IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トヨックスの特許一覧

<>
  • 特開-管体 図1
  • 特開-管体 図2
  • 特開-管体 図3
  • 特開-管体 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020882
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】管体
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/12 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
F16L11/12 J
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124510
(22)【出願日】2023-07-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大蔵 優
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA43
3H111CB03
3H111CB04
3H111CB14
3H111CC07
3H111DA21
3H111DB03
3H111DB10
3H111DB21
(57)【要約】
【課題】
簡単な構造で管体内面の摩耗状況と管体内の流れ状況を共に外から目視確認することのできる管体を提供することを目的とする。
【解決手段】
摩耗検知機能を有する管体であって、前記管体は、透明または半透明の合成樹脂製の内管が複数積層されて構成されており、積層された内管のうち、少なくとも1つの内管は、部分的に軸方向に着色された着色ラインを有することを特徴とする管体によって、課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗検知機能を有する管体であって、
前記管体は、透明または半透明の合成樹脂製の内管が複数積層されて構成されており、
積層された内管のうち、少なくとも1つの内管は、部分的に軸方向に着色された着色ラインを有する
ことを特徴とする管体。
【請求項2】
摩耗検知機能を有する管体であって、
前記管体は、透明または半透明の合成樹脂製の内管が複数積層されて構成されており、
積層された内管の幾つかは、部分的に軸方向に着色された着色ラインをそれぞれ有し、かつ、それぞれの前記着色ラインが周方向に異なる位置に配置されている
ことを特徴とする管体。
【請求項3】
それぞれの前記着色ラインのうち、隣り合うラインが、側面視において隣接して配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の管体。
【請求項4】
それぞれの前記着色ラインのうち、隣り合うラインが、側面視において離間して配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の管体。
【請求項5】
それぞれの前記着色ラインのうち、隣り合うラインが、異なる色で着色されている
ことを特徴とする請求項2に記載の管体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工場や加工場等で用いられる固形物等の摩耗性物質と液体の混合物であるスラリー、粉体、粒体、ペレット等を圧縮空気等の流体によって輸送する際、又は粒体や粉体が含まれた流動物を輸送する際等に用いられる、ホースやチューブ等からなる管体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管体については、摩耗性物質の接触に伴って、ホース壁面内面側が経時的に摩耗するという事態が生じ、ホース壁面内面側の摩耗が進行すると、最終的には、ホースに亀裂や破断が生じて漏出事故や生産トラブルを引き起こすといった問題があった。かといって、交換についての運用を安全側に振り過ぎると、十分に使用可能なホースを早めの段階で交換してしまうという無駄が生じていた。また、摩耗性物質や使用条件によっては、例えば、高圧高速で流動することによって内層の摩耗が早く進行することがあり、摩耗により内層が消失して製品としての寿命限界ともいえる補強層や外層に達するまで進行すると、耐圧力が極端に低下してホース本体がバーストする等、深刻な事態となることもあった。
【0003】
