(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020961
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/18 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
E03D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124612
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】浦田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】土谷 匠
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039AD01
2D039AD04
2D039BB06
2D039FD02
(57)【要約】
【課題】本発明は、汚物を排出するのに十分なジェット吐水を行うことができ、汚物の排出性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、サイホンジェット式の水洗大便器1であって、ボウル部6、リム吐水口20、排水トラップ管路8、排水トラップ管路8の入口部8aに向かって洗浄水を吐水するジェット吐水口14、貯水タンク4からの洗浄水をジェット吐水口14に供給するジェット導水路16を有し、ジェット導水路16には、洗浄水が流れる流路よりも上方に延びる空気滞留部50,52,54が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源からの洗浄水をジェット吐水口から吐水することにより汚物を排出するサイホンジェット式の水洗大便器であって、
ボウル形状の汚物受け面と上縁部に形成されるリム部を備えたボウル部と、
上記リム部に設けられ上記ボウル部に向かって洗浄水を吐水するリム吐水口と、
上記ボウル部の底部に設けられ、上方へ延びる上昇管路と、この上昇管路から下方へ延びる下降管路と、この下降管路と上記上昇管路との間に位置して封水水位を規定する頂部と、を含む排水トラップ管路と、
上記ボウル部の底部に設けられ上記排水トラップ管路の入口部に向かって洗浄水を吐水するジェット吐水口と、
このジェット吐水口と上記洗浄水源とを接続し、上記洗浄水源からの洗浄水を上記ジェット吐水口に供給するジェット導水路と、
を有し、
上記ジェット導水路には、洗浄水が流れる流路よりも上方に延びる空気滞留部が設けられていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記ジェット導水路は、上記洗浄水源から前方へ延びる上流側流路と、この上流側流路から屈曲する屈曲流路と、この屈曲流路から後方へ延びて上記ジェット吐水口に接続する下流側流路と、を有し、
上記空気滞留部は、上記上流側流路に設けられている、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記上流側流路の上面は、上記空気滞留部が設けられている領域を除き、ほぼ水平になっている、請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記上流側流路の上記上面は、上記封水水位と同じ高さ又は上記封水水位よりも下方に位置している、請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記空気滞留部の上端は、上記封水水位よりも上方に位置している、請求項1~4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記空気滞留部は、上記ボウル部に沿って形成されている、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記空気滞留部は、上流側の壁面と、下流側の壁面と、上記上流側の壁面と上記下流側の壁面との間の上端と、を有し、
上記上流側の壁面は、上記上端を通る鉛直線に対する傾斜角度が上記下流側の壁面の傾斜角度よりも小さくなっている、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項8】
上記空気滞留部は、上記上端に向かって先細り形状に形成されている、請求項7に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水源からの洗浄水をジェット吐水口から吐水することにより汚物を排出するサイホンジェット式の水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1及び2に記載されているように、洗浄水をジェット吐水口から吐水し、排水トラップ管路内でサイホン作用を発生させることにより汚物を排出する、サイホンジェット式の水洗大便器が知られている。この水洗大便器は、ジェット導水路が貯水タンクの排水口から前方に向かって延び、その後に屈曲してジェット吐水口に向かって後方に延びている。ジェット導水路を流れる洗浄水は、ジェット導水路に滞留している空気を巻き込みながら流れ、ジェット吐水口から吐水されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-168671号公報
