
さらに、前記第1の麺線と、前記第2の麺線とを分散しながら混合する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合工程が、同一の茹で槽内に前記第1の麺線および前記第2の麺線を投入し、前記第1の麺線および前記第2の麺線を同時に茹でる工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の麺線および前記第2の麺線の混合後に、前記第1の麺線および前記第2の麺線を含む混合物を予め設定された量に分割する工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ベース麺帯を幅方向に複数に分割し、少なくとも第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得る麺帯分割手段と、
前記第1の被細断麺帯を細断して麺線を得る第1の切刃と、
前記第2の被細断麺帯を細断して麺線を得る第2の切刃と、を備え、
前記第1の切刃と前記第2の切刃は、互いに峻別可能な麺線を生成する構造である、製麺機。
【請求項8】
製麺機と、該製麺機で得た麺線を茹でる茹で漕とを備える製麺システムであって、
前記製麺機は、
ベース麺帯を幅方向に複数に分割し、少なくとも第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得る麺帯分割手段と、
前記第1の被細断麺帯を細断して麺線を得る第1の切刃と、
前記第2の被細断麺帯を細断して麺線を得る第2の切刃と、
を備え、
前記第1の切刃と前記第2の切刃は、互いに峻別可能な麺線を生成する構造であり、
前記茹で漕は、前記第1の切刃および前記第2の切刃から得た互いに峻別可能な麺線を茹でて該茹で漕内で混合する、
製麺システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、麺食品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
うどん、そば、ラーメン等の麺食品を大量に生産する場合、1種類の切刃を備えたローラー式製麺機を使用することが一般的である。
【0003】
特許文献1では、幅広に圧延された麺帯を幅方向で複数に分割し、分割後の各麺帯を、それぞれの麺帯に対応した同一仕様の切刃により細断して麺線とする麺帯分割による麺類の製造方法が開示されている。この従来技術では、分割後の各麺帯を、麺帯の厚さ方向で互いに異なる位置とるように、分割された麺帯の少なくとも一部を変位させ、各麺帯を上記異なる位置で上記同一仕様の切刃により細断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
特許文献1で開示されている方法では、1種類の麺線を含む麺食品の製造が可能であるものの、麺のサイズ、または形状に幅を有する麺線、すなわち峻別可能な2種類以上の麺線を含む麺食品の製造が不可能ないし極めて困難である。
【0006】
したがって、本開示は、互いに峻別可能な2種類以上の麺線を含む麺食品を効率的に製造する新たな技術的手段を提供することを一つの目的とする。
【0007】
本開示者らは、ローラー式製麺機において、少なくとも2つの切刃を別々に用いて得られる麺を混合すると、互いに峻別可能な2種類以上(例えば、麺のサイズ、形状に幅を有する)の麺線を含む麺食品を効率的に製造しうることを見出した。本開示は、かかる知見に基づくものである。
【0008】
本開示の一実施態様によれば、第1の切刃と、該第1の切刃から得られる麺線と峻別可能な麺線が得られる第2の切刃とを備える製麺機を用いて、互いに峻別可能な第1の麺線および第2の麺線を少なくとも含む麺食品を製造する方法であって、
第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を準備する工程、
上記第1の被細断麺帯を上記第1の切刃で細断して少なくとも第1の麺線を得る工程、および
上記第2の被細断麺帯を上記第2の切刃で細断して少なくとも第2の麺線を得る工程、
を含む、方法が提供される。
【0009】
本開示によれば、峻別可能な2種類以上の麺線を含む麺食品を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の方法に使用される製麺機の一例の側面図を示す。
【
図2】本開示の方法に使用される製麺機の一例の平面図を示す。
【
図3】本開示の方法に使用される製麺機に含まれるシュートの一例の拡大平面図を示す。
【
図4】本開示の方法に使用される製麺機に含まれるシュートの一例の拡大側面図を示す。
【発明の具体的説明】
【0011】
本開示は、質の高い食品を製造して、人々の生活の質的改善に貢献し、SDGs観点に資する技術を提供するものである。
【0012】
本開示の一実施態様によれば、第1の切刃と、該第1の切刃から得られる麺線と峻別可能な麺線が得られる第2の切刃とを備える製麺機を用いて、互いに峻別可能な第1の麺線および第2の麺線を少なくとも含む麺食品を製造する方法は、
第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を準備する工程、
上記第1の被細断麺帯を上記第1の切刃で細断して少なくとも第1の麺線を得る工程、および
上記第2の被細断麺帯を上記第2の切刃で細断して少なくとも第2の麺線を得る工程、
を含む。
【0013】
[本開示の方法で使用される製麺機]
本開示の方法で使用される製麺機(典型的には、ローラー式製麺機)の一例について、
図1~4を参照しつつ具体的に説明する。
【0014】
図1および2は、本開示の方法に使用される製麺機(ローラー式製麺機)の主要部の一例を示す。
図1および2では、製麺機1をフロアに設置した状態における上下、前後等の各方向をクロスした矢印により示している。以下の説明では、方向に関する説明をこの矢印の方向を基準として行うものとする。後述する
図3および4においても同様である。
【0015】
