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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020875
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】製菓用改質剤
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/14 20060101AFI20250205BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20250205BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20250205BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20250205BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20250205BHJP
   A23G 3/36 20060101ALI20250205BHJP
   A23G 3/48 20060101ALI20250205BHJP
   A23G 3/44 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
A21D2/14
A21D2/36
A21D2/26
A21D10/00
A21D13/80
A23G3/36
A23G3/48
A23G3/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124500
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】田谷 大輔
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GB11
4B014GG02
4B014GG07
4B014GG10
4B014GG14
4B014GK09
4B014GK12
4B014GL03
4B014GL07
4B014GL11
4B014GP02
4B014GP04
4B014GP11
4B014GP14
4B014GP25
4B014GP27
4B014GQ06
4B032DB05
4B032DB06
4B032DB08
4B032DG02
4B032DK02
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK29
4B032DK30
4B032DK47
4B032DL20
4B032DP05
4B032DP12
4B032DP14
4B032DP50
4B032DP60
4B032DP71
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、しっとり感と口溶けが良く、ボリュームが向上したケーキ類を安定して製造することができる製菓用改質剤を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、ルテインを含有することを特徴とする、製菓用改質剤を提供する。また、上記課題を解決するために、グルテン、及び前記製菓用改質剤を含み、ルテインの含有量が、前記グルテン1000000質量部に対して0.2~20質量部であることを特徴とする、製菓用穀粉生地を提供する。本発明の製菓用改質剤によれば、グルテンを含有する穀粉生地に配合することにより、ルテインがグルテンを改質する。これにより、しっとり感と口溶けが良く、ボリュームが向上したケーキ類を安定して製造できる製菓用改質剤を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテインを含有することを特徴とする、製菓用改質剤。
【請求項2】
グルテン、及び、請求項1に記載の製菓用改質剤を含み、
ルテインの含有量が、前記グルテン1000000質量部に対して0.2~20質量部であることを特徴とする、製菓用穀粉生地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しっとり感と口溶けが良く、更にボリュームが向上したケーキ類を安定して製造することができる製菓用改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
泡立てた卵と穀粉を加え混ぜ、加熱して製造されるケーキ類としては、スポンジケーキやスナックケーキ、バターケーキ、シフォンケーキ、ロールケーキ等が挙げられ、しっとり感と口溶けが良く、さらにボリュームが向上したものが好まれる。しっとりとしたケーキ類を製造する場合、焼成温度を低めに設定し、ケーキ類内部の水分を保持させる方法がとられるが、ケーキ類のボリュームが低下し、さらにねちゃついた食感となり口溶けが悪くなる。一方、焼成温度を高くすることでボリュームを向上し、口溶けを向上させることはできるが、しっとりさが低下しぱさついた食感となってしまう。また、泡立てた卵と穀粉を加え混ぜる際、攪拌が不足すると穀粉が均一に分散せず、穀粉の塊ができることで商品価値のないケーキ類となるが、一方で過剰に攪拌すると穀粉生地中に含まれるグルテン内に共有結合が多く形成され、穀粉生地の粘度が高くなり、ボリュームが低下し、ねちゃついた食感となり口溶けが悪くなる。最適な攪拌条件は原料の水分量や鮮度、室温等で変化するため作業員の技術力によりケーキ類の品質が左右されてしまう。
