(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020923
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】水洗大便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/24 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
E03D1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124562
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】畑間 健司
(72)【発明者】
【氏名】穴見 義和
(72)【発明者】
【氏名】永島 千明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 謙治
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039AD06
2D039BA01
2D039CB03
2D039DB00
(57)【要約】
【課題】洗浄水タンク内で発生した水蒸気を容易に処理することができると共に、排気通路を設ける部位の設計的な自由度の高い水洗大便器装置を提供する。
【解決手段】本発明は、洗浄水タンクを備えた水洗大便器装置(1)であって、水洗大便器本体(2)と、この水洗大便器本体の後部に取り付けられ、水洗大便器本体を洗浄する洗浄水を貯留するための洗浄水タンク(26)と、この洗浄水タンク内の空気が流入する流入口(44a)から洗浄水タンクの外側の外気に連通した排気口(44b)まで延びる排気通路(44)と、を有し、排気通路は、洗浄水タンク内から流入した空気に含まれる水蒸気が排気通路の内壁面上で結露して、結露水が流入口へ戻るように、横方向に延びると共に、排気通路の外壁面の少なくとも一部は洗浄水タンク外の空気に接触していることを特徴としている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水タンクを備えた水洗大便器装置であって、
水洗大便器本体と、
この水洗大便器本体の後部に取り付けられ、上記水洗大便器本体を洗浄する洗浄水を貯留するための洗浄水タンクと、
この洗浄水タンク内の空気が流入する流入口から上記洗浄水タンクの外側の外気に連通した排気口まで延びる排気通路と、を有し、
上記排気通路は、上記洗浄水タンク内から流入した空気に含まれる水蒸気が上記排気通路の内壁面上で結露して、結露水が上記流入口へ戻るように、横方向に延びると共に、上記排気通路の外壁面の少なくとも一部は上記洗浄水タンク外の空気に接触していることを特徴とする水洗大便器装置。
【請求項2】
上記排気通路は、その内壁面の下端が、上記排気口側よりも上記流入口側が低くなるように傾斜している請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項3】
上記排気通路は、上記流入口から上記排気口までの距離が、上記排気通路の高さよりも長くなるように構成されている請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項4】
上記排気通路は、上記流入口の開口面積と、上記排気口の開口面積が略同一になるように構成されている請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項5】
上記排気通路の上記排気口は、側方に向けて開口している請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項6】
上記排気通路の上記排気口は、その上縁が、上記排気通路の天井面よりも低くなるように構成されている請求項5記載の水洗大便器装置。
【請求項7】
上記排気通路の上記流入口及び上記排気口は、開口面積が225mm2以上に構成されている請求項1記載の水洗大便器装置。
【請求項8】