これらの事態に対処するべく、すなわち、摩耗を検知できるようにするべく、内管の外周面部分に軸方向のラインがあり、当該ラインが摩耗の進行により内面に露出していないか否かを内側からの目視で確認できるようにしたホースがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-78008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のホースは、内面に照明を当てて点検を行うものであるため、点検が煩雑となり、これを怠る懸念があった。このため、特に、摩耗の進行が早い使用状況においては、最内層の摩耗が進行しホース交換時期を検知する頃には、既に亀裂や破断が生じてしまっていて漏出事故を引き起こしてしまったり、酷い時には、ホース本体のバーストを招いてしまったりするリスクが高いものであった。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、簡単な構造で管体内面の摩耗状況と管体内の流れ状況を共に目視確認することのできる管体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために本発明は、摩耗検知機能を有する管体であって、前記管体は、透明または半透明の合成樹脂製の内管が複数積層されて構成されており、積層された内管のうち、少なくとも1つの内管は、部分的に軸方向に着色された着色ラインを有することを特徴とする。
また、上記目的を達成するために本発明は、摩耗検知機能を有する管体であって、前記管体は、透明または半透明の合成樹脂製の内管が複数積層されて構成されており、積層された内管の幾つかは、部分的に軸方向に着色された着色ラインをそれぞれ有し、かつ、それぞれの前記着色ラインが周方向に異なる位置に配置されていることを特徴とする。
ここで、「積層された内管の幾つかは、部分的に軸方向に着色された着色ラインをそれぞれ有し」とは、例えば、積層された内管が3つである場合に、その中の2つが着色されており、残りの1つは着色されない態様と、3つの全てが着色されている態様の双方を含むものである。ただし、1つしか着色されない態様は含まないものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態Aに係る管体の全体構成を示す説明図であり、(a)が正面図、(b)が斜視図、(c)が側断面図、(d)~(f)が摩耗進行に応じた側面図である。
図2】本発明の実施形態Bに係る管体の全体構成を示す説明図であり、(a)が正面図、(b)が斜視図、(c)が側断面図、(d)~(f)が摩耗進行に応じた側面図である。
図3】本発明の実施形態Cに係る管体の全体構成を示す説明図であり、(a)が正面図、(b)が斜視図、(c)が側断面図、(d)~(f)が摩耗進行に応じた側面図である。
図4】本発明の実施形態Dに係る管体の全体構成を示す説明図であり、(a)が正面図、(b)が一部を透視化した斜視図、(c)が側断面図、(d)~(f)が摩耗進行に応じた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態A)
本発明の実施形態Aに係る管体Aは、摩耗性物質と液体の混合物であるスラリー、粉体、粒体、ペレット等を圧縮空気等の流体によって輸送するためなどに用いられるホースやチューブなどからなり、摩耗検知機能を有している。
【0010】
図1は、本発明の実施形態Aに係る管体の全体構成を示す説明図であり、図1(a)が正面図、図1(b)が斜視図、図1(c)が側断面図、図1(d)~(f)が摩耗進行に応じた側面図である。
【0011】
本発明の実施形態Aに係る管体Aは、図1(a)及び図1(b)に示されるように、透明材料又は半透明材料からなる合成樹脂製の管としての第1管1A、第2管2A、第3管3Aが、この順で内側から外側に積層されることで構成されている。すなわち、材料としては、無色透明なものに限らず、後述する着色ラインを、管体Aの外から目視で確認可能であれば、透明に比べて透明度が低い半透明や有色透明であっても構わない。
【0012】
各管は、部分的に軸方向に着色された着色ラインを、それぞれ有している。すなわち、第1管1Aは第1着色ライン11Aを有し、第2管2Aは第2着色ライン21Aを有し、第3管3Aは第3着色ライン31Aを有している。それぞれの管は、ポリ塩化ビニル等の押出成形に適した熱可塑性樹脂を共押出によって、透明ないし半透明部分と着色ライン部分とが同時に成形されることによって得られるようにしたものである。熱可塑性樹脂としては、汎用プラスチック、100℃以上の耐熱性を有するエンジニアリングプラスチック、概ね150℃以上の耐熱性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックが、用途に応じて、適宜に採用される。また、摩耗を防ぐという観点で、特に、最内層の管については、摩耗に強いウレタン系統の材料を採用するのが好ましい。
【0013】
