IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プレス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電動アクスル装置 図1
  • 特開-電動アクスル装置 図2
  • 特開-電動アクスル装置 図3
  • 特開-電動アクスル装置 図4
  • 特開-電動アクスル装置 図5
  • 特開-電動アクスル装置 図6
  • 特開-電動アクスル装置 図7
  • 特開-電動アクスル装置 図8
  • 特開-電動アクスル装置 図9
  • 特開-電動アクスル装置 図10
  • 特開-電動アクスル装置 図11
  • 特開-電動アクスル装置 図12
  • 特開-電動アクスル装置 図13
  • 特開-電動アクスル装置 図14
  • 特開-電動アクスル装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020944
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】電動アクスル装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 35/16 20060101AFI20250205BHJP
   B60K 1/02 20060101ALI20250205BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B60B35/16 Z
B60K1/02
B60K17/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124588
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】390001579
【氏名又は名称】プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】後藤 弘行
【テーマコード(参考)】
3D042
3D235
【Fターム(参考)】
3D042AA06
3D042AB01
3D042BE01
3D042BE02
3D235AA01
3D235BB18
3D235BB20
3D235BB28
3D235BB32
3D235CC12
3D235DD12
3D235DD13
3D235FF32
3D235FF35
3D235HH03
3D235HH61
(57)【要約】
【課題】電動モータを含む電動駆動ユニットの重量が所謂バネ下重量に加わらず、既存のアクスルケースをドディオンチューブとして流用できる電動アクスル装置を提供する。
【解決手段】車体フレームに固定された電動駆動ユニット2と、車体フレームにサスペンションを介して上下方向に所定ストローク範囲で移動自在に取付けられたアクスルケース3とを備え、アクスルケース3は、バンジョー部4に開口5が形成されており、電動駆動ユニット2は、右車輪を駆動する右モータ6aおよび左車輪を駆動する左モータ6bが収容されたモータケース部7と、右モータ6aの回転を右車輪へ伝達する右ギヤトレーン8aおよび左モータ6bの回転を左車輪へ伝達する左ギヤトレーン8bが収容されたギヤケース部9を有し、ギヤケース部9が、開口5に差込まれ、ギヤケース部9の上下方向の寸法Aが、開口5の上下方向の寸法Bから所定ストロークを差引いた寸法よりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームに固定された電動駆動ユニットと、前記車体フレームにサスペンションを介して上下方向に所定ストローク範囲で移動自在に取り付けられたアクスルケースとを備え、
前記アクスルケースは、車幅方向の中央部に上下方向に膨出されたバンジョー部を有し、該バンジョー部の前方または後方には、開口が形成されており、
前記電動駆動ユニットは、右車輪を駆動する右モータおよび左車輪を駆動する左モータが収容されたモータケース部と、前記右モータの回転を右車輪へ伝達するための右ギヤトレーンおよび前記左モータの回転を左車輪へ伝達するための左ギヤトレーンが収容されたギヤケース部を有し、
前記電動駆動ユニットの前記ギヤケース部が、前記アクスルケースの前記バンジョー部の前記開口に差し込まれており、前記ギヤケース部の上下方向の寸法が、前記バンジョー部の前記開口の上下方向の寸法から前記所定ストロークを差し引いた寸法よりも小さい、ことを特徴とする電動アクスル装置。
【請求項2】
前記アクスルケース内の右側に右アクスルシャフトが回転自在に支持され、前記アクスルケース内の左側に左アクスルシャフトが回転自在に支持され、
前記電動駆動ユニットの前記ギヤケース部の前記右ギヤトレーンの最終出力ギヤと前記右アクスルシャフトとが右ドライブシャフトを介して連結され、
前記電動駆動ユニットの前記ギヤケース部の前記左ギヤトレーンの最終出力ギヤと前記左アクスルシャフトとが左ドライブシャフトを介して連結され、
前記右ドライブシャフトと前記右アクスルシャフトとの連結部、前記右ドライブシャフトと前記右ギヤトレーンの前記最終出力ギヤとの連結部の少なくとも一方にスプラインが設けられ、
前記左ドライブシャフトと前記左アクスルシャフトとの連結部、前記左ドライブシャフトと前記左ギヤトレーンの前記最終出力ギヤとの連結部の少なくとも一方にスプラインが設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の電動アクスル装置。
【請求項3】
