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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020772
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
H02K1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124350
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉田 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】市川 和男
(72)【発明者】
【氏名】阪井 博行
(72)【発明者】
【氏名】三浦 昂彦
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA02
5H601GA28
(57)【要約】
【課題】重量及びサイズの増大を抑制しつつ、NV性能に優れた回転電機をもたらす。
【解決手段】モータ100は、円筒状のロータコア21と、ロータコア21の内部に配置されかつ該ロータコア21の周方向に並んだ複数の空孔26及び該空孔26内を移動可能に封入された多数の粒状体27によって構成される複数の粒状体ダンパ25と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のロータコアと、
前記ロータコアの内部に配置されかつ該ロータコアの周方向に並んだ複数の空孔と、該空孔内を移動可能に封入された多数の粒状体と、によって構成される複数の粒状体ダンパと、を備える
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載された回転電機において、
前記ロータコアの内部に配置されかつ前記周方向に並んだ複数のマグネットペアを備え、
前記複数のマグネットペアは、それぞれ、前記周方向にV字状に並んだ2つの永久磁石によって構成され、
前記複数の空孔は、それぞれ、前記複数のマグネットペアそれぞれのV字の谷間に配置される
ことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載された回転電機において、
前記ロータコアの内部に配置されかつ前記周方向に並んだ複数のマグネットペアを備え、
前記複数のマグネットペアは、それぞれ、前記周方向に並んだ2つの永久磁石によって構成され、
前記複数の空孔は、それぞれ、前記複数のマグネットペアのうち隣接する2つのマグネットペアの間に配置される
ことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項1に記載された回転電機において、
前記ロータコアの内部に配置されかつ前記周方向に並んだ複数のマグネットペアを備え、
前記複数のマグネットペアは、それぞれ、前記周方向に並んだ2つの永久磁石によって構成され、
前記複数の空孔は、それぞれ、前記複数のマグネットペアそれぞれの径方向内側に配置される
ことを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載された回転電機において、
前記粒状体は、磁性材料からなる
ことを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1に記載された回転電機において、
前記複数の空孔は、それぞれ、前記周方向に沿って延びかつ前記ロータコアの径方向に並んだ複数の空隙によって構成される
ことを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項6に記載された回転電機において、
前記複数の空隙は、それぞれ、前記周方向に分割されるように仕切られている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項2又は3に記載された回転電機において、
前記複数の空孔は、前記ロータコアの周方向及び厚さ方向に千鳥状に配置される
