(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002084
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/10 20060101AFI20241226BHJP
B02C 13/18 20060101ALI20241226BHJP
B01J 2/00 20060101ALI20241226BHJP
B01F 23/60 20220101ALI20241226BHJP
B01F 35/12 20220101ALI20241226BHJP
B01F 31/445 20220101ALI20241226BHJP
B01F 27/091 20220101ALI20241226BHJP
B01F 27/112 20220101ALI20241226BHJP
B01F 27/82 20220101ALI20241226BHJP
B01F 27/90 20220101ALI20241226BHJP
B01F 27/171 20220101ALI20241226BHJP
B01F 27/192 20220101ALI20241226BHJP
B01F 27/232 20220101ALI20241226BHJP
【FI】
B01J2/10 Z
B02C13/18
B01J2/00 B
B01J2/00 A
B01F23/60
B01F35/12
B01F31/445
B01F27/091
B01F27/112
B01F27/82
B01F27/90
B01F27/171
B01F27/192
B01F27/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102009
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000174965
【氏名又は名称】日本コークス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郡司 進
(72)【発明者】
【氏名】百田 憲市
(72)【発明者】
【氏名】岩本 玄徳
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 茂久
(72)【発明者】
【氏名】中野 要介
(72)【発明者】
【氏名】神山 勤
(72)【発明者】
【氏名】椎名 啓
【テーマコード(参考)】
4D065
4G004
4G035
4G036
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4D065AA14
4G004AA00
4G004BA00
4G004FA04
4G035AB48
4G036AB05
4G037DA15
4G037EA04
4G037EA10
4G078AA17
4G078AB20
4G078BA05
4G078BA07
4G078BA09
4G078CA09
4G078CA13
4G078DA01
4G078EA08
(57)【要約】
【課題】混合槽の胴壁面における処理物の付着及び堆積を防ぐことで、回収率の低下を抑えることが可能な処理装置を提供する。
【解決手段】処理物となる粉粒体を衝突させる処理を行うための処理装置10である。
そして、竪型の混合槽20と、混合槽の槽底を挿通して設けられる回転軸30と、回転軸に設けられる複数の撹拌羽根40と、撹拌羽根の上方に配置される衝突板50とを備え、衝突板は、処理中に混合槽の胴壁面に沿った回動をすることができる。
また、衝突板の上方に形成され、衝突板と共に回動するスクレーパ60を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理物となる粉粒体を衝突させる処理を行うための処理装置であって、
竪型の混合槽と、
前記混合槽の槽底を挿通して設けられる回転軸と、
前記回転軸に設けられる複数の撹拌羽根と、
前記撹拌羽根の上方に配置される衝突板とを備え、
前記衝突板は、処理中に前記混合槽の胴壁面に沿った回動が可能であることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記衝突板の上方に形成され、前記衝突板と共に回動するスクレーパを備えていることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記衝突板の回動が、一方向への回動、又は一方向への回動及び停止であることを特徴とする請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記衝突板の回動が、所定の角度範囲で往復する回動、又は往復する回動及び停止であることを特徴とする請求項1又は2に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理物となる粉粒体を衝突させる処理を行うための処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉粒体の複合化や球形化は、ミクロンオーダー又はナノオーダーの粉粒体に、衝突により圧縮力と剪断力を与える処理によって行われる。粒子に衝突により圧縮力と剪断力を加えることで、粒子を粉砕してアスペクト比を小さくし、角部を取り除いて丸みのある粒子とすることができる。また、凝集している粒子を解砕して細かく分散させることができるようになる。
