(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020782
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】保護素子
(51)【国際特許分類】
H01H 85/143 20060101AFI20250205BHJP
H01H 85/18 20060101ALI20250205BHJP
H01H 37/76 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
H01H85/143
H01H85/18
H01H37/76 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】40
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124363
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100141999
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 敬一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】米田 吉弘
【テーマコード(参考)】
5G502
【Fターム(参考)】
5G502AA01
5G502AA02
5G502AA09
5G502AA20
5G502BA08
5G502BB01
5G502BB08
5G502BB13
5G502BC07
5G502BC20
5G502CC03
5G502EE06
(57)【要約】
【課題】遮断時のアーク放電を抑制し、高電圧・大電流遮断対応が可能であり、遮断後の絶縁抵抗の低下を抑制する。
【解決手段】保護素子1は、第1ヒューズエレメント10と、第1ヒューズエレメント10の通電方向の両端に接続された第1端子30及び第2端子40と、第1端子30及び第2端子40の一部と第1ヒューズエレメント10とを収容する絶縁ケース50と、を備える。第1ヒューズエレメント10は、通電方向に直列に接続された第1導電体11及び第1可溶導体12を有する。第1導電体11は、物理的なストレスを緩和する第1緩衝部15を備える。絶縁ケース50には、第1緩衝部15の周辺に第1緩衝空間51が形成される。保護素子1は、第1緩衝部15を囲むように第1緩衝空間51に配置された第1充填材71を更に備える。絶縁ケース50は、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントの通電方向の両端に接続された第1端子及び第2端子と、
前記第1端子及び前記第2端子の一部と前記第1ヒューズエレメントとを収容する絶縁ケースと、を備え、
前記第1ヒューズエレメントは、前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第1導電体及び第1可溶導体を有し、
前記第1導電体は、物理的なストレスを緩和する第1緩衝部を備え、
前記絶縁ケースには、前記第1緩衝部の周辺に第1緩衝空間が形成され、
前記第1緩衝部を囲むように前記第1緩衝空間に配置された第1充填材を更に備え、
前記絶縁ケースは、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される、
保護素子。
【請求項2】
前記第1ヒューズエレメントは、前記第1可溶導体と前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第2導電体を更に有し、
前記第1可溶導体の一端に前記第1導電体が接続され、
前記第1可溶導体の他端に前記第2導電体が接続され、
前記第1端子と前記第1導電体とが接続され、
前記第2端子と前記第2導電体とが接続され、
前記第2導電体は、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部を備え、
前記絶縁ケースには、前記第2緩衝部の周辺に第2緩衝空間が形成され、
前記第2緩衝部を囲むように前記第2緩衝空間に配置された第2充填材を更に備える、
請求項1に記載の保護素子。
【請求項3】
前記絶縁ケースには、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位にエレメント収容空間、及び、前記エレメント収容空間にリーク孔及び/又は隙間を介して通じる内圧緩衝空間が形成され、
前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置された第3充填材を更に備える、
請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項4】
前記第1導電体及び前記第2導電体の各々は、金属製の板状部材であり、
前記絶縁ケースは、前記第1導電体の前記第1緩衝部の周辺以外及び前記第2導電体の前記第2緩衝部の周辺以外の板状の表面部位及び裏面部位と近接又は接触するように構成される、
請求項2に記載の保護素子。
【請求項5】
前記第1導電体及び前記第2導電体の各々は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなる、
請求項2又は4に記載の保護素子。
【請求項6】
前記第1可溶導体は、Sn又はSnを主成分とする金属からなる、
請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項7】
前記第1可溶導体は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体である、
請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項8】
前記高融点金属層は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなり、
前記低融点金属層は、Sn又はSnを主成分とする金属からなる、
請求項7に記載の保護素子。
【請求項9】
前記絶縁ケースは、
少なくとも前記第1緩衝空間が形成された第1保持部材と、
前記内圧緩衝空間が形成された第2保持部材と、
前記内圧緩衝空間の開放面を遮蔽する第3保持部材と、
前記第1保持部材と前記第2保持部材と前記第3保持部材とを積み重ねる方向と直交する方向から挿入されるカバーと、を備える、
請求項3に記載の保護素子。
【請求項10】
前記第1充填材及び前記第2充填材の各々は、弾性樹脂からなる、
請求項2に記載の保護素子。
【請求項11】
前記弾性樹脂は、シリコーン樹脂又は光硬化性アクリル樹脂である、
請求項10に記載の保護素子。
【請求項12】
前記第3充填材は、少なくとも絶縁性繊維又は珪砂を含む、
請求項3に記載の保護素子。
【請求項13】
前記絶縁性繊維は、セラミックファイバーペーパーである、
請求項12に記載の保護素子。
【請求項14】
前記第1可溶導体の少なくとも一方の表面にフラックスが塗布されている、
請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項15】
前記絶縁ケースは、ポリアミド系樹脂又はフッ素系樹脂からなる、
請求項1又は2に記載の保護素子。
【請求項16】
第1ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントの通電方向の両端に接続された第1端子及び第2端子と、
発熱体と、
前記発熱体に繋がる給電部材と、
前記第1端子及び前記第2端子の一部と、前記第1ヒューズエレメントと、前記発熱体と、前記給電部材の一部と、を収容する絶縁ケースと、を備え、
前記第1ヒューズエレメントは、前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第1導電体及び第1可溶導体を有し、
前記第1導電体は、物理的なストレスを緩和する第1緩衝部を備え、
前記絶縁ケースには、前記第1緩衝部の周辺に第1緩衝空間が形成され、
前記第1緩衝部を囲むように前記第1緩衝空間に配置された第1充填材を更に備え、
前記絶縁ケースは、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される、
保護素子。
【請求項17】
前記第1ヒューズエレメントは、前記第1可溶導体と前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第2導電体を更に有し、
前記第1可溶導体の一端に前記第1導電体が接続され、
前記第1可溶導体の他端に前記第2導電体が接続され、
前記第1端子と前記第1導電体とが接続され、
前記第2端子と前記第2導電体とが接続され、
前記第2導電体は、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部を備え、
前記絶縁ケースには、前記第2緩衝部の周辺に第2緩衝空間が形成され、
前記第2緩衝部を囲むように前記第2緩衝空間に配置された第2充填材を更に備える、
請求項16に記載の保護素子。
【請求項18】
前記絶縁ケースには、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位にエレメント収容空間、及び、前記エレメント収容空間にリーク孔及び/又は隙間を介して通じる内圧緩衝空間が形成され、
前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置された第3充填材を更に備える、
請求項16又は17に記載の保護素子。
【請求項19】
前記第1導電体及び前記第2導電体の各々は、金属製の板状部材であり、
前記絶縁ケースは、前記第1導電体の前記第1緩衝部の周辺以外及び前記第2導電体の前記第2緩衝部の周辺以外の板状の表面部位及び裏面部位と近接又は接触するように構成される、
請求項17に記載の保護素子。
【請求項20】
前記第1導電体及び前記第2導電体の各々は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなる、
請求項17又は19に記載の保護素子。
【請求項21】
前記第1可溶導体は、Sn又はSnを主成分とする金属からなる、
請求項16又は17に記載の保護素子。
【請求項22】
前記第1可溶導体は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体である、
請求項16又は17に記載の保護素子。
【請求項23】
前記高融点金属層は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなり、
前記低融点金属層は、Sn又はSnを主成分とする金属からなる、
請求項22に記載の保護素子。
【請求項24】
前記絶縁ケースは、
少なくとも前記第1緩衝空間が形成された第1保持部材と、
前記内圧緩衝空間が形成された第2保持部材と、
前記内圧緩衝空間の開放面を遮蔽する第3保持部材と、
前記第1保持部材と前記第2保持部材と前記第3保持部材とを積み重ねる方向と直交する両方向からそれぞれ挿入される第1カバー及び第2カバーと、を備える、
請求項18に記載の保護素子。
【請求項25】
前記第1充填材及び前記第2充填材の各々は、弾性樹脂からなる、
請求項17に記載の保護素子。
【請求項26】
前記弾性樹脂は、シリコーン樹脂又は光硬化性アクリル樹脂である、
請求項25に記載の保護素子。
【請求項27】
前記第3充填材は、少なくとも絶縁性繊維又は珪砂を含む、
請求項18に記載の保護素子。
【請求項28】
前記絶縁性繊維は、セラミックファイバーペーパーである、
請求項27に記載の保護素子。
【請求項29】
前記第1可溶導体の少なくとも一方の表面にフラックスが塗布されている、
請求項16又は17に記載の保護素子。
【請求項30】
前記絶縁ケースは、ポリアミド系樹脂又はフッ素系樹脂からなる、
請求項16又は17に記載の保護素子。
【請求項31】
前記第1ヒューズエレメントと並列に配置され、前記第1端子及び前記第2端子に接続された第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に配置され、前記第1ヒューズエレメントと近接又は接触する第1対向面、及び、前記第2ヒューズエレメントと近接又は接触する第2対向面を有する絶縁部材と、を備え、
前記第2ヒューズエレメントは、前記第2ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第3導電体及び第2可溶導体を有し、
前記第3導電体は、前記第1充填材に囲まれるように前記第1緩衝空間に配置され、物理的なストレスを緩和する第3緩衝部を備え、
前記絶縁ケースは、前記第2ヒューズエレメントの前記第3緩衝部の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される、
請求項1に記載の保護素子。
【請求項32】
前記第1ヒューズエレメントは、前記第1可溶導体と前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第2導電体を更に有し、
前記第1可溶導体の一端に前記第1導電体が接続され、
前記第1可溶導体の他端に前記第2導電体が接続され、
前記第1端子と前記第1導電体とが接続され、
前記第2端子と前記第2導電体とが接続され、
前記第2導電体は、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部を備え、
前記絶縁ケースには、前記第2緩衝部の周辺に第2緩衝空間が形成され、
前記第2緩衝部を囲むように前記第2緩衝空間に配置された第2充填材を更に備える、
請求項31に記載の保護素子。
【請求項33】
前記第2ヒューズエレメントは、前記第2可溶導体と前記第2ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第4導電体を更に有し、
前記第2可溶導体の一端に前記第3導電体が接続され、
前記第2可溶導体の他端に前記第4導電体が接続され、