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ及び発電機等の回転電機では、その駆動に伴って発生するNV(騒音・振動)が問題となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、モータのNVを低減させる技術として、モータステータ鉄心の外周面とモータハウジングの内壁との間に設けられた隙間に、固体、膏体又は液体からなるダンピング媒体を充填するものが開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、複数の粒子をダンピング媒体として使用する粒状体ダンパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-65082号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】市川和男他、日本機械学会論文集、Vol.87、No.896(2021)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粒状体ダンパは、液体を使用するものに比べ緻密なシールが不要になるとともに粒子間の摩擦による熱散逸による減衰効果向上も期待できる。しかしながら、粒子の封入部位において空隙率を確保する必要がある。
【0008】
このような粒状態ダンパを、モータハウジングや、例えば特許文献1のように回転電機のモータステータ鉄心の外周面とモータハウジングの内壁との間に設けようとすると、モータハウジングの肉厚増大による回転電機の重量及びサイズの増大が懸念される。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量及びサイズの増大を抑制しつつ、NV性能に優れた回転電気をもたらすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、回転電機に関する。この回転電機は、円筒状のロータコアと、前記ロータコアの内部に配置されかつ該ロータコアの周方向に並んだ複数の空孔と、該空孔内を移動可能に封入された多数の粒状体と、によって構成される複数の粒状体ダンパと、を備える。
【0011】
前記構成では、ロータコアの径方向の厚みを利用して粒状体ダンパを配置している。これにより、回転電機の重量及びサイズの増大を抑制しつつ、NV性能を向上できる。
【0012】
また、前記回転電機は、前記ロータコアの内部に配置されかつ前記周方向に並んだ複数のマグネットペアを備え、前記複数のマグネットペアは、それぞれ、前記周方向にV字状に並んだ2つの永久磁石によって構成され、前記複数の空孔は、それぞれ、前記複数のマグネットペアそれぞれのV字の谷間に配置される、としてもよい。
【0013】
前記構成によれば、各空孔は、対応するマグネットペアのV字の谷間に配置される。このように配置することで、ロータコアの径方向の厚みを抑制することができる。そのことで、回転電機の重量及びサイズの抑制、ひいてはNV性能の向上に有利になる。
【0014】
また、前記回転電機は、前記ロータコアの内部に配置されかつ前記周方向に並んだ複数のマグネットペアを備え、前記複数のマグネットペアは、それぞれ、前記周方向に並んだ2つの永久磁石によって構成され、前記複数の空孔は、それぞれ、前記複数のマグネットペアのうち隣接する2つのマグネットペアの間に配置される、としてもよい。
【0015】
前記構成によれば、各空孔は、2つのマグネットペアの間に配置される。このように配置することで、ロータコアの径方向の厚みを抑制することができる。そのことで、回転電機の重量及びサイズの抑制、ひいてはNV性能の向上に有利になる。
【0016】
また、前記回転電機は、前記ロータコアの内部に配置されかつ前記周方向に並んだ複数のマグネットペアを備え、前記複数のマグネットペアは、それぞれ、前記周方向に並んだ2つの永久磁石によって構成され、前記複数の空孔は、それぞれ、前記複数のマグネットペアそれぞれの径方向内側に配置される、としてもよい。
【0017】
前記構成によれば、各空孔は、各マグネットペアの径方向内側に配置される。このように配置することで、各マグネットペアと粒状体との干渉を抑制するとともに、磁路形成に与える影響を、可能な限り抑えることができる。
【0018】
また、前記粒状体は、磁性材料からなる、としてもよい。
【0019】
前記構成によれば、粒状体ダンパを構成する粒状体が磁性を有するから、ロータコアの内部における磁路形成に有利になる。
【0020】
また、前記複数の空孔は、それぞれ、前記周方向に沿って延びかつ前記ロータコアの径方向に並んだ複数の空隙によって構成される、としてもよい。
【0021】
モータに振動を引き起こす要因として、ロータのトルク変動が考えられる。粒状体には、そのトルク変動に起因した慣性力が作用する。この慣性力は、ロータの回転方向とは逆向きに作用する。粒状体を各空隙の内壁に衝突させることで、トルク変動を緩和することができる。
【0022】
前記構成によれば、各空隙は、それぞれ周方向に延びているから、各空隙内の粒状体を、ロータコアの回転方向に移動させることができる。これにより、粒状体を径方向に移動させるような構成と比較して、粒状体が及ぼすトルクを、より効率的に伝達することができる。
