(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002096
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】圧電センサ及びシート
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20241226BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20241226BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20241226BHJP
H10N 30/857 20230101ALI20241226BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20241226BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20241226BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61B5/11 100
H10N30/30
H10N30/88
H10N30/857
A61B5/02 310L
A61B5/0245 C
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102024
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592021098
【氏名又は名称】株式会社クレハトレーディング
(71)【出願人】
【識別番号】598085261
【氏名又は名称】エルメック電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】林 和多留
(72)【発明者】
【氏名】森山 信宏
(72)【発明者】
【氏名】小川 智幸
【テーマコード(参考)】
3B084
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
3B084JC01
4C017AA02
4C017AA10
4C017AC03
4C017BC17
4C017FF15
4C038VA04
4C038VB32
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】コストを抑えながらセンサの検出精度を向上可能な圧電センサを提供する。
【解決手段】圧電センサ(10)は、第1電極と第2電極との間に圧電体が配置された長尺状の圧電素子(11)と、圧電素子(11)の周囲を覆う長尺状のラミネートフィルム(12)と、を備えている。ラミネートフィルム(12)は、ラミネートフィルム(12)の短手方向の長さ(L2)が圧電素子(11)の短手方向の長さ(L1)の2倍以上となっている幅広部(121)を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極との間に圧電体が配置された長尺状の圧電素子と、
前記圧電素子の周囲を覆う長尺状のフィルムと、
を備え、
前記フィルムは、前記フィルムの短手方向の長さが前記圧電素子の短手方向の長さの2倍以上となっている幅広部を有していることを特徴とする圧電センサ。
【請求項2】
前記幅広部の短手方向の長さは、前記圧電素子の短手方向の長さの6倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧電センサ。
【請求項3】
前記幅広部には、切欠きが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電センサ。
【請求項4】
前記フィルムは、前記圧電素子の前記第1電極側に配置された第1フィルムと、前記圧電素子の前記第2電極側に配置された第2フィルムとを有し、
前記第1フィルムの前記第1電極側の面と、前記第2フィルムの前記第2電極側の面とが、これらの面の全域に亘って接着剤により固定されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電センサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電センサと、
移動体に設けられたシートと、
を備え、
前記圧電センサは、
前記シートに配置され、前記シートに着座した乗員の心弾動を検出することを特徴とするシート。
【請求項6】
前記シートは、
乗員の臀部を支持するシートクッションを有し、
前記圧電センサは、
前記シートクッションの内部における中央部よりも左側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のシート。
【請求項7】