【特許文献2】特開2015-25258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1及び2に記載されたような水洗大便器では、洗浄水がジェット導水路を流れる際に空気を巻き込みながら流れるため、ジェット吐水口から吐水される洗浄水の勢いが弱まり、汚物の排出性能が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、汚物を排出するのに十分なジェット吐水を行うことができ、汚物の排出性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水源からの洗浄水をジェット吐水口から吐水することにより汚物を排出するサイホンジェット式の水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と上縁部に形成されるリム部とを備えたボウル部と、リム部に設けられボウル部に向かって洗浄水を吐水するリム吐水口と、ボウル部の底部に設けられ、上方へ延びる上昇管路と、この上昇管路から下方へ延びる下降管路と、この下降管路と上昇管路との間に位置して封水水位を規定する頂部と、を含む排水トラップ管路と、ボウル部の底部に設けられ排水トラップ管路の入口部に向かって洗浄水を吐水するジェット吐水口と、このジェット吐水口と洗浄水源とを接続し、洗浄水源からの洗浄水をジェット吐水口に供給するジェット導水路と、を有し、ジェット導水路には、洗浄水が流れる流路よりも上方に延びる空気滞留部が設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、ジェット導水路には、洗浄水が流れる流路よりも上方に延びる空気滞留部が設けられているので、洗浄水がジェット導水路を流れると、ジェット導水路に滞留している空気が空気滞留部に押し込まれ、ジェット導水路を流れる洗浄水が空気を巻き込むことを抑制することができる。これにより、汚物を排出するのに十分なジェット吐水を行うことができ、汚物の排出性能を向上させることができる。
【0007】
また、本発明において、好ましくは、ジェット導水路は、洗浄水源から前方へ延びる上流側流路と、この上流側流路から屈曲する屈曲流路と、この屈曲流路から後方へ延びてジェット吐水口に接続する下流側流路と、を有し、空気滞留部は、上流側流路に設けられている。
このように構成された本発明においては、空気滞留部がジェット導水路の上流側流路に設けられているので、早い段階で空気が空気滞留部に押し込まれ、洗浄水をジェット吐水口に向けて流すことができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上流側流路の上面は、空気滞留部が設けられている領域を除き、ほぼ水平になっている。
このように構成された本発明においては、上流側流路の上面が、空気滞留部が設けられている領域を除き、ほぼ水平になっているので、上流側流路を流れる洗浄水が圧力損失を受けるのを抑制することができる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、上流側流路の上面は、封水水位と同じ高さ又は封水水位よりも下方に位置している。
このように構成された本発明においては、上流側流路の上面が、封水水位と同じ高さ又は封水水位よりも下方に位置しているので、ジェット導水路を満水状態にして滞留する空気を減らすことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、空気滞留部の上端は、封水水位よりも上方に位置している。
このように構成された本発明においては、空気滞留部の上端は、封水水位よりも上方に位置しているので、空気滞留部内に空気を確実に滞留させることができる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、空気滞留部は、ボウル部に沿って形成されている。
このように構成された本発明においては、空気滞留部は、ボウル部に沿って形成されているので、ボウル部の裏のデッドスペースを有効に活用することができ、便器全体をコンパクトにすることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、空気滞留部は、上流側の壁面と、下流側の壁面と、上流側の壁面と下流側の壁面との間の上端と、を有し、上流側の壁面は、上端を通る鉛直線に対する傾斜角度が下流側の壁面の傾斜角度よりも小さくなっている。