【0023】
また、前記複数の空隙は、それぞれ、前記周方向に分割されるように仕切られている、としてもよい。
【0024】
前記構成によれば、各空隙を周方向に分割することで、同方向における粒状体の移動距離をより短くすることが可能になる。これにより、トルク変動が生じてから粒状体が各空隙の内壁に衝突するまでの所要時間を、可能な限り短くすることができる。そのことで、トルク変動をより確実に抑えることが可能になる。
【0025】
また、前記複数の空孔は、前記ロータコアの周方向及び厚さ方向に千鳥状に配置される、としてもよい。
【0026】
前記構成によれば、各空孔が磁路形成に与える影響を、可能な限り抑制することができる。そのことで、ロータコアの内部における磁路形成に有利になる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本開示によれば、重量及びサイズの増大を抑制しつつNV性能に優れた回転電機をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本開示に係る回転電機の一例であるモータの全体を示す図である。
図2図2は、図1に示すモータのロータを一部拡大して示す図である。
図3図3は、粒状体ダンパの作動原理を説明するための図である。
図4図4は、粒状体ダンパの作動原理を説明するための図である。
図5図5は、粒状体ダンパの空隙率と減衰効果との関係を説明するための図である。
図6図6は、図1に示すロータを外周側から見て示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0030】
図1は、本開示に係る回転電機の一例であるモータ100の全体を示す図である。図2は、図1に示すモータ100のロータ20を一部拡大して示す図である。
【0031】
<モータの全体構成>
図1に示すモータ100は、三相の交流によって駆動する永久磁石型の同期モータである。モータ100の用途は、特に限定されるものではなく、例えばハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の電動車両用の駆動モータ、エアコン、洗濯機、冷蔵庫等の家電用モータ等である。なお、モータ100は、本開示に係る回転電機の一例であって、当該構成に限定されない。本開示に係る回転電機としては、ロータコアを備えるモータ、発電機等が挙げられる。
【0032】
図1に示すように、モータ100は、大略、モータケース101と、シャフト102と、ロータ20と、ステータ30と、を備えている。
【0033】
モータケース101は、その内部に、一端面及び他端面が封止された円筒状のスペースを有する容器によって構成されている。ロータ20及びステータ30は、モータケース101に収容されている。
【0034】
シャフト102は、その一端部及び他端部の各々をモータケース101から突出させた状態で、モータケース101に回転自在に軸支されている。なお、本明細書において、「軸方向」、「周方向」、「径方向」、「一端側」及び「他端側」等の方向に関する用語は、別途方向を特定する記載が無い限り、シャフト102、又は、ロータ20のロータコア21を基準とする。
【0035】
<ロータ>
ロータ20は、円筒状のロータコア21と、複数のマグネットペア23と、複数の粒状体ダンパ25と、を有している。
【0036】
(ロータコア)
ロータコア21は、中心に貫通孔を有する複数の金属板を積層して構成された円筒状の部材である。ロータコア21にシャフト102の中間部分を固定することで、ロータ20は、シャフト102と一体的に回転する。
【0037】
(マグネットペア)
ロータコア21の内部には、複数のマグネットペア23が配置されている。複数のマグネットペア23は、ロータコア21の周方向に並んでいる。複数のマグネットペア23は、それぞれ、周方向にV字状に並んだ2つのマグネット(永久磁石)23a,23bによって構成されている。
【0038】
詳しくは、複数のマグネットペア23は、それぞれロータコア21の外周部分に配置されている。複数のマグネットペア23は、ロータコア21の全周にわたって等間隔で配置されている。各マグネットペア23は、それぞれ、径方向の外側にS極を配向させた第1のマグネット23aと、径方向の外側にN極を配向させた第2のマグネット23bと、を周方向に順番に並べることで構成されている。
【0039】
さらに詳しくは、第1のマグネット23aと、第2のマグネット23bとは、径方向に延びる対称軸に関して線対称となるように、V字状に並べられている。ここでいう対称軸については、図1及び図2の鎖線L1を参照されたい。そして、第1のマグネット23aと、第2のマグネット23bとの間には、径方向の内側に突出したV字の谷間が構成されている。