前記第1端子と前記第3導電体とが接続され、
前記第2端子と前記第4導電体とが接続され、
前記第4導電体は、前記第2充填材に囲まれるように前記第2緩衝空間に配置され、物理的なストレスを緩和する第4緩衝部を備える、
請求項32に記載の保護素子。
【請求項34】
前記絶縁ケースには、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位に第1エレメント収容空間、及び、前記第1エレメント収容空間にリーク孔及び/又は隙間を介して通じる内圧緩衝空間が形成され、
前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置された第3充填材を更に備える、
請求項31から33の何れか1項に記載の保護素子。
【請求項35】
前記絶縁ケースには、前記第2ヒューズエレメントの前記第3緩衝部の周辺以外の部位に第2エレメント収容空間が形成され、
前記第2エレメント収容空間は、前記リーク孔及び/又は隙間を介して前記内圧緩衝空間と通じる、
請求項34に記載の保護素子。
【請求項36】
前記第1ヒューズエレメントと並列に配置され、前記第1端子及び前記第2端子に接続された第2ヒューズエレメントと、
前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に配置され、前記第1ヒューズエレメントと近接又は接触する第1対向面、及び、前記第2ヒューズエレメントと近接又は接触する第2対向面を有する絶縁部材と、を備え、
前記第2ヒューズエレメントは、前記第2ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第3導電体及び第2可溶導体を有し、
前記第3導電体は、前記第1充填材に囲まれるように前記第1緩衝空間に配置され、物理的なストレスを緩和する第3緩衝部を備え、
前記絶縁ケースは、前記第2ヒューズエレメントの前記第3緩衝部の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される、
請求項16に記載の保護素子。
【請求項37】
前記第1ヒューズエレメントは、前記第1可溶導体と前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第2導電体を更に有し、
前記第1可溶導体の一端に前記第1導電体が接続され、
前記第1可溶導体の他端に前記第2導電体が接続され、
前記第1端子と前記第1導電体とが接続され、
前記第2端子と前記第2導電体とが接続され、
前記第2導電体は、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部を備え、
前記絶縁ケースには、前記第2緩衝部の周辺に第2緩衝空間が形成され、
前記第2緩衝部を囲むように前記第2緩衝空間に配置された第2充填材を更に備える、
請求項36に記載の保護素子。
【請求項38】
前記第2ヒューズエレメントは、前記第2可溶導体と前記第2ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第4導電体を更に有し、
前記第2可溶導体の一端に前記第3導電体が接続され、
前記第2可溶導体の他端に前記第4導電体が接続され、
前記第1端子と前記第3導電体とが接続され、
前記第2端子と前記第4導電体とが接続され、
前記第4導電体は、前記第2充填材に囲まれるように前記第2緩衝空間に配置され、物理的なストレスを緩和する第4緩衝部を備える、
請求項37に記載の保護素子。
【請求項39】
前記絶縁ケースには、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位に第1エレメント収容空間、及び、前記第1エレメント収容空間にリーク孔及び/又は隙間を介して通じる内圧緩衝空間が形成され、
前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置された第3充填材を更に備える、
請求項36から38の何れか1項に記載の保護素子。
【請求項40】
前記絶縁ケースには、前記第2ヒューズエレメントの前記第3緩衝部の周辺以外の部位に第2エレメント収容空間が形成され、
前記第2エレメント収容空間は、前記リーク孔及び/又は隙間を介して前記内圧緩衝空間と通じる、
請求項39に記載の保護素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流経路に定格を超える電流が流れたときに、発熱して溶断し、電流経路を遮断するヒューズエレメントがある。ヒューズエレメントを備える保護素子(ヒューズ素子)は、家電製品から電気自動車など幅広い分野で使用されている。
【0003】
例えば、リチウムイオン電池は、モバイル機器用途から電気自動車(EV)、蓄電池など幅広い用途に用いられており、大容量化が進んでいる。リチウムイオン電池の大容量化にともない、電圧は数百ボルトの高電圧仕様となり、電流も数百アンペアから数千アンペアの大電流仕様が要求されている。
【0004】
箔状のヒューズエレメントに、孔、厚み変化、切欠き等を利用してヒートスポットを形成し、過電流時にヒューズエレメントを溶断させる技術としては以下のものがある。
例えば、特許文献1には、絶縁基板上に形成された導電性薄膜パターンの遮断部の厚みが、遮断部に直列接続された連結部の厚みよりも薄く設定されたヒューズが開示されている。
例えば、特許文献2及び特許文献3には、並列に配置された複数のエレメントに、打ち抜きにより孔を形成することで溶断部を形成したヒューズエレメントが開示されている。
例えば、特許文献4及び特許文献5には、絶縁性基板の表面に形成された導電性薄膜のパターンにおいて、複数の遮断部挟小部を並列配置した遮断部の厚さが、遮断部に直列接続された連結帯の厚さよりも薄いヒューズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6057413号公報
【特許文献2】特許第6199368号公報
【特許文献3】特許第5952751号公報
【特許文献4】特許第5116119号公報
【特許文献5】特許第4998890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高電圧・大電流遮断対応の保護素子では、遮断時のアーク放電が課題となっている。一般的に、アーク放電を抑制するために、消弧剤と呼ばれる珪砂をヒューズエレメントの周囲に充填する。また、保護素子の小型・低抵抗化(短尺化)に伴い、ヒューズエレメントの溶断部を幅広としたり厚みを増やしたりする。この場合、消弧剤の表面に溶融飛散物が連続的に付着することで導電パスが形成され、遮断特性を落とす可能性が高い。また、遮断後の絶縁抵抗が低下するリスクが増大する懸念がある。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、遮断時のアーク放電を抑制し、高電圧・大電流遮断対応が可能であり、遮断後の絶縁抵抗の低下を抑制することができる保護素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
[態様1]第1ヒューズエレメントと、前記第1ヒューズエレメントの通電方向の両端に接続された第1端子及び第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子の一部と前記第1ヒューズエレメントとを収容する絶縁ケースと、を備え、前記第1ヒューズエレメントは、前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第1導電体及び第1可溶導体を有し、前記第1導電体は、物理的なストレスを緩和する第1緩衝部を備え、前記絶縁ケースには、前記第1緩衝部の周辺に第1緩衝空間が形成され、前記第1緩衝部を囲むように前記第1緩衝空間に配置された第1充填材を更に備え、前記絶縁ケースは、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される、保護素子。
【0010】
[態様2]前記第1ヒューズエレメントは、前記第1可溶導体と前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第2導電体を更に有し、前記第1可溶導体の一端に前記第1導電体が接続され、前記第1可溶導体の他端に前記第2導電体が接続され、前記第1端子と前記第1導電体とが接続され、前記第2端子と前記第2導電体とが接続され、前記第2導電体は、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部を備え、前記絶縁ケースには、前記第2緩衝部の周辺に第2緩衝空間が形成され、前記第2緩衝部を囲むように前記第2緩衝空間に配置された第2充填材を更に備える、態様1に記載の保護素子。
【0011】
[態様3]前記絶縁ケースには、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位にエレメント収容空間、及び、前記エレメント収容空間にリーク孔及び/又は隙間を介して通じる内圧緩衝空間が形成され、前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置された第3充填材を更に備える、態様1又は2に記載の保護素子。
【0012】
[態様4]前記第1導電体及び前記第2導電体の各々は、金属製の板状部材であり、前記絶縁ケースは、前記第1導電体の前記第1緩衝部の周辺以外及び前記第2導電体の前記第2緩衝部の周辺以外の板状の表面部位及び裏面部位と近接又は接触するように構成される、態様2に記載の保護素子。
【0013】
[態様5]前記第1導電体及び前記第2導電体の各々は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなる、態様2又は4に記載の保護素子。
【0014】
[態様6]前記第1可溶導体は、Sn又はSnを主成分とする金属からなる、態様1から5の何れか1つに記載の保護素子。
【0015】
[態様7]前記第1可溶導体は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体である、態様1から6の何れか1つに記載の保護素子。
【0016】
[態様8]前記高融点金属層は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなり、前記低融点金属層は、Sn又はSnを主成分とする金属からなる、態様7に記載の保護素子。
【0017】
[態様9]前記絶縁ケースは、少なくとも前記第1緩衝空間が形成された第1保持部材と、前記内圧緩衝空間が形成された第2保持部材と、前記内圧緩衝空間の開放面を遮蔽する第3保持部材と、前記第1保持部材と前記第2保持部材と前記第3保持部材とを積み重ねる方向と直交する方向から挿入されるカバーと、を備える、態様3に記載の保護素子。
【0018】
[態様10]前記第1充填材及び前記第2充填材の各々は、弾性樹脂からなる、態様2に記載の保護素子。
【0019】
[態様11]前記弾性樹脂は、シリコーン樹脂又は光硬化性アクリル樹脂である、態様10に記載の保護素子。
【0020】
[態様12]前記第3充填材は、少なくとも絶縁性繊維又は珪砂を含む、態様3に記載の保護素子。
【0021】
[態様13]前記絶縁性繊維は、セラミックファイバーペーパーである、態様12に記載の保護素子。
【0022】
[態様14]前記第1可溶導体の少なくとも一方の表面にフラックスが塗布されている、態様1から13の何れか1つに記載の保護素子。
【0023】
[態様15]前記絶縁ケースは、ポリアミド系樹脂又はフッ素系樹脂からなる、態様1から14の何れか1つに記載の保護素子。
【0024】
[態様16]第1ヒューズエレメントと、前記第1ヒューズエレメントの通電方向の両端に接続された第1端子及び第2端子と、発熱体と、前記発熱体に繋がる給電部材と、前記第1端子及び前記第2端子の一部と、前記第1ヒューズエレメントと、前記発熱体と、前記給電部材の一部と、を収容する絶縁ケースと、を備え、前記第1ヒューズエレメントは、前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第1導電体及び第1可溶導体を有し、前記第1導電体は、物理的なストレスを緩和する第1緩衝部を備え、前記絶縁ケースには、前記第1緩衝部の周辺に第1緩衝空間が形成され、前記第1緩衝部を囲むように前記第1緩衝空間に配置された第1充填材を更に備え、前記絶縁ケースは、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される、保護素子。
【0025】
[態様17]前記第1ヒューズエレメントは、前記第1可溶導体と前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第2導電体を更に有し、前記第1可溶導体の一端に前記第1導電体が接続され、前記第1可溶導体の他端に前記第2導電体が接続され、前記第1端子と前記第1導電体とが接続され、前記第2端子と前記第2導電体とが接続され、前記第2導電体は、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部を備え、前記絶縁ケースには、前記第2緩衝部の周辺に第2緩衝空間が形成され、前記第2緩衝部を囲むように前記第2緩衝空間に配置された第2充填材を更に備える、態様16に記載の保護素子。
【0026】
[態様18]前記絶縁ケースには、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位にエレメント収容空間、及び、前記エレメント収容空間にリーク孔及び/又は隙間を介して通じる内圧緩衝空間が形成され、前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置された第3充填材を更に備える、態様16又は17に記載の保護素子。
【0027】
