(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020830
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/275 20180101AFI20250205BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20250205BHJP
F21S 41/26 20180101ALI20250205BHJP
F21S 41/265 20180101ALI20250205BHJP
F21S 41/32 20180101ALI20250205BHJP
F21S 41/663 20180101ALI20250205BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20250205BHJP
F21W 102/18 20180101ALN20250205BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250205BHJP
【FI】
F21S41/275
F21S41/148
F21S41/26
F21S41/265
F21S41/32
F21S41/663
F21W102:155
F21W102:18
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124435
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 政輝
(57)【要約】
【課題】光源と上方照射用突起との位置関係の変化に拘らず、上方照射配光パターンが暗くなることを抑えることのできる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10は、光源(31から34)から出射された光を投影して、車両の前方を照射する照射配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)を形成する投影レンズ14と、投影レンズ14に設けられ、光源(31から34)からの光を照射配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)の上方へ向けて進行させて上方照射配光パターン(Poh)を形成する上方照射用突起(71)と、を備える。上方照射用突起(71)は、上下方向で対を為して2つ設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光を投影して、車両の前方を照射する照射配光パターンを形成する投影レンズと、
前記投影レンズに設けられ、前記光源からの光を前記照射配光パターンの上方へ向けて進行させて上方照射配光パターンを形成する上方照射用突起と、を備え、
前記上方照射用突起は、上下方向で対を為して2つ設けられていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記上方照射用突起は、前記投影レンズのレンズ光軸を挟んで上下方向で対を為して2つ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
さらに、前記光源から出射された光を反射するリフレクタ部を備え、
前記投影レンズは、前記リフレクタ部で反射された光を投影して前記照射配光パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記投影レンズは、前記リフレクタ部における奥壁箇所の配光像を投影することにより前記照射配光パターンを形成することを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
2つの前記上方照射用突起は、それぞれが等しい位置に上方照射配光パターン部分を形成し、その2つの前記上方照射配光パターン部分を重畳させて前記上方照射配光パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項6】
2つの前記上方照射用突起は、幅方向に長尺とされつつ前記投影レンズの入射面から前記光源側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項7】
2つの前記上方照射用突起は、下側の端部を前記入射面に向けて傾斜させる傾斜面部を有することを特徴とする請求項6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記照射配光パターンは、カットオフラインを有する第1配光パターンと、前記第1配光パターンよりも大きな第2配光パターンと、前記第2配光パターンよりも幅方向に拡がる第3配光パターンと、が少なくとも一部が重ねられて形成され、
前記投影レンズは、前記第1配光パターンを形成する第1レンズ部と、前記第2配光パターンを形成する第2レンズ部と、前記第3配光パターンを形成する第3レンズ部と、を有し、
2つの前記上方照射用突起は、前記第2レンズ部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具では、所望の照射配光パターンを形成するための光源からの光の一部を利用して、上方の標識等を照らす上方照射配光パターンを形成するものが考えられている(例えば、特許文献1参照)。この車両用灯具では、アウターレンズの一部に上方照射用突起を設け、光源からの光のうちの上方照射用突起を通る光の進行方向を部分的に変化させることにより、照射配光パターンを形成する光を部分的に上方へと向かわせて、上方照射配光パターンを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の車両用灯具は、光源からの光が所定の指向特性とされていることから、光源と上方照射用突起との位置関係に応じて、上方照射用突起により上方に向けられた光の明るさが変化することとなり、上方照射配光パターンの明るさが決まる。このため、上記の車両用灯具は、光源と上方照射用突起との位置関係が設定状態からずれた場合、上方照射配光パターンが暗くなってしまう虞がある。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、光源と上方照射用突起との位置関係の変化に拘らず、上方照射配光パターンが暗くなることを抑えることできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用灯具は、光源から出射された光を投影して、車両の前方を照射する照射配光パターンを形成する投影レンズと、前記投影レンズに設けられ、前記光源からの光を前記照射配光パターンの上方へ向けて進行させて上方照射配光パターンを形成する上方照射用突起と、を備え、前記上方照射用突起は、上下方向で対を為して2つ設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の車両用灯具によれば、光源と上方照射用突起との位置関係の変化に拘らず、上方照射配光パターンが暗くなることを抑えることできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る一実施形態としての車両用灯具を示す説明図である。
【
図2】車両用灯具の構成を分解して示す説明図である。
【