上記排気通路は、上記流入口が形成された上流部分と、上記排気口が形成された下流部分が別部材により構成されている請求項1記載の水洗大便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗大便器装置に関し、特に、洗浄水タンクを備えた水洗大便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-105887号公報(特許文献1)には、トイレ装置が記載されている。このトイレ装置は、密閉式の洗浄水タンクと、局部洗浄装置及び洗浄水タンクを内部に収納するケーシングと、給水装置と、オーバーフロー管と、洗浄水タンクの内部空間から洗浄水タンクの外部のケーシング内部空間まで延びる通気管と、を備えている。そして、通気管は、洗浄水タンクの内部空間に設けられた入口部と、入口部から下方に延びる下降管路と、下降管路の下端において開口される出口部とを備えており、通気管の入口部は、オーバーフロー管の上端開口よりも上方に位置すると共に上方に向けて開口している。
【0003】
このように、特許文献1記載のトイレ装置においては、洗浄水タンクの内部空間と連通した通気管が下方に向けて延び、下端において開口されている。また、通気管の入口を上方に向けて開口させ、オーバーフロー管の上端開口よりも上方に位置させている。これにより、洗浄水タンク内の水蒸気が通気管に流入しにくくなり、オーバーフロー管から排出される水蒸気が多くなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のトイレ装置においては、通気管に流入し、通気管内で結露した結露水は、洗浄水タンクの外へ落ちるため、通気管から排出される結露水を別途、処理する必要がある。また、通気管から流出する結露水を水洗便器内に排出しようとすると、通気管の入口が高い位置となり、ローシルエットタイプ形の水洗大便器を構成することが困難となる。
【0006】
従って、本発明は、洗浄水タンク内で発生した水蒸気を容易に処理することができると共に、排気通路を設ける部位の設計的な自由度の高い水洗大便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水タンクを備えた水洗大便器装置であって、水洗大便器本体と、この水洗大便器本体の後部に取り付けられ、水洗大便器本体を洗浄する洗浄水を貯留するための洗浄水タンクと、この洗浄水タンク内の空気が流入する流入口から洗浄水タンクの外側の外気に連通した排気口まで延びる排気通路と、を有し、排気通路は、洗浄水タンク内から流入した空気に含まれる水蒸気が排気通路の内壁面上で結露して、結露水が流入口へ戻るように、横方向に延びると共に、排気通路の外壁面の少なくとも一部は洗浄水タンク外の空気に接触していることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、排気通路の外壁面の少なくとも一部が洗浄水タンク外の空気に接触しているので、排気通路が外気により冷却され、洗浄水タンク内から流入した空気に含まれる水蒸気を排気通路内で効果的に結露させることができる。この結果、湿気を多く含む空気が洗浄水タンクから流出して、洗浄水タンク近傍に設けられた電装部品等に悪影響を与えるのを防止することができる。また、洗浄水タンク内から流入した空気に含まれる水蒸気は、排気通路の内壁面上で結露して、結露水が流入口へ戻される。このため、発生した結露水を処理するための特別な構成を設ける必要がなく、排気通路を設ける部位の設計的な自由度を高くすることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、排気通路は、その内壁面の下端が、排気口側よりも流入口側が低くなるように傾斜している。
【0010】
このように構成された本発明によれば、排気通路の内壁面の下端が、排気口側よりも流入口側が低くなるように傾斜しているので、排気通路内で発生した結露水を、確実に流入口側へ戻すことができ、結露水の排気口への流出を抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、排気通路は、流入口から排気口までの距離が、排気通路の高さよりも長くなるように構成されている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、流入口から排気口までの距離が、排気通路の高さよりも長くなるように排気通路が構成されている。このため、排気通路に流入した空気に含まれる水蒸気を結露させるための十分な内壁面の面積を確保することができ、水蒸気を確実に結露させることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、排気通路は、流入口の開口面積と、排気口の開口面積が略同一になるように構成されている。
