(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020786
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】照明器具回転機構
(51)【国際特許分類】
F21V 21/26 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
F21V21/26 330
F21V21/26 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124369
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】504458884
【氏名又は名称】有限会社コイズミトレーディング
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】小泉 嘉位
(57)【要約】
【課題】電気コードが過度に捻じれることがなく、灯具を360度以上の一定範囲で回転可能とする照明器具回転機構を提供する。
【解決手段】照明器具回転機構は、灯具の電気コードが挿通される筒状の軸であり、先端側軸部が基端側軸部に対して軸線まわりに360°未満で回転可能に接続され、基端側軸部には軸線方向に平行な平面部が外周面に形成された支軸と、円形挿通孔が設けられ、支軸全体を軸線まわりに回転自在に支持してケースの嵌合溝に固定される支持板部材と、直線状の内縁部が形成された非円形挿通孔が設けられ、内縁部に支軸の基端側軸部の平面部を整合させて支軸全体と一緒に共回りし、且つ、外周部に凸片が突出して形成され、凸片がケースの嵌合溝の溝形成壁に形成された突起部に当たって支軸全体の360度以上の回転を阻止するストッパ部材と、支持板部材及びストッパ部材を基端側軸部に保持するナット部材と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯具の電気コードが挿通される筒状の軸であり、灯具が取り付けられる先端側軸部とケースに支持される基端側軸部とが連結され、先端側軸部が基端側軸部に対して軸線まわりに360°未満で回転可能に接続され、基端側軸部には軸線方向に平行な平面部が外周面に形成された支軸と、
円形挿通孔が設けられ、円形挿通孔に支軸の基端側軸部を挿通して支軸全体を軸線まわりに回転自在に支持してケースの嵌合溝に固定される支持板部材と、
非円形挿通孔が設けられ、非円形挿通孔には直線状の内縁部が形成され、内縁部に支軸の基端側軸部の平面部を整合させて非円形挿通孔に基端側軸部を挿通して支軸全体と一緒に共回りし、且つ、外周部に凸片が突出して形成され、凸片がケースの嵌合溝の溝形成壁に形成された突起部に当たって支軸全体の360度以上の回転を阻止するストッパ部材と、
支持板部材とストッパ部材とを挿通した支軸の基端側軸部に螺合して支持板部材及びストッパ部材を基端側軸部に保持するナット部材と、を備える照明器具回転機構。
【請求項2】
請求項1に記載の照明器具回転機構において、
支軸の先端側軸部と基端側軸部の一方には、内周面に360度未満の範囲で周方向に延びる周溝が設けられ、先端側軸部と基端側軸部の他方には、内周面に周溝内に配置される突部が設けられている、照明器具回転機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の照明器具回転機構において、
支軸の先端側軸部には、灯具と接続されて電気コードを挿通する筒状の接続軸部が接続され、
先端側軸部の先端部には、先端面から外周面に連続する切欠が設けられ、接続軸部が切欠に沿って90度範囲内で回転可能に接続されている、照明器具回転機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具回転機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具として、電気コードの端子を設けたケースに対し、灯具を回転可能に支持したものが知られている。このような照明器具は、電気コードが捻じれて断線等することを防止するため、灯具の回転範囲を360度未満に制限するように構成されている。例えば、特許文献1には、灯具を取り付けた支軸が軸線まわりに180度範囲に回転規制したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記のような照明器具では、部分的に照明不可能な箇所が生じる。一方、無制限に灯具を回転可能にすると、電気コードが過度に捻じれて断線を生じさせる。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、電気コードが過度に捻じれることがなく、灯具を360度以上の一定範囲で回転可能とする照明器具回転機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る照明器具回転機構は、