図1および2において、製麺機1の筐体2とコンベア3が、フロア(図示略)に設置された支持台4に支持されている。筐体2内には、上方から順次、ロール対5、分割刃6、シュート7、第1の切刃8および第2の切刃9が備えられている。本開示によれば、第2の切刃は、第1の切刃から得られる麺線と峻別可能な麺線を得ることができるものとされる(すなわち、第1の切刃はと第2の切刃は、互いに峻別可能な麺線を生成する構造である)。本開示の一実施態様によれば、第1の切刃および第2の切刃は、互いに峻別可能である。上記被細断麺帯を輸送する際の動力や構成を避ける観点から、分割刃6、シュート7および第1の切刃8を通過する第1の被細断麺帯BN1、ならびに/または、分割刃6、シュート7および第2の切刃9を通過する第2の被細断麺帯BN2は、一貫して重力方向の上から下に移動されることが好ましい。この場合、上記被細断麺帯を重力により上記切刃に向けて輸送することができ、上記被細断麺帯の不測の変形ないし変性を防止することができうる。
【0016】
ロール対5は、ベース麺帯BNを筐体2内に導入する。
【0017】
分割刃6は、ベース麺帯BNを複数に分割(例えば、2分割)する。2分割の場合、分割刃6は、ベース麺帯BNを第1の被細断麺体BN1と第2の被細断麺体BN2に分割する。したがって、本開示の一実施態様によれば、上記製麺機は、ベース麺帯を複数に分割し(好ましくは、ベース麺帯を幅方向に複数に分割し)、少なくとも第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得る麺帯分割手段(または、麺帯分割部)を備える。本開示の一実施態様によれば、麺帯分割手段または麺帯分割部は、分割刃を少なくとも有する。
【0018】
シュート7は、第1の被細断麺体BN1および第2の被細断麺体BN2を、それぞれ第1の切刃8および第2の切刃9に案内する。第1の被細断麺体BN1は、シュート7の前側の板部71aの表面上を摺動して案内されて、前側に配置された第1の切刃8に輸送される。また、第2の被細断麺体BN2は、シュート7の後側の板部71bの表面上を摺動して案内されて、後側に配置された第2の切刃9に輸送される。第1の被細断麺体BN1および第2の被細断麺体BN2は、シュート7の板部71aおよび71bにより前後方向に分岐され、ベース麺帯BNの厚さ方向で互いに異なる位置に変位されていることが好ましい。
【0019】
図3および
図4を参照しつつ、シュート7の一例について説明する。シュート7は、2枚の板部71aおよび71bにより三角形の屋根状に形成されていることが好ましい。シュート7の上側では、板部71aおよび71bの端部が三角形の屋根状の頂上を形成するように組み合わされ、板部71aの端部が突出部72aを形成してもよいし、板部71bの端部が突出部72bを形成してもよい。突出部72aは、シュート7の左半分側で、組み合わされた板部71aの左半分側端部から突出してオーバーハングしていてもよい。また、突出部72bは、シュート7の右半分側で、組み合わされた板部71bの右半分側端部から突出してオーバーハングしていてもよい。
【0020】
シュート7の左右両側部は、側板74により覆われていてもよい。右側の側板74は、板部71aの右側端部を折り曲げて形成されており、その先端部が板部71bの右側端部を折り曲げて形成されたフランジ75に接合されていてもよい。同様に、左側の側板74は、板部71bの左側端部を折り曲げて形成されており、その先端部が板部71aの左側端部を折り曲げて形成されたフランジ75に接合されていてもよい。
【0021】
各側板74の外側表面には、各一対のナット76が固定されていてもよい。各ナット76は、シュート7を筐体2に固定するものであってもよい。板部71aおよび71bは、第1の被細断麺体BN1および/または第2の被細断麺体BN2が良好に滑るように、所望のコーティング(例えば、フッ素樹脂加工)を施した金属製の板(例えば、ステンレス製の板)により形成されていてもよい。突出部72aおよび72bは、分割刃6に付随するボルト(図示略)との干渉を避けるために切欠が形成されて、凹凸形状を成していることが好ましい。また、板部71aの前後方向の下端部には、後述する第1の切刃8のギヤ82および/または83との干渉を避けるための切欠部73a1および/または73a2が形成されていてもよい。同様に、板部71bの前後方向の下端部には、後述する第2の切刃9のギヤ92および/または93との干渉を避けるための切欠部73b1および/または73b2が形成されていてもよい。
【0022】
第1の切刃8は、
図1および2のように、シュート7の板部71aの前後方向の下端部に備えられていることが好ましい。第1の切刃8は、シュート7の板部71aの左側半分に案内される第1の被細断麺帯BN1を細断するように板部71aの下端部の左側に配置されていることが好ましい。このように第1の切刃を配置することで、第1の被細断麺帯は、シュートの板部の表面上を重力により下方に摺動して第1の切刃に輸送され、細断される点で有利である。
【0023】
同様に、第2の切刃9は、
図1および2のように、シュート7の板部71bの前後方向の下端部に備えられていることが好ましい。第2の切刃9は、シュート7の板部71bの右側半分に案内される第2の被細断麺帯BN2を細断するように板部71bの下端部の右側に配置されていることが好ましい。このように第2の切刃を配置することで、第2の被細断麺帯は、シュートの板部の表面上を重力により下方に摺動して第2の切刃に輸送され、細断される点で有利である。
【0024】
本開示の一実施態様によれば、上記製麺機は、第1の切刃と、第2の切刃とを異なる位置に備える。上記製麺機が第1の切刃および第2の切刃を異なる位置に備えることは、第1の切刃および第2の切刃が互いに連結されることがなく、連結部等を必ずしも必要としないため、製麺機の軽量化が可能な点で有利である。
【0025】
第1の切刃8は、第1の被細断麺帯BN1を細断して麺線(例えば、第1の麺線N1)とするように、円筒状の刃具81が一対組み合わされて構成されていることが好ましい。同様に、第2の切刃9は、第2の被細断麺帯BN2を細断して麺線(例えば、第2の麺線N2)とするように、円筒状の刃具91が一対組み合わされて構成されていることが好ましい。
【0026】