【0014】
このように構成された本発明によれば、排気通路の流入口の開口面積と、排気口の開口面積が略同一に構成されているので、排気通路に対する空気の流入抵抗と流出抵抗が概ね等しくなり、空気の流入と流出を適正にバランスさせることができる。この結果、排気通路として十分な容積を確保しているにも関わらず、十分に空気を流入させることができなかったり、流入した空気中の水蒸気を十分に結露させることなく流出させてしまったりすることがなく、効果的に結露を発生させることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、排気通路の上記排気口は、側方に向けて開口している。
【0016】
このように構成された本発明によれば、排気通路の排気口が側方に向けて開口しているので、排気通路に流入した空気が、そのまま上方に抜けてしまうのを防止することができ、排気通路内で十分に水蒸気を結露させることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、排気通路の排気口は、その上縁が、排気通路の天井面よりも低くなるように構成されている。
【0018】
このように構成された本発明によれば、排気通路の排気口の上縁が、排気通路の天井面よりも低くなるように構成されているので、排気通路の天井面で結露した結露水を、確実に排気通路の中に落下させることができ、結露水を流入口へ戻すことができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、排気通路の流入口及び排気口は、開口面積が225mm2以上に構成されている。
【0020】
洗浄水タンク内の洗浄水が水洗大便器本体へ排出される際には、排出された洗浄水と同じ体積の空気が排気通路を通って洗浄水タンク内へ吸入される。上記のように構成された本発明によれば、排気通路の流入口及び排気口の開口面積が225mm2以上に構成されているので、洗浄水タンク内の洗浄水が排出される際、排気通路を通って十分に空気を吸入することができ、洗浄水の排出が阻害されるのを防止することができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、排気通路は、流入口が形成された上流部分と、排気口が形成された下流部分が別部材により構成されている。
【0022】
このように構成された本発明によれば、排気通路が、流入口が形成された上流部分と、排気口が形成された下流部分が別部材により構成されている。このため、排気通路の上流部分と下流部分の間に熱抵抗を与えることができる。この結果、上流部分を構成する部材又は下流部分を構成する部材に発熱する部品が取り付けられている場合でも、発熱部品が取り付けられていない方の部材の温度を低く維持することができ、温度の低い部分で十分に結露を発生させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の水洗大便器装置によれば、洗浄水タンク内で発生した水蒸気を容易に処理することができると共に、排気通路を設ける部位の設計的な自由度の高い水洗大便器装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態による水洗大便器装置を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態による水洗大便器装置において、
図1のII-II線に沿う側面断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の水洗大便器装置における洗浄水の供給系統を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水供給装置の部分を拡大して示す正面図である。
【
図5】本実施形態の水洗大便器装置に備えられている洗浄水タンクの上部を拡大して示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態による水洗大便器装置を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う側面断面図である。
【0026】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器装置1は、サイホンジェット式の水洗便器であり、陶器製の水洗大便器本体2と、この水洗大便器本体2の上面に配置された樹脂製の便座及び便蓋(図示せず)と、水洗大便器本体2の後方上部に配置され、樹脂製のカバー(図示せず)に覆われた洗浄水供給装置4と、を備えている。