灯具の電気コードが挿通される筒状の軸であり、灯具が取り付けられる先端側軸部とケースに支持される基端側軸部とが連結され、先端側軸部が基端側軸部に対して軸線まわりに360°未満で回転可能に接続され、基端側軸部には軸線方向に平行な平面部が外周面に形成された支軸と、
円形挿通孔が設けられ、円形挿通孔に支軸の基端側軸部を挿通して支軸全体を軸線まわりに回転自在に支持してケースの嵌合溝に固定される支持板部材と、
非円形挿通孔が設けられ、非円形挿通孔には直線状の内縁部が形成され、内縁部に支軸の基端側軸部の平面部を整合させて非円形挿通孔に基端側軸部を挿通して支軸全体と一緒に共回りし、且つ、外周部に凸片が突出して形成され、凸片がケースの嵌合溝の溝形成壁に形成された突起部に当たって支軸全体の360度以上の回転を阻止するストッパ部材と、
支持板部材とストッパ部材とを挿通した支軸の基端側軸部に螺合して支持板部材及びストッパ部材を基端側軸部に保持するナット部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る照明器具回転機構によれば、支軸全体は、支持板部材によって軸線まわりに回転自在とされつつ、ストッパ部材によって360度以上の回転が阻止される。支軸自体は、先端側軸部が基端側軸部に対して軸線まわりに360度未満で回転可能とされる。従って、照明器具の灯具は、支軸自体の先端側軸部の回転に加え、支軸全体がストッパ部材で回転阻止されるまでの所定角度範囲分だけ余分に回転可能とされ、その結果、灯具は、360度以上720度未満の範囲で回転することができる。よって、灯具は、360度範囲の任意の箇所を照明することができ、使い勝手が向上する。また、灯具は、一方向に720度以上(2回転以上)回転されないため、電気コードが2周以上に過度に捻じられて断線することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】照明器具がダクトレールに取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図2】照明器具におけるケースを分解した状態を示す側面図である。
【
図3】実施形態による照明器具回転機構の構成部品を示す側面図(同図(a))及び平面図(同図(b))である。
【
図4】支軸の先端側軸部と基端側軸部を示す図であり、基端側軸部の側面図(同図(a))、先端側軸部の一部断面側面図(同図(b))、基端側軸部の底面図(同図(c))、先端側軸部の断面図(同図(d))である。
【
図5】実施形態による照明器具回転機構の動作を説明するための模式図である。
【
図6】接続軸部を示す図であり、接続軸部が支軸に対して軸線方向にまっすぐ延ばされた状態の側面図(同図(a))及び正面図(同図(b))、接続軸部が支軸に対して90度に回転された状態の正面図(同図(c))及び底面図(同図(d))である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1には、実施形態の一例として、ダクトレール4に着脱自在に取り付けられる照明器具2の状態を示す。ダクトレール4は、部屋の天井面Rに取り付けられているが、壁面等の他の面に取り付けられてもよい。この照明器具2は、灯具3と、支軸5と、電気コードhの端子11を設けたケース10とを備える。灯具3は、LEDライトが使用されるが、蛍光灯等の様々な光源を使用することができる。灯具3は、接続軸部9に取り付けられ、この接続軸部9が支軸5に接続されている。
【0010】
図2に示すように、ケース10は、前ケース部10aと後ケース部10bとを組み付けて構成されており、支軸5は、このケース10内の下部に取り付けられる。ケース10内の上部に端子11が取り付けられている。ケース10内において、支軸5から引き出された灯具3の電気コードhが端子11に接続される。ケース10の上面には、ダクトレール4に接続するための一対の係合片12が形成されている。係合片12の上部にケース10内から延長された端子11が配設されている。ケース10の係合片12をダクトレール4に取り付けると、端子11がダクトレール4に設けられた配線板41に電気的に接続され、外部の電源から電力が灯具3に供給される。ケース10の下面には、支軸5を挿通する貫通孔13が設けられている。ケース10内には、下面の直ぐ上に、下面と平行な円環状の溝形成壁14が形成されている。この溝形成壁14と下面との間に、支軸5を支持するための嵌合溝15が形成される。溝形成壁14の内周部には、内方に突出する突起部16が形成されている。この突起部16は、支軸5全体の回転を360度未満の一定範囲内に制限するための構成部分である。
