(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020803
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】送風分岐装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/75 20180101AFI20250205BHJP
F24F 3/00 20060101ALI20250205BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20250205BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
F24F11/75
F24F3/00 Z
F24F11/74
F24F13/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124395
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219233
【氏名又は名称】東プレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】吉本 周平
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋平
(72)【発明者】
【氏名】早川 英一
【テーマコード(参考)】
3L053
3L080
3L260
【Fターム(参考)】
3L053BB10
3L080AA02
3L080AA05
3L080AC01
3L260AB07
3L260BA07
3L260BA41
3L260CB55
3L260CB65
3L260EA19
3L260FA07
3L260FB44
3L260FC06
(57)【要約】
【課題】簡易的な構造で省エネ性を向上させる送風分岐装置を提供する。
【解決手段】複数の空調ゾーンごとにダクト50を経由して給気する送風分岐装置10であって、空調ゾーンごとに対応したダクト50を接続する複数の吹出口31と、複数の吹出口31に送風するファン部21と、吹出口31ごとに設置され、開度を可変とする複数のダンパ32と、空調ゾーンごとに給気風量を設定する複数の風量設定器13と、各々の風量設定器13から取得した風量設定情報に基づいて、ファン部21及び複数のダンパ32の動作を制御する制御部40とを備える。制御部40は、空調ゾーンごとに対応した各々のダクト50でのダクト抵抗に起因して生じる風量の差を、ダンパ32ごとの開度を調整することで均一化し、通常運転時には、風量の差が均一化された状態で、ダンパ32の開度と、ファン部21の送風量とを制御することで、空調ゾーンごとの給気風量を調整する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空調ゾーンごとにダクトを経由して給気する送風分岐装置であって、
前記空調ゾーンごとに対応した前記ダクトを接続する複数の吹出口と、
複数の前記吹出口に送風するファン部と、
前記吹出口ごとに設置され、開度を可変とする複数のダンパと、
前記空調ゾーンごとに給気風量を設定する複数の風量設定器と、
各々の前記風量設定器から取得した風量設定情報に基づいて、前記ファン部及び複数の前記ダンパの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記空調ゾーンごとに対応した各々の前記ダクトでのダクト抵抗に起因して生じる風量の差を、前記ダンパごとの前記開度を調整することで均一化し、
通常運転時には、前記風量の差が均一化された状態で、前記ダンパの前記開度と、前記ファン部の送風量とを制御することで、前記空調ゾーンごとの前記給気風量を調整する、送風分岐装置。
【請求項2】
前記制御部は、各々の前記ダクト抵抗に起因した前記風量の差を均一化させるとき、
各々の前記ダクトのうち前記ダクト抵抗が最も大きい前記ダクトを検出し、
前記ダクト抵抗が最も大きい前記ダクトではない前記ダクトに連設されている前記ダンパの制御上の全開となる前記開度を、前記ダクト抵抗が最も大きい前記ダクトに連設されている前記ダンパの構造上の全開となる前記開度のときの前記風量と同じ風量が得られる設定上の全開の前記開度に調整する、請求項1に記載の送風分岐装置。
【請求項3】
前記ファン部は、ファンと、当該ファンを回転させるファンモータとを備え、
前記制御部は、各々の前記ダクト抵抗に起因した前記風量の差を均一化させるとき、
前記ダクト抵抗が最も大きい前記ダクトを検出する前に、前記ファンによる前記送風量と前記ファンモータの回転数との関係に係る特性に関する情報を取得する、請求項2に記載の送風分岐装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記通常運転時に前記空調ゾーンごとの前記給気風量を調整するとき、
各々の前記風量設定器から前記風量設定情報を取得し、
各々の前記風量設定情報に含まれる風量設定に基づいて各々の前記ダンパの前記開度を決定し、
各々の前記風量設定の合計に基づいて前記ファン部の前記送風量を決定する、請求項1に記載の送風分岐装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風分岐装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1台の空調機で一棟全体又は1つのフロア全体を空調する全館空調方式が、戸建て住宅にも採用されている。戸建て住宅での全館空調方式では、住宅内の部屋や窓の位置又は室内の熱負荷等に起因して、温度むらが生じる場合がある。
【0003】