したがって、しっとり感と口溶けが良く、更にボリュームが向上したケーキ類を安定して製造することが望まれている。
ケーキ類にしっとり感を付与する方法として、特定の油脂に生クリームを含有する練り込み用油中水型乳化組成物が提案されている(特許文献1)。
口溶けが良好でボリュームの向上したバターケーキを得る方法として、マルトース生成α-アミラーゼ、ヘミセルラーゼおよびホスホリパーゼを含有するバターケーキ用油脂組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-136973号公報
【特許文献2】特開2022-152863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、しっとりとした食感のケーキ類は得られるが、口溶け向上やボリューム向上効果は十分ではなく満足いくものではない。また特許文献2では口溶けは向上するが、しっとり感を向上させる効果はない。
したがって、本発明の課題は、しっとり感と口溶けが良く、ボリュームが向上したケーキ類を安定して製造することができる製菓用改質剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、カロチノイドであるルテインがグルテンを含有する穀粉生地においてグルテンを改質し、しっとり感と口溶けが良く、ボリュームが向上したケーキ類を安定して製造できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は下記[1]~[2]である。
[1]ルテインを含有することを特徴とする、製菓用改質剤。
[2]グルテン、及び、[1]記載の製菓用改質剤を含み、
ルテインの含有量が、前記グルテン1000000質量部に対して0.2~20質量部であることを特徴とする、製菓用穀粉生地。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製菓用改質剤によれば、グルテンを含有する穀粉生地に配合することにより、ルテインがグルテンを改質する。これにより、しっとり感と口溶けが良く、ボリュームが向上したケーキ類を安定して製造できる製菓用改質剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において製菓とは、全卵もしくは卵白と穀粉を含有する生地比重0.25~0.9g/mlの穀粉生地を焼成したケーキ類を製造することを意味し、製菓用とはケーキ類製造時に配合する原料を意味する。
本発明の製菓用改質剤は、ルテインを含有することを特徴とし、グルテンを含有する製菓用穀粉生地に配合することにより、ルテインがグルテンを改質し、しっとり感と口溶けが良く、ボリュームが向上したケーキ類が安定して製造できる。
以下、本発明の製菓用改質剤について詳細に説明する。
【0009】
[製菓用改質剤]
本発明の製菓用改質剤は、ルテインを含有することを特徴として、製菓用原料として用いるものである。
ルテインはカロチノイド系色素の1種類であり、生体内で網膜の黄斑部に局在することで、目に進入するエネルギーの高い光を吸収し、光によって生じる活性酸素を除去することで光に対する目の保護に有益な成分として知られている。本発明における製菓用改質剤は、フリー体のルテイン又はエステル体のルテインのうち少なくとも1種を含むものである。ルテインは、グルテンを含有する製菓用穀粉生地に配合し、混合することで、グルテンにルテインが結合し、油溶性のルテインが結合することでグルテンの保水性を向上させることでケーキ類のしっとり感を向上させるとともに、グルテン内の共有結合形成を阻害し、ケーキ類の口溶けとボリュームを向上させる。また穀粉を均一に分散させるため過剰に攪拌してもルテインのグルテン内の共有結合形成阻害効果により製菓用穀粉生地の粘度が高くなりにくく、口溶けやボリュームに悪影響が出ないため、作業員の技術力に左右されず一定品質のケーキ類を安定して製造することができる。色素であるルテインに、このようなケーキ類における効果があることはこれまで知られておらず、本発明は従来技術からは想定できない新たな効果を見出したものである。
【0010】
ルテインは、ケール、パセリ、ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、レタス、かぼちゃの皮などの植物由来、あるいは鶏卵などの動物由来のものいずれも使用することができるが、ルテイン含有量、風味の観点より植物由来のものが好ましく用いられる。
【0011】
