IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -培養システム 図1
  • -培養システム 図2
  • -培養システム 図3
  • -培養システム 図4
  • -培養システム 図5
  • -培養システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020941
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20250205BHJP
   C12N 1/12 20060101ALN20250205BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124583
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳志
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029DA05
4B029GB02
4B065AA83X
4B065BC02
4B065BC03
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
【課題】培養効率の低下を抑制することができる培養システムを提供する。
【解決手段】培養システム1は、光合成微生物Pを培養するための培養液Cを収容する培養槽24aと、Z軸方向に延びると共に、Z軸方向に昇降可能に設けられた排出管51であって、下端部に設けられた開口部56を有し、開口部56から培養液Cを排出する排出管51と、培養槽24aと排出管51とを連通し、可撓性を有する連通管53aと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光合成微生物を培養するための培養液を収容する第1培養槽と、
上下方向に延びると共に、前記上下方向に昇降可能に設けられた排出管であって、下端部に設けられた第1開口部を有し、前記第1開口部から前記培養液を排出する前記排出管と、
前記第1培養槽と前記排出管とを連通し、可撓性を有する第1連通管と、
を備える、
培養システム。
【請求項2】
前記第1培養槽は、底部を有し、
前記第1連通管は、
前記底部に接続されている第1端と、
前記排出管に接続されている第2端と、を有する、
請求項1に記載の培養システム。
【請求項3】
前記光合成微生物を培養するための前記培養液を収容する第2培養槽と、
前記第2培養槽と前記排出管とを連通し、可撓性を有する第2連通管と、を更に備える、
請求項1に記載の培養システム。
【請求項4】
前記第1培養槽は、第1底部を有し、
前記第1連通管は、
前記第1底部に接続されている第1端と、
前記排出管に接続されている第2端と、を有し、
前記第2培養槽は、第2底部を有し、
前記第2連通管は、
前記第2底部に接続されている第3端と、
前記排出管に接続されている第4端と、を有し、
前記第1培養槽と前記第2培養槽とは、前記上下方向に配列されており、
前記第1端と前記第3端との距離は、前記第2端と前記第4端との距離と等しい、
請求項3に記載の培養システム。
【請求項5】
前記排出管は、
前記第1開口部を含み、前記上下方向に延びると共に前記第1連通管が接続された本体部と、
前記第1開口部とは反対側に設けられた第2開口部を含み、前記本体部の上端から延びる延出部と、を有する、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の培養システム。
【請求項6】
前記第2開口部は、下方を向いている、
請求項5に記載の培養システム。
【請求項7】
前記排出管の前記第1開口部から排出された前記培養液を貯留する受槽と、
前記受槽に貯留されている前記培養液の液量を計測する液量計測部と、
前記受槽に貯留されている前記培養液を前記第1培養槽に供給する供給部と、
前記排出管を昇降させる駆動部と、
前記供給部及び前記駆動部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記駆動部を制御することで、前記排出管を所定高さに移動させ、
前記排出管が前記所定高さに位置する状態で、前記供給部を制御することで前記培養液の供給を開始し、
前記培養液の供給を開始してから所定時間が経過し、かつ、前記液量が所定液量以下であるという条件が満たされたか否かを判定し、
前記条件が満たされていないと判定された場合、前記培養液の供給を再び開始し、
前記条件が満たされたと判定された場合、前記培養液の供給を停止する、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光合成によって増殖する光合成微生物が注目されている。光合成微生物の一種である藻類は、栄養素を含む液体中で細胞分裂を繰り返すことで増殖する微細な植物プランクトンである。藻類は、成長が早く、培養しやすいので、様々な産業で利用可能な有機性資源として有効活用が期待されている。例えば、藻類は、食品、薬品、吸着材又は油の原料として利用される。
【0003】
このような光合成微生物を培養する技術として、特許文献1には、微細藻類を培養するための藻類培養システムが記載されている。この藻類培養システムは、微細藻類が懸濁された培養液で満たされた培養槽と、培養液を溶解部に輸送するためのポンプと、培養液に二酸化炭素を供給する溶解部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-65331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の藻類培養システムでは、培養槽内の培養液は、ポンプによって培養槽から溶解部に送られる。このため、ポンプのインペラに藻類が巻き込まれることによって、藻類が切断され、培養効率が低下するおそれがある。
【0006】
本開示は、培養効率の低下を抑制することができる培養システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る培養システムは、光合成微生物を培養するための培養液を収容する第1培養槽と、上下方向に延びると共に、上下方向に昇降可能に設けられた排出管であって、下端部に設けられた第1開口部を有し、第1開口部から培養液を排出する排出管と、第1培養槽と排出管とを連通し、可撓性を有する第1連通管と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の各側面及び各実施形態によれば、培養効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る培養システムを概略的に示す図である。
図2図2は、図1に示される培養部を概略的に示す図である。
図3図3は、図2に示される培養装置を概略的に示す図である。
図4図4は、一実施形態に係る培養システムの動作を示すフローチャートである。
図5図5は、図4に示される準備処理を詳細に示すフローチャートである。
