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  • 特開-歯車研削盤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020811
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】歯車研削盤
(51)【国際特許分類】
   B23F 5/02 20060101AFI20250205BHJP
   B23F 23/12 20060101ALI20250205BHJP
   B23Q 15/26 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B23F5/02
B23F23/12
B23Q15/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124404
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】古田 知康
(72)【発明者】
【氏名】原島 健走
【テーマコード(参考)】
3C001
3C025
【Fターム(参考)】
3C001KA01
3C001KB05
3C001KB07
3C001TA02
3C001TB02
3C001TB04
3C025HH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】位置合わせの際における回転砥石の摩耗量を低減して砥石寿命を延ばすことができ、且つ過度な研削によるワークの廃棄ロスを削減する。
【解決手段】本発明にかかる歯車研削盤の構成は、ワーク保持部、工具保持部、ワークと回転砥石との位置合わせを行う制御装置を備え、ワークと回転砥石との離接方向をX軸とし、回転砥石の回転軸方向であるとともにX軸と直交する方向をY軸とし、ワークの回転軸方向をZ軸とし、Z軸を中心に回転する軸をC軸としたとき、制御装置は、回転砥石とワークとのいずれか一方をいずれか他方に向かってX軸方向に前進させ、ワークのC軸方向の回転によってワークと回転砥石との接触を検知し、ワークをワークが回転した方向と同じ方向に微少量回転させ、X軸方向に前進させた回転砥石またはワークがX軸方向の前進端に至るまで上記動作を繰り返し、回転砥石の刃とワークの歯溝との位置合わせを行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車形状のワークを回転砥石によって研削する歯車研削盤であって、
前記ワークを保持するワーク保持部と、
前記回転砥石を保持する工具保持部と、
前記ワーク保持部および前記工具保持部の動作を制御して前記ワークと前記回転砥石との位置合わせを行う制御装置と、
を備え、
前記ワークと前記回転砥石との離接方向をX軸とし、前記回転砥石の回転軸方向であるとともに前記X軸と直交する方向をY軸とし、前記ワークの回転軸方向をZ軸とし、前記Z軸を中心に回転する軸をC軸としたとき、
前記制御装置は、
前記回転砥石と前記ワークとのいずれか一方をいずれか他方に向かってX軸方向に前進させ、
前記ワークのC軸方向の回転によって前記ワークと前記回転砥石との接触を検知し、
前記ワークを該ワークが前記回転した方向と同じ方向に微少量回転させ、
前記X軸方向に前進させた前記回転砥石または前記ワークが前記X軸方向の前進端に至るまで上記動作を繰り返し、
前記回転砥石の刃と前記ワークの歯溝との位置合わせを行うことを特徴とする歯車研削盤。
【請求項2】
前記制御装置は、前記回転砥石の刃と前記ワークの歯溝との位置合わせを行った後に、
前記回転砥石をY軸の一方向に微小速度で移動させ、
前記ワークのC軸方向の回転によって前記ワークと前記回転砥石との第1接触位置を検知し、
前記回転砥石を前記Y軸の前記一方向とは反対の他方向に微小速度で移動させ、
前記ワークのC軸方向の回転によって前記ワークと前記回転砥石との第2接触位置を検知し、