本発明における製菓用改質剤は、ルテインを含有する食品素材からルテインを喪失しない方法で抽出、ペースト化、乾燥粉末化等の加工処理したものを使用することができる。ルテインは油溶性であるため、水分を含まない乾燥粉末もしくは油脂に溶解した状態で好ましく用いることができる。
本発明の製菓用改質剤にルテインを含有する乾燥粉末を用いる場合、水分含量は10質量%以下であることが好ましい。
また、乾燥粉末の粒径(D10%粒径、D90%粒径)は、乾燥粉末中のルテインが穀粉生地中に形成されたグルテンに作用しやすくするため、穀粉の粒径と同等のD10%粒径5μm以上、D90%粒径250μm以下が好ましい。ルテインを含有する乾燥粉末は、そのままもしくは小麦でんぷんなどと混合し所定の濃度に希釈して、本発明の製菓用改質剤とすることができる。
なお、本発明において「D10%粒径」(あるいは「D90%粒径」)とは、測定対象の粒子径分布を体積基準で測定し、小さい側の粒子頻度%の累積値が10%(あるいは90%)となる粒子径として定義される。
本発明の製菓用改質剤としてルテインを油脂に溶解した状態で用いる場合、ショートニング、W/O、O/Wいずれでも効果を発揮できる。ルテイン含有油脂として、例えばルテインを含む植物の乾燥粉末品を菜種油などの油と混合し、緩やかに加熱後、植物の乾燥粉末品をろ過もしくはろ過せずに、食用油脂中にルテインが溶解したものを用いることができる。
【0012】
本発明の製菓用改質剤中のルテイン含有量は1.5質量ppm~150質量ppmが好ましい。下限値は、より好ましくは3質量ppm以上であり、特に好ましくは5質量ppm以上である。上限値は、より好ましくは130質量ppm以下であり、特に好ましくは100質量ppm以下である。
ルテイン含有量がこの範囲であれば、製菓用穀粉生地中のグルテンと適切な量で混合することができ、本発明の効果をより発揮することができる。
【0013】
製菓用穀粉生地中に本発明の製菓用改質剤を含有させる際、製菓用穀粉生地中のグルテン1000000質量部に対してルテイン0.2~20.0質量部となるように配合することが好ましい。さらに好ましくは0.5~20.0質量部であり、最も好ましくは1.5~15.0質量部である。この範囲であれば、ルテインのグルテン改質効果を十分に発揮することができ、しっとり感、口溶けに優れたケーキ類を安定して製造することができる。
【0014】
ルテインの原料としては、市販品としては、例えば、「Lyc-O-Lutein 20% in Safflower Oil」(サンブライト株式会社輸入・販売)等が商業的に入手できる。またルテインを含む原料をペースト化もしくは乾燥粉末化し用いてもよいし、ペースト化もしくは粉末化した市販品を使用してもよい。例えば、ケール乾燥粉末(製品名「国産ケールパウダー」、こだま食品株式会社製)、パセリ乾燥粉末(製品名「パセリパウダー」、こだま食品株式会社社製)・(製品名「CSパセリY42」、エスビー食品株式会社製)、小松菜乾燥粉末(製品名「小松菜ファインパウダー」、三笠産業株式会社製)がルテインを含む野菜の粉末として商業的に入手できる。
【0015】
本発明におけるルテイン含有量の測定方法は、日本農林規格(JAS)0008:2019に準じて測定した。
【0016】
[製菓用穀粉生地]
本発明の製菓用穀粉生地とは、起泡させた全卵もしくは卵白、グルテン、穀粉及び、本発明の製菓用改質剤を含有し、焼成してケーキ類とするための生地である。本発明の製菓用穀粉生地は、すでに起泡させた全卵もしくは卵白を穀粉と混ぜ合わせて製造してもよいし、オールインミックス法のように起泡していない全卵もしくは卵白と穀粉やその他原料と混ぜ合わせながら全卵もしくは卵白を起泡させて製造してもよい。
本発明の製菓用穀粉生地中のグルテンは、穀粉に水、牛乳などの水分を含む液体を混ぜ合わせて、穀粉に含まれる成分から形成したものであっても、グルテンとして形成されているものを直接配合してもよい。穀粉原料としては、例えば、小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、さつまいも澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さご澱粉、くず澱粉等を1種類以上混合したものを用いることができる。本発明の製菓用改質剤がグルテンを改質し、しっとり感と口溶けが良く、更にボリュームが向上したケーキ類を安定して製造することができるという観点から、製菓用穀粉生地には、小麦粉などのグルテンを形成する穀粉を穀粉生地に含む必要があるが、グルテンを形成しない米粉などの穀粉を混合して用いても良い。
【0017】
本発明の製菓用穀粉生地中のグルテン含有量は、製菓用穀粉生地中の穀粉を100質量部に対して、好ましくは0.5~15質量部、より好ましくは1.0~13質量部、最も好ましくは1.5~11質量部である。
なお、本発明におけるグルテン含有量は、ISO 21415-2(2015)およびISO 21415-4(2006)に準じてドライグルテンとして測定した。
【0018】