図3】取付部材に光源部が設けられた様子を示す説明図である。
【
図4】投影レンズとリフレクタ部材と各光源との位置関係を上下方向の上側から見た様子を示す説明図である。
【
図5】投影レンズを入射面側から見た様子を示す説明図である。
【
図6】
図5のA-A線に沿って得られた断面図である。
【
図7】投影光軸上の中心位置で水平線と鉛直線とが交差するスクリーン上において、車両用灯具の第1ユニットが形成する第1配光パターンを示す説明図である。
【
図8】投影光軸上の中心位置で水平線と鉛直線とが交差するスクリーン上において、車両用灯具の第2ユニットが形成する第2配光パターンとOHS配光パターンとを示す説明図である。
【
図9】投影光軸上の中心位置で水平線と鉛直線とが交差するスクリーン上において、車両用灯具の一方の第3ユニットが形成する第3配光パターンを示す説明図である。
【
図10】投影光軸上の中心位置で水平線と鉛直線とが交差するスクリーン上において、車両用灯具の他方の第3ユニットが形成する第3配光パターンを示す説明図である。
【
図11】投影光軸上の中心位置で水平線と鉛直線とが交差するスクリーン上において、車両用灯具の第4ユニットが形成する第4配光パターンを示す説明図である。
【
図12】投影光軸上の中心位置で水平線と鉛直線とが交差するスクリーン上において、すれ違い用配光パターンとOHS配光パターンと第4配光パターンとを形成した様子を示す説明図である。
【
図13】第2ユニットにおいて、第2光源からの光が第2リフレクタ部材で反射されて第2レンズ部から出射される様子を示す説明図である。
【
図14】
図13と同様の説明図であって、第2光源が第2リフレクタ部材の第1焦点よりも後側に変位した場合に第2光源からの光が出射される様子を示す説明図である。
【
図15】
図13と同様の説明図であって、第2光源が第2リフレクタ部材の第1焦点よりも前側に変位した場合に第2光源からの光が出射される様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10の実施例1について図面を参照しつつ説明する。なお、各配光パターンを示す
図7から
図12では、車両用灯具10による照射の中心位置O(車両用灯具10における投影光軸Lp)を原点として水平線Hと鉛直線Vとが交差するスクリーン上で、明るさの分布を中に向かうほど明るさが高くなる等高線のように示している。
【実施例0010】
本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る実施例1の車両用灯具10を、
図1から
図15を用いて説明する。実施例1の車両用灯具10は、自動車等の車両の前照灯装置として用いられる。その前照灯装置は、車両の前部の左右両側にそれぞれ搭載され、開放された前端がアウターレンズで覆われたランプハウジングにより形成される灯室に車両用灯具10が設けられて構成される。車両用灯具10は、上下方向用光軸調整機構や左右方向用光軸調整機構を介して灯室に設けられ、車両の前方を適宜照射する。以下の説明では、車両用灯具10において、車両が進行する方向を前後方向(図面ではZとする)とし、前後方向を水平面に沿う状態とした際の鉛直方向を上下方向(図面ではYとする)とし、前後方向および上下方向に直交する方向(水平方向)を幅方向(図面ではXとする)とする。その前後方向では、後述する投影レンズ14が設けられる側を前側とし、上下方向では、後述するリフレクタ部材13が設けられる側を上側とする。ここで、車両用灯具10は、車両の右側に設けられるものと左側に設けられるものとで基本的に等しい構成とされつつ幅方向(左右)で反転されたものであるので、以下では、右側に設けられる車両用灯具10を用いて説明する。
【0011】
実施例1の車両用灯具10は、
図1、
図2に示すように、取付部材11に、光源部12とリフレクタ部材13と投影レンズ14とが取り付けられて、プロジェクタタイプの灯具ユニットを構成する。取付部材11は、光源部12が設けられる箇所であり、熱伝導性を有するアルミプレートやアルミダイカストや樹脂で形成され、全体として光源部12で発生する熱を外部に逃がすヒートシンクとして機能する。取付部材11は、光源取付部21とレンズ取付部22とを有する。
【0012】
光源取付部21は、
図2から
図4に示すように、上下方向に直交する平板状とされ、所定の位置に光源部12が取り付けられる。この光源取付部21には、幅方向の両側に取付片部23が設けられている。この両取付片部23は、光源取付部21から上下方向の上側に折り曲げられて形成されている。両取付片部23は、図示しないブラケットを介して、取付部材11すなわち車両用灯具10をランプハウジングに固定させる。
【0013】
レンズ取付部22は、上下方向に略直交する平板状とされ、光源取付部21の前後方向の前側に設けられ、段差をつけて光源取付部21よりも上下方向の下側に位置されている。レンズ取付部22は、投影レンズ14を取り付ける箇所を構成するもので、光源取付部21に取り付けられた光源部12の前後方向の前側に投影レンズ14を位置させる。
【0014】
この取付部材11では、4つの位置決め孔11aと3つのネジ通し孔11bとが設けられている。各位置決め孔11aは、後述するリフレクタ部材13の位置決め突起13aを嵌め入れることが可能とされている。各ネジ通し孔11bは、ネジ24を通すことが可能とされている。この取付部材11では、複数の放熱フィンを設けることができ、光源取付部21に取り付けられた光源部12で発生した熱を主に各放熱フィンから外部に放熱することとしてもよい。取付部材11では、冷却効率を高めるために適宜冷却ファンユニットを設けるものとしてもよい。
【0015】
光源部12は、第1光源31と、第2光源32と、一対の第3光源33と、第4光源34と、コネクタ端子35と、それらが実装される基板36と、を有する。この5つの光源(31から34)は、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成されている。5つの光源(31から34)は、後述する各リフレクタ部(41から44)に対応する位置に設けられている。この位置関係については後述する。
【0016】
コネクタ端子35は、基板36の配線パターンと電気的に接続されており、点灯制御回路に接続された接続コネクタが着脱自在とされている。コネクタ端子35は、基板36の前後方向の後側の端部に設けられており、接続コネクタの着脱が容易とされている。コネクタ端子35は、接続コネクタが取り付けられることで、配線パターンを介する点灯制御回路から各光源(31から34)への電力の供給を可能とする。
【0017】
基板36は、アルミ基板で形成された板状とされ、各光源(31から34)が実装される。なお、基板36は、ガラスエポキシ基板等の樹脂材料で形成されていてもよく、他のもので形成されていてもよい。基板36には、各光源(31から34)とコネクタ端子35とを電気的に接続する配線パターンが設けられている。また、基板36では、取付部材11の光源取付部21の真ん中の位置決め孔11aに対応して位置決め孔36aが設けられるとともに、その近くのネジ通し孔11bに対応してネジ通し孔36bが設けられている。この基板36は、後述するリフレクタ部材13の位置決め突起13aが位置決め孔36aに通されつつ、ネジ通し孔36bに通されたネジ24が後述するリフレクタ部材13のネジ孔13bに捻じ込まれることにより、取付部材11(光源取付部21)に取り付けられる。基板36は、コネクタ端子35を介して点灯制御回路から電力を適宜供給して各光源(31から34)を適宜点灯させる。