刃具81および91は、通常、回転軸が互いに平行とされ、外周面同士が対向配置されている。第1の被細断麺帯BN1は、刃具81間を通過することで、麺線(例えば、第1の麺線N1)に細断される。同様に、第2の被細断麺帯BN2は、刃具91間を通過することで、麺線(例えば、第2の麺線N2)に細断される。
【0027】
刃具81および91の両端部には、刃具81および91が回転駆動することを可能にするために、それぞれギヤ82および83ならびにギヤ92および93が設けられていることが好ましい。ギヤ82および83は、シュート7の板部71aの切欠部73a1および73a2に受け入れられていることが好ましい。同様に、ギヤ92および93は、シュート7の板部71bの切欠部73b1および73b2に受け入れられていることが好ましい。このようにギヤ82および83ならびに/またはギヤ92および93が設けられることで、板部71a上を案内されてくる第1の被細断麺帯BN1および/または板部71b上を案内されてくる第2の被細断麺帯BN2は、それぞれ一対の刃具81および/または91間に丁度受け入れられる点で有利である。
【0028】
第1の切刃8および第2の切刃9は、互いの干渉を避け、個々に独立して自由度高く配置する観点からは、
図2のように、それらの刃具81および91がそれらの回転軸に交差する方向で互いに重なる位置関係とされていることが好ましい。
【0029】
図1のように、第1の切刃8の一対の刃具81の下部および/または第2の切刃9の一対の刃具91の下部(すなわち、麺線の流れの下流側)には、それぞれ滞留部84および/または94が備えられていてもよい。滞留部84(または滞留部94)は、一対の刃具81(または刃具91)により細断された麺線の流動を一時的に滞留させて、麺線にちぢれを生じさせることを可能にする。滞留部は、麺線にちぢれを生じさせることが可能なものである限り、材質、形状等は特段限定されるものではない。滞留部84(または滞留部94)は、例えば、第1の切刃8により細断された麺線(または第2の切刃9により細断された麺線)が通る通路を挟んで対向配置された一対のゴム板により構成されていてもよい。滞留部84(または滞留部94)が一対のゴム板の場合、一対の刃具81(または刃具91)により細断された麺線は、一対のゴム板間の通路を通過する際、ゴム板に接触してスムーズに通過することができずにゴム板上に滞留し、ちぢれが形成される。滞留部84(または滞留部94は)が一対のゴム板の場合、ゴム板の厚さ、長さ等を変更することで、第1の麺線N1(または第2の麺線N2)に形成されるちぢれの程度(ちぢれの具合)を変更することができる。例えば、ゴム板の厚さを約1.0~約2.0mmにすることで、ちぢれの波形が大きい麺線を得ることができる場合がある。また、ゴム板の厚さを約2.0~約3.0mmにすることで、ちぢれの波形が小さい麺線を得ることができる場合がある。
【0030】
本開示によれば、第1の切刃8および第2の切刃9を互いに独立して配置可能であるため、各切刃の下流側の滞留部84および/または85も隣接する各切刃の影響を受けることなく、自由度高く構成することができる。そのため、本開示は、滞留部が備えられている場合には、各麺線に対するちぢれを各切刃下流の全域でむらなく生じさせることができる点で有利である。
【0031】
第1の切刃および/または第2の切刃は、当技術分野で一般的に使用されている切刃を用いてもよい。切刃の材質としては、例えば、ステンレス、鉄等が挙げられる。切刃の形状としては、例えば、丸刃、角刃、薄刃等が挙げられる。切刃の番手としては、例えば、4番(麺幅:約7.5mm)、6番(麺幅:約5mm)、8番(麺幅:約3.8mm)、10番(麺幅:約3mm)、12番(麺幅:約2.5mm)、14番(麺幅:約2.2mm)、16番(麺幅:約1.9mm)、18番(麺幅:約1.7mm)20番(麺幅:約1.5mm)、22番(麺幅:約1.4mm)、24番(麺幅:約1.3mm)、26番(麺幅:約1.2mm)、28番(麺幅:約1.1mm)、30番(麺幅:約1mm)等が挙げられる。また、第1の切刃および/または第2の切刃は、特殊加工した切刃(例えば、特開2014-82978号公報に記載のもの)を使用してもよい。第1の切刃および第2の切刃の組み合わせは、第1の切刃から得られる麺線と第2の切刃から得られる麺線とを峻別可能な組み合わせである限り、所望の麺食品に応じて適宜調整することができる。例えば、第1の切刃および第2の切刃は、細断する麺線の断面形状(例えば、略丸形、略楕円形、略三角形、略四角形)、細断する麺線の太さ(例えば、麺幅)、細断した麺線に与えるちぢれ具合(例えば、ちぢれの波形の大きさ)等のうちの少なくとも1つを異ならせることで、互いに峻別可能としてもよい。また、第1の切刃および第2の切刃は、切刃の形状、切刃の番手、滞留部の有無等のうちの少なくとも1つを異ならせることで、峻別可能としてもよい。
【0032】
第1の麺線N1は、第1の切刃8の下流においてコンベア3上に載せられて搬送されてもよい。同様に、第2の麺線N2は、第2の切刃9の下流においてコンベア3上に載せられて搬送されてもよい。なお、
図1および
図2の例では1つのコンベア3のみが図示されているが、2以上のコンベア3が備えられていてもよく、それぞれのコンベアが第1の麺線N1および第2の麺線N2をそれぞれ搬送してもよい。第1の麺線N1および第2の麺線N2は、コンベア3の下流側において混合されてもよい。しかし、本開示の好ましい実施態様によれば、第1の麺線N1および第2の麺線N2は、コンベア3の下流側において混合されることなく、茹で槽(図示せず)に投入される。
【0033】
以下、上述した製麺機を用いて麺食品を製造する方法を、工程毎に詳細に説明する。
【0034】
[第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を準備する工程]
本開示の一実施態様によれば、第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を準備する工程が実施される。この工程では、第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯の少なくとも一方を製造してもよいし、事前に調製された(例えば、市販された)第1の被細断麺帯および/または第2の被細断麺帯を入手してもよい。