[態様19]前記第1導電体及び前記第2導電体の各々は、金属製の板状部材であり、前記絶縁ケースは、前記第1導電体の前記第1緩衝部の周辺以外及び前記第2導電体の前記第2緩衝部の周辺以外の板状の表面部位及び裏面部位と近接又は接触するように構成される、態様17に記載の保護素子。
【0028】
[態様20]前記第1導電体及び前記第2導電体の各々は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなる、態様17又は19に記載の保護素子。
【0029】
[態様21]前記第1可溶導体は、Sn又はSnを主成分とする金属からなる、態様16から20の何れか1つに記載の保護素子。
【0030】
[態様22]前記第1可溶導体は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体である、態様16から21の何れか1つに記載の保護素子。
【0031】
[態様23]前記高融点金属層は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなり、前記低融点金属層は、Sn又はSnを主成分とする金属からなる、態様22に記載の保護素子。
【0032】
[態様24]前記絶縁ケースは、少なくとも前記第1緩衝空間が形成された第1保持部材と、前記内圧緩衝空間が形成された第2保持部材と、前記内圧緩衝空間の開放面を遮蔽する第3保持部材と、前記第1保持部材と前記第2保持部材と前記第3保持部材とを積み重ねる方向と直交する両方向からそれぞれ挿入される第1カバー及び第2カバーと、を備える、態様18に記載の保護素子。
【0033】
[態様25]前記第1充填材及び前記第2充填材の各々は、弾性樹脂からなる、態様17に記載の保護素子。
【0034】
[態様26]前記弾性樹脂は、シリコーン樹脂又は光硬化性アクリル樹脂である、態様25に記載の保護素子。
【0035】
[態様27]前記第3充填材は、少なくとも絶縁性繊維又は珪砂を含む、態様18に記載の保護素子。
【0036】
[態様28]前記絶縁性繊維は、セラミックファイバーペーパーである、態様27に記載の保護素子。
【0037】
[態様29]前記第1可溶導体の少なくとも一方の表面にフラックスが塗布されている、態様16から28の何れか1つに記載の保護素子。
【0038】
[態様30]前記絶縁ケースは、ポリアミド系樹脂又はフッ素系樹脂からなる、態様16から29の何れか1つに記載の保護素子。
【0039】
[態様31]前記第1ヒューズエレメントと並列に配置され、前記第1端子及び前記第2端子に接続された第2ヒューズエレメントと、前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に配置され、前記第1ヒューズエレメントと近接又は接触する第1対向面、及び、前記第2ヒューズエレメントと近接又は接触する第2対向面を有する絶縁部材と、を備え、前記第2ヒューズエレメントは、前記第2ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第3導電体及び第2可溶導体を有し、前記第3導電体は、前記第1充填材に囲まれるように前記第1緩衝空間に配置され、物理的なストレスを緩和する第3緩衝部を備え、前記絶縁ケースは、前記第2ヒューズエレメントの前記第3緩衝部の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される、態様1に記載の保護素子。
【0040】
[態様32]前記第1ヒューズエレメントは、前記第1可溶導体と前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第2導電体を更に有し、前記第1可溶導体の一端に前記第1導電体が接続され、前記第1可溶導体の他端に前記第2導電体が接続され、前記第1端子と前記第1導電体とが接続され、前記第2端子と前記第2導電体とが接続され、前記第2導電体は、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部を備え、前記絶縁ケースには、前記第2緩衝部の周辺に第2緩衝空間が形成され、前記第2緩衝部を囲むように前記第2緩衝空間に配置された第2充填材を更に備える、態様31に記載の保護素子。
【0041】
[態様33]前記第2ヒューズエレメントは、前記第2可溶導体と前記第2ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第4導電体を更に有し、前記第2可溶導体の一端に前記第3導電体が接続され、前記第2可溶導体の他端に前記第4導電体が接続され、前記第1端子と前記第3導電体とが接続され、前記第2端子と前記第4導電体とが接続され、前記第4導電体は、前記第2充填材に囲まれるように前記第2緩衝空間に配置され、物理的なストレスを緩和する第4緩衝部を備える、態様32に記載の保護素子。
【0042】
[態様34]前記絶縁ケースには、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位に第1エレメント収容空間、及び、前記第1エレメント収容空間にリーク孔及び/又は隙間を介して通じる内圧緩衝空間が形成され、前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置された第3充填材を更に備える、態様31から33の何れか1項に記載の保護素子。
【0043】
[態様35]前記絶縁ケースには、前記第2ヒューズエレメントの前記第3緩衝部の周辺以外の部位に第2エレメント収容空間が形成され、前記第2エレメント収容空間は、前記リーク孔及び/又は隙間を介して前記内圧緩衝空間と通じる、態様34に記載の保護素子。
【0044】
[態様36]前記第1ヒューズエレメントと並列に配置され、前記第1端子及び前記第2端子に接続された第2ヒューズエレメントと、前記第1ヒューズエレメントと前記第2ヒューズエレメントとの間に配置され、前記第1ヒューズエレメントと近接又は接触する第1対向面、及び、前記第2ヒューズエレメントと近接又は接触する第2対向面を有する絶縁部材と、を備え、前記第2ヒューズエレメントは、前記第2ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第3導電体及び第2可溶導体を有し、前記第3導電体は、前記第1充填材に囲まれるように前記第1緩衝空間に配置され、物理的なストレスを緩和する第3緩衝部を備え、前記絶縁ケースは、前記第2ヒューズエレメントの前記第3緩衝部の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される、態様16に記載の保護素子。
【0045】
[態様37]前記第1ヒューズエレメントは、前記第1可溶導体と前記第1ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第2導電体を更に有し、前記第1可溶導体の一端に前記第1導電体が接続され、前記第1可溶導体の他端に前記第2導電体が接続され、前記第1端子と前記第1導電体とが接続され、前記第2端子と前記第2導電体とが接続され、前記第2導電体は、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部を備え、前記絶縁ケースには、前記第2緩衝部の周辺に第2緩衝空間が形成され、前記第2緩衝部を囲むように前記第2緩衝空間に配置された第2充填材を更に備える、態様36に記載の保護素子。
【0046】
[態様38]前記第2ヒューズエレメントは、前記第2可溶導体と前記第2ヒューズエレメントの通電方向に直列に接続された第4導電体を更に有し、前記第2可溶導体の一端に前記第3導電体が接続され、前記第2可溶導体の他端に前記第4導電体が接続され、前記第1端子と前記第3導電体とが接続され、前記第2端子と前記第4導電体とが接続され、前記第4導電体は、前記第2充填材に囲まれるように前記第2緩衝空間に配置され、物理的なストレスを緩和する第4緩衝部を備える、態様37に記載の保護素子。
【0047】
[態様39]前記絶縁ケースには、前記第1ヒューズエレメントの前記第1緩衝部の周辺以外の部位に第1エレメント収容空間、及び、前記第1エレメント収容空間にリーク孔及び/又は隙間を介して通じる内圧緩衝空間が形成され、前記内圧緩衝空間の少なくとも一部に配置された第3充填材を更に備える、態様36から38の何れか1項に記載の保護素子。
【0048】
[態様40]前記絶縁ケースには、前記第2ヒューズエレメントの前記第3緩衝部の周辺以外の部位に第2エレメント収容空間が形成され、前記第2エレメント収容空間は、前記リーク孔及び/又は隙間を介して前記内圧緩衝空間と通じる、態様39に記載の保護素子。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、遮断時のアーク放電を抑制し、高電圧・大電流遮断対応が可能であり、遮断後の絶縁抵抗の低下を抑制することができる保護素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】第1実施形態の保護素子を示す図であって、
図2のI-I断面図である。
【
図2】第1実施形態の保護素子を示す図であって、
図1のII-II断面図である。
【
図3】第1実施形態の保護素子の側面図であって、
図2のIII矢視図である。
【
図6】第2実施形態の保護素子を示す図であって、
図7のVI-VI断面図である。
【
図7】第2実施形態の保護素子を示す図であって、
図6のVII-VII断面図である。
【
図8】第2実施形態の保護素子の側面図であって、
図7のVIII矢視図である。
【
図10】第3実施形態の保護素子を示す図であって、
図2に相当する断面図である。
【
図12】第4実施形態の保護素子を示す図であって、
図2に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0052】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態の保護素子について、
図1から
図5を参照して説明する。本実施形態の保護素子は、例えばリチウムイオン二次電池を使用する高電圧大電流(100V/100A以上)の電気回路の一部を構成する。保護素子は、例えば、電気自動車(EV)などに搭載される。
【0053】
図1から
図5を併せて参照し、保護素子1は、第1ヒューズエレメント10と、第1ヒューズエレメント10の通電方向の両端に接続された第1端子30及び第2端子40と、第1端子30及び第2端子40の一部と第1ヒューズエレメント10とを収容する絶縁ケース50と、を備える。第1端子30及び第2端子40は、所定方向に互いに離れて配置されている。第1端子30及び第2端子40の各々は、板状をなしている。
【0054】
保護素子1は、電流経路を遮断させる機構として、第1ヒューズエレメント10に定格電流を超えた過電流(所定以上の電流)が流れた場合に第1ヒューズエレメント10が溶断されて電流経路を遮断させる過電流遮断を有する。
【0055】
以下、各図にXYZ直交座標系(3次元直交座標系)を設定し、各構成について説明する場合がある。
第1端子30と第2端子40とが並ぶ上記所定方向を、前後方向と呼ぶ。前後方向は、各図においてX軸方向に相当する。X軸方向のうち、第2端子40から第1端子30へ向かう方向(-X側)を前側と呼び、第1端子30から第2端子40へ向かう方向(+X側)を後側と呼ぶ。なお、前後方向は、第1端子30と第2端子40とを結ぶ方向であり、保護素子1の使用時において電気が流れる方向でもあることから、通電方向と言い換えてもよい。
【0056】
第1端子30及び第2端子40の各板面が向く方向を、上下方向と呼ぶ。上下方向は、前後方向と直交する方向であり、各図においてZ軸方向に相当する。上下方向のうち、上側は+Z側に相当し、下側は-Z側に相当する。
【0057】
前後方向及び上下方向と直交する方向を、左右方向と呼ぶ。左右方向は、各図においてY軸方向に相当する。左右方向のうち、左側は-Y側に相当し、右側は+Y側に相当する。詳しくは、-Y側は、保護素子1を後側(+X側)から見たときの左側であり、+Y側は、保護素子1を後側から見たときの右側である。なお、左右方向は、幅方向と言い換えてもよい。この場合、例えば、幅方向一方側は-Y側に相当し、幅方向他方側は+Y側に相当する。
【0058】
なお、本実施形態において、前側、後側、上側、下側、左側及び右側とは、各構成の相対的な位置関係をわかりやすく説明するための便宜的な名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係以外の配置関係等であってもよい。
【0059】
(第1端子、第2端子)
第1端子30及び第2端子40の各々は、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる板状をなしている。図の例では、第1端子30及び第2端子40の各々は、略四角形板状である。第1端子30及び第2端子40は、前後方向に互いに離れて配置される。
【0060】
第1端子30の後端部は、第1ヒューズエレメント10の前端部と接続される。第1端子30の前側部分は、絶縁ケース50から前側に突出しており、絶縁ケース50の外部に露出している。
第2端子40の前端部は、第1ヒューズエレメント10の後端部と接続される。第2端子40の後側部分は、絶縁ケース50から後側に突出しており、絶縁ケース50の外部に露出している。
【0061】
第1端子30は、外部端子孔32が形成された端子本体31と、第1ヒューズエレメント10の前端部と接続される導体接続部33と、絶縁ケース50の端子係止部58に係止される係止爪34と、を備える。
【0062】
端子本体31は、前後方向に長い四角形板状である。端子本体31の後側部分は、絶縁ケース50の前部において端子載置面57と端子押さえ面59との間に配置されており、端子載置面57と端子押さえ面59とに挟まれている。
外部端子孔32は、端子本体31を上下方向に貫通する円孔状である。
導体接続部33は、第1端子30の後端部に配置され、左右方向に延びる。例えば、導体接続部33には、第1ヒューズエレメント10の前端部がはんだ付け等により接続される。