これに対して、特許文献1は、全館空調方式の設備として利用し得る、複数の空調ゾーンを空調する分配給気装置に関する技術を開示している。この分配給気装置によれば、各々の空調ゾーンに給気するダクトごとに風速センサを設置し、風量調整用のダンパの開度を調整する際に計測値を参照して送風量を調整することで空調効率を向上させることができる等の利点がある。そして、このような分配給気装置を戸建て住宅に採用することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の分配給気装置では、空調ゾーンとして想定される居室ごとに風速センサを準備する必要がある。そのため、装置構造が複雑化するとともに、ダンパの制御も複雑化することから、例えば、ダクトでの圧力損失の増加を簡易的に抑えることができないため、当該装置を戸建て住宅に採用することは、実際上難しい。
【0006】
そこで、本発明は、簡易的な構造で省エネ性を向上させる送風分岐装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の空調ゾーンごとにダクトを経由して給気する送風分岐装置であって、空調ゾーンごとに対応したダクトを接続する複数の吹出口と、複数の吹出口に送風するファン部と、吹出口ごとに設置され、開度を可変とする複数のダンパと、空調ゾーンごとに給気風量を設定する複数の風量設定器と、各々の風量設定器から取得した風量設定情報に基づいて、ファン部及び複数のダンパの動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、空調ゾーンごとに対応した各々のダクトでのダクト抵抗に起因して生じる風量の差を、ダンパごとの開度を調整することで均一化し、通常運転時には、風量の差が均一化された状態で、ダンパの開度と、ファン部の送風量とを制御することで、空調ゾーンごとの給気風量を調整する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易的な構造で省エネ性を向上させる送風分岐装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る送風分岐装置を設置した建物の概略断面図である。
【
図2】一実施形態に係る送風分岐装置を備える送風システムの概略構成図である。
【
図3】一実施形態に係る送風分岐装置の断面斜視図である。
【
図4】一実施形態に係る送風分岐装置が備える制御回路を示すブロック図である。
【
図5】施工時の風量調整工程の流れを示すフローチャートである。
【
図6】通常運転時のダンパ制御工程の流れを示すフローチャートである。
【
図7】各々のダンパついての風量設定ごとの実ダンパ開度を示す表である。
【
図8】通常運転時のファンモータ制御工程の流れを示すフローチャートである。
【
図9】総風量とファンモータの回転数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここで、実施形態に示す寸法、その他、具体的な数値等は、例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素については図示を省略する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る送風分岐装置10を送風システム1の一部として設置した建物100の概略断面図である。
【0012】
本実施形態では、建物100は、二階建ての戸建て住宅である。建物100は、内部構造として、複数の居室110と、1階トイレ121と、2階トイレ122と、浴室123と、納戸130とを有する。複数の居室110は、送風システム1による空調ゾーンである。建物100内には、一例として、第1居室110a、第2居室110b、第3居室110c、第4居室110d、第5居室110e及び第6居室110fの6カ所の居室110が存在するものとする。なお、
図1では、第5居室110e及び第6居室110fの図示が省略されている。
【0013】
また、建物100は、送風システム1による空調に関係する設備として、例えば、建物100の二階部分の一部に設けられている納戸130に、空調機200と、換気装置210とを有する。空調機200は、例えばルームエアコンであり、納戸130内の空気を温調する。換気装置210は、納戸130と屋外との間で給気及び排気を行う外気処理装置である。換気装置210は、空調機200と合わせて稼働することで、季節ごとや一日の時間ごとに、湿度を調整したり、空調機200による冷暖房を補助したりする。なお、建物100は、例えば、1階トイレ121と2階トイレ122と浴室123とに、それぞれ換気扇220を備えることで、建物100内の各所で屋外への排気が行われる。
【0014】
【0015】
送風システム1は、空調ゾーンとして設定されている複数の居室110に対して、空調機200での空調後の空気を個別に送風する。つまり、送風システム1は、1台の空調機200で一棟全体又は1つのフロア全体を空調するような全館空調方式の設備として採用され得る。送風システム1は、送風分岐装置10と、複数のダクト50と、複数の居室吹出口51とを備える。
【0016】
【0017】
送風分岐装置10は、例えば、納戸130の床下空間に設置され、空調機200で空調された空気を吸い込み、床面の吸込口24より吸い込み、床下に設置された複数のダクト50を経由して各々の居室110へ分配給気する。この場合、納戸130は、送風分岐装置10へ送られる空気が一時的に保持されるチャンバーとみなすこともできる。送風分岐装置10は、吸込部11と、分岐部12と、複数の風量設定器13と、制御回路14とを備える。このうち、吸込部11、分岐部12及び制御回路14は、送風分岐装置10の本体部を構成する。
【0018】
吸込部11は、納戸130の床下において床面に向かって配置され、納戸130内の空気を吸い込む。吸込部11は、第1筐体部20と、ファン部21とを備える。
【0019】