前記アクスルケースの前記バンジョー部の前記開口とその開口に差し込まれた前記電動駆動ユニットの前記ギヤケース部との間に、前記開口が前記ギヤケース部に対して上下方向に移動することを許容しつつ外気を遮断するブーツが介設されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の電動アクスル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂バネ下重量の軽減を図ると共に、既存のアクスルケールを容易に流用できる電動アクスル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1(a1)に、トラック、バス、RV、SUV等の車両に用いられる一般的なエンジン駆動車両のアクスル構造X1の平面図を示し、図1(b1)に、そのアクスル構造X1の側面図を示す。アクスルケースaは、リーフスプリング、エアバッグ、コントロールアーム等を介して車体フレームに取り付けられ、その内部にはディファレンシャル機構bが収容されている。ディファレンシャル機構bは、エンジンにより回転されるプロペラシャフトcに設けられたドライブギヤd、左右のドライブシャフトeに夫々設けられたサイドギヤf、一方のドライブシャフトeに回転自在に挿通されたリングギヤg、リングギヤgにキャリア(図示省略)を介して回転自在に支持されたピニオンギヤhを備え、ドライブギヤdとリングギヤgが歯合され、サイドギヤfとピニオンギヤhが歯合されており、カーブ走行時の内輪と外輪の回転差を吸収するものである。
【0003】
近年、車両のEV化に伴って、図1(a2)、図1(b2)、図1(a3)、図1(b3)に示すように、アクスルケースaに、プロペラシャフトに替えて電動モータi、jを組み込んだ電動アクスル装置X2、X3が種々開発されている。しかし、アクスルケースaにモータi、jを組み付けると、モータi、jの重量が所謂バネ下重量に加算されるため、モータi、jの重量の分だけ従来のアクスル構造X1よりもバネ下重量が増加し、路面追従性が悪化する懸念がある。また、モータi、jが路面からの衝撃力に常に晒されるため、故障する可能性が高まる。その他、以下の懸念がある。
【0004】
(モータ組込アクスル1:縦置)
図1(a2)に示すように、モータiを縦向にアクスルケースaに組み付けた場合、モータiの重心とタイヤTの回転中心がオフセットL1しているため、図1(b2)に示すように、車両側方から見て、アクスルケースaにはモータiの重量によってタイヤ回転中心廻りに下向きの回転モーメントMが生じる。
【0005】
図1(a1)に示すように、従来のエンジン車のアクスル構造X1のアクスルケースaも同様にディファレンシャル機構b(以下デフとも言う)重心とタイヤ回転中心がオフセットしているため、図1(b1)に示すように、同様にデフbの重量によってタイヤ回転中心廻りに下向きの回転モーメントMが生じるが、プロペラシャフトcによって回転が抑えられている。
【0006】
他方、図1(a2)に示すように、モータiが組み込まれた電動アクスル装置X2のアクスルケースaは、プロペラシャフトcによる支持が無いため、回転モーメントMは、アクスルケースaを車体フレームに固定するリーフスプリングやコントロールアーム等に支持されることになり、これらリーフスプリングやコントロールアーム等とアクスルケースaとの固定部に捩れが生じ、応力が集中してしまう。
【0007】
(モータ組込アクスル2:横置)
図1(a3)に示すように、モータjを横向にアクスルケースaに組み付けた電動アクスル装置X3においても、矢張り、モータjの重心とタイヤtの回転中心がオフセットL2しているため、図1(b3)に示すように、車両側方から見て、アクスルケースaにはモータjの重量によってタイヤ回転中心廻りに下向きの回転モーメントMが生じる。加えて、図1(a3)に示すように、上方から見てモータjの重心とトレッドWの中心軸ZがオフセットL3しているため、アクスルケースaにはモータjの重量によって車両前方(図中右方)から見てトレッド中心軸Z廻りに反時計回りの回転モーメントが生じ、車両右側に応力が集中してしまう。
【0008】
(モータ2個タイプ)
また、図2(a)、図2(b)、図2(c)に示すように、2個のモータk1、k2をアクスルケースaに組み込み、左右のアクスルシャフトmを別々に駆動することでディファレンシャル機構b(図1(a1)参照)を不要としたアクスル構造Y1、Y2、Y3が知られている。これらのアクスル構造Y1、Y2、Y3の場合、2個のモータk1、k2の重量が従来のディファレンシャル機構b(図1(a1)参照)の重量を超えると従来のアクスル装置X1よりもバネ下重量が増加し、路面追従性が悪化する。その他、以下の懸念がある。
【0009】
(モータ組込アクスル3:車輪配置)
図2(a)に示すように、左右一対のモータk1、k2を左右のタイヤT(車輪)の近傍に夫々同軸に配置し、短いモータ軸mを介して車輪Tを回転駆動するアクスル構造Y1の場合、路面からの衝撃力が短いモータ軸mを介してモータに伝わるため、モータ軸mが変形、破損する懸念がある。
【0010】
(モータ組込アクスル4:中央配置)
図2(b)に示すように、一対のモータk1、k2を車幅方向の中央側に寄せて配置し、比較的長いシャフトmを介して車輪Tを回転駆動するタイプの場合、路面からの衝撃力が比較的長いモータ軸mを介してモータk1、k2に伝わるため、路面からモータk1、k2への衝撃力は緩和されるが、長いモータ軸mの重量がバネ下重量となるため、路面追従性が悪化する。
【0011】
(モータ組込アクスル5:前後配置)
図2(c)に示すように、一対のモータk1、k2を左右のアクスルシャフトmの前後に配置し、ギヤをn介して左右のアクスルシャフトmを独立に回転駆動するタイプの場合、路面からの衝撃力がアクスルシャフトmおよびギヤnを介してモータk1、k2に伝わるため、モータk1、k2への路面からの衝撃力は大幅に緩和されるが、アクスルシャフトmおよびギヤnの重量がバネ下重量となるため、路面追従性が悪化する。
【0012】