係止爪34は、端子本体31よりも左右方向に突出している。具体的に、係止爪34は、導体接続部33の左右両端部の各々に突設される。
【0063】
第2端子40は、外部端子孔42が形成された端子本体41と、第1ヒューズエレメント10の後端部と接続される導体接続部43と、絶縁ケース50の端子係止部58に係止される係止爪44と、を備える。
【0064】
端子本体41は、前後方向に長い四角形板状である。端子本体41の前側部分は、絶縁ケース50の後部において端子載置面57と端子押さえ面59との間に配置されており、端子載置面57と端子押さえ面59とに挟まれている。
外部端子孔42は、端子本体41を上下方向に貫通する円孔状である。
導体接続部43は、第2端子40の前端部に配置され、左右方向に延びる。例えば、導体接続部43には、第1ヒューズエレメント10の後端部がはんだ付け等により接続される。
係止爪44は、端子本体41よりも左右方向に突出している。具体的に、係止爪44は、導体接続部43の左右両端部の各々に突設される。
【0065】
例えば、一対の外部端子孔32,42のうち、一方は電源側に接続され、他方は負荷側に接続される。なお、上記に限らず、外部端子孔32,42は、負荷の内部の通電経路に接続されてもよい。例えば、外部端子孔32,42の接続態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0066】
例えば、第1端子30及び第2端子40の各々は、銅、黄銅、ニッケルなどからなる金属製である。第1端子30及び第2端子40の材料としては、剛性強化の観点からは黄銅を用いることが好ましく、電気抵抗低減の観点からは銅を用いることが好ましい。銅を用いる場合は、表面にニッケルめっき、銀めっき、錫めっき等の防錆処理を施すことが好ましい。第1端子30と第2端子40とは、互いに同じ材料からなるものであってもよいし、互いに異なる材料からなるものであってもよい。例えば、第1端子30及び第2端子40の各々の材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0067】
(第1ヒューズエレメント)
第1ヒューズエレメント10は、金属製の板状部材、シート状部材、又は金属箔等により構成される。図の例では、第1ヒューズエレメント10は、1つのみ設けられているが、これに限らない。例えば、第1ヒューズエレメント10は、上下方向に2つ並んで設けられてもよいし、3つ以上並んで設けられてもよい。例えば、第1ヒューズエレメント10の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0068】
第1ヒューズエレメント10は、通電方向に直列に接続された第1導電体11、第1可溶導体12及び第2導電体13を有する。例えば、第1可溶導体12は、第1導電体11及び第2導電体13の各々よりも溶融温度が低い材料により構成される。例えば、第1可溶導体12は、第1導電体11及び第2導電体13の各々よりも電気抵抗率が高い。第1可溶導体12は、過電流遮断時において、第1ヒューズエレメント10の溶断部として機能する。
【0069】
第1可溶導体12は、板状、シート状または箔状であり、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる。図の例では、第1可溶導体12は、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。第1可溶導体12は、第1ヒューズエレメント10の前後方向の中央部に配置される。本実施形態では、第1可溶導体12の少なくとも一方の表面にフラックス75が塗布されている。
【0070】
例えば、第1可溶導体12は、Sn(錫)又はSnを主成分とする金属からなる。図示はしないが、第1可溶導体12は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体であってもよい。この積層体は、低融点金属層を1層以上有し、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された構成であってもよい。この積層体は、例えば、低融点金属層の周囲を高融点金属層でコーティングして形成されていてもよい。
【0071】
例えば、上記積層体の高融点金属層は、Ag(銀)若しくはCu(銅)、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなる。上記積層体の高融点金属層は、AgもしくはCuを含んでいればよく、Ag単体であってもよいし、Cu単体であってもよいし、Ag合金であってもよいし、Cu合金であってもよい。Ag合金は合金に含まれる金属の中でAgの含有量が最も多い合金であり、Cu合金は、合金に含まれる金属の中でCuの含有量が最も多い合金である。
【0072】
例えば、上記積層体の低融点金属層は、Sn又はSnを主成分とする金属からなる。上記積層体の低融点金属層は、Snを含んでいればよく、Sn単体であってもよいし、Sn合金であってもよい。Sn合金は、Snを主成分とする合金である。Sn合金は、合金に含まれる金属の中でSnの含有量が最も多い合金である。Sn合金の例としては、Sn-Bi合金、In-Sn合金、Sn-Ag-Cu合金等を挙げることができる。
【0073】
なお、上記積層体は、低融点金属層/高融点金属層の2層構造であってもよい。または、上記積層体は、高融点金属層を2層以上有し、低融点金属層を1層以上有し、低融点金属層が高融点金属層の間に配置された3層以上の多層構造であってもよい。
また、第1可溶導体12は、Snを含む低融点金属層の単層体により構成されていてもよい。
【0074】
第1導電体11及び第2導電体13の各々は、板状、シート状又は箔状である。本実施形態では、第1導電体11及び第2導電体13の各々は、金属製の板状部材である。図の例では、第1導電体11及び第2導電体13の各々は、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が短い略四角形板状をなす。本実施形態では、第1導電体11及び第2導電体13の各々は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなる。銅を用いる場合は、表面にニッケルめっき、銀めっき、錫めっき等の防錆処理を施すことが好ましい。
【0075】
第1導電体11、第1可溶導体12及び第2導電体13は、この順に直列接続されることで第1ヒューズエレメント10の通電経路を形成する。第1導電体11及び第2導電体13の各々は、第1ヒューズエレメント10に電流が流れる通電方向(図の例では略前後方向に相当)において、第1可溶導体12の端部に接続される。
【0076】
第1可溶導体12の一端に第1導電体11が接続される。図の例では、第1可溶導体12の前端部上に第1導電体11の後端部が固定されている。すなわち、第1可溶導体12の前端部の上面に、第1導電体11の後端部の下面が接続されている。
第1可溶導体12の他端に第2導電体13が接続される。図の例では、第1可溶導体12の後端部上に第2導電体13の前端部が固定されている。すなわち、第1可溶導体12の後端部の上面に、第2導電体13の前端部の下面が接続されている。
第1可溶導体12は、第1導電体11及び第2導電体13の下面側に配置されて、これらの間に掛け渡されている。
なお、第1可溶導体12と第1導電体11及び第2導電体13の接続の上下関係は限定されず、第1可溶導体12は、第1導電体11及び第2導電体13の上面側に配置されていてもよい。
【0077】
第1端子30と第1導電体11とが接続される。図の例では、第1導電体11の前端部上に第1端子30の後端部が固定されている。すなわち、第1端子30の後端部の下面と第1導電体11の前端部の上面とが互いに接続されている。
第2端子40と第2導電体13とが接続される。図の例では、第2導電体13の後端部上に第2端子40の前端部が固定されている。すなわち、第2端子40の前端部の下面と第2導電体13の後端部の上面とが互いに接続されている。
なお、第1端子30と第1導電体11との接続の上下関係及び第2端子40と第2導電体13との接続の上下関係は限定されず、第1端子30の後端部の上面と第1導電体11の前端部の下面とが互いに接続されていてもよく、第2端子40の前端部の上面と第2導電体13の後端部の下面とが互いに接続されていてもよい。
【0078】
第1導電体11は、第1可溶導体12に接続される内側板部11Aと、物理的なストレスを緩和する第1緩衝部15と、を備える。
【0079】
内側板部11Aは、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる板状である。内側板部11Aの後端部は、第1可溶導体12の前端部にはんだ付け等により接続される。
【0080】
第1緩衝部15は、内側板部11Aの前端部と第1端子30の後端部との間に配置される。第1緩衝部15は、内側板部11Aの前端部から下方に延びる第1延在部15Aと、第1延在部15Aの下端部から前方に延びる第2延在部15Bと、第2延在部15Bの前端部から上方に延びる第3延在部15Cと、第3延在部15Cの上端部から前方に延びる第4延在部15Dと、を備える。第4延在部15Dの上面は、第1端子30の後端部(導体接続部33)の下面に接続される。例えば、第4延在部15Dは、第1端子30の導体接続部33にはんだ付け等により接続される。
【0081】
図の例では、第1緩衝部15は、下方に向かって凸をなす屈曲形状である。言い換えると、第1緩衝部15は、左右方向から見て下方に突出するハット形状をなしている。なお、第1緩衝部15は、上記に限らず、上方に向かって凸をなす屈曲形状でもよい。例えば、第1緩衝部15は、左右方向から見てクランク形状をなしていてもよい。例えば、第1緩衝部15の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0082】
第2導電体13は、第1可溶導体12に接続される内側板部13Aと、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部16と、を備える。
【0083】
内側板部13Aは、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる板状である。内側板部13Aの前端部は、第1可溶導体12の後端部にはんだ付け等により接続される。
【0084】
第2緩衝部16は、内側板部13Aの後端部と第2端子40の前端部との間に配置される。第2緩衝部16は、内側板部13Aの後端部から下方に延びる第1延在部16Aと、第1延在部16Aの下端部から後方に延びる第2延在部16Bと、第2延在部16Bの後端部から上方に延びる第3延在部16Cと、第3延在部16Cの上端部から後方に延びる第4延在部16Dと、を備える。第4延在部16Dの上面は、第2端子40の後端部(導体接続部43)の下面に接続される。例えば、第4延在部16Dは、第2端子40の導体接続部43にはんだ付け等により接続される。
【0085】
図の例では、第2緩衝部16は、下方に向かって凸をなす屈曲形状である。言い換えると、第2緩衝部16は、左右方向から見て下方に突出するハット形状をなしている。なお、第2緩衝部16は、上記に限らず、上方に向かって凸をなす屈曲形状でもよい。例えば、第2緩衝部16は、左右方向から見てクランク形状をなしていてもよい。例えば、第2緩衝部16の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0086】
(絶縁ケース)
絶縁ケース50は、その全体の形状が前後方向に延びる柱状をなしている。絶縁ケース50には、第1緩衝部15の周辺に第1緩衝空間51、第2緩衝部16の周辺に第2緩衝空間52、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位かつ第2緩衝部16の周辺以外の部位にエレメント収容空間53、及び、エレメント収容空間53にリーク孔及び/又は隙間54を介して通じる内圧緩衝空間55が形成される。絶縁ケース50は、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位かつ第2緩衝部16の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される。
【0087】
絶縁ケース50は、少なくとも第1緩衝空間51が形成された第1保持部材50Aと、内圧緩衝空間55が形成された第2保持部材50Bと、内圧緩衝空間55の開放面56を遮蔽する第3保持部材50Cと、第1保持部材50Aと第2保持部材50Bと第3保持部材50Cとを積み重ねる方向と直交する方向から挿入されるカバー50Dと、を備える。
なお、第1緩衝空間51は、第1保持部材50Aの代わりに第2保持部材50Bに形成されていてもよい。
【0088】
第1保持部材50Aは、3つの保持部材のうち最も下側に配置される。第1保持部材50Aは、第1端子30、第2端子40及び第1ヒューズエレメント10の下側に配置される。第1保持部材50Aは、端子載置面57、端子係止部58及び導体対向凹部60を備える。
【0089】
端子載置面57は、第1保持部材50Aの上面から下側に窪む凹状である。端子載置面57の底面は、上側を向く平面状であり、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる。端子載置面57は、第1保持部材50Aに一対設けられる。一対の端子載置面57は、第1保持部材50Aの前後方向の両端部に配置される。
【0090】
端子係止部58は、第1保持部材50Aの左右方向の外側部分に立設される側壁に配置される。端子係止部58は、上下方向に延びる溝状(言い換えると、左右方向の外側に窪む凹状)である。端子係止部58は、第1保持部材50Aの上面、及び、上記側壁の左右方向の内側を向くように開口する部分に沿う壁面である。端子係止部58は、第1保持部材50Aの前後方向の両端部に、左右一対ずつ(つまり計4つ)配置される。
【0091】
