(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020897
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H10D 1/47 20250101AFI20250205BHJP
【FI】
H01L27/04 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124526
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 信仁
(72)【発明者】
【氏名】国宗 依信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 望
(72)【発明者】
【氏名】楊 夢楠
(72)【発明者】
【氏名】園田 賢一郎
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038AR06
5F038AR07
5F038AR08
5F038AR17
5F038AR21
5F038AR25
5F038AR28
5F038CA16
(57)【要約】
【課題】シリコンとクロムと炭素を含有する抵抗素子を備える半導体装置の性能を向上させる。
【解決手段】半導体装置は、絶縁膜IL1と、絶縁膜IL1上に配置された抵抗素子RSと、抵抗素子RS上に配置された絶縁膜IL2とを有する。抵抗素子RSは、シリコンとクロムと炭素を含む。抵抗素子RSのシリコン濃度は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの上面に向かって増加し、かつ、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの下面に向かって増加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に配置された、シリコン、クロムおよび炭素を含む抵抗素子と、
前記抵抗素子と接するように、前記抵抗素子上に配置された第2絶縁膜と、
を有し、
前記抵抗素子のシリコン濃度は、前記抵抗素子の中央部から前記抵抗素子の上面に向かって増加し、かつ、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の下面に向かって増加する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記抵抗素子のクロム濃度は、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の前記上面に向かって減少し、かつ、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の前記下面に向かって減少する、半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置において、
前記抵抗素子の炭素濃度は、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の前記上面に向かって増加し、かつ、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の前記下面に向かって増加する、半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置において、
前記抵抗素子の厚さは、10nm以下である、半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置において、
前記抵抗素子内におけるクロムに対するシリコンの比率は2よりも大きく、
前記抵抗素子の炭素含有量は、15原子パーセント以上かつ30原子パーセント以下である、半導体装置。
【請求項6】
請求項4記載の半導体装置において、
前記抵抗素子の幅は、10nm以上かつ40nm以下である、半導体装置。
【請求項7】
請求項4記載の半導体装置において、
前記抵抗素子の幅は、10nm以下である、半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
前記抵抗素子の前記上面および前記下面のそれぞれは、複数の突起部を有する、半導体装置。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置において、
前記抵抗素子内において、前記抵抗素子の側面近傍領域におけるシリコン濃度は、前記抵抗素子の前記中央部におけるシリコン濃度よりも高い、半導体装置。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置において、
前記抵抗素子内において、前記抵抗素子の前記側面近傍領域におけるクロム濃度は、前記抵抗素子の前記中央部におけるクロム濃度よりも低く、
前記抵抗素子内において、前記抵抗素子の前記側面近傍領域における炭素濃度は、前記抵抗素子の前記中央部における炭素濃度よりも高い、半導体装置。
【請求項11】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1絶縁膜に覆われるように配置された第1配線と、
前記第1絶縁膜に覆われるように配置された第2配線と、
前記第1絶縁膜内に配置され、前記第1配線に接続された第1プラグと、
前記第1絶縁膜内に配置され、前記第2配線に接続された第2プラグと、
を更に有し、
前記抵抗素子は、前記第1プラグと前記第2プラグとを接続する、半導体装置。
【請求項12】
(a)第1絶縁膜を形成する工程、
(b)前記第1絶縁膜上に、シリコン、クロムおよび炭素を含む抵抗素子を形成する工程、
(c)前記抵抗素子を覆い、かつ前記抵抗素子と接するように、前記第1絶縁膜上に第2絶縁膜を形成する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記抵抗素子上に前記第2絶縁膜が配置された状態で、前記抵抗素子にアニール処理を施す工程、
を有し、
前記(d)工程後における前記抵抗素子のシリコン濃度は、前記抵抗素子の中央部から前記抵抗素子の上面に向かって増加し、かつ、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の下面に向かって増加する、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程は、
(b1)前記第1絶縁膜上に、シリコン、クロムおよび炭素を含む第1膜を形成する工程、
(b2)前記(b1)工程の後、前記第1膜をパターニングすることによって、前記抵抗素子を形成する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記アニール処理の温度は、摂氏300度以上かつ摂氏500度以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程の後、前記(b)工程の前に、
(a1)前記第1絶縁膜の上面にプラズマ処理を施す工程、
を更に有する、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程の後、前記(b)工程の前に、
(a1)SPM、APMまたはオゾン水を用いて前記第1絶縁膜の上面を洗浄する工程、
を更に有する、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記抵抗素子の厚さは、10nm以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程後における前記抵抗素子のクロム濃度は、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の前記上面に向かって減少し、かつ、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の前記下面に向かって減少する、半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程後における前記抵抗素子の炭素濃度は、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の前記上面に向かって増加し、かつ、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の前記下面に向かって増加する、半導体装置の製造方法。
【請求項20】
(a)第1絶縁膜を形成する工程、
(b)前記第1絶縁膜上に、シリコン、クロムおよび炭素を含む第1膜を形成する工程、
(c)前記第1膜上に、前記第1膜に接するように、第2絶縁膜を形成する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記第2絶縁膜および前記第1膜をパターニングすることにより、パターニングされた前記第1膜からなる抵抗素子を形成する工程、