【0011】
支軸5は、灯具3の取り付け側の先端側軸部51と、ケース10に支持される基端側軸部52とが連結されて構成されている。支軸5は筒状の軸であり、接続軸部9は筒状のネジ軸90である。灯具3の電気コードhは、支軸5及び接続軸部9の筒孔内に通してケース10内に引き出される。
【0012】
次に、照明器具2の回転機構1を説明する。
図3に示すように、回転機構1は、主要部品として、支軸5と、支持板部材6と、ストッパ部材7とで構成され、他にナット部材81、波形ワッシャ82を備える。支軸5それ自体は、先端側軸部51が基端側軸部52に対して軸線まわりに360度未満で回転自在に構成されている。
図4に示すように、支軸5は、先端側軸部51の内周面には360度未満の範囲で周方向に延びる周溝54(
図4(b)(d)を参照)が設けられ、基端側軸部52の外周面には周溝54内に配置される突部55(
図4(a)(c)を参照)が設けられている。これにより、先端側軸部51は、周溝54の両端が突部55に当たるまでの範囲で基端側軸部52に対して軸線まわりに回転可能に構成される。本実施形態では、先端側軸部51の周溝54は、周方向に330度の範囲で設けられており、先端側軸部51がほぼ330度範囲に回転可能とされている。なお、周溝54は基端側軸部52に形成され、突部55は先端側軸部51に形成されてもよい。また、基端側軸部52は、ケース支持側の端部がネジ軸部521で構成され、ネジ軸部521の外周面には、軸線方向に平行な平面部53が180度位置で対向して形成されている(
図3(b)を参照)。
【0013】
再び
図3を参照して、支持板部材6は、四角形板状の金具であり、円形挿通孔61が設けられている。支持板部材6は、円形挿通孔61に支軸5の基端側軸部52を挿通して支軸5を回転自在に支持し、ケース10の嵌合溝15に固定される。
【0014】
ストッパ部材7は、円形板状の金具であり、非円形挿通孔71が設けられている。非円形挿通孔71には、直線状の内縁部72が180度位置で対向して形成されている。ストッパ部材7は、非円形挿通孔71の内縁部72に基端側軸部52におけるネジ軸部521の平面部53を整合させて非円形挿通孔71に基端側軸部52のネジ軸部521を挿通して、支軸5と一緒に共回りするように取り付けられる。また、ストッパ部材7の外周部には、凸片73が外方に突出して形成されている。ストッパ部材7は、凸片73がケース10の嵌合溝15を形成する溝形成壁14の内周部に形成された突起部16に当たることで、ケース10に対して支軸5全体が360度以上に回転することを阻止する。本実施形態では、凸片73は、ストッパ部材7の外周部の周方向に60度範囲にわたり形成されている。これにより、ストッパ部材7は、凸片73の非形成範囲である300度の範囲内で支軸5全体をケース10に対して回転可能としている。
【0015】
ナット部材81は、基端側軸部52のネジ軸部521に螺合して支持板部材6及びストッパ部材7を基端側軸部52に保持する。
【0016】
以上の各部品は、支軸5の基端側軸部52の端部であるネジ軸部521に、波形ワッシャ82を挿通し、次に支持板部材6とストッパ部材7とをこの順に挿通し、最後にナット部材81を螺合して固定する。次に、支軸5をケース10に取り付ける際、基端側軸部52の端部に固定した支持板部材6をケース10の前ケース部10a又は後ケース部10bにおける嵌合溝15に嵌め込み、ストッパ部材7を嵌合溝15の溝形成壁14の内周部に配置させ、前ケース部10aと後ケース部10bとを嵌め合わせてねじ止め固定すると、照明器具回転機構1が形成される。なお、前ケース部10aと後ケース部10bとを組み付ける際、支軸5の筒孔から引き出した灯具3の電気コードhを端子11に取り付ける。そして、接続軸部9に灯具3を固定し、ケース10をダクトレール4に取り付けることで、ダクトレール4に照明器具2が設置される。
【0017】
次に、この照明器具回転機構1の動作を説明する。
図5に示すように、照明器具回転機構1では、灯具3を取り付けた支軸5は、支持板部材6により回転自在に支持されているので、灯具3を一方側に回転させ、支軸5全体が一方側に回転(例えば、時計回り方向)すると、ストッパ部材7が支軸5と一緒に共回りする(
図5(a)から
図5(b)の状態に回転)。支軸5全体の回転に伴ってストッパ部材7が、360度未満の所定角度(実施形態では、300度)に回転して、ストッパ部材7の凸片73の一端側がケース10の突起部16に当たると、支軸5全体の回転が阻止される(
図5(b)を参照)。続いて、支軸5それ自体が、ストッパ部材7で回転阻止された基端側軸部52に対して、先端側軸部51が一方側に回転(時計回り方向)する(