図6図6は、培養液の排出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。各図には、XYZ座標系が示される場合がある。Y軸方向は、X軸方向及びZ軸方向と交差(例えば、直交)する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と交差(例えば、直交)する方向である。本明細書において、「等しい」とは、必ずしも厳密に等しいことを意味するものでなく、本発明の効果を奏する限りにおいて、所定の範囲内において互いに異なることを含む。
【0011】
図1は、一実施形態に係る培養システム1を概略的に示す図である。図1に示される培養システム1は、光合成微生物Pを培養するためのシステムである。培養システム1は、閉鎖型の培養システムである。培養システム1は、太陽光により光合成微生物Pに光合成を行わせて、光合成微生物Pを培養する。培養システム1は、培養部2と、排出部3と、循環部4と、制御部5と、を備える。
【0012】
本実施形態では、光合成微生物Pは藻類である。藻類は、培養液中で光合成を行って細胞分裂を繰り返すことで増殖する微細な植物プランクトンである。このような藻類としては、緑藻(クロレラ、クラミドモナス、ヘマトコッカス、ボトリオコッカス及びドナリエラ)、トレボキシア藻(パラクロレラ)、プラシノ藻、シアノバクテリア(スピルリナ、アルスロステラ、シネココッカス、シネコキスティス及びノストック)、ハプト藻(プレウロクリシス)、珪藻(キートケロス)、真眼点藻鋼(ナンノクロロプシス)、及びユーグレナが例示される。例えば、スピルリナは、500μm~600μmの長さを有する微細藻類であり、豊富な栄養素を含む食品の原料となり得る。光合成微生物Pの種類は特に限定されない。
【0013】
図2及び図3を参照して、培養部2を詳細に説明する。図2は、図1に示される培養部2を概略的に示す図である。図3は、図2に示される培養装置23を概略的に示す図である。培養部2は、光合成微生物Pの培養を行う部分である。光合成微生物Pに光合成を行わせるべく、培養部2は、屋外に配置されている。図2に示されるように、培養部2は、支柱21と、ビーム22と、培養装置23と、を含む。
【0014】
支柱21は、Z軸方向(上下方向)に延びている。本実施形態では、培養部2は、一対の支柱21を含む。一対の支柱21は、互いにX軸方向に離隔している。ビーム22は、X軸方向に延びている。ビーム22は、一対の支柱21間に架け渡されている。ビーム22は、培養装置23を支持するための部材である。本実施形態では、培養部2は、複数(一例として3つ)のビーム22を含む。ビーム22は、培養装置23ごとに設けられている。複数のビーム22は、互いにZ軸方向に離隔している。一のビーム22と、当該一のビーム22とZ軸方向に隣り合う他のビーム22との距離は、培養槽24(後述)のZ軸方向における長さよりも長い。支柱21及びビーム22の材料の一例として、金属が挙げられる。
【0015】
培養装置23は、光合成微生物Pを培養する装置である。本実施形態では、培養部2は、複数(一例として3つ)の培養装置23を含む。培養部2は、1つの培養装置23のみを含んでもよい。各培養装置23は、当該培養装置23に対応するビーム22に取り付けられている。これにより、複数の培養装置23は、Z軸方向に配列されている。図2に示されるように、培養装置23は、培養槽24を含む。
【0016】
培養槽24は、光合成微生物Pを培養するための培養液Cを収容する。培養槽24は、光合成微生物Pを含む培養液Cを閉鎖的に収容する。培養槽24は、X軸方向に延びる袋状の形状を有する。培養槽24は、例えば光透過性を有する樹脂シートにより構成される。光透過性を有する樹脂シートとしては、例えばポリエチレン、ナイロン又はウレタン等により構成された透明シートが利用される。
【0017】
培養槽24は、ビーム22に取り付けられている。培養槽24は、ビーム22から吊り下げられている。本実施形態では、培養部2は、Z軸方向に配列された3つの培養槽24を含む。図3に示されるように、培養槽24は、培養槽24をビーム22に取り付けるための取付部25と、光合成微生物Pを培養するための空間を画成する本体部26と、X軸方向に延びると共に取付部25及び本体部26をZ軸方向に仕切る上壁部27と、を含む。
【0018】
取付部25は、培養槽24の上端部に位置し、上壁部27よりも上方に位置する。本実施形態では、取付部25は、X軸方向に延び、X軸方向における両端が開放された筒状の形状を有する(図2参照)。筒状の取付部25には、ビーム22が挿通されている。上壁部27は、例えば、Y軸方向に向かい合う培養槽24の壁部同士を互いに溶着することで形成されている。
【0019】
本体部26は、上壁部27よりも下方に位置する。本体部26は、底部28と、側壁部29と、仕切壁30と、隔壁31と、を含む。底部28は、本体部26の下端を構成する壁部である。底部28には、培養槽24内の培養液Cを排出するための排出口26aが設けられている。本実施形態では、排出口26aには、バルブが設けられていない。側壁部29は、上壁部27と底部28とをつなぐ壁部である。側壁部29には、培養槽24内に培養液Cを供給するための供給口26b(図2参照)が設けられている。
【0020】
仕切壁30は、培養槽24における本体部26内を複数のセルLに区画する。本実施形態では、本体部26は、複数の仕切壁30を含む。各仕切壁30は、本体部26の内部においてZ軸方向に延びている。複数の仕切壁30は、X軸方向に互いに間隔を空けて設けられている。仕切壁30は、例えば、Y軸方向に向かい合う側壁部29同士を溶着することにより形成されている。仕切壁30は、例えばヒートシールにより形成されてもよい。
【0021】
本実施形態では、各仕切壁30の上端と上壁部27との間には、空気抜き用のスリット30aが形成されている。各仕切壁30の下端と底部28との間には、水抜き用のスリット30bが形成されている。各セルLは、スリット30a,30bを介して互いに連通している。各セルLにおける培養液Cの液面高さは、互いに等しい。
【0022】
本実施形態では、本体部26は、複数の隔壁31を含む。各セルL内には、2つの隔壁31が設けられている。隔壁31は、本体部26の内部においてZ軸方向に延びている。隔壁31の下端は、底部28よりも上方に位置している。隔壁31の下端と底部28との間には、下部連通口31aが設けられている。隔壁31の上端は、上壁部27よりも下方に位置している。隔壁31の上端と上壁部27との間には、上部連通口31bが設けられている。隔壁31は、例えば、Y軸方向に向かい合う側壁部29同士を溶着することにより形成されている。隔壁31は、例えばヒートシールにより形成されてもよい。
【0023】
各セルL内において、2つの隔壁31は、セルL内を散気室32と一対の培養室33とに区画する。散気室32は、セルLに設けられた2つの隔壁31の間に設けられている。散気室32には、底部28に設けられた散気孔34を介してガスが供給される。散気孔34は、散気室32ごとに設けられている。散気孔34は、対応する散気室32の下方に設けられている。各散気孔34には、ガスを吐出するスパウトが取り付けられている。散気室32にガスが供給されることで、散気室32内に培養液Cの上昇流が形成される。培養室33は、光合成微生物Pを培養するための部分である。培養室33は、セルLを区画する仕切壁30と隔壁31との間に形成されている。一対の培養室33は、X軸方向において散気室32を挟んでいる。
