(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020862
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20250205BHJP
【FI】
G06T7/00 650A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124485
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】川坂 亘史
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA04
5L096CA02
5L096CA17
5L096DA01
5L096FA69
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】カメラによる撮影画像と地図データとの照合の精度を向上できるようにする。
【解決手段】移動体は、路面の画像を撮影する路面撮影装置を備える。路面撮影装置は、路面を臨むように配置されたカメラと、カメラの撮影領域に光を照射する少なくとも1つの光源と、事前に撮影された路面の画像を地図データとして記憶する記憶装置と、地図データとカメラにより撮影された画像とを照合し、移動体の自己位置を推定するプロセッサと、を含む。少なくとも1つの光源は、照射した光のうち反射光がカメラによって撮影されるように配置されている。路面撮影装置は、撮影領域を外部光から遮断するようにカメラ及び光源の周囲に配置された遮光板をさらに備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の画像を撮影する路面撮影装置を備える移動体であって、
前記路面撮影装置は、
路面を臨むように配置されたカメラと、
前記カメラの撮影領域に光を照射する少なくとも1つの光源と、
事前に撮影された路面の画像を地図データとして記憶する記憶装置と、
前記地図データと前記カメラにより撮影された画像とを照合し、前記移動体の自己位置を推定するプロセッサと、
を含み、
前記少なくとも1つの光源は、照射した光のうち反射光が前記カメラによって撮影されるように配置され、
前記路面撮影装置は、前記撮影領域を外部光から遮断するように前記カメラ及び前記光源の周囲に配置された遮光板をさらに備える
ことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体の自己位置を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、路面画像を用いて自律走行車の自己位置を推定する技術を開示している。この技術によれば、自己位置は、カメラによって撮影された車体下方の路面の画像から抽出された特徴と、予め撮影された地図画像(地図データ)から抽出された特徴とを比較することによって推定される。自律走行車は、カメラの撮影領域に光を照射する光源群における輝度が低いエリアに対応する光源を制御して当該エリアを明るくする調整部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、各光源の配置又は明るさの強弱のばらつきにより、カメラにより撮影された路面の画像内に明るさのばらつきが発生し得る。その結果、実際の路面には存在しない特徴点を取得してしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、カメラによる撮影画像と地図データとの照合の精度を向上できるようにした移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る移動体は、路面の画像を撮影する路面撮影装置を備える。路面撮影装置は、路面を臨むように配置されたカメラと、カメラの撮影領域に光を照射する少なくとも1つの光源と、事前に撮影された路面の画像を地図データとして記憶する記憶装置と、地図データとカメラにより撮影された画像とを照合し、移動体の自己位置を推定するプロセッサと、を含む。少なくとも1つの光源は、照射した光のうち反射光がカメラによって撮影されるように配置されている。路面撮影装置は、撮影領域を外部光から遮断するようにカメラ及び光源の周囲に配置された遮光板をさらに備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、反射光が画像撮影のための光源として用いられる。これにより、カメラによる撮影画像の輝度ムラの発生を抑制できる。また、上述の遮光板を備えたことにより、太陽光及び照明光等の外部光が撮影領域に入射することに起因する撮影画像の輝度ムラの発生も抑制できる。このため、カメラによる撮影画像と地図データとの照合の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る移動体の構成及び自己位置推定方法を説明するための図である。