導体対向凹部60は、第1保持部材50Aの上面のうち第1ヒューズエレメント10の前後方向の中央側の部分から下側に窪む凹状である。導体対向凹部60は、上側に開口する略四角形穴状である。導体対向凹部60の底面は、上側を向く平面状であり、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる。導体対向凹部60の底面は、第1可溶導体12の下面と対向する。導体対向凹部60は、第1保持部材50Aのうち前後方向の中央側に配置される。導体対向凹部60の前後方向の寸法は、第1可溶導体12の前後方向の寸法よりも大きい。
なお、導体対向凹部60は、第1ヒューズエレメント10に向かい合う第2保持部材50B側に形成されていてもよい。
【0092】
第2保持部材50Bは、3つの保持部材のうち上下方向の中央部に配置される。第2保持部材50Bは、第1端子30、第2端子40及び第1ヒューズエレメント10の上側に配置される。第2保持部材50Bの上面は、内圧緩衝空間55の開放面56を構成する。第2保持部材50Bは、端子押さえ面59を備える。
【0093】
端子押さえ面59は、第2保持部材50Bの下面から上側に窪む凹状である。端子押さえ面59の底面は、下側を向く平面状であり、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる。端子押さえ面59は、第2保持部材50Bに一対設けられる。一対の端子押さえ面59は、第2保持部材50Bの前後方向の両端部に配置される。
なお、端子押さえ面59は、第1端子30及び第2端子40に向かい合う第1保持部材50A側に形成されていてもよい。
【0094】
第3保持部材50Cは、3つの保持部材のうち最も上側に配置される。第3保持部材50Cは、上下方向と垂直な面方向に広がる形状である。第3保持部材50Cの下面は、第2保持部材50Bの上面(開放面56)に沿う平面状である。
【0095】
カバー50Dは、前後方向に延びる筒状である。図の例では、カバー50Dは、前後方向に開口する円筒状をなしている。3つの保持部材50A,50B,50Cは、上下方向に並んで組み合わされた状態で、カバー50D内に収容される。カバー50Dは、3つの保持部材50A,50B,50Cを、接着などにより固定した状態で保持する。
【0096】
第1保持部材50Aと第2保持部材50Bとが組み合わされた状態で、第1保持部材50Aと第2保持部材50Bとの間には、第1緩衝空間51、第2緩衝空間52及びエレメント収容空間53が形成される。エレメント収容空間53には、第1ヒューズエレメント10が収容される。
【0097】
第1保持部材50Aの上面の一部(エレメント収容空間53に臨む面の一部)は、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位かつ第2緩衝部16の周辺以外の部位の下面と近接又は接触するように構成される。第2保持部材50Bの下面の一部(エレメント収容空間53に臨む面の一部)は、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位かつ第2緩衝部16の周辺以外の部位の上面と近接又は接触するように構成される。
【0098】
第1緩衝空間51及び第2緩衝空間52の各々は、第1保持部材50Aの上面から下側に窪む凹部の内壁面と、第2保持部材50Bの下面との間に形成される。第1緩衝空間51及び第2緩衝空間52の各々は、上下方向から見て左右方向に長い直方体状である。第1緩衝空間51は、第1保持部材50Aの前端側の部分に形成される。第1緩衝空間51は、第1保持部材50Aにおいて前側の端子載置面57の後端と、エレメント収容空間53の前部に臨む面の一部との間に配置される。第2緩衝空間52は、第1保持部材50Aの後端側の部分に形成される。第2緩衝空間52は、第1保持部材50Aにおいて後側の端子載置面57の前端と、エレメント収容空間53の後部に臨む面の一部との間に配置される。
【0099】
第2保持部材50Bと第3保持部材50Cとが組み合わされた状態で、第2保持部材50Bと第3保持部材50Cとの間には、内圧緩衝空間55が形成される。内圧緩衝空間55は、略直方体状の空間であり、リーク孔及び/又は隙間54を介してエレメント収容空間53に通じる。例えば、内圧緩衝空間55の上下方向の寸法は、保護素子1全体の上下方向の寸法(外形高さ)を基準として、1/3以上1/2以下である。内圧緩衝空間55は、第1ヒューズエレメント10の溶断時に発生するアーク放電によって生成される気体による保護素子1の内圧の急激な上昇を抑える作用を持つ。
【0100】
図の例では、リーク孔及び/又は隙間54は、前後方向に間隔をあけて4個配置され、左右方向に一対配置される。リーク孔及び/又は隙間54は、上下方向に沿って直線状に延びている。例えば、リーク孔及び/又は隙間54の開口面積(リーク孔及び/又は隙間54を上下方向と直交する平面で切断した時の断面積)は、絶縁ケース50と第1ヒューズエレメント10とが近接又は接触するエリアにおいて第1ヒューズエレメント10と絶縁ケース10とが近接又は接触するエリアの通電方向の長さの20%以下であり、絶縁ケース50と第1ヒューズエレメント10とが近接又は接触するエリア外においては制限はない。なお、リーク孔及び/又は隙間54の態様(数や配置場所、形状、開口面積など)は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0101】
例えば、カバー50D及び各保持部材50A,50B,50Cは、耐トラッキング指標CTI(トラッキング(炭化導電路)破壊に対する耐性)が500V以上の材料で形成されていることが好ましい。耐トラッキング指標CTIは、IEC60112に基づく試験により求めることができる。
【0102】
カバー50D及び各保持部材50A,50B,50Cの材料としては、樹脂材料を用いることができる。樹脂材料は、セラミック材料よりも熱容量が小さく融点も低い。このため、保持部材の材料として樹脂材料を用いると、ガス化冷却(アブレーション)によるアーク放電を弱める特性や、溶融飛散した金属粒子が保持部材に付着する際に、保持部材の表面が変形したり付着物が凝集したりすることで、金属粒子が疎らとなり伝導パスを形成し難い特性があり、好ましい。
【0103】
樹脂材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂を用いることができる。本実施形態では、絶縁ケース50は、ポリアミド系樹脂又はフッ素系樹脂からなる。ポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドであってもよいし、半芳香族ポリアミドであってもよい。脂肪族ポリアミドの例としては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66を挙げることができる。半芳香族ポリアミドの例としては、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリフタルアミド(PPA)樹脂を挙げることができる。フッ素系樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレンを挙げることができる。また、ポリアミド系樹脂及びフッ素系樹脂は耐熱性が高く、燃焼しにくい。特に、脂肪族ポリアミドは燃焼してもグラファイトが生成しにくい。このため、脂肪族ポリアミドを用いて、カバー50D及び各保持部材を形成することで、第1ヒューズエレメント10の溶断時のアーク放電により生成したグラファイトによって、新たな電流経路が形成されることをより確実に防止できる。
【0104】
(第1充填材、第2充填材)
保護素子1は、第1緩衝部15を囲むように第1緩衝空間51に配置された第1充填材71と、第2緩衝部16を囲むように第2緩衝空間52に配置された第2充填材72と、を更に備える。本実施形態では、第1充填材71及び第2充填材72の各々は、弾性樹脂からなる。弾性樹脂は、シリコーン樹脂又は光硬化性アクリル樹脂である。
【0105】
なお、第1充填材71及び第2充填材72の各々は、上記の弾性樹脂に限らず、シリコーンオイルでもよい。例えば、第1充填材71及び第2充填材72の各々は、固体に限らず、液体やゲル状などの流動性のあるのものでもよい。例えば、第1充填材71及び第2充填材72の各々は、各緩衝部の緩衝作用を維持しつつ、各緩衝空間から気体を排除する機能を持つものであればよい。例えば、第1充填材71及び第2充填材72は、互いに同じものでもよいし、互いに異なるものでもよい。例えば、第1充填材71及び第2充填材72の各々の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0106】
図の例では、充填材71,72は、緩衝空間51,52にそれぞれ充填されている。例えば、まず、第2保持部材50Bを第1保持部材50Aに搭載する前に、充填材71,72を緩衝空間51,52にそれぞれ入れる。その後、第2保持部材50Bを第1保持部材50Aに取り付けることで、充填材71,72を緩衝空間51,52にそれぞれ充填することができる。
【0107】
なお、充填材71,72は、それぞれ緩衝空間51,52に完全に隙間なく充填されることに限らず、それぞれ緩衝空間51,52の一部に隙間をあけて充填されてもよい。例えば、充填材71,72は、それぞれ緩衝空間51,52の少なくとも一部に配置され、少なくとも緩衝部15,16を囲むように配置されていればよい。
【0108】
(第3充填材)
保護素子1は、内圧緩衝空間55の少なくとも一部に配置された第3充填材73を更に備える。第3充填材73は、例えば、過大電流が流れている回路において遮断しようとする部分に発生するアーク放電により発生する金属ガスをフィルタリングしながら冷却し速やか且つ安全にアーク放電を消滅させる機能を持つ。本実施形態では、第3充填材73は、少なくとも絶縁性繊維又は珪砂を含む。
【0109】
絶縁性繊維は、セラミックファイバーペーパーである。図示はしないが、複数のセラミックファイバーペーパーが内圧緩衝空間55に積層して配置されてもよい。なお、第3充填材73は、上記の絶縁性繊維に限らず、他の繊維材料でもよい。例えば、繊維材料としては、SiO2やMgO、Al2O3、ZrO2等のセラミック材料、又は、ナイロンやPMMA等のプラスチック材料が挙げられる。なお、繊維材料の態様は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0110】
珪砂は、粒状のSiO2(石英ガラス)である。珪砂は、主に石英粒からなる砂である。具体的に、珪砂は、珪酸塩類を主成分とする砂質の堆積物や風化生成物のうち、特に石英粒を多量に含むものであって、白色粗粒の砂である。
【0111】
なお、第3充填材73は、上記に限らず、種々の材料を用いることができる。例えば、第3充填材73は、石英ガラスやアルミナ、ジルコニア等のセラミック材料で形成された球状の部材(例えば、セラミックビーズ又はセラミックボール)でもよい。例えば、第3充填材73は、石英ガラスやアルミナ、ジルコニア等のセラミック材料で形成された多孔質の部材(例えば、多孔質セラミック)でもよい。例えば、第3充填材73は、ナイロンやPMMA(アクリル樹脂)等のプラスチック材料で形成された球状の部材(例えば、プラスチックビーズ又はプラスチックボール)でもよい。例えば、第3充填材73は、ナイロンやPMMA等のプラスチック材料で形成された多孔質の部材(例えば、多孔質プラスチック)でもよい。例えば、第3充填材73は、シート状の部材で形成されていてもよいし、ウール、ボード、ブロックなどの形状であってもよい。例えば、第3充填材73は、石英ガラスやアルミナ、ジルコニア等のセラミック材料で形成された板状の部材(例えば、板状セラミック)であってもよい。例えば、第3充填材73は、シリコーンであってもよい。シリコーンは、ケイ素(Si)と酸素(O)とが繰り返し並ぶシロキサン結合を主鎖とする無機高分子である。例えば、第3充填材73の態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0112】
図の例では、第3充填材73は、保護素子1の内部の内圧緩衝空間55に充填されている。第3充填材73の一部は、第1ヒューズエレメント10の上側に位置する第2保持部材50Bにおいて内圧緩衝空間55を形成する凹部の底面に接している。例えば、まず、第3保持部材50C(絶縁ケース50を構成する蓋部材に相当)を第2保持部材50Bに搭載する前に、第3充填材73を内圧緩衝空間55に入れる。その後、第3保持部材50Cを第2保持部材50Bに取り付けることで、内圧緩衝空間55に第3充填材73を充填することができる。
【0113】
なお、第3充填材73は、内圧緩衝空間55に完全に隙間なく充填されることに限らず、内圧緩衝空間55の一部に隙間をあけて充填されてもよい。例えば、第3充填材73は、内圧緩衝空間55の少なくとも一部に配置され、内圧緩衝空間55を形成する凹部の底面に接していればよい。
【0114】
なお、保護素子1の姿勢は、その上下方向が重力方向に沿うように配置されることに限らず、重力方向に対して交差するように配置されてもよい。例えば、第3充填材73が内圧緩衝空間55に隙間なく充填される場合は、保護素子1を重力方向に対して傾けて配置しても、内圧緩衝空間55を形成する凹部の底面に接した状態となる。例えば、保護素子1の配置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0115】
(本実施形態の作用効果)
以上説明した本実施形態の保護素子1は、第1ヒューズエレメント10と、第1ヒューズエレメント10の通電方向の両端に接続された第1端子30及び第2端子40と、第1端子30及び第2端子40の一部と第1ヒューズエレメント10とを収容する絶縁ケース50と、を備える。第1ヒューズエレメント10は、通電方向に直列に接続された第1導電体11及び第1可溶導体12を有する。第1導電体11は、物理的なストレスを緩和する第1緩衝部15を備える。絶縁ケース50には、第1緩衝部15の周辺に第1緩衝空間51が形成される。保護素子1は、第1緩衝部15を囲むように第1緩衝空間51に配置された第1充填材71を更に備える。絶縁ケース50は、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される。