前記第1接触位置と前記第2接触位置とから、前記回転砥石の刃と前記ワークの歯溝との噛合中心を導出することを特徴とする請求項1に記載の歯車研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車形状のワークを回転砥石によって研削する歯車研削盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車の歯面を研削する装置として、回転砥石を用いる歯車研削盤が知られている。歯車研削盤では、ワークの加工前の段取りとして、回転砥石とワークとの位置合わせが行われる。この位置合わせを行う装置として、例えば特許文献1に「ねじ溝を前加工したワークをC軸まわりに回転しながらワークをZ軸方向に移動すると共に、X軸方向に移動する高速回転している砥石をワークに当接係合せしめて位相合わせをする自動位相合わせ装置」が開示されている。
【0003】
特許文献1の自動位相合わせ装置は、「ワークに砥石が接触した瞬間と非接触の瞬間を検出する検出センサと、その検出をON,OFF信号として発信する発信装置と、ON,OFF信号の発信時におけるZ軸位置を読み取り記憶すると共にその中間位置を演算し、ワークおよび砥石のC軸,Z軸およびX軸の回転および移動制御を行う制御装置とを設けること」を特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-138438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動位相合わせ装置では検出センサとしてAEセンサ(振動センサ)を用いている。特許文献1には、「AEセンサは高速回転している砥石がワークに接触した瞬間と離れた瞬間を衝撃音の変化等により検出するものであり、発信装置は砥石がワークに接触した瞬間にON信号を発し、離れた瞬間にOFF信号を発するように形成される」と記載されている。
【0006】
しかし特許文献1のようにワークおよび砥石をともに回転させながら接触させる方法であると、砥石の摩耗が大きく、またワークの歯面も取り代以上に研削されるおそれがある。よって、砥石の摩耗量によってはドレスによる再成形が必要になり、作業効率が低下したり、砥石寿命が短期化しコストの増大を招いたりしてしまう。またワークの歯面が取り代以上に研削されると、位相合わせ(位置合わせ)に用いたワークを廃棄しなければならず、コスト増大の要因となる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、位置合わせの際における回転砥石の摩耗量を低減して砥石寿命を延ばすことができ、且つ過度な研削によるワークの廃棄ロスを削減することが可能な歯車研削盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる歯車研削盤の構成は、歯車形状のワークを回転砥石によって研削する歯車研削盤であって、ワークを保持するワーク保持部と、回転砥石を保持する工具保持部と、ワーク保持部および工具保持部の動作を制御してワークと回転砥石との位置合わせを行う制御装置と、を備え、ワークと回転砥石との離接方向をX軸とし、回転砥石の回転軸方向であるとともにX軸と直交する方向をY軸とし、ワークの回転軸方向をZ軸とし、Z軸を中心に回転する軸をC軸としたとき、制御装置は、回転砥石とワークとのいずれか一方をいずれか他方に向かってX軸方向に前進させ、ワークのC軸方向の回転によってワークと回転砥石との接触を検知し、ワークをワークが回転した方向と同じ方向に微少量回転させ、X軸方向に前進させた回転砥石またはワークがX軸方向の前進端に至るまで上記動作を繰り返し、回転砥石の刃とワークの歯溝との位置合わせを行うことを特徴とする。
【0009】
上記制御装置は、回転砥石の刃と前記ワークの歯溝との位置合わせを行った後に、回転砥石をY軸の一方向に微小速度で移動させ、ワークのC軸方向の回転によってワークと回転砥石との第1接触位置を検知し、回転砥石をY軸の一方向とは反対の他方向に微小速度で移動させ、ワークのC軸方向の回転によってワークと回転砥石との第2接触位置を検知し、第1接触位置と第2接触位置とから、回転砥石の刃とワークの歯溝との噛合中心を導出するとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、位置合わせの際における回転砥石の摩耗量を低減して砥石寿命を延ばすことができ、且つ過度な研削によるワークの廃棄ロスを削減することが可能な歯車研削盤を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態にかかる歯車研削盤の構成の概略を説明する図である。