【0003】
同時に、粒子に衝突により圧縮力と剪断力を加えることによって、粒子同士を固着させることができる。特に、大きな粒子と小さな粒子が混在している状態で衝突により圧縮力と剪断力を加えると、大きな粒子の表面が小さな粒子で覆われた状態となって一体化することになる。以下、大きな粒子を「母粒子」、小さな粒子を「子粒子」として称して説明する。
【0004】
処理前の粒子や凝集している粒子は、粒子間に空間を備えてかさ密度が小さく、比表面積の大きい粒子であることが多い。これに対して、衝突により一体化した粒子では、母粒子の表面に子粒子が打ち込まれた状態となることや、子粒子同士が隙間なく一体化することが多いので、かさ密度が大きく、比表面積の小さな粒子となる。
【0005】
母粒子と子粒子とを一体化させることにより、概ね、粒子の球状化処理が行われることになる。そして、母粒子と子粒子の種類が異なる場合は、粒子の複合化処理と称することができる。2種類以上の子粒子を用いて複合化処理を行うことも少なくない。
【0006】
母粒子の表面を子粒子で覆うことによって、複合粒子の表面の性質は、子粒子の性質を備えることになるので、表面改質処理と称されることがある。母粒子が樹脂などの柔らかい材料である場合は、子粒子が母粒子の中に完全に打ち込まれた状態で固定化させることができる。一方、母粒子が硬い材料であって、子粒子が変形し易い材料である場合には、子粒子同士が一体化した状態となり、カプセル化処理と称される状態になることもある。
【0007】
特許文献1には、粉粒体の複合化や球形化を行う処理装置が記載されている。この処理装置は、竪型の混合槽と、混合槽の槽底を挿通して設けられる回転軸と、回転軸に設けられる複数の撹拌羽根と、混合槽に固定して設けられる複数の衝突板とを備えている。
【0008】
粉粒体は、撹拌羽根の回転により慣性力を与えられ、槽底の隅部から胴壁面に沿って上昇し、混合槽の中央部に落下して戻り、これを繰り返す循環流動をすることになる。混合槽内には、複数の衝突板が固定されているので、流動する粉粒体は衝突板に衝突して圧縮力と剪断力が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、衝突板を利用する処理装置においては、混合槽の胴壁面に付着や堆積を起こすことがある。特に、付着性の高い材料では、これによって回収率の低下を起こすという問題が発生した。
【0011】
そこで、本発明は、混合槽の胴壁面における処理物の付着及び堆積を防ぐことで、回収率の低下を抑えることが可能な処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の処理装置は、処理物となる粉粒体を衝突させる処理を行うための処理装置であって、竪型の混合槽と、前記混合槽の槽底を挿通して設けられる回転軸と、前記回転軸に設けられる複数の撹拌羽根と、前記撹拌羽根の上方に配置される衝突板とを備え、前記衝突板は、処理中に前記混合槽の胴壁面に沿った回動が可能であることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記衝突板の上方に形成され、前記衝突板と共に回動するスクレーパを備えた構成とすることができる。前記衝突板の回動については、一方向への回動、又は一方向への回動及び停止とすることができる。また、前記衝突板の回動が、所定の角度範囲で往復する回動、又は往復する回動及び停止であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
このように構成された本発明の処理装置では、処理中に混合槽の胴壁面に沿って衝突板を回動させ、衝突板に近接する胴壁面の状態を変化させることができる。すなわち、付着が起こり易くなった胴壁面の領域を、移動してきた衝突板によって洗浄作用のある胴壁面に変化させることができる。このため、衝突板が回動する領域の近傍では、胴壁面の全周において、付着の起こり易い状態が持続されることがなくなり、付着及び堆積を防ぐことができるようになる。
【0015】
また、衝突板を回動させる機構を利用して、胴壁面に沿って回動するスクレーパを構成として加えることができる。これによって、衝突板が回動する領域の近傍だけでなく、広い胴壁面にわたって、微細な付着物まで完全に除去することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態の処理装置の概略構成の一例を説明する図であって、(a)は概略縦断面図、(b)は(a)のA-A矢視方向で見た概略横断面図である。
【
図2】衝突板の回動機構の一例を説明する図であって、(a)は概略平面図、(b)は概略立面図である。
【
図3】衝突板について説明する図であって、(a)は衝突板と胴壁面との位置関係を示す説明図、(b)は衝突板と撹拌羽根との位置関係を拡大して示した説明図、(c)は(b)におけるC-C矢視方向で見た説明図である。