【0024】
散気室32及び培養室33は、隔壁31に沿ってZ軸方向に延びている。散気室32及び培養室33は、隔壁31の下方において下部連通口31aを介して互いに連通している。散気室32及び培養室33は、隔壁31の上方において上部連通口31bを介して互いに連通している。散気室32及び培養室33は、培養槽24における本体部26内で循環する培養液Cの流路を提供する。
【0025】
本実施形態では、培養槽24は、本体部26の内部から空気を抜くための空気抜き管35を更に含む。空気抜き管35は、上壁部27に挿通されている。空気抜き管35は、本体部26の内外を互いに連通している。
【0026】
培養装置23は、散気装置41と、温度センサ42と、を更に含む。散気装置41は、散気室32にガスを供給する装置である。散気装置41は、ブロア43及び管44を含む。管44は、上記のスパウトを介して散気孔34に接続されている。ブロア43は、管44を介して散気室32にガスを供給する。ブロア43によって供給されるガスは、例えば空気である。ブロア43は、散気孔34から散気室32にガスを供給する。ブロア43は、光合成微生物Pの光合成を促進するために、二酸化炭素を含む排ガスを散気室32に供給してもよい。
【0027】
温度センサ42は、培養槽24内の培養液Cの温度を計測する。本実施形態では、温度センサ42は、本体部26の内部に設けられている。温度センサ42は、有線又は無線により制御部5と通信可能である。温度センサ42は、培養液Cの温度の計測値を制御部5に送信する。
【0028】
培養装置23を用いて光合成微生物Pを培養する場合には、まず培養槽24の外部から培養槽24内に培養液Cが供給される。このとき、培養室33内の培養液Cの液面が、隔壁31の上端から所定距離だけ上方となるように培養液Cが供給される。培養室33内の培養液Cの液面が、隔壁31の上端よりも下方となるように培養液Cが供給されてもよい。続いて、ブロア43から複数の散気孔34を介して複数の散気室32内の培養液Cにガスが供給される。
【0029】
複数の散気孔34から複数の散気室32内にガスが供給されると、エアリフト効果により、各セルLの散気室32内の培養液Cに上昇流が形成され、散気室32内の培養液Cの液面高さが上昇する。隔壁31の上端の高さを越えた散気室32内の培養液Cは、上部連通口31bを通って一対の培養室33に流入する。一対の培養室33に流入した培養液Cは、当該一対の培養室33内の培養液Cに底部28へ向かう下降流を形成する。
【0030】
一対の培養室33内を下方に移動し、底部28に達した培養液Cは、下部連通口31aを通って散気室32に戻される。このようにして、各セルLにおいて、培養槽24内の培養液Cが散気室32と一対の培養室33との間で循環する。
【0031】
以下、説明の便宜のため、Z軸方向に配列された3つの培養槽24のうち、最も上方に位置する培養槽24を培養槽24a(第1培養槽)と称し、培養槽24aに含まれる底部28を底部28a(第1底部)と称することがある。培養槽24aとZ軸方向に隣り合い、培養槽24aの下方に位置する培養槽24を培養槽24b(第2培養槽)と称し、培養槽24bに含まれる底部28を底部28b(第2底部)と称することがある。Z軸方向に配列された3つの培養槽24のうち、最も下方に位置する培養槽24を培養槽24cと称し、培養槽24cに含まれる底部28を底部28cと称することがある。各培養槽24を区別する必要がないときは、単に培養槽24と称し、各底部28を区別する必要がないときは、単に底部28と称する。
【0032】
本実施形態では、複数の培養槽24は、Z軸方向に等間隔に配列されている。複数の培養槽24は、互いに同一の形状を有する。底部28aと底部28bとのZ軸方向における距離は、底部28bと底部28cとのZ軸方向における距離と等しい。
【0033】
排出部3は、培養部2から培養液Cを排出する。図1に示されるように、排出部3は、排出管51と、駆動部52と、連通管53と、を含む。排出管51は、培養槽24内の培養液Cを排出するための配管である。本実施形態では、排出管51は、培養液Cを受槽61(後述)に排出する。排出管51は、Z軸方向に延びている。排出管51は、複数の培養槽24からX軸方向に離隔して設けられており、各培養槽24と連通管53を介して連通している。排出管51は、Z軸方向に昇降可能に設けられている。排出管51は、Z軸方向に昇降することで、各培養槽24に対してZ軸方向に相対的に移動する。
【0034】
排出管51は、本体部54と、延出部55と、を含む。本体部54は、Z軸方向に延びる部分である。本体部54は、本体部54の下端部に設けられた開口部56(第1開口部)を含む。本体部54は、Z軸方向における両端が開放された筒状の形状を有する。本体部54には、連通管53が接続されている。本体部54は、連通管53を介して培養槽24から本体部54に流れ込んだ培養液Cを開口部56から排出管51の外部に排出する。
【0035】
延出部55は、本体部54の上端から延びる部分である。延出部55は、Y軸方向から見て逆U字状の形状を有する。延出部55は、上に凸の弧を描くように湾曲している。延出部55は、排出管51において開口部56とは反対側に設けられた開口部57(第2開口部)を含む。言い換えると、延出部55の先端に開口部56が設けられている。開口部57は、下方を向いている。排出管51の外部の空気は、開口部57を介して排出管51の内部に流入し得る。
【0036】
駆動部52は、排出管51を昇降させる装置(アクチュエータ)である。駆動部52は、排出管51を昇降可能に支持する。本実施形態では、駆動部52は、一対の支柱21のうち、排出管51に近い支柱21に取り付けられている。駆動部52は、制御部5からの指令に基づいて、排出管51を昇降させる。駆動部52は、例えばエアシリンダである。この場合、駆動部52は、エアシリンダの動力源であるコンプレッサを含んでもよい。駆動部52は、油圧式のシリンダでもよく、電動式のシリンダでもよい。
【0037】
連通管53は、培養槽24と排出管51とを連通する。連通管53は、培養槽24から光合成微生物Pを含む培養液Cを排出するための管である。連通管53は、可撓性を有する。連通管53は、培養槽24の底部28に設けられた排出口26aに接続されている一端58と、排出管51の本体部54に接続されている他端59と、を含む。例えば、培養槽24から培養液Cが排出されるとき、培養槽24内の培養液Cが連通管53を介して排出管51に流れる。連通管53には、例えば培養槽24内の培養液Cを培養槽24の外部に送るためのポンプが設けられていない。
【0038】
本実施形態では、排出部3は、培養装置23と同数の連通管53を含む。以下、説明の便宜のため、培養槽24aと排出管51とを連通する連通管53を連通管53a(第1連通管)と称し、培養槽24bと排出管51とを連通する連通管53を連通管53b(第2連通管)と称し、培養槽24cと排出管51とを連通する連通管53を連通管53cと称することがある。連通管53aの一端58を一端58a(第1端)と称し、連通管53aの他端59を他端59a(第2端)と称することがある。連通管53bの一端58を一端58b(第3端)と称し、連通管53bの他端59を他端59b(第4端)と称することがある。連通管53cの一端58を一端58cと称し、連通管53cの他端59を他端59cと称することがある。