【
図2】
図1に示す路面撮影装置の構成を表した図である。
【
図3】実施の形態に係る光源配置の他の例の構成を表した図である。
【
図4】実施の形態に係る遮光板の他の例の構成を表した図である。
【
図5】実施の形態に係る光源の光量調整方法の第1の例を説明するための図である。
【
図6】実施の形態に係る光源の光量調整方法の第2の例を説明するための図である。
【
図7】実施の形態に係る光源の光量調整方法の第3の例を説明するための図である。
【
図8】実施の形態に係る光源の光量調整方法の第4の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0010】
1.路面撮影装置を備える移動体の構成
図1は、実施の形態に係る移動体1の構成及び自己位置推定方法を説明するための図である。
図2は、
図1に示す路面撮影装置10の構成を表した図である。移動体1は、路面2の上を移動する。移動体1は、例えば車両である。車両は、自動運転車両であってもよいし、ドライバが運転する車両であってもよい。また、本開示に係る「移動体」は、例えば、物流ロボット等のロボットであってもよい。
【0011】
移動体1は、路面撮影装置10を備える。路面撮影装置10は、路面2の画像を撮影し、撮影された画像を利用して移動体1の自己位置Pを推定する。路面撮影装置10は、カメラ12と、光源14と、電子制御ユニット(ECU)16とを含む。
【0012】
カメラ12は、
図2に示すように路面2を臨むように配置されている。路面撮影装置10は天板18を有する。天板18は、例えば、移動体1の底面に固定されている。カメラ12は、例えば、天板18に取り付けられている。天板18は、例えば白色の樹脂板である。
図2に示す撮影領域R(撮影面)は、カメラ12によって撮影される路面2の領域に相当する。
【0013】
光源14は、カメラ12の撮影領域Rに光を照射するように配置されている。光源14の数は限定されず、1つでもよいし、あるいは複数であってもよい。より詳細には、一例として、四角形形状(後述の
図7(A)参照)の天板18を有する場合、光源14は、天板18の各辺に対応して配置されてもよい。
図2には、このように配置された4つの光源14のうちの2つが表されている。光源14は、例えばLED(Light Emission Diode))である。より詳細には、LEDは、例えばテープLEDである。
【0014】
ECU16は、路面撮影装置10を用いた自己位置Pの推定に関する制御を行う。ECU16は、プロセッサ20と記憶装置22とを含む。プロセッサ20は、当該制御に関する各種処理を実行する。記憶装置22は、プロセッサ20による各種処理に必要な各種情報を格納する。また、
図2に示すように、路面撮影装置10は、照度センサ24を含む。照度センサ24は、後述の光量調整に用いられる。
【0015】
自己位置Pの推定のために、記憶装置22は、事前に撮影された路面2のカメラ画像を地図データとして記憶している。地図データ(地図画像)は、事前に撮影されたカメラ画像から抽出された点群(特徴点;
図1参照)を地図空間上に予めマッピングして得られたデータである。プロセッサ20は、当該地図データと、移動体1の走行中にカメラ12により撮影された画像とを照合し、自己位置Pを推定する。より詳細には、プロセッサ20は、カメラ画像から抽出された点群(移動体周辺の特徴点;
図1参照)と、地図データの特徴点とを比較することにより、自己位置Pを推定する。なお、特徴点の抽出方法等の自己位置Pの推定方法の概要は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0016】
上述の方法で自己位置Pを正確に推定するためには、カメラ画像の品質の均一化が求められる。そして、カメラ画像の品質の均一化のためには、撮影領域Rの全体が均一且つ十分な光量で照らされていることが望ましい。
【0017】
この点に鑑み、本実施形態では、光源14のそれぞれは、照射した光のうち「反射光」がカメラ12によって撮影されるように配置されている。すなわち、光源14のそれぞれは、直接光が路面2に入射されないような向きで配置されている。なお、ここでいう反射光は、鏡面反射(正反射)と拡散反射(乱反射)のそれぞれによる反射光を含む。
【0018】
上述の光源14の配置を実現するために、
図2に示す例では、光源14のそれぞれは、斜め上方を向くように配置されている。さらに、光源14のそれぞれは、各光源14から照射された光のうち直接光は撮影領域Rに入射せずに、天板18等の筐体内部を反射した光が撮影領域Rに入射する場所に配置されている。より具体的には、路面撮影装置10の筐体26は、天板18と後述の遮光板28とを含んで構成されている。各光源14は、一例として遮光板28に取り付けられており、筐体の外側から内側に向けて光を照射する。