【
図4】スクレーパの掬い面の断面形状と回動方向の例を説明する図であって、(a)及び(b)は一方向の場合を示した説明図、(c)は両方向の場合を示した説明図である。
【
図5】衝突板の回動機構の他の例を示す図であって、(a)は概略平面図、(b)は概略立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態の処理装置10の概略構成を示した説明図であって、
図1(a)は概略縦断面図であり、
図1(b)はA-A矢視方向で見た概略横断面図である。
【0018】
本発明の実施の形態の処理装置10は、処理物となる粉粒体を衝突させる処理(粒子間に圧縮力と剪断力を与える処理)を行うことで、粒子の複合化や球形化などの高度な処理を行うことができる粉粒体の処理装置である。例えば、母粒子の表面に子粒子を衝突させて固着させる粒子の球状化処理や、異なる種類の粒子同士を衝突させて固着させる複合化処理などを、処理装置10によって行うことができる。
【0019】
本発明の実施の形態の処理装置10は、竪型の混合槽20と、混合槽20の槽底を挿通して設けられる回転軸30と、回転軸30に設けられる複数の撹拌羽根40と、撹拌羽根40の上方に配置される衝突板50と、衝突板50を処理中に混合槽20の胴壁面23に沿って回動させる回動機構とを備えている。
【0020】
混合槽20は、垂直な軸心を中心に形成される円筒状の容器である。一般に、軸心が水平となる円筒状の容器を「横型」と称し、軸心が垂直となる円筒状の容器を「竪型」と称している。
【0021】
混合槽20は、内部の保守や点検などが行えるようにするために、上部に開閉可能な蓋25を備えている。混合槽20のフランジ21と蓋25のフランジ26とによって、混合槽20を密閉したり、開放したりすることができる。また、処理物の加熱又は冷却を行うために、混合槽20の槽壁を熱媒体が流通するジャケット構造にしたり、混合槽20の内部に熱媒体が流通するコイルを設けたりすることができる。
【0022】
処理装置10では、連続処理ではなくバッチ処理が行われる。このために、蓋25には粉粒体の投入口(図示省略)が設けられ、この投入口より原料となる粉粒体が投入される。その他、蓋25には、点検口、覗き窓、排気口などが適宜設けられる。
【0023】
また、混合槽20の槽底付近の隅部には排出口(図示省略)が設けられ、処理された粉粒体が排出される。粉粒体を排出する際には、撹拌羽根40を緩く回転させた状態で排出弁(図示省略)を開くことにより、粉粒体を確実に排出させることができる。
【0024】
混合槽20は、図示しない電動機と共に架台に載置され、電動機の動力がVベルトなどの伝達装置によって回転軸30に伝達されるように構成されている。回転軸30の回転数は可変として、自由に設定できることが好ましい。
【0025】
回転軸30は、混合槽20に対して、図示していないグランドシールやエアシールなどによりシールされている。ガスを用いる場合には、混合槽20からの排出ガスに同伴する微粉を捕集するために、フィルタを備えた排気口を蓋25に設けることが好ましい。
【0026】
撹拌羽根40は、略円錐状に形成されたボス部46の傾斜面に配列されて形成され、ボス部46は回転軸30に取付けられて、ボス部46の底面が混合槽20の槽底に近接して回転するように形成されている。
【0027】
槽内の粉粒体は、撹拌羽根40の回転によって周方向の慣性力を与えられるので、円筒状の胴壁面23に沿って上昇し、混合槽20の中央部に落下する。落下した粉粒体は再び撹拌羽根40によって慣性力を与えられるので、混合槽20の内部には粉粒体の循環流動が形成されることになる。
【0028】
複数設けられた撹拌羽根40のそれぞれは、リング状上板47によって連結されていることが好ましい。この場合、粉粒体は、各撹拌羽根40の間で、リング状上板47の下側をくぐるようにして流れるので、安定した流動状態を得ることができる。撹拌羽根40の回転速度は、その外端部で毎秒20m-150m、好ましくは毎秒30m-100mである。
【0029】
本実施の形態の処理装置10は、撹拌羽根40の上方に位置して、混合槽20の胴壁面23に沿って回動する衝突板50を備えている。衝突板50の回動機構については、後述する。循環流動している処理物を衝突板50に衝突させることにより、粉粒体に圧縮力と剪断力を与える粒子相互を衝突させる処理を行うことができる。説明のため撹拌羽根40の回転方向は、反時計方向であるとする。
【0030】
処理装置10の衝突板50は、その回動軸58が、軸受箱59を介して蓋25に回動可能に取付けられており、電動機90により駆動されて一方向に回転する。回動軸58には腕部材56が固定され、腕部材56には調整部材57が設けられている。衝突板50は、連結部材55と共に調整部材57に取付けられている。連結部材55は後述するように、胴壁面23に付着した微粉を除去するスクレーパ60とすることもできる。
【0031】
図2は、衝突板50の回動機構の構成例を示しており、
図2(a)は概略平面図、
図2(b)は概略立面図である。以下、衝突板50及びスクレーパ60について詳しく説明する。