なお、電動モータによって車輪を駆動する車両用駆動装置として特許文献1に記載したものが知られているが、本発明のように既存のアクスルケースをドディオンチューブとして利用するものではなく、モータを収容した電動駆動ユニットを避けるために平面視コ字状に湾曲形成された専用のドディオンチューブを用いているため、ドディオンチューブの湾曲部に応力が集中してしまう。また、電動駆動ユニットは一端が車体フレームに他端が専用ドディオンチューブに支持されているため、電動駆動ユニットの重量の一部がドディオンチューブに加わってしまい、バネ下重量の増大に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2020-132101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、電動モータを含む電動駆動ユニットの重量が所謂バネ下重量に加わらず、既存のアクスルケースをドディオンチューブとして流用できる電動アクスル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成すべく創案された本発明によれば、車体フレームに固定された電動駆動ユニットと、車体フレームにサスペンションを介して上下方向に所定ストローク範囲で移動自在に取り付けられたアクスルケースとを備え、アクスルケースは、車幅方向の中央部に上下方向に膨出されたバンジョー部を有し、バンジョー部の前方または後方には、開口が形成されており、電動駆動ユニットは、右車輪を駆動する右モータおよび左車輪を駆動する左モータが収容されたモータケース部と、右モータの回転を右車輪へ伝達するための右ギヤトレーンおよび左モータの回転を左車輪へ伝達するための左ギヤトレーンが収容されたギヤケース部を有し、電動駆動ユニットのギヤケース部が、アクスルケースのバンジョー部の開口に差し込まれており、ギヤケース部の上下方向の寸法が、バンジョー部の開口の上下方向の寸法から上記所定ストロークを差し引いた寸法よりも小さい、ことを特徴とする電動アクスル装置が提供される。
【0016】
本発明に係る電動アクスル装置においては、アクスルケース内の右側に右アクスルシャフトが回転自在に支持され、アクスルケース内の左側に左アクスルシャフトが回転自在に支持され、電動駆動ユニットのギヤケース部の右ギヤトレーンの最終出力ギヤと右アクスルシャフトとが右ドライブシャフトを介して連結され、電動駆動ユニットのギヤケース部の左ギヤトレーンの最終出力ギヤと左アクスルシャフトとが左ドライブシャフトを介して連結され、右ドライブシャフトと右アクスルシャフトとの連結部、右ドライブシャフトと右ギヤトレーンの最終出力ギヤとの連結部の少なくとも一方にスプラインが設けられ、左ドライブシャフトと左アクスルシャフトとの連結部、左ドライブシャフトと左ギヤトレーンの最終出力ギヤとの連結部の少なくとも一方にスプラインが設けられていてもよい。
【0017】
本発明に係る電動アクスル装置においては、アクスルケースのバンジョー部の開口とその開口に差し込まれた電動駆動ユニットのギヤケース部との間に、開口がギヤケース部に対して上下方向に移動することを許容しつつ外気を遮断するブーツが介設されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電動アクスル装置によれば、次のような効果を発揮できる。
(1)車体フレームに固定された電動駆動ユニットのギヤケース部が、車体フレームにサスペンションを介して上下方向に所定ストローク範囲で移動自在に取り付けられたアクスルケースのバンジョー部の開口に差し込まれており、ギヤケース部の上下方向の寸法が、バンジョー部の開口の上下方向の寸法から所定ストロークを差し引いた寸法よりも小さい。このため、車両の走行時にアクスルケースが上下方向に所定ストロークの範囲で上下に移動しても、バンジョー部の開口が電動駆動ユニットのギヤケース部と干渉することはない。また、電動駆動ユニットの重量が所謂バネ下重量に加わらないため、電動駆動ユニットの重量によって路面追従性が悪化することはない。また、路面からの衝撃力によってアクスルケースが上下動しても電動駆動ユニットに伝わらないため、モータの故障リスクを軽減できる。
(2)電動駆動ユニットには、右車輪を駆動する右モータおよび右ギヤトレーン、左車輪を駆動する左モータおよび左ギヤトレーンが収容されているため、右モータと左モータを別々に制御することで、カーブ走行時に内輪と外輪の回転差を吸収するディファレンシャル機構が不要となる。構造が複雑で外径が大きくなるディファレンシャル機構が不要となるため、ギヤケース部の上下方向の寸法をバンジョー部の開口の上下方向から上述した所定ストロークを差し引いた寸法よりも小さくすることで、現状、バンジョー部にディファレンシャル機構が収容されている既存のエンジン車両用のアクスルケースをドディオンチューブとして流用できる。
(3)以上要するに、本発明に係る電動アクスル装置によれば、電動駆動ユニットの重量がバネ下重量に加わらず、既存の信頼性が高いアクスルケースをドディオンチューブとして流用できる。車幅方向に略ストレート状に形成されたアクスルケースをドディオンチューブとして用いており、従来のように電動駆動ユニットを避けてコ字状に湾曲形成された一般的なドディオンチューブを用いないため、湾曲部に応力が集中する事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来の1個のモータを用いた電動アクスル装置の説明図であり、(a1)は対比例としてのエンジン車両用のアクスル装置の平面図、(b1)はその側面図、(a2)は(a1)を1個の縦置モータで電動化した電動アクスル装置の平面図、(b2)はその側面図、(a3)は(a1)を1個の横置モータで電動化した電動アクスル装置の平面図、(b3)はその側面図である。
図2】従来の2個のモータを用いた電動アクスル装置の説明図であり、(a)は車輪配置タイプの電動アクスル装置の平面図、(b)は中央配置タイプの電動アクスル装置の平面図、(c)は前後配置タイプの電動アクスル装置の平面図である。