実施形態Aにおいて、第1着色ライン11A、第2着色ライン21A、第3着色ライン31Aは、図1(a)に示されるように、僅かに間隔を空ける格好で隣り合うように配置されている。ここで、同一ハッチングで示されるように、第1着色ライン11A、第2着色ライン21A、第3着色ライン31Aは全て同じ色である。ただし、第3管3Aの第3着色ライン31Aは導電性物質で形成されたカーボンラインとされている。すなわち、第3着色ライン31Aは、摩耗識別のための機能とアースとしての機能との双方を担っている。
【0014】
第3管3Aの外側には、補強層4Aが螺旋状に設けられている。材質としては、例えばポリエステルやナイロン(登録商標)などの透明な合成樹脂で形成されたモノフィラメント(monofilament:単繊維)やマルチフィラメント(multifilament)などからなる補強線材の複数本か又は単数本のブレードからなる補強糸などがある。補強層4Aの形状としては、図1(b)及び図1(c)に示される断面円形の他、断面楕円形、断面略矩形、径方向外側の先端が断面円弧状の断面かまぼこ形や断面略台形など、種々の形状を用いることが可能である。
【0015】
このような本発明の実施形態Aに係る摩耗検知機能付きの管体Aによると、粒体や粉体などの固形物又は粒体や粉体が含まれた流動物を輸送する際に、管体Aの内面が固形物や流動物の接触により、第1管1Aの内面の摩耗度合に応じて第1着色ライン11Aも同時に削られることになる。やがて、第1着色ライン11Aが削られきって消失すると、次に、第2管2Aが削られ始めることになり、第2管2Aの内面の摩耗度合に応じて第2着色ライン21Aも同時に削られることになる。やがて、第2着色ライン21Aが削られきって消失すると、残るラインは、第3管3Aの第3着色ライン31Aだけとなる。
【0016】
図1(d)~図1(f)は、本発明の実施形態Aに係る管体の側面図であるが、摩耗進行に応じた各段階を示している。図1(d)は、管体Aの使用開始時を示した図であって、側面視において、第1着色ライン11A、第2着色ライン21A、第3着色ライン31Aの全てを確認することができる。図1(e)は、管体Aの摩耗が一定程度進んだ状態を示した図であって、側面視において、第1着色ライン11Aは消失し、第2着色ライン21Aと第3着色ライン31Aだけが見える状態となっている。図1(f)は、管体Aの摩耗が使用限度を超えてしまった状態を示した図であって、側面視において、第1着色ライン11A及び第2着色ライン21Aは消失し、第3着色ライン31Aだけしか見えない状態となってしまっている。
【0017】
このように、着色ラインの合計幅で摩耗具合を識別できるようになっている。図1(d)~(f)に示されるように、摩耗の進行が進むにつれて、着色ラインの幅が狭くなっていくことによって、摩耗の進み具合を外から目視で確認することができる。その意味では、各着色ラインは隣接するようにして配列していても良いのではあるが、点検者(観察者)が途中で交代した場合など、経時的な変化を正しく認識できない可能性があるため、隣り合う各着色ラインは、側面視において離間して配置されている。このようにすることによって、例えば、第1着色ライン11Aと第2着色ライン21Aとの間の透明部分(ないし半透明部分)を確認できるか否かに応じて、摩耗の進行具合を正確に認識することが可能となる。なお、実施形態Aにおいては、第3着色ライン31Aだけしか見えない状態、すなわち、着色ライン間の隙間を確認できない状態が交換時期であるように設定されている。
【0018】
各着色ラインは、部分的に軸方向に着色されているので、管体Aの周方向における大部分が透明材料又は半透明材料で形成されることになる。よって、各着色ラインが目視の妨げとならず、管体A内を流れる輸送物の流れ状況を明確に目視確認することができる。その結果、管体A内における輸送物の詰まり事故などをより確実に防止できて、安全性の向上が図れる。
【0019】
そして、第3着色ライン31Aだけしか見えない状態となることを確認してから交換を行うことによって、早めに交換してしまうという無駄を生じさせることがない。勿論、摩耗識別の見落としを防止することができ、亀裂や破断が生じてしまっていて漏出事故を引き起こしてしまったり、ホース本体のバーストを招いてしまったりする等の事態を生じさせることがないことは言うまでもない。
【0020】
(実施形態B)
次に、本発明の実施形態Bに係る管体Bについて説明する。本発明の実施形態Bに係る管体Bは、摩耗性物質と液体の混合物であるスラリー、粉体、粒体、ペレット等を圧縮空気等の流体によって輸送するためなどに用いられるホースやチューブなどからなり、摩耗検知機能を有している。
【0021】