このように構成された本発明においては、空気滞留部が、上流側の壁面と、下流側の壁面と、上流側の壁面と下流側の壁面との間の上端と、を有し、上端を通る鉛直線に対する傾斜角度が、上流側の壁面が下流側の壁面よりも小さくなっているので、ジェット導水路を横方向に流れる洗浄水が空気滞留部に流入し過ぎることにより、ジェット吐水口に向かう流れが阻害されるのを防止することができる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、空気滞留部は、上端に向かって先細り形状に形成されている。
このように構成された本発明においては、空気滞留部は、上端に向かって先細り形状に形成されているので、空気滞留部に流入した空気を上方に集約できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水洗大便器によれば、汚物を排出するのに十分なジェット吐水を行うことができ、汚物の排出性能を向上させることができる水洗大便器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿って見た側面断面図である。
【
図3A】本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路を示す斜視図である。
【
図3B】本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路とボウル部との位置関係を説明するための斜視図である。
【
図4】
図1に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の下流部分の平面断面図である。
【
図5A】
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の流路断面Aを示す図である。
【
図5B】
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の流路断面Bを示す図である。
【
図5C】
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の流路断面Cを示す図である。
【
図5D】
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の流路断面Dを示す図である。
【
図5E】
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の流路断面Eを示す図である。
【
図5F】
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の流路断面Fを示す図である。
【
図5G】
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の流路断面Gを示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄動作を説明するための図である。
【
図7A】本発明の第2実施形態による水洗大便器のジェット導水路を示す斜視図である。
【
図7B】本発明の第2実施形態による水洗大便器のジェット導水路とボウル部との位置関係を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態による水洗大便器1について説明する。
先ず、
図1及び
図2により、第1実施形態による水洗大便器1の基本構造を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、
図2は、
図1のII-II線に沿って見た側面断面図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態によるサイホンジェット式の水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された樹脂製の便座及び便蓋(図示せず)と、便器本体2の後方上部に配置され、樹脂製のカバー(図示せず)により覆われる貯水タンク4と、を備えている。
【0018】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部6と、ボウル部6の底部に設けられサイホン作用により汚物を排出するための排水トラップ管路8と、リム吐水を行うリム吐水口10と、リム吐水口10に洗浄水を供給するリム導水路12と、ジェット吐水を行うジェット吐水口14と、ジェット吐水口14に洗浄水を供給するジェット導水路16と、が形成されている。
【0019】