この構成によれば、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位と絶縁ケース50との間に形成される空間が狭くなる。加えて、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15が第1充填材71で囲まれる。そのため、第1ヒューズエレメント10の周辺において、過電流遮断時に発生するアーク放電の源泉の一つである気体を極力排除することができる。これにより、アーク放電の源泉の一つである気体が電離して発生するプラズマを抑制し、アーク放電を抑制することができる。加えて、アーク放電を抑制するために、消弧剤と呼ばれる珪砂を第1ヒューズエレメント10の周囲に充填する必要がない。そのため、消弧剤の表面に溶融飛散物が連続的に付着することに起因する問題(遮断特性を落としたり、遮断後の絶縁抵抗が低下したりする問題)は生じない。したがって、遮断時のアーク放電を抑制し、高電圧・大電流遮断対応が可能であり、遮断後の絶縁抵抗の低下を抑制することができる保護素子1を提供することができる。
加えて、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15において物理的なストレスが緩和されるため、第1ヒューズエレメント10及び絶縁ケース50の熱膨張差による伸縮や変形を和らげることができる。そのため、保護素子1の温度サイクルによる信頼性を確保することができる。したがって、アーク放電抑制と、保護素子1の温度サイクルに伴う第1ヒューズエレメント10の熱膨張/収縮ストレス緩和の両立が可能となる。
【0116】
本実施形態では、第1ヒューズエレメント10は、第1可溶導体12と通電方向に直列に接続された第2導電体13を更に有する。第1可溶導体12の一端に第1導電体11が接続される。第1可溶導体12の他端に第2導電体13が接続される。第1端子30と第1導電体11とが接続される。第2端子40と第2導電体13とが接続される。第2導電体13は、物理的なストレスを緩和する第2緩衝部16を備える。絶縁ケース50には、第2緩衝部16の周辺に第2緩衝空間52が形成される。保護素子1は、第2緩衝部16を囲むように第2緩衝空間52に配置された第2充填材72を更に備える。
この構成によれば、第1ヒューズエレメント10の第2緩衝部16が第2充填材72で囲まれるため、第1ヒューズエレメント10の周辺において、過電流遮断時に発生するアーク放電の源泉の一つである気体を極力排除することができる。これにより、アーク放電の源泉の一つである気体が電離して発生するプラズマを抑制し、アーク放電を抑制することができる。加えて、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15及び第2緩衝部16の各々において物理的なストレスが緩和されるため、第1ヒューズエレメント10及び絶縁ケース50の熱膨張差による伸縮や変形をより効果的に和らげることができる。
【0117】
本実施形態では、絶縁ケース50には、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位にエレメント収容空間53、及び、エレメント収容空間53にリーク孔及び/又は隙間54を介して通じる内圧緩衝空間55が形成される。保護素子1は、内圧緩衝空間55の少なくとも一部に配置された第3充填材73を更に備える。
この構成によれば、絶縁ケース50によりアーク放電の発生を抑えつつ、内圧緩衝空間55に入ってくる溶融飛散物による保護素子1の内圧の急激な上昇を、第3充填材73によって十分に抑えることができる。したがって、第1ヒューズエレメント10の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制できる。
【0118】
本実施形態では、第1導電体11及び第2導電体13の各々は、金属製の板状部材である。絶縁ケース50は、第1導電体11の第1緩衝部15の周辺以外及び第2導電体13の第2緩衝部16の周辺以外の板状の表面部位及び裏面部位と近接又は接触するように構成される。
この構成によれば、第1導電体11の第1緩衝部15及び第2導電体13の第2緩衝部16の各々を折り曲げて形成することができる。例えば、曲げ加工(プレス加工)により、第1緩衝部15及び第2緩衝部16の各々を容易に形成することができる。加えて、第1導電体11の第1緩衝部15の周辺以外及び第2導電体13の第2緩衝部16の周辺以外の板状の表面部位及び裏面部位において、アーク放電が発生することを抑制できる。
【0119】
本実施形態では、第1導電体11及び第2導電体13の各々は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなる。
この構成によれば、第1導電体11及び第2導電体13の各々が、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体である場合と比較して、電気抵抗率が小さくなりやすい。そのため、Ag若しくはCuを含む単層体からなる第1導電体11及び第2導電体13の各々は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体からなるものと同じ面積で同等の電気抵抗を有する場合でも、厚みを薄くすることができる。第1導電体11及び第2導電体13の各々の厚みが薄いと、第1ヒューズエレメント10が溶断したときの溶融飛散物量も厚みに比例して少なくなり、遮断後の絶縁抵抗が高くなる。
【0120】
本実施形態では、絶縁ケース50は、少なくとも第1緩衝空間51が形成された第1保持部材50Aと、内圧緩衝空間55が形成された第2保持部材50Bと、内圧緩衝空間55の開放面56を遮蔽する第3保持部材50Cと、第1保持部材50Aと第2保持部材50Bと第3保持部材50Cとを積み重ねる方向と直交する方向から挿入されるカバー50Dと、を備える。
この構成によれば、第1保持部材50A、第2保持部材50B及び第3保持部材50Cが積み重ねた状態でカバー50Dに収容されるため、これらの保持部材が互いに固定された状態で維持される。そのため、保持部材の間に配置される第1端子30及び第2端子40の一部、並びに、第1ヒューズエレメント10の姿勢が安定する。
【0121】
本実施形態では、第1充填材71及び第2充填材72の各々は、弾性樹脂からなる。
この構成によれば、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15及び第2緩衝部16の各々が弾性樹脂で囲まれるため、第1ヒューズエレメント10及び絶縁ケース50の熱膨張差による伸縮や変形をより効果的に和らげることができる。
【0122】
本実施形態では、第3充填材73は、少なくとも絶縁性繊維又は珪砂を含む。
第3充填材73が少なくとも絶縁性繊維を含む場合は、第3充填材73の表面積を確保することができ、板状の場合に比べて、第3充填材73全体としての表面積を増やしやすい。加えて、第3充填材73が少なくとも絶縁性繊維を含む場合は、板状の場合に比べて、溶融飛散物を捕らえる要素が多い。そのため、内圧緩衝空間55に入ってくる溶融飛散物による保護素子1の内圧の急激な上昇をより抑えやすい。
第3充填材73が少なくとも珪砂を含む場合は、珪砂の粒子毎に表面積を確保することができ、板状の場合に比べて、第3充填材73全体としての表面積を増やしやすい。そのため、内圧緩衝空間55に入ってくる溶融飛散物による保護素子1の内圧の急激な上昇をより抑えやすい。
【0123】
本実施形態では、第1可溶導体12の少なくとも一方の表面にフラックス75が塗布されている。
この構成によれば、過電流が流れた場合に第1可溶導体12が溶断し易く、過電流遮断速度を向上させることができる。
【0124】
本実施形態では、絶縁ケース50は、ポリアミド系樹脂又はフッ素系樹脂からなる。
この構成によれば、ポリアミド系樹脂及びフッ素系樹脂は耐熱性が高く、燃焼しにくい。特に、脂肪族ポリアミドは燃焼してもグラファイトが生成しにくい。このため、脂肪族ポリアミドにより絶縁ケース50を形成することで、第1ヒューズエレメント10の溶断時のアーク放電によるグラファイト生成を抑制し、新たな電流経路が形成されることをより確実に防止できる。
【0125】
なお、本実施形態では、第1ヒューズエレメント10が、互いに材料の異なる第1可溶導体12と、導電体とを備える例を挙げたが、これに限らない。例えば、第1ヒューズエレメント10は、その全体が、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分として構成されていてもよい。この場合、第1ヒューズエレメント10は、Ag若しくはCuを含む。第1ヒューズエレメント10は、Cu単体であってもよいし、Ag単体であってもよいし、Cu合金であってもよいし、Ag合金であってもよい。
【0126】
本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。なお、他の実施形態や変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。
【0127】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る保護素子201について、
図6から
図9を参照して説明する。第2実施形態の保護素子201は、主に、発熱体80及び給電部材81を備える点で、前述の第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0128】
図6から
図9を併せて参照し、保護素子201は、第1ヒューズエレメント10と、第1ヒューズエレメント10の通電方向の両端に接続された第1端子30及び第2端子40と、発熱体80と、発熱体80に繋がる給電部材81と、第1端子30及び第2端子40の一部と、第1ヒューズエレメント10と、発熱体80と、給電部材81の一部と、を収容する絶縁ケース250と、を備える。
【0129】
本実施形態の保護素子201は、電流経路を遮断させる機構として、第1ヒューズエレメント10に定格電流を超えた過電流(所定以上の電流)が流れた場合に第1ヒューズエレメント10が溶断されて電流経路を遮断させる過電流遮断と、過電流以外の異常が発生した場合に発熱体80に電流を通電し発熱させることで、第1ヒューズエレメント10を溶断し電流経路を遮断させるアクティブ遮断と、を有する。
【0130】
発熱体80は、第1ヒューズエレメント10と上下方向に重なって配置される。発熱体80は、上下方向において第1ヒューズエレメント10と接触する。発熱体80は、給電部材81からの通電により発熱し、第1ヒューズエレメント10の少なくとも一部を溶融し溶断する。具体的に、発熱体80は、第1可溶導体12と上下方向に重なって配置されるとともに、第1導電体11の後端部及び第2導電体13の前端部の各々と上下方向に積層されている。発熱体80は、通電による発熱で第1可溶導体12の少なくとも一部を溶融し溶断する。以下の説明では、「少なくとも一部を溶融し溶断する」ことを、「溶融し溶断する」などと省略して説明する場合がある。
【0131】
図の例では、発熱体80は、板状であり、一対の板面が上下方向を向く。発熱体80は、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。発熱体80は、絶縁ケース250に形成された発熱体収容部61に配置される。すなわち、発熱体80は、絶縁ケース250に収容される。
【0132】
発熱体収容部61は、絶縁ケース250のうち第2保持部材50Bの第1ヒューズエレメント10に対向する面から窪む凹状である。図の例では、発熱体収容部61は、第2保持部材50Bの下面から上側に窪んで形成されている。発熱体収容部61は、第2保持部材50Bにおいて前後方向の中央側に配置される。発熱体収容部61は、左右方向に長い四角形穴状である。図の例では、導体対向凹部60の前後方向の寸法は、発熱体収容部61の前後方向の寸法よりも小さい。導体対向凹部60の上下方向の寸法(深さ寸法)は、発熱体収容部61の上下方向の寸法よりも小さい。
【0133】
発熱体80は、第1ヒューズエレメント10に電流が流れる通電方向(略前後方向に相当)と交差する方向に延びており、図の例では、通電方向と直交する方向(すなわち左右方向)に延びる。図示はしないが、発熱体80は、絶縁基板(基板)と、絶縁基板上に積層された抵抗層と、絶縁基板上に積層され、上下方向において第1ヒューズエレメント10側を向く金属層と、絶縁層と、発熱体電極と、を有する。
【0134】
例えば、発熱体80は、保護素子201の通電経路となる外部回路に異常が発生する等によって通電経路を遮断する必要が生じた場合に、外部回路に設けられた電流制御素子によって通電され発熱される。
【0135】
給電部材81は、発熱体80へ給電する部材である。給電部材81は、絶縁ケース250の外部と内部とにわたって延びており、その一端部が発熱体80の発熱体電極(不図示)に接続される。例えば、給電部材81の少なくとも一部は、電線(配線部材)により構成される。なお、給電部材81の少なくとも一部は、上記に限らず、特に図示しないが、導電性を有する板状部材や棒状部材などにより構成されていてもよい。
【0136】
絶縁ケース250は、少なくとも第1緩衝空間51が形成された第1保持部材50Aと、内圧緩衝空間55が形成された第2保持部材50Bと、内圧緩衝空間55の開放面56を遮蔽する第3保持部材50Cと、第1保持部材50Aと第2保持部材50Bと第3保持部材50Cとを積み重ねる方向と直交する両方向からそれぞれ挿入される第1カバー250D1及び第2カバー250D2と、を備える。
なお、第1緩衝空間51は、第1保持部材50Aの代わりに第2保持部材50Bに形成されていてもよい。
【0137】