本発明の製菓用改質剤は、製菓用穀粉生地中にどのように添加してもよいが、例えば卵をミキサーで起泡させる際に卵とともに製菓用改質剤を混合してもよいし、グルテン及び/又はグルテンを形成する穀粉と製菓用改質剤を混合し添加してもよい。製菓用改質剤に含まれるルテインがグルテンに作用するという観点から、製菓用改質剤はグルテン及び/又はグルテンを形成する穀粉と同時もしくは先に製菓用穀粉生地に添加するのがよい。
【0019】
本発明の製菓用穀粉生地中の製菓用改質剤の含有量は、穀粉100質量部に対して0.1~10質量部が好ましい。下限値として、より好ましくは0.5質量部以上である。上限値として、より好ましくは5質量部以下であり、最も好ましくは3質量部以下である。0.1質量部以上とすることにより、穀粉に対する製菓用改質剤の均一混合性に優れ、10質量部以下とすることで作業性良くケーキ類を製造できる。
なお、製菓用改質剤の作用効果を十分に発揮するという観点では、グルテンを含有する製菓用穀粉生地中の製菓用改質剤の好ましい配合量として、上述した通りである。
【0020】
本発明の製菓用穀粉生地は、共立法、別立法、オールインミックス法、シュガーバッター法、フラワーバッター法等いずれの製菓法にも使用することができる。また、製菓用穀粉生地を作製し、冷凍および冷蔵工程を経る場合、焼成後冷凍を経る場合等、いずれの工程にも使用できる。
【0021】
本発明の製菓用穀粉生地を焼成して得られるケーキ類には、スポンジケーキ、ロールケーキ、スナックケーキ、バターケーキ、フルーツケーキ、パウンドケーキ、マドレーヌ、フィナンシェ、シフォンケーキ、ブッセ、バウムクーヘン、マカロン、どら焼き、カステラ等が挙げられる。
【0022】
本発明の製菓用穀粉生地は、乳化剤、油脂類、加工澱粉、乳製品、食塩、糖類、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類等)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー、レーズン等の乾燥果実等を本願発明の効果を損なわない範囲で任意に用いることができる。
【0023】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0024】
[製菓用改質剤の製造]
(実施例1-1~1-3、比較例1-1)
表1に示す配合組成をベースに以下の方法により実施例1-1を製造した。すなわちルテイン含有オイル(製品名:Lyc-O-Lutein 20% in Safflower Oil、サンブライト株式会社輸入・販売、ルテイン含有量20g/100g)を用い、ルテイン含有オイル100g、菜種油9900gを混合、攪拌しルテイン含有オイル100倍希釈品(ルテイン含有量2000質量ppm)を得た。さらに、ルテイン含有オイル100倍希釈品90g、菜種油9910gを混合、攪拌して、製菓用改質剤(ルテイン含有量18質量ppm)を得た。
同様に、実施例1-2、1-3、比較例1-1についても表1に示す配合組成にて製菓用改質剤を製造した。
【0025】
(実施例2-1~2-5、比較例2-1)
市販されているパセリおよびレタスを粉末化し、ルテインの原料として製菓用改質剤に用いた。パセリ、レタスをそれぞれ100g用意し、真空凍結乾燥機(AdVantagePLUS)にて水分が1%以下となるまで乾燥させた。その後、高速カッターミキサーにて粉砕をし、50メッシュの篩にてふるいがけをして、パセリおよびレタスの乾燥粉末を得た。それぞれのルテイン含有量、D90%、D10%粒径は、パセリ乾燥粉末(900質量ppm、D90%粒径150μm、D10%粒径50μm)、レタス乾燥粉末(180質量ppm、D90%粒径240μm、D10%粒径80μm)であった。また市販されているケール乾燥粉末(製品名「国産ケールパウダー」、こだま食品株式会社製)もルテイン含有量および粒径を測定したところ、ケール乾燥粉末(2800質量ppm、D90%粒径50μm、D10%粒径10μm)であった。
これら乾燥粉末を使用し、表2に示す配合組成にて実施例2-1を製造した。すなわちパセリ乾燥粉末2gと小麦でんぷん98gを均一分散させ製菓用改質剤(ルテイン含有量18質量ppm)を得た。
同様に実施例2-2~2-5、比較例2-1についても表2に示す配合組成をベースに製菓用改質剤を上記方法で製造した。なお、乾燥粉末のD90%およびD10%粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD―2100(株式会社島津製作所製)を用いて屈折率パラメーター1.60-0.10iの条件にて測定した。
【0026】
実施例1-1~1-3、2-1~2-5、比較例1-1、2-1の製菓用改質剤について、以下の方法で製菓用穀粉生地およびケーキ類を製造し、しっとり感、口溶け、ボリューム、品質の安定性を評価した。
【0027】
[製菓用穀粉生地の製造]