ボウル部6は、ボウル形状の汚物受け面18と、ボウル部6の上縁部に沿って形成されたリム部20と、これらの汚物受け面18とリム部20との間に形成された棚部21と、を備えている。また、ボウル部6は、汚物受け面18の下方の領域に形成されて排水トラップ管路8に接続されるツボ部22を備えている。このツボ部22の内部には、封水面Wが形成されている。
【0020】
排水トラップ管路8は、入口部8aと、入口部8aから上方へ延びる上昇管路8bと、この上昇管路8bから下方へ延びる下降管路8cと、この下降管路8cと上昇管路8bとの間に位置して封水水位を規定する頂部8dと、を備えている。
ここで、排水トラップ管路8の下降管路8cの下端は、排水ソケット(図示せず)を介して排水管(図示せず)に接続されている。
【0021】
リム吐水口10は、便器本体2を前方から見て、リム部20の左側後方に形成されている。リム吐水口10は、洗浄水を前方に向かって吐水し、この洗浄水が汚物受け面18へ流下しつつリム部20の内周面及び棚部21の棚面上を旋回するようになっている。
【0022】
リム導水路12は、リム吐水口10に向かって流路断面が徐々に小さくなる先細り形状に形成されている。リム導水路12の上流側には、水道に直結する給水ホース13が連結されている。リム導水路12には、水道から洗浄水が供給され、水道の給水圧力によりリム吐水口10から洗浄水が吐水されるようになっている。
【0023】
ジェット吐水口14は、ボウル部6の底部に形成されている。ジェット吐水口14は、排水トラップ管路8の入口部8aに対向して配置され、排水トラップ管路8の入口部8aに向けられている。ジェット吐水口14は、洗浄水を排水トラップ管路8の入口部8aに向かって吐水し、この洗浄水が排水トラップ管路8内に流入してサイホン作用を起動するようになっている。
【0024】
ジェット導水路16は、貯水タンク4から前方へ延びる上流側流路16aと、この上流側流路16aから屈曲する屈曲流路16bと、この屈曲流路16bから後方へ延びてジェット吐水口14に接続する下流側流路16cと、を備えている。ジェット導水路16には、貯水タンク4から洗浄水が供給され、この洗浄水のヘッド圧によりジェット吐水口14から洗浄水が吐水されるようになっている。
【0025】
貯水タンク4は、ジェット吐水に使用される洗浄水を貯水してジェット吐水口14へ供給する重力給水式のタンクである。貯水タンク4は、約3リットルの容積を有する小型の樹脂製のタンクである。1回の洗浄において貯水タンク4から排出される洗浄水の水量は、約2リットルである。貯水タンク4の下部は、便器本体2のリム部20の上面よりも下方、且つ、排水トラップ管路8の頂部8dよりも上方に配置されている。これにより、水洗大便器1は、ローシルエットタイプの便器になっている。
なお、ジェット吐水口14に洗浄水を供給する洗浄水源としては、本実施形態で示す重力給水式の貯水タンクに限定されず、加圧ポンプ、ジェットポンプ、蓄圧ポンプなどのポンプを備えた貯水タンクを用いてもよい。
【0026】
貯水タンク4内には、貯水タンク4に洗浄水を供給する給水装置24と、貯水タンク4に貯水された洗浄水をジェット導水路16に供給又は止水する排水装置26と、貯水タンク4内の洗浄水の水位が止水水位(満水水位)となった状態を検知するフロートスイッチ28が設けられている。また、貯水タンク4外には、使用者の操作信号に基づいて給水装置24や排水装置26を駆動又は停止するように制御するコントローラ(図示せず)と、使用者の操作に応じて操作信号を発信する操作部(図示せず)が設けられている。
【0027】
給水装置24は、水道に連結された定流量弁(図示せず)と、リム吐水口10への洗浄水の供給又は止水を行うリム側電磁弁23と、貯水タンク4内に配置されたタンク給水口25への洗浄水の供給又は止水を行うタンク側電磁弁27と、を備えている。リム側電磁弁23及びタンク側電磁弁27は、使用者の操作信号やフロートスイッチ28による水位検知信号に基づいてコントローラの指令により駆動するようになっている。
【0028】
排水装置26は、貯水タンク4内の溢れた水を便器本体2に排水するオーバーフロー管30と、オーバーフロー管30の下端部に固定された排水弁32と、オーバーフロー管30を電気駆動力により上下動させることにより排水弁32を開閉させる便器洗浄ユニット36と、を備えている。また、貯水タンク4の排水口4aの周辺部には、排水弁32の上下動をガイドするガイド部材34が取り付けられている。便器洗浄ユニット36は、使用者の操作信号に基づいてコントローラの指令により駆動するようになっている。
なお、排水装置としては、本実施形態で示す排水弁に限定されず、排水弁に代えて加圧ポンプ、ジェットポンプ、蓄圧ポンプなどを用いてもよい。
【0029】