前記圧電センサは、長尺状であり、前記圧電センサの長手方向が前記シートクッションの前後方向に沿うように配置されていることを特徴とする請求項6に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電センサ及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、板状のベース板の一方の面に、圧電フィルムを有するセンサ素子が積層されたひずみセンサが開示されている。センサ素子の圧電フィルムの両面には、電極が積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のセンサにおいて、センサの検出精度を向上させるために、センサ素子の電極の幅を広げた場合、コストが高くなるという課題がある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、コストを抑えながらセンサの検出精度を向上可能な圧電センサ、及び当該圧電センサを備えたシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る圧電センサは、第1電極と第2電極との間に圧電体が配置された長尺状の圧電素子と、前記圧電素子の周囲を覆う長尺状のフィルムと、を備えている。前記フィルムは、前記フィルムの短手方向の長さが前記圧電素子の短手方向の長さの2倍以上となっている幅広部を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、コストを抑えながらセンサの検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る圧電センサを備えたシートの構成を示す模式的な側面図である。
【
図2】
図1の圧電センサの全体構成を示す上面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図1のシートを上から見た模式的な構造図である。
【
図5】
図1のシートを前面から見た模式的な断面図である。
【
図6】
図1の圧電センサによる各乗員の心弾動の検出結果から求められたRRIの推定精度の割合の一例を示す箱ひげ図である。
【
図7】比較例である圧電センサの全体構成を示す上面図である。
【
図8】
図7の圧電センサによる各乗員の心弾動の検出結果から求められたRRIの推定精度の割合の一例を示す箱ひげ図である。
【
図9】実施形態の変形例1に係る圧電センサのフィルムの幅広部の形状を示す上面図である。
【
図10】実施形態の変形例2に係る圧電センサのフィルムの幅広部の形状を示す上面図である。
【
図11】実施形態の変形例3に係る圧電センサのフィルムの幅広部の形状を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係る圧電センサ10を備えたシート100について、
図1~
図8を参照して説明する。
【0010】
[シート]
図1は、圧電センサ10を備えたシート100の構成を示す模式的な側面図である。
図1には、シート100に乗員Mが着座した状態が示されている。
図1に示すように、シート100は、シートクッション101と、シートバック102と、ヘッドレスト103と、圧電センサ10と、コントローラ20と、シート移動装置30とを備えている。なお、
図1では、シートバック102と接触している乗員Mの背部、及びシートクッション101と接触している乗員Mの臀部が破線にて示されている。
【0011】
シート100は、例えば車両に設けられている。車両は、移動体の一例である。シート100には、乗員Mが着座する。シート100は、例えば運転席である。なお、シート100は、助手席、及び後部座席であってもよい。以下、説明の便宜上、
図1の矢印に示されるように、シート100の上下方向、及び前後方向を定義する。
【0012】
シートクッション101は、乗員Mの臀部を支持するための部材である。シートクッション101は、図示しないクッションフレームと、クッションフレームを覆うクッションパッドと、表皮とを有している。クッションパッドは、ポリウレタンフォーム等の発泡樹脂により形成されている。
【0013】
シートバック102は、乗員Mの背部を支持するための部材である。シートバック102は、シートクッション101の後方上部に設けられ、図示しないバックフレームと、バックフレームを覆うバックパッドと、表皮とを有している。バックパッドは、ポリウレタンフォーム等の発泡樹脂により形成されている。ヘッドレスト103は、乗員Mの頭部を支持するための部材であり、シートバック102の上端部に取り付けられている。
【0014】
圧電センサ10は、詳しくは後述するが、シートクッション101の内部に配置されている。圧電センサ10は、シート100に着座した乗員Mの心弾動(BCG:Ballistocardiology)Bを検出する。なお、圧電センサ10は、シートクッション101の表皮の上面に固定されていてもよい。
【0015】
圧電センサ10は、コントローラ20に電気的に接続されている。圧電センサ10により検出された心弾動Bを示す信号は、コントローラ20へ送られる。コントローラ20は、圧電センサ10からの心弾動Bを示す信号に基づいて、シート100に着座した乗員Mの心拍を計測する。