(e)前記(c)工程の後、前記第1膜または前記抵抗素子上に前記第2絶縁膜が配置された状態で、前記第1膜または前記抵抗素子にアニール処理を施す工程、
を有し、
前記(c)工程後における前記抵抗素子のシリコン濃度は、前記抵抗素子の中央部から前記抵抗素子の上面に向かって増加し、かつ、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の下面に向かって増加する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、例えば、抵抗素子を備える半導体装置およびその製造方法に好適に利用できる。
【背景技術】
【0002】
特開2023-56630号公報(特許文献1)および特開2023-58091号公報(特許文献2)に、シリコンとクロムと炭素を含む抵抗素子を備える半導体装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-56630号公報
【特許文献2】特開2023-58091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコンとクロムと炭素を含有する抵抗素子を備える半導体装置において、性能を向上させることが望まれる。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、半導体装置は、第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に配置された抵抗素子と、前記抵抗素子上に配置された第2絶縁膜とを有する。前記抵抗素子は、シリコン、クロムおよび炭素を含む。前記抵抗素子のシリコン濃度は、前記抵抗素子の中央部から前記抵抗素子の上面に向かって増加し、かつ、前記抵抗素子の前記中央部から前記抵抗素子の下面に向かって増加する。
【発明の効果】
【0007】
一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の半導体装置の要部断面図である。
【
図2】実施の形態1の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図3】
図2に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図4】
図3に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図5】
図4に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図6】
図5に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図7】
図6に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図8】
図7に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図9】
図8に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図10】
図9に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図11】
図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図12】
図11に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図13】
図12に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図14】Si-Cr-C抵抗素子の抵抗率および抵抗温度係数を示すグラフである。
【
図15】アニール温度と、抵抗率および抵抗温度係数との関係を示すグラフである。
【
図16】検討例の半導体装置の部分拡大断面図である。
【
図17】検討例の半導体装置の部分拡大断面図である。
【
図19】
図18に示される積層構造におけるシリコンとクロムと炭素の濃度分布を示すグラフである。
【
図20】結晶化アニール処理を施さなかった場合について、シリコンとクロムと炭素の濃度分布を分析した結果を示すグラフである。
【
図21】アニールの温度と抵抗温度係数の相関を示すグラフである。
【
図24】抵抗素子の幅と抵抗値の相関を示すグラフである。
【
図25】抵抗素子の幅と抵抗温度係数の相関を示すグラフである。
【
図29】実施の形態2の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図30】
図29に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図31】
図30に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図32】
図31に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図33】
図32に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【
図35】抵抗素子の炭素含有率と抵抗温度係数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0010】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0011】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0012】
(実施の形態1)
<半導体装置の構造について>
本実施の形態の半導体装置を図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
【0013】
図1に示されるように、本実施の形態の半導体装置は、半導体基板SBと、絶縁膜IL1と、絶縁膜IL2と、絶縁膜IL3と、複数の配線M1と、複数の配線M2と、複数のプラグV1と、複数のプラグV2と、抵抗素子RSとを有する。
【0014】
絶縁膜IL1は、半導体基板SBの主面上に形成されている。複数の配線M1は、絶縁膜IL1上に、絶縁膜IL1の上面に接するように、形成されている。絶縁膜IL2は、絶縁膜IL1上に、複数の配線M1を覆うように形成されている。抵抗素子RSは、絶縁膜IL2上に、絶縁膜IL2の上面に接するように、形成されている。絶縁膜IL3は、絶縁膜IL2上に、抵抗素子RSを覆うように形成されている。抵抗素子RSの上面および側面は、絶縁膜IL3に接している。抵抗素子RSの下面は、絶縁膜IL2に接している。
【0015】
複数の配線M2は、絶縁膜IL3上に、絶縁膜IL3の上面に接するように、形成されている。複数のプラグV1は、それぞれ導電性を有している。複数のプラグV2は、それぞれ導電性を有している。複数のプラグV1は、それぞれ、絶縁膜IL2内に配置されている。具体的には、複数のプラグV1は、それぞれ、絶縁膜IL2を貫通する開口部に埋め込まれている。複数のプラグV2は、それぞれ、絶縁膜IL2,IL3を貫通する開口部に埋め込まれている。
【0016】
絶縁膜IL1,IL2,IL3のそれぞれは、単層の絶縁膜または積層絶縁膜である。なお、積層絶縁膜は、複数の絶縁膜が積層された積層膜である。
【0017】
抵抗素子RSは、構成元素としてシリコン(Si)とクロム(Cr)と炭素(C)を含有している。具体的には、抵抗素子RSは、構成元素としてシリコン(Si)とクロム(Cr)と炭素(C)を含有する材料層(抵抗層)MTからなる。材料層MTの平面形状は、例えば長方形状である。材料層MTの厚さは、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは、2nm以上、かつ、10nm以下である。
【0018】
複数のプラグV1は、プラグV1aとプラグV1bを含んでいる。複数のプラグV2は、プラグV2aとプラグV2bを含んでいる。複数の配線M1は、配線M1aとM1bを含んでいる。複数の配線M2は、配線M2aとM2bを含んでいる。配線M1aとM1bは、互いに離隔している。配線M2aとM2bは、互いに離隔している。
【0019】
配線M1aとM1bは、絶縁膜IL2により覆われるように、絶縁膜IL1上に配置されている。プラグV1aは、絶縁膜IL2内に配置され、かつ、配線M1aに接続されている。プラグV1bは、絶縁膜IL2内に配置され、かつ、配線M1bに接続されている。抵抗素子RSは、プラグV1aとプラグV1bを接続する。
【0020】