コントローラは、操作部、フロートスイッチ28、リム側電磁弁23、タンク側電磁弁27、及び便器洗浄ユニット36と電気的に接続しており、各種信号を送受信可能になっている。コントローラは、操作部からの大洗浄又は小洗浄の洗浄開始信号を受信して、予め記憶された洗浄シーケンスに基づいてリム側電磁弁23、タンク側電磁弁27、及び便器洗浄ユニット36を駆動させ又は停止させるようになっている。洗浄水量は、大洗浄で約4.8リットル、小洗浄で約3.8リットルとなっている。
【0030】
次に、
図1~
図3Bにより、本発明の第1実施形態による水洗大便器1のジェット導水路16について詳細に説明する。
図3Aは、本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路を示す斜視図であり、
図3Bは、本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路とボウル部との位置関係を説明するための斜視図である。
【0031】
先ず、
図1に示すように、ジェット導水路16は、全体としてU字形状に形成され、便器本体2を前方から見て右側に配置された貯水タンク4の排水口4aと、左右方向中央に配置されたジェット吐水口14とを接続している。ジェット導水路16の上流側流路16aは、排水トラップ管路8とほぼ平行して、貯水タンク4の排水口4aから前方に向かって延びている。また、ジェット導水路16の屈曲流路16bは、上流側流路16aの下流端から後方に向かって屈曲(Uターン)している。さらに、ジェット導水路16の下流側流路16cは、屈曲流路16bの下流端から排水トラップ管路8の入口部8aに向かって後方へ延びている。
【0032】
次に、
図2に示すように、ジェット導水路16は、貯水タンク4の真下に位置する上流側流路16aの一部の領域A(貯水タンク4の排水口4a近傍の領域)を除き、排水トラップ管路8の頂部8dよりも下方、即ち封水面Wよりも下方に配置されている。また、
図3Aに示すように、ジェット導水路16は、従来品と比べて流路断面の縦幅及び横幅が大きくなっており、それにより、ジェット導水路全体の容積が大きくなっている。具体的に、ジェット導水路16は、貯水タンク4の容積(約3リットル)の1/3以上以上の容積(約1リットル)を有している。また、ジェット導水路16は、1回の洗浄において貯水タンク4から排出される洗浄水の水量(約2リットル)の半分以上の容積(約1リットル)を有している。これにより、従来品と比べてジェット導水路16内に多くの洗浄水が滞留し、滞留する洗浄水のヘッド圧によりジェット吐水することができるようになっている。
【0033】
図2に示すように、ジェット導水路16の上流側流路16aの底面16dは、上流側から下流側に向かって下方へ傾斜して形成され、屈曲流路16bの底面16e及び下流側流路16cの底面16fは、ほぼ同じ高さで、ほぼ水平に形成されている。
図2に示すように、ジェット導水路16の上流側流路16aの上面16gは、封水面Wとほぼ同じ高さ位置に位置し、ほぼ水平に形成されている。屈曲流路16bの上面16h及び下流側流路16cの上面16iは、上流側から下流側に向かって下方へ傾斜して形成されている。
【0034】
次に、
図1に示すように、屈曲流路16bは、上面視において、封水面Wの外縁に沿って屈曲してコンパクトに形成されている。また、屈曲流路16bが封水面Wの近傍に配置されているので、屈曲流路16bを常にほぼ満水状態にすることができ、屈曲流路16b内に空気が滞留するのを防止することができるようになっている。
【0035】
次に、
図1及び
図3Aに示すように、ジェット導水路16の上流側流路16aには、上流側流路16aの上面16gよりも上方に延びる第1空気滞留部50が設けられている。これにより、洗浄水がジェット導水路16を流れる際に、ジェット導水路16内に滞留していた空気又は/及びオーバーフロー管30からジェット導水路16内に流入した空気が第1空気滞留部50に押し込まれるようになっている。
【0036】
第1空気滞留部50は、上流側の壁面50aと、下流側の壁面50bと、上流側の壁面50aと下流側の壁面50bとの間の上端50cと、を備え、上端50cに向かって先細り形状に形成されている。これにより、第1空気滞留部50に流入した空気を上方に集約できるようになっている。また、上流側の壁面50aは、上端50cを通る鉛直線に対する傾斜角度が下流側の壁面50bの傾斜角度よりも小さくなっている(鉛直に近い状態になっている)。これにより、上流側流路16aを横方向に流れる洗浄水が第1空気滞留部50に流入し過ぎることにより、ジェット吐水口14に向かう流れが阻害されるのを防止することができるようになっている。
【0037】
次に、
図1及び
図3Bに示すように、第1空気滞留部50は、ボウル部6に沿って形成されている。これにより、ボウル部6の裏のデッドスペースを有効に活用することができ、便器全体をコンパクトにすることができる。第1空気滞留部50の上端50cは、封水面Wよりも上方に位置している。これにより、第1空気滞留部50内に空気を確実に滞留させることができるようになっている。