第1筐体部20は、金属製の板体の組み合わせで構成され、上方から下方、すなわち、納戸130の床面から鉛直方向に向かう方向を流路とする筐体である。第1筐体部20での流路断面は、おおよそ矩形である。第1筐体部20の上部開口は、納戸130の床面と対向する吸込口24である。なお、
図3では不図示であるが、吸込口24には、フィルターが取り付けられてもよい。第1筐体部20の下部開口は、分岐部12の第2筐体部30の上部開口と連続する。
【0020】
ファン部21は、第1筐体部20の中央部に設置される、例えばターボファンである。ファン部21は、ファン22と、ファンモータ23とを備える。ファン22は、上方の吸込口24から空気を吸い込んで横方向に吹き出し、吹き出された空気は、ファン22の側方から下方に流れて分岐部12に導入される。ファンモータ23は、ファン22を回転させるモータであり、回転数を制御可能な、例えばDCブラシレスモータである。
【0021】
分岐部12は、上方の吸込部11から送られてきた空気を側方に向けて分岐させつつ吹き出す。分岐部12は、第2筐体部30と、複数の吹出口31と、複数のダンパ32とを備える。
【0022】
第2筐体部30は、金属製の板体の組み合わせで構成され、上方開口が第1筐体部20の下部開口と連続する筐体である。第2筐体部30は、4つの側壁30aと、上方開口と対向する底壁30bとを有する。4つの側壁30aで囲まれ、第1筐体部20と連続する方向とは直交する流路断面は、おおよそ矩形である。
【0023】
複数の吹出口31は、4つの側壁30aに数個ずつ割り当てられるように形成され、第2筐体部30の内部から外部に空気を吹き出す。例えば、1つの側壁30aには、1つから3つの吹出口31が形成されてもよく、4つの側壁30a全体としては、合計10個程度の吹出口31が形成されていてもよい。ここで、本実施形態では、空調ゾーンに設定されている居室110が6カ所あるので、実際に採用される吹出口31は、空調ゾーンの数に対応して6つである。この場合、第2筐体部30に予め形成されている10個程度の吹出口31のうち、実際に採用されない吹出口31は、蓋で封止される。
【0024】
複数のダンパ32は、それぞれいずれかの吹出口31に設置され、ダンパモータ34の駆動により開度を調整することで、吹出口31を通過する空気の風量を調節する。本実施形態では、実際に採用される吹出口31が6つあるので、ダンパ32も6つある。具体的には、送風分岐装置10は、第1ダンパ32a、第2ダンパ32b、第3ダンパ32c、第4ダンパ32d、第5ダンパ32e及び第6ダンパ32fを備える。例えば、第1ダンパ32aは、第1居室110aの空調に利用されるダンパ32である。ダンパ32は、一例として、ダンパ内流路の断面形状に合わせた円板を、流路方向とは直交する回転軸を基準にダンパモータ34が回転させることで開度を調整する。ダンパモータ34は、例えばステッピングモータである。また、各々のダンパ32の開口端には、ダクト50を接続するためのダクト接続口33が設けられていてもよい。
【0025】
風量設定器13は、空調ゾーンに設定されている各々の居室110の壁に設置され、居室110にいる人が適宜操作することで、当該居室110での給気風量を設定する。ここで、給気風量とは、居室110ごとに設置されている居室吹出口51から実際に給気される風量をいう。一方、本実施形態では、風量設定器13は、給気風量を具体的数値として直接的に設定するのではなく、一例として、「強」、「中」、「弱」及び「停止」の4段階に段階分けされたいずれかの風量設定を選択させることで、おおまかに給気風量を設定させる。本実施形態では、空調ゾーンに設定されている居室110が6カ所あるので、風量設定器13も6つある。具体的には、送風分岐装置10は、第1風量設定器13a、第2風量設定器13b、第3風量設定器13c、第4風量設定器13d、第5風量設定器13e及び第6風量設定器13fを備える。例えば、第1風量設定器13aは、第1居室110aに設置されている風量設定器13である。
【0026】
【0027】
制御回路14は、送風分岐装置10の内部に設置され、送風分岐装置10全体の動作を制御する。制御回路14は、制御部40と、入力部41と、出力部42とを有する。
【0028】
制御部40は、CPU、ROM、RAM等で構成され、少なくとも、以下で詳説する、施工時の風量調整工程S100、並びに、通常運転時のダンパ制御工程S200及びファンモータ制御工程S300を実行する。
【0029】
入力部41は、風量設定部43を含む。風量設定部43は、各々の居室110に設置されている各々の風量設定器13から風量設定情報を取得し、制御部40に送信する。ここで、風量設定情報とは、「強」、「中」、「弱」又は「停止」のいずれかである風量設定に関する情報をいう。
【0030】
出力部42は、ファンモータ制御部44と、ダンパモータ制御部45とを有する。ファンモータ制御部44は、制御部40からの指令に基づいて、ファンモータ23の回転数を制御する。また、ファンモータ制御部44は、ファンモータ23の消費電力、duty比又は電流・電圧等を検出し、制御部40に送信し得る。ダンパモータ制御部45は、制御部40からの指令に基づいて、各々のダンパ32の開度を個別に制御する。
【0031】
複数のダクト50は、送風分岐装置10の設置場所に合わせて床下空間に設置され、送風分岐装置10により分岐された空気を各々の居室110に送る。送風分岐装置10から各々の居室110に至るまでのダクト50の配索経路はそれぞれ異なり、つまり、各々のダクト50の全体形状は、互いに異なる。本実施形態では、空調ゾーンに設定されている居室110が6カ所あるので、ダクト50は、空調ゾーンの数に対応して6つある。具体的には、送風システム1は、第1ダクト50a、第2ダクト50b、第3ダクト50c、第4ダクト50d、第5ダクト50e及び第6ダクト50fを備える。例えば、第1ダクト50aは、送風分岐装置10から第1居室110aに送風するダクト50である。
【0032】