【0019】
さらに、本実施形態では、路面撮影装置10は、遮光板28を含む。
図2に示すように、遮光板28は、撮影領域Rを外部光から遮断するようにカメラ12及び各光源14の周囲に配置されている。外部光は、例えば、太陽光、及び外部の照明光を含む。より詳細には、遮光板28は、例えば、天板18の各辺から下方に延びるように形成されている。換言すると、遮光板28は、撮影領域Rを囲む(覆う)ように形成されている。
【0020】
以上説明したように、本実施形態に係る路面撮影装置10を備える移動体1は、あえて光源14を直接的に路面2に向けずに反射光のみを画像撮影のための光源として用いるように構成されている。これにより、カメラ画像の輝度ムラの発生を抑制できる。また、遮光板28を備えたことにより、太陽光及び照明光等の外部光が撮影領域Rに入射することに起因するカメラ画像の輝度ムラの発生も抑制できる。より詳細には、外界の照明強度が変化する環境であっても、カメラ画像の輝度ムラの発生を好適に抑制できる。
【0021】
上述のように、本実施形態によれば、カメラ画像の輝度ムラの発生を好適に抑制できる。その結果、カメラ画像と地図データとの照合の精度を向上できるようになる。このことは、自己位置の推定精度の向上につながる。
【0022】
また、LEDは、安価で消費電力も少ないことから路面撮影の光源14として好適である。その一方、LEDは、一般に指向性が強い。このため、直接光が路面2の撮影領域Rに入射すると、反射によりLEDの配置痕が輝度ムラとしてカメラ画像に生じる可能性がある。この点に関し、本実施形態の光源配置によれば、撮影領域Rに入射される光は、筐体内を反射・拡散した光である。このため、カメラ画像のムラを抑制できる。
【0023】
2.光源配置の他の例
図3(A)~
図3(C)は、それぞれ、実施の形態に係る光源配置の他の例の構成を表した図である。
【0024】
まず、
図3(A)に示す例では、各光源14は、遮光板28ではなく、筐体26内のカメラ12の周囲に設けられた固定部30に取り付けられている。より詳細には、固定部30は、天板18から下方に延びるように形成され、カメラ12の先端の周囲を覆っている。各光源14は、カメラ12に面する側の反対側において固定部30に取り付けられている。そして、この例においても、直接光が撮影領域Rに入射しないようにするために、各光源14は、筐体26の内側から外側を向くように(筐体26の側面方向を向くように)、且つ斜め上方を向くように配置されている。
【0025】
次に、
図3(B)に示す例では、各光源14は、
図2に示す例と同様に遮光板28に取り付けられている。そのうえで、この例では、
図3(B)に示すように、各光源14から照射される光を拡散する拡散板32が備えられている。拡散板32は、例えば、各光源14の発光面に取り付けられている。拡散板32としては、例えば、アクリル樹脂等の拡散作用の強い板が用いられる。この例によれば、拡散板32の設置に起因して全体の光量は減少するが、より高い光拡散効果が期待できる。
【0026】
次に、
図3(C)に示す例では、各光源14は、
図3(A)に示す例と同様に固定部30に取り付けられている。そのうえで、この例では、
図3(C)に示すように、各光源14と路面2との間に介在するように拡散板34が配置されている。拡散板34は、図示しない支持部材によって支持されている。この例によっても、拡散板32の設置に起因して全体の光量は減少するが、より高い光拡散効果が期待できる。
【0027】
3.遮光板の他の例
上述した
図2に示す例では、路面撮影装置10の遮光板(遮光部)は、遮光板28のみを用いて実現されている。遮光板が路面2と接触した際の衝撃で路面撮影装置10が破損することを防ぐために、遮光板は、例えば次のように構成されてもよい。
図4(A)及び
図4(B)は、それぞれ、実施の形態に係る遮光板の他の例の構成を表した図である。
【0028】
まず、
図4(A)に示す例では、遮光板36は、上下方向(鉛直方向)において硬度の異なる上部38と下部40とによって構成されている。具体的には、路面2から遠い方の上部38は、アルミニウム複合板等の高い硬度を有する素材を用いて形成されている。各光源14は、この上部38に取り付けられている。一方、路面2に近い方の下部40は、ゴム又は布等の柔軟素材を用いて形成されている。
【0029】
上述のように構成された遮光板36によれば、路面2に近い部分は、柔軟素材の下部40によって遮光を行う。これにより、遮光板36が路面2と接触した際の衝撃に起因する路面撮影装置10の破損を防ぎつつ、撮影領域Rへの外部光の入射を抑制できる。なお、ここで説明される例における遮光板(遮光部)は、上下方向において硬度の異なる3つ以上の素材を用いて構成されてもよい。