【0038】
図1及び
図3Aに示すように、ジェット導水路16の屈曲流路16bには、屈曲流路16bの上面16hよりも上方に延びる第2空気滞留部52が設けられている。これにより、洗浄水がジェット導水路16を流れる際に、第1空気滞留部50に押し込まれなかった空気又は/及び第1空気滞留部50から流出した空気が第2空気滞留部52に押し込まれるようになっている。
【0039】
第2空気滞留部52は、上流側の壁面52aと、下流側の壁面52bと、上流側の壁面52aと下流側の壁面52bとの間の上端52cと、を備え、上端52cに向かって先細り形状に形成されている。これにより、第2空気滞留部52に流入した空気を上方に集約できるようになっている。また、上流側の壁面52aは、上端52cを通る鉛直線に対する傾斜角度が下流側の壁面52bの傾斜角度よりも大きくなっている(水平に近い状態になっている)。これにより、第1空気滞留部50に押し込まれなかった空気又は/及び第1空気滞留部50から流出した空気が第2空気滞留部52に流入し易くなっている。
【0040】
次に、
図1及び
図3Bに示すように、第2空気滞留部52は、ボウル部6に沿って形成されている。これにより、ボウル部6の裏のデッドスペースを有効に活用することができ、便器全体をコンパクトにすることができるようになっている。第2空気滞留部52の上端52cは、封水面Wとほぼ同じ位置に位置している。これにより、第2空気滞留部52内に空気を確実に滞留させることができるようになっている。
【0041】
次に、
図1、
図4、
図5A~
図5Gにより、本発明の第1実施形態による水洗大便器1のジェット導水路16の下流部分について詳細に説明する。
図4は、
図1に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の下流部分の平面断面図であり、
図5A~
図5Gは、
図4に示す本発明の第1実施形態による水洗大便器のジェット導水路の流路断面A~Gを示す図である。
【0042】
先ず、
図4及び
図5E~
図5Gに示すように、ジェット導水路16の下流側流路16cには、ジェット導水路16のうちで流路断面積が最も小さい絞り部44が形成されている。絞り部44は、ジェット吐水口14に向かって流路断面積が徐々に縮小している(
図5E~
図5Gを参照)。これにより、絞り部44を通過する洗浄水が流速を徐々に上げてジェット吐水口14から洗浄水を吐水させることができるようになっている。
図5E~
図5Gに示すように、絞り部44の横幅44aは、ほぼ一定であり、絞り部44の縦幅44bは、ジェット吐水口14に向かって徐々に小さくなっている。また、絞り部44の底面44cは、ほぼ水平に形成され、絞り部44の上面44dは、ジェット吐水口14に向かって下方に傾斜している。これにより、上面44dのみにより洗浄水を下方へ導くことができ、圧力損失を抑えることができるようになっている。
また、絞り部44は、ジェット吐水口14に向かって直線状に延びている。これにより、絞り部44を通過する洗浄水が流路屈曲による圧力損失を受けることを抑えることができると共に整流されるようになっている。
【0043】
次に、
図4及び
図5B~
図5Dに示すように、絞り部44よりも上流側の屈曲流路16bには、流路断面積が一定である断面積一定部46が形成されている。これにより、流路縮小による圧力損失を抑えることができるようになっている。
図5B~
図5Dに示すように、断面積一定部46の横幅46aは、ジェット吐水口14に向かって徐々に大きくなっており、断面積一定部46の縦幅46bは、ジェット吐水口14に向かって徐々に小さくなっている。これにより、流路縮小による圧力損失を抑えながら洗浄水を下方へ導くことができるようになっている。
また、断面積一定部46の底面46cは、ほぼ水平に形成され、断面積一定部46の上面46dは、ジェット吐水口14に向かって下方に傾斜している。これにより、断面積一定部46の上面46dのみにより、圧力損失を抑えながら洗浄水を下方へ導くことができるようになっている。
【0044】
断面積一定部46は、屈曲流路16bの屈曲開始位置(上流端)から屈曲流路16bの屈曲終了位置(下流端)に亘って形成されている。これにより、屈曲流路16bにおいて、流路屈曲による圧力損失と流路縮小による圧力損失との両方が同時に生じることを避けることができるようになっている。
なお、本実施形態では、断面積一定部46が屈曲流路16bの上流端から下流端に亘って形成されているが、これに限定されるものではなく、断面積一定部46が屈曲流路16bの一部に形成されてもよい。
【0045】
次に、
図4に示すように、屈曲流路16bの外周面は、上面視において、上流側の曲率半径がR1で形成され、下流側の曲率半径がR2で形成され、上流側の曲率半径R1が下流側の曲率半径R2よりも小さくなるように形成されている。これにより、流路屈曲による圧力損失を屈曲流路16bの上流側で発生させて、流路縮小による圧力損失が生じる絞り部44側(屈曲流路16bの下流側)で発生させないようになっている。