【0018】
リフレクタ部材13は、樹脂材料からなる成形品とされ、第1リフレクタ部41と、第2リフレクタ部42と、一対の第3リフレクタ部43と、第4リフレクタ部44と、が一体的に設けられている。各リフレクタ部(41から44)は、対応する光源(31から34)を覆うように湾曲された形状とされた反射面Rsを有し、その各反射面Rsが対応する光源(31から34)から出射された光を投影レンズ14側へと反射する。この各反射面Rsは、各リフレクタ部(41から44)の内側に設けられている。各反射面Rsは、対応する光源(31から34)(その中心位置またはその近傍)を第1焦点とし、対応する投影レンズ14の後述するレンズ部(51から54)の近傍を第2焦点とする楕円を基本とした椀状の自由曲面とされている。これにより、各リフレクタ部(41から44)は、各光源(31から34)から出射された光を、効率よく対応するレンズ部(51から54)へと進行させることができる。
【0019】
ここで、実施例1の車両用灯具10では、第3光源33と第3リフレクタ部43とがそれぞれ対を為して設けられている。その第3光源33は、少しの間隔を置いて幅方向で並んで設けられている。第3リフレクタ部43は、それぞれが基本とする楕円の第1焦点が2つの第3光源33に合わせて設定されており、椀状の自由曲面が途中でつなぎ合わされた形状とされている。そして、2つの第3リフレクタ部43は、各第3光源33から出射された光を、効率よく対応するレンズ部(53)へと進行させることができる。
【0020】
リフレクタ部材13には、4つの位置決め突起13a(
図3参照)と、3つのネジ孔13b(
図4参照)と、が設けられている。各位置決め突起13aは、各リフレクタ部(41から44)からの光路を阻害しない位置で上下方向の下側に突出された棒状とされている。各ネジ孔13bは、各リフレクタ部(41から44)からの光路を阻害しない位置で対応する位置決め突起13aの近傍に設けられ、ネジ24を捻じ込んで固定することが可能とされている。
【0021】
リフレクタ部材13は、光源取付部21との間に光源部12を介在させた状態で、各位置決め突起13aにより位置決めされつつ各ネジ孔13bにネジ24が捻じ込まれることにより、取付部材11に固定される。すると、光源部12は、取付部材11の光源取付部21の上面となる取付部21aに固定される。これにより、光源部12は、取付部21a上において、基板36に実装された各光源(31から34)が、それぞれが対応するリフレクタ部(41から44)に対向される。
【0022】
このリフレクタ部材13では、2つの区画壁部25(
図2参照)が設けられている。各区画壁部25は、投影レンズ14の後述する第1レンズ部51と第2レンズ部52との間と、第2レンズ部52と第3レンズ部53との間と、に位置されており、上下方向に伸びる板状とされている。
【0023】
投影レンズ14は、リフレクタ部材13(その各反射面Rs)で反射された光を車両の前方へ投影し、所望の照射配光パターン(実施例1ではすれ違い用配光パターンLP(
図12参照))を形成する。この投影レンズ14は、樹脂材料からなる成形品とされており、
図3から
図5に示すように、第1レンズ部51と、第2レンズ部52と、第3レンズ部53と、第4レンズ部54と、が一体的に設けられている。各レンズ部(51から54)は、対応するリフレクタ部(41から44)と対向する位置、すなわち対応する光源(31から34)からの光がリフレクタ部(41から44)により反射される方向に位置されている。具体的には、投影レンズ14では、幅方向において、車両の内側(
図3から
図5では左側)から、第1レンズ部51、第2レンズ部52、第3レンズ部53、第4レンズ部54の順に互いに隣接して設けられている。
【0024】
この各レンズ部(51から54)は、対応するリフレクタ部(41から44)の後述する奥壁箇所(41bから44b(
図4参照))の近傍に焦点(後側焦点)が位置されている。各レンズ部(51から54)は、対応するリフレクタ部(41から44)からの光を照射することで、車両用灯具10による照射の中心位置Oを原点として水平線Hと鉛直線Vとが交差するスクリーン上において、光学特性に応じた位置に奥壁箇所(41bから44b)(その近傍の所定の領域)の複数の配光像を適宜重ねて形成する。この車両用灯具10では、このような光学設定とするために、各光源(31から34)からリフレクタ部(41から44)の奥壁箇所(41bから44b)までの前後方向での間隔が5mm以下の小さなものとされている。その奥壁箇所(41bから44b)では、光源(31から34)により下端から少し上方の箇所が最も明るくされており、配光像では各レンズ部(51から54)で投影されて上下が反転されることで下端の近傍が最も明るくされている。これにより、車両用灯具10では、後述するようにカットオフラインCLの近傍の明暗差を確保できる。このような光学特性は、各レンズ部(51から54)の曲率(面形状)を場所毎に調整することで設定でき、実施例1ではその曲率を漸次的に変化させて設定されている。
【0025】
第1レンズ部51は、凸レンズとされ、第2レンズ部52は、凹レンズとされ、第3レンズ部53は、凹レンズとされ、第4レンズ部54は、凹レンズとされている。その第1レンズ部51と第2レンズ部52とは、略幅方向に伸びるものとされている。第3レンズ部53は、外側に向かうに連れて後側に変位するように第2レンズ部52によりも少し後側へと傾けられている。第4レンズ部54は、外側に向かうに連れて後側に変位するように第3レンズ部53によりも大きく後側へと傾けられている。これにより、投影レンズ14は、全体として、幅方向で内側から外側へと向かうに従って前後方向の後側へと向かう(スラントする)ものとされ、車両の設置位置の形状(アウターレンズ)に合わせた形状にできる。
【0026】
ここで、実施例1の投影レンズ14において、第1レンズ部51は、第1出射面51aが略平滑な湾曲面とされつつ、第1入射面51bが第1光源31(第1リフレクタ部41)側に膨らむ凸面とされることで凸レンズとされている。また、第2レンズ部52は、第2出射面52aが略平滑な湾曲面とされつつ、第2入射面52bが第2光源32(第2リフレクタ部42)とは反対側に凹む凹面とされることで凹レンズとされている。さらに、第3レンズ部53は、第3出射面53aが略平滑な湾曲面とされつつ、第3入射面53bが第3光源33(第3リフレクタ部43)とは反対側に凹む凹面とされることで凹レンズとされている。そして、第4レンズ部54は、第4出射面54aが略平滑な湾曲面とされつつ、第4入射面54bが第4光源34(第4リフレクタ部44)とは反対側に凹む凹面とされることで凹レンズとされている。この各入射面(51bから54b)は、後述する各照射ユニット(61から64)における光学設定に応じて曲率が設定されている。
【0027】
そして、実施例1の投影レンズ14では、幅方向の内側から、第1出射面51aと第2出射面52aと第3出射面53aとを連続して並べて設けており、単一の湾曲面を形成している。ここで、単一の湾曲面とは、屈曲箇所がなく、曲率の変化が連続したものとされていることをいう。また、実施例1の投影レンズ14では、第3出射面53aと第4出射面54aとが屈曲面部55を介して隣接されている。この第3出射面53aと第4出射面54aとは、屈曲面部55により方向が変化されて、それぞれが異なる方向へと延びる単一の湾曲面とされている。