図2は、本発明の実施形態Bに係る管体の全体構成を示す説明図であり、図2(a)が正面図、図2(b)が斜視図、図2(c)が側断面図、図2(d)~(f)が摩耗進行に応じた側面図である。
【0022】
本発明の実施形態Bに係る管体Bは、図2(a)及び図2(b)に示されるように、透明材料又は半透明材料からなる合成樹脂製の管としての第1管1B、第2管2B、第3管3Bが、この順で内側から外側に積層されることで構成されている。すなわち、材料としては、無色透明なものに限らず、後述する着色ラインを、管体Bの外から目視で確認可能であれば、透明に比べて透明度が低い半透明や有色透明であっても構わない。
【0023】
各管は、部分的に軸方向に着色された着色ラインを、それぞれ有している。すなわち、第1管1Bは第1着色ライン11Bを有し、第2管2Bは第2着色ライン21Bを有し、第3管3Bは第3着色ライン31Bを有している。それぞれの管は、ポリ塩化ビニル等の押出成形に適した熱可塑性樹脂を強押出によって、透明ないし半透明部分と着色ライン部分とが同時に成形されることによって得られるようにしたものである。熱可塑性樹脂としては、汎用プラスチック、100℃以上の耐熱性を有するエンジニアリングプラスチック、概ね150℃以上の耐熱性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックが、用途に応じて、適宜に採用される。また、摩耗を防ぐという観点で、特に、最内層の管については、摩耗に強いウレタン系統の材料を採用するのが好ましい。
【0024】
実施形態Bにおいて、第1着色ライン11B、第2着色ライン21B、第3着色ライン31Bは、図2(a)に示されるように、隣接して配置されている。ただし、これは側面視において隣接して見えるようになっていれば良いのであって、例えば、第1着色ライン11Bが第2着色ライン21Bの領域まで延びて両者がオーバーラップされるようになっても良い。同様に、第2着色ライン21Bが第3着色ライン31Bの領域まで延びて両者がオーバーラップされるようになっても良い。また、異なるハッチングで示されるように、第1着色ライン11B、第2着色ライン21B、第3着色ライン31Bは全て異なる色である。ただし、第3管3Bの第3着色ライン31Bは導電性物質で形成されたカーボンラインとされている。すなわち、第3着色ライン31Bは、摩耗識別のための機能とアースとしての機能との双方を担っている。なお、第1着色ライン11Bと第3着色ライン31Bは同じ色で、第2着色ライン21Bだけ異なる色としても良い。また、積層深さに応じて着色の濃淡を調整したり、色替えで識別具合も調整することができ、色を濃くしても管体内の流れ状況を外から目視できる。
【0025】
第3管3Bの外側には、補強層4Bが螺旋状に設けられている。材質としては、例えばポリエステルやナイロン(登録商標)などの透明な合成樹脂で形成されたモノフィラメント(monofilament:単繊維)やマルチフィラメント(multifilament)などからなる補強線材の複数本か又は単数本のブレードからなる補強糸などがある。補強層4Bの形状としては、図2(b)及び図2(c)に示される断面円形の他、断面楕円形、断面略矩形、径方向外側の先端が断面円弧状の断面かまぼこ形や断面略台形など、種々の形状を用いることが可能である。
【0026】
このような本発明の実施形態Bに係る摩耗検知機能付きの管体Bによると、粒体や粉体などの固形物又は粒体や粉体が含まれた流動物を輸送する際に、管体Bの内面が固形物や流動物の接触により、第1管1Bの内面の摩耗度合に応じて第1着色ライン11Bも同時に削られることになる。やがて、第1着色ライン11Bが削られきって消失すると、次に、第2管2Bが削られ始めることになり、第2管2Bの内面の摩耗度合に応じて第2着色ライン21Bも同時に削られることになる。やがて、第2着色ライン21Bが削られきって消失すると、残るラインは、第3管3Bの第3着色ライン31Bだけとなる。
【0027】
図2(d)~図2(f)は、本発明の実施形態Bに係る管体の側面図であるが、摩耗進行に応じた各段階を示している。図2(d)は、管体Bの使用開始時を示した図であって、側面視において、第1着色ライン11B、第2着色ライン21B、第3着色ライン31Bの全てを確認することができる。図2(e)は、管体Bの摩耗が一定程度進んだ状態を示した図であって、側面視において、第1着色ライン11Bは消失し、第2着色ライン21Bと第3着色ライン31Bだけが見える状態となっている。図2(f)は、管体Bの摩耗が使用限度を超えてしまった状態を示した図であって、側面視において、第1着色ライン11B及び第2着色ライン21Bは消失し、第3着色ライン31Bだけしか見えない状態となってしまっている。
【0028】