具体的には、材料層MTの一方の端部近傍において、プラグV1aの上面は、材料層MTで覆われており、材料層MTの下面と接している。プラグV1aは、材料層MTと電気的に接続されている。プラグV1aは、配線M1a上に配置されており、プラグV1aの下面は、配線M1aの上面と接している。プラグV1aは、配線M1aと電気的に接続されている。
【0021】
プラグV2aは、配線M1a上に配置されており、プラグV2aの下面は、配線M1aの上面と接している。プラグV2aは、配線M1aと電気的に接続されている。プラグV2aの上面は、配線M2aで覆われており、配線M2aの下面と接している。プラグV2aは、配線M2aと電気的に接続されている。
【0022】
材料層MTの他方の端部近傍において、プラグV1bの上面は、材料層MTで覆われており、材料層MTの下面と接している。プラグV1bは、材料層MTと電気的に接続されている。プラグV1bは、配線M1b上に配置されており、プラグV1bの下面は、配線M1bの上面と接している。プラグV1bは、配線M1bと電気的に接続されている。
【0023】
プラグV2bは、配線M1b上に配置されており、プラグV2bの下面は、配線M1bの上面と接している。プラグV2bは、配線M1bと電気的に接続されている。プラグV2bの上面は、配線M2bで覆われており、配線M2bの下面と接している。プラグV2bは、配線M2bと電気的に接続されている。
【0024】
このため、抵抗素子RSの一方の端部にプラグV1aが接続され、抵抗素子RSの他方の端部にプラグV1bが接続されている。配線M2aは、プラグV2a、配線M1aおよびプラグV1aを介して、抵抗素子RSの一方の端部と電気的に接続される。配線M2bは、プラグV2b、配線M1bおよびプラグV1bを介して、抵抗素子RSの他方の端部と電気的に接続される。
【0025】
絶縁膜IL3および配線M2よりも上層の構造の図示および説明は省略する。
【0026】
<半導体装置の製造工程について>
本実施の形態の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。
図2から
図13は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0027】
まず、
図2に示されるように、半導体基板SBを用意する。半導体基板SBは、p型またはn型の不純物が導入された単結晶シリコンなどからなる。
【0028】
次に、必要に応じて、半導体基板SBにMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)またはダイオードなどの半導体素子(図示せず)を形成する。
【0029】
次に、
図3に示されるように、半導体基板SBの主面上に、絶縁膜IL1を形成する。絶縁膜IL1は、層間絶縁膜である。絶縁膜IL1は、例えば酸化シリコン膜からなり、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて形成することができる。絶縁膜IL1の形成後、絶縁膜IL1の上面をCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法などを用いて平坦化することもできる。
【0030】
次に、
図3に示されるように、絶縁膜IL1上に複数の配線M1を形成する。例えば、絶縁膜IL1上に導電膜を形成する。その後、その導電膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、導電膜からなる複数の配線M1を形成することができる。複数の配線M1は、例えばアルミニウム配線であるが、他の金属材料を用いた配線を適用することもできる。複数の配線M1は、配線M1aと配線M1bを含んでいる。
【0031】
次に、
図4に示されるように、絶縁膜IL1上に、複数の配線M1を覆うように、絶縁膜IL2を形成する。絶縁膜IL2は、層間絶縁膜である。絶縁膜IL2は、例えば酸化シリコン膜からなる。絶縁膜IL2の形成後、絶縁膜IL2の上面をCMP法などを用いて平坦化することもできる。
【0032】
次に、
図5に示されるように、絶縁膜IL2上に形成されたフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして絶縁膜IL2をエッチングすることにより、絶縁膜IL2を貫通する複数の開口部OP1を形成する。
【0033】
次に、
図6に示されるように、絶縁膜IL2の複数の開口部OP1内を埋めるように、絶縁膜IL2上に導電膜CD1を形成する。導電膜CD1は、例えば、バリア導体膜と、バリア導体膜上の主導体膜との積層膜からなる。主導体膜は、例えばタングステン膜である。その後、
図7に示されるように、絶縁膜IL2の複数の開口部OP1の外部に配置された導電膜CD1をCMP法などによって除去する。これにより、複数のプラグV1が形成される。複数のプラグV1は、複数の開口部OP1にそれぞれ埋め込まれている。複数のプラグV1は、プラグV1aとプラグV1bを含んでいる。
【0034】
次に、
図8に示されるように、各プラグV1の上面を覆うように、絶縁膜IL2上に材料層MTaをスパッタリング法などを用いて形成する。材料層MTaは、絶縁膜IL2の上面全体上と、複数のプラグV1の上面上とに形成される。材料層MTaは、構成元素としてシリコン(Si)とクロム(Cr)と炭素(C)を含有している。材料層MTaは、アモルファス膜である。
【0035】
次に、
図9に示されるように、材料層MTaをフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、材料層MTを形成する。材料層MTは、パターニングされた材料層MTaからなる。材料層MTは、抵抗素子RSを構成する。
【0036】
次に、
図10に示されるように、絶縁膜IL2上に、材料層MTを覆うように、絶縁膜IL3を形成する。絶縁膜IL3は、層間絶縁膜である。絶縁膜IL3は、例えば酸化シリコン膜からなる。絶縁膜IL3は、材料層MTの上面および側面に接するように、形成される。絶縁膜IL3の形成後、絶縁膜IL3の上面をCMP法などを用いて平坦化することもできる。
【0037】
次に、材料層MTを結晶化させるための熱処理(アニール処理)を行う。この熱処理により材料層MTが加熱され、アモルファス状態の材料層MTの一部または全部が結晶化する。
【0038】
次に、
図11に示されるように、絶縁膜IL3上に形成されたフォトレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして絶縁膜IL3および絶縁膜IL2をエッチングすることにより、絶縁膜IL3および絶縁膜IL2を貫通する複数の開口部OP2を形成する。
【0039】
次に、
図12に示されるように、複数のプラグV2を形成する。例えば、複数の開口部OP2内を埋めるように、絶縁膜IL3上に導電膜を形成する。この導電膜は、例えば、バリア導体膜と、バリア導体膜上の主導体膜との積層膜からなる。主導体膜は、例えばタングステン膜である。その後、複数の開口部OP2の外部に配置された導電膜をCMP法などによって除去する。これにより、複数のプラグV2が形成される。複数のプラグV2は、複数の開口部OP2にそれぞれ埋め込まれている。複数のプラグV2は、プラグV2aとプラグV2bを含んでいる。
【0040】
次に、
図13に示されるように、絶縁膜IL3上に複数の配線M2を形成する。例えば、絶縁膜IL1上に導電膜を形成する。その後、その導電膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、導電膜からなる複数の配線M2を形成することができる。複数の配線M2は、例えばアルミニウム配線であるが、他の金属材料を用いた配線を適用することもできる。複数の配線M2は、配線M2aと配線M2bを含んでいる。
【0041】
更に上層の絶縁膜および配線を形成する工程の図示および説明は省略する。
【0042】
<検討の経緯について>
本発明者は、構成元素としてシリコン(Si)とクロム(Cr)と炭素(C)を含有する抵抗素子について検討している。なお、以下では、構成元素としてシリコン(Si)とクロム(Cr)と炭素(C)を含有する抵抗素子を、Si-Cr-C抵抗素子と称する。上記抵抗素子RSも、Si-Cr-C抵抗素子である。また、構成元素としてシリコン(Si)とクロム(Cr)と炭素(C)を含有する膜を、Si-Cr-C膜と称する。上記材料層MTaも、Si-Cr-C膜である。
【0043】
Si-Cr-C抵抗素子において、抵抗率が大きいことと、抵抗温度係数(TCR:Temperature Coefficient of Resistance)の絶対値が小さいことが、望ましい。抵抗素子の抵抗率が大きければ、抵抗素子の平面寸法を小さくしながら、抵抗値を大きくすることができるため、抵抗素子を備える半導体装置を小型化することができる。抵抗温度係数の絶対値が小さければ、温度変化に起因した抵抗素子の抵抗値の変化を抑制することができるため、抵抗素子を備える半導体装置の性能を向上させることができる。