ここで、以下の圧力損失に関する説明のために、送風分岐装置10の吹出口31から居室110までの間について、ダンパ32とダクト50とを含む流路2を規定する。流路2は、すなわち、ダンパ32の内部にあるダンパ流路と、ダクト50の内部にあるダクト流路とを含む。本実施形態では、ダンパ32とダクト50との組み合わせは6つあるので、流路2も6つある。具体的には、送風システム1は、第1流路2a、第2流路2b、第3流路2c、第4流路2d、第5流路2e及び第6流路2fを備える。例えば、第1流路2aは、第1ダンパ32aと第1ダクト50aとを含む流路2である。
【0033】
複数の居室吹出口51は、各々のダクト50の開放口に合わせて、空調ゾーンに設定されている各々の居室110の壁に設置され、空調後の空気を居室110内に吹き出す。本実施形態では、空調ゾーンに設定されている居室110が6カ所あるので、居室吹出口51も6つある。具体的には、送風システム1は、第1居室吹出口51a、第2居室吹出口51b、第3居室吹出口51c、第4居室吹出口51d、第5居室吹出口51e及び第6居室吹出口51fを備える。例えば、第1居室吹出口51aは、第1居室110aに設置されている居室吹出口51である。
【0034】
次に、送風システム1における送風分岐装置10を用いた風量調節について説明する。
【0035】
送風分岐装置10の制御部40は、少なくとも以下の3つの工程を実行する。第1の工程は、送風システム1が設置される建物100の施工時に実行される風量調整工程S100である。第2の工程は、施工後の通常運転時に実行されるダンパ制御工程S200である。また、第3の工程は、同じく施工後の通常運転時に実行されるファンモータ制御工程S300である。以下、これらの工程について個別に詳説する。
【0036】
図5は、施工時の風量調整工程S100の流れを示すフローチャートである。
【0037】
建物100の施工時、すなわち、建物100に送風システム1が設置されるとき、送風分岐装置10から6カ所の居室110まで、合計6つのダクト50が配索される。各々のダクト50では、それぞれ、ダクトの長さや曲がり等に起因した圧力損失である、いわゆるダクト抵抗が異なるため、各々のダクト50に対応する6つのダンパ32の開度がすべて同じに設定されたとしても、ダクト50ごとに風量が異なる。そこで、送風分岐装置10の制御部40は、施工時の段階で風量調整工程S100を実行することで、それぞれダンパ32とダクト50とを含む6つの流路2での風量がすべて同じとなるように予め調整する。
【0038】
風量調整工程S100では、まず、制御部40は、6つのダクト50の中で最もダクト抵抗が大きいダクト50を検出する。
【0039】
制御部40は、風量調整工程S100を開始すると、ファン22及びファンモータ23の特性に関する情報を取得する(ステップS101)。ファン22の送風量と、ファンモータ23の消費電力、duty比及び電流・電圧等(以下「消費電力等」と略記する。)とは、ほぼ比例関係にある。そのため、制御部40は、ファン22による送風量とファンモータ23の回転数に関する特性を利用することで、ファンモータ23に関する消費電力等の情報に基づいて、ファン22の送風量を推測することができる。なお、当該特性は、建物100の施工前に工場などで予め測定される。そして、制御部40は、外部から当該特性に関する情報を予め取得する。
【0040】
次に、制御部40は、ファンモータ23の基準回転数Rsを決定する(ステップS102)。具体的には、制御部40は、第1ダンパ32aの開度を全開とし、他のすべてのダンパ32の開度を全閉とした状態で、ファンモータ23を初期回転数Rst[rpm/min]で回転させる。併せて、制御部40は、ファンモータ23の消費電力等より推定される、第1ダクト50aに関する第1風量Q1を求める。そして、制御部40は、第1風量Q1が基準風量Qs[m3/min]となるようにファンモータ23の回転数を調整し、基準風量Qsとなったときのファンモータ23の回転数を基準回転数Rs[rpm/min]として記憶させる。
【0041】
次に、制御部40は、2番目のダンパ32を示す第2ダンパ32bを参照する(N=2:ステップS103)。以下、Nは、N番目のダンパ32を示す自然数である。
【0042】
次に、制御部40は、第2ダクト50bに関する第2風量Q2を求める(ステップS104)。具体的には、制御部40は、第2ダンパ32bの開度を全開とし、他のすべてのダンパ32の開度を全閉とした状態で、ファンモータ23を基準回転数Rsで回転させ、そのときの風量を第2風量Q2とする。なお、「N=2」以降のループでは、ファンモータ23の回転数は、基準回転数Rsのままである。
【0043】
次に、制御部40は、第2風量Q2が基準風量Qsよりも小さいかどうかを判断する(Q2<Qs?:ステップS105)。ここで、制御部40は、第2風量Q2が基準風量Qsよりも小さいと判断したとき(YES)、第2風量Q2の値を新たな基準風量Qsとする(ステップS106)。一方、制御部40は、第2風量Q2が基準風量Qsよりも大きいと判断したとき(NO)、ステップS107に移行する。
【0044】
次に、制御部40は、「N=6」であるか、すなわち、6番目のダンパ32まで比較対象とされたかどうかを判断する(ステップS107)。ここでは「N=2」であるので、制御部40は、引き続きステップS108に移行して新たに「N=3」とし、ステップS104以下の工程を繰り返す。
【0045】
「N=3」の場合、制御部40は、第3ダンパ32cの開度を全開とし、他のすべてのダンパ32の開度を全閉とした状態で、ファンモータ23を基準回転数Rsで回転させ、そのときの第3風量Q3を求める(ステップS104)。制御部40は、ステップS105の判断(Q3<Qs?)において、第3風量Q3が基準風量Qsよりも小さいと判断したとき(YES)、第3風量Q3の値を新たな基準風量Qsとする(ステップS106)。一方、制御部40は、第3風量Q3が基準風量Qsよりも大きいと判断したとき(NO)、ステップS107に移行する。