図3】本発明の一実施形態を示す電動アクスル装置の説明図であり、(a)は電動アクスル装置の平断面図、(b)は(a)を矢印b方向から見た側断面図である。
図4】上記実施形態に係る電動アクスル装置の組立工程を示す説明図であり、(a)は第1工程としてアクスルケースにドライブシャフトケースを組み付けた平断面図、(b)はドライブシャフトケースの正面図、(c)はドライブシャフトケースの側面図、(d)はドライブシャフトケースに取り付けられるプレートの正面図である。
図5】(a)は続く第2工程としてドライブシャフトケースにホルダを組み付けた平断面図、(b)はホルダの平面図、(c)はホルダの正面図、(d)はホルダの側面図である。
図6】(a)は第3工程としてホルダにアクスルシャフトを組み付けた平断面図、(b)は第4工程としてホルダにドライブシャフトを組み付けた平断面図、(c)は第5工程としてアクスルケースのバンジョー部の開口に電動駆動ユニットのギヤケース部を差し入れギヤケース部の最終出力ギヤとドライブシャフトとを連結した平断面図である。
図7】(a)は第6工程(最終工程)としてギヤケース部に設けられたブーツをバンジョー部の開口を覆うように取り付けた平断面図、(b)はその正面図(ブーツは省略)である。
図8】本実施形態に係る電動アクスル装置のアクスルケースが上下に移動したときの開口とギヤケース部との位置関係を示す説明図であり、(a1)はアクスルケースが最大に上昇したバウンド時を実線で示すと共にアクスルケースが最大に下降したリバウンド時を破線で示した電動アクスル装置の正面断面図、(b1)はその側断面図であり、(a2)はアクスルケースが最大に上昇したバウンド時の電動アクスル装置の正面断面図、(b2)はその側断面図であり、(a3)はアクスルケースが最大に下降したリバウンド時の電動アクスルケースの正面断面図、(b3)はその側断面図である。
図9】本発明の第1変形例を示す説明図であり、(a)はドライブシャフトケースを省略してホルダを三角板に取り付けた電動アクスル装置の平断面図、(b)は三角板を示すアクスルケースの正面図、(c)は上段が最初の実施形態のホルダであり下段がそれより小型化された第1変形例のホルダを示す正面図である。
図10】本発明の第2変形例としてカバーの膨出部を平坦にした電動アクスル装置の平断面図である。
図11】本発明の第3変形例としてドライブシャフトケースの膨出部を平坦にした電動アクスル装置の説明図であり、(a1)および(b1)は対比例として膨出部を有するドライブシャフトケースの正面図および側面図であり、(a2)および(b2)は第3変形例として膨出部を平坦にしたドライブシャフトケースの正面図および側面図である。
図12】本発明の第4変形例としてホルダの形状を円筒状とした電動アクスル装置の説明図であり、(a)は円筒状のホルダが組み付けられた電動アクスル装置のバウンド時の正面断面図、(b)はその側面図、(c)は円筒状のホルダの平面図、(d)は同ホルダの正面図、(e)は同ホルダの側面図である。
図13】本発明の第5変形例を示す説明図であり、(a)はホルダに予めドライブシャフトを取り付けてアセンブリ状態とした平断面図、(b)はそのアセンブリ状態のホルダおよびドライブシャフトをドライブシャフトケースに取り付けた平断面図である。
図14】本発明の第6変形例としてドライブシャフトのタイヤ側ジョイント部にスプライン穴を設け、そこにアクスルシャフトのスプラインを差し込むようにした説明図であり、(a1)および(b1)は対比例としてドライブシャフトのタイヤ側ジョイント部にスプラインを設けた正面図および側面図、(a2)および(b2)は第5変形例としてドライブシャフトのタイヤ側ジョイント部にスプライン穴を設けた正面図および側面図、(c)は(a2)および(b2)に示すスプライン穴にアクスルシャフトのスプラインを差し込んだ電動アクスル装置の部分断面図である。
図15】本発明の第7変形例として、第2変形例と第6変形例を組み合わせた電動アクスル装置の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
(電動アクスル装置の概要)
図3(a)、図3(b)に示すように、本発明の一実施形態に係る電動アクスル装置1は、車体フレーム(図示省略)に固定された電動駆動ユニット2と、車体フレームにサスペンション(リーフスプリング、エアバッグ、コントロールアーム等)を介して上下方向に所定ストローク範囲で移動自在に取り付けられたアクスルケース3とを備えている。アクスルケース3は、車幅方向の中央部に上下方向に膨出されたバンジョー部4を有し、バンジョー部4の前方および後方には、開口5が形成されている。電動駆動ユニット2は、右車輪(図3(a)の左方の車輪)を駆動する右モータ6aおよび左車輪(図3(a)の右側の車輪)を駆動する左モータ6bが収容されたモータケース部7と、右モータ6aの回転を右車輪へ伝達するための右ギヤトレーン8aおよび左モータ6bの回転を左車輪へ伝達するための左ギヤトレーン8bが収容されたギヤケース部9を有している。電動駆動ユニット2のギヤケース部9は、アクスルケース3のバンジョー部4の前方の開口5に差し込まれており、ギヤケース部9の上下方向の寸法Aは、バンジョー部4の前方の開口5の上下方向の寸法Bから上記所定ストロークを差し引いた寸法よりも小さく設定されている。
【0022】
図3(a)、図3(b)に示すように、アクスルケース3内の車幅方向右側(図3(a)の左方の車輪)には、右アクスルシャフト10aが回転自在に支持され、アクスルケース3内の車幅方向左側(図3(a)の右方の車輪)には、左アクスルシャフト10bが回転自在に支持されている。電動駆動ユニット2のギヤケース部9の右ギヤトレーン8aの最終出力ギヤ11aと右アクスルシャフト10aとが右ドライブシャフト12aを介して連結され、電動駆動ユニット2のギヤケース部9の左ギヤトレーン8bの最終出力ギヤ11bと左アクスルシャフト10bとが左ドライブシャフト12bを介して連結されている。右ドライブシャフト12aと右アクスルシャフト10aとの連結部、右ドライブシャフト12aと右ギヤトレーン8aの最終出力ギヤ11aとの連結部の少なくとも一方にスプラインが設けられ、左ドライブシャフト12bと左アクスルシャフト10bとの連結部、左ドライブシャフト12bと左ギヤトレーン8bの最終出力ギヤ11bとの連結部の少なくとも一方にスプラインが設けられている。