【0044】
図14は、Si-Cr-C抵抗素子の抵抗率および抵抗温度係数を示すグラフである。
図14の横軸は、原子数基準で、Si-Cr-C抵抗素子内におけるクロムに対するシリコンの比率に対応している。以下では、Si-Cr-C抵抗素子内におけるクロムに対するシリコンの比率を、Si/Cr比と称する。Si/Cr比は、原子数基準における含有比である。
図14の縦軸は、Si-Cr-C抵抗素子の抵抗率または抵抗温度係数(TCR)に対応している。
図14には、Si/Cr比を変化させたときのSi-Cr-C抵抗素子の抵抗率および抵抗温度係数が示されており、Si-Cr-C抵抗素子内における炭素含有率は、原子数基準で、15~25原子パーセントである。また、
図14のグラフは、結晶化アニール処理を施していないSi-Cr-C抵抗素子についての測定データに基づいている。
【0045】
図14のグラフから、Si-Cr-C抵抗素子において、Si/Cr比が大きくなるほど、抵抗率が増大することが分かる。
【0046】
一方、
図14のグラフから、Si/Cr比が1.2を超えると、Si-Cr-C抵抗素子の抵抗温度係数は徐々に低下し、Si/Cr比が1.5を超えると、Si-Cr-C抵抗素子の抵抗温度係数は更に大きく低下することが分かる。そして、Si/Cr比が2.5を超えると、Si-Cr-C抵抗素子の抵抗温度係数の絶対値は、抵抗材料としては好ましくない水準(200ppm/度以上)にまで増大してしまう。
【0047】
Si-Cr-C抵抗素子において、抵抗率と抵抗温度係数がトレードオフの関係にある。このため、抵抗率を大きくすると抵抗温度係数の絶対値が大きくなる。従って、Si-Cr-C抵抗素子の組成比を単純に調整するだけでは、抵抗率の増大と抵抗温度係数の絶対値の抑制とを両立させることは困難である。
【0048】
図15は、Si-Cr-C抵抗素子に対して結晶化アニール処理を施した場合について、アニール温度と、抵抗率および抵抗温度係数との関係を示すグラフである。
図15のグラフの横軸は、アニール温度に対応している。
図15のグラフの縦軸は、Si-Cr-C抵抗素子の抵抗率または抵抗温度係数(TCR)に対応している。
【0049】
図15のグラフから、結晶化アニール処理を施すことにより、Si-Cr-C抵抗素子の抵抗率および抵抗温度係数が変化することが分かる。
図15のグラフにおいて、アニール温度が摂氏520度から摂氏530度の範囲内のときに、抵抗温度係数の絶対値が小さくなっている。
【0050】
しかしながら、摂氏500度よりも高い温度でのアニール処理は、望ましくない。なぜなら、摂氏500度よりも高い温度でのアニール処理は、配線や、あるいは半導体基板に形成されている半導体素子などに影響を与える虞があるからである。このため、半導体装置の信頼性を向上させるためには、Si-Cr-C抵抗素子に対する結晶化アニール処理は、摂氏500度以下の温度で行うことが望まれる。
【0051】
図16および
図17は、本発明者が検討した検討例の半導体装置の部分拡大断面図である。
【0052】
図16および
図17に示される検討例の半導体装置は、絶縁膜IL2と、絶縁膜IL2上に形成されたSi-Cr-C抵抗素子RS101と、Si-Cr-C抵抗素子RS101上に形成された絶縁膜IL3とを有している。但し、
図16には、Si-Cr-C抵抗素子RS101の厚さが大きい場合が示され、
図17には、Si-Cr-C抵抗素子RS101の厚さが小さい場合が示されている。例えば、
図16の場合、Si-Cr-C抵抗素子RS101の厚さは300nm程度である。一方、
図17の場合、Si-Cr-C抵抗素子RS101の厚さは10nm以下である。
【0053】
Si-Cr-C抵抗素子RS101の上面と下面は、完全な平坦面ではなく、表面粗さを反映した凹凸を有する。このため、Si-Cr-C抵抗素子RS101の上面と下面のそれぞれは、複数の凸部(突起部)を有する。なぜなら、完全に平坦な下面と上面とを有するSi-Cr-C膜を成膜することは困難だからである。本実施の形態の抵抗素子RSの上面と下面も同様である。抵抗素子RSの上面と下面は、完全な平坦面ではなく、表面粗さを反映した凹凸を有する。このため、本実施の形態の抵抗素子RSの上面と下面のそれぞれは、複数の凸部(突起部)を有する。
【0054】
Si-Cr-C抵抗素子RS101に電流を流す際に、Si-Cr-C抵抗素子RS101の内部を通過する経路で、電子が伝導する。
図16および
図17のそれぞれにおいて、矢印YG1は、Si-Cr-C抵抗素子RS101の内部を通過する伝導経路を示す。しかしながら、Si-Cr-C抵抗素子RS101に電流を流す際に、Si-Cr-C抵抗素子RS101の上面と下面の凹凸に起因して、絶縁膜IL2または絶縁膜IL3を通過する電子の伝導も発生する。
【0055】
具体的には、
図16および
図17のそれぞれにおいて、Si-Cr-C抵抗素子RS101の上面の凸部同士の間で、矢印YG2で模式的に示される経路で電流が流れる。矢印YG2は、絶縁膜IL3を通過する伝導経路を示す。また、Si-Cr-C抵抗素子RS101の下面の凸部同士の間で、矢印YG3で模式的に示される経路で電流が流れる。矢印YG3は、絶縁膜IL2を通過する伝導経路を示す。すなわち、Si-Cr-C抵抗素子RS101の上面近傍において、絶縁膜IL3の一部も電子の伝導経路として寄与し、また、Si-Cr-C抵抗素子RS101の下面近傍において、絶縁膜IL2の一部も電子の伝導経路として寄与する。
【0056】
図16のように、Si-Cr-C抵抗素子RS101の厚さが大きい場合、電流のほとんどは、Si-Cr-C抵抗素子RS101の内部を通過して流れるため、矢印YG2または矢印YG3で示される伝導経路の寄与は小さい。このため、Si-Cr-C抵抗素子RS101全体の抵抗値に対して、絶縁膜IL2または絶縁膜IL3を通過する伝導経路の抵抗値は、ほとんど寄与しない。
【0057】
しかしながら、
図16のようにSi-Cr-C抵抗素子RS101の厚さが大きい場合に比べて、
図17のようにSi-Cr-C抵抗素子RS101の厚さが小さい場合、Si-Cr-C抵抗素子RS101の内部を通過して流れる電流が少なくなるため、矢印YG2または矢印YG3で示される伝導経路の寄与が大きくなる。このため、Si-Cr-C抵抗素子RS101全体の抵抗値に対して、絶縁膜IL2または絶縁膜IL3を通過する伝導経路の抵抗値が占める割合が増大する。
【0058】
絶縁膜IL3を通過する伝導経路(YG2)と、絶縁膜IL2を通過する伝導経路(YG3)において、温度変化により抵抗値が大きく変化し、抵抗温度係数は負になるとともに、抵抗温度係数の絶対値が大きくなる。このため、Si-Cr-C抵抗素子RS101の厚さが小さくなると、絶縁膜IL2または絶縁膜IL3を通過する伝導経路の影響が大きくなり、その結果、抵抗温度係数の絶対値が大きくなる。Si-Cr-C抵抗素子の厚さを小さくした場合でも、抵抗温度係数の絶対値を抑制することが望まれる。
【0059】
<抵抗素子について>
図18は、上記
図1の一部を拡大した部分拡大断面図である。
図19は、
図18に示される積層構造におけるシリコン(Si)とクロム(Cr)と炭素(C)の濃度分布を示すグラフである。
図19のグラフの横軸は、深さ位置に対応している。
図19のグラフの縦軸は、シリコン(Si)、クロム(Cr)または炭素(C)の原子分率(濃度)に対応している。
図19のグラフにおいて、シリコン(Si)の濃度分布を実線で示し、炭素(C)の濃度分布を点線で示し、クロム(Cr)の濃度分布を一点鎖線で示してある。なお、
図19のグラフは、EDX(エネルギー分散型X線分光法)による分析結果に基づいている。
【0060】
また、本実施の形態では、半導体装置の製造工程中に、上述のように材料層MTに対して結晶化アニール処理を施している。
図19のグラフは、本実施の形態のように材料層MTに対して結晶化アニール処理が施された場合について、各元素の濃度分布を分析した結果のグラフである。
【0061】
図19のグラフからも分かるように、本実施の形態において、抵抗素子RS内におけるシリコン(Si)とクロム(Cr)と炭素(C)の組成比は、厚さ方向において均一な分布ではなく、以下のような分布を有している。なお、厚さ方向とは、抵抗素子RSの下面から上面に向かう方向、または、抵抗素子RSの上面から下面に向かう方向である。抵抗素子RSの上面は、抵抗素子RSと絶縁膜IL3の界面である。抵抗素子RSの下面は、抵抗素子RSと絶縁膜IL2の界面である。
図19には、厚さ方向における濃度分布が示されている。
【0062】
図19のグラフに示されるように、抵抗素子RS内において、シリコン(Si)濃度のピークP1は、抵抗素子RSの上面近傍の位置に形成され、シリコン濃度のピークP2は、抵抗素子RSの下面近傍の位置に形成されている。
【0063】