また、屈曲流路16bの内周面は、上面視において、上流側の曲率半径がr1で形成され、下流側の曲率半径がr2で形成され、上流側の曲率半径r1が下流側の曲率半径r2よりも小さくなるように形成されている。これにより、流路屈曲による圧力損失を屈曲流路16bの上流側で発生させて、流路縮小による圧力損失が生じる絞り部44側(屈曲流路16bの下流側)で発生させないようになっている。
【0046】
次に、
図6により、本発明の第1実施形態による水洗大便器1の洗浄動作について説明する。
図6は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄動作を説明するための図である。
【0047】
図6(a)は待機状態を示し、ボウル部6において洗浄水が封水水位まで溜まっており、ジェット導水路16においても洗浄水が封水面Wと同じ高さ位置まで溜まっている。このとき、貯水タンク4の真下に位置する上流側流路16aの一部の領域Aには、空気が滞留している。
【0048】
次に、
図6(b)に示すように、給水装置が駆動(リム側電磁弁が開弁)して、リム吐水が開始され、ボウル部6において、洗浄水の水位が徐々に上昇する。これに伴って、ジェット導水路16においても、洗浄水の水位が徐々に上昇し、上流側流路16aの一部の領域Aに滞留していた空気がオーバーフロー管30から排出されてジェット導水路16が満水状態となる。
【0049】
この後、
図6(c)に示すように、リム吐水継続中に、排水装置26が駆動(排水弁32が開弁)して、ジェット吐水が開始される。このとき、ジェット導水路16内に滞留している洗浄水には、貯水タンク4に貯留された洗浄水のヘッド圧がかかり、第1の流量がジェット吐水口14から吐水される。第1の流量は大流量であり、第1の流量のジェット吐水により排水トラップ管路8が満水状態にされてサイホン作用が起動する。第1流量のジェット吐水は、所定時間継続して行われ、強力なサイホン作用により汚物が排出される。
【0050】
次に、
図6(d)に示すように、リム吐水継続中に、排水装置26が停止(排水弁32が閉弁)する。排水装置26が停止しても、ジェット導水路16全体の容積が大きいため、ジェット導水路16内に多くの洗浄水が滞留し、貯留された洗浄水のヘッド圧を受けながらジェット導水路16を流れることにより第2の流量がジェット吐水口14から吐水される。第2の流量は第1の流量よりも小さいがサイホン作用を継続するのに十分な流量である。第2の流量のジェット吐水は、所定時間継続して行われ、サイホン作用が継続される。
【0051】
その後、
図6(e)に示すように、サイホン作用により汚物と共に封水が排出されることによってボウル部6の洗浄水の水位が低下し、排水トラップ管路8の入口部8aの上面から空気が侵入して、サイホン作用が終了する。ここで、ジェット導水路16は、洗浄水が滞留し続けるように形成されているため、空気の侵入を遅らせて、サイホン作用の終了を遅らせることができるようになっている。リム吐水は、継続して行われ、ボウル部6において洗浄水が封水水位まで溜まると終了する。このとき、ジェット導水路16においても洗浄水が封水面と同じ高さ位置まで溜まっている。
【0052】
次に、
図6(f)に示すように、給水装置が駆動(タンク側電磁弁が開弁)して、タンク給水が開始される。貯水タンク4内の洗浄水の水位が上昇し、フロートスイッチが止水水位(満水水位)となった状態を検知すると、給水装置が停止(タンク側電磁弁が閉弁)し、次に、
図6(a)に示すように、元の待機状態となる。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態による水洗大便器1について説明する。
図7Aは、本発明の第2実施形態による水洗大便器のジェット導水路を示す斜視図であり、
図7Bは、本発明の第2実施形態による水洗大便器のジェット導水路とボウル部との位置関係を説明するための斜視図である。
第2実施形態による水洗大便器1の基本構成は、上述した第1実施形態と同様であるため、以下第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0054】
図7A及び
図7Bに示すように、ジェット導水路16の上流側流路16aには、上流側流路16aの上面16gよりも上方に延びる第3空気滞留部54が設けられている。これにより、洗浄水がジェット導水路16を流れる際に、ジェット導水路16内に滞留していた空気又は/及びオーバーフロー管30からジェット導水路16内に流入した空気が第3空気滞留部54に押し込まれるようになっている。
【0055】