【0016】
コントローラ20は、圧電センサ10により検出された乗員Mの心弾動Bに基づいて、乗員Mの心拍を計測する。そして、コントローラ20は、計測した心拍の変動を解析することにより、乗員MのRRI(R-R Interval)を求める。RRIとは、乗員Mの心電図を計測したときに隣接するR波の間隔のことである。
【0017】
シート移動装置30は、シートクッション101を支持すると共に、シート100を前後方向にスライドさせるための装置である。シート移動装置30は、図示しないが、左右一対のスライドレールと、シート100を昇降させる左右一対のシートリフタとを有している。シート移動装置30は、車両の床面F上に配置されている。
【0018】
[圧電センサの構成]
図2は、圧電センサ10の全体構成を示す上面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
図2に示すように、圧電センサ10は、圧電素子11と、ラミネートフィルム12と、フラットケーブル13と、収縮チューブ14と、シールドケーブル15とを備えている。以下、
図2及び
図3を適宜参照し、圧電センサ10の構成について説明する。
【0019】
図2に示すように、圧電素子11は、長尺状の部材である。圧電素子11は、
図3に示すように、圧電フィルム110と、第1電極111と、第2電極112とを有している。圧電フィルム110は、圧電体の一例であり、第1電極111と第2電極112との間に配置されている。
【0020】
圧電フィルム110は、圧電効果を有する材料、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)をフィルム状に成形して、長尺の帯状に切断したものである。圧電フィルム110は、微小な圧縮及び歪み等に応じて電圧を出力する。
【0021】
なお、圧電フィルム110の材料としては、PVDFの他にも、トリフルオロエチレン(TrEF)、ポリ乳酸、ポリ尿酸、及びポリアミノ酸等を用いてもよい。
【0022】
圧電フィルム110の一方の面には、第1電極111が接着されている。第1電極111は、例えば銀から形成された薄い膜状の部材である。第1電極111は、例えば正極である。圧電フィルム110の他方の面には、第2電極112が接着されている。第2電極112は、例えば銀から形成された薄い膜状の部材である。第2電極112は、例えば負極である。
【0023】
第1電極111及び第2電極112は、フラットケーブル13に接続されている。フラットケーブル13は、銅線等を樹脂製の絶縁体で覆った配線を、複数並列に束ねて薄板状にしたケーブルである。フラットケーブル13は、第1電極111及び第2電極112に比べて、薄くて柔らかいので、折り曲げ等の屈曲性に優れている。フラットケーブル13は、シートクッション101の内部において、コントローラ20側へ折り曲げられて配置されている。
【0024】
フラットケーブル13は、収縮チューブ14を介して、シールドケーブル15に接続されている。収縮チューブ14は、フラットケーブル13及びシールドケーブル15の周囲を覆うことにより、フラットケーブル13とシールドケーブル15とを固定している。
【0025】
シールドケーブル15は、コントローラ20に電気的に接続されている。シールドケーブル15の外周は、外部からのノイズを遮断するシールド部材が配置されている。シールド部材は、銅等の金属箔から形成されている。
【0026】
圧電センサ10に力が加わると、圧電フィルム110が変形することに伴って電圧が出力されて、第1電極111及び第2電極112が通電する。シート100に着座した乗員Mの心弾動Bが、シートクッション101を介して圧電センサ10に伝わると、圧電フィルム110が変形することに伴って電圧が出力される。
【0027】
圧電フィルム110から出力された電圧は、第1電極111及び第2電極112を介して、フラットケーブル13及びシールドケーブル15に送られた後、コントローラ20へ入力される。コントローラ20は、圧電センサ10の検出結果に基づいて、乗員Mの心拍を計測する。
【0028】
ラミネートフィルム12は、圧電素子11の周囲を覆う長尺状のフィルムの一例であり、圧電素子11を保護している。ラミネートフィルム12の材質は、例えばポリエステルである。また、1枚のラミネートフィルム12の厚さは、例えば5μm~110μm程度であることが好ましい。
【0029】
なお、ラミネートフィルム12の材質は、ポリエステルに限らず、他にも、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート樹脂、又はポリフッ化ビニリデン等であってもよい。また、ラミネートフィルム12の材質は、複数種類の材質が混ぜられたものであってもよい。また、ラミネートフィルム12は、複数種類の素材が重ね合わせられたものであってもよい。
【0030】