【0040】
なお、図1及び図2に示すマグネットペア23の配置は、一例に過ぎない。また、第1のマグネット23aと第2のマグネット23bの並び順も、図例には限定されない。
【0041】
また、第1及び第2のマグネット23a,23bの種類及び素材は、永久磁石であれば特に限定されるものではなく、仕様に応じて適宜選択可能である。永久磁石の具体例としては、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石等が挙げられる。永久磁石としては、モータ性能向上の観点から、保持力(抗磁力)が大きく、磁力が長期にわたって保持できる磁石を採用することが好ましい。また、第1及び第2のマグネット23a,23bは、磁力の大きさを大小に可変できるように構成された磁力可変マグネットであってもよい。
【0042】
ロータコア21の外周側には、ロータコア21の外周面から僅かな隙間(ギャップ)を隔てて円筒状のステータ30が設置されている(インナーロータ型)。
【0043】
(粒状体ダンパ)
粒状体ダンパ25は、複数の空孔26と、該空孔26の内部に封入された多数の粒状体27と、によって構成されている。複数の空孔26は、ロータコア21の内部に配置されかつロータコア21の周方向に並んでいる。多数の粒状体27は、各空孔26内を移動可能に封入されている。
【0044】
粒状体ダンパの作動原理は、概ね2種類存在する(非特許文献1参照)。図3及び図4は、粒状体ダンパの作動原理を説明するための図である。
【0045】
作動原理の1つは、図3に示すように、自由運動を行う粒子が容器壁面へと衝突することにより、反力を利用した制振作用である。この制振作用は、振動の発生源に対して空隙を有する容器を設置し、その容器内に総質量mpに相当する粒子を、容器との隙間dの間隔で封入することによって発生する。この効果は、主構造体の振動に伴い下記式(1)で表される作用力Fpが発生することによって振動を抑制する。
【0046】
【数1】
【0047】
また、もう1つの作動原理は、図4に示すように、粒子間の接触に伴い生じる摩擦力Ffによって、振動エネルギを熱エネルギへ変換して熱散逸させることによりもたらされる制振作用である。単一粒子における摩擦力Ffは、接触力をNとし、摩擦係数をμとすると、下記式(2)で表される。
【0048】
【数2】
【0049】
-粒状体-
各空孔26の内部には、多数の粒状体27が封入されているが、空隙も残されている。そして、多数の粒状体27は、それぞれ粒子であり、各空孔26の内部を移動可能である。
【0050】
具体的に、空孔26における空隙の残存率、すなわち粒状体ダンパ25の空隙率は、例えば45体積%以上かつ80体積%以下、好ましくは50体積%以上かつ70体積%以下である。
【0051】
図5は、粒状体ダンパの空隙率と減衰効果との関係を説明するための図である。図5(a)に示すように、空隙率が前記下限値未満では、空孔26内における粒状体27の移動の制限が大きくなり、十分な減衰効果が得られないおそれがある。図5(c)に示すように、空隙率が前記上限値を超えると、粒状体27の量が少なすぎ、十分な減衰効果を得られないおそれがある。図5(b)に示すように、空隙率を前記範囲とすることにより、NV性能に優れたモータ100をもたらすことができる。
【0052】
粒状体27の材質は、特に限定されず、粒状体ダンパに一般的に使用される材質を採用できる。また、粒状体27は、本実施形態では磁性材料からなる。詳しくは、粒状体27の材質は、例えば、アルミニウム、鉄、鋼等の金属、ジルコニア等の金属酸化物等が挙げられる。粒状体27の材質は、ロータコア21の内部における磁路形成に資する観点と、摩耗等に関する耐久性に資する観点と、を考慮すると、例えばジルコニアであることが好ましい。
【0053】
粒状体27の粒径は、特に限定されるものではなく、粒状体ダンパに一般的に使用される粒径の粒子を適宜採用できる。具体的には、粒状体27の粒径としてレーザ回折式粒径分布測定装置により測定した粒径分布の中央値D(50)が、例えば900μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下である。これにより、モータ100のNV性能を向上できる。
【0054】
-空孔-
本実施形態に係るモータ100は、粒状体ダンパ25を構成する複数の空孔26が、前述のようにロータコア21の内部に配置されていることに特徴がある。複数の空孔26は、図2に示すように、複数の第1空孔26Aと、複数の第2空孔26Bと、複数の第3空孔26Cと、に大別することができる、