【0039】
一端58aと一端58bとのZ軸方向における距離D1は、他端59aと他端59bとのZ軸方向における距離H1と等しい。一端58bと一端58cとのZ軸方向における距離D2は、他端59bと他端59cとのZ軸方向における距離H2と等しい。なお、距離D1は、底部28aと底部28bとのZ軸方向における距離と同じであり、距離D2は、底部28bと底部28cとのZ軸方向における距離と同じである。本実施形態では、距離D1は距離D2と等しく、距離H1は距離H2と等しいが、距離D1は距離D2と異なっていてもよく、距離H1は距離H2と異なっていてもよい。
【0040】
循環部4は、排出部3により排出された培養液Cを培養部2に供給する。循環部4は、受槽61と、液面計62(液量計測部)と、pH計63と、濃度計64と、供給管65と、ポンプ66(供給部)と、枝管67と、分水管68と、戻り配管69と、を含む。
【0041】
受槽61は、排出管51の開口部56から排出された培養液Cを貯留する。本実施形態では、受槽61は、排出管51の下方に設けられている。受槽61は、例えば配管を介して排出管51の開口部56に接続されていてもよい。この場合、受槽61の配置位置は特に限定されない。受槽61の容量は、培養部2に含まれる全ての培養槽24に供給される培養液Cの合計よりも大きい。受槽61は、例えば、直方体の形状を有する。
【0042】
液面計62は、受槽61に貯留されている培養液Cの液面高さを計測する。液面計62としては、例えば、ガイドパルス式又は超音波式の液面計が用いられる。液面計62は、受槽61内の培養液Cの液面高さを計測可能なように受槽61に設けられている。液面計62は、有線又は無線により制御部5と通信可能である。液面計62は、培養液Cの液面高さの計測値を制御部5に送信する。
【0043】
pH計63は、受槽61に貯留されている培養液CのpH値を計測する。pH計63は、受槽61内の培養液CのpH値を計測可能なように受槽61に設けられている。pH計63は、有線又は無線により制御部5と通信可能である。pH計63は、培養液CのpH値の計測値を制御部5に送信する。
【0044】
濃度計64は、受槽61に貯留されている培養液Cの濃度を計測する。濃度計64は、受槽61内の培養液Cの濃度を計測可能なように受槽61に設けられている。濃度計64は、例えば、培養液CのSS(Suspended Solids)濃度を培養液Cの濃度として計測する。濃度計64は、有線又は無線により制御部5と通信可能である。濃度計64は、培養液Cの濃度の計測値を制御部5に送信する。
【0045】
供給管65は、受槽61に貯留されている培養液Cを培養槽24に供給するための管である。供給管65の一端は、受槽61に接続されている。供給管65の他端は、分水管68に接続されている。
【0046】
ポンプ66は、受槽61に貯留されている培養液Cを培養槽24に供給する。本実施形態では、ポンプ66は、供給管65に設けられている。ポンプ66の駆動により、受槽61に貯留されている培養液Cが供給管65、分水管68及び枝管67を介して培養槽24に流れる。ポンプ66は、制御部5からの指令に基づいて、培養液Cの供給を開始又は停止する。
【0047】
分水管68は、受槽61から供給管65を介して供給された培養液Cを各枝管67に分岐させる。分水管68は、培養槽24aよりも上方に設けられている。
【0048】
枝管67は、分水管68と培養槽24とを接続する配管である。本実施形態では、循環部4は、培養装置23と同数の枝管67を含む。各枝管67の一端は、分水管68に接続されている。各枝管67の他端は、各培養槽24の供給口26b(図2参照)に接続されている。枝管67の直径は、供給管65の直径よりも小さい。枝管67の直径は、例えば、10mmである。
【0049】
複数の枝管67の長さは、互いに異なる。培養槽24aに接続された枝管67の長さは、培養槽24bに接続された枝管67の長さよりも短い。培養槽24bに接続された枝管67の長さは、培養槽24cに接続された枝管67の長さよりも短い。
【0050】
戻り配管69は、ポンプ66により受槽61から供給された培養液Cの一部を再び受槽61に戻すための配管である。より具体的には、戻り配管69は、受槽61から供給管65を介して供給された培養液Cのうち、培養槽24に供給されなかった培養液Cを再び受槽61に戻す。戻り配管69の一端は、分水管68に接続されている。戻り配管69の他端は、受槽61に接続されている。
【0051】
本実施形態では、戻り配管69には、バルブ69aが設けられている。バルブ69aは、戻り配管69を介して受槽61に戻される培養液Cの量を調整する。バルブ69aを操作することにより、培養槽24に供給される培養液Cの量を調整できる。
【0052】
制御部5は、培養システム1を統括制御するコントローラである。制御部5は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリと、タッチパネル、マウス及びキーボード等の入力装置と、ディスプレイ等の出力装置と、ネットワークカード等の通信装置と、を含むコンピュータとして構成されている。メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御部5の機能が実現される。
【0053】
制御部5は、培養システム1の各部を制御する。例えば、制御部5は、駆動部52を制御する。制御部5は、駆動部52を駆動させ、駆動部52に昇降可能に支持された排出管51を昇降させる。制御部5は、駆動部52の駆動量を制御することで、排出管51の高さを調整する。制御部5は、駆動部52及びポンプ66を制御することで、各培養槽24に培養液Cを供給し、駆動部52を制御することで各培養槽24から培養液Cを排出する。培養液Cの供給及び排出の詳細は後述する。
【0054】
制御部5は、温度センサ42、pH計63及び濃度計64から取得した計測値に基づいて、培養液Cの状態を確認する。
【0055】
制御部5は、ブロア43を制御する。制御部5は、ブロア43を駆動させ、管44を介して散気室32にガスを供給する。
【0056】
続いて、図1図4図6を用いて、培養システム1の動作を説明する。図4は、一実施形態に係る培養システム1の動作を示すフローチャートである。図5は、図4に示される準備処理を詳細に示すフローチャートである。図6は、培養液Cの排出を説明するための図である。培養システム1が稼働する前において、排出管51は、排出高さに位置する。排出高さは、培養部2に含まれる全ての培養槽24から培養液Cを全て排出するための排出管51の高さである。本実施形態では、排出高さは、各連通管53の他端59が、当該連通管53が接続されている培養槽24の底部28よりも下方に位置するように設定されている。排出高さは、例えば予め設定されている。
【0057】