【0030】
また、
図4(B)に示す例のように、移動体1の外装部品である柔軟素材のカバー42が、遮光板の一部(下部)として用いられてもよい。
【0031】
4.光源の光量調整
【0032】
4-1.光量調整方法の第1の例
図5(A)及び
図5(B)は、実施の形態に係る光源14の光量調整方法の第1の例を説明するための図である。路面2の素材によって、路面2からの反射強度に違いがある。このため、路面撮影装置10は、撮影領域R内の明るさ調整を行う機能を有していることが望ましい。より具体的には、移動体1の移動に伴ってコンクリートからアスファルトへの変化等のように反射性の異なる路面領域を路面撮影装置10がまたいだ際には、路面2の反射強度の違いによって撮影領域R内の明るさが変化してしまう。カメラ画像の品質を安定的に保つためには、このような明るさの変化を抑制するための光量調整が速やかに完了することが望ましい。この点に鑑み、第1の例では、次のような光量のフィードバック制御が実行される。
【0033】
既に説明されたように、路面撮影装置10は、照度センサ24を備える。
図5(A)に示すように、照度センサ24は、路面2の撮影領域Rを臨むように天板18に取り付けられている。照度センサ24の具体的な配置例については、
図7(A)とともに後述される。照度センサ24は、筐体26内の撮影領域Rの照度の計測に用いられる。第1の例に係るフィードバック制御は、カメラ12のフレームレート(例えば、約60Hz)より早い時間で明るさを調整するために、当該フレームレートの周期と比べて計測周期の短い照度センサ24を用いて実行される。具体的には、
図5(B)に示すように、予め設定された目標光量と照度センサ24により検出される照度に応じた光量との制御偏差が算出される。そして、光量コントローラは、制御偏差が小さくなるように、例えば光源14の電流制御によって光源14の強度を制御する。これにより、路面撮影装置10が反射性の異なる路面領域をまたいだ際であっても、路面2の撮影領域Rの照度の変化が抑制されるように路面2の光の反射(光量)を速やかに調整できるようになる。
【0034】
4-2.光量調整方法の第2の例
図6(A)及び
図6(B)は、それぞれ、実施の形態に係る光源14の光量調整方法の第2の例を説明するための図である。第2の例は、光源14から照射される光を照度センサ24が直接拾うことを抑制するための対策に関する。
【0035】
具体的には、
図6(A)に示すように、筐体26内の照度センサ24の周囲を覆うように遮光板44が設けられてもよい。遮光板44は、光源14と照度センサ24との間に介在するように天板18から下方に延びるように形成されている。遮光板44を追加的に備えることにより、真下からの光のみが照度センサ24によって拾われるように各光源14からの直接光を遮断できる。
【0036】
また、
図6(B)に示すように、照度センサ24の表面(検出面)に偏光板46が取り付けられてもよい。偏光板46は、真下からの光のみを透過させるように構成されている。偏光板46を追加的に備えることによっても、真下からの光のみが照度センサ24によって拾われるように各光源14からの直接光を遮断できる。
【0037】
4-3.光量調整方法の第3の例
図7(A)及び
図7(B)は、実施の形態に係る光源14の光量調整方法の第3の例を説明するための図である。
図7(A)は、筐体26内の光源14及び照度センサ24の配置の具体例を表した図である。この例では、
図7(A)に示すように、光源14及び照度センサ24の4つの組み合わせが、カメラ12の中心位置を基準として点対称に、換言すると、四角形形状を有する天板18の4つの辺にそれぞれ対応して配置されている。光源14及び照度センサ24の個々の組み合わせは、4つに区分された領域A1~A4にそれぞれ対応する路面2の領域の光量調整を行う。ここで、各照度センサ24によって受光される筐体26内の照度B1~B4及び光源14の強度(出力強度)の適正値は、光の拡散及び個体差等の要因により、陽に求めることはできず、フィードバック制御による自動調整が望ましい。この点に鑑み、第3の例では、
図7(B)に示す光量のフィードバック制御が実行される。
【0038】
図7(B)に示す処理は、プロセッサ20によって繰り返し実行される。まず、ステップS100において、プロセッサ20は、各照度センサ24の値(実照度)Bi(例えば、i=1~4)を取得する。次いで、ステップS102において、プロセッサ20は、事前に設定された目標照度Bi_refに対する実照度Biの差Eiを算出する。
【0039】