第1カバー250D1及び第2カバー250D2の各々は、前後方向に延びる筒状である。図の例では、第1カバー250D1及び第2カバー250D2の各々は、前後方向に開口する円筒状をなしている。第1カバー250D1及び第2カバー250D2は、前後方向の長さが互いに略同じである。3つの保持部材は、上下方向に並んで組み合わされた状態で、第1カバー250D1及び第2カバー250D2内に収容される。第1カバー250D1及び第2カバー250D2は、3つの保持部材50A,50B,50Cを、接着などにより固定した状態で保持する。給電部材81は、第1カバー250D1及び第2カバー250D2の間の隙間を通じて、左右方向に延びている。
なお、第1カバー250D1及び第2カバー250D2は、前後方向の長さが互いに異なっていてもよい。
【0138】
本実施形態では、上述したリーク孔及び/又は隙間54とは異なる位置に、リーク孔及び/又は隙間254が形成されている。図の例では、リーク孔及び/又は隙間254は、前後方向に間隔をあけて2個配置されている。リーク孔及び/又は隙間254は、上下方向に沿って直線状に延びている。リーク孔及び/又は隙間254は、左右方向に沿って直線状に延びている。リーク孔及び/又は隙間254は、発熱体80の近傍に配置されている。リーク孔及び/又は隙間254は、上下方向から見て、発熱体80の前縁及び後縁に沿うように配置されている。リーク孔及び/又は隙間254の左右方向の寸法は、発熱体80の左右方向の寸法よりも大きい。例えば、リーク孔及び/又は隙間54,254の開口面積(リーク孔及び/又は隙間54,254の各々を上下方向と直交する平面で切断した時の断面積の合計値)は、絶縁ケース50と第1ヒューズエレメント10とが近接又は接触するエリアにおいて第1ヒューズエレメント10と絶縁ケース10とが近接又は接触するエリアの通電方向の長さの20%以下であり、絶縁ケース50と第1ヒューズエレメント10とが近接又は接触するエリア外においては制限はない。例えば、リーク孔及び/又は隙間254の左右方向の寸法は、発熱体80の左右方向の寸法以下でもよい。例えば、リーク孔及び/又は隙間54は形成されておらず、リーク孔及び/又は隙間254が形成されていてもよい。例えば、リーク孔及び/又は隙間54に替えてリーク孔及び/又は隙間254が形成されていてもよいし、リーク孔及び/又は隙間54とともにリーク孔及び/又は隙間254が形成されていてもよい。なお、リーク孔及び/又は隙間54,254の態様(数や配置場所、形状、開口面積など)は、上記に限らず、設計仕様に応じて変更することができる。
【0139】
以上説明した本実施形態の保護素子201では、第1ヒューズエレメント10に定格電流を超えた過電流(すなわち所定以上の電流)が流れた場合、第1ヒューズエレメント10が発熱し溶断されて、電流経路が遮断される。また、保護素子201は、発熱体80に電流を通電して発熱させることにより、発熱体80に積層される第1ヒューズエレメント10を溶融し溶断させて、電流経路を遮断させることが可能である。本実施形態によれば、第1ヒューズエレメント10の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制でき、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子201を提供することができる。
【0140】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る保護素子301について、
図10及び
図11を参照して説明する。第3実施形態の保護素子301は、主に、第1ヒューズエレメント10と並列に配置された第2ヒューズエレメント20と、絶縁部材90と、を更に備える点で、前述の第1実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、第1実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0141】
図10及び
図11を併せて参照し、保護素子301は、第1ヒューズエレメント10と並列に配置され、第1端子30及び第2端子40に接続された第2ヒューズエレメント20と、第1ヒューズエレメント10と第2ヒューズエレメント20との間に配置された絶縁部材90と、第1端子30及び第2端子40の一部と、第1ヒューズエレメント10及び第2ヒューズエレメント20と、絶縁部材90と、を収容する絶縁ケース350と、を備える。
【0142】
第2ヒューズエレメント20は、金属製の板状部材、シート状部材、又は金属箔等により構成される。図の例では、第2ヒューズエレメント20は、1つのみ設けられているが、これに限らない。例えば、第2ヒューズエレメント20は、上下方向に2つ並んで設けられてもよいし、3つ以上並んで設けられてもよい。例えば、第2ヒューズエレメント20の設置態様は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0143】
第2ヒューズエレメント20は、通電方向(具体的には、第2ヒューズエレメント20の通電方向)に直列に接続された第3導電体21、第2可溶導体22及び第4導電体23を有する。例えば、第2可溶導体22は、第3導電体21及び第4導電体23の各々よりも溶融温度が低い材料により構成される。例えば、第2可溶導体22は、第3導電体21及び第4導電体23の各々よりも電気抵抗率が高い。第2可溶導体22は、過電流遮断時において、第2ヒューズエレメント20の溶断部として機能する。
【0144】
第2可溶導体22は、板状、シート状または箔状であり、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる。図の例では、第2可溶導体22は、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が大きい四角形板状をなす。第2可溶導体22は、第2ヒューズエレメント20の前後方向の中央部に配置される。本実施形態では、第2可溶導体22の少なくとも一方の表面にフラックス75が塗布されている。
【0145】
例えば、第2可溶導体22は、Sn(錫)又はSnを主成分とする金属からなる。図示はしないが、第2可溶導体22は、高融点金属層と低融点金属層とを含む積層体であってもよい。例えば、第2可溶導体22は、第1可溶導体12と同じ材料で形成されている。なお、第2可溶導体22は、上記に限らず、第1可溶導体12とは異なる材料で形成されてもよい。例えば、第2可溶導体22の材料は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0146】
第3導電体21及び第4導電体23の各々は、板状、シート状又は箔状である。本実施形態では、第3導電体21及び第4導電体23の各々は、金属製の板状部材である。図の例では、第3導電体21及び第4導電体23の各々は、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が短い略四角形板状をなす。本実施形態では、第3導電体21及び第4導電体23の各々は、Ag若しくはCu、又は、Ag若しくはCuを主成分とする金属からなる。
【0147】
第3導電体21、第2可溶導体22及び第4導電体23は、この順に直列接続されることで第2ヒューズエレメント20の通電経路を形成する。第3導電体21及び第4導電体23の各々は、第2ヒューズエレメント20に電流が流れる通電方向(図の例では略前後方向に相当)において、第2可溶導体22の端部に接続される。
【0148】
第2可溶導体22の一端に第3導電体21が接続される。図の例では、第2可溶導体22の前端部に第3導電体21の後端部が固定されている。具体的に、第2可溶導体22の前端部の下面に、第3導電体21の後端部の上面が接続されている。
第2可溶導体22の他端に第4導電体23が接続される。図の例では、第2可溶導体22の後端部に第4導電体23の前端部が固定されている。具体的に、第2可溶導体22の後端部の下面に、第4導電体23の前端部の上面が接続されている。
第2可溶導体22は、第3導電体21及び第4導電体23の上面側に配置されて、これらの間に掛け渡されている。
【0149】
第1端子30と第3導電体21とが接続される。図の例では、第3導電体21の前端部に第1端子30の後端部が固定されている。具体的に、第1端子30の後端部の上面と第3導電体21の前端部の下面とが互いに接続されている。
第2端子40と第4導電体23とが接続される。図の例では、第4導電体23の後端部に第2端子40の前端部が固定されている。具体的に、第2端子40の前端部の上面と第4導電体23の後端部の下面とが互いに接続されている。
【0150】
第3導電体21は、第2可溶導体22に接続される内側板部21Aと、第1充填材71に囲まれるように第1緩衝空間351に配置され、物理的なストレスを緩和する第3緩衝部25と、を備える。図の例では、第1緩衝部15及び第3緩衝部25の各々が、第1充填材71に囲まれるように第1緩衝空間351に配置される。
【0151】
内側板部21Aは、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる板状である。内側板部21Aの後端部は、第2可溶導体22の前端部にはんだ付け等により接続される。
【0152】
第3緩衝部25は、内側板部21Aの前端部と第1端子30の後端部との間に配置される。第3緩衝部25は、内側板部21Aの前端部から上方に延びる第1延在部25Aと、第1延在部25Aの上端部から前方に延びる第2延在部25Bと、第2延在部25Bの前端部から下方に延びる第3延在部25Cと、第3延在部25Cの下端部から前方に延びる第4延在部25Dと、を備える。第4延在部25Dの下面は、第1端子30の後端部(導体接続部33)の上面に接続される。例えば、第4延在部25Dは、第1端子30の導体接続部33にはんだ付け等により接続される。
【0153】
図の例では、第3緩衝部25は、上方に向かって凸をなす屈曲形状である。言い換えると、第3緩衝部25は、左右方向から見て上方に突出するハット形状をなしている。なお、第3緩衝部25は、上記に限らず、下方に向かって凸をなす屈曲形状でもよい。例えば、第3緩衝部25は、左右方向から見てクランク形状をなしていてもよい。例えば、第3緩衝部25の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0154】
第4導電体23は、第2可溶導体22に接続される内側板部23Aと、第2充填材72に囲まれるように第2緩衝空間352に配置され、物理的なストレスを緩和する第4緩衝部26と、を備える。図の例では、第2緩衝部16及び第4緩衝部26の各々が、第2充填材72に囲まれるように第2緩衝空間352に配置される。
【0155】
内側板部23Aは、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる板状である。内側板部23Aの前端部は、第2可溶導体22の後端部にはんだ付け等により接続される。
【0156】
第4緩衝部26は、内側板部23Aの後端部と第2端子40の前端部との間に配置される。第4緩衝部26は、内側板部23Aの後端部から上方に延びる第1延在部26Aと、第1延在部26Aの上端部から後方に延びる第2延在部26Bと、第2延在部26Bの後端部から下方に延びる第3延在部26Cと、第3延在部26Cの下端部から後方に延びる第4延在部26Dと、を備える。第4延在部26Dの下面は、第2端子40の前端部(導体接続部43)の上面に接続される。例えば、第4延在部26Dは、第2端子40の導体接続部43にはんだ付け等により接続される。
【0157】
図の例では、第4緩衝部26は、上方に向かって凸をなす屈曲形状である。言い換えると、第4緩衝部26は、左右方向から見て上方に突出するハット形状をなしている。なお、第4緩衝部26は、上記に限らず、下方に向かって凸をなす屈曲形状でもよい。例えば、第4緩衝部26は、左右方向から見てクランク形状をなしていてもよい。例えば、第4緩衝部26の形状は、設計仕様に応じて変更することができる。
【0158】
絶縁部材90は、板状であり、一対の板面が上下方向を向く。図の例では、絶縁部材90は、上下方向から見て、前後方向の寸法よりも左右方向の寸法が小さい四角形板状をなす。例えば、絶縁部材90は、耐トラッキング指標CTIが500V以上の樹脂製である。例えば、絶縁部材90は、ポリアミド系樹脂材料若しくはフッ素系樹脂材料により構成される。絶縁部材90を構成する樹脂材料の例は、前述した絶縁ケース50(カバー50D及び各保持部材)と同様である。
【0159】
絶縁部材90は、第1ヒューズエレメント10と近接又は接触する第1対向面91、及び、第2ヒューズエレメント20と近接又は接触する第2対向面92を有する。図の例では、絶縁部材90の下面が第1対向面91に相当し、絶縁部材90の上面が第2対向面92に相当する。
【0160】
図示はしないが、絶縁部材90には、可溶導体よりも前後方向の外側に、上下方向に開口するとともに左右方向に延びるスリット部が形成されてもよい。スリット部は、ヒューズエレメント10,20に電流が流れる通電方向(略前後方向)と直交する方向に延びる。スリット部が絶縁部材90に形成されていると、ヒューズエレメント10,20の遮断後に絶縁部材90の第1対向面91及び第2対向面92に付着する溶融飛散物がスリット部で不連続となり、遮断後の第1端子30と第2端子40との間の絶縁抵抗を好適に大きくすることができる。
【0161】
絶縁ケース350には、第1緩衝部15及び第3緩衝部25の周辺に第1緩衝空間351、第2緩衝部16及び第4緩衝部26の周辺に第2緩衝空間352、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位かつ第2緩衝部16の周辺以外の部位に第1エレメント収容空間353A、第2ヒューズエレメント20の第3緩衝部25の周辺以外の部位かつ第4緩衝部26の周辺以外の部位に第2エレメント収容空間353B、並びに、第1エレメント収容空間353A及び第2エレメント収容空間353Bの各々にリーク孔及び/又は隙間54を介して通じる内圧緩衝空間55が形成される。絶縁ケース350は、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位かつ第2緩衝部16の周辺以外の部位、及び、第2ヒューズエレメント20の第3緩衝部25の周辺以外の部位かつ第4緩衝部26の周辺以外の部位と近接又は接触するように構成される。