図2図1の歯車研削盤の動作を説明するフローチャートである。
図3図1の工具保持部をワークに向かって前進させる工程~ワークと回転砥石とが接触した際にワークが回転した矢印C1方向と同じ方向にワークを微少量回転させる工程を示す図である。
図4図3の回転砥石をY軸の正方向に移動する工程~C軸の基準角度Czを導出する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示または説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかる歯車研削盤100の構成の概略を説明する図である。図1に示す本実施形態の歯車研削盤100は、ワーク保持部110、工具保持部120および制御装置130を含んで主要部が構成される。ワーク保持部110は、歯車形状のワーク180を双方向に回転可能に保持する。工具保持部120は、工具としての回転砥石190を双方向に回転可能に保持する。
【0014】
歯車研削盤100は、ワーク保持部110において保持したワーク180を、工具保持部120において保持した回転砥石190によって研削する。本実施形態では、ワーク180と回転砥石190との離接方向をX軸とし、回転砥石190の回転軸方向であるとともにX軸と直交する方向をY軸とし、ワーク180の回転軸方向をZ軸とする。また、回転砥石190の回転方向(Y軸を中心とする回転方向)をB軸、Z軸を中心に回転する軸をC軸とする。
【0015】
制御装置130は、ワーク保持部110と工具保持部120の動作を制御してワーク180と回転砥石190との位置合わせを行う。「位置合わせ」とは、ワーク180の歯溝182の中心に回転砥石190の刃192の中心を合わせることをいう。制御装置130は、ワーク保持部と工具保持部120の動作を制御するNC装置132と、ワーク180と回転砥石190との位置合わせのための座標演算を行う演算装置134とを含んで主要部が構成される。
【0016】
NC装置132は、ワーク保持部110および工具保持部120との「制御情報の送受信」を行い、所定の加工プログラムに基づいてワーク保持部110および工具保持部120の動作を数値制御する。またNC装置132は、ワーク保持部110および工具保持部120の座標情報を演算装置134に送信する。また、NC装置132を介さず、直接スケールより座標情報を演算装置134側が受信してもよい。
【0017】
NC装置132はスキップ機能を有し、何らかの動作を実行中にスキップ信号を受けると動作を中断する。一般的なスキップ機能では動作を中断した後に次の動作に移行するが、本実施形態ではワーク180と回転砥石190との接触を検知するためにスキップ機能を利用する。
【0018】
演算装置134は、NC装置132から受信したワーク保持部110の座標情報を演算し、演算結果として生成したスキップ信号をNC装置132に送信する。本実施形態で使用するスキップ信号は、ワーク保持部110や工具保持部120の軸移動を途中で中止させる(スキップさせる)ための信号である。なお、スキップ信号を演算する際には、ワーク保持部110の座標情報に加えて、工具保持部120の座標情報を用いてもよい。
【0019】
図2は、図1の歯車研削盤100の動作を説明するフローチャートである。図3は、図1の工具保持部120をワーク180に向かって前進させる工程~ワーク180と回転砥石190とが接触した際にワーク180が回転した矢印C1方向と同じ方向にワーク180を微少量回転させる工程を示す図である。また図4は、図3の回転砥石190をY軸の正方向に移動する工程~C軸の基準角度Czを導出する工程を示す図である。
【0020】
図2に示すように本実施形態の歯車研削盤100においてワーク180と回転砥石190との位置合わせを行う際には、まず制御装置130のNC装置132は、ワーク保持部110および工具保持部120を位置合わせの初期位置に移動し、B軸(回転砥石190の回転)をサーボロック状態(回転を固定)とし、C軸(ワーク180の回転)をサーボオフ状態(回転をフリー)とする(S202)。
【0021】
NC装置132は、「C軸座標Cx(座標情報)の記憶を指令する指令信号」を演算装置134に送信し、演算装置134はC軸座標Cxを記憶する(S204)。続いてNC装置132は、NCスキップモード(スキップ信号を監視した状態)で、ワーク180または回転砥石190を相手方に向かってX軸方向に前進させる(S206)。