【0028】
投影レンズ14には、
図2から
図4に示すように、2つの位置決め孔14aと、1つのネジ通し孔14bと、が設けられている。各位置決め孔14aは、幅方向で各レンズ部(51から54)が設けられた領域の外側の双方に1つずつ設けられており、リフレクタ部材13の対応する位置決め突起13aを嵌め入れることが可能とされている。ネジ通し孔14bは、ネジ24と通すことが可能とされている。この投影レンズ14は、リフレクタ部材13の各位置決め突起13aが位置決め孔14aに通されつつ、ネジ通し孔14bに通されたネジ24がリフレクタ部材13のネジ孔13bに捻じ込まれることにより、取付部材11(レンズ取付部22)とリフレクタ部材13との間に取り付けられる。これにより、投影レンズ14は、各レンズ部(51から54)が対応するリフレクタ部(41から44)に対向される位置関係とされる。
【0029】
本開示の車両用灯具10では、
図5、
図6に示すように、投影レンズ14の第2レンズ部52に、上方照射用突起の一例としての一対のOHS(オーバーヘッドサイン(頭上標識))用突起71を設けている。この両OHS用突起71は、第2レンズ部52の第2入射面52bから後側に突出する柱状の突起とされており、第2レンズ部52(第2入射面52b)の幅方向の大きさよりも小さくかつ上下方向の大きさよりも大幅に小さい寸法とされている。このため、両OHS用突起71は、リフレクタ部材13(第2リフレクタ部42)で反射されて第2レンズ部52(第2入射面52b)に入射する第2光源32からの光の一部を、自らに入射させることとなる。両OHS用突起71は、自らに入射する光を、上側へと屈折させつつ幅方向に拡散する光学設定とされている。OHS用突起71は、後述する第2レンズ部52のレンズ光軸となる第2投影光軸Lp2を上下方向で挟む位置関係、すなわち、第2投影光軸Lp2の上側と下側とのそれぞれに設けられている。実施例1の両OHS用突起71は、
図5に示すように、幅方向に長尺な形状としており、互いを等しい形状および大きさ寸法としている。両OHS用突起71は、位置の差異に拘わらず、上記のスクリーン上において、互いに略等しい領域へ向けて光を進行させる光学設定とされている。実施例1の車両用灯具10では、一方(上側)のOHS用突起71を通った光(その明るさ)と、他方(下側)のOHS用突起71を通った光(その明るさ)と、が略等しくされている。
【0030】
この両OHS用突起71は、第2光源32からの光の一部を上方へと進行させるとともにその第2光源32が所定の指向特性で光を出射させることから、後述する第2配光パターンP2に求められる光量に応じて、第2入射面52bにおける大きさ(専有面積)や位置が設定されている。このため、第2レンズ部52では、第2光源32からの光が第2入射面52bから入射されると、その多くを第2配光パターンP2を形成するように第2出射面52aから出射させるとともに、残りの一部を両OHS用突起71を通して第2配光パターンP2の上方へと進行させる。なお、両OHS用突起71は、互いに等しい形状および等しい大きさ寸法としなくてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0031】
また、実施例1の両OHS用突起71では、下側に傾斜面部72が設けられている。この傾斜面部72は、両OHS用突起71の突出端面71aから第2入射面52bへと滑らかに架け渡す。傾斜面部72は、投影レンズ14を樹脂成形する際に、対応するOHS用突起71の周辺の樹脂の流れを滑らかなものとすることができ、成形フローが形成されることを抑制することができる。
【0032】
次に、各リフレクタ部(41から44)の位置関係等について説明する。先ず、各リフレクタ部(41から44)は、対応する光源(31から34)やレンズ部(51から54)と協働して、それぞれが所定の配光パターンを形成する照射ユニットを形成する。詳細には、第1リフレクタ部41は、第1光源31と第1レンズ部51とで第1照射ユニット61を構成し、第2リフレクタ部42は、第2光源32と第2レンズ部52とで第2照射ユニット62を構成する。また、一対の第3リフレクタ部43は、一対の第3光源33と第3レンズ部53とで第3照射ユニット63を構成し、第4リフレクタ部44は、第4光源34と第4レンズ部54とで第4照射ユニット64を構成する。
【0033】
ここで、各照射ユニット(61から64)では、それぞれのレンズ部(51から54)の光学的な軸線であるレンズ光軸をそれぞれにおける投影光軸としている。以下では、第1照射ユニット61の軸線を第1投影光軸Lp1とし、第2照射ユニット62の軸線を第2投影光軸Lp2とし、第3照射ユニット63の軸線を第3投影光軸Lp3とし、第4照射ユニット64の軸線を第4投影光軸Lp4とする(
図4参照)。
【0034】
第1照射ユニット61では、
図2から
図4に示すように、第1リフレクタ部41が、幅方向で最も内側に設けられており、その第1投影光軸Lp1が前後方向に略一致されている。この第1リフレクタ部41は、水平面上において椀状とされて光が出射される開放端41aが前後方向の前側に位置され、椀状の頂点となる奥壁箇所41bが前後方向の後側に位置されている。第1リフレクタ部41の前後方向の前側すなわち第1投影光軸Lp1上には、投影レンズ14の第1レンズ部51が位置されている。
【0035】
この第1リフレクタ部41では、奥壁箇所41bの下端がカットオフ形成面とされている。このカットオフ形成面は、後述するすれ違い用配光パターンLPにおけるカットオフラインCL(
図7、
図12参照)を形成するために、下端が高さの異なる2つの水平エッジが傾斜エッジで繋ぎ合わされた形状とされている。このため、第1リフレクタ部41は、第1レンズ部51が奥壁箇所41bの端縁(下端)の形状を照射配光パターンとしてのすれ違い用配光パターンLPの端縁(カットオフラインCL)の形状として形成する。第1リフレクタ部41は、その反射面Rsの第1焦点の近傍に第1光源31が位置され、そこからの光を第1レンズ部51へ向けて反射する。その第1レンズ部51は、第1リフレクタ部41で反射された光を第1投影光軸Lp1方向へと投影する。このとき、第1レンズ部51は、凸レンズとされているので、第1リフレクタ部41からの光を集光させつつ、第1投影光軸Lp1方向へと進行させる。なお、カットオフ形成面は、車両用灯具10が車両の左側に設けられるものの場合でも、その傾斜の方向および高さの関係は幅方向で反転されない。すなわち、車両用灯具10は、車両の右側と左側とで幅方向で反転されたものとされるが、カットオフ形成面の傾斜に関しては互いに等しい向きとされる。
【0036】
これにより、第1照射ユニット61は、
図7に示すように、上記のスクリーン上において、第1光源31からの光を集光した集光配光パターンとしての第1配光パターンP1を形成する。この第1配光パターンP1は、高さの異なる2つの水平エッジが傾斜エッジで繋ぎ合わされたカットオフラインCLが上側に設けられている。第1配光パターンP1は、投影光軸Lp上にカットオフラインCLを位置させるとともに、そのカットオフラインCLの下方に光を集めて明るさが強調され、カットオフラインCLの明暗が明確とされている。