【0035】
本開示における被細断麺帯とは、後述する工程で麺線に細断される麺帯を意味し、典型的には、麺用生地を所望の厚さを有するシート状に加工したものである。麺用生地とは、第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯のもととなる生地であり、例えば、小麦粉、澱粉、米粉、そば粉、マメ粉等の主原料、および水、食塩、かん水等を混練したものである。麺用生地は、上記した原料以外に、例えば、調味料、着色料、乳化剤、酸化防止剤、アルコール等の任意の食品添加成分を含んでいてもよい。麺用生地は、第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得るために別個のものをそれぞれ準備してもよいし、第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯で同一のものを使用してもよい(すなわち、1種類の麺用生地から第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得てもよい)。麺用生地から被細断麺帯に加工する方法としては、例えば、上記麺用生地を圧延した粗麺帯を、圧延ロール(例えば、製麺機に備えられたロール対)でさらに圧延する方法が挙げられる。なお、複数の粗麺帯(すべて同一の麺用生地由来のものであってもよいし、2種類以上の麺用生地由来のものであってもよい)を準備し、これらを複合機等で重ねた後に、圧延ロール(例えば、製麺機に備えられたロール対)でさらに圧延することで、被細断麺帯を得てもよい。
【0036】
本開示の一実施態様によれば、第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯は、同一の麺用生地から得られる。本開示の好ましい実施態様によれば、第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯は、麺用生地を所望の厚さを有するシート状に加工したベース麺帯を分割することにより得られてもよい。かかる実施態様においては、上記麺用生地を圧延した粗麺帯を、圧延ロール(例えば、製麺機に備えられたロール対)でさらに圧延することにより、ベース麺帯を得てもよい。ベース麺帯とは、上記麺用生地を所望の厚さを有するシート状に加工したものであり、複数に分割されることで、少なくとも第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得ることができるものである。上記ベース麺帯を3分割以上にする場合、第3の被細断麺帯等が存在してもよい。本開示のさらに好ましい実施態様によれば、第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯は、製麺機によりベース麺帯を幅方向に複数に分割(好ましくは、2分割)することにより得られる。
【0037】
[被細断麺帯を輸送する工程]
本開示の一実施態様によれば、製麺機において、上記第1の被細断麺帯を上記第1の切刃に輸送し、上記第2の被細断麺帯を上記第2の切刃に輸送する工程が実施される。本開示の好ましい実施態様によれば、製麺機において、上記第1の被細断麺帯および上記第2の被細断麺帯を、上記ベース麺帯の厚さ方向に互いに異なる位置に分岐させ、上記第1の被細断麺帯を上記第1の切刃に輸送し、上記第2の被細断麺帯を上記第2の切刃に輸送する工程が実施される。上記第1の被細断麺帯および上記第2の被細断麺帯を、互いに異なる切刃(すなわち、第1の切刃および第2の切刃)に向けてそれぞれ輸送することで、第1の麺線および第2の麺線を効率的に製造できる点で有利である。なお、第3の被細断麺帯等が存在する場合には、製麺機において対応する第3の切刃等を設置し、同様に輸送してもよい(第3の切刃等の設置については、例えば、特許文献1も参照されたい)。
【0038】
[第1の被細断麺帯を第1の切刃で細断して少なくとも第1の麺線を得る工程]
本開示の一実施態様によれば、製麺機において、上記第1の被細断麺帯を上記第1の切刃で細断して少なくとも第1の麺線を得る工程が実施される。本開示おいて、麺線とは、被細断麺帯を製麺機の切刃により線状に細断したものを意味する。上記第1の切刃が略均一の太さ、形状等の麺線を切り出し可能な一般的な切刃である場合には、通常、1種類の麺線(例えば、第1の麺線)のみが得られる。一方、上記第1の切刃が不規則な形状を有し、2種類以上の麺線を切り出し可能な切刃(例えば、特開2014-82978号公報に開示されている切刃)の場合には、第1の麺線だけでなく、第3、第4の麺線等が得られてもよい。より複雑な食感等を有する麺食品を所望する場合には、上記第1の切刃として2種類以上の麺線を切り出し可能な切刃を使用することが有利な場合がある。
【0039】
本開示の一実施態様によれば、上記第1の麺線を得る工程は、麺線をちぢれさせる工程を含む。麺線をちぢれさせる方法としては、任意の方法を採用してもよい。上記麺線をちぢれさせる工程を含むことで、異なる食感やすすりやすさ等を有する麺食品を幅広に容易に製造できる点で有利である。かかる方法としては、例えば、上記第1の切刃で細断された麺線を所望の機器等で1回以上持ち上げる等の外力を与えることで麺線をちぢれさせる方法や、上記第1の切刃を通過して細断される麺線の流動方向の下流側に設けられた滞留部(例えば、ゴム板)により麺線を滞留させることで麺線をちぢれさせる方法等が挙げられる。
【0040】
本開示の好ましい実施態様によれば、上記麺線をちぢれさせる工程は、上記第1の切刃を通過して細断される上記麺線の流動方向の下流側に設けられた滞留部により麺線をちぢれさせる工程を含む。かかる実施態様においては、上記滞留部の取り外しが容易であるため、同一の製麺機において、異なる食感やすすりやすさ等を有する麺食品を幅広に容易に製造できる点で有利である。
【0041】
[第2の被細断麺帯を第2の切刃で細断して少なくとも第2の麺線を得る工程]