【0027】
水洗大便器本体2には、汚物を受けるボウル部6と、ボウル部6の底部に設けられサイホン作用により汚物を排出するための排水トラップ管路8と、リム吐水を行うリム吐水口10と、リム吐水口に洗浄水を導くためのリム導水路12と、ジェット吐水を行うジェット吐水口14と、ジェット吐水口14に洗浄水を導くためのジェット導水路16と、が形成されている。
【0028】
ボウル部6は、ボウル状の汚物受け面18と、ボウル部6の上縁部に沿って形成されたリム部20と、これらの汚物受け面18とリム部20との間に形成された棚部21と、を備えている。また、ボウル部6は、汚物受け面18の下方の領域に形成されて排水トラップ管路8に接続されるツボ部22を備えている。このツボ部22の内部には、封水面Wが形成されている。
【0029】
排水トラップ管路8は、入口部8aと、入口部8aから上方へ延びる上昇管路8bと、この上昇管路8bから下方へ延びる下降管路8cと、この下降管路8cと上昇管路8bとの間に位置して封水水位を規定する頂部8dと、を備えている。
ここで、排水トラップ管路8の下降管路8cの下端は、排水ソケット(図示せず)を介して排水管(図示せず)に接続されている。
【0030】
リム吐水口10は、水洗大便器本体2を前方から見て、リム部20の左側後方に形成されている。リム吐水口10は、洗浄水を前方に向かって吐水し、この洗浄水が汚物受け面18へ流下しながらリム部20の内周面及び棚部21の棚面上を旋回するようになっている。
【0031】
リム導水路12は、リム吐水口10に向かって流路断面が徐々に小さくなる先細り形状に形成されている。リム導水路12には、水道から洗浄水供給装置4を介して洗浄水が供給され、水道の給水圧力によりリム吐水口10から洗浄水が吐水されるようになっている。
【0032】
ジェット吐水口14は、ボウル部6の底部に形成されている。ジェット吐水口14は、排水トラップ管路8の入口部8aに対向して配置され、排水トラップ管路8の入口部8aに向けられている。ジェット吐水口14は、洗浄水を排水トラップ管路8の入口部8aに向かって吐水し、この洗浄水が排水トラップ管路8内に流入してサイホン作用を起動するようになっている。
【0033】
ジェット導水路16は、洗浄水供給装置4から前方へ延びる上流側流路16aと、この上流側流路から屈曲する屈曲流路16bと、この屈曲流路から後方へ延びてジェット吐水口14と接続する下流側流路16cと、を備えている。ジェット導水路16には、洗浄水供給装置4の洗浄水タンク26(
図3)から洗浄水が供給され、洗浄水のヘッド圧によりジェット吐水口14から洗浄水が吐水されるようになっている。
【0034】
次に、
図3乃至
図5を新たに参照して、本発明の実施形態の水洗大便器装置1に備えられている洗浄水供給装置4を説明する。
図3は、本発明の実施形態の水洗大便器装置1における洗浄水の供給系統を示すブロック図である。
図4は、本実施形態の水洗大便器装置1に備えられている洗浄水供給装置の部分を拡大して示す正面図である。
図5は、本実施形態の水洗大便器装置1に備えられている洗浄水タンクの上部を拡大して示す正面断面図である。
【0035】
図3に示すように、洗浄水供給装置4は、水道からの洗浄水の供給、停止を行うバルブユニット24、及びバルブユニット24を介して供給された洗浄水を貯留する樹脂製の洗浄水タンク26から構成されている。
【0036】
バルブユニット24には、定流量弁30と、タンク給水用電磁弁32と、リム吐水用電磁弁34と、タンク給水用電磁弁32及びリム吐水用電磁弁34を制御するコントローラ35が内蔵されている。タンク給水用電磁弁32及びリム吐水用電磁弁34にはダイアフラム弁(図示せず)が夫々内蔵されており、これらのダイアフラム弁の開閉により洗浄水が供給、停止される。また、洗浄水タンク26には、排水弁36と、フロートスイッチ38と、バキュームブレーカ40が備えられている。なお、タンク給水用電磁弁32には、ダイアフラム弁の他、手動で開閉される手動操作弁を設けてもよい。
【0037】
本実施形態において、洗浄水タンク26は、約2リットルの容積を有する小型の樹脂製のタンクである。洗浄水タンク26の下部は、水洗大便器本体2のリム部20の上面よりも下方、且つ、排水トラップ管路8の頂部8dよりも上方に配置されている。これにより、水洗大便器装置1は、ローシルエットタイプの便器になっている。また、本実施形態においては、洗浄水タンク26内の洗浄水は、重力によりジェット吐水口14から吐出される。