ここで、図1及び図2に示す例では、複数の第1空孔26Aと、複数の第2空孔26Bと、複数の第3空孔26Cと、を全て備えたロータコア21が例示されているが、本開示は、そうした構成には限定されない。複数の第1空孔26Aと、複数の第2空孔26Bと、複数の第3空孔26Cと、の少なくとも1つを備えた構成とすればよい。
【0055】
なお、図1に例示する複数の第1空孔26Aは、概略的に示したものに過ぎない。その詳細は、図2に示す通りである。具体的に、図2に例示される複数の第1空孔26Aは、それぞれ、前述した複数のマグネットペア23それぞれのV字の谷間に配置されている。第1空孔26Aは、ロータコア21の全周にわたって、等間隔で配置されている。
【0056】
詳しくは、本実施形態に係る複数の第1空孔26Aは、図2及び図5に示すように、それぞれ、ロータコア21の周方向に沿って延び、かつロータコア21の径方向に並んだ複数の空隙28によって構成されている。
【0057】
本実施形態では、複数の空隙28は、径方向の内側に位置する第1空隙28Aと、径方向の外側に位置する第2空隙28Bと、を径方向に隣接させた2層構成とされているが、そうした構成には限定されない。第3の空層、第4の空隙を設けることで、3層以上の構成としてもよい。
【0058】
また、各空隙28は、周方向の全長が互いに異なるように構成されている。一例として、本実施形態では、周方向における第2空隙28Bの全長が、周方向における第1空隙28Aよりも長い。径方向の内側と外側とで長さを異ならせることで、モータ100のトルク変動に起因した慣性力が粒状体27に作用したときに、第2空隙28Bの内壁に粒状体27が衝突するタイミングと、第1空隙28Aの内壁に粒状体27が衝突するタイミングと、を異ならせることができる。そのことで、より広い周波数域にわたったトルク変動の抑制に有利になる。
【0059】
さらに詳しくは、複数の空隙28は、図2及び図5に示すように、それぞれ、周方向に分割されるように仕切られている。
【0060】
本実施形態では、各空隙28は、第1分割層28lと、該第1分割層28lに対して周方向に隣接した第2分割層28rと、に2分されるように仕切られている。このような構成は、第1空隙28A及び第2空隙28Bの双方に適用してもよいし、一方に適用してもよい。また、各空隙28の分割数も、2つには限定されない。分割数を、空隙28間で異ならせてもよい。
【0061】
一方、同じく図2に示すように、複数の第2空孔26Bは、それぞれ、複数のマグネットペア23のうち隣接する2つのマグネットペア23の間に配置されている。
【0062】
そして、前記複数の第1空孔26Aと同様に、複数の第2空孔26Bのそれぞれを、ロータコア21の周方向に沿って延びかつロータコア21の径方向に並んだ複数の空隙28によって構成してもよい。そして、複数の空隙28を、それぞれ、周方向に分割するように仕切ってもよい。
【0063】
また、同じく図2に示すように、複数の第3空孔26Cは、それぞれ、複数のマグネットペア23それぞれの径方向内側に配置されている。
【0064】
そして、前記複数の第1空孔26Aと同様に、複数の第3空孔26Cのそれぞれを、ロータコア21の周方向に沿って延びかつロータコア21の径方向に並んだ複数の空隙28によって構成してもよい。そして、複数の空隙28を、それぞれ、周方向に分割するように仕切ってもよい。
【0065】
そして、前記複数の第1空孔26Aと同様に、複数の第2空孔26Bのそれぞれを、ロータコア21の周方向に沿って延びかつロータコア21の径方向に並んだ複数の空隙28によって構成してもよい。そして、複数の空隙28を、それぞれ、周方向に分割するように仕切ってもよい。
【0066】
また、3種類の空孔26である第1空孔26A、第2空孔26B及び第3空孔26Cのうち、少なくとも第1空孔26A及び第2空孔26Bは、ロータコア21の周方向及び厚さ方向に千鳥状に配置すれば、さらに好適となる。
【0067】
図6は、図1に示すロータ20を外周側から見て示す平面図である。この平面図は、ロータコア21の外周面21aを、図1等の鎖線L1に沿って見た図に相当する。また、図6のA-A断面が、図1のモータ断面に相当する。図6において、ロータコア21に挿入されたシャフト102の軸方向が、ロータコア21の厚さ方向に相当する。図6に示すように、ロータコア21は、前記厚さ方向において積層構造とされている。この積層構造は、シャフト102の軸方向におけるマグネットペア23の千鳥配置に起因したものである。
【0068】
そして、複数の第1空孔26Aは、層毎にオフセットするように配置されている。その結果、本実施形態に係る複数の第1空孔26Aは、ロータコア21の周方向及び厚さ方向に千鳥状に配置されることになる。また、図示は省略するが、複数の第1空孔26Aに加えて、複数の第2空孔26Bを、前記周方向及び厚さ方向に千鳥状に配置してもよい。