図2に示すように、ラミネートフィルム12は、幅広部121と、接続部122とを有している。幅広部121の短手方向の長さL2は、圧電素子11の短手方向の長さL1の2倍以上、且つ6倍以下となっている。より好ましくは、幅広部121の短手方向の長さL2は、圧電素子11の短手方向の長さL1の約3倍である。
【0031】
ラミネートフィルム12に、上記した幅広部121を設けることにより、圧電センサ10のロバスト性を高め、乗員Mの体格にばらつきがあっても、圧電センサ10の出力精度を確保できるようにしている。
【0032】
なお、圧電素子11の短手方向の長さL1は、例えば11mm~15mm程度であればよい。より好ましくは、圧電素子11の短手方向の長さL1は、例えば13mmであればよい。
【0033】
また、幅広部121の短手方向の長さL2は、30mm~70mm程度、より好ましくは、30mm~50mm程度であればよい。より好ましくは、幅広部121の短手方向の長さL2は、例えば40mmであればよい。詳しくは後述するが、圧電センサ10は、幅広部121の短手方向の長さL2が30mm~50mm程度である場合に、幅広部121の短手方向の長さL2が50mm~70mm程度である場合よりも、圧電センサ10の検出精度が高くなる。
【0034】
接続部122は、幅広部121以外の部位であって、幅広部121の一端部から、圧電素子11に沿って延びている。接続部122の短手方向の長さL3は、圧電素子11の短手方向の長さよりも、数mm程度長くなっている。接続部122の一端部には、収縮チューブ14が取り付けられている。
【0035】
図3に示すように、ラミネートフィルム12は、1枚のラミネートフィルムを、圧電素子11を挟むように折り曲げて重ねたものであり、圧電素子11の第1電極111側に配置された部分である第1フィルム12aと、圧電素子11の第2電極112側に配置された部分である第2フィルム12bとから構成されている。第1フィルム12aと第2フィルム12bは、1枚のラミネートフィルムからなるので、それらの厚さは同じとなる。ただし、1枚のラミネートフィルムであっても、第1フィルム12aとなる部分と第2フィルム12bとなる部分のそれぞれの厚さが互いに異なる場合、第1フィルム12aの厚さと第2フィルム12bの厚さが異なることは言うまでもない。
【0036】
なお、ラミネートフィルム12は、2枚のラミネートフィルムを、圧電素子11を挟むように重ねて構成されてもよい。この場合、第1フィルム12aとなるラミネートフィルムの厚さと、第2フィルム12bとなるラミネートフィルムの厚さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
第1フィルム12aと第2フィルム12bとは、これらの間に圧電素子11を挟んだ状態で、接着剤16により固定されている。具体的には、第1フィルム12aの第1電極111側の面と第2フィルム12bの第2電極112側の面とは、これらの面が対向する全域に亘って接着剤16によって接着されている。接着剤16の厚さは、例えば40μm程度であることが好ましい。なお、接着剤16の厚さは、40μmに限らず、適宜変更可能である。
【0038】
また、ラミネートフィルム12は、第1フィルム12aの第1電極111側の面と第2フィルム12bの第2電極112側の面とが対向する全域に亘って接着剤16によって接着されていなくてもよい。例えば、ラミネートフィルム12は、圧電素子11を固定できるように、少なくとも、上面視にて圧電素子11の外周部から数mmの範囲が、接着剤16によって接着されていればよい。
【0039】
[圧電センサの配置]
図4は、シート100を上から見た模式的な構造図である。
図4に示すように、圧電センサ10は、乗員Mの心臓の位置に近付けてセンサの検出精度を高めるために、シートクッション101の内部における中央部よりも左側に配置されている。また、圧電センサ10は、長尺状であり、圧電センサ10の長手方向がシートクッション101の前後方向に沿うように配置されている。
【0040】
[圧電センサの効果]
図5は、シート100を前面から見た模式的な断面図である。
図5には、乗員Mの左足の太腿が示されている。
図5に示すように、乗員Mがシート100に着座すると、乗員Mの太腿から圧電センサ10に、乗員Mの心弾動Bが伝達する。なお、圧電センサ10には、振動ノイズNも伝達する。振動ノイズNには、車両が移動した時に路面から伝わる振動、及び車両のエンジンの振動等が含まれる。
【0041】
図6は、車両が時速80kmで走行した動的な条件で、シート100の圧電センサ10による乗員の心弾動Bの検出結果から求められたRRIの推定精度の割合を示す箱ひげ図である。
図6には、心弾動Bの検出対象である2名の被験者、即ち、乗員M1、M2の各々のRRIの推定精度の割合が示されている。乗員M1と乗員M2とは、互いに異なる体格である。
【0042】
図6に示す例では、乗員M1のRRI推定精度の割合は、約0.875~約0.950である。乗員M2のRRI推定精度の割合は、約0.750~約0.825である。
【0043】