【0032】
衝突板50及びスクレーパ60は、胴壁面23に近接して回動することが好ましく、胴壁面23との隙間を調整部材57で調節できるようになっている。ここでは、衝突板50の数を2個としているが、衝突板50の数は限定されず、1個でも複数個でもよく、必要に応じて4個以上とすることもできる。
【0033】
また以下では、衝突板50の回動が一方向の単純な場合について説明するが、「回動」には種々の複雑な動きが含まれる。例えば、一方向であっても回動と停止を繰り返すものも含まれるし、速度を変えることも、停止の時間を変えることも含まれる。また、往復動であってもよいし、往復動に停止や変速を加えた動きであってもよい。さらに、プログラミングされた動きをさせることもできる。そして、回動速度についても、自由に決めることができる。
【0034】
衝突板50においては、循環流動が衝突する面を衝突面51とし、その裏側を裏面52と呼ぶことにする。ここでは、衝突面51が回動軸58の軸心を通る直線上に位置すると共に、垂直面に対して角度を備えている場合を示している。この衝突面51の向きは、自由に決めることができ、回動軸58の軸心を通る直線と交差する向きであってもよい。
【0035】
粉粒体の循環流動に対して衝突面51を直角に配置すると、粉粒体に与える力が強くなるが、循環流動が乱れて安定しない状態となりやすい。ここに記載しているような傾斜を設けると、循環流動が少し下方へ抑え込まれて安定した流動となる。循環流動は撹拌羽根40の回転方向に流動するので、衝突面51の傾斜は、この回転方向に合わせた傾斜とする。
【0036】
ここでは、撹拌羽根40の回転方向とは逆に、衝突板50の回動方向が時計方向である場合を説明するが、これらを同方向とすることもできる。
図2(a)では、衝突板50を上から見ることになるので、両方共に裏面52が見えていることになる。
図2(b)は、右側の衝突板50が衝突面51を示しており、左側の衝突板50が裏面52を示している。
【0037】
また、スクレーパ60において、付着物を掬い落とす面を掬い面61とし、その後側となる面を背面62とする。掬い面61は、付着物を掬い落とす、あるいは削り落すのに適した形状とする。同時に、掬い面61は、通過する循環流動のガイドとなる形状が好ましい。また、衝突板50と共にスクレーパ60が往復動をする場合には、往復動に合わせた形状とする。
【0038】
図2(a)では、スクレーパ60を上から見ることになるので、進行方向に掬い面61を示すことができる。
図2(b)では、右側のスクレーパ60が掬い面61を示し、左側のスクレーパ60が背面62を示している。
【0039】
衝突板50及びスクレーパ60の材質としては、例えばステンレス鋼などの金属を用いることができる。また、耐熱性が高く摩擦抵抗の低い樹脂を用いることも可能であり、例えば各PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などを用いることができる。
【0040】
図3は、衝突板50についての説明図であって、
図3(a)は衝突板50と胴壁面23との位置関係を示し、
図3(b)は
図1(a)の部分拡大図であって衝突板50と撹拌羽根40との位置関係を示し、
図3(c)は
図3(b)におけるC-C矢視方向で見た説明図である。
【0041】
図3(a)において、衝突板50の回動を停止した状態で処理を行うと、衝突板50の上方部分の近傍、すなわち、腕部材56、調整部材57及びスクレーパ60の近傍において付着や堆積が発生することが、本願発明者の研究により判明している。
【0042】
詳細には、付着や堆積が強く発生するのは衝突板50の上方部分の近傍、すなわち、混合槽20の胴壁面23の上方部分であって、混合槽20の胴壁面23の上方部分では粉粒体の循環流動が弱く鈍い流動となり、付着や堆積が発生することが分かった。
【0043】
また、上記の領域を除く胴壁面23においては、均一な循環流動による洗浄作用はあるものの、衝突板50及びスクレーパ60の影響により、循環流動は鈍くなり、洗浄作用は弱くなる。したがって、付着や堆積は減少傾向にあるものの、その発生を防止することはできない。
【0044】
衝突板50及びスクレーパ60は、
図3(c)に示すように撹拌羽根40とは逆の方向に回転する。すなわち、粉粒体の循環流動に逆らう方向に回動するため、衝突板50及びスクレーパ60近傍では循環流動が活発に乱れる。スクレーパ60の直接的な掬い落す役割に加え、これも洗浄作用となる。すなわち、衝突板50が回動している状態で処理を行う場合は、何れの場所においても、上記の作用が繰り返されることになる。したがって、衝突板50を回動させることは、胴壁面23における処理物の付着及び堆積を防ぐために有効であり、回収率の低下を抑えることが可能となる。
【0045】
処理装置10における処理の効果は、衝突板50における衝撃の強さばかりではなく、流動状態にも大きく影響されるが、次のような有効面積を定めて、処理効果の判断に用いることができる。ここでは回動軸58の軸心を通る平面に投影される衝突面51の面積を、衝突面51の有効面積とする。これは、
図3(b)に示されている衝突面51の面積と考えてよい。