抵抗素子RS(材料層MT)内におけるシリコン(Si)濃度は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの上面に向かって増加している。また、抵抗素子RS(材料層MT)内におけるシリコン(Si)濃度は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの下面に向かって増加している。すなわち、抵抗素子RS内におけるシリコン(Si)濃度は、抵抗素子RSの中央部で最も低く、中央部から上面に向かって増加し、かつ、中央部から下面に向かって増加している。このため、抵抗素子RS内において、抵抗素子RSの上面近傍と抵抗素子RSの下面近傍におけるシリコン(Si)濃度は、抵抗素子RSの中央部におけるシリコン(Si)濃度よりも大きい。なお、抵抗素子RSの中央部は、抵抗素子RSの厚さ方向における中央部である。
【0064】
図19のグラフに示されるように、抵抗素子RS内において、炭素(C)濃度のピークP3は、抵抗素子RSの上面近傍の位置に形成され、炭素濃度のピークP4は、抵抗素子RSの下面近傍の位置に形成されている。
【0065】
抵抗素子RS(材料層MT)内における炭素(C)濃度は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの上面に向かって増加している。また、抵抗素子RS(材料層MT)内における炭素(C)濃度は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの下面に向かって増加している。すなわち、抵抗素子RS内における炭素(C)濃度は、抵抗素子RSの中央部で最も低く、中央部から上面に向かって増加し、かつ、中央部から下面に向かって増加している。このため、抵抗素子RS内において、抵抗素子RSの上面近傍と抵抗素子RSの下面近傍における炭素(C)濃度は、抵抗素子RSの中央部における炭素(C)濃度よりも大きい。
【0066】
図19のグラフに示されるように、抵抗素子RS内において、クロム(Cr)濃度のピークP5は、抵抗素子RSの中央部に形成されている。
【0067】
抵抗素子RS(材料層MT)内におけるクロム(Cr)濃度は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの上面に向かって減少している。また、抵抗素子RS(材料層MT)内におけるクロム(Cr)濃度は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの下面に向かって減少している。すなわち、抵抗素子RS内におけるクロム(Cr)濃度は、抵抗素子RSの中央部で最も高く、中央部から上面に向かって減少し、かつ、中央部から下面に向かって減少している。このため、抵抗素子RS内において、抵抗素子RSの上面近傍と抵抗素子RSの下面近傍におけるクロム(Cr)濃度は、抵抗素子RSの中央部におけるシリコン(Si)濃度よりも小さい。
【0068】
なお、シリコン(Si)濃度、クロム(Cr)濃度、および炭素(C)濃度は、いずれも原子数基準の濃度であり、原子パーセントを単位として表される。
【0069】
抵抗素子RS内におけるシリコン(Si)とクロム(Cr)の濃度分布を反映して、抵抗素子RS内におけるSi/Cr比は、以下の分布を示す。
【0070】
抵抗素子RS(材料層MT)内におけるSi/Cr比は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの上面に向かって増加している。また、抵抗素子RS(材料層MT)内におけるSi/Cr比は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの下面に向かって増加している。すなわち、抵抗素子RS内におけるSi/Cr比は、抵抗素子RSの中央部で最も低く、中央部から上面に向かって増加し、かつ、中央部から下面に向かって増加している。このため、抵抗素子RS内において、抵抗素子RSの上面近傍と抵抗素子RSの下面近傍におけるSi/Cr比は、抵抗素子RSの中央部におけるSi/Cr比よりも大きい。
【0071】
上記
図14のグラフからも分かるように、Si-Cr-C抵抗素子において、Si/Cr比が大きくなるほど、抵抗率が増大する。このため、抵抗素子RS内におけるSi/Cr比の分布を反映して、抵抗素子RS内における抵抗率は、以下の分布を示す。
【0072】
抵抗素子RS(材料層MT)内における抵抗率は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの上面に向かって増加している。また、抵抗素子RS(材料層MT)内における抵抗率は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの下面に向かって増加している。すなわち、抵抗素子RS内における抵抗率は、抵抗素子RSの中央部で最も低く、中央部から上面に向かって増加し、かつ、中央部から下面に向かって増加している。このため、抵抗素子RS内において、抵抗素子RSの上面近傍と抵抗素子RSの下面近傍における抵抗率は、抵抗素子RSの中央部における抵抗率よりも大きい。
【0073】
図20は、検討例として材料層MTに結晶化アニール処理を施さなかった場合について、シリコン(Si)とクロム(Cr)と炭素(C)の濃度分布を分析した結果を示すグラフである。
図20の横軸および縦軸は、上記
図19の横軸および縦軸と同じである。上記
図19と同様に、
図20のグラフも、EDXによる分析結果に基づいている。
【0074】
本実施の形態とは異なり、材料層MTに結晶化アニール処理を施さなかった場合、
図20のグラフからも分かるように、材料層MT内におけるシリコン(Si)の濃度分布は、厚さ方向においてほぼ均一である。また、材料層MT内における炭素(C)の濃度分布も、厚さ方向においてほぼ均一である。また、
図19のグラフと
図20のグラフを比較すると分かるように、
図20のグラフにおけるクロム濃度の分布曲線は、
図19のグラフにおけるクロム濃度の分布曲線に比べてブロードである。このため、
図19のグラフの場合に比べて、
図20のグラフの場合、材料層MT内におけるクロム(Cr)の濃度分布は、均一に近いと考えられる。
【0075】
従って、材料層MTに結晶化アニール処理を施した場合に比べて、材料層MTに結晶化アニール処理を施さなかった場合、クロム(Cr)と炭素(C)の組成比は、厚さ方向において均一に近いと考えられる。
【0076】
それに対して、本実施の形態において、半導体装置の製造工程中に、材料層MTに対して結晶化アニール処理を施している。この結晶化アニール処理は、絶縁膜IL2と絶縁膜IL3とで材料層MTを挟んだ状態で行っている。すなわち、材料層MTの下面が絶縁膜IL2で覆われ、かつ、材料層MTの上面が絶縁膜IL3で覆われた状態で、材料層MTに対する結晶化アニール処理を行っている。このため、結晶化アニール処理中に、材料層MT内のシリコン(Si)と炭素(C)が、材料層MTと絶縁膜IL3との界面に向かって拡散して、抵抗素子RS内において材料層MTの上面近傍に偏析し、かつ、材料層MTと絶縁膜IL2との界面に向かって拡散して、抵抗素子RS内において材料層MTの下面近傍に偏析する。これにより、
図19のグラフに示されるような濃度分布が形成されたと考えられる。
【0077】
本実施の形態とは異なり、材料層MTの上面が絶縁膜で覆われていない状態で、結晶化アニール処理を行った場合、
図19のグラフに示されるような濃度分布は形成されない。なぜなら、結晶化アニール処理中に、材料層MT内のシリコン(Si)と炭素(C)は、材料層MTと絶縁膜IL2との界面に向かって拡散するが、材料層MTの上面に向かってほとんど拡散せず、抵抗素子RS内において材料層MTの上面近傍にシリコン(Si)と炭素(C)は偏析しないからである。
【0078】
本実施の形態において、材料層MTの上面が絶縁膜IL3で覆われた状態で結晶化アニール処理を行っているため、結晶化アニール処理中に、材料層MT内のシリコン(Si)と炭素(C)は、材料層MTと絶縁膜IL3との界面に向かって拡散し、かつ、材料層MTと絶縁膜IL2との界面に向かって拡散することができる。その結果、材料層MT内において、材料層MTの上面近傍と材料層MTの下面近傍のそれぞれにシリコン(Si)と炭素(C)が偏析し、
図19のグラフに示されるような濃度分布が形成される。
【0079】
本実施の形態において、上述のように、抵抗素子RS(材料層MT)内におけるシリコン(Si)濃度は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの上面に向かって増加している。また、抵抗素子RS(材料層MT)内におけるシリコン(Si)濃度は、抵抗素子RSの中央部から抵抗素子RSの下面に向かって増加している。これを反映して、抵抗素子RSの中央部において、Si/Cr比が低く、抵抗素子RSの中央部に比べて抵抗素子RS内における抵抗素子RSの上面近傍および抵抗素子RSの下面近傍において、Si/Cr比が高くなる。その結果、以下の2つの理由により、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制することができる。