【0046】
そして、制御部40は、ステップS104からステップS106までの工程を、6番目のダンパ32である第6ダンパ32fまで繰り返す(ステップS107)。
【0047】
ここまでの工程により、最終的に、基準回転数Rsのときの風量が基準風量Qsとなっているダクト50が検出される。そして、この検出されたダクト50が、6つのダクト50の中で最もダクト抵抗が大きいダクト50である。一方、他のダクト50での風量は、基準風量Qsよりも多くなる。
【0048】
引き続き、風量調整工程S100では、制御部40は、6つのダクト50の中で最もダクト抵抗が大きいと特定されたダクト50を含む流路2での風量と同じの風量となるように、他のすべての流路2での風量を調整する。
【0049】
まず、制御部40は、1番目のダンパ32を示す第1ダンパ32aを参照する(N=1:ステップS109)。
【0050】
次に、制御部40は、第1ダンパ32aの開度を全開とし、他のすべてのダンパ32の開度を全閉とした状態で、ファンモータ23を基準回転数Rsで回転させる(ステップS110)。
【0051】
次に、制御部40は、第1ダクト50aに関する第1風量Q1が基準風量Qsとなるように、第1ダンパ32aの開度を調整する(ステップS111)。具体的には、制御部40は、ステップS102で得られた第1風量Q1が基準風量Qsよりも大きいとき、第1ダンパ32aを少しずつ閉じていき、最終的に第1風量Q1と基準風量Qsになるように調整する。
【0052】
次に、制御部40は、第1風量Q1が基準風量Qsとなったときの第1ダンパ32aの第1開度D1を記憶させる(ステップS112)。このときの第1開度D1は、ある程度閉じられた状態にあり、すなわち、第1ダンパ32aの構造上の全開ではない。一方、第1風量Q1が基準風量Qsであるとき、すなわち、第1ダンパ32aの開度が構造上の全開であるときの第1風量Q1が基準風量Qsであるときには、制御部40は、第1開度D1を「全開」と記憶させる。なお、基準風量Qsは、すべてのダクト50における最小風量であるので、実測風量が基準風量Qsよりも小さくなることはない。
【0053】
次に、制御部40は、「N=6」であるか、すなわち、6番目のダンパ32まで比較対象とされたかどうかを判断する(ステップS113)。ここでは「N=1」であるので、制御部40は、引き続きステップS114に移行して新たに「N=2」とし、ステップS110以下の工程を繰り返す。
【0054】
「N=2」の場合、制御部40は、第2ダンパ32bの開度を全開とし、他のすべてのダンパ32の開度を全閉とした状態で、ファンモータ23を基準回転数Rsで回転させる(ステップS110)。次に、制御部40は、第2ダクト50bに関する第2風量Q2が基準風量Qsとなるように、第2ダンパ32bの開度を調整する(ステップS111)。具体的には、制御部40は、ステップS104で得られた第2風量Q2が基準風量Qsよりも大きいとき、第2ダンパ32bを少しずつ閉じていき、最終的に第2風量Q2と基準風量Qsになるように調整する。次に、制御部40は、第2風量Q2が基準風量Qsとなったときの第2ダンパ32bの第2開度D2を記憶させる(ステップS112)。一方、第2風量Q2が基準風量Qsであるとき、制御部40は、第2開度D2を「全開」と記憶させる。
【0055】
次に、制御部40は、ステップS110からステップS112までの工程を、6番目のダンパ32である第6ダンパ32fまで繰り返す(ステップS113)。ここまでの工程により、第1開度D1、第2開度D2、第3開度D3、第4開度D4、第5開度D5及び第6開度D6がそれぞれ導出され、かつ、記憶されたことになる。そして、制御部40は、ステップS113において「N=6」であると判断したとき(YES)、風量調整工程S100を終了する。
【0056】
ここで、第1開度D1、第2開度D2、第3開度D3、第4開度D4、第5開度D5及び第6開度D6は、各々のダンパ32での制御上の全開の開度である。このうち、1つの開度は、6つのダクト50の中で最もダクト抵抗が大きいダクト50に連設されたダンパ32における構造上の全開の開度である。一方、他のすべての開度は、対応するダンパ32における構造上の全開よりも若干程度閉じられた、設定上の全開の開度である。そして、各々のダンパ32での制御上の全開の開度が上記のように設定されることで、たとえダクト50ごとにダクト抵抗が異なっていても、ダンパ32を含む流路2全体ごとでは、風量が均一化されることになる。つまり、ダンパ32の構造に起因して生じる圧力損失をダンパ抵抗と表現するならば、各々の流路2において、ダクト抵抗と、制御上の全開の開度でのダンパ抵抗との和は、同一である。
【0057】
図6は、通常運転時のダンパ制御工程S200の流れを示すフローチャートである。
【0058】
建物100内に人がおり、実際に送風システム1が運転されるときを想定した通常運転時でも、複数の居室110のうち、給気風量が少なく設定された居室110も多い。このような場合、多くのダンパ32は絞られた状態にあることから、このまま何ら対策を採ることなく送風分岐装置10を運転させると、送風時の圧力損失が大きくなり、ファンモータ23の消費電力にも無駄が生じ得る。そこで、送風分岐装置10の制御部40は、通常運転時の段階でダンパ制御工程S200を実行することで、可能な限りダンパ32が開いた状態となるように、各ダンパ32の開度を制御する。
【0059】
制御部40は、ダンパ制御工程S200を開始すると、各々の居室110にある風量設定器13から、各々の風量設定情報を取得する(ステップS201)。風量設定情報には、上記のとおり、風量設定器13で予め設定し得る風量設定としての「強」、「中」、「弱」又は「停止」のいずれかが含まれる。
【0060】