次いで、ステップS104において、プロセッサ20は、算出した差Eiが小さくなるように各光源14の光量(強度)Liを増減する。次いで、ステップS106において、プロセッサ20は、所定の終了条件が成立するか否かを判定する。終了条件は、例えば、差Eiが十分に小さいこと、又は、光量Liが最大値若しくは最小値に達していることである。この判定結果がNoの場合には、処理はステップS100に戻る。一方、当該判定結果がYesの場合には、処理はエンドに進む。
【0040】
上述した光量のフィードバック制御によれば、区分された領域毎に、筐体26内の照度が目標範囲内に達するまで、光源14の出力強度を自動的に調整(増減)することができる。
【0041】
4-4.光量調整方法の第4の例
図8(A)及び
図8(B)は、実施の形態に係る光源14の光量調整方法の第4の例を説明するための図である。
図8(A)は、移動体1の移動経路の一例を示している。この例では、移動体1が走行する路面は、アスファルト、コンクリート、及び屋内の樹脂系路面の間で変化する。移動体1の走行中には、このように路面環境が異なり得ることが想定される。光源14の光量調整に関し、このような路面環境の変化は、例えば次の課題を招く。すなわち、筐体26内の照度を目標範囲内に収めるための光源14の強度(出力強度)の適正値は、路面環境によって異なる。このため、急な路面変化(例えば、屋外のアスファルトから屋内の樹脂系路面)が生じると、光源14の強度をフィードバック制御によって調整する際の調整過程のカメラ画像に白飛び等による品質低下が生じる可能性が高くなる。その結果、当該カメラ画像を己位置推定のための画像処理に用いることができなくなる可能性がある。したがって、光源14の強度調整にかかる時間を短縮して筐体26内の照度を早期に安定化させることが求められる。この点に鑑み、第4の例では、
図8(B)に示す光量のフィードバック制御が実行される。
【0042】
図8(B)に示す処理は、移動体1の現在位置の更新に伴い、プロセッサ20によって繰り返し実行される。まず、ステップS200において、プロセッサ20は、光源14の強度の初期値Iを設定する。より具体的には、記憶装置22は、移動体1の位置情報に対応する初期値Iのマップを記憶している。プロセッサ20は、更新された現在位置に対応する初期値Iを当該初期値マップから読み出して今回の初期値Iとして設定する。
【0043】
次いで、ステップS202において、プロセッサ20は、設定した初期値Iと一致するように光源14の強度を調整する。次いで、ステップS204において、照度センサ値(実照度)と目標照度との差Eの絶対値が所定の閾値TH1未満であるか否かを判定する。その結果、この判定結果がNoの場合には、処理はステップS202に戻り、プロセッサ20は、差Eの絶対値が小さくなるように光源14の強度を調整する。
【0044】
一方、ステップS204の判定結果がYesの場合(すなわち、本フィードバック制御が収束した場合)には、処理はステップS206に進む。ステップS206において、プロセッサ20は、光源14の強度の前回値と今回値との差の絶対値が所定の閾値TH2より大きいか否かを判定する。ここでいう前回値とは、ステップS200の処理によって設定された初期値Iであり、今回値とは、処理がステップS206に進んだ際に調整されている光源14の強度の値である。ステップS206の処理によれば、このような前回値と今回値との乖離が小さい場合(S206;No)には、処理はエンドに進む。一方、当該乖離が大きい場合(S206;Yes)には、処理はステップS208に進み、プロセッサ20は、現在位置に対応する初期値Iを上記の今回値によって更新する。すなわち、初期値マップに記憶される初期値Iが更新される。
【0045】
上述したように、本フィードバック制御によれば、本フィードバック制御が収束した際の適正な光源14の強度が、移動体1の現在位置に対応付けられた状態で初期値マップに記憶される。そして、移動体1が同じ位置を走行する際には、当該位置に対応する適正な光源14の強度が初期値マップから読み出されて、本フィードバック制御の初期値Iとして用いられる。このように過去の移動経路における光源14の強度の適正値を記憶しておくことで、光量のフィードバック制御を早期に収束させる効果が期待できる。換言すると、次回以降の走行における光源14の強度調整をより短時間に完了させられる効果が期待できる。以上のように、本フィードバック制御によれば、路面撮影装置10の筐体26内の照度を路面環境変化に素早く追従させることができ、筐体26内の光源環境を均一に保つことが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 移動体、 2 路面、 10 路面撮影装置、 12 カメラ、 14 光源、 16 電子制御ユニット(ECU)、 18 天板、 20 プロセッサ、 22 記憶装置、 24 照度センサ、 26 筐体、 28、36、44 遮光板、 30 固定部、 32、 34 拡散板、 38 遮光板の上部、 40 遮光板の下部、 42 カバー、 46 偏光板