ここで、
図7は、比較例である圧電センサ10Dの全体構成を示す上面図である。また、
図8は、
図7に示した圧電センサ10Dによる乗員の心弾動Bの検出結果から求められたRRIの推定精度の割合を示す箱ひげ図である。なお、
図7の圧電センサ10Dによる心弾動Bの検出対象である2名の被験者、即ち、乗員M1,M2は、
図2の圧電センサ10Dによる心弾動Bの検出対象である乗員M1,M2と、それぞれ同一人物である。
【0044】
図7に示すように、圧電センサ10Dは、
図1の圧電センサ10とは異なり、
図1の圧電センサ10が有する幅広部121に相当する部分を有していない。なお、ラミネートフィルム12Dの短手方向の長さL2Dが、圧電素子11の短手方向の長さL1よりも数mm程度長くなっている。
【0045】
図8に示すように、乗員M1のRRI推定精度の割合は、約0.500~約0.800である。乗員M2のRRI推定精度の割合は、約0.575~約0.6125である。
【0046】
図6及び
図8から分かるように、幅広部121を有する圧電センサ10は、幅広部を有していない圧電センサ10Dよりも出力電圧は高くなり、RRIの推定精度が向上した。
【0047】
このように、本実施形態の圧電センサ10によれば、乗員M1及び乗員M2の両方のRRI推定精度を向上させることができる。また、RRI推定精度が高い程、RRI正答率が高い値となる。つまり、本実施形態の圧電センサ10をシート100に配置することによりRRI正答率を向上させることができる。ここでのRRI正答率とは、所定期間に計測された乗員M1及び乗員M2のRRIと、
図6に示される乗員M1及び乗員M2の推定されたRRIとの差が、50msec以内に収まっている確率を表す。所定期間は、特定の時間に限定されない。
【0048】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態の圧電センサ10によれば、ラミネートフィルム12の幅広部121の短手方向の長さL2を、圧電素子11の短手方向の長さL1の2倍以上6倍以下とすることで、シート100に着座した乗員Mから圧電センサ10へ加わる圧力の受圧面積を広くして、圧電センサ10の出力精度を向上することができると共に、圧電センサ10のロバスト性を高めることができる。
【0049】
特に、圧電素子11の第1電極111及び第2電極112の大きさを大きくしなくてもよいので、コストを抑えることもできる。また、本実施形態の圧電センサ10によれば、RRI推定精度を向上させることができる。
【0050】
また、圧電センサ10は、
図4に示すように、シートクッション101の内部における中央部よりも左側、即ち乗員Mの心臓により近い位置に配置されているので、乗員Mの心弾動Bを高精度で検出することができる。
【0051】
更に、圧電センサ10は、
図4に示すように、圧電センサ10の長手方向がシートクッション101の前後方向に沿うように配置されているので、乗員Mの左側の太腿に沿って延びた大腿動脈等の脈拍を、圧電センサ10により検出し易くすることができ、乗員Mの心弾動Bの検出精度を向上させることができる。
【0052】
また、ラミネートフィルム12は、
図3に示すように、第1フィルム12aの第1電極111側の面と第2フィルム12bの第2電極112側の面とが、これらの面の全域に亘って接着剤16によって固定されている。このため、圧電センサ10の外部から圧電素子11側へ、水蒸気及び腐食性ガス等が浸透するまでの距離である浸透距離を長くすることができる。これにより、圧電素子11の劣化を抑制することができ、圧電センサ10の寿命を長くできる。更に、圧電センサ10への車両からのノイズNの混入量を低減することができる。
【0053】
また、ラミネートフィルム12の材質としてポリエステルを用いることで、ラミネートフィルム12の剛性を確保することができる。特に、ラミネートフィルム12の幅広部121において、第1フィルム12aと第2フィルム12bとの接着面積が大きくすることで、ラミネートフィルム12の耐曲げ性を向上させることができる。
【0054】
以下、上記した実施形態の変形例1~3に係る圧電センサ10A~10Cについて、
図9~
図11を参照して説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0055】
〔変形例1〕
まず、変形例1に係る圧電センサ10Aについて、
図9を参照して説明する。
図9は、変形例1の圧電センサ10Aのラミネートフィルム12Aの幅広部121Aの形状を示す上面図である。なお、
図9では、フラットケーブル13、収縮チューブ14、及びシールドケーブル15を省略している。
【0056】
図9に示すように、ラミネートフィルム12Aは、幅広部121Aを有している。幅広部121Aには、矩形状の切欠き122Aが形成されている。即ち、幅広部121Aは、幅広部121Aの一端部側の途中において、圧電素子11の短手方向のラミネートフィルム12Aが矩形状に切断された形状となっている。
【0057】