【0038】
止水栓28は、メンテナンス時等に、水道の配管28aから供給される水を止水させるように構成されており、止水栓28を通過した水道水が、洗浄水としてバルブユニット24に流入する。従って、通常使用時において、止水栓28は「開」状態で使用される。
定流量弁30は、止水栓28の下流側に設けられ、水道から供給された水を所定流量に調整して流出させるように構成されている。この定流量弁30から流出した水は分岐され、タンク給水用電磁弁32及びリム吐水用電磁弁34に夫々流入する。
【0039】
タンク給水用電磁弁32は、使用者の洗浄操作に基づいて開閉され、タンク給水用電磁弁32から流出した洗浄水は、洗浄水タンク26内に流入し、貯留される。
リム吐水用電磁弁34は、使用者の洗浄操作に基づいて開閉され、リム吐水用電磁弁34から流出した洗浄水は、リム導水路12を介して水洗大便器本体2のリム吐水口10から吐出される。
【0040】
コントローラ35は、使用者によって操作されたリモコン35aからの制御信号を受信して、タンク給水用電磁弁32及びリム吐水用電磁弁34を開閉制御するように構成されている。また、コントローラ35は、フロートスイッチ38による検出信号に基づいて、タンク給水用電磁弁32を制御するように構成されている。
【0041】
排水弁36は、洗浄水タンク26の底面に設けられており、使用者の洗浄操作に基づいて開弁され、洗浄水タンク26内に貯留された洗浄水を、ジェット導水路16を介してリム吐水口10から吐出される。また、排水弁36は、洗浄水タンク26の上部に設けられた便器洗浄用モータ36aによって排水口26aから引き上げられ、排水口26aを開弁させるように構成されている。便器洗浄用モータ36aは、便器洗浄時において、コントローラ35からの制御信号に基づいて、所定のタイミングで排水弁36を引き上げるように構成されている。
【0042】
フロートスイッチ38は、洗浄水タンク26内の水位を検出するように構成され、洗浄水タンク26内の水位が所定の貯水水位に到達したことを検出し、検出信号をコントローラ35に送るように構成されている。
【0043】
バキュームブレーカ40は、洗浄水タンク26内の、所定の貯水水位よりも上方に配置され、リム吐水用電磁弁34の下流側、且つリム導水路12の上流側に設けられている。これにより、リム吐水用電磁弁34の側が負圧になった場合には、バキュームブレーカ40から大気が吸入され、リム吐水口10の側からリム吐水用電磁弁34の側への洗浄水の逆流が防止される。また、リム吐水口10の側から洗浄水が逆流した場合には、逆流した洗浄水はバキュームブレーカ40から流出して、洗浄水タンク26の中に流入する。
【0044】
次に、
図4及び
図5を参照して、洗浄水タンクの構造を説明する。
図4に示すように、洗浄水タンク26は、略直方体形状の樹脂製のタンクであり、水洗大便器本体2の後部に取り付けられ、水洗大便器本体2を洗浄する洗浄水を貯留するように構成されている。また、洗浄水タンク26の底面には、排水口26aが設けられ、この排水口26aが排水弁36によって開閉されるように構成されている。
【0045】
この排水口26aの下流側には、水洗大便器本体2に設けられたジェット導水路16が接続されており、排水弁36が開弁されると、洗浄水タンク26内の洗浄水が、水洗大便器本体2のジェット導水路16へ排出される。これにより、洗浄水が、ジェット導水路16を通ってジェット吐水口14から吐出される。なお、本実施形態においては、洗浄水タンク26内の洗浄水は、ジェット吐水口14のみから吐出されるが、洗浄に使用される洗浄水全量が洗浄水タンクから供給されるタイプの水洗大便器装置に本発明を適用することもできる。
【0046】
また、洗浄水タンク26は、上方が開口した、洗浄水を貯留するための樹脂製の容器であるが、上方の開口部は蓋部材42により覆われている。また、上述したバキュームブレーカ40は蓋部材42の下側に収容され、排水弁36を引き上げるための便器洗浄用モータ36aは、蓋部材42の上側に配置されている。さらに、蓋部材42の内部には、排気通路44(
図5)が形成されており、洗浄水タンク26内の空間と、蓋部材42の上側の空間(外気)は、実質的に排気通路44のみを介して連通している。即ち、洗浄水タンク26は、密閉式の洗浄水タンクである。
【0047】