次に、制御部40は、ステップS201で得られた風量設定情報に基づいて、すべての居室110に対応したすべての風量設定が「停止」であるかどうかを判断する(ステップS202)。ここで、制御部40は、すべての風量設定が「停止」であると判断したとき(YES)、もはや各々のダンパ32の開度を調整する必要がないため、そのままダンパ制御工程S200を終了する。一方、制御部40は、すべての風量設定が「停止」ではないと判断したとき(NO)、以下のステップS203に移行する。
【0061】
次に、制御部40は、いずれかの風量設定の中に「強」が含まれているかどうかを判断する(ステップS203)。ここで、制御部40は、いずれかの風量設定の中にも「強」が含まれていないと判断したとき(NO)、ステップS204に移行する。一方、制御部40は、いずれかの風量設定の中に「強」が含まれていると判断したとき(YES)、ステップS205に移行する。
【0062】
ステップS204では、制御部40は、各々の風量設定器13で設定された各々の風量設定のうち「停止」以外の設定レベルを強制的に上位の設定レベルに変更する。本実施形態の場合、当該工程での処理に移行したということは、いずれの風量設定にも「強」はないので、各々の風量設定は「中」、「弱」又は「停止」のいずれかである。ここで、制御部40は、風量設定器13により風量設定が「中」に設定されているものについては、以後「強」に設定されたものとして処理する。同様に、制御部40は、風量設定器13により風量設定が「弱」に設定されているものについては、以後「中」に設定されたものとして処理する。一方、制御部40は、風量設定器13により風量設定が「停止」に設定されているものについては、変更しない。
【0063】
ステップS204の後、制御部40は、ステップS203に戻り、いずれかの風量設定の中に「強」が含まれているかどうかを改めて判断する。ここで、ステップS204での処理によって「中」から「強」に変更された風量設定があるとき、いずれかの風量設定の中に「強」が含まれていることになるので(YES)、制御部40は、ステップS205に移行する。一方、ステップS204での処理によって「中」から「強」に変更された風量設定がないとき、いずれの風量設定の中にも、未だ「強」が含まれていないので(NO)、制御部40は、再度、ステップS204に移行する。引き続き移行したステップS204では、各々の風量設定は「中」又は「停止」のいずれかであるので、制御部40は、風量設定器13により風量設定が「中」に設定されているものについては、以後「強」に設定されたものとして処理すればよい。
【0064】
次に、制御部40は、各々のダンパ32について、通常運転時に実際に調整される、風量設定に応じた開度としての実ダンパ開度を決定する(ステップS205)。
【0065】
図7は、各々のダンパ32ついて決定される、風量設定ごとの実ダンパ開度を示す表である。
図7中、ダンパNo.1は、第1ダンパ32aに対応する。ダンパNo.2は、第2ダンパ32bに対応する。ダンパNo.3は、第3ダンパ32cに対応する。ダンパNo.4は、第4ダンパ32dに対応する。ダンパNo.5は、第5ダンパ32eに対応する。ダンパNo.6は、第6ダンパ32fに対応する。なお、すべてのダンパ32について、風量設定が「停止」の場合は、実ダンパ開度は「閉(全閉)」である。
【0066】
ここで、制御部40は、風量調整工程S100で求めた、第1開度D1、第2開度D2、第3開度D3、第4開度D4、第5開度D5及び第6開度D6を、各々のダンパ32に対応した居室110における風量設定が「強」のときの実ダンパ開度に設定する。上記のとおり、第1開度D1、第2開度D2、第3開度D3、第4開度D4、第5開度D5及び第6開度D6は、各々のダンパ32での制御上の全開の開度である。
【0067】
また、制御部40は、風量調整工程S100で求めた各々の開度の2/3の開度を、各々のダンパ32に対応した居室110における風量設定が「中」のときの実ダンパ開度に設定する。例えば、第1ダンパ32aに対応した第1居室110aにおける風量設定が「中」のときの実ダンパ開度は、第1開度D1の2/3の開度となる。
【0068】
更に、制御部40は、風量調整工程S100で求めた各々の開度の1/3の開度を、各々のダンパ32に対応した居室110における風量設定が「弱」のときの実ダンパ開度に設定する。例えば、第1ダンパ32aに対応した第1居室110aにおける風量設定が「弱」のときの実ダンパ開度は、第1開度D1の1/3の開度となる。
【0069】
そして、制御部40は、以後、各々の風量設定器13で設定された風量設定情報に基づいた実ダンパ開度で開くように、各々のダンパ32の開度をダンパモータ制御部45に制御させる(ステップS206)。そして、制御部40は、送風分岐装置10の停止に合わせて、ダンパ制御工程S200を終了する。
【0070】
このダンパ制御工程S200による各々のダンパ32の開度の制御では、各々の風量設定器13から取得した風量設定情報に「強」が少なくとも1つ含まれていれば、各々のダンパ32の実ダンパ開度がそのまま
図7の表に基づいて決定される。一方、各々の風量設定器13から取得した風量設定情報に「強」が1つも含まれていなければ、各々のダンパ32についての風量設定が上位の設定レベルに変更されるので、最終的には、いずれかのダンパ32に対する風量設定に「強」が含まれることになる。つまり、送風分岐装置10の通常運転時には、少なくとも1つのダンパ32が、制御上の全開開度で開いていることになる。
【0071】
図8は、通常運転時のファンモータ制御工程S300の流れを示すフローチャートである。
【0072】