【0037】
第2照射ユニット62では、
図2から
図4に示すように、第2リフレクタ部42が、第1リフレクタ部41と幅方向の外側で隣り合って設けられている。第2リフレクタ部42は、その第2投影光軸Lp2が前後方向に略一致されている。実施例1では、この第2リフレクタ部42は、開放端42aが前後方向の前側に位置され、椀状の頂点となる奥壁箇所42bが前後方向の後側に位置されている。第2リフレクタ部42の第2投影光軸Lp2上には、投影レンズ14の第2レンズ部52が位置されている。この第2レンズ部52は、第1レンズ部51よりも幅方向の外側でその第1レンズ部51と隣り合わされている。
【0038】
第2リフレクタ部42は、その反射面Rsの第1焦点f1(その近傍)に位置する第2光源32からの光を、第2レンズ部52へ向けて反射する(
図13等参照)。その第2レンズ部52は、第2リフレクタ部42で反射された光を第2投影光軸Lp2方向へと投影する。このとき、第2レンズ部52は、凹レンズとされているので、第2リフレクタ部42からの光を拡散させつつ、第2投影光軸Lp2方向へと進行させる。実施例1の第2レンズ部52では、凹面とされた第2入射面52bの凹みの度合い、すなわち第2入射面52bの曲率が、他の凹面である第3入射面53b、第4入射面54bよりも小さくされている。
【0039】
これにより、第2照射ユニット62は、
図8に示すように、上記のスクリーン上において、第2光源32からの光を拡散した中拡散配光パターンとしての第2配光パターンP2を形成する。この第2配光パターンP2は、明るさの中心を投影光軸Lpよりも幅方向の内側(左側)に位置させている。第2配光パターンP2は、第1配光パターンP1のカットオフラインCLの下方において、第1配光パターンP1の略全域を含みつつその左側に大きく拡がるとともに第1配光パターンP1よりも広範な領域を明るくする。
【0040】
また、第2レンズ部52は、第2光源32からの光のうち、それぞれのOHS用突起71を通った光を第2配光パターンP2の上方の略等しい位置へ向けて進行させる。この両OHS用突起71は、上記のスクリーン上において、それぞれが略等しい位置にOHS(オーバーヘッドサイン(頭上標識))配光パターン部分を重ねて形成することで、OHS配光パターンPohを形成する。このOHS配光パターンPohは、上方照射配光パターンの一例として、第2配光パターンP2の上方において、幅方向に拡がるものとされており、上方の標識等を照らすことが可能とされている。このため、OHS配光パターン部分は、上方照射配光パターン(OHS配光パターンPoh)を形成する上方照射配光パターン部分となる。OHS配光パターンPohは、中心位置Oの上方の約2度の位置と約4度の位置との各々において、水平方向で、鉛直線Vと一致する位置と、鉛直線Vからプラスマイナスに約4度の位置と、鉛直線Vからプラスマイナスに約8度の位置と、の合計10か所の位置(所謂法規ポイント)における明るさを、それぞれ上限所定値以下としている。また、OHS配光パターンPohは、中心位置Oの上方の約2度の位置と約4度の位置とのそれぞれにおいて、水平方向で上記した5つの位置(0度、±4度、±8度となる位置)の明るさを加算した値を、下限所定値以上としている。この10か所の位置の明るさは、第2光源32の指向特性に応じて、第2レンズ部52(第2入射面52b)における両OHS用突起71の大きさや位置を調整することで所定のものとすることができる。このため、OHS配光パターンPohは、自車両からの上方の視認性をより適切に確保させることができる。
【0041】
第3照射ユニット63では、
図2から
図4に示すように、一対の第3リフレクタ部43が、最も外側で第2リフレクタ部42と幅方向で並列されて設けられている。一対の第3リフレクタ部43は、その間に設定された第3投影光軸Lp3が前後方向に一致されるまたは前後方向よりも外側に僅かに傾けられている。この一対の第3リフレクタ部43は、水平面上において椀状とされて光が出射される開放端43aが前後方向の前側に位置され、椀状の頂点となる一対の奥壁箇所43bが前後方向の後側に位置されている。一対の第3リフレクタ部43の前後方向の前側すなわち第3投影光軸Lp3上には、投影レンズ14の第3レンズ部53が位置されている。
【0042】
一対の第3リフレクタ部43は、それぞれの反射面Rsの第1焦点の近傍に位置する第3光源33からの光を、第3レンズ部53へ向けて反射する。その第3レンズ部53は、各第3リフレクタ部43で反射された光を第3投影光軸Lp3に沿う方向へと投影する。このとき、第3レンズ部53は、凹レンズとされつつ第3リフレクタ部43が対を為して幅方向に並べられているので、各第3リフレクタ部43で反射された光を拡散させつつ、それぞれを並列させた状態で進行させる。実施例1の一対の第3リフレクタ部43では、他の凹面の入射面(52b、54b)と比較して、凹面とされた第3入射面53bの凹みの度合い、すなわち第3入射面53bの曲率が第2入射面52bよりも大きくされている。
【0043】
そして、第3照射ユニット63は、一対の第3リフレクタ部43のうちの内側の第3リフレクタ部43で反射した光で、
図9に示すように、上記のスクリーン上において、対応する第3光源33からの光を大きく拡散した内側第3配光パターンP3iを形成する。この内側第3配光パターンP3iは、明るさの中心を投影光軸Lpよりも幅方向の外側(右側)に位置させている。また、第3照射ユニット63は、一対の第3リフレクタ部43のうちの外側の第3リフレクタ部43で反射した光で、
図10に示すように、上記のスクリーン上において、対応する第3光源33からの光を大きく拡散した外側第3配光パターンP3oを形成する。この外側第3配光パターンP3oは、明るさの中心を、幅方向において、内側第3配光パターンP3i(その明るさの中心)と投影光軸Lpとの間に位置させている。この第3照射ユニット63は、内側第3配光パターンP3iと外側第3配光パターンP3oとを同時に形成することで、第3配光パターンP3を形成する。この第3配光パターンP3は、第1配光パターンP1のカットオフラインCLの下方において、部分的に第1配光パターンP1や第2配光パターンP2に重複させつつその外側に大きく拡がるとともに第1配光パターンP1や第2配光パターンP2よりも広範な領域を明るくする。
【0044】
第4照射ユニット64では、
図2から
図4に示すように、第4リフレクタ部44が、幅方向で第2リフレクタ部42と一対の第3リフレクタ部43との間であって、前後方向でそれらの前側に設けられている。換言すると、第4リフレクタ部44は、第2リフレクタ部42(その開放端42a)や一対の第3リフレクタ部43(その開放端43a)よりも前方に位置されることにより、幅方向で隣接する第2リフレクタ部42と一対の第3リフレクタ部43との間に位置されている。この第4リフレクタ部44は、その第4投影光軸Lp4が前後方向に対して40度から80度の間で外側へと傾けられている。
【0045】
この第4リフレクタ部44は、水平面上において椀状とされて光が出射される開放端44aが前側でかつ外側に位置され、椀状の頂点となる奥壁箇所44bが後側でかつ内側に位置されている。第4リフレクタ部44と対向する位置すなわち第4投影光軸Lp4上には、投影レンズ14において最も外側となる第4レンズ部54が位置されている。このように、幅方向において、一対の第3リフレクタ部43と第4リフレクタ部44との並びの順番と、第3レンズ部53と第4レンズ部54との並びの順番と、が逆転されており、第2照射ユニット62と第3照射ユニット63との互いの光路(両投影光軸Lp3、Lp4)が交差されている。