本開示の一実施態様によれば、製麺機において、上記第2の被細断麺帯を上記第2の切刃で細断して少なくとも第2の麺線を得る工程が実施される。上記第2の切刃が略均一の太さ、形状等の麺線を切り出し可能な一般的な切刃である場合には、通常、1種類の麺線(例えば、第2の麺線)のみが得られる。一方、上記第1の切刃が不規則な形状を有し、2種類以上の麺線を切り出し可能な切刃(例えば、特開2014-82978号公報に開示されている切刃)の場合には、第2の麺線だけでなく、第3、第4の麺線等が得られてもよい。より複雑な食感等を有する麺食品を所望する場合には、上記第2の切刃として2種類以上の麺線を切り出し可能な切刃を使用することが有利な場合がある。
【0042】
本開示の一実施態様によれば、上記第2の麺線を得る工程は、麺線をちぢれさせる工程を含む。麺線をちぢれさせる方法としては、任意の方法を採用してもよい。上記麺線をちぢれさせる工程を含むことで、異なる食感やすすりやすさ等を有する麺食品を幅広に容易に製造できる点で有利である。かかる方法としては、例えば、上記第2の切刃で細断された麺線を所望の機器等で1回以上持ち上げる等の外力を与えることで麺線をちぢれさせる方法や、上記第2の切刃を通過して細断される麺線の流動方向の下流側に設けられた滞留部(例えば、ゴム板)により麺線を滞留させることで麺線をちぢれさせる方法等が挙げられる。
【0043】
本開示の好ましい実施態様によれば、上記麺線をちぢれさせる工程は、上記第2の切刃を通過して細断される上記麺線の流動方向の下流側に設けられた滞留部により麺線をちぢれさせる工程を含む。かかる実施態様において、上記滞留部の取り外しが容易であるため、同一の製麺機において、異なる食感やすすりやすさ等を有する麺食品を幅広に容易に製造できる点で有利である。
【0044】
本開示の一実施態様によれば、上記第1の麺線を得る工程および上記第2の麺線を得る工程のうちの少なくとも一方が、麺線をちぢれさせる工程を含む。
【0045】
上記で得られた第1の麺線および/または第2の麺線(第3の麺線等が存在する場合にはそれら麺線も含む、以下同様)は、加熱される前に必要以上に物理的な刺激(例えば、麺線の持ち上げ、麺線どうしの接触)が与えられると、麺線が変形ないし変性する場合があることが、本検討により明らかとなった。そのため、上記で得られた第1の麺線および/または第2の麺線をコンベア等で輸送する場合には、必要以上にこれら麺線に物理的な刺激が加わらないように、麺線の輸送する速度を調整する、および/または製造ラインを設計する(例えば、コンベアの乗り継ぎを減らすか、乗り継ぎ時の高さを調製する)ことが有利である。
【0046】
[第1の麺線と第2の麺線を混合する工程]
本開示の一実施態様によれば、上記第1の麺線と、上記第2の麺線を混合する工程が実施される。上記で得られた第1の麺線および第2の麺線を任意の方法で混合することで、麺食品としてもよい。上記で得られた第1の麺線および第2の麺線は、混合する前にまたは混合した後に、任意の工程(例えば、炒め、茹で、蒸し、油ちょう等の加熱;冷蔵;冷凍;調味料、着色料、乳化剤、酸化防止剤、アルコール等の任意の食品添加成分等の添加、混合等)を経ることで、麺食品としてもよい。上記で得られた第1の麺線および第2の麺線を混合する前に上記任意の工程を実施する場合、上記任意の工程は、上記第1の麺線および第2の麺線をそれぞれ別個に実施してもよいし、同時に実施してもよいし、上記第1の麺線および第2の麺線のいずれか一方のみを実施してもよい。上記したとおり、加熱前の麺線は物理的な刺激により変形ないし変性する場合があることを考慮すると、麺線の変形ないし変性を防止する観点からは、上記で得られた第1の麺線および第2の麺線を加熱しながら混合するか、または加熱後に混合することが特に有利である。
【0047】
本開示の好ましい実施態様によれば、上記第1の麺線と、上記第2の麺線を分散しながら混合する工程が実施される。分散しながら2種類以上の麺線を混合することは、得られる麺食品中の2種類以上の麺線が均一に分散しやすくなり、より複雑な品質の麺食品を提供する上で有利である。分散しながら麺線を混合する方法としては、例えば、溶媒(例えば、水、油等)中に上記第1の麺線および上記第2の麺線を投入し、混合する方法や、第1の麺線および上記第2の麺線に所望のエアーを吹きかけることで各麺線が舞う状態とし、混合する方法等が挙げられる。
【0048】
本開示の好ましい実施態様によれば、上記混合工程は、同一の茹で槽内に上記第1の麺線および上記第2の麺線を投入し(好ましくは別個に投入し)、上記第1の麺線および上記第2の麺線を同時に茹でる工程を含む。上記第1の麺線および上記第2の麺線を同一の茹で槽内で同時に茹でることで、上記第1の麺線および上記第2の麺線が茹でながら混合されるため、麺食品の工業的生産において作業効率が向上する点で有利である。また、上記第1の麺線および上記第2の麺線を茹でながら混合することで、麺線が変形ないし変性しない程度にまで加熱される結果、麺線の変形ないし変性を防止することが可能となり、美観に優れた麺食品が得られる点で有利である。
【0049】
また、上記第1の麺線および上記第2の麺線を茹で槽内でより効率的に混合する観点からは、茹で槽内でバブル等を発生させることが好ましい。バブルを発生させることにより、茹で槽内の対流が促進され、上記第1の麺線および上記第2の麺線がより効率的に混合されると考えられる。バブルを発生させる方法としては、例えば、茹で槽内に公知のバブル発生装置を設置する方法等が挙げられる。
【0050】
茹で槽内の水の温度は、第1の麺線および第2の麺線を茹でることが可能な温度である限り、特段限定されるものではない。
【0051】
上記第1の麺線および第2の麺線を茹でる時間は、第1の麺線および/または第2の麺線の太さ等や、所望する麺食品に応じて適宜調整することができる。上記第1の麺線および第2の麺線の茹で時間が同じでよい場合には、上記第1の麺線および第2の麺線の茹で時間を同時に茹で槽内に投入し、所望の時間茹でた後、茹で槽内で混合された第1の麺線および第2の麺線を茹で槽内から取り出してもよい。また、上記第1の麺線および第2の麺線の茹で時間を変えたい場合には、一方の麺線を先に茹で槽内に投入し、所望時間経過後に他方の麺線を茹で槽内に投入し、所望の時間茹でた後、茹で槽内で混合された第1の麺線および第2の麺線を茹で槽内から取り出してもよい。