第3空気滞留部54は、上方に延びる上流側の壁面54aと、壁面54aから前方に延びる上端面54bと、上端面54bの前端から下方へ延びる下流側の壁面54cと、を備え、台形形状に形成されている。これにより、第3空気滞留部54に流入した空気を上方に集約できるようになっていると共に、より多くの空気を滞留させることができるようになっている。また、上流側の壁面54aは、ほぼ鉛直に延びており、下流側の壁面54cは、前方に向かって下方へ傾斜して延びている。これにより、上流側流路16aを横方向に流れる洗浄水が第3空気滞留部54に流入し過ぎることにより、ジェット吐水口14に向かう流れが阻害されるのを防止することができるようになっている。
【0056】
次に、
図7Bに示すように、第3空気滞留部54は、ボウル部6に沿って形成されている。これにより、ボウル部6の裏のデッドスペースを有効に活用することができ、便器全体をコンパクトにすることができるようになっている。第3空気滞留部54の上端面54bは、リム部20の下端とほぼ同じ位置に位置している。これにより、第3空気滞留部54内に空気を確実に滞留させることができるようになっている。
【0057】
以下、上述した実施形態による作用効果を説明する。
本発明の実施形態による水洗大便器1においては、ジェット導水路16には、洗浄水が流れる流路よりも上方に延びる空気滞留部50,52,54が設けられているので、洗浄水がジェット導水路16を流れると、ジェット導水路16に滞留している空気が空気滞留部50,52,54に押し込まれ、ジェット導水路16を流れる洗浄水が空気を巻き込むことを抑制することができる。これにより、汚物を排出するのに十分なジェット吐水を行うことができ、汚物の排出性能を向上させることができる。
【0058】
また、本発明の実施形態による水洗大便器1においては、空気滞留部50,54がジェット導水路16の上流側流路16aに設けられているので、早い段階で空気が空気滞留部50,54に押し込まれ、洗浄水をジェット吐水口に向けて流すことができる。
【0059】
本発明の実施形態による水洗大便器1においては、上流側流路16aの上面16gが、空気滞留部50,54が設けられている領域を除き、ほぼ水平になっているので、上流側流路16aを流れる洗浄水が圧力損失を受けるのを抑制することができる。
【0060】
また、本発明の実施形態による水洗大便器1においては、上流側流路16aの上面16gが、封水水位と同じ高さ又は封水水位よりも下方に位置しているので、ジェット導水路16を満水状態にして滞留する空気を減らすことができる。
【0061】
本発明の実施形態による水洗大便器1においては、空気滞留部50,52,54の上端50c,52c,54bは、封水水位よりも上方に位置しているので、空気滞留部50,52,54内に空気を確実に滞留させることができる。
【0062】
また、本発明の実施形態による水洗大便器1においては、空気滞留部50,52,54は、ボウル部6に沿って形成されているので、ボウル部6の裏のデッドスペースを有効に活用することができ、便器全体をコンパクトにすることができる。
【0063】
本発明の実施形態による水洗大便器1においては、空気滞留部50,54が、上流側の壁面50a,54aと、下流側の壁面50b,54cと、上流側の壁面と下流側の壁面との間の上端50c,54bと、を有し、上流側の壁面50a,54aは、上端50c,54bを通る鉛直線に対する傾斜角度が下流側の壁面50b,54cの傾斜角度よりも小さくなっているので、ジェット導水路16を横方向に流れる洗浄水が空気滞留部50,54に流入し過ぎることにより、ジェット吐水口14に向かう流れが阻害されるのを防止することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態による水洗大便器1においては、空気滞留部50,52,54は、上端50c,52c,54bに向かって先細り形状に形成されているので、空気滞留部50,52,54に流入した空気を上方に集約できる。
【0065】
本発明の上述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 :水洗大便器
2 :便器本体
4 :貯水タンク
6 :ボウル部
8 :排水トラップ管路
8a :排水トラップ管路の入口部
8d :排水トラップ管路の頂部
10 :リム吐水口
14 :ジェット吐水口
16 :ジェット導水路
16a :ジェット導水路の上流側流路
16b :ジェット導水路の屈曲流路
16c :ジェット導水路の下流側流路
18 :汚物受け面
20 :リム部
24 :給水装置
26 :排水装置
28 :フロートスイッチ
30 :オーバーフロー管
32 :排水弁
36 :便器洗浄ユニット
44 :絞り部
46 :断面積一定部
50 :第1空気滞留部
52 :第2空気滞留部
54 :第3空気滞留部
R1 :外周面の上流側の曲率半径
R2 :外周面の下流側の曲率半径
r1 :内周面の上流側の曲率半径
r2 :内周面の下流側の曲率半径
W :封水面