【0162】
絶縁ケース350は、少なくとも第1緩衝空間351が形成された第1保持部材50Aと、内圧緩衝空間55が形成された第2保持部材350Bと、内圧緩衝空間55の開放面56を遮蔽する第3保持部材350Cと、第1保持部材50Aと第2保持部材350Bと第3保持部材350Cとを積み重ねる方向と直交する方向から挿入されるカバー50Dと、を備える。
【0163】
第1保持部材50Aは、第1端子30、第2端子40及び第1ヒューズエレメント10の下側に配置される。第1保持部材50Aは、端子載置面57、端子係止部58及び導体対向凹部360を備える。
【0164】
第1保持部材50Aの導体対向凹部360は、第1保持部材50Aの上面のうち第1ヒューズエレメント10の前後方向の中央側の部分から下側に窪む凹状である。第1保持部材50Aの導体対向凹部360は、上側に開口する略四角形穴状である。導体対向凹部360の底面は、上側を向く平面状であり、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる。第1保持部材50Aの導体対向凹部360の底面は、第1可溶導体12の下面と対向する。
【0165】
第2保持部材350Bは、第1端子30、第2端子40及び第2ヒューズエレメント20の上側に配置される。第2保持部材350Bの上面は、内圧緩衝空間55の開放面56を構成する。第2保持部材350Bは、端子押さえ面59及び導体対向凹部360を備える。
【0166】
第2保持部材350Bの導体対向凹部360は、第2保持部材350Bの下面のうち第2ヒューズエレメント20の前後方向の中央側の部分から上側に窪む凹状である。第2保持部材350Bの導体対向凹部360は、下側に開口する略四角形穴状である。第2保持部材350Bの導体対向凹部360の底面は、下側を向く平面状であり、上下方向と垂直な面方向(XY面方向)に広がる。第2保持部材350Bの導体対向凹部360の底面は、第2可溶導体22の上面と対向する。
【0167】
第2保持部材350Bには、上下方向に開口する貫通孔365が形成される。貫通孔365は、上下方向から見て、第1緩衝空間351及び第2緩衝空間352の各々と重なるように配置される。
【0168】
第3保持部材350Cは、上下方向と垂直な面方向に広がる部分から下方に突出し、貫通孔365に入る凸部366を備える。凸部366は、上下方向から見て、第1緩衝空間351及び第2緩衝空間352の各々と重なるように配置される。図の例では、凸部366の前後方向の外側の壁面と、貫通孔365を形成する壁面との間に、隙間が形成されている。
【0169】
3つの保持部材50A,350B,350Cは、絶縁部材90を介して上下方向に並んで組み合わされた状態で、カバー50D内に収容される。カバー50Dは、3つの保持部材50A,350B,350C、及び、絶縁部材90を、接着などにより固定した状態で保持する。
【0170】
第1保持部材50A、絶縁部材90、第2保持部材350B及び第3保持部材350Cが組み合わされた状態で、第1保持部材50A、絶縁部材90、第2保持部材350B及び第3保持部材350Cにより囲まれる部分には、第1緩衝空間351及び第2緩衝空間352が形成される。第1緩衝空間351及び第2緩衝空間352の各々は、第2保持部材350Bに形成された貫通孔365の一部で形成されるとともに、第3保持部材350Cから突出する凸部366の一部で仕切られる。
【0171】
上記の部材50A,90,350B,350Cが組み合わされた状態で、第1保持部材50Aと絶縁部材90との間には、第1エレメント収容空間353Aが形成される。第1エレメント収容空間353Aには、第1ヒューズエレメント10が収容される。上記の部材50A,90,350B,350Cが組み合わされた状態で、第2保持部材350Bと絶縁部材90との間には、第2エレメント収容空間353Bが形成される。第2エレメント収容空間353Bには、第2ヒューズエレメント20が収容される。
【0172】
第1保持部材50Aの上面の一部(第1エレメント収容空間353Aに臨む面の一部)は、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位かつ第2緩衝部16の周辺以外の部位の下面と近接又は接触するように構成される。絶縁部材90の下面である第1対向面91は、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15の周辺以外の部位かつ第2緩衝部16の周辺以外の部位の上面と近接又は接触するように構成される。
【0173】
第2保持部材350Bの下面の一部(第2エレメント収容空間353Bに臨む面の一部)は、第2ヒューズエレメント20の第3緩衝部25の周辺以外の部位かつ第4緩衝部26の周辺以外の部位の上面と近接又は接触するように構成される。絶縁部材90の上面である第2対向面92は、第2ヒューズエレメント20の第3緩衝部25の周辺以外の部位かつ第4緩衝部26の周辺以外の部位の下面と近接又は接触するように構成される。
【0174】
第2保持部材350Bと第3保持部材350Cとが組み合わされた状態で、第2保持部材350Bと第3保持部材350Cとの間には、内圧緩衝空間55が形成される。内圧緩衝空間55は、略直方体状の空間であり、リーク孔及び/又は隙間54を介して第1エレメント収容空間353A及び第2エレメント収容空間353Bの各々に通じる。
【0175】
図の例では、充填材71,72は、それぞれ緩衝空間351,352の一部(言い換えると、貫通孔365の一部)に隙間をあけて充填されている。例えば、まず、第2保持部材350Bを第1保持部材50Aに搭載した後、第3保持部材350Cを第2保持部材350Bに搭載する前に、貫通孔365を通じて充填材71,72をそれぞれ緩衝空間351,352に入れる。このとき、第3保持部材350Cの凸部366の体積を考慮して、充填材71,72を入れる量を調整してもよい。その後、貫通孔365に凸部366を挿入し、第3保持部材350Cを第2保持部材350Bに取り付ける。これにより、充填材71,72を、それぞれ緩衝空間351,352の一部(言い換えると、貫通孔365の一部)に隙間をあけて充填することができる。
【0176】
なお、充填材71,72は、それぞれ緩衝空間351,352の一部に隙間をあけて充填されることに限らず、それぞれ緩衝空間351,352に完全に隙間なく充填されてもよい。例えば、充填材71,72は、それぞれ緩衝空間351,352の少なくとも一部に配置され、少なくとも緩衝部15,16,25,26を囲むように配置されていればよい。
【0177】
以上説明した本実施形態の保護素子301では、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15及び第2ヒューズエレメント20の第3緩衝部25が第1充填材71で囲まれ、かつ、第1ヒューズエレメント10の第2緩衝部16及び第2ヒューズエレメント20の第4緩衝部26が第2充填材72で囲まれる。そのため、第1ヒューズエレメント10及び第2ヒューズエレメント20の各々の周辺において、過電流遮断時に発生するアーク放電の源泉の一つである気体を極力排除することができる。これにより、アーク放電の源泉の一つである気体が電離して発生するプラズマを抑制し、アーク放電を抑制することができる。加えて、第1ヒューズエレメント10の第1緩衝部15及び第2緩衝部16の各々、並びに、第2ヒューズエレメント20の第3緩衝部25及び第4緩衝部26の各々において物理的なストレスが緩和される。そのため、第1ヒューズエレメント10、第2ヒューズエレメント20、絶縁部材90及び絶縁ケース350の熱膨張差による伸縮や変形をより効果的に和らげることができる。
【0178】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態に係る保護素子401について、
図12を参照して説明する。第4実施形態の保護素子401は、主に、発熱体80及び給電部材81を備える点で、前述の第3実施形態と異なる。なお、本実施形態の各図において、前述の第1実施形態から第3実施形態と同様又はほぼ同様の構成部材については、同じ符号や同じ名称を付すなどして説明を省略する場合がある。
【0179】
図12を併せて参照し、保護素子401は、第1ヒューズエレメント10と、第1ヒューズエレメント10の通電方向の両端に接続された第1端子30及び第2端子40と、発熱体80と、発熱体80に繋がる給電部材81(
図12では不図示)と、第1ヒューズエレメント10と並列に配置され、第1端子30及び第2端子40に接続された第2ヒューズエレメント20と、第1ヒューズエレメント10と第2ヒューズエレメント20との間に配置された絶縁部材90と、第1端子30及び第2端子40の一部と、第1ヒューズエレメント10及び第2ヒューズエレメント20と、発熱体80と、給電部材81の一部と、絶縁部材90と、を収容する絶縁ケース450と、を備える。
【0180】
本実施形態の保護素子401は、電流経路を遮断させる機構として、ヒューズエレメント10,20に定格電流を超えた過電流(所定以上の電流)が流れた場合にヒューズエレメント10,20が溶断されて電流経路を遮断させる過電流遮断と、過電流以外の異常が発生した場合に発熱体80に電流を通電し発熱させることで、ヒューズエレメント10,20を溶断し電流経路を遮断させるアクティブ遮断と、を有する。
【0181】
本実施形態では、各ヒューズエレメント10,20において各可溶導体12,22が接続される部位が、前述の第3実施形態とは逆向きである。具体的に、第1ヒューズエレメント10においては、第1可溶導体12の前端部の下面に第1導電体11の後端部の上面が接続され、第1可溶導体12の後端部の下面に第2導電体13の前端部の上面が接続されている。一方、第2ヒューズエレメント20においては、第2可溶導体22の前端部の上面に第3導電体21の後端部の下面が接続され、第2可溶導体22の後端部の上面に第4導電体23の前端部の下面が接続されている。
【0182】
図の例では、絶縁部材90には、上下方向に一対の導体対向凹部460が形成される。一対の導体対向凹部460のうち、下側の部分に第1可溶導体12が配置され、上側の部分に第2可溶導体22が配置される。一対の導体対向凹部460のうち、下側の部分は絶縁部材90の下面のうち前後方向の中央側の部分から上側に窪む凹状であり、上側の部分は絶縁部材90の上面のうち前後方向の中央側の部分から下側に窪む凹状である。一対の導体対向凹部460のうち、下側の部分の底面は第1可溶導体12の上面と対向し、上側の部分の底面は第2可溶導体22の下面と対向する。一対の導体対向凹部460は、絶縁部材90のうち前後方向の中央側に配置される。
【0183】
発熱体80は、上下方向に一対設けられる。一対の発熱体80は、各ヒューズエレメント10,20と上下方向に重なって配置される。一対の発熱体80のうち下側のものは上下方向において第1ヒューズエレメント10と接触し、上側のものは上下方向において第2ヒューズエレメント20と接触する。発熱体80は、給電部材81からの通電により発熱し、各ヒューズエレメント10,20の少なくとも一部を溶融し溶断する。具体的に、一対の発熱体80のうち下側のものは第1可溶導体12と上下方向に重なって配置されかつ第1導電体11の後端部及び第2導電体13の前端部の各々と上下方向に積層されており、上側のものは第2可溶導体22と上下方向に重なって配置されかつ第3導電体21の後端部及び第4導電体23の前端部の各々と上下方向に積層されている。一対の発熱体80は、通電による発熱で各可溶導体12,22の少なくとも一部を溶融し溶断する。
【0184】
図の例では、一対の発熱体80のうち下側のものは第1保持部材50Aに形成された発熱体収容部461に配置され、上側のものは第2保持部材350Bに形成された発熱体収容部461に配置される。すなわち、一対の発熱体80は、絶縁ケース450に収容される。
【0185】
以上説明した本実施形態の保護素子401では、ヒューズエレメント10,20に定格電流を超えた過電流(すなわち所定以上の電流)が流れた場合、ヒューズエレメント10,20が発熱し溶断されて、電流経路が遮断される。また、保護素子401は、発熱体80に電流を通電して発熱させることにより、発熱体80に積層されるヒューズエレメント10,20を溶融し溶断させて、電流経路を遮断させることが可能である。本実施形態によれば、ヒューズエレメント10,20の溶断時に大規模なアーク放電が発生することを抑制でき、過電流遮断と遮断信号による遮断機能を両立する保護素子401を提供することができる。
【0186】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0187】
1.201,301,401 保護素子
10 第1ヒューズエレメント
11 第1導電体
12 第1可溶導体
13 第2導電体
15 第1緩衝部
16 第2緩衝部
20 第2ヒューズエレメント
21 第3導電体
22 第2可溶導体
23 第4導電体
25 第3緩衝部
26 第4緩衝部
30 第1端子
40 第2端子
50,250,350,450 絶縁ケース
50A 第1保持部材
50B 第2保持部材
50C 第3保持部材
50D カバー
51,351 第1緩衝空間
52,352 第2緩衝空間
53 エレメント収容空間
54 リーク孔及び/又は隙間
55 内圧緩衝空間
56 開放面
71 第1充填材
72 第2充填材
73 第3充填材
75 フラックス
80 発熱体
81 給電部材
90 絶縁部材
91 第1対向面
92 第2対向面
250D1 第1カバー
250D2 第2カバー
254 リーク孔及び/又は隙間
350B 第2保持部材
350C 第3保持部材
353A 第1エレメント収容空間
353B 第2エレメント収容空間