【0023】
図3(a)、図3(b)に示すように、アクスルケース3のバンジョー部4の前方の開口5とその開口5に差し込まれた電動駆動ユニット2のギヤケース部9との間には、開口5がギヤケース部9に対して上下方向に移動することを許容しつつ外気を遮断するブーツ13が介設されている。以下、各構成要素について説明する。
【0024】
(アクスルケース3)
図3(a)、図3(b)に示すアクスルケース3は、図示しない車体フレーム(ラダーフレーム等)に、サスペンション(リーフスプリング、エアバッグ、コントロールアーム等)を介して上下方向に所定ストローク範囲で移動自在に取り付けられており、車幅方向中央に上下方向に膨出されたバンジョー部4と、バンジョー部4の左右に配設された筒部14とを有している。バンジョー部4の前方の開口5には、車体フレームに固定された電動駆動ユニット2のギヤケース部9が差し入れられており、アクスルケース3が上下方向に少なくとも上記所定ストロークの範囲で移動自在となっている。よって、アクスルケース3には、電動駆動ユニット2の重量が加わらず、本発明のアクスルケース3は所謂ドディオンチューブとして機能する。
【0025】
このようにドディオンチューブとして機能するアクスルケース3には、様々な車幅、車格に対応済みの既存のエンジン車両用のバンジョー型のアクスルケース3を流用することができるので高い信頼性を確保できる。加えてアクスルケース3は、電動駆動ユニット2を避けるように湾曲形成されている一般的なドディオンチューブにおける湾曲部が無いので、ドディオンチューブとして機能しつつ、従来問題となっていた湾曲部における応力集中を回避できる。また、バンジョー部4の前方の開口5は、既存のエンジン車両用アクスル装置においてはバンジョー部4の内部にディファレンシャル機構b(図1(a1)参照)を取り付けるための入口として用いられるものであるが、本発明の電動アクスル装置1においては電動駆動ユニット2のギヤケース部9を差し入れる入口として用いられる。
【0026】
(電動駆動ユニット2)
図3(a)、図3(b)に示す電動駆動ユニット2は、図示しない車体フレームに固定されており、モータケース部7とギヤケース部9とが一体となったケーシングを有する。ケーシングのモータケース部7には、右車輪(図3(a)の左側の車輪)を駆動する右モータ6aと、左車輪(図3(a)の右側の車輪)を駆動する左モータ6bとが、左右に間隔を隔てて収容されており、右モータ6a、左モータ6bには、夫々、入力ギヤ15a、15bが取り付けられている。ギヤケース部9には、入力ギヤ15a(15b)と歯合する中間ギヤ16a(16b)、中間ギヤ16a(16b)と歯合する最終出力ギヤ11a(11b)が、夫々、ベアリング17を介して回転自在に収容されている。
【0027】
図3(a)、図3(b)に示すように、中間ギヤ16a(16b)および最終出力ギヤ11a(11b)の外径は右モータ6a、左モータ6bの外径よりも小さく、ギヤケース部9の上下方向の寸法Aはモータケース部7の上下方向の寸法Cよりも小さい。これにより、ギヤケース部9の上下方向の寸法Aをバンジョー部4の前方の開口5の上下方向の寸法Bよりも可及的に小さくすることができ、車両の走行時にアクスルケース3が上下方向に移動可能なサスペンションストローク(上述の所定ストローク)を稼ぐことができる。図3(a)を矢印b方向から見た図3(b)において、BOはサスペンションのバウンドストローク、REはリバウンドストロークであり、BO+REが所定ストロークとなる。なお、バウンドストロークBOとリバウンドストロークREとは等しくなくても構わない。
【0028】
(組立)
次に、図4図7を用いて、本実施形態に係る電動アクスル装置1の組立工程を説明しつつ、組み立てに用いられる各構成要素について説明する。
【0029】
図4(a)に、サスペンションを介して車体フレーム取り付ける前のアクスルケース3を示す。アクスルケース3のバンジョー部4には、前後に開口5が夫々形成されており、前方の開口5にアクスルリング18を溶接し、後方の開口5にカバー19を溶接する。アクスルリング18には周方向に間隔を隔てて複数の穴が形成されており、それらの穴に図4(b)、図4(c)に示すドライブシャフトケース20をボルト22で締結する。ドライブシャフトケース20は、アクスルリング18に重ねられるリング部20aと、図5に示すホルダ21が挿通される四角状の窓20bが左右両側に開口されたケース部20cを有する。リング部20aには周方向に間隔を隔てて複数の穴20dが形成されており、リング部20aの穴20dとアクスルリング18の穴とがボルト22で締結される。なお、ドライブシャフトケース20には、予め、図4(d)に示す左右一対のプレート23を、図4(a)に示すように溶接しておく。
【0030】
図5(a)に示すように、ドライブシャフトケース20に溶接されたプレート23に、図5(b)、図5(c)、図5(d)に示すホルダ21をボルト24で固定する。ホルダ21は、バンジョー部4の内部から筒部14の内部(タイヤ側)へと延出された前板21aおよび後板21bと、前板21aおよび後板21bの車幅方向外側(タイヤ側)の端部に取り付けられた横板21cとを有し、図4(c)に示すドライブシャフトケース20の窓20bに挿通される。前板21aおよび後板21bの車幅方向内側(バンジョー部側)の端部にはボルト24の挿通穴25が形成されており、挿通穴25に挿通したボルト24をプレート23のネジ穴23aに締結する。横板21cには円穴21dが形成されており、円穴21dには予めベアリング26を介してソケット27を回転自在に取り付けておく。