【0080】
第1の理由について説明する。抵抗素子RS内において、抵抗素子RSの上面近傍および抵抗素子RSの下面近傍におけるSi/Cr比が高くなることにより、抵抗素子RSの上面近傍と抵抗素子RSの下面近傍における抵抗率が高くなり、抵抗素子RSの上面近傍と抵抗素子RSの下面近傍において、電流が流れにくくなる。その結果、抵抗素子RSの内部を通過する伝導経路(YG1)で流れる電流が増加し、絶縁膜IL3を通過する伝導経路(YG2)および絶縁膜IL2を通過する伝導経路(YG3)で流れる電流が低減する。このため、抵抗素子RS全体の抵抗値に対して、絶縁膜IL2または絶縁膜IL3を通過する伝導経路(YG2,YG3)の抵抗値が占める割合を低減させることができる。上述のように、絶縁膜IL3を通過する伝導経路(YG2)と、絶縁膜IL2を通過する伝導経路(YG3)において、抵抗温度係数は負になるとともに、抵抗温度係数の絶対値が大きくなる。本実施の形態において、抵抗素子RS全体の抵抗値に対して、絶縁膜IL2または絶縁膜IL3を通過する伝導経路(YG2,YG3)の抵抗値が占める割合を低減することができるため、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制することができる。
【0081】
第2の理由について説明する。抵抗素子RSの中央部において、Si/Cr比が低くなることにより抵抗率が低下するため、抵抗素子RSの中央部を通過する電流が増加する。上記
図14のグラフからも分かるように、Si/Cr比が大きくなると、Si-Cr-C抵抗素子の抵抗温度係数の絶対値が大きくなる傾向がある。本実施の形態において、抵抗素子RSの中央部を流れる電流を増加させるとともに、その中央部におけるSi/Cr比が低くなることにより、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制することができる。
【0082】
上記
図16および
図17を参照して説明したように、Si-Cr-C抵抗素子RS101の厚さが小さくなると、絶縁膜IL2または絶縁膜IL3を通過する伝導経路(YG2,YG3)の影響が大きくなり、その結果、抵抗温度係数の絶対値が大きくなる。
【0083】
本実施の形態において、抵抗素子RSの厚さを小さくした場合でも、上記第1の理由および第2の理由により、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制することができる。このため、本実施の形態において、抵抗素子RSの厚さを小さくしつつ、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制できる。抵抗素子RSの厚さを小さくすることにより、抵抗素子RSの平面寸法を小さくしながら、抵抗素子RSの抵抗値を大きくすることができるため、抵抗素子RSを備える半導体装置を小型化することができる。抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制することにより、温度変化に起因した抵抗素子RSの抵抗値の変化を抑制することができるため、抵抗素子RSを備える半導体装置の性能を向上させることができる。
【0084】
このため、本実施の形態は、抵抗素子RSの厚さを小さくした場合に適用すれば、効果が大きい。具体的には、本実施の形態は、抵抗素子RSの厚さが10nm以下である場合に適用すれば、効果が大きい。
【0085】
図21は、結晶化アニールの温度と、抵抗素子RSの抵抗温度係数(TCR)の相関を示すグラフである。
図21のグラフの横軸は、抵抗素子RS(材料層MT)の結晶化アニールの温度に対応している。
図21のグラフの縦軸は、抵抗素子RSの抵抗温度係数(TCR)に対応している。
図21のグラフには、抵抗素子RSの厚さが300nmである場合と、抵抗素子RSの厚さが5.5nmである場合が示されている。
【0086】
図21のグラフから、抵抗素子RSの厚さが300nmである場合に比べて、抵抗素子RSの厚さが5.5nmである場合、抵抗温度係数(TCR)の絶対値を抑制できることが分かる。また、
図21のグラフから、抵抗素子RSの厚さが5.5nmである場合、結晶化アニールの温度が摂氏500度以下であれば、抵抗素子RSの抵抗温度係数(TCR)の絶対値を十分に抑制できることが分かる。
【0087】
このため、本実施の形態において、抵抗素子RSの厚さを10nm以下とし、かつ、抵抗素子RS(材料層MT)の結晶化アニールの温度を摂氏500度以下とすることが好ましく、結晶化アニールの温度を摂氏300度以上、かつ、摂氏500度以下とすることが更に好ましい。これにより、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を更に抑制することができる。
【0088】
また、結晶化アニールの温度を摂氏500度以下とすることにより、結晶化アニールが複数の配線M1や、あるいは半導体基板SBに形成されている半導体素子などに影響を与えるのを抑制または防止することができる。このため、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0089】
また、抵抗素子RS内におけるクロム(Cr)に対するシリコン(Si)の比率(Si/Cr比)が2よりも大きく、かつ、抵抗素子RSの炭素(C)含有量が15原子パーセント以上かつ30原子パーセント以下であることが好ましい。このような含有量を満たすことにより、結晶化アニール処理を行った際、抵抗素子RSの抵抗率と抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値との良好なバランスを得ることができる。
【0090】
図22は、抵抗素子RSの平面図である。
図23は、抵抗素子RSの断面図である。
図22のA1-A1線に沿った断面図が、
図23に対応している。
図22に示されるX方向およびY方向は、互いに直交している。また、
図22に示されるX方向およびY方向は、半導体基板SBの主面に略平行である。X方向は、抵抗素子RSの長辺方向であり、Y方向は、抵抗素子RSの短辺方向である。
【0091】
図22に示されるように、抵抗素子RSは、長さL1と幅W1を有している。長さL1は、X方向における抵抗素子RSの寸法である。幅W1は、Y方向における抵抗素子RSの寸法である。抵抗素子RSにおいて、電流はX方向に流れる。
【0092】
図23に模式的に示されるように、抵抗素子RSは、低抵抗領域RG1と高抵抗領域RG2とを有している。高抵抗領域RG2の抵抗率は、低抵抗領域RG1の抵抗率よりも大きい。
【0093】
図23に示されるように、X方向に垂直な断面視において、低抵抗領域RG1は高抵抗領域RG2により囲まれている。抵抗素子RSにおいて、高抵抗領域RG2は、抵抗素子RSの上面に隣接する領域と、抵抗素子RSの下面に隣接する領域と、抵抗素子RSの側面に隣接する領域とにより、構成されている。言い換えると、抵抗素子RS内において、高抵抗領域RG2は、抵抗素子RSの上面近傍領域と、抵抗素子RSの下面近傍領域と、抵抗素子RSの側面近傍領域とにより、構成されている。抵抗素子RSの中央部は、低抵抗領域RG1に含まれている。
【0094】
低抵抗領域RG1に比べると、高抵抗領域RG2内において、シリコン(Si)濃度が高く、炭素(C)濃度が高く、かつ、クロム(Cr)濃度が低い。すなわち、抵抗素子RSの中央部に比べると、抵抗素子RS内における抵抗素子RSの上面近傍領域と抵抗素子RSの下面近傍領域と抵抗素子RSの側面近傍領域とにおいて、シリコン(Si)濃度が高く、炭素(C)濃度が高く、かつ、クロム(Cr)濃度が低い。これは、抵抗素子RSが上記
図19のような濃度分布を有しているからである。これを反映して、高抵抗領域RG2内におけるSi/Cr比は、低抵抗領域RG1内におけるSi/Cr比よりも大きく、その結果、高抵抗領域RG2の抵抗率は、低抵抗領域RG1の抵抗率よりも大きい。
【0095】
本実施の形態において、材料層MTaをパターニングして材料層MTを形成した後に、材料層MTを覆うように絶縁膜IL3を形成し、その後で、結晶化アニール処理を行っている。このため、材料層MTの下面が絶縁膜IL2で覆われ、かつ、材料層MTの上面および側面が絶縁膜IL3で覆われた状態で、材料層MTに対する結晶化アニール処理が行われる。このため、結晶化アニール処理中に、材料層MT内のシリコン(Si)と炭素(C)が、材料層MTの上面に向かって拡散することにより、抵抗素子RSの上面に隣接する領域に高抵抗領域RG2が形成される。また、結晶化アニール処理中に、材料層MT内のシリコン(Si)と炭素(C)が、材料層MTの下面に向かって拡散することにより、抵抗素子RSの下面に隣接する領域に高抵抗領域RG2が形成される。結晶化アニール処理中に、材料層MT内のシリコン(Si)と炭素(C)が、材料層MTの側面に向かって拡散することにより、抵抗素子RSの側面に隣接する領域に高抵抗領域RG2が形成される。その結果、