図5(c)から
図5(d)の状態に回転)。先端側軸部51が360度未満の所定角度(実施形態では、330度)に回転して、先端側軸部51の周溝54の一端側が基端側軸部52の突部55に当たると、先端側軸部51の回転が阻止される(
図5(d)を参照)。
【0018】
また、灯具3を前記と反対の他方側に回転させ、支軸5全体が他方側に回転(例えば、反時計回り方向)すると、ストッパ部材7が支軸5と一緒に共回りする(
図5(b)から
図5(a)の状態に回転)。支軸5全体の回転に伴ってストッパ部材7が、360度未満の所定角度(実施形態では、300度)に回転して、ストッパ部材7の凸片73の他端側がケース10の突起部16に当たると、支軸5全体の回転が阻止される(
図5(a)を参照)。続いて、支軸5それ自体が、ストッパ部材7で回転阻止された基端側軸部52に対して、先端側軸部51が他方側に回転(反時計回り方向)する(
図5(d)から
図5(c)の状態に回転)。先端側軸部51が360度未満の所定角度(実施形態では、330度)に回転して、先端側軸部51の周溝54の他端側が基端側軸部52の突部55に当たると、先端側軸部51の回転が阻止される(
図5(c)を参照)。
【0019】
このように、支軸5全体は、支持板部材6により軸線まわりに回転自在とされながら、ストッパ部材7によってストッパ部材7の凸片73の一端側と他端側とがケース10の突起部16に当たるまでの360度未満の所定角度範囲(例えば、300度)で回転可能とされる(
図5(a)(b)を参照)。ストッパ部材7により支軸5全体の回転が阻止されると、支軸5自体は、先端側軸部51が基端側軸部52に対して軸線まわりに360度未満の所定角度範囲(例えば、330度)で回転される(
図5(c)(d)を参照)。従って、照明器具2の灯具3は、支軸5自体の回転(先端側軸部51の回転)に加え、支軸5全体がストッパ部材7で回転阻止されるまでの所定角度範囲分だけ余分に回転可能とされ、その結果、360度以上720度未満の範囲で回転することができる。よって、灯具3は、360度範囲の任意の箇所を照明することができ、照明器具2の使い勝手を向上することができる。
【0020】
一方、支軸5の筒孔内に通した灯具3の電気コードhも灯具3の回転範囲と同じく360度以上に捩じられるが、支軸5全体の回転がストッパ部材7により360度未満の所定角度範囲内に回転規制される。これにより、灯具3は、支軸5自体の回転と合わせても720度以上(2回転以上)に一方向に回転されない。実施形態では、ストッパ部材7で回転規制された約300度の回転と、支軸5自体の約330度の回転とで、630度以上に一方向に回転されない。従って、電気コードhが2周以上に過度に捻じられて断線することを防止することができる。
【0021】
また、
図6に示すように、灯具3を取り付けた接続軸部9は、支軸5の軸線方向に対して90度範囲内で折れ曲がるように回転可能とされている。支軸5の先端側軸部51の先端部は、先端面から外周面に連続する矩形状の切欠56(
図6(a)(d)を参照)が設けられている。接続軸部9は、先端側軸部51の先端部に嵌合される接続端部91が球面状に形成され、この接続端部91から延びるネジ軸90の外周面には、先端側軸部51の切欠56と整合して軸線方向に平行な平面部92が180度位置で対向して形成されている。これにより、接続軸部9は、先端側軸部51の先端部に軸支され、先端側軸部51の切欠56に沿って平面部92が案内されて90度範囲で折れ曲がるように回転可能となる。実施形態の照明器具回転機構1では、灯具3は、真下の下方から水平方向の真横まで90度範囲内で回転して照明することができる。従って、灯具3を真下から真横の90度範囲と、支軸5まわり360度範囲とに、任意に回転させることができる。よって、半球範囲で照明が要求される任意の箇所を照明することができ、照明器具2の使い勝手をさらに向上することができる。
【0022】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 照明器具回転機構
2 照明器具
3 灯具
4 ダクトレール
5 支軸
6 支持板部材
7 ストッパ部材
9 接続軸部
10 ケース
10a 前ケース部
10b 後ケース部
11 端子
12 係合片
13 貫通孔
14 溝形成壁
15 嵌合溝
16 突起部
41 配線板
51 先端側軸部
52 基端側軸部
53 平面部
54 周溝
55 突部
56 切欠
61 円形挿通孔
71 非円形挿通孔
72 内縁部
73 凸片
81 ナット部材
82 波形ワッシャ
90 ネジ軸
91 接続端部
92 接続軸部の平面部
521 ネジ軸部
h 電気コード
R 天井面