【0046】
そして、混合槽20の内部半径をRとするとき、衝突板50は、撹拌羽根40の上方に0.5R以内で、かつ胴壁面23から0.5R以内にあることが好ましい。また、有効面積は、0.05R2-0.20R2であることが好ましく、0.1R2-0.15R2であることがより好ましい。
【0047】
図4は、スクレーパ60の掬い面61の断面形状と回動方向を例示している。ここでも、撹拌羽根40の回転方向は反時計方向であるとする。掬い面61が循環流動に向かって回動する場合は、掬い面61が付着物を掬い落す役割とともに循環流動をガイドして安定した流動とする役割を担うことになる。掬い面61が循環流動と同じ方向に回動する場合は、ガイドの役割はなく、付着物を掬い落す役割のみを担うことになる。
【0048】
図4(a)のスクレーパ60aは、掬い面61aを平面とした場合を示しており、循環流動に向って移動する場合を示している。この例では、下部の衝突板50に近い部分では、掬い面61aも衝突板50と同様の作用をするものと考えられる。
【0049】
図4(b)のスクレーパ60bは、掬い面61bが凹面に形成されているので、
図4(a)のスクレーパ60aと比べて、循環流動のガイドの役割が強くなっており、衝突板としての役割は弱くなっていると考えられる。
【0050】
図4(c)のスクレーパ60cは、凹面に形成された掬い面61cを2つ備えて往復動をすることができる。スクレーパ60cが時計方向に回動するときは、進行方向の掬い面61cが
図4(b)の掬い面61bと同様に働くが、他方の掬い面61cは殆ど何も機能しない。スクレーパ60cが反時計方向に回動するときには、進行方向となる掬い面61cが付着物を除去するとともに、他方の掬い面61cは循環流動のガイドとして機能することになる。
【0051】
図5は、衝突板50の回動機構として、衝突板50を往復動させる駆動機構を例示した説明図である。この回動機構では、エアシリンダー80を用いて駆動する場合を説明する。
図5(a)は概略平面図であり、
図5(b)は概略立面図である。
【0052】
エアシリンダー80の往復動による駆動では、衝突板50の角度範囲が90度程度に限定されるが、衝突板50の数に拘わらず、本発明の目的を達成することができる。
図3で示した衝突板50の上方部分の近傍とそうではない領域とを繰り返すことが可能になるためである。但し、スクレーパ60を必要とする場合には、スクレーパ60を4個以上設けないと、全周にわたって微粉の除去を行うことはできない。
【0053】
回動機構の回動軸70は、蓋25の中心に設けられたすべり軸受71に挿通され、回動自在に形成されている。回動軸70には、駆動レバー73を備えた駆動部材72が固定されている。
【0054】
すべり軸受71の材質としては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを用いることができる。これによって、回動軸70の外周面とすべり軸受71の内周面とを摺動させ、駆動部材72の下面とすべり軸受71の上面とを摺動させることができる。
【0055】
エアシリンダー80のロッド81は駆動部材72に連結されているので、ロッド81を往復運動させることにより、回動軸70を一定の角度範囲で回動させることができる。すなわち、この角度範囲内で時計方向の回動と、反時計方向の回動とを繰り返すことができる。
【0056】
次に、本実施の形態の処理装置10の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の処理装置10は、処理中に混合槽20の胴壁面23に沿って衝突板50を回動させ、衝突板50に近接する胴壁面23の状態を変化させることができる。すなわち、付着が起こり易くなった胴壁面23の領域を、移動してきた衝突板50によって、すぐに洗浄作用のある胴壁面23に変えることができる。このため、衝突板50が回動する領域の近傍では、胴壁面23の全周において、付着の起こり易い状態が持続されることがなくなり、付着及び堆積を防ぐことができるようになる。
【0057】
また、衝突板50を回動させる回動機構を利用して、胴壁面23に沿って回動するスクレーパ60を構成として加えることができる。これによって、衝突板50が回動する領域の近傍だけでなく、広い胴壁面23にわたって、微細な付着物まで完全に除去することができるようになる。
【0058】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0059】
例えば、前記実施の形態では、処理装置10において、衝突板50を一方向に回動させるために電動機90を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ワンウェイクラッチなどとエアシリンダーとを組み合わせることによっても、一方向への回動と停止を繰り返す動作を実施させることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 :処理装置
20 :混合槽
23 :胴壁面
30 :回転軸
40 :撹拌羽根
50 :衝突板
60 :スクレーパ