このように、着色ラインの合計幅で摩耗具合を識別できるようになっている。図2(d)~(f)に示されるように、摩耗の進行が進むにつれて、着色ラインの幅が狭くなっていくことによって、摩耗の進み具合を外から目視で確認することができる。このことに加えて、各着色ラインの色を異ならせているため、摩耗の進み具合がより明確に認識できるようになる。第1着色ライン11B、第2着色ライン21B、第3着色ライン31Bを、それぞれ、青、黄色、赤等として着色するようにすれば、青が見えている内は安全、青が無くなり、黄色と赤だけとなれば注意が必要、赤だけとなれば危険状態で交換が必要などといった直感的な認識を点検者(観察者)に与えることができる。このように、実施形態Bにおいては、第3着色ライン31Bだけしか見えない状態、すなわち、着色ラインの色と幅で交換時期が確認できるように設定されている。なお、配色の青黄色赤については、飽くまで一例であり、その他の配色とすることが可能である。ただし、内側の着色ラインの方が摩耗進行の目安という点では大きな意味を有するので、濃いめの色とした方が有利である。
【0029】
各着色ラインは、部分的に軸方向に着色されているので、管体Bの周方向における大部分が透明材料又は半透明材料で形成されることになる。よって、各着色ラインが目視の妨げとならず、管体B内を流れる輸送物の流れ状況を明確に目視確認することができる。その結果、管体B内における輸送物の詰まり事故などをより確実に防止できて、安全性の向上が図れる。第1~第3着色ラインを周方向に複数配置することで、確認を容易に行うことができる。図2(a)(b)は、相対的に2組の着色ラインを配置させる例である。
【0030】
そして、色の変化も見極めながら、第3着色ライン31Bだけしか見えない状態となることを確認してから交換を行うことによって、早めに交換してしまうという無駄を生じさせることがない。勿論、摩耗識別の見落としを防止することができ、亀裂や破断が生じてしまっていて漏出事故を引き起こしてしまったり、ホース本体のバーストを招いてしまったりする等の事態を生じさせることがないことは言うまでもない。
【0031】
(実施形態C)
次に、本発明の実施形態Cに係る管体Cについて説明する。本発明の実施形態Cに係る管体Cは、摩耗性物質と液体の混合物であるスラリー、粉体、粒体、ペレット等を圧縮空気等の流体によって輸送するためなどに用いられるホースやチューブなどからなり、摩耗検知機能を有している。
【0032】
図3は、本発明の実施形態Cに係る管体の全体構成を示す説明図であり、図3(a)が正面図、図3(b)が斜視図、図3(c)が側断面図、図3(d)~(f)が摩耗進行に応じた側面図である。
【0033】
本発明の実施形態Cに係る管体Cは、図3(a)及び図3(b)に示されるように、透明材料又は半透明材料からなる合成樹脂製の管としての第1管1C、第2管2C、第3管3Cが、この順で内側から外側に積層されることで構成されている。すなわち、材料としては、無色透明なものに限らず、後述する着色ラインを、管体Cの外から目視で確認可能であれば、透明に比べて透明度が低い半透明や有色透明であっても構わない。
【0034】
3つ存在する管のうち、第2管2Cだけが、部分的に軸方向に着色された着色ラインを有している。すなわち、第2管2Cは着色ライン21Cを有しているものの、第1管1C及び第3管3Cは着色ラインを有していない。第2管2Cは、ポリ塩化ビニル等の押出成形に適した熱可塑性樹脂を強押出によって、透明ないし半透明部分と着色ライン部分とが同時に成形されることによって得られるようにしたものであるが、第1管1C及び第3管3Cは、単一材料での押出成形によるものである。熱可塑性樹脂としては、汎用プラスチック、100℃以上の耐熱性を有するエンジニアリングプラスチック、概ね150℃以上の耐熱性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックが、用途に応じて、適宜に採用される。また、摩耗を防ぐという観点で、摩耗に強いウレタン系統の材料を採用するのが好ましい。
【0035】
実施形態A及び実施形態Bにおいては、第3管3Cの外側に補強層4Cが螺旋状に設けられていたが、実施形態Cでは補強材は設けられてない。また、第3管3Cが着色ラインを有していないことから理解できるように、カーボンラインは存在しない。実施形態Cは補強材のない、単純な積層構造の管体であり、見た目としてはスッキリしたものとされている。なお、摩耗検知機能という観点とは別に、第3管3Cにカーボンラインを設けることも勿論可能ではある。
【0036】