各々のダクト50に送風するファン22を回転させるためのファンモータ23の回転数は、各々の風量設定器13から取得した風量設定情報の合計、すなわち必要総風量を満たす送風量が得られるように制御される。しかし、ファンモータ23の回転数と風量とは、各々のダクト50におけるダクト抵抗又は各々のダンパ32の開度によっては、一義的に決定されない。そこで、送風分岐装置10の制御部40は、通常運転時の段階でファンモータ制御工程S300を実行することで、より適切な必要総風量が得られるように、ファンモータ23の回転数を制御する。
【0073】
制御部40は、ファンモータ制御工程S300を開始すると、各々の居室110にある風量設定器13から取得した各々の風量設定情報に含まれる風量設定から総風量を求める(ステップS301)。なお、送風量を求めるに際して参照される風量設定は、ステップS204で実行されたような上位の設定レベルへの変更がなされていないものである。
【0074】
ここで、制御部40は、風量設定が「強」に設定されている風量設定器13がある居室110について、当該居室110に接続されている流路2での風量を、基準風量Qsと規定する。制御部40は、風量設定が「中」に設定されている風量設定器13がある居室110について、当該居室110に接続されている流路2での風量を、基準風量Qsの2/3の風量と規定する。制御部40は、風量設定が「弱」に設定されている風量設定器13がある居室110について、当該居室110に接続されている流路2での風量を、基準風量Qsの1/3の風量と規定する。また、制御部40は、風量設定が「停止」に設定されている風量設定器13がある居室110について、当該居室110に接続されている流路2での風量を「0(ゼロ)」と規定する。そして、制御部40は、これらの風量をすべて足し合わせることで、ファン22が送風すべき総風量を求める。
【0075】
次に、制御部40は、各々の風量設定器13での風量設定を風量レベルに置き換える重み付けを実行し、風量レベル合計を求める(ステップS302)。なお、風量レベルに置き換えるに際して参照される風量設定は、ステップS301の場合と同様に、上位の設定レベルへの変更がなされていないものである。
【0076】
ここで、制御部40は、例えば、風量設定が「強」については、風量レベル「3」を割り当て、風量設定が「中」については、風量レベル「2」を割り当て、風量設定が「弱」については、風量レベル「1」を割り当てる。なお、風量設定が「停止」については、風量レベルを「0(ゼロ)」とする。そして、制御部40は、実際に各々の風量設定器13で設定された各々の風量設定に基づいて風量レベルを導出し、これらの風量レベルをすべて足し合わせることで、風量レベル合計を求める。なお、風量レベル合計は、実質、送風システム1全体でのダクト抵抗を表す。つまり、風量レベル合計が小さいと、送風システム1全体でのダクト抵抗は大きく、風量レベル合計が大きいと、送風システム1全体でのダクト抵抗が小さいことを意味する。
【0077】
次に、制御部40は、風量レベル合計のグループに基づく風量レベル曲線を含む、総風量とファンモータ23の回転数との関係を示すグラフを作製する(ステップS303)。
【0078】
図9は、総風量とファンモータ23の回転数との関係を示すグラフの一例である。
【0079】
制御部40は、それぞれの風量レベル合計のグループに合わせて、総風量[m
3/h]に対するファンモータ23の回転数[min
-1]を予め実測させた結果を含むデータベースを取得し、処理することで、
図9に示すグラフを作製することができる。ここで、本実施形態では、送風システム1におけるダクト50の総数は「6」であるので、風量レベル合計は「0」から「18」までの値を取ることになる。そこで、風量レベル合計のグループは、例えば、簡易的に、以下の6つの風量レベル曲線を構成するように6つのグループに分けられてもよい。すなわち、風量レベル合計が「1」から「3」までは、風量レベル曲線Iを構成する第1グループである。風量レベル合計が「4」から「6」までは、風量レベル曲線IIを構成する第2グループである。風量レベル合計が「7」から「9」までは、風量レベル曲線IIIを構成する第3グループである。風量レベル合計が「10」から「12」までは、風量レベル曲線IVを構成する第4グループである。風量レベル合計が「13」から「15」までは、風量レベル曲線Vを構成する第5グループである。風量レベル合計が「16」から「18」までは、風量レベル曲線VIを構成する第6グループである。なお、風量レベル合計が「0(ゼロ)」の場合は、割り当てに含まれない。
【0080】
次に、制御部40は、ステップS302で求められた風量レベル合計を
図9に適用して風量レベル曲線を選択し、ステップS301で求められた総風量を当該風量レベル曲線に適用することで、ファンモータ23の回転数を決定する(ステップS304)。
【0081】
そして、制御部40は、以後、ステップS304で決定されたファンモータ23の回転数で、ファンモータ23を駆動させる(ステップS305)。そして、制御部40は、送風分岐装置10の停止に合わせて、ファンモータ制御工程S300を終了する。
【0082】
次に、送風分岐装置10の効果について説明する。
【0083】
送風分岐装置10は、複数の空調ゾーンごとにダクト50を経由して給気する。送風分岐装置10は、空調ゾーンごとに対応したダクト50を接続する複数の吹出口31と、複数の吹出口31に送風するファン部21と、吹出口31ごとに設置され、開度を可変とする複数のダンパ32とを備える。また、送風分岐装置10は、空調ゾーンごとに給気風量を設定する複数の風量設定器13と、各々の風量設定器13から取得した風量設定情報に基づいて、ファン部21及び複数のダンパ32の動作を制御する制御部40とを備える。制御部40は、空調ゾーンごとに対応した各々のダクト50でのダクト抵抗に起因して生じる風量の差を、ダンパ32ごとの開度を調整することで均一化する。そして、制御部40は、通常運転時には、風量の差が均一化された状態で、ダンパ32の開度と、ファン部21の送風量とを制御することで、空調ゾーンごとの給気風量を調整する。
【0084】