【0046】
第4リフレクタ部44は、その反射面Rsの第1焦点の近傍に位置する第4光源34からの光を、第4レンズ部54へ向けて反射する。その第4レンズ部54は、第4リフレクタ部44で反射された光を第4投影光軸Lp4の方向へと投影する。このとき、第4レンズ部54は、凹レンズとされつつ第4投影光軸Lp4が外側に大きく傾けられているので、第4リフレクタ部44で反射された光を拡散させつつ、第4投影光軸Lp4方向であって車両用灯具10の投影光軸Lpよりも幅方向で大きく外側(
図4では右側)へと進行させる。実施例1の第4レンズ部54では、他の凹面の入射面(52b、53b)と比較して、第4入射面54bの凹みの度合い、すなわち第4入射面54bの曲率が大きくされている。
【0047】
これにより、第4照射ユニット64は、
図11に示すように、上記のスクリーン上において、第4光源34からの光を拡散して第4配光パターンP4を形成する。この第4配光パターンP4は、明るさの中心を投影光軸Lpよりも大きく幅方向の外側(右側)に位置させている。第4配光パターンP4は、第3配光パターンP3と一部を重複させつつ、その幅方向の外側(右側)の広範な領域を明るくする(
図12参照)。第4配光パターンP4は、後述するすれ違い用配光パターンLPの側方を照射することができ、すれ違い用配光パターンLPだけでは死角となり得る位置を照らすことのできる所謂側方配光パターンとして機能する。
【0048】
車両用灯具10は、第1光源31、第2光源32、第3光源33を点灯させて、第1配光パターンP1と第2配光パターンP2と第3配光パターンP3とを同時に形成して重ねることにより、
図12に示すように、すれ違い用配光パターンLPを形成できる。このすれ違い用配光パターンLPは、投影光軸Lp上にカットオフラインCLを有し、投影光軸Lpの近傍を最も明るくしつつカットオフラインCLの下方で幅方向に大きな領域を明るくできる。このとき、車両用灯具10は、第2照射ユニット62で第2配光パターンP2を形成すると、同時に第2配光パターンP2の上方にOHS配光パターンPohを形成しており、頭上標識を含む上方の視認性をより適切に確保させることができる。
【0049】
また、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPを形成した状態において、第4光源34を点灯させて第4配光パターンP4を形成することにより、すれ違い用配光パターンLPに一部を重複させつつその外側(
図12では右側)を明るくできる。これにより、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPに加えて、その右側の広い範囲の視界を確保させることができる。ここで、車両用灯具10は、搭載された車両のステアリングが右に大きく切られる操作や、右側のウインカーを点灯させる操作が為されると、それらの操作に連動して第4光源34を点灯させるものとすることで、車両の動作に応じて自動で広い範囲の視界を確保させることができ、運転を適切に支援できる。また、車両用灯具10は、車両に設けられた第4光源34を点灯させるための操作部への操作に応じて第4光源34を点灯させて第4配光パターンP4を形成するものとしてもよい。さらに、車両用灯具10は、すれ違い用配光パターンLPを形成する際には、第4配光パターンP4を常時形成するものとしてもよい。なお、車両用灯具10は、車両の左側に設けられている場合には、ステアリングが左に大きく切られる操作や、左側のウインカーを点灯させる操作に連動して、すれ違い用配光パターンLPの左側に第4配光パターンP4を形成することとなる。
【0050】
ここで、従来の車両用灯具の技術の課題について説明する。従来の車両用灯具は、投影レンズに上方照射用突起を設けることにより上方照射配光パターンを形成している。ところで、上方照射用突起は、投影レンズに入射する光のうち、自らを通る光の進行方向を部分的に変化させることにより上方照射配光パターンを形成しているので、対応する光源の指向特性を考慮して位置および大きさが設定されて、上方照射配光パターンを所定の明るさとしている。このため、従来の車両用灯具では、光源が所定の位置からずれる、すなわち光源と上方照射用突起との位置関係が設定状態からずれた場合、上方照射配光パターンが暗くなってしまう虞がある。
【0051】
これに対し、本開示の車両用灯具10は、投影レンズ14の第2レンズ部52において、その第2投影光軸Lp2を上下方向で挟む位置関係で対を為してOHS用突起71(上方照射用突起)を設けている。このため、車両用灯具10は、対応する第2光源32とOHS用突起71との位置関係が設定状態からずれた場合であっても、OHS配光パターンPoh(上方照射配光パターン)の明るさを確保することができる。以下では、このことについて、
図13から
図15を用いて説明する。この
図13から
図15では、第2光源32からの光のうち、最も明るい光に近い光(以下では光の中心ともいう)が進行する様子を一点鎖線で示している。
【0052】
先ず、車両用灯具10では、
図13に示すように、第2リフレクタ部42の反射面Rsの第1焦点f1(その近傍)に第2光源32を設けている。車両用灯具10では、第2光源32からの光が反射面Rsで反射されて、第2入射面52bから第2レンズ部52に入射する。このとき、車両用灯具10では、第2光源32からの光の中心が第2投影光軸Lp2よりも少し下方で第2レンズ部52を通っている。そして、車両用灯具10では、OHS用突起71の一方を第2投影光軸Lp2よりも上方に設けるとともに、OHS用突起71の他方を第2投影光軸Lp2よりも下方に設けている。このため、車両用灯具10では、第2投影光軸Lp2を上下方向で挟むように対を為すOHS用突起71を設けることで、第2光源32からの光の中心よりも、OHS用突起71の一方を上方にかつOHS用突起71の他方を下方に位置させている。そして、車両用灯具10では、一方(上側)のOHS用突起71が形成するOHS配光パターン部分と、他方(下側)のOHS用突起71が形成するOHS配光パターン部分と、の明るさの比率を略5:5としている。この車両用灯具10は、各OHS用突起71を通した光を上方へと進行させて、それぞれのOHS配光パターン部分を重複させることで、所定の明るさのOHS配光パターンPohを形成している。
【0053】
車両用灯具10では、第2光源32の位置が設定位置から位置ずれすると、第2リフレクタ部42(反射面Rs)を経て各OHS用突起71に至る光学的な位置関係が設定状態からずれることとなる。そして、車両用灯具10では、
図14に示すように、第2リフレクタ部42の反射面Rsの第1焦点f1よりも第2光源32が後側に位置ずれすると、設定通りの位置関係の
図13と比較して、第2光源32からの光の中心が上側へと変位する。このため、車両用灯具10では、一方(上側)のOHS用突起71が光の中心に近い箇所となってより明るい光を通すとともに、他方(下側)のOHS用突起71が光の中心から離れた箇所となってより暗い光を通すこととなる。これにより、車両用灯具10では、位置ずれに起因して一方のOHS用突起71が形成するOHS配光パターン部分が明るくなるとともに、他方のOHS用突起71が形成するOHS配光パターン部分が暗くなる。この