表3に示す配合により製菓用穀粉生地を製造した。具体的には、全卵200g、上白糖100g、製菓用改質剤1gをホイッパーで低速1分間、高速5分間、中速3分間攪拌し全卵を起泡させた。その後、篩った小麦粉(日本製粉(株)製:商品名:バイオレット)100gとBP(オリエンタル酵母工業(株)製:商品名:ベーキングパウダーFS)1gを加え低速1分間攪拌し、菜種油30gを加え低速1分間攪拌して製菓用穀粉生地を得た。この製菓用穀粉生地は生地比重0.55g/mlであった。
なお、製菓用穀粉生地中のグルテン含有量は、小麦粉100gあたり7.3gであった。
【0028】
[ケーキ類(スポンジケーキ)の製造]
製菓用穀粉生地を6寸デコ台に350g流し込み、上火170℃、下火150℃のオーブンにて35分間焼成した。その後オーブンから取り出し、開放系にて静置し室温になるまで2時間放冷した。その後デコ台から出してビニール袋に入れ密封し、20℃にて保存した。焼成翌日にしっとり感、口溶け、ボリューム評価に使用した。
【0029】
(しっとり感の評価方法)
スポンジケーキの焼成表面部(上面、側面、底面)を2センチメートルの幅で切り捨て、スポンジケーキの中心部を取り出した。さらに取り出したスポンジケーキの中心部を1辺2センチの正方形にカットすることで、1辺2センチの立方体型のスポンジケーキを得た。それらを食した際のしっとり感を、10人のパネラーの官能評価にて評価した。本発明におけるしっとり感とは、ケーキ類を摂食した際、口の唾液がケーキ類に奪われない状態をいう。比較例1-1もしくは比較例2-1の製菓用改質剤を使用した場合のスポンジケーキを基準とし、非常にしっとり感がある(5)、少ししっとり感がある(4)、同等(3)、少しパサつく(2)、パサつく(1)として評価した。パネラー10人の官能評価の最も多かった評点をしっとり感の評点とし、4以上を合格とした。なお、評点が同一の場合、低い方をしっとり感の評点とした。
【0030】
(口溶けの評価方法)
しっとり感の評価方法と同様に、1辺2センチの立方体型のスポンジケーキを用意し、それらを食した際の口溶けを、10人のパネラーの官能評価にて評価した。本発明における口溶けとは、ケーキ類を摂食した際、口の中でさらっとケーキ類がほぐれる状態をいう。比較例1-1もしくは比較例2-1の製菓用改質剤を使用した場合のスポンジケーキを基準とし、非常に口溶けがよい(5)、少し口溶けがよい(4)、同等(3)、少し口溶けが悪い(2)、非常に口溶けが悪い(1)として評価した。パネラー10人の官能評価の最も多かった評点を口溶けの評点とし、4以上を合格とした。なお、評点が同一の場合、低い方を口溶けの評点とした。
【0031】
(ボリューム評価方法)
スポンジケーキの比容積を各10個測定し、その平均比容積をボリュームの指標とした。スポンジケーキの比容積は「3D Laser volume measurement selnac win VM2100」(Astec社製)を用いて測定した。比較例1-1もしくは比較例2-1の製菓用改質剤を使用した場合のスポンジケーキの比容積を100とした場合の相対値を基準とした。
なお、比較例1-1の製菓用改質剤を使用した場合の比容積は4.8cc/g、比較例2-1の製菓用改質剤を使用した場合の比容積は4.7cc/g、であった。
比容積の相対値が110以上の場合を(5)、105以上、110未満の場合を(4)、100以上、105未満の場合を(3)、95以上、100未満を(2)、95未満を(1)として評価し4以上を合格とした。
【0032】
(品質安定性の評価方法)
製菓用穀粉生地を所定方法で製造したのち、さらに中速で30秒攪拌した場合のスポンジケーキの口溶けおよびボリュームを評価に用いた。
・口溶け評価
上記口溶け評価方法と同様にしてパネラー10人による官能評価にて評価した。各製菓用改質剤を使用し、所定方法で得た穀粉生地で製造した各実施例、比較例のスポンジケーキを基準とし、さらに中速で30秒攪拌して得た穀粉生地で製造したスポンジケーキにつき、それぞれ1辺2センチの立方体型にして摂食した場合の口溶けを比較評価した。基準とするスポンジケーキに対して、少し口溶けがよいか同等(4)、少し口溶けが悪い(3)、口溶けが悪い(2)、非常に口溶けが悪い(1)として評価した。パネラー10人の官能評価の最も多かった評点を品質安定性(口溶け)の評点とし、3以上を合格とした。なお、評点が同一の場合、低い方を品質安定性(口溶け)の評点とした。
・ボリューム評価
上記ボリューム評価方法と同様にしてスポンジケーキの平均比容積にて評価した。各製菓用改質剤を使用し、所定方法で得た穀粉生地で製造した各実施例、比較例のスポンジケーキ10個の平均比容積を基準とし、さらに中速で30秒攪拌して得た穀粉生地で製造したスポンジケーキ10個の平均比容積のボリュームを比較評価した。基準とするスポンジケーキの平均比容積を100としたときの、平均比容積の相対値が99以上の場合を(4)、97以上、99未満の場合を(3)、95以上、97未満の場合を(2)、95未満を(1)として評価し、品質安定性(ボリューム)の評点とし3以上を合格とした。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
(評価結果)
表1、表2より、製菓用改質剤によって、ケーキ類のしっとり感、口溶け、ボリュームが向上することが分かる。