ここで、複数の空調ゾーンは、上記例示での複数の居室110に相当する。また、各々のダクト抵抗に起因した風量の差を均一化させる制御は、上記例示での施工時の風量調整工程S100に相当する。更に、通常運転時に空調ゾーンごとの給気風量を調整する制御は、通常運転時に実行されるダンパ制御工程S200及びファンモータ制御工程S300に相当する。
【0085】
一般に、送風分岐装置10が設置され得る上記例示の建物100等では、複数の空調ゾーンに対応した居室110までのダクト50の配索経路がそれぞれ異なるので、各々のダクト抵抗が異なる。そのため、何ら対策が講じられなければ、ダクト50ごとに生じ得る風量の差に起因して、各々の風量設定器13で設定される給気風量によっては、圧力損失が増加し、結果としてファン部21の消費電力に無駄を生じさせることもあり得る。
【0086】
これに対して、送風分岐装置10では、制御部40は、実際に空調ゾーンごとの給気風量を調整する通常運転の前、すなわち、送風分岐装置10が設置される施工時に、各々のダクト50でのダクト抵抗に起因して生じる風量の差を均一化する。これにより、送風分岐装置10によれば、各々の風量設定器13により給気風量がどのように設定されたとしても、ダクト50ごとの圧力損失の増加を抑止させることができるので、ファン部21の消費電力の無駄を抑え、ひいては省エネ性の向上に寄与し得る。
【0087】
また、送風分岐装置10では、制御部40は、複数のダンパ32の動作を、各々の風量設定器13から取得した風量設定情報に基づいて制御する。つまり、制御部40は、例えば、各々のダクト50内に設置されるような風速センサから風速情報を取得し、当該風速情報に基づいてダンパ32を制御するような複雑な制御を要しない。このように、送風分岐装置10によれば、風速センサを備えないことから、簡易的な構造となり、複雑な制御を要しないので、施工が簡単で、かつ、コストも抑えることができる。また、例えばリフォーム時にも改修が容易となるという利点がある。
【0088】
したがって、本実施形態によれば、簡易的な構造で省エネ性を向上させる送風分岐装置10を提供することができる。
【0089】
また、送風分岐装置10では、制御部40は、各々のダクト抵抗に起因した風量の差を均一化させるとき、まず、各々のダクト50のうちダクト抵抗が最も大きいダクト50を検出してもよい。次に、制御部40は、他のダクト50に連設されているダンパ32の制御上の全開となる開度を、ダクト抵抗が最も大きいダクト50に連設されているダンパ32の構造上の全開となる開度のときの風量と同じ風量が得られる設定上の全開の開度に調整してもよい。ここで、他のダクト50とは、ダクト抵抗が最も大きいダクト50ではないダクト50をいう。
【0090】
ここで、各々のダクト50のうちダクト抵抗が最も大きいダクト50を検出する制御は、上記例示でのステップS101からステップS107までの工程に相当する。また、他のダクト50に連設されているダンパ32の制御上の全開となる開度を設定上の全開の開度に調整する制御は、上記例示でのステップS109からステップS113までの工程に相当する。
【0091】
この送風分岐装置10によれば、制御部40は、各々の風量設定器13によって給気風量がどのように設定されたとしても、少なくとも1つのダンパ32の開度を全開に設定するように制御することができる。したがって、ダクト抵抗の影響をより抑えつつ、設定された給気風量により近い風量で給気させることができる。また、すべてのダクト50を総合したダクト抵抗を小さくできるので、ファン部21の消費電力を小さくすることができる。なお、ファン部21の消費電力を小さくすることに関連して、ファン部21に含まれるファンモータ23の回転数を下げることができるので、騒音値も下げることができる。
【0092】
また、送風分岐装置10では、ファン部21は、ファン22と、ファン22を回転させるファンモータ23とを備えてもよい。制御部40は、各々のダクト抵抗に起因した風量の差を均一化させるとき、ダクト抵抗が最も大きいダクト50を検出する前に、ファン22による送風量とファンモータ23の回転数との関係に係る特性に関する情報を取得してもよい。
【0093】
ここで、当該制御は、上記例示でのステップS101に相当する。
【0094】
この送風分岐装置10によれば、制御部40は、取得した当該特性を利用することで、ダクト抵抗が最も大きいダクト50を検出するに際しての基準となる基準風量Qsを設定することができるので、それ以下の工程によって簡易的に検出することができる。
【0095】
また、送風分岐装置10では、制御部40は、通常運転時に空調ゾーンごとの給気風量を調整するとき、まず、各々の風量設定器13から風量設定情報を取得してもよい。次に、制御部40は、各々の風量設定情報に含まれる風量設定に基づいて各々のダンパ32の開度を決定してもよい。次に、制御部40は、各々の風量設定の合計に基づいてファン部21の送風量を決定してもよい。
【0096】
ここで、各々の風量設定器13から風量設定情報を取得する制御は、上記例示でのステップS201に相当する。各々の風量設定情報に含まれる風量設定に基づいて各々のダンパ32の開度を決定する制御は、上記例示でのステップS203からステップS205までの工程に相当する。また、各々の風量設定の合計に基づいてファン部21の送風量を決定する制御は、上記例示でのステップS301からステップS305までの工程に相当する。
【0097】
この送風分岐装置10によれば、ダンパ32の開度を決定する制御によって、圧力損失の増加を抑えつつ、ファン部21の送風量を決定する制御によって、より適切に必要総風量を満たさせることができる。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 送風分岐装置
13 風量設定器
21 ファン部
22 ファン
23 ファンモータ
31 吹出口
32 ダンパ
40 制御部
50 ダクト