培養システム1が稼働する前において、各培養槽24は、培養液Cを収容していない。受槽61は、培養部2に含まれる全ての培養槽24の所定収容量の合計よりも大きい量の培養液Cを貯留している。所定収容量とは、培養システム1により光合成微生物Pの培養が開始されるときに、培養槽24に収容される培養液Cの量である。本実施形態では、所定収容量は、培養槽24内の培養液Cの液面が隔壁31の上端から所定距離だけ上方となる培養液Cの量である。所定収容量は、培養槽24内の培養液Cの液面が隔壁31の上端よりも下方となる培養液Cの量であってもよい。
【0058】
図4に示される一連の動作は、開始条件が満たされた場合に開始される。例えば、制御部5が光合成微生物Pの培養の開始を指示する指令を受信した場合に開始条件が満たされる。当該指令は、例えば培養システム1のユーザにより、培養システム1の外部に設けられた装置(以下、「外部装置」と称する。)を介して制御部5に送信されてもよい。時刻が予め設定された開始時刻に達した場合に開始条件が満たされてもよい。
【0059】
まず、制御部5は、培養槽24の準備処理を行う(ステップS1)。培養槽24の準備処理では、図5に示されるように、制御部5が、駆動部52を制御することで、排出管51を供給高さ(所定高さ)に移動させる(ステップS11)。供給高さは、培養部2に含まれる全ての培養槽24に所定収容量の培養液Cを収容させるための排出管51の高さであり、例えば図1に示される排出管51の高さである。具体的には、各連通管53の他端59が、当該連通管53が接続されている培養槽24における、光合成微生物Pの培養の開始時点での培養液Cの液面高さと同じ高さになるように、供給高さが設定されている。本実施形態では、供給高さは、各連通管53の他端59が、当該連通管53が接続されている培養槽24における隔壁31の上端から、上述の所定距離だけ上方に位置するように設定されている。供給高さは、例えば予め設定されている。供給高さは、各連通管53の他端59が、当該連通管53が接続されている培養槽24における隔壁31の上端よりも下方に位置するように設定されていてもよい。ステップS11では、制御部5は、排出管51を上昇させ、排出管51を供給高さに移動させる。
【0060】
続いて、制御部5は、ポンプ66を駆動させることにより、培養液Cの供給を開始する(ステップS12)。ステップS12では、制御部5は、ポンプ66を駆動させ、受槽61に貯留されている培養液Cを、供給管65、分水管68及び枝管67を介して各培養槽24に供給する。
【0061】
続いて、制御部5は、培養液Cの供給を開始してから所定時間が経過し、かつ、受槽61における液量が所定液量以下であるか否かを判定する(ステップS13)。所定液量は、培養部2に含まれる全ての培養槽24に所定収容量の培養液Cが収容されているか否かを判定するための閾値である。所定液量は、例えば、培養システム1の稼働前に受槽61に貯留されていた培養液Cの液量から培養部2に含まれる全ての培養槽24の所定収容量の合計を減算することによって得られる残量に設定されている。所定液量は、ステップS1の培養槽24の準備処理を終了可能な程度に、上記残量よりもわずかに小さい値に設定されてもよい。所定液量は、培養部2に含まれる全ての培養槽24の液面が同程度となる範囲で、上記残量よりもわずかに大きい値に設定されてもよい。所定時間は、例えば4分~6分である。所定時間としては、例えば、ポンプ66により供給される培養液Cの量が全ての培養槽24の所定収容量の合計よりも大きくなる時間が採用されてもよい。
【0062】
ステップS13では、制御部5は、液面計62により計測された、受槽61に貯留されている培養液Cの液面高さの計測値を取得する。そして、制御部5は、取得した液面高さの計測値に基づいて、受槽61に貯留されている培養液Cの液量を算出する。より具体的には、制御部5は、受槽61の底面積と、取得した液面高さとの積を、受槽61に貯留されている培養液Cの液量として算出する。
【0063】
ステップS13において、培養液Cの供給を開始してから所定時間が経過していないと判定されるか、又は、受槽61における液量が所定液量よりも大きいと判定された場合(ステップS13:NO)、培養部2に含まれる全ての培養槽24に所定収容量の培養液Cが収容されているわけではないと考えられる。この場合、制御部5は、培養液Cの供給を再び開始してステップS12及びステップS13を繰り返す。一方、ステップS13において、培養液Cの供給を開始してから所定時間が経過し、かつ、受槽61における液量が所定液量以下であると判定された場合(ステップS13:YES)、図1に示されるように、培養部2に含まれる全ての培養槽24に所定収容量の培養液Cが収容されていると考えられる。したがって、制御部5は、ポンプ66を停止することにより、培養液Cの供給を停止し(ステップS14)、ステップS1の培養槽24の準備処理を終了する。
【0064】
なお、培養槽24の所定収容量を超える量の培養液Cが培養槽24に供給された場合には、水頭圧の作用により、培養槽24の所定収容量を超える量の培養液Cは、連通管53を介して排出管51に流れる。排出管51に流れた培養液Cは、排出管51の開口部56から受槽61に排出され、ポンプ66により培養槽24に再び供給される。
【0065】
続いて、制御部5は、光合成微生物Pの培養を行う(ステップS2)。ステップS2では、制御部5は、ブロア43を駆動することにより、管44を介して散気室32にガスを供給する。これにより、各セルLにおいて培養液Cが散気室32と一対の培養室33との間で循環するので、培養槽24内の培養液Cが撹拌される。この状態で、培養槽24が受光することにより、培養液Cに含まれる光合成微生物Pが光合成を行う。
【0066】
続いて、制御部5は、計測タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS3)。計測タイミングは、例えば、培養開始から予め設定されたサイクルタイムだけ経過した時点である。計測タイミングが到来していないと判定された場合(ステップS3:NO)、制御部5は、計測タイミングが到来するまで、ステップS2及びステップS3を繰り返す。一方、ステップS3において、計測タイミングが到来したと判定された場合(ステップS3:YES)、制御部5は、培養槽24内の培養液Cの状態を確認する(ステップS4)。
【0067】
ステップS4では、制御部5は、予め設定された引抜量の培養液Cを各培養槽24から受槽61に排出させる。具体的には、図6に示されるように、制御部5は、駆動部52を駆動させて排出管51を、供給高さから計測高さまで下降させる。計測高さは、上記引抜量に応じて予め設定されている。これにより、各連通管53の他端59の高さは、当該連通管53が接続されている培養槽24の培養液Cの液面高さよりも低くなる。すると、水頭圧の作用により、培養槽24の培養液Cの液面が、当該培養槽24に接続されている連通管53の他端59の高さと等しくなるまで、培養槽24内の培養液Cが連通管53を介して排出管51に流れる。排出管51に流れた培養液Cは、重力に従って落下し、排出管51の開口部56から受槽61に排出される。
【0068】
なお、制御部5は、液面計62により計測された、受槽61に貯留されている培養液Cの液面高さの計測値に基づいて、培養部2に含まれる全ての培養槽24から引抜量の培養液Cが排出されたか否かを判定してもよい。
【0069】