図23に示されるような断面構造が形成される。
【0096】
抵抗素子RS内に低抵抗領域RG1と高抵抗領域RG2が形成されることにより、上記第1の理由および第2の理由により、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制することができる。
【0097】
抵抗素子RSの上面に隣接する高抵抗領域RG2と抵抗素子RSの下面に隣接する高抵抗領域RG2だけでなく、抵抗素子RSの側面に隣接する高抵抗領域RG2も、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制する効果に寄与する。抵抗素子RS内に低抵抗領域RG1と高抵抗領域RG2が形成されることによる効果は、抵抗素子RSの幅W1が小さくなるほど、増加する。なぜなら、抵抗素子RSの幅W1を小さくしても、抵抗素子RSの側面に隣接する高抵抗領域RG2の寸法は変わらないからである。
【0098】
図24は、抵抗素子RSの幅W1と抵抗素子RSの抵抗値の相関を示すグラフである。
図25は、抵抗素子RSの幅W1と抵抗素子RSの抵抗温度係数の相関を示すグラフである。
図24および
図25の各グラフの横軸は、抵抗素子RSの幅W1に対応している。
図24のグラフの縦軸は、抵抗素子RSの抵抗値に対応している。
図25のグラフの縦軸は、抵抗素子RSの抵抗温度係数に対応している。
図24および
図25の各グラフは、シミュレーションによる分析に基づいている。
【0099】
図24のグラフから、抵抗素子RSの幅W1を小さくするほど、抵抗素子RSの抵抗値が増大することが分かる。
図25のグラフから、抵抗素子RSの幅W1を小さくするほど、抵抗素子RSの抵抗温度係数が上昇し、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値が小さくなることが分かる。
【0100】
このため、抵抗素子RSの幅W1が小さくなるほど、本実施の形態の効果は大きくなる。具体的には、抵抗素子RSの幅W1が40nm以下である場合、本実施の形態の効果は大きく、抵抗素子RSの幅W1が10nm以下である場合、本実施の形態の効果は更に大きい。
【0101】
抵抗素子RSの幅W1が10nmよりも大きく、かつ40nm以下である場合、抵抗素子RSの幅W1を変化させたときの抵抗素子RSの抵抗値の変化量と抵抗素子RSの抵抗温度係数の変化量が小さいため、抵抗素子RSの設計が容易である。
【0102】
抵抗素子RSの幅W1が10nm以下である場合、抵抗素子RSの抵抗値の増大効果と、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値の低減効果を、増大させることができる。
【0103】
<変形例>
図26は、変形例の抵抗素子RSの平面図である。
図27は、
図26のA2-A2線に沿う変形例の抵抗素子RSの断面図である。
図28は、
図26のA3-A3線に沿う変形例の抵抗素子RSの断面図である。
【0104】
図26に示される変形例の抵抗素子RSが、上記
図22に示される抵抗素子RSと相違しているのは、抵抗素子RSがスリットSLを有することである。
【0105】
抵抗素子RSに形成されるスリットSLの数は、1つ以上であるが、複数であることが好ましい。
図26の場合、各スリットSLは、X方向に延在している。
図28からも分かるように、抵抗素子RSのスリットSLは、抵抗素子RSの上面から下面まで貫通するように形成されている。言い換えると、抵抗素子RSのスリットSLは、絶縁膜IL1を露出するように形成されている。スリットSLとして、抵抗素子RSを貫通する貫通孔を適用することもできる。
【0106】
図27および
図28に示されるように、X方向に垂直な断面視において、低抵抗領域RG1は高抵抗領域RG2により囲まれている。抵抗素子RSにおいて、高抵抗領域RG2は、抵抗素子RSの上面に隣接する領域と、抵抗素子RSの下面に隣接する領域と、抵抗素子RSの側面に隣接する領域と、スリットSLの内壁に隣接する領域とにより、構成されている。言い換えると、抵抗素子RS内において、高抵抗領域RG2は、抵抗素子RSの上面近傍領域と、抵抗素子RSの下面近傍領域と、抵抗素子RSの側面近傍領域と、スリットSLの内壁近傍領域とにより、構成されている。低抵抗領域RG1に比べると、高抵抗領域RG2内において、シリコン(Si)濃度が高く、炭素(C)濃度が高く、かつ、クロム(Cr)濃度が低い。
【0107】
抵抗素子RSのうちスリットSLに接する部分のシリコン濃度は、抵抗素子RSのうちスリットSL、抵抗素子RSの上面、抵抗素子RSの側面および抵抗素子RSの下面から離れている部分のシリコン濃度よりも高い。また、抵抗素子RSのうちスリットSLに接する部分の炭素濃度は、抵抗素子RSのうちスリットSL、抵抗素子RSの上面、抵抗素子RSの側面および抵抗素子RSの下面から離れている部分の炭素濃度よりも高い。また、抵抗素子RSのうちスリットSLに接する部分のクロム濃度は、抵抗素子RSのうちスリットSL、抵抗素子RSの上面、抵抗素子RSの側面および抵抗素子RSの下面から離れている部分のクロム濃度よりも低い。
【0108】
抵抗素子RSの上面に隣接する高抵抗領域RG2と抵抗素子RSの下面に隣接する高抵抗領域RG2と抵抗素子RSの側面に隣接する高抵抗領域RG2だけでなく、スリットSLの内壁に隣接する高抵抗領域RG2も、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制する効果に寄与する。このため、
図26、
図27および
図28に示される変形例の抵抗素子RSは、上記
図22および
図23に示される抵抗素子RSに比べて、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑止する効果を、更に増大させることができる。
【0109】
(実施の形態2)
本実施の形態2の半導体装置の製造工程を図面を参照して説明する。
図29から
図33は、本実施の形態2の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【0110】
本実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に、上記
図2から
図8の工程を行う。
【0111】
上記実施の形態1と同様に材料層MTaを形成した後、本実施の形態2において、
図29に示されるように、材料層MTa上に絶縁膜HMを形成する。
【0112】
絶縁膜HMは、ハードマスクとして機能する絶縁膜である。絶縁膜HMは、例えば酸化シリコン膜などからなり、CVD法などを用いて形成することができる。
【0113】
次に、
図30に示されるように、絶縁膜HM上にフォトレジストパターンPRを、フォトリソグラフィ技術を用いて形成する。
【0114】
次に、
図31に示されるように、フォトレジストパターンPRをエッチングマスクとして用いて、絶縁膜HMをエッチングする。これにより、絶縁膜HMがパターニングされる。
【0115】
次に、
図31に示されるように、フォトレジストパターンPRと絶縁膜HMをエッチングマスクとして用いて、材料層MTaをエッチングする。これにより、材料層MTaがパターニングされて材料層MTが形成される。材料層MTは、パターニングされた材料層MTaからなる。その後、フォトレジストパターンPRをアッシングなどにより除去する。材料層MTの上面上に、材料層MTと同様の平面形状を有する絶縁膜HMが配置されている。材料層MTの上面は、絶縁膜HMに接している。
【0116】
あるいは、フォトレジストパターンPRをエッチングマスクとして用いて絶縁膜HMをエッチングした後、フォトレジストパターンPRを除去し、その後に、絶縁膜HMをエッチングマスクとして用いて、材料層MTaをエッチングすることもできる。
【0117】
次に、
図32に示されるように、材料層MTと材料層MT上の絶縁膜HMとからなる積層膜を覆うように、絶縁膜IL2上に絶縁膜IL3を形成する。絶縁膜IL3は、材料層MTの側面と絶縁膜HMの上面と絶縁膜HMの側面に接するように、形成される。絶縁膜IL3の形成後、絶縁膜IL3の上面をCMP法などを用いて平坦化することもできる。
【0118】
次に、本実施の形態2においても、上記実施の形態1と同様に、
図33に示されるように、絶縁膜IL3および絶縁膜IL2を貫通する複数の開口部OP2を形成する。次に、上記実施の形態1と同様に、