図14の例では、一方のOHS用突起71によるOHS配光パターン部分と、他方のOHS用突起71によるOHS配光パターン部分と、の明るさの比率が略7:3となっている。
【0054】
また、車両用灯具10では、
図15に示すように、第2リフレクタ部42の反射面Rsの第1焦点f1よりも第2光源32が前側に位置ずれすると、設定通りの位置関係の
図13と比較して、第2光源32からの光の中心が下側へと変位する。このため、車両用灯具10では、一方のOHS用突起71が光の中心から離れた箇所となってより暗い光を通すとともに、他方のOHS用突起71が光の中心に近い箇所となってより明るい光を通すこととなる。これにより、車両用灯具10では、位置ずれに起因して一方のOHS用突起71が形成するOHS配光パターン部分が暗くなるとともに、他方のOHS用突起71が形成するOHS配光パターン部分が明るくなる。この
図15の例では、一方のOHS用突起71によるOHS配光パターン部分と、他方のOHS用突起71によるOHS配光パターン部分と、の明るさの比率が略3:7となっている。
【0055】
このように、車両用灯具10は、第2リフレクタ部42と第2光源32との位置関係が前後方向に生じた場合であっても、一方のOHS用突起71と他方のOHS用突起71との明るさの割合が変化するだけであって合計した明るさの変化を殆ど生じさせないものとしている。このため、車両用灯具10は、第2リフレクタ部42と第2光源32との位置関係の変化が前後方向に生じた場合であっても、明るさを殆ど変化させずにOHS配光パターンPohを形成できる。
【0056】
ここで、車両用灯具10では、各レンズ部(51から54)の焦点(後側焦点)をリフレクタ部(41から44)の奥壁箇所(41bから44b)の近傍に位置させており、上記のスクリーン上に奥壁箇所(その近傍の所定の領域)の複数の配光像を適宜重ねるものとしている。このため、車両用灯具10では、各光源(31から34)と各リフレクタ部(41から44)とにおいて、幅方向および上下方向と比較して、前後方向の間隔が極めて小さくされている。このことから、車両用灯具10では、各光源(31から34)と各リフレクタ部(41から44)との前後方向での位置ずれにより両OHS用突起71へと進行する光の態様への影響が生じ得るが、幅方向や上下方向での位置ずれによる光の態様への影響は殆ど生じることはない。そして、車両用灯具10は、両OHS用突起71を上記のような配置とすることで、前後方向での位置ずれによる両OHS用突起71へと進行する光の態様への影響を抑えている。これらのことから、車両用灯具10は、第2リフレクタ部42と第2光源32との位置関係の変化が生じた場合であっても、明るさを殆ど変化させずにOHS配光パターンPohを形成できる。
【0057】
本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0058】
車両用灯具10は、光源(31から34)から出射された光を投影して車両の前方を照射する照射配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)を形成する投影レンズ14と、そこに設けられ、光源(31から34)からの光を照射配光パターンの上方へ向けて進行させてOHS配光パターンPohを形成するOHS用突起71と、を備える。車両用灯具10では、OHS用突起71が、上下方向で対を為して2つ設けられている。このため、車両用灯具10は、両OHS用突起71と、それらが対応する第2光源32と、の位置関係が変化した場合であっても、OHS配光パターンPohが暗くなることを抑えることできる。
【0059】
また、車両用灯具10では、OHS用突起71が、投影レンズ14のレンズ光軸(第2投影光軸Lp2)を挟んで上下方向で対を為して2つ設けられている。このため、車両用灯具10は、両OHS用突起71と、それらが対応する第2光源32と、の位置関係が、光学的に投影レンズ14における上下方向に変化した場合であっても、OHS配光パターンPohが暗くなることを抑えることできる。
【0060】
さらに、車両用灯具10では、光源(31から34)から出射された光を反射するリフレクタ部(41から44)を備え、投影レンズ14が、リフレクタ部(41から44)で反射された光を投影して照射配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)を形成する。このため、車両用灯具10は、光源(31から34)とリフレクタ部(41から44)との位置関係の変化により、第2光源32と両OHS用突起71との光学的な位置関係の変化した場合であっても、OHS配光パターンPohが暗くなることを抑えることできる。
【0061】
車両用灯具10では、リフレクタ部(41から44)における奥壁箇所(41cから44c)の配光像を投影することにより照射配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)を形成する。このため、車両用灯具10では、各光源(31から34)と各リフレクタ部(41から44)とにおいて、幅方向および上下方向と比較して前後方向の間隔が極めて小さくされており、双方の前後方向の位置ずれによる光の態様への影響が生じ得るが、幅方向や上下方向での位置ずれによる光の態様への影響は殆ど生じない。そして、車両用灯具10は、両OHS用突起71を上記のような配置とすることで、前後方向での位置ずれによる光の態様への影響を抑えているので、第2リフレクタ部42と第2光源32との位置関係の変化が生じた場合であっても、明るさを殆ど変化させずにOHS配光パターンPohを形成できる。
【0062】
車両用灯具10では、2つのOHS用突起71が、それぞれが等しい位置にOHS配光パターン部分を形成し、その2つのOHS配光パターン部分を重畳させてOHS配光パターンPohを形成している。このため、車両用灯具10は、第2光源32と両OHS用突起71との位置関係が変化しても、それぞれが形成するOHS配光パターン部分の明るさの割合が変化するのみであるので、それらを重複させたOHS配光パターンPohの明るさを殆ど変わらないものにできる。また、車両用灯具10は、2つのOHS配光パターン部分を重畳させることでOHS配光パターンPohの明るさ等を確保しているので、単一のOHS用突起を設ける場合と比較して、各OHS用突起71の大きさ寸法を略半分とすることができ、より目立たないものにできる。
【0063】
車両用灯具10では、2つのOHS用突起71が、幅方向に長尺とされつつ投影レンズ14の入射面(第2入射面52b)から光源(31から34)側に突出している。このため、車両用灯具10は、両OHS用突起71を、同じく幅方向に長尺とされた投影レンズ14と馴染ませることができ、見た目を向上させることができる。また、車両用灯具10は、両OHS用突起71を入射面(第2入射面52b)に設けているので、直接視認されることを防止でき、見た目を向上させることができる。さらに、車両用灯具10は、両OHS用突起71を幅方向に長尺なものとしているので、第2光源32と両OHS用突起71との幅方向への位置ずれが生じた場合であっても、第2光源32からの光の両OHS用突起71への入射の態様の変化を抑制でき、その位置ずれの影響を吸収できる。