さらに、本実施形態において、蓋部材42は、排水口26aの上方に配置された第1蓋部材42aと、バキュームブレーカ40を収容した第2蓋部材42bの2部材から構成され、洗浄水タンク26の上方の開口を覆っている。また、第2蓋部材42bの上面には、排気通路44(
図5)の後方側に、便器洗浄用モータ36aが取り付けられている。
【0048】
次に、
図5を参照して、蓋部材42に設けられた排気通路44の構造を説明する。
図5に示すように、排気通路44は、蓋部材42の内部に形成された通路であり、洗浄水タンク26内の空気が流入する流入口44aから洗浄水タンク26の外側の外気に連通した排気口44bまで延びている。なお、上述したように、本実施形態において、洗浄水供給装置4(洗浄水タンク26)は樹脂製のカバー(図示せず)によって覆われている。しかしながら、このカバーの内側の空間と外側の空間は容易に空気が流通可能であるため、本明細書においては、カバーの内側であっても蓋部材42の上側の空気は「外気」としている。
【0049】
また、排気通路44は、洗浄水タンク26の一方の端部近傍に形成された流入口44aから、洗浄水タンク26の中央部付近の排気口44bまで横方向に延びており、洗浄水タンク26の幅方向に向けられている。さらに、流入口44aが形成された排気通路44の上流側の部分は、蓋部材42の一部を構成する第1蓋部材42aによって形成され、排気口44bが形成された排気通路44の下流側の部分は、蓋部材42の一部を構成する第2蓋部材42bによって形成されている。即ち、排気通路44の上流部分と下流部分は、別部材により構成されている。
【0050】
ここで、流入口44aは、洗浄水タンク26の一方の端部近傍に形成されているため、横方向に延びる排気通路44を設けるスペースを確保しやすい。また、排気通路44は、洗浄水タンク26の前端部に設けられており、洗浄水タンク26の上方を覆うように取り付けられるケースカバー(図示せず)の内壁面との間に一定の間隔が確保されるようになっている。排気通路44は、洗浄水タンク26の上方に設けられる各部材との配置に合わせて任意の位置に設けることができる。しかしながら、排気通路44から排気された空気に含まれる水蒸気が洗浄水タンク26を覆うケースカバーの内壁面で結露しないよう、洗浄水タンク26とこれを覆うケースカバーの間には一定の空間を確保することが好ましい。
【0051】
また、排気通路44の流入口44aは、排気通路44の底面に形成された円形の穴であり、この流入口44aを介して、水蒸気を含む洗浄水タンク26内の空気が排気通路44の中に流入する。一方、排気口44bは、排気通路44の下流端の、ほぼ鉛直方向に向けられた壁面に形成された円形の穴であり、側方に向けて開口して、外気に連通している。また、流入口44aの開口面積と、排気口44bの開口面積は、略同一に構成されている。ここで、排気通路44の断面積は、流入口44a及び排気口44bの面積よりも大きく、排気通路44の内部には、比較的大きな容積が確保されている。また、流入口44aから排気口44bまでの距離は排気通路44の高さよりも長く、排気通路44は細長く構成されている。
【0052】
さらに、本実施形態において、排気通路44の外壁面(排気通路44を構成する壁の外側の面)は、排気通路44の前方及び上方において、洗浄水タンク26外の空気(外気)に接触している。このため、排気通路44の内壁面は比較的低温に維持され、流入口44aから排気通路44内に流入した空気に含まれる水蒸気は、内壁面に接触して結露する。
【0053】
ここで、排気通路44が形成された蓋部材42の第2蓋部材42bには、便器洗浄用モータ36aが取り付けられており、第2蓋部材42bは便器洗浄用モータ36aの熱により暖められる場合がある。しかしながら、排気通路44の上流側の部分は、第2蓋部材42bとは別部材の第1蓋部材42aにより形成されているため、便器洗浄用モータ36aの熱は第1蓋部材42aに伝わりにくい。このため、便器洗浄用モータ36aが熱を発生した場合でも、排気通路44の上流側の部分の内壁面は比較的低温に維持され、排気通路44に流入した空気中の水蒸気を確実に結露させることができる。
【0054】
また、排気通路44の内壁面の下端である底面44cは、排気口44b側よりも流入口44a側が低くなるように傾斜している。このため、排気通路44の内壁面上で結露した結露水は、排気通路44の底面44cに落ち、底面44cの上を流入口44aへ向かって流れて、流入口44aへ戻る。このように、排気通路44内で発生した結露水は、流入口44aへ戻り、洗浄水タンク26内に落下するので、結露水を処理するための特別な構成を設ける必要がない。