図33に示されるように、複数のプラグV2を形成する。次に、上記実施の形態1と同様に、
図33に示されるように、複数の配線M2を形成する。
【0119】
更に上層の絶縁膜および配線を形成する工程の図示および説明は省略する。
【0120】
上記実施の形態1において、材料層MTに対する結晶化アニール処理は、絶縁膜IL3を形成した後で行われる。これにより、材料層MT上に絶縁膜IL3が配置された状態で結晶化アニール処理が行われるため、上記
図19のグラフに示されるような濃度分布が形成される。
【0121】
本実施の形態2において、結晶化アニール処理は、絶縁膜HMを形成した後で行われる。これにより、材料層MTa上または材料層MT上に絶縁膜HMが配置された状態で結晶化アニール処理が行われるため、上記
図19のグラフに示されるような濃度分布が形成される。
【0122】
本実施の形態2において、結晶化アニール処理は、以下に説明するいずれかのタイミングで行うことができる。
【0123】
本実施の形態2において、結晶化アニール処理は、絶縁膜IL3を形成した後に、行うことができる。この結晶化アニール処理により、アモルファス状態の材料層MTの一部または全部が結晶化する。材料層MTの上面が絶縁膜HMで覆われ、かつ、材料層MTの側面が絶縁膜IL3で覆われた状態で結晶化アニール処理が行われるため、上記
図19のグラフに示されるような濃度分布が形成される。また、上記
図23に示されるような断面構造が得られる。
【0124】
あるいは、本実施の形態2において、結晶化アニール処理は、材料層MTaをパターニングして材料層MTを形成した後で、かつ、絶縁膜IL3を形成する前に、行うことができる。この結晶化アニール処理により、アモルファス状態の材料層MTの一部または全部が結晶化する。材料層MTの上面が絶縁膜HMで覆われた状態で結晶化アニール処理が行われるため、上記
図19のグラフに示されるような濃度分布が形成される。また、上記
図23に示されるような断面構造が得られる。
【0125】
あるいは、本実施の形態2において、結晶化アニール処理は、絶縁膜HMを形成した後で、かつ、フォトレジストパターンPRを形成する前に、行うことができる。この結晶化アニール処理により、アモルファス状態の材料層MTaの一部または全部が結晶化する。材料層MTaの上面が絶縁膜HMで覆われた状態で結晶化アニール処理が行われるため、上記
図19のグラフに示されるような濃度分布が形成される。また、
図34に示されるような断面構造が得られる。
【0126】
図34は、抵抗素子RSの断面図であり、上記
図23に相当する断面を示している。材料層MTaをパターニングする前に結晶化アニール処理が行われた場合、
図34に示されるように、抵抗素子RS(材料層MT)の側面に隣接する領域に、高抵抗領域RG2は形成されない。
【0127】
抵抗素子RSの側面に隣接する領域に高抵抗領域RG2が形成されている場合、抵抗素子RSの側面に隣接する領域に高抵抗領域RG2が形成されない場合よりも、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制する効果が大きい。すなわち、
図34の断面構造に比べると、
図23の断面構造が形成された場合、抵抗素子RSの抵抗温度係数の絶対値を抑制する効果が大きい。
【0128】
(実施の形態3)
本発明者の検討によれば、材料層MTaを形成する前に、絶縁膜IL2の上面に炭素(C)が付着し、その炭素が抵抗素子RSの抵抗温度係数を変動させることが分かった。絶縁膜IL2の上面に付着する炭素は、種々の製造装置あるいは搬送装置などの内部に存在する有機物に由来すると考えられる。絶縁膜IL2の上面に炭素(C)が付着した状態で、絶縁膜IL2上に材料層MTaを形成した場合、絶縁膜IL2の上面に付着している炭素(C)は、結晶化アニール中に材料層MTaまたは材料層MT内に拡散する。絶縁膜IL2の上面への炭素(C)の付着量と、結晶化アニール中における材料層MTaまたは材料層MT内への炭素(C)の拡散量は、変動するため、抵抗素子RSの炭素(C)の含有率が変動する。その結果、抵抗素子RSの抵抗温度係数が安定せずに、変動する。
【0129】
そこで、本実施の形態3において、複数のプラグV1を形成した後で、かつ、材料層MTaを形成する前に、絶縁膜IL2の上面に対して洗浄処理を行う。この洗浄処理により、絶縁膜IL2の上面に付着している炭素を除去することができる。その結果、抵抗素子RSの炭素(C)の含有率の変動を抑制または防止することができる。これにより、抵抗素子RSの抵抗温度係数の変動を抑制することができる。従って、抵抗素子RSを備える半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0130】
洗浄処理としては、プラズマ洗浄処理が好ましい。例えば、アルゴン(Ar)プラズマを用いたプラズマ処理を、絶縁膜IL2の上面に対して施した後に、絶縁膜IL2上に材料層MTaを形成する。
【0131】
プラズマ洗浄処理と材料層MTaの成膜工程は、半導体基板SBを大気中に開放することなく、連続的に行うことが好ましい。すなわち、プラズマ装置のチャンバ内に半導体基板SBを搬入し、絶縁膜IL2の上面に対してプラズマ洗浄処理を施した後、プラズマ装置のチャンバから半導体基板SBを搬出する。そして、プラズマ装置のチャンバから搬出された半導体基板SBを、大気中に開放することなく、成膜装置のチャンバ内に半導体基板SBを搬入し、絶縁膜IL2上に材料層MTaを形成する。これにより、プラズマ洗浄処理の後で、かつ、材料層MTaの成膜工程の前に、絶縁膜IL2の上面に、炭素(C)が再付着することを、防止することができる。
【0132】
図35は、抵抗素子RSの炭素(C)含有率と抵抗温度係数を示すグラフである。
図35のグラフの横軸は、抵抗素子RSの炭素(C)含有率に対応し、
図35のグラフの縦軸は、抵抗素子RSの抵抗温度係数に対応している。また、
図35のグラフには、絶縁膜IL2の上面に対するプラズマ洗浄処理を行った場合の抵抗素子RSの炭素(C)含有率と抵抗温度係数の測定結果と、絶縁膜IL2の上面に対する洗浄処理を行わなかった場合の抵抗素子RSの炭素(C)含有率と抵抗温度係数の測定結果を、プロットしてある。絶縁膜IL2の上面に対するプラズマ洗浄処理を行った場合の試料の数は4つである。また、絶縁膜IL2の上面に対する洗浄処理を行わなかった場合の試料の数は4つである。
【0133】
図35のグラフからも分かるように、絶縁膜IL2の上面に対する洗浄処理を行わなかった場合、抵抗素子RSの炭素(C)含有率と抵抗温度係数が変動している。絶縁膜IL2の上面に付着する炭素(C)が、結晶化アニール中に材料層MTaまたは材料層MT内に拡散することにより、抵抗素子RSの炭素(C)の含有率が変動し、その結果、抵抗素子RSの抵抗温度係数が変動したと考えられる。
【0134】
一方、絶縁膜IL2の上面に対するプラズマ洗浄処理を行った場合、
図35のグラフからも分かるように、抵抗素子RSの炭素(C)含有率と抵抗温度係数の変動が抑制される。
【0135】
絶縁膜IL2の上面に対する洗浄処理として、プラズマ洗浄処理の代わりにウェット洗浄処理を行うこともできる。ウェット洗浄処理において、絶縁膜IL2の上面に付着する炭素を除去するのに有効な薬液を用いる。具体的には、SPM(Sulfuric acid-hydrogen Peroxide Mixture)、APM(Ammonia-hydrogen Peroxide Mixture)またはオゾン水を用いたウェット洗浄処理を用いることができる。絶縁膜IL2の上面に付着している炭素(C)をウェット洗浄処理により除去した後で、絶縁膜IL2上に材料層MTaを形成することにより、抵抗素子RSの炭素(C)含有率と抵抗温度係数の変動を抑制することができる。また、ウェット洗浄処理から材料層MTaの形成までの時間を適切に管理することにより、炭素(C)が絶縁膜IL2の上面に再付着することを抑制できる。
【0136】
但し、絶縁膜IL2の上面に対する洗浄処理としてプラズマ洗浄処理を用いた場合、プラズマ洗浄処理の後、半導体基板SBを大気中に開放することなく、材料層MTaの成膜工程を連続的に行うことができる。このため、洗浄処理の後で、かつ、材料層MTaの成膜工程の前に、絶縁膜IL2の上面に、炭素(C)が再付着することを防止することができる。
【0137】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0138】
CD1 導電膜
HM 絶縁膜
IL1,IL2,IL3 絶縁膜
M1,M1a,M1b,M2,M2a,M2b 配線
MT,MTa,MT101 材料層
OP1,OP2 開口部
PR フォトレジストパターン
RG1 低抵抗領域
RG2 高抵抗領域
RS 抵抗素子
SB 半導体基板
SL スリット
V1,V1a,V1b,V2,V2a,V2b プラグ