【0052】
茹で槽内の水の量は、投入する第1の麺線および第2の麺線の量に応じて適宜調整することができ、例えば、投入する第1の麺線および第2の麺線の合計質量(第3の麺線等が存在する場合には、それらも含めた合計質量) 1kgを基準として、約10~約50L、好ましくは約10~約40L、より好ましくは約15~約30Lであってもよい。
【0053】
茹で槽内に投入する上記第1の麺線および第2の麺線は、1食分であってもよいし、複数食分であってもよい。麺食品を工業的かつ効率的に生産する観点からは、複数食分の上記第1の麺線および上記第2の麺線を同一の茹で槽内で茹でることが好ましい。
【0054】
[第1の麺線および第2の麺線を含む混合物を予め設定された量に分割する工程]
本開示のより好ましい実施態様によれば、上記第1の麺線および上記第2の麺線の混合後に、第1の麺線および第2の麺線を含む混合物を予め設定された量に分割する工程を含む。上記混合物を予め設定された量に分割する方法としては、例えば、茹で上がった上記第1の麺線および第2の麺線を含む混合物を計量機等で計量し、分割する方法が挙げられる。上記予め設定された量としては、例えば、1食分、2食分、3食分、10食分等が挙げられる。1食分の麺食品の量としては、例えば、約50~約500g、好ましくは約100~約300g、より好ましくは約120~約200gとしてもよい。
【0055】
[麺食品]
本開示の別の実施態様によれば、本開示の方法により得られた、麺食品が提供される。麺食品としては、製麺機を用いて麺線として製造可能なものである限り特段限定されるものではなく、例えば、うどん、ひやむぎ、素麺、中華麺、きしめん、ほうとう、ビーフン、パスタ、ショートパスタ、春雨等が挙げられ、これらは単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0056】
本開示の方法により製造された麺食品は、そのまま喫食可能なものであってもよいし、さらなる処理(例えば、電子レンジ等による加熱等)をすることで喫食可能とするものであってもよい。本開示の麺食品は、好ましくは加熱調理用食品であり、より好ましくは電子レンジ調理用食品である。また、上記加熱機器による加熱処理は、冷凍食品において好適に適用される。したがって、本開示の好ましい実施態様によれば、麺食品は冷凍用食品とされる。
【0057】
[製麺機/製麺システム]
本開示の別の実施態様によれば、ベース麺帯を幅方向に複数に分割し、少なくとも第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得る麺帯分割手段と、
上記第1の被細断麺帯を細断して麺線(好ましくは第1の麺線)を得る第1の切刃と、
上記第2の被細断麺帯を細断して麺線(好ましくは第2の麺線)を得る第2の切刃と、を備え、
上記第1の切刃と上記第2の切刃は、互いに峻別可能な麺線を生成する構造である、製麺機が提供される。本開示の一実施態様によれば、上記製麺機は、互いに峻別可能な第1の麺線および第2の麺線を少なくとも含む麺食品の製造に有利に利用することができる。
【0058】
本開示の別の好ましい実施態様によれば、上記製麺機において、上記第1の切刃は、上記第1の被細断麺帯を細断して麺線(好ましくは第1の麺線)を得るように配置され、上記第2の切刃は、上記第2の被細断麺帯を細断して麺線(好ましくは第2の麺線)を得るように配置される。本開示の別の好ましい実施態様によれば、上記製麺機、上記第1の切刃と、上記第2の切刃とを異なる位置に備える。
【0059】
本開示の別の実施態様によれば、本開示の製麺機と、該製麺機で得た麺線を茹でる茹で槽とを備える、製麺システムであって、
上記茹で漕は、上記第1の切刃および上記第2の切刃から得た互いに峻別可能な麺線を茹でて該茹で漕内で混合する、
製麺システムが提供される。本開示の一実施態様によれば、上記製麺システムは、互いに峻別可能な第1の麺線および第2の麺線を少なくとも含む麺食品の製造に有利に利用することができる。
【0060】
本開示の別のさらに好ましい実施態様によれば、上記製麺システムは、上記製麺機と上記茹で槽との間に配置されたコンベアをさらに備えている。
【0061】
本開示の別のさらに好ましい実施態様によれば、上記システムにおいて、上記コンベアは、上記製麺機から排出される麺線(好ましくは、第1の麺線および第2の麺線)を上記茹で槽に搬送する。
【0062】
本開示によれば、食感に差がある麺が混合された麺食品の製造を効率的に実施することが可能となり、複雑な品質の麺食品を提供する上で有利に利用することができる。
【0063】
本開示は、以下のものを包含する。
〔1〕第1の切刃と、該第1の切刃から得られる麺線と峻別可能な麺線が得られる第2の切刃とを備える製麺機を用いて、互いに峻別可能な第1の麺線および第2の麺線を少なくとも含む麺食品を製造する方法であって、
第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を準備する工程、
上記第1の被細断麺帯を上記第1の切刃で細断して少なくとも第1の麺線を得る工程、および
上記第2の被細断麺帯を上記第2の切刃で細断して少なくとも第2の麺線を得る工程、
を含む、方法。
〔2〕上記第1の麺線を得る工程および上記第2の麺線を得る工程のうちの少なくとも一方が、麺線をちぢれさせる工程を含む、〔1〕に記載の方法。
〔3〕上記第1の切刃および上記第2の切刃とは、細断する麺線の断面形状、細断する麺線の太さ、細断した麺線に与えるちぢれ具合のうち、少なくとも1つを異ならせることで、互いに峻別可能である、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕上記準備する工程が、ベース麺帯を幅方向に複数に分割し、少なくとも第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得る工程である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕上記第1の麺線と、上記第2の麺線とを分散しながら混合する工程をさらに含む、〔1〕~〔4〕のいずれかにに記載の方法。