そして、制御部5は、pH計63により計測された培養液CのpH値の計測値と、濃度計64により計測された培養液Cの濃度の計測値と、を取得する。そして、制御部5は、pH値の計測値がpH値の許容範囲内であるか否かを判定する。pH値の許容範囲の下限閾値及び上限閾値は、例えば予め設定されており、適宜変更可能である。pH値の計測値がpH値の許容範囲外であると判定された場合、制御部5は、培養液Cが異常であることを示す異常情報を上述の外部装置に送信する。
【0070】
同様に、制御部5は、濃度の計測値が濃度の許容範囲内であるか否かを判定する。濃度の許容範囲の下限閾値及び上限閾値は、例えば予め設定されており、適宜変更可能である。濃度の計測値が濃度の許容範囲外であると判定された場合、制御部5は、培養液Cが異常であることを示す異常情報を上述の外部装置に送信する。そして、外部装置は、異常情報を受信すると、培養液Cが異常であることを、培養システム1のユーザに通知する。
【0071】
続いて、制御部5は、終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5では、制御部5は、例えば、光合成微生物Pの培養の終了を指示する指令を受信した場合に終了条件が満たされたと判定する。当該指令は、例えば培養システム1のユーザにより、任意のタイミング(例えばメンテナンス時)において外部装置を介して制御部5に送信されてもよい。ステップS5において、終了条件が満たされていないと判定された場合(ステップS5:NO)、制御部5は、終了条件が満たされるまでステップS1~S5を繰り返す。なお、2回目以降のステップS1においては、所定時間として、ポンプ66により供給される培養液Cの量が、ステップS4において全ての培養槽24から引き抜かれた培養液Cの引抜量の合計よりも大きくなる時間が採用されてもよい。
【0072】
一方、ステップS5において、終了条件が満たされたと判定された場合(ステップS5:YES)、制御部5は、各培養槽24から培養液Cを回収する(ステップS6)。ステップS6では、制御部5は、各培養槽24に収容されている培養液Cの全量を各培養槽24から受槽61に排出させる。具体的には、制御部5は、駆動部52を駆動させて排出管51を、排出高さまで下降させる。上述のように、排出高さは、各連通管53の他端59が、当該連通管53が接続されている培養槽24の底部28よりも下方に位置するように設定されている。したがって、水頭圧の作用により、培養槽24の培養液Cが全て排出されるまで、培養槽24内の培養液Cが連通管53を介して排出管51に流れる。排出管51に流れた培養液Cは、重力に従って落下し、排出管51の開口部56から受槽61に回収される。
【0073】
なお、制御部5は、液面計62により計測された、受槽61に貯留されている培養液Cの液面高さの計測値に基づいて、培養部2に含まれる全ての培養槽24から培養液Cが全て排出されたか否かを判定してもよい。
【0074】
以上により、図4に示される一連の動作が終了する。
【0075】
ステップS4において、制御部5は、温度センサ42から取得した培養液Cの温度の計測値に基づいて、培養液Cの状態を確認してもよい。例えば、制御部5は、取得した温度の計測値が温度の許容範囲内であるか否かを判定する。温度の許容範囲の下限閾値及び上限閾値は、例えば予め設定されており、適宜変更可能である。温度の計測値が温度の許容範囲外であると判定された場合、制御部5は、培養液Cが異常であることを示す異常情報を上述の外部装置に送信する。培養液Cの温度の計測値に基づく培養液Cの状態の確認は、ステップS4とは異なるタイミングで行われてもよい。
【0076】
図4では、ステップS5は、ステップS4の後に実施されるが、ステップS5は任意のタイミングで実施されてもよい。
【0077】
以上説明した培養システム1では、排出管51が下方向に移動して連通管53の他端59の高さが、当該連通管53が接続されている培養槽24における培養液Cの液面高さよりも低くなったとき、水頭圧の作用によって、培養液Cが連通管53を介して排出管51に流れる。排出管51に流れた培養液Cは、排出管51の下端部に設けられた開口部56から排出される。したがって、ポンプ等の装置を用いることなく、培養槽24から培養液Cを排出することができるので、培養液Cの排出時にポンプのインペラに光合成微生物Pが巻き込まれることによって光合成微生物Pが切断されることを回避することができる。その結果、光合成微生物Pの培養効率の低下を抑制することができる。
【0078】
より具体的には、培養システム1は、複数の培養槽24と、各培養槽24と排出管51とを連通し、可撓性を有する連通管53と、を含む。この構成によれば、複数の培養槽24において光合成微生物Pが培養されるので、光合成微生物Pを効率的に培養することができる。各培養槽24と排出管51とが連通管53を介して互いに連通しているので、排出管51を下方向に移動させるだけで全ての培養槽24から培養液Cを排出することができる。したがって、ポンプ等の装置を用いることなく、全ての培養槽24から培養液Cを効率的に排出することができる。培養システム1においては、各培養槽24の排出口26aにバルブ等を設ける必要がないので、培養システム1の構成を簡素化することができる。
【0079】
培養システム1においては、各連通管53の一端58が、当該連通管53と対応する培養槽24の底部28に接続されている。このため、排出管51を下方向に移動させることで各培養槽24の培養液Cを全て排出することができる。したがって、供給高さを適宜設定することで、各培養槽24における培養液Cの量を所望の量に調整することができる。
【0080】
培養システム1において、培養槽24a、培養槽24b、及び培養槽24cは、その順にZ軸方向に配列されている。排出管51が下方向に移動したとき、培養槽24aの液面は他端59aの高さまで下がり、培養槽24bの液面は他端59bの高さまで下がり、培養槽24cの液面は他端59cの高さまで下がる。ここで、距離D1は距離H1と等しく、距離D2は距離H2と等しいので、3つの培養槽24の液面高さを互いに等しくすることができる。3つの培養槽24の形状及び大きさが互いに等しいので、全ての培養槽24における培養液Cの量を互いに等しくすることができる。
【0081】
例えば各培養槽24から引抜量の培養液Cを排出した後に各培養槽24に培養液Cを補充した場合、全ての培養槽24における培養液Cの濃度を互いに等しくすることができる。このため、全ての培養槽24において受光効率が均一となり、光合成微生物Pの生育条件を全ての培養槽24において互いに等しくすることができる。この結果、光合成微生物Pを安定的に培養することができる。
【0082】
例えば、排出管51の下端部とは反対側の端部が閉塞されている場合には、培養液Cが連通管53から排出管51に流れ込んだとき、排出管51内の連通管53の接続口と当該端部との間の空間に負圧が生じることがある。この場合、排出管51内を培養液Cが流れにくくなり、培養液Cの排出効率が低下し得る。一方、培養システム1においては、排出管51が開口部56と反対側に設けられた開口部57を有するので、排出管51の外部の空気が開口部57を介して上記空間に入り込むことにより、上記空間に負圧が生じる可能性を低減できる。この結果、培養液Cを効率的に排出できる。例えば、サイフォン現象が生じた場合には、一部の培養槽24において意図しない量の培養液Cが排出される可能性がある。一方、培養システム1においては、排出管51が開口部57を有するので、サイフォン現象が生じる可能性を低減できる。したがって、一部の培養槽24において意図しない量の培養液Cが排出される可能性を低減できる。