このような本発明の実施形態Cに係る摩耗検知機能付きの管体Cによると、粒体や粉体などの固形物又は粒体や粉体が含まれた流動物を輸送する際に、管体Cの内面が固形物や流動物の接触により、第1管1Cが削られることになる。やがて、第2管2Cが削られ始めることになり、第2管2Cの内面の摩耗度合に応じて着色ライン21Cも同時に削られることになり、その色合い(濃度)は、段々と薄いものとなっていく。
【0037】
図3(d)~図3(f)は、本発明の実施形態Cに係る管体の側面図であるが、摩耗進行に応じた各段階を示している。図3(d)は、管体Cの使用開始時を示した図であって、側面視において、着色ライン21Cをハッキリと確認することができる。図3(e)は、管体Cの摩耗が一定程度進んだ状態を示した図であって、側面視において、21C’は、最初の頃の着色ライン21Cよりも薄く見えている。図3(f)は、管体Cの摩耗が使用限度を超えてしまった状態を示した図であって、側面視において、着色ライン21Cは消失してしまっている。
【0038】
このように、着色ライン21Cの変化で摩耗具合を外から目視で識別できるようになっている。図3(d)~(f)に示されるように、摩耗の進行が進むにつれて、着色ラインの様子が変化することによって、摩耗の進み具合を確認することができる。
【0039】
着色ライン21Cは、部分的に軸方向に着色されているので、管体Cの周方向における大部分が透明材料又は半透明材料で形成されることになる。よって、着色ライン21Cが目視の妨げとならず、管体C内を流れる輸送物の流れ状況を明確に目視確認することができる。その結果、管体C内における輸送物の詰まり事故などをより確実に防止できて、安全性の向上が図れる。
【0040】
そして、着色ライン21Cが見えなくなる状態となることを確認してから交換を行うことによって、早めに交換してしまうという無駄を生じさせることがない。勿論、摩耗識別の見落としを防止することができ、亀裂や破断が生じてしまっていて漏出事故を引き起こしてしまったり、ホース本体のバーストを招いてしまったりする等の事態を生じさせることがないことは言うまでもない。
【0041】
(実施形態D)
次に、本発明の実施形態Dに係る管体Dについて説明する。本発明の実施形態Dに係る管体Dは、摩耗性物質と液体の混合物であるスラリー、粉体、粒体、ペレット等を圧縮空気等の流体によって輸送するためなどに用いられるホースやチューブなどからなり、摩耗検知機能を有している。
【0042】
図4は、本発明の実施形態Dに係る管体の全体構成を示す説明図であり、図4(a)が正面図、図4(b)が一部を透視化した斜視図、図4(c)が側断面図、図4(d)~(f)が摩耗進行に応じた側面図である。
【0043】
本発明の実施形態Dに係る管体Dは、図4(a)及び図4(b)に示されるように、透明材料又は半透明材料からなる合成樹脂製の管としての第1管1D、第2管2Dが、この順で内側から外側に積層されることで構成されている。すなわち、材料としては、無色透明なものに限らず、後述する着色ラインを、管体Dの外から目視で確認可能であれば、透明に比べて透明度が低い半透明や有色透明であっても構わない。
【0044】
2つ存在する管のうち、第2管2Dだけが、部分的に軸方向に着色された着色ラインを有している。すなわち、第2管2Dは着色ライン21Dを有しているものの、第1管1Dは着色ラインを有していない。第2管2Dは、ポリ塩化ビニル等の押出成形に適した熱可塑性樹脂を強押出によって、透明ないし半透明部分と着色ライン部分とが同時に成形されることによって得られるようにしたものであるが、図4(a)の正面図及び図4(b)の一部を透視化した斜視図に示されるように、着色ライン21Dは、第2管2Dの厚み全域には配置されていない。すなわち、第2管2Dの内側には配置されているものの、外側には配置されていない。熱可塑性樹脂としては、汎用プラスチック、100℃以上の耐熱性を有するエンジニアリングプラスチック、概ね150℃以上の耐熱性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックが、用途に応じて、適宜に採用される。また、摩耗を防ぐという観点で、摩耗に強いウレタン系統の材料を採用するのが好ましい。
【0045】
このような本発明の実施形態Dに係る摩耗検知機能付きの管体Dによると、粒体や粉体などの固形物又は粒体や粉体が含まれた流動物を輸送する際に、管体Dの内面が固形物や流動物の接触により、第1管1Dが削られることになる。やがて、第2管2Dが削られ始めることになるが、内側が削られている最初の頃は、着色ライン21Dは削られない。ある時点から、着色ライン21Dが削られることになる。
【0046】