【0031】
図5(a)に示すソケット27には、後工程において、図3(a)に示すように、ドライブシャフト12a(12b)とアクスルシャフト10a(10b)が組み付けられる。ここで、ソケット27をベアリング26を介して支持するホルダ21は、図5(c)に示す挿通穴25から円穴21dまでの長さと相関するドライブシャフト12a(12b)の長さをできるだけ長くすると共にアクスルケース3の内部への組付性を確保するため、ドライブシャフトケース20から分割されている。図5(c)に示すホルダ21の挿通穴25から円穴21dまでの長さを長くしてドライブシャフト12a(12b)を長くすることで、図8に示すサスペンション作動時におけるドライブシャフト12a(12b)の傾斜角度(作動角度)を小さくでき、ドライブシャフト12a(12b)の両端に設けた等速ジョイント28、29の負担を軽減できる。また、図5(a)において、仮にホルダ21とドライブシャフトケース20とが一体品であると、その一体品をバンジョー部4の開口5からアクスルケース3の内部に組み付けることができない。よって、ホルダ21をドライブシャフトケース20から分割することで、ドライブシャフト12a(12b)の長さを稼ぎつつ組付性を確保している。
【0032】
図6(a)に示すように、ホルダ21にベアリング26を介して支持されたソケット27にアクスルシャフト10a(10b)を差し込み、ソケットボルト30で締結する。アクスルシャフト10a(10b)の端面にはネジ穴が形成され、ソケット27の内部には仕切りが形成されている。仕切りには締結穴が形成されており、締結穴に差し込まれたソケットボルト30をアクスルシャフトの端面のネジ穴にネジ込むことで、アクスルシャフトがソケット27に締結される。アクスルシャフト10a(10b)にはスプラインが、ソケット27にはスプライン穴が夫々形成されており、両者が一体的に回転するようになっている。
【0033】
図6(b)に示すように、ホルダ21にベアリング26を介して支持されたソケット27に、ドライブシャフト12a(12b)のタイヤ側の等速ジョイント28を差し込む。タイヤ側の等速ジョイント28の外周面にはスプラインが、ソケット27にはスプライン穴が夫々形成されており、両者が一体的に回転するようになっている。タイヤ側の等速ジョイント28とソケット27とは締結されておらず、両者は車幅方向に所定範囲でスライド自在となっている。このため、差し込んだ状態で手を離すとドライブシャフト12a(12b)が抜け落ちてしまうが、スプラインによって表面積が増して摩擦抵抗が大きくなっているため落ち難い。なお、落下を防止するための取付治具を利用することも考えられる。
【0034】
図6(c)に示すように、アクスルケース3のバンジョー部4の開口5を、車体フレームに固定された電動駆動ユニット2のギヤケース部9に差し入れ、ドライブシャフト12a(12b)のギヤケース側の等速ジョイント29をギヤケース部9の最終出力ギヤ11a(11b)に差し込む。ギヤケース側の等速ジョイント29の外周面にはスプラインが、最終出力ギヤ11a(11b)にはスプライン穴が夫々形成されており、両者が一体的に回転するようになっている。ギヤケース側の等速ジョイント29と最終出力ギヤ11a(11b)とは締結されておらず、両者は車幅方向に所定範囲でスライド自在となっており、ドライブシャフト12a(12b)を車幅方向に適宜移動させて等速ジョイント29を最終出力ギヤ11a(11b)に差し込むことで、適切に組み付けることができる。
【0035】
図7(a)に示すように、ギヤケース部9に取り付けられたブーツ13を、開口5を覆うようにしてアクスルケース3のバンジョー部4のアクスルリング18にボルト22で締結する。なお、図4(b)、図4(c)に示すドライブシャフトケース20をバンジョー部4のアクスルリング18にボルト22で締結する際、アクスルリング18に複数形成された穴の全てを利用せず、残りの穴がブーツ13をボルト22で締結するために利用される。ブーツ13は、バンジョー部4の開口5がギヤケース部9に対して上下方向に移動することを許容しつつ、アクスルケース3の内側、ドライブシャフトケース20、ホルダ21、ドライブシャフト12a(12b)、ソケット27を外気から遮断する。なお、図7(b)は、図7(a)を、ブーツ13を省略して前方から見た正面図である。その後、アクスルケース3を、サスペンションを介して車体フレームに取り付ける。
【0036】
(作動)
図8に、車体フレームにサスペンションを介して上下方向に所定ストローク範囲で移動自在に取り付けられたアクスルケース3が車両の走行時に上下に所定ストロークの範囲で移動した際、アクスルケース3のバンジョー部4の開口5と車体フレームに固定された電動駆動ユニット2のギヤケース部9との位置関係を示す。図8(a1)、図8(b1)はサスペンションの最大バウンド時を実線で示すと共に最大リバウンド時を破線で示し、 図8(a2)、図8(b2)は最大バウンド時を示し、図8(a3)、図8(b3)は最大リバウンド時を示している。ここで、サスペンションがストロークするに応じてドライブシャフト12a(12b)が傾斜した際、ギヤケース部9の最終出力ギヤ11a(11b)とソケット27との距離が水平時よりも長くなる点は、ドライブシャフト12a(12b)の両端部の等速ジョイント28、29のスプラインによって吸収される。
【0037】