【0069】
<ステータ>
図1に示すように、ステータ30は、複数の板状部材を積層してなる積層構造を有する筒状のステータコア31を有している。ステータコア31は、外周側に配置された円筒状のヨーク部32と、内周側に配置された複数のティース部33と、を有している。
【0070】
ティース部33は、ヨーク部32からロータコア21の外周面に近接する位置まで径方向内側に延びている。複数のティース部33は、周方向に所定の間隔を空けて設けられている。隣り合うティース部33間の間隙が、複数のスロット34を形成している。
【0071】
ティース部33には、ステータコイルが巻回されている。詳細には、ティース部33に電線を所定の順序で巻回することにより、スロット34に配置された複数のステータコイル35が形成されている。これらステータコイル35は、U相、V相及びW相からなる三相のコイル群を構成している。
【0072】
<NV性能について>
以上説明したように、前記実施形態では、ロータコア21の径方向の厚みを利用して粒状体ダンパ25を配置している(例えば図2を参照)。これにより、モータ100の重量及びサイズの増大を抑制しつつ、NV性能を向上できる。
【0073】
また、図1及び図2に例示したように、各第1空孔26Aは、対応するマグネットペア23のV字の谷間に配置されるようになっている。このように配置することで、ロータコア21の径方向の厚みを抑制することができる。そのことで、モータ100の重量及びサイズの抑制、ひいてはNV性能の向上に有利になる。
【0074】
また、図1及び図2に例示したように、各第2空孔26Bは、2つのマグネットペア23の間に配置されるようになっている。このように配置することで、ロータコア21の径方向の厚みを抑制することができる。そのことで、モータ100の重量及びサイズの抑制、ひいてはNV性能の向上に有利になる。
【0075】
また、図1及び図2に例示したように、各第3空孔26Cは、各マグネットペア23の径方向内側に配置されるようになっている。このように配置することで、各マグネットペア23と粒状体27との干渉を抑制するとともに、磁路形成に与える影響を、可能な限り抑えることができる。
【0076】
また、粒状体ダンパ25の粒状体27が磁性を有するから、ロータコア21の内部における磁路形成に有利になる。この構成は、特に第1空孔26Aに封入される粒状体27と、第2空孔26Bに封入される粒状体27と、に関して取り分け有効となる。
【0077】
また、モータ100に振動を引き起こす要因として、ロータ20のトルク変動が考えられる。粒状体27には、そのトルク変動に起因した慣性力が作用する。この慣性力は、ロータ20の回転方向とは逆向きに作用する。粒状体27を各空隙28の内壁に衝突させることで、トルク変動を緩和することができる。
【0078】
一方、図2に例示したように、第1空孔26Aを構成する各空隙28は、それぞれ周方向に延びているから、各空隙28内の粒状体27を、ロータコア21の回転方向に移動させることができる。これにより、粒状体27を径方向に移動させるような構成と比較して、粒状体27が及ぼすトルクを、より効率的に伝達することができる。
【0079】
そして、前記実施形態によれば、図2及び図6に例示したように各空隙28を周方向に分割することで、同方向における粒状体27の移動距離をより短くすることが可能になる。これにより、トルク変動が生じてから粒状体27が各空隙28の内壁に衝突するまでの所要時間を、可能な限り短くすることができる。そのことで、トルク変動をより確実に抑えることが可能になる。
【0080】
また、図6に例示したように、複数の第1空孔26Aを、周方向及び厚さ方向に千鳥状に配置することで、各第1空孔26Aが磁路形成に与える影響を、可能な限り抑制することができる。そのことで、ロータコア21の内部における磁路形成に有利になる。
【0081】
また、第1空孔26Aと、第2空孔26Bと、第3空孔26Cと、を組み合わせることで、各空孔26によって構成される粒状体ダンパ25の効果が仮に弱かったとしても、複数種の空孔26を組み合わせることで、その効果を強めることができる。
【符号の説明】
【0082】
100 モータ(回転電機)
21 ロータコア
23 マグネットペア
23a 第1のマグネット(永久磁石)
23b 第2のマグネット(永久磁石)
25 粒状体ダンパ
26 空孔
26A 第1空孔
26B 第2空孔
26C 第3空孔
27 粒状体
28 空隙
28A 第1空隙
28B 第2空隙
28l 第1分割層
28r 第2分割層
図1
図2
図3
図4
図5
図6