幅広部121Aの短手方向の長さL2Aは、圧電素子11の短手方向の長さL1の4倍程度になっている。なお、幅広部121Aの短手方向の長さL2Aは、圧電素子11の短手方向の長さL1の2倍以上、且つ6倍以下であればよい。
【0058】
変形例1の圧電センサ10Aにおいても、上記した実施形態の圧電センサ10と同様の効果を得ることができる。即ち、圧電センサ10Aのロバスト性を高め、且つコストを抑えながら、圧電センサ10Aの出力精度を向上させることができる。
【0059】
〔変形例2〕
次に、変形例2に係る圧電センサ10Bについて、
図10を参照して説明する。
図10は、変形例2の圧電センサ10Bのラミネートフィルム12Bの幅広部121Bの形状を示す上面図である。なお、
図10では、フラットケーブル13、収縮チューブ14、及びシールドケーブル15を省略している。
【0060】
図10に示すように、ラミネートフィルム12Bは、幅広部121Bを有している。幅広部121Bには、三角形状の切欠き122Bが形成されている。即ち、幅広部121Bは、幅広部121Bの一端部側の途中において、圧電素子11の短手方向のラミネートフィルム12Bが三角形状に切断された形状となっている。
【0061】
幅広部121Bの短手方向の長さL2Bは、圧電素子11の短手方向の長さL1の4倍程度になっている。なお、幅広部121Bの短手方向の長さL2Bは、圧電素子11の短手方向の長さL1の2倍以上、且つ6倍以下であればよい。
【0062】
変形例2の圧電センサ10Bにおいても、上記した実施形態の圧電センサ10と同様の効果を得ることができる。即ち、圧電センサ10Bのロバスト性を高め、且つコストを抑えながら、圧電センサ10Bの出力精度を向上させることができる。
【0063】
〔変形例3〕
次に、変形例3に係る圧電センサ10Cについて、
図11を参照して説明する。
図11は、変形例3の圧電センサ10Cのラミネートフィルム12Cの幅広部121Cの形状を示す上面図である。なお、
図11では、フラットケーブル13、収縮チューブ14、及びシールドケーブル15を省略している。
【0064】
図11に示すように、ラミネートフィルム12Cは、幅広部121Cを有している。幅広部121Cには、矩形状の切欠き122Cが複数形成されている。即ち、幅広部121Cは、幅広部121Cの一端部側の途中において、圧電素子11の短手方向のラミネートフィルム12Cが、複数箇所矩形状に切断された蛇腹形状となっている。
【0065】
幅広部121Cの短手方向の長さL2Cは、圧電素子11の短手方向の長さL2Bの4倍程度である。なお、幅広部121Cの短手方向の長さL2Cは、圧電素子11の短手方向の長さL1の2倍以上、且つ6倍以下であればよい。
【0066】
変形例3の圧電センサ10Cにおいても、上記した実施形態の圧電センサ10と同様の効果を得ることができる。即ち、圧電センサ10Cのロバスト性を高め、且つコストを抑えながら、圧電センサ10Cの出力精度を向上させることができる。
【0067】
〔その他の実施形態〕
上記した実施形態では、シート100は、移動体の一例として、車両に設けられるものとしたが、これに限定されない。例えば、シート100は、列車、航空機、船舶等に設けられてもよい。
【0068】
また、上記した実施形態の圧電センサ10では、ラミネートフィルム12の幅広部121の外形形状は、
図2に示すように矩形状であるとしたが、これに限らず、例えば楕円形状、及び多角形状であってもよい。
【0069】
また、上記した実施形態では、圧電センサ10は、シートクッション101の内部における中央部よりも左側に配置されているものとしたが、これに限定されない。例えば、圧電センサ10は、シートクッション101の内部における中央部、又は、中央部よりも右側に配置されていてもよいし、シートバック102の内部に配置されていてもよい。
【0070】
また、上記した実施形態では、コントローラ20は、1つの圧電センサ10の検出結果に基づいて、乗員Mの心拍を計測するものとしたが、これに限定されない。コントローラ20は、車両が備える複数の圧電センサ10の検出結果に基づいて乗員Mの心拍を計測してもよい。
【0071】
また、上記した実施形態では、シート100は、シートクッション101、シートバック102、及びヘッドレスト103を有するものとしたが、これに限定されない。シート100は、シートバック102及びヘッドレスト103を有していなくてもよく、シートクッション101だけを有していてもよい。また、シート100には、ベッド、及びマット等も含まれるものとする。
【0072】
本開示は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
10、10A、10B、10C 圧電センサ
11 圧電素子
12、12A、12B、12C ラミネートフィルム
16 接着剤
20 コントローラ
100 シート
110 圧電フィルム
111 第1電極
112 第2電極
121、121A、121B、121C 幅広部
B 心弾動
M、M1、M2 乗員