〔6〕上記混合工程が、同一の茹で槽内に上記第1の麺線および上記第2の麺線を投入し、上記第1の麺線および上記第2の麺線を同時に茹でる工程を含む、〔5〕に記載の方法。
〔7〕上記第1の麺線および上記第2の麺線の混合後に、上記第1の麺線および上記第2の麺線を含む混合物を予め設定された量に分割する工程をさらに含む、〔5〕または〔6〕に記載の方法。
〔8〕ベース麺帯を幅方向に複数に分割し、少なくとも第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得る麺帯分割手段と、
上記第1の被細断麺帯を細断して麺線を得る第1の切刃と、
上記第2の被細断麺帯を細断して麺線を得る第2の切刃と、を備え、
上記第1の切刃と上記第2の切刃は、互いに峻別可能な麺線を生成する構造である、製麺機。
〔9〕製麺機と、該製麺機で得た麺線を茹でる茹で漕とを備える製麺システムであって、
上記製麺機は、
ベース麺帯を幅方向に複数に分割し、少なくとも第1の被細断麺帯および第2の被細断麺帯を得る麺帯分割手段と、
上記第1の被細断麺帯を細断して麺線を得る第1の切刃と、
上記第2の被細断麺帯を細断して麺線を得る第2の切刃と、
を備え、
上記第1の切刃と上記第2の切刃は、互いに峻別可能な麺線を生成する構造であり、
上記茹で漕は、上記第1の切刃および上記第2の切刃から得た互いに峻別可能な麺線を茹でて該茹で漕内で混合する、
製麺システム。
【実施例0064】
以下、実施例を用いて本開示の方法をより詳細に説明する。但し、以下の実施例は、本開示の方法を何ら限定することを意図するものではない。なお、特段の記載がない限り、本明細書中に記載のパーセンテージや比率は、質量による。また、特段の記載がない限り、本明細書中に記載の単位や測定方法は、日本工業規格(JIS)の規定による。
【0065】
以下の実施例および参考例では、以下の切刃を使用した。
・角刃、番手#20、滞留部なし(切出機(GW4-215、トーキョーメンキ株式会社製))
・角刃、番手#20、滞留部1(切出機(GW4-215、トーキョーメンキ株式会社製)、滞留部:厚さ約2.5mmのゴム板)
・角刃、番手#20、滞留部2(切出機(GW4-215、トーキョーメンキ株式会社製)、滞留部:厚さ約1.5mmのゴム板)
・角刃、番手#16、滞留部なし(切出機(GW4-215、トーキョーメンキ株式会社製))
・丸刃、番手#20、滞留部なし(切出機(GW4-215、トーキョーメンキ株式会社製))
・丸刃、番手#20、滞留部1(切出機(GW4-215、トーキョーメンキ株式会社製)、滞留部:厚さ約2.5mmのゴム板)
・丸刃、番手#20、滞留部2(切出機(GW4-215、トーキョーメンキ株式会社製)、滞留部:厚さ約1.5mmのゴム板)
・丸刃、番手#16、滞留部なし(切出機(GW4-215、トーキョーメンキ株式会社製))
【0066】
[実施例1]
小麦粉、水、かん水および食塩を混合し、中華麺用生地を得た。得られた中華麺用生地の製麺には、公知の製麺機(株式会社豊製作所製)をベースに製造した、
図1~2の構成を備えた製麺機1(第1の切刃(角刃、番手#20、滞留部なし)/第2の切刃(丸刃、番手#20、滞留部なし))を使用した。上記中華麺用生地を圧延し、厚さを調整した幅広の中華麺用のベース麺帯を、筐体2の内部にロール対5を介して導入した。この中華麺用のベース麺帯を、分割刃6で幅方向に2分割した。分割された一方のベース麺帯(すなわち、第1の被細断麺帯)を、シュート7の前側の板部71aの表面上を摺動させて前側に配置された第1の切刃8に輸送し、細断することで、第1の麺線を得た。また、分割された他方のベース麺帯(すなわち、第2の被細断麺帯)を、シュート7の後側の板部71bの表面上を摺動させ、後側に配置された第2の切刃9に輸送し、細断することで、第2の麺線を得た。
【0067】
得られた第1の麺線および第2の麺線を、混合することなくコンベア3にて慎重に(すなわち、過度な物理的な刺激を与えないように)茹で槽へ輸送し、同一の茹で槽に投入した(投入した第1の麺線および第2の麺線の質量比は1:1)。上記第1の麺線および第2の麺線を、茹で槽内にバブルを発生させながら茹でた(第1の麺線および第2の麺線の総量100gに対して、約2Lの水を使用)。第1の麺線および第2の麺線を茹で槽から引き上げ、1食毎に分割することで、実施例1の麺食品を得た。実施例1の麺食品は、麺線の崩れが認められない美観に優れたものであった。
【0068】
茹で槽から引き上げた際、上記第1の麺線および第2の麺線が十分に混合されていたため、実施例1の麺食品は、第1の麺線および第2の麺線を略均等に含むものであった。
また、実施例1の麺食品は、麺線の崩れが認められなかった。理論に拘束されるものではないが、第1の麺線および第2の麺線を、混合することなく茹で槽に投入することで、茹でる前の麺線に物理的な刺激(例えば、麺線の持ち上げ、麺線どうしの接触など)が加わることを抑制することができ、麺線の崩れを防止することができると考えられる。また、第1の麺線および第2の麺線は、茹で槽に投入されるとこれらの表面が加熱されるため、茹で時または茹でた後に麺線どうしが接触しても、麺線の崩れが生じにくいと考えられる。また、第1の麺線および第2の麺線を同一の茹で槽内で茹でることで、茹で槽内の対流等により第1の麺線および第2の麺線が混合され、茹で槽から麺線を取り出した際には、これら麺線が十分に混合されていると考えられる。
【0069】
[実施例2~15]
実施例1と同様の方法を実施することにより、実施例2~15の麺食品を得た。実施例2~15で使用した切刃の組み合わせは、表1に記載のとおりである。実施例2~15の麺食品は、第1の麺線および第2の麺線が十分に混合されたものであった。また、実施例2~15の麺食品は、麺線の崩れが認められない美観に優れたものであった。
【0070】
【0071】