【0022】
本実施形態では図3(a)に示すように、工具保持部120を制御して回転砥石190をワーク180に向かってX軸方向で前進(近接)させる。換言すれば、ワーク180の歯溝182と回転砥石190の刃192を噛み合い方向(切込み方向)に近接させる。ただし、これに限定するものではなくワーク保持部110を動作制御することにより、ワーク180を回転砥石190に対して前進させる構成としてもよい。
【0023】
NC装置132は、ワーク180と回転砥石190との接触検知を開始し(待ち受け状態)、S206の処理中にワーク180と回転砥石190とが接触したかを監視する(S208)。図3(b)に示すように回転砥石190をワーク180に対して前進させ、図3(c)に示すようにワーク180の歯溝182と回転砥石190の刃192とが接触すると、C軸はサーボオフ状態であるため、ワーク180が矢印C1方向に微小角度分、回転する。本実施形態では、このワーク180の回転を参照してワーク180と回転砥石190との接触を検知する。
【0024】
具体的にはNC装置132は、S206で回転砥石190を前進させた際の現在のC軸座標が、「現在のC軸座標≧S204のC軸座標Cx+しきい値α」または「現在のC軸座標≦S204のC軸座標Cx-しきい値α」のいずれかを満たした場合にワーク180と回転砥石190とが接触したと判断する。いずれの場合においてもしきい値以上の移動を検出することにより、ワーク保持部110や工具保持部120の振動による誤検出を防ぐことができる。
【0025】
NC装置132がワーク180と回転砥石190との接触を検知したら(S208のYES)、演算装置134はNC装置132にスキップ信号を送信し、NC装置132は、ワーク180と回転砥石190との接触検知を停止し、回転砥石190(またはワーク180)のX軸方向の前進を停止する(S210)。
【0026】
次にNC装置132は、C軸をサーボON状態とし、図3(d)に示すように、ワーク180と回転砥石190が接触した際にワーク180が回転した矢印C1方向と同じ方向にワーク180(ワーク保持部110)を微少量回転させる(S212)。これによりワーク180の歯溝182が回転砥石190の刃192から逃げた状態となる。すなわちS212では、ワーク180を逃げ方向に微少量回転させている。S212でのワーク180の回転量は、例えば初回では1/10ピッチ程度であるとよく、2回目以降はその半ピッチ程度であるとよい。
【0027】
ワーク180を微少量回転させたら(S212)は、制御装置130はS204からS208の処理を繰り返す。これにより、図3(c)~図3(d)に示すようにワーク180に回転砥石190が当たっては逃げるという動作が繰り返される。
【0028】
回転砥石190(またはワーク180)がX軸方向の前進端に至るまで上記動作を繰り返して、ワーク180と回転砥石190との接触を検知しなくなったら(S208のNO)、回転砥石190が前進端に至ったため、NC装置132は、回転砥石190(またはワーク180)のX軸方向の前進を停止する(S214)。このとき、ワーク180の歯溝182に回転砥石190の刃192が完全に入り込んだ状態であるが、ただし歯溝182と刃192の位置合わせ(中心合わせ)は完了していない状態である。
【0029】
そして演算装置134は、S210の前進停止時のC軸座標CxおよびY軸座標Yxを記憶する(S216)。C軸座標CxおよびY軸座標Yxは、位置合わせのための初期位置である。
【0030】
まず制御装置130のNC装置132は、NCスキップモードで回転砥石190をY軸の一方向(本実施形態では正方向を例示、図4の矢印Y1)に微小速度で移動させる(S218)。そしてNC装置132は、ワーク180と回転砥石190の第1接触位置P1の検知を判断する(S220)。なお微小速度としては、例えば0.1m/min程度の速度が好ましい。ただし、これに限定するものではなく、ワーク180や回転砥石190の材質、切削条件に応じて適宜設定することが可能である。
【0031】
図4(a)に示すように回転砥石190をY軸の正方向(矢印Y1)に移動すると、図4(b)に示すように回転砥石190がワーク180に接触し、ワーク180が押されて回転する。これにより、C軸座標が「Cx+α」となる。したがって、C軸座標を参照することにより、回転砥石190とワーク180との第1接触位置P1を検知することができる。