図4(d)~図4(f)は、本発明の実施形態Dに係る管体の側面図であるが、摩耗進行に応じた各段階を示している。図4(d)は、管体Dの使用開始時を示した図であって、側面視において、着色ライン21Dをハッキリと確認することができる。図4(e)は、管体Dの摩耗が一定程度進んだ状態を示した図であって、側面視において、21D’は、最初の頃の着色ライン21Dよりも薄く見えている。図4(f)は、管体Dの摩耗が使用限度を超えてしまった状態を示した図であって、側面視において、着色ライン21Dは消失してしまっている。しかし、第2管2Dは、まだ、かろうじて残った状態である。
【0047】
このように、着色ライン21Dの変化で摩耗具合を識別できるようになっている。図4(d)~(f)に示されるように、摩耗の進行が進むにつれて、着色ラインの様子が変化することによって、摩耗の進み具合を確認することができる。
【0048】
着色ライン21Dは、部分的に軸方向に着色されているので、管体Dの周方向における大部分が透明材料又は半透明材料で形成されることになる。よって、着色ライン21Dが目視の妨げとならず、管体D内を流れる輸送物の流れ状況を明確に目視確認することができる。その結果、管体D内における輸送物の詰まり事故などをより確実に防止できて、安全性の向上が図れる。
【0049】
そして、着色ライン21Dが見えなくなる状態となることを確認してから交換を行うことによって、早めに交換してしまうという無駄を生じさせることがない。実施形態A~Cに比べて、実施形態Dは摩耗の進行が比較的ゆっくりとなる使用状況に対応した実施形態となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態に係る飲料を含む食品、化粧品、香料、医薬品やその他の製造工場や加工工場等で用いられる固形物等の摩耗性物質と液体の混合物であるスラリー、粉体、粒体、ペレット等の流動物を輸送する摩耗検知機能を有する管体について、図面を参照して詳述し、その構造について説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。すなわち、着色ラインの配置については、実施形態A~Cの配置バリエーションが示すように、自由に設定できるものである。例えば、図示では、2箇所に着色ラインを設けたが、3箇所や4箇所に設けても良い。ただし、管体内の流れ状況を確認したいという要求仕様が存在することから、着色ラインが複数の層に及び場合には、3箇所や4箇所とするのは適切ではない。しかし、1層にしか着色ラインが存在しない場合には、4箇所に配置することも十分可能である。
【符号の説明】
【0051】
A 管体
1A 第1管
11A 第1着色ライン
2A 第2管
21A 第2着色ライン
3A 第3管
31A 第3着色ライン
4A 補強層
B 管体
1B 第1管
11B 第1着色ライン
2B 第2管
21B 第2着色ライン
3B 第3管
31B 第3着色ライン
4B 補強層
C 管体
1C 第1管
2C 第2管
21C 着色ライン
3C 第3管
D 管体
1D 第1管
2D 第2管
21D 着色ライン
3D 第3管
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗検知機能を有する管体であって、
前記管体は、透明または半透明の合成樹脂製の内管が複数積層されて構成されており、
積層された内管の幾つかは、部分的に軸方向に着色された着色ラインをそれぞれ有し、かつ、それぞれの前記着色ラインが周方向に異なる位置に配置されている
ことを特徴とする管体。
【請求項2】
それぞれの前記着色ラインのうち、隣り合うラインが、側面視において隣接して配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の管体。
【請求項3】
それぞれの前記着色ラインのうち、隣り合うラインが、側面視において離間して配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の管体。
【請求項4】
それぞれの前記着色ラインのうち、隣り合うラインが、異なる色で着色されている
ことを特徴とする請求項1に記載の管体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
このような目的を達成するために本発明は、摩耗検知機能を有する管体であって、前記管体は、透明または半透明の合成樹脂製の内管が複数積層されて構成されており、積層された内管の幾つかは、部分的に軸方向に着色された着色ラインをそれぞれ有し、かつ、それぞれの前記着色ラインが周方向に異なる位置に配置されていることを特徴とする。
ここで、「積層された内管の幾つかは、部分的に軸方向に着色された着色ラインをそれぞれ有し」とは、例えば、積層された内管が3つである場合に、その中の2つが着色されており、残りの1つは着色されない態様と、3つの全てが着色されている態様の双方を含むものである。ただし、1つしか着色されない態様は含まないものである。