サスペンションストロークに相当する所定ストロークは、ドライブシャフト12a(12b)の作動角限界と、バンジョー部4の開口5の内径と、電動駆動ユニット2のギヤケース部9の上下方向寸法とによって規制される。ドライブシャフト12a(12b)の作動角限界については、図5(b)、図5(c)、図5(d)に示すホルダ21を車幅方向に出来るだけ長くしてドライブシャフト12a(12b)を長くすることで、短いドライブシャフト12a(12b)と比べて同じサスペンションストロークにおける作動角を小さくできる。この結果、ドライブシャフト12a(12b)の両端に設けた等速ジョイント28、29の負担が軽減され、作動角限界を稼ぐことができる。
【0038】
ギヤケース部9の上下方向寸法については、図3(a)、図3(b)に示すように、中間ギヤ16a(16b)および最終出力ギヤ11a(11b)の直径を右モータ6aおよび左モータ6bの直径よりも小さくして、ギヤケース部9の上下方向Aの寸法をモータケース部7の上下方向Cの寸法よりも小さくしている。この結果、ギヤケース部9の上下方向の寸法Aをバンジョー部4の開口5の上下方向の寸法Bよりも可及的に小さくすることができ、アクスルケース3が上下方向に移動可能なサスペンションストローク(所定ストローク)を稼いでいる。なお、バンジョー部4の開口5の内径については、既存のエンジン車両用のアクスルケースを流用しているので、そのアクスルケースによって定められる。
【0039】
(作用・効果)
図3(a)、図3(b)に示すように、車体フレームに固定された電動駆動ユニット2のギヤケース部9が、車体フレームにサスペンションを介して上下方向に所定ストローク範囲で移動自在に取り付けられたアクスルケース3のバンジョー部4の開口5に差し込まれており、ギヤケース部9の上下方向の寸法が、バンジョー部4の開口5の上下方向の寸法から所定ストロークを差し引いた寸法よりも小さい。このため、車両の走行中にアクスルケース3が上下方向に所定ストロークの範囲で上下に移動しても、バンジョー部4の開口5が電動駆動ユニット2のギヤケース部9と干渉することはない。また、電動駆動ユニット2の重量が所謂バネ下重量に加わらないため、電動駆動ユニット2の重量によって路面追従性が悪化することはない。また、路面からの衝撃力によってアクスルケース3が上下動しても電動駆動ユニット2に伝わらないため、モータ6a(6b)の故障リスクを軽減できる。
【0040】
図3(a)に示すように、電動駆動ユニット2には、右車輪を駆動する右モータ6aおよび右ギヤトレーン8a、左車輪を駆動する左モータ6bおよび左ギヤトレーン8bが収容されているため、右モータ6aと左モータ6bを別々に制御することで、カーブ走行時に内輪と外輪の回転差を吸収するディファレンシャル機構b(図1(a1)参照)が不要となる。構造が複雑で外径が大きくなるディファレンシャル機構bが不要となるため、図3(b)に示すように、ギヤケース部9の最終出力ギヤ11a(11b)および中間ギヤ16a(16b)の外径を右モータ6aおよび左モータ6bの外径よりも小さくして、ギヤケース部9の上下方向の寸法Aをバンジョー部4の開口5の上下方向の寸法Bから上述した所定ストロークを差し引いた寸法よりも小さくすることで、バンジョー部4にディファレンシャル機構bが収容されている既存のエンジン車両用のアクスルケース3をドディオンチューブとして流用できる。
【0041】
このようにドディオンチューブとして機能するアクスルケース3には、様々な車幅、車格に対応済みの既存のエンジン車両用のバンジョー型のアクスルケース3を流用することができるので、開発期間および開発投資を削減できると共に高い信頼性を確保できる。加えてアクスルケース3は、電動駆動ユニット2を避けるように湾曲形成されている一般的なドディオンチューブにおける湾曲部が無いので、ドディオンチューブとして機能しつつ、従来のドディオンチューブで問題となっていた湾曲部における応力集中の問題を回避できる。
【0042】
図3(a)に示す本実施形態に係る電動アクスル装置1が組み込まれた電動車両は、従来のエンジン車両と比べてドライブシャフト12a(12b)分の重量が増えるが、ドライブシャフト12a(12b)は一端(ギヤケース側の等速ジョイント29)が電動駆動ユニット2に支持されているため、概ねドライブシャフト12a(12b)の重量の半分がバネ下重量となる。よって、ドライブシャフト12a(12b)の全重量がバネ下重量となる場合と比べて路面追従性が向上する。また、現状のエンジン車両のアクスルケース3からディファレンシャル機構b(図1(a1)参照)を取り外し、図3(a)、図3(b)に示すように車体フレームに後付けした電動駆動ユニット2のギヤケース部9をバンジョー部4の開口5に差し入れることで、現状のエンジン車両を容易に電動車両に変換できる。
【0043】
(第1変形例)
図9に、本発明の第1変形例を示す。図9(a)は、図3(a)に示す前実施形態のドライブシャフトケース20を省略してホルダ21を三角板31に取り付けた電動アクスル装置1aの平断面図、図9(b)は、三角板31を示すアクスルケース3aの正面図である。アクスルケース3aは、下方が開放された断面コ字状の上側板3xと上方が開放された断面コ字状の下側板3yとが突き合わされて溶接され、開口5の近傍の上側板3xおよび下側板3yに形成された切り欠き3zに三角板31が溶接されて構成されている。三角板31にネジ穴32を設けてそのネジ穴32にホルダ21をボルト24で締結することで、図3(a)に示す前実施形態においてホルダ21を支持していたドライブシャフトケース20とプレート23(図4(a)参照)が不要となり、軽量化できる。また、プレート23が不要となるため、図9(c)に示すように、上段に記載した前実施形態のホルダ21(プレート23にボルト締結)と比べ、下段に記載した第1変形例のホルダ21(三角板31にボルト締結)の長さをプレート23の分Lだけ短くでき、更に軽量化できる。
【0044】
(第2変形例)