【0032】
NC装置132がワーク180の回転によって第1接触位置P1を検知したら(S220のYES)、演算装置134は、NC装置132にスキップ信号を送信してY軸(工具保持部120)の移動を停止するとともに、第1接触位置P1のY軸座標Yaを記憶する(S222)。
【0033】
続いてNC装置132は、ワーク180と回転砥石190との接触検知を停止し、ワーク保持部110および工具保持部120を移動させ、それらの座標をC軸座標CxおよびY軸座標Yxに位置決めする(S224)。すなわちワーク180および回転砥石190の座標を、S216において記憶したC軸座標CxおよびY軸座標Yxに戻す。
【0034】
C軸座標CxおよびY軸座標Yxの位置決めを行ったら(S224)、制御装置130のNC装置132は、ワーク180と回転砥石190との接触検知を開始し、NCスキップモードで回転砥石190をY軸の負方向(矢印Y2)に微小速度で移動させる(S226)。そしてNC装置132は、ワーク180と回転砥石190の第2接触位置P2の検知を判断する(S228)。
【0035】
図4(c)に示すように回転砥石190をY軸の他方向(本実施形態では負方向を例示、図4の矢印Y2)に移動すると、図4(d)に示すように回転砥石190がワーク180に接触し、ワーク180が回転する。これにより、C軸座標が「Cx-α」となる。したがって、C軸座標を参照することにより、回転砥石190とワーク180との第2接触位置P2を検知することができる。
【0036】
NC装置132がワークの回転によって第2接触位置P2を検知したら(S228のYES)、演算装置134は、NC装置132にスキップ信号を送信してY軸(工具保持部120)の移動を停止するとともに、第2接触位置P2のY軸座標Ybを記憶する(S230)。
【0037】
なお本実施形態では、S218-S222の処理で第1接触位置P1の検知およびそのY軸座標Yaを取得(正方向探索)した後に、S226-S230の処理で第2接触位置P2の検知およびそのY軸座標Ybを取得(負方向探索)する構成を例示した。ただし、これに限定するものではなく、S218-S222の処理(正方向)とS226-S230の処理(負方向)の順番を入れ替えた構成としてもよい。
【0038】
第1接触位置P1のY軸座標Ya、および第2接触位置P2のY軸座標Ybを取得したら(S222、S230)、演算装置134は、それらを例えば図4(e)に示す三角関数(余弦定理)に代入して、ワーク180の歯溝182と回転砥石190の刃192の噛合中心、すなわちC軸の基準角度Czを導出する(S232)。これにより、ワーク180の加工前におけるワーク180と回転砥石190との位置合わせが完了する。
【0039】
上記説明したように本実施形態の歯車研削盤100によれば、スキップ信号を用いてワーク180や回転砥石190のX軸およびY軸方向への移動を制御することにより、従来搭載されていたセンサを用いることなくワーク180と回転砥石190との位置合わせを行うことができる。
【0040】
また本実施形態の歯車研削盤100では、B軸(回転砥石190の回転)をサーボロック状態とし、C軸(ワーク180の回転)をサーボオフ状態としている。すなわち回転砥石190はB軸方向には回転せず、ワーク180もC軸方向には回転駆動しない。AEセンサを用いる場合は衝撃を生じさせなければならないが、本発明の構成では回転砥石190を微小速度でX軸およびY軸方向に移動させて、ワーク180に軽く触れるだけでよい。したがって、回転砥石190の摩耗量を低減して砥石寿命を延ばすことができ、且つ過度な研削によるワーク180の廃棄ロスを削減することできる。これにより、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、歯車形状のワークを回転砥石によって研削する歯車研削盤に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
100…歯車研削盤、110…ワーク保持部、120…工具保持部、130…制御装置、132…NC装置、134…演算装置、180…ワーク、182…歯溝、190…回転砥石、192…刃
図1
図2
図3
図4