【0083】
培養システム1において、開口部57は下方を向いているので、排出管51の内部に開口部57から、例えば雨滴等の異物が入り込む可能性を低減できる。
【0084】
培養システム1において、制御部5は、培養液Cの供給を開始してから所定時間が経過し、かつ、受槽61における液量が所定液量以下であるという条件が満たされていない場合、培養液Cの供給を再び開始する。この構成によれば、各培養槽24には、排出管51と当該培養槽24に接続されている連通管53との接続位置(他端59)の高さまで培養液Cが収容され得る。例えば、排出管51が供給高さに位置する状態で、排出管51と連通管53との接続位置の高さまで各培養槽24に培養液Cが収容された場合に、受槽61に残る培養液Cの液量を、所定液量として設定することで、各培養槽24に所定収容量の培養液Cを収容することができる。
【0085】
培養システム1において、培養液Cの温度の計測値が温度の許容範囲外であると判定された場合、培養液CのpH値の計測値がpH値の許容範囲外であると判定された場合、又は培養液Cの濃度の計測値が濃度の許容範囲外であると判定された場合、制御部5は、培養液Cが異常であることを示す異常情報を上述の外部装置に送信する。この構成によれば、培養システム1のユーザは、上述の外部装置を介して培養システム1の異常を察知することができ、適切な培養管理、及び迅速な異常時対応を実現できる。
【0086】
培養システム1において、循環部4は、培養装置23と同数の枝管67を含む。枝管67は、培養槽24aよりも上方に設けられた分水管68に接続されている。受槽61内の培養液Cを各培養槽24に供給するとき、培養液Cは、培養槽24aよりも上方まで持ち上げられてから、各枝管67を介して各培養槽24に供給される。枝管67の直径が小さいほど、培養液Cの吐出圧が大きくなる。枝管67の直径は、サイフォン効果の影響を無視できる程度の吐出圧が得られる程度に設定されている。したがって、複数の枝管67の長さが互いに異なる場合でも、サイフォン効果の影響をほとんど受けることなく、各培養槽24へ培養液Cを均等に供給することができる。
【0087】
なお、本開示に係る培養システムは、上記実施形態に限定されない。
【0088】
制御部5は、ブロア43により散気室32に供給されるガスの種類を変更可能であってもよい。例えば、ブロア43は、空気又は二酸化炭素を散気室32に供給可能であってもよい。この場合、pH計63から送信されたpH値がpH値の許容範囲の上限閾値よりも大きいと判定された場合、制御部5は、ブロア43を駆動させ、散気室32に二酸化炭素を供給してもよい。
【0089】
培養システム1は、受槽61に貯留された培養液Cに含まれる光合成微生物Pを回収する構成を備えてもよい。この場合、例えば、培養システム1は、受槽61に貯留されている培養液Cを受槽61の外部に排出するための管と、管に設けられたポンプと、を更に含む。この構成において、濃度計64から送信された濃度の計測値が濃度の許容範囲の上限閾値よりも大きいと判定された場合、制御部5は、ポンプを駆動させ、受槽61に貯留されている培養液Cを、管を介して受槽61の外部に排出させてもよい。さらに、受槽61の外部に排出された培養液Cがろ過されることで、光合成微生物Pが回収されてもよい。回収された光合成微生物Pは、例えば培養システム1の外部において脱水及び乾燥されてもよい。乾燥された光合成微生物Pは、例えば製品として包装されて出荷されてもよい。
【0090】
濃度計64から送信された濃度の計測値が濃度の許容範囲の上限閾値よりも大きいと判定された場合、制御部5は、濃度の計測値に基づいて算出された量の培養液Cを培養槽24から排出してもよい。この場合、制御部5は、例えば、培養液Cの排出後に培養槽24に残った培養液Cに、光合成微生物Pを含まない培養液Cを培養液Cの排出量と同量だけ培養槽24に供給したと仮定して、培養槽24内の培養液Cの濃度を算出する。そして、制御部5は、算出した培養液Cの濃度が濃度の許容範囲内に収まる培養液Cの排出量を算出する。そして、制御部5は、算出した排出量だけ培養槽24から培養液Cが排出されるように駆動部52の駆動量を制御することにより、排出管51の高さを調整する。
【0091】
培養槽24から培養液Cが連通管53を介して排出管51に流れているタイミングにおいて、制御部5は、駆動部52を駆動させ、排出管51を上昇させることで培養液Cの排出を止めてもよい。制御部5が排出管51を上昇させると、連通管53の他端59の高さは、当該連通管53が接続された培養槽24の培養液Cの液面高さよりも高くなる。すると、培養槽24内の培養液Cが排出管51に流れなくなり、培養液Cの排出が止められる。
【0092】
上記実施形態では、受槽61は、十分な量の培養液Cを貯留しているが、受槽61に貯留されている培養液Cの液量は、適宜変更されてもよい。この場合、制御部5は、ステップS11を実行した後、ステップS12を実行する前に、受槽61に貯留されている培養液Cの液量が設定量以上であるか否かを判定してもよい。設定量は、例えば、培養部2に含まれる全ての培養槽24の所定収容量の合計である。制御部5は、例えば、ステップS13において、受槽61における培養液Cの液量を計測する方法と同様の方法により、受槽61における培養液Cの液量を取得し、取得した液量が設定量以上であるか否かを判定してもよい。
【0093】
この場合、培養システム1は、培養液Cを貯留する予備培地槽(不図示)と、予備培地槽から受槽61に培養液Cを供給するためのポンプ(不図示)と、を更に備えてもよい。例えば、受槽61に貯留されている培養液Cの液量が設定量以上であると判定された場合、制御部5は、ステップS12を実行する。受槽61に貯留されている培養液Cの液量が設定量より小さいと判定された場合、制御部5は、ポンプを駆動することにより、不足分の培養液Cを予備培地槽から受槽61に供給する。
【0094】
上記実施形態では、連通管53の一端58が培養槽24の底部28に接続されている。しかし、連通管53の一端58は、培養槽24の側壁部29に接続されていてもよい。
【0095】
上記実施形態では、複数の培養槽24は、Z軸方向に配列されているが、Z軸方向と異なる方向に配列されていてもよい。
【0096】
上記実施形態では、距離D1は距離H1と等しいが、距離D1は距離H1と異なっていてもよい。上記実施形態では、距離D2は距離H2と等しいが、距離D2は距離H2と異なっていてもよい。
【0097】
例えば、排出管51の内径が培養槽24から排出される培養液Cの流量に対して十分に大きい場合には、排出管51の下端部とは反対側の端部が閉塞されていても、排出管51内の連通管53の接続口と当該端部との間の空間に負圧が生じにくい。このような場合、排出管51は、開口部57を含んでいなくてもよい。
【0098】