なお、実施例2~15(および後述する参考例1~4)の麺食品の製造においては、実施例1と同じ茹で時間とした。茹で時間は、得られる麺食品の食感(コシ)等に影響すると考えられる。そのため、実施例1~15(および後述する参考例1~4)において茹で時間を統一することで、茹で時間が後述する試験例1の官能評価に影響することを防止した。
【0072】
[実施例16]
実施例1と同様の方法を実施し、第1の麺線および第2の麺線を得た。得られた第1の麺線および第2の麺線を混合し、その後、混合した麺線を茹で槽に投入し、茹で槽内にバブルを発生させながら茹でた(第1の麺線および第2の麺線の質量比は1:1)。茹で時間は、実施例1と同じにした。第1の麺線および第2の麺線を茹で槽から引き上げ、1食毎に分割することで、実施例16の麺食品を得た。
【0073】
実施例16の麺食品は、上記第1の麺線および第2の麺線が十分に混合されていたため、第1の麺線および第2の麺線を略均等に含むものであった。
その一方で、実施例16の麺食品は、麺線の崩れ(丸まり、切れ、潰れ、ちぢれがなくなる等)が認められた。理論に拘束されるものではないが、茹でる前の麺線は、茹でた後の麺線と比較して、物理的な刺激等により変形ないし変性しやすいと考えられる。そのため、実施例16においては、第1の麺線および第2の麺線を茹でる前に混合した際の物理的な刺激(例えば、麺線の持ち上げ、麺線どうしの接触など)により、麺線に崩れが生じたと考えられる。麺線の崩れは、美観上好ましくない場合があるだけでなく、所望する食感の低下、小麦の風味の低下、および/または、すすりやすさの低下につながると考えらえる。
【0074】
実施例1~15と実施例16の比較から、第1の麺線および第2の麺線は、事前に混合せずに、茹で槽内で茹でながら混合することが、麺線の崩れを防止する上で特に有利である。また、第1の麺線および第2の麺線を茹でながら混合することは、第1の麺線および第2の麺線の事前の混合工程を必要としないことから、工業的生産上、作業効率が向上する点で有利である。
【0075】
麺食品の工業的な生産においては、予め設定された量(例えば、1食分)の麺線に分割してから麺線を茹でることが、効率的であると一般的に考えられている。茹でる前に麺線を予め設定された量に分割することは、茹でる前の麺線に物理的な刺激(例えば、麺線の持ち上げ、麺線どうしの接触など)を加えることになるため、麺線の崩れを防止する観点から好ましくないことが本検討から明らかとなった。本開示の好ましい実施態様によれば、第1の麺線および第2の麺線を、予め設定された量(例えば、1食分)に分割する前に茹でるため、茹でる前の麺線を分割する工程において、麺線に物理的な刺激が加わることを防止することができる点で有利である。
また、予め設定された量(例えば、1食分)の麺線に分割してから麺線を茹でる方法では、予め設定された量(例えば、1食分)に応じて茹で槽を小さくする(例えば、1食分を茹でる用の小さい茹で槽にする)ことが一般的である。そのため、この方法では、複数食分をまとめて茹でる場合と比較して、茹で槽の開口部が小さくなるため、複数の種類の麺線を茹で槽の開口部に適切に投入することは、工業的生産において容易ではない場合がある。本開示の好ましい実施態様によれば、第1の麺線および第2の麺線を予め設定された量(例えば、1食分)に分割する前に複数食分をまとめて茹でるため、それに応じて茹で槽の容量および/または開口部が大きくなる。そのため、本開示の好ましい実施態様によれば、複数の種類の麺線を茹で槽の開口部に適切に投入することが容易となるため、麺食品の工業的生産において作業効率等が向上する点で有利である。
【0076】
[参考例1~4]
実施例1と同様の方法を実施することにより、参考例1~4の麺食品を得た。参考例1~4においては、表2に記載のとおり、第1の切刃および第2の切刃として同一のものを使用した。
【0077】
【0078】
[試験例1:官能評価]
実施例1~15および参考例1~4の麺食品を一度冷凍し、電子レンジで解凍したものを使用して、以下の方法により官能評価を実施した。
官能評価は、同じサンプルに対して同評点を付けることが可能な程度に訓練された専門パネル4名にて、実施例1~15および参考例1~4の麺食品を喫食した際の食感(麺のコシ)、小麦の風味および麺のすすりやすさについて、以下の評価基準で評価した。なお、パネル間で参考例1の麺食品の食感(麺のコシ)、小麦の風味および麺のすすりやすさがいずれも3点となるように事前にすり合わせを行い、各パネラーが共通認識を持つようにした。
結果を表3に示す。
<食感(麺のコシ)の評価基準>
・5点:麺のコシが非常に強い
・4点:麺のコシが強い
・3点:麺のコシが普通
・2点:麺のコシが弱い
・1点:麺のコシが非常に弱い
<小麦の風味の評価基準>
・5点:小麦の風味を非常に強く感じる
・4点:小麦の風味を強く感じる
・3点:小麦の風味を感じる
・2点:小麦の風味をわずかに感じる
・1点:小麦の風味を感じない
<麺のすすりやすさの評価基準>
・5点:麺を非常にすすりやすい
・4点:麺をすすりやすい
・3点:麺を適度にすすれる
・2点:麺をすすりにくい
・1点:麺を非常にすすりにくい
【0079】
【0080】
表3の結果からも明らかなとおり、本開示の方法は、同一の製麺機において切刃を自由に組み合わせるという極めて簡便な方法で、麺の形状、太さおよび/またはちぢれの程度が異なる2種以上の麺線を製造することができ、幅広い品質(例えば、食感、小麦の風味、すすりやすさ)の麺食品を提供できる点で有利である。
【0081】
本開示の方法は、切刃の異なる複数台の製麺機を必ずしも必要としないため、生産設備や生産スペースを効率化できる点で有利である。
【0082】
なお、切刃を1種類のみ備える従来の製麺機において、切刃自体を複雑に加工することで、形状の異なる2種以上の麺線を含む麺食品を製造する方法も知られている。しかし、この従来の方法では、切刃の加工難易度が上がる、ならびに/または、組み合わせ可能な切刃の形状および/もしくは幅が限定されるため、応用に限界があった。本開示の方法によれば、切刃自体の複雑な加工を必ずしも必要とせず、第1の切刃と第2の切刃を任意に組み合わせるという極めて簡便な方法で、形状の異なる2種以上の麺線を自由に組み合わせた麺食品を製造できる点で有利である。