【0064】
車両用灯具10は、2つのOHS用突起71が、下側の端部に入射面(第2入射面52b)に向けて傾斜させる傾斜面部72を有している。このため、車両用灯具10は、投影レンズ14の成形時に両OHS用突起71の周辺での樹脂の流れを滑らかなものとすることができ、成型フローが形成されることを抑制することができる。また、車両用灯具10は、傾斜面部72を両OHS用突起71の下側に設けているので、OHS配光パターンPohの上側をぼかすことができるとともに、照射配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)の見た目を向上させることができる。これは、以下のことによる。車両用灯具10は、投影レンズ14で投影されることで、両OHS用突起71を通った光の上下が反転されるので、傾斜面部72によるぼかしが上側に形成される。これに対して、傾斜面部72によるぼかしが下側に形成されると、照射配光パターンと部分的に重なることが考えられるが、双方の明るさが重なることによりぼかしの箇所の明るさが協調されてスジのように見える虞がある。そして、車両用灯具10は、ぼかしを上側に形成するので、ぼかしの箇所が暗闇に位置することで明るさが目立つことがなく、スジのように見えることを防止できる。これにより、車両用灯具10は、照射配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)の見た目を向上させることができる。
【0065】
車両用灯具10は、照射配光パターン(すれ違い用配光パターンLP)を、カットオフラインCLを有する第1配光パターンP1と、それよりも大きな第2配光パターンP2と、それよりも幅方向に拡がる第3配光パターンP3と、を少なくとも一部を重ねて形成している。また、車両用灯具10は、投影レンズ14が、第1配光パターンP1を形成する第1レンズ部51と、第2配光パターンP2を形成する第2レンズ部52と、第3配光パターンP3を形成する第3レンズ部53と、を有する。そして、車両用灯具10は、2つのOHS用突起71を、第2レンズ部52に設けている。ここで、車両用灯具10では、第1レンズ部51を、カットオフラインCLを有して最も明るさが求められる第1配光パターンP1を形成するために、光を集光する構成とする必要がある。また、車両用灯具10では、第3レンズ部53を、幅方向に拡がる第3配光パターンP3を形成するために、光を幅方向に拡散する構成とする必要がある。これに対して、車両用灯具10では、第2レンズ部52が、第1配光パターンP1と第3配光パターンP3との中間の大きさの第2配光パターンP2を形成するので、光をほどほどに拡散する構成としている。そして、OHS配光パターンPohでは、大きさや明るさが所定のものとされているので、中間の大きさの第2配光パターンP2に近いものとなる。加えて、両OHS用突起71は、設けられたレンズ部を通る光の一部を用いてOHS配光パターンPohを形成するので、設けられたレンズ部が形成する配光パターンの明るさを減らすものとなる。このため、両OHS用突起71は、設けられたレンズ部に対して小さなものとしつつ幅方向に光を拡散する構成とすることで、配光パターンの明るさへの影響を抑制しつつ所定の大きさのOHS配光パターンPohを形成できるものとしている。ここで、車両用灯具10は、両OHS用突起71を第1レンズ部51に設けようとすると、最も明るい第1配光パターンP1の形成を阻害し得るとともに、集光する形状の第1レンズ部51に対して拡散する形状の両OHS用突起71を設けることとなって双方の形状の差異が大きくなってしまう。また、車両用灯具10は、両OHS用突起71を第3レンズ部53に設けようとすると、幅方向に大きく拡散する形状の第3レンズ部53に対して、そこまで大きく拡散する必要のない形状の両OHS用突起71を設けることとなり、双方の形状の差異が大きくなってしまう。これに対して、車両用灯具10は、両OHS用突起71を第2レンズ部52に設けることで、第2レンズ部52との形状の差異を小さくできるとともに、形成する第2配光パターンP2の明るさを確保させることができる。よって、車両用灯具10は、両OHS用突起71を設けることによる投影レンズ14の形状の複雑化を抑制しつつ、第1配光パターンP1と第2配光パターンP2と第3配光パターンP3とを適切に形成することができる。
【0066】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例1の車両用灯具10は、光源(第2光源32)と上方照射用突起としてのOHS用突起71との位置関係の変化に拘らず、上方照射配光パターンとしてのOHS配光パターンPohが暗くなることを抑えることできる。
【0067】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0068】
なお、上記した実施例1では、リフレクタ部材13と投影レンズ14とで光を制御して所定の配光パターンを形成しているが、リフレクタ部材のみで制御してもよく、投影レンズのみで制御してもよく、他の構成でもよく、上記した実施例1の構成に限定されない。
【0069】
また、上記した実施例1では、第4照射ユニット64によりすれ違い用配光パターンLPの側方を照射する第4配光パターンP4を形成するものとしている。しかしながら、すれ違い用配光パターンLPを形成しつつ、その上方にOHS配光パターンPohを形成するものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0070】
さらに、上記した実施例1では、各OHS用突起71を単一の柱状に突起するものとしている。しかしながら、各OHS用突起71は、上記の位置関係で設けられていてOHS配光パターンPohを形成するものであれば、例えば複数の突起が幅方向に並べられた構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。各OHS用突起71は、複数の突起を幅方向に並べた構成とすると、単一の突起とする場合と比較して、各突起の高さ(第2入射面52bからの突出量)を小さくできる。
【0071】
上記した実施例1では、第2レンズ部52に設けた2つの上方照射用突起としての2つのOHS用突起71により、上方照射配光パターンとしてのOHS配光パターンPohを形成するものとしている。しかしながら、上方照射用突起は、上下方向で対を為して設けられて、照射配光パターンの上方へ向けて進行させて上方照射配光パターンを形成するものであればよく、実施例1の構成に限定されない。
10 車両用灯具 14 投影レンズ 31 第1光源 32 第2光源 33 第3光源 34 第4光源 41 第1リフレクタ部 41b 奥壁箇所 42 第2リフレクタ部 42b 奥壁箇所 43 第3リフレクタ部 43b 奥壁箇所 44 第4リフレクタ部 44b 奥壁箇所 51 第1レンズ部 52 第2レンズ部 52b (入射面の一例としての)第2入射面 53 第3レンズ部 71 (上方照射用突起の一例としての)OHS用突起 72 傾斜面部 CL カットオフライン LP (照射配光パターンの一例としての)すれ違い用配光パターン Lp2 (レンズ光軸の一例としての)第2投影光軸 Poh (上方照射配光パターンの一例としての)OHS配光パターン P1 第1配光パターン P2 第2配光パターン P3 第3配光パターン