開口部57は、下方を向いていなくてもよく、側方又は上方を向いていてもよい。開口部57に異物混入を防止するためのフィルタが設けられてもよい。
【0099】
上記実施形態では、制御部5は、液面計62から取得した液面高さの計測値に基づいて、受槽61に貯留されている培養液Cの液量を算出し、算出した液量が所定液量以下であるか否かを判定する。しかし、制御部5は、液面計62から取得した液面高さの計測値に基づいて、液面高さの計測値が所定の液面高さ以下であるか否かを判定してもよい。
【0100】
最後に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0101】
(条項1)
光合成微生物を培養するための培養液を収容する第1培養槽と、
上下方向に延びると共に、前記上下方向に昇降可能に設けられた排出管であって、下端部に設けられた第1開口部を有し、前記第1開口部から前記培養液を排出する前記排出管と、
前記第1培養槽と前記排出管とを連通し、可撓性を有する第1連通管と、
を備える、
培養システム。
【0102】
この培養システムでは、排出管が下方向に移動して排出管と第1連通管との接続位置の高さが培養槽における培養液の液面高さよりも低くなったとき、例えば水頭圧の作用によって、培養液が第1連通管を介して排出管に流れる。排出管に流れた培養液は、排出管の下端部に設けられた第1開口部から排出される。したがって、ポンプ等の装置を用いることなく、培養槽から培養液を排出することができるので、光合成微生物の培養効率の低下を抑制することができる。
【0103】
(条項2)
前記第1培養槽は、底部を有し、
前記第1連通管は、
前記底部に接続されている第1端と、
前記排出管に接続されている第2端と、を有する、
条項1に記載の培養システム。
【0104】
この構成によれば、第1連通管の第1端が第1培養槽の底部に接続されているので、排出管を下方向に移動させることで第1培養槽の培養液を全て排出することができる。したがって、培養槽における培養液の量を所望の量に調整することができる。
【0105】
(条項3)
前記光合成微生物を培養するための前記培養液を収容する第2培養槽と、
前記第2培養槽と前記排出管とを連通し、可撓性を有する第2連通管と、を更に備える、
条項1に記載の培養システム。
【0106】
この構成によれば、培養システムが第1培養槽に加えて第2培養槽を備えるので、光合成微生物を効率的に培養することができる。第2培養槽と排出管とが第2連通管を介して互いに連通しているので、排出管を下方向に移動させるだけで第1培養槽及び第2培養槽の双方から培養液を排出することができる。したがって、第1培養槽に加えて第2培養槽を用いて光合成微生物の培養を行う場合でも、ポンプ等の装置を用いることなく、両方の培養槽から培養液を排出することができる。
【0107】
(条項4)
前記第1培養槽は、第1底部を有し、
前記第1連通管は、
前記第1底部に接続されている第1端と、
前記排出管に接続されている第2端と、を有し、
前記第2培養槽は、第2底部を有し、
前記第2連通管は、
前記第2底部に接続されている第3端と、
前記排出管に接続されている第4端と、を有し、
前記第1培養槽と前記第2培養槽とは、前記上下方向に配列されており、
前記第1端と前記第3端との距離は、前記第2端と前記第4端との距離と等しい、
条項3に記載の培養システム。
【0108】
排出管が下方向に移動したとき、第1培養槽の液面は第2端の高さまで下がり、第2培養槽の液面は第4端の高さまで下がる。ここで、第1端と第3端との距離が第2端と第4端との距離と等しいので、第1培養槽及び第2培養槽における液面高さを互いに等しくすることができる。
【0109】
(条項5)
前記排出管は、
前記第1開口部を含み、前記上下方向に延びると共に前記第1連通管が接続された本体部と、
前記第1開口部とは反対側に設けられた第2開口部を含み、前記本体部の上端から延びる延出部と、を有する、
条項1~条項4のいずれか一項に記載の培養システム。
【0110】
例えば、排出管の下端部とは反対側の端部が閉塞されている場合には、培養液が第1連通管から排出管に流れ込んだとき、排出管内の第1連通管の接続口と当該端部との間の空間に負圧が生じることがある。この場合、排出管内を培養液が流れにくくなり、培養液の排出効率が低下し得る。排出管が第1開口部と反対側に設けられた第2開口部を有するので、排出管の外部の空気が第2開口部を介して上記空間に入り込むことにより、上記空間に負圧が生じる可能性を低減できる。この結果、培養液を効率的に排出できる。
【0111】
(条項6)
前記第2開口部は、下方を向いている、
条項5に記載の培養システム。
【0112】
この構成によれば、第2開口部が下方を向いているため、排出管の内部に第2開口部から雨滴等の異物が入り込む可能性を低減できる。
【0113】
(条項7)
前記排出管の前記第1開口部から排出された前記培養液を貯留する受槽と、
前記受槽に貯留されている前記培養液の液量を計測する液量計測部と、
前記受槽に貯留されている前記培養液を前記第1培養槽に供給する供給部と、
前記排出管を昇降させる駆動部と、
前記供給部及び前記駆動部を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記駆動部を制御することで、前記排出管を所定高さに移動させ、
前記排出管が前記所定高さに位置する状態で、前記供給部を制御することで前記培養液の供給を開始し、
前記培養液の供給を開始してから所定時間が経過し、かつ、前記液量が所定液量以下であるという条件が満たされたか否かを判定し、
前記条件が満たされていないと判定された場合、前記培養液の供給を再び開始し、
前記条件が満たされたと判定された場合、前記培養液の供給を停止する、
条項1~条項6のいずれか一項に記載の培養システム。
【0114】
この構成によれば、培養液が第1培養槽に供給され、培養液の供給が開始されてから所定時間が経過し、かつ、液量が所定液量以下であるという条件が満たされたか否かが判定される。そして、上記条件が満たされていないと判定された場合、培養液の供給が再び開始される。第1培養槽には、排出管と第1連通管との接続位置の高さまで培養液が収容され得る。例えば、排出管が所定高さに位置する状態で、排出管と第1連通管との接続位置の高さまで第1培養槽に培養液が収容された場合に受槽に残る培養液の液量を、所定液量として設定することで、第1培養槽に排出管と第1連通管との接続位置の高さまで培養液を収容することができる。
【符号の説明】
【0115】
1…培養システム、5…制御部、24a…培養槽(第1培養槽)、24b…培養槽(第2培養槽)、28a…底部(第1底部)、28b…底部(第2底部)、51…排出管、52…駆動部、53a…連通管(第1連通管)、53b…連通管(第2連通管)、54…本体部、55…延出部、56…開口部(第1開口部)、57…開口部(第2開口部)、58a…一端(第1端)、58b…一端(第3端)、59a…他端(第2端)、59b…他端(第4端)、61…受槽、62…液面計(液量計測部)、66…ポンプ(供給部)、C…培養液、D1,D2,H1,H2…距離、P…光合成微生物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6