図10に、本発明の第2変形例を示す。図10は、図9(a)に示す第1変形例のカバー19の膨らみ19xを平坦にしたものである。アクスルケース3は、サスペンションがストロークするに伴って基本的には車体フレームに対して上下方向にのみ移動し、車体の前後方向には移動しない。すなわち、バンジョー部4のカバー19の内部には、車体フレームに固定された電動駆動ユニット2のギヤケース部9が干渉しない前後方向の空洞があり、カバー19の膨らみ19xを無せる。カバー19の膨らみ19xを平坦にすることで、カバー19の重心位置G1が膨らみ19xが有る場合の重心位置G2よりもアクスルシャフト10a(10b)の軸中心側に近づく。この結果、一般的なコ字状のドディオンチューブの課題である湾曲部における応力集中の要因の一つと考えられるアクスルシャフト10a(10b)の軸芯廻りの回転モーメントによる回転力も軽減できる。
【0045】
(第3変形例)
図11に、本発明の第3変形例を示す。図11(a1)および図11(b1)は、図4(b)および図4(c)に示す最初の実施形態に係るドライブシャフトケース20であり、図11(a2)および図11(b2)は、図4(a)に示すカバー19の内方に収容される膨らみ20xを無くして平坦にした第3変形例に係るドライブシャフトケース20wである。膨らみ20xを無くして平坦にすることで、ドライブシャフトケース20wの重心位置G3が膨らみ20xが有る場合の重心位置G4と比べてアクスルシャフト10a(10b)の軸中心側に近づき、第2変形例と同様の効果を発揮できる。
【0046】
(第4変形例)
図12に、本発明の第4変形例を示す。図12(a)、図12(b)に示すように、第4変形例は、最初の実施形態の図5(b)、図5(c)、図5(d)に示す板状のホルダ21の代わりに、図12(c)、図12(d)、図12(e)に示す円筒状のホルダ21xを、ドライブシャフトケース20の側部にボルト33で締結したものである。ホルダ21xを円筒状とすることで簡単な構造で剛性が上がり、組付性も向上する。
【0047】
(第5変形例)
図13に、本発明の第5変形例を示す。第5変形例は、組み付けの手順を最初の実施形態から多少変更したものであり、図13(a)に示すように、ホルダ21にベアリング26を介して取り付けられたケット27に、予めドライブシャフト12a(12b)をボルト34で組み付けてアセンブリ品としておき、そのアセンブリ品を図13(b)に示すように、ドライブシャフトケース20のプレート23にボルト24で締結する。予めドライブシャフト12a(12b)をソケット27に組み付けているので、最初の実施形態と比べて組立工程を一つ削減できる。また、アクスルシャフト10a(10b)を後からソケット27に差し込めるようになるので、所謂全浮動式アクスルに対応できる。なお、図8に示すアクスルケース3が昇降するサスペンション作動時に必要となるドライブシャフトの12a(12b)スライドは、ギヤケース側の等速ジョイン29に設けたスプラインによって確保される。
【0048】
(第6変形例)
図14に、本発明の第6変形例を示す。図14(a1)および図14(b1)は、図3(a)に示す最初の実施形態に係るドライブシャフト12b(12aも同様)であり、図14(a2)および図14(b2)は、第6変形例に係るドライブシャフト12bx(12aも同様)である。図14(a1)および図14(b1)に示すように、最初の実施形態に係るドライブシャフト12bは、タイヤ側の等速ジョイント28の外周面にスプラインSpが設けられ、そのスプラインSpが図3(a)に示すようにホルダ21にベアリング26を介して回転自在に支持されたソケット27のスプライン穴に、スライド自在に差し込まれている。
【0049】
他方、図14(a2)および図14(b2)に示すように、第6変形例に係るドライブシャフト12bxは、タイヤ側の等速ジョイント28xにスプライン穴Spxが設けられており、そのスプライン穴Spxに図14(c)に示すようにアクスルシャフト10b(10aも同様)に形成されたスプラインがスライド自在に差し込まれている。また、ドライブシャフト12bxのタイヤ側の等速ジョイント28xは、ホルダ21にベアリング26を介して回転自在に支持されている。この構成によれば、ソケット27が不要となるので、部品点数を削減出来る。また、アクスルシャフト10bを後から等速ジョイント28xにスプライン穴sxに差し込めるので、所謂全浮動式アクスルに対応できる。35は全浮動式のホイールハブである。
【0050】
(第7変形例)
図15に、本発明の第7変形例を示す。第7変形例は、図10に示す第2変形例と図14に示す第6変形例とを重畳的に組み合わせたものである。すなわち、カバー19の膨らみ19xを平坦とし、ホルダ21を三角板31にボルト24で締結し、ドライブシャフト12ax(12bx)のタイヤ側の等速ジョイント28xにスプライン穴sxを設け、そこにアクスルシャフト10a(10b)のスプラインを差し込んだものである。同一の部品には同一の符号を付して詳しい説明を省略するが、部品点数を削減でき、重量軽減を推進できる。
【0051】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、電動モータを含む電動駆動ユニットの重量が所謂バネ下重量に加わらず、既存のアクスルケースをドディオンチューブとして流用可能な電動アクスル装置に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 電動アクスル装置
2 電動駆動ユニット
3 アクスルケース
4 バンジョー部
5 開口
6a 右モータ
6b 左モータ
7 モータケース部
8a 右ギヤトレーン
8b 左ギヤトレーン
9 ギヤケース部
10a 右アクスルシャフト
10b 左アクスルシャフト
11a 右ギヤトレーンの最終出力ギヤ
11b 左ギヤトレーンの最終出力ギヤ
13 ブーツ
28 連結部としての等速ジョイント
29 連結部としての等速ジョイント
A ギヤケース部の上下方向の寸法
B バンジョー部の開口の上下方向の寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15