【0055】
さらに、排気通路44の出口側の端面には、排気通路44の天井面44dよりも低くなった下がり壁44eが設けられている。即ち、排気通路44の排気口44bは、その上縁が、排気通路44の天井面44dよりも低くなるように構成されている。このため、排気通路44内の天井面44dで結露した結露水は、確実に排気通路44の中に落ち、結露水を流入口44aの側へ戻すことができる。
【0056】
なお、洗浄水タンク26内の排水弁36が引き上げられ、排水口26aから洗浄水が排出されると、外気が排気通路44を通って洗浄水タンク26の中に吸入される。ここで、排気通路44の流入口44a又は排気口44bの断面積が小さい場合には、急速に外気を吸入することができず、排水口26aからの洗浄水の排出の妨げとなる。本実施形態においては、流入口44a、排気口44bとも十分な断面積が確保されているため、洗浄水排出の妨げとなることはない。好ましくは、流入口44a、及び排気口44bの開口面積を225mm2以上に構成する。
【0057】
次に、
図1及び
図3を参照して、本発明の実施形態による水洗大便器装置1の作用を説明する。
まず、使用者がリモコン35aに設けられた便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、コントローラ35に洗浄指示信号が送信される。洗浄指示信号を受信するとコントローラ35は、バルブユニット24のリム吐水用電磁弁34に制御信号を送り、これを開弁させる。これにより、水道から供給された洗浄水は、リム吐水用電磁弁34、バキュームブレーカ40、リム導水路12を通ってリム吐水口10から吐出される。リム吐水口10から吐出された洗浄水は、ボウル部6の汚物受け面18上に旋回流を形成し、汚物受け面18を洗浄する。
【0058】
リム吐水用電磁弁34を開弁させた後、所定時間経過すると、コントローラ35は便器洗浄用モータ36aに制御信号を送り、便器洗浄用モータ36aにより排水弁36を引き上げる。これにより、排水弁36が開弁され、洗浄水タンク26内に貯留されていた洗浄水が、ジェット導水路16を通ってジェット吐水口14から吐出される。これにより、排水トラップ管路8内でサイホン現象が誘発され、ボウル部6内の洗浄水及び汚物が、排水トラップ管路8を通って排出される。また、この際、排気通路44を通って、洗浄水タンク26の中に外気が吸入される。
【0059】
また、コントローラ35はバルブユニット24のタンク給水用電磁弁32に制御信号を送り、これを開弁させる。これにより、水道から供給された洗浄水は、タンク給水用電磁弁32を通って洗浄水タンク26の中に給水される。
【0060】
さらに、洗浄水タンク26内の水位が所定水位まで低下すると、排水弁36により排水口26aが閉弁され、ジェット吐水口14からの吐水が停止される。排水口26aが閉弁された後も、リム吐水用電磁弁34は開弁されたままにされ、水道から供給された洗浄水はリム吐水口10から吐出される。リム吐水口10からの吐水により、ボウル部6内の水位が所定の水位まで上昇し、リフィルが完了すると、コントローラ35はバルブユニット24のリム吐水用電磁弁34に制御信号を送り、これを閉弁させる。
【0061】
一方、排水弁36が閉弁された後も、タンク給水用電磁弁32は開弁されているため、洗浄水タンク26の中に流入した洗浄水により、洗浄水タンク26内の水位が上昇する。洗浄水タンク26内の水位が所定の貯水水位まで上昇すると、フロートスイッチ38がこれを検知し、コントローラ35に検知信号が送られる。フロートスイッチ38からの検知信号を受信すると、コントローラ35はタンク給水用電磁弁32に制御信号を送り、これを閉弁させる。これにより、洗浄水タンク26への給水が完了し、一回の便器洗浄が完了する。
【0062】
本発明の実施形態の水洗大便器装置1によれば、排気通路44の外壁面の一部が洗浄水タンク26外の空気に接触しているので、排気通路44が外気により冷却され、洗浄水タンク26内から流入した空気に含まれる水蒸気を排気通路44内で効果的に結露させることができる。この結果、湿気を多く含む空気が洗浄水タンク26から流出して、洗浄水タンク26近傍に設けられた便器洗浄用モータ36a等の電装部品等に悪影響を与えるのを防止することができる。また、洗浄水タンク26内から流入した空気に含まれる水蒸気は、排気通路44の内壁面上で結露して、結露水が流入口へ戻される。このため、発生した結露水を処理するための特別な構成を設ける必要がなく、排気通路44を設ける部位の設計的な自由度を高くすることができる。
【0063】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、排気通路44の内壁面の下端が、排気口44b側よりも流入口44a側が低くなるように傾斜しているので、排気通路44内で発生した結露水を、確実に流入口44a側へ戻すことができ、結露水の排気口44bへの流出を抑制することができる。
【0064】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、流入口44aから排気口44bまでの距離が、排気通路44の高さよりも長くなるように排気通路44が構成されている。このため、排気通路44に流入した空気に含まれる水蒸気を結露させるための十分な内壁面の面積を確保することができ、水蒸気を確実に結露させることができる。
【0065】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、排気通路44の流入口44aの開口面積と、排気口44bの開口面積が略同一に構成されているので、排気通路44に対する空気の流入抵抗と流出抵抗が概ね等しくなり、空気の流入と流出を適正にバランスさせることができる。この結果、排気通路44として十分な容積を確保しているにも関わらず、十分に空気を流入させることができなかったり、流入した空気中の水蒸気を十分に結露させることなく流出させてしまったりすることがなく、効果的に結露を発生させることができる。
【0066】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、排気通路44の排気口44bが側方に向けて開口しているので、排気通路44に流入した空気が、そのまま上方に抜けてしまうのを防止することができ、排気通路44内で十分に水蒸気を結露させることができる。
【0067】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、排気通路44の排気口44bの上縁が、排気通路44の天井面44dよりも低くなるように構成されているので、排気通路44の天井面44dで結露した結露水を、確実に排気通路44の中に落下させることができ、結露水を流入口44aへ戻すことができる。
【0068】
さらに、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、排気通路44の流入口44a及び排気口44bの開口面積が225mm2以上に構成されているので、洗浄水タンク26内の洗浄水が排出される際、排気通路44を通って十分に空気を吸入することができ、洗浄水の排出が阻害されるのを防止することができる。
【0069】
また、本実施形態の水洗大便器装置1によれば、排気通路44が、流入口44aが形成された上流部分である第1蓋部材42aと、排気口44bが形成された下流部分である第2蓋部材42bにより構成されている。このため、排気通路44の上流部分と下流部分の間に熱抵抗を与えることができる。この結果、下流部分を構成する第2蓋部材42bに発熱する便器洗浄用モータ36aが取り付けられていても、発熱部品が取り付けられていない第1蓋部材42aの温度を低く維持することができ、温度の低い部分で十分に結露を発生させることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 水洗大便器装置
2 水洗大便器本体
4 洗浄水供給装置
6 ボウル部
8 排水トラップ管路
8a 入口部
8b 上昇管路
8c 下降管路
8d 頂部
10 リム吐水口
12 リム導水路
14 ジェット吐水口
16 ジェット導水路
16a 上流側流路
16b 屈曲流路
16c 下流側流路
18 汚物受け面
20 リム部
21 棚部
22 ツボ部
24 バルブユニット
26 洗浄水タンク
26a 排水口
28 止水栓
28a 水道の配管
30 定流量弁
32 タンク給水用電磁弁
34 リム吐水用電磁弁
35 コントローラ
35a リモコン
36 排水弁
36a 便器洗浄用モータ
38 フロートスイッチ
40 バキュームブレーカ
42 蓋部材
42a 第1蓋部材
42b 第2蓋部材
44 排気通路
44a 流入口
44b 排気口
44c 底面
44d 天井面
44e 下がり壁