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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002097
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】錠剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102025
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100148253
【弁理士】
【氏名又は名称】今枝 弘充
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 修平
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047LL04
4C047LL10
4C047LL20
(57)【要約】
【課題】表面に印刷された識別情報に欠けがより少ない錠剤の製造方法を提供する。
【解決手段】錠剤20の製造方法は、錠剤20を搬送する搬送面24の上に、前処理工程から錠剤20を落下させ、錠剤20を搬送する搬送工程と、搬送工程の後の錠剤20に対し、錠剤20の表面に印刷を施す印刷工程と、を備える。搬送工程において、落下させた錠剤20の表面から離れた粉末を吸引する第1吸引工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を搬送する搬送面の上に、前処理工程から前記錠剤を落下させ、前記錠剤を搬送する搬送工程と、
前記搬送工程の後の前記錠剤に対し、前記錠剤の表面に印刷を施す印刷工程と、を備え、
前記搬送工程において、落下させた前記錠剤の表面から離れた粉末を吸引する第1吸引工程を含む、錠剤の製造方法。
【請求項2】
前記搬送工程は、さらに、前記搬送面の下側から前記搬送面の上の気体を吸引する第2吸引工程を含む、請求項1に記載の錠剤の製造方法。
【請求項3】
前記印刷工程において、前記錠剤を搬送する印刷搬送面の上に前記搬送面から前記錠剤を落下させ、前記錠剤の表面に印刷を施す前に、前記錠剤の表面から離れた粉末を吸引する、第3吸引工程を含む、請求項1に記載の錠剤の製造方法。
【請求項4】
前記印刷工程は、前記錠剤の表面に印刷を施す前に、前記錠剤を搬送する印刷搬送面に対し搬送方向と逆方向に気体を吹き出し、かつ、前記錠剤の表面から離れた粉末を吸引する、粉末除去工程を含む、請求項1に記載の錠剤の製造方法。
【請求項5】
前記前処理工程は、
酸化マグネシウム粒子と、セルロース及び/又はセルロース誘導体を含む内部添加剤とを混合し混合物を得る混合工程と、
前記混合物を造粒し、顆粒にする顆粒工程と、
前記顆粒を打錠する打錠工程と、
を備える、請求項1に記載の錠剤の製造方法。
【請求項6】
前記打錠工程は、前記顆粒に加え、セルロース及び/又はセルロース誘導体を含む外部添加剤を添加しており、
前記セルロース及び/又は前記セルロース誘導体は、平均粒子径が50μm以下の結晶セルロースを含む、請求項5に記載の錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤は、所定の大きさと形状を有するように、打錠機によって粉末を圧縮して成形される。このように成形された錠剤は、表面に粉末が付着している場合がある。錠剤の表面に付着した粉末を除去する手段として、例えば、特許文献1は、打錠機から排出された錠剤を下流へ搬送させる搬送ケースを取り囲むようにカバーを取り付け、カバーの内側にスプレー装置を設置し、搬送ケース内の錠剤に高圧の空気を吹き付け、錠剤の表面の粉末を取り除く粉取り装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-290806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の粉取り装置は、錠剤の表面の粉末を十分に除去できない場合がある、という懸念があった。本発明者は、表面に粉末が付着した錠剤の表面に、インクを用いて印刷を施した場合、特に、印刷された文字、記号、若しくは図形を識別情報に欠けが生じやすいことを見出した。
【0005】
本発明は、表面に印刷された識別情報に欠けがより少ない錠剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、例えば、以下の態様を提供する。
【0007】
[態様1]
錠剤の製造方法は、搬送工程と、印刷工程とを備える。上記搬送工程は、錠剤を搬送する搬送面の上に、前処理工程から上記錠剤を落下させる。上記搬送工程は、上記錠剤を搬送する。上記搬送工程は、第1吸引工程を含む。上記第1吸引工程は、落下させた上記錠剤の表面から離れた粉末を吸引する。上記印刷工程は、上記搬送工程の後の上記錠剤に対し、上記錠剤の表面に印刷を施す。
【0008】
[態様2]
態様1に記載の錠剤の製造方法において、上記搬送工程は、さらに、第2吸引工程を含む。上記第2吸引工程は、上記搬送面の下側から上記搬送面の上の気体を吸引する第2吸引工程を含む。
【0009】
[態様3]
態様1又は態様2に記載の錠剤の製造方法において、上記印刷工程は、第3吸引工程を含む。第3吸引工程は、上記錠剤を搬送する印刷搬送面の上に上記搬送面から上記錠剤を落下させる。第3吸引工程は、上記錠剤の表面に印刷を施す前に、上記錠剤の表面から離れた粉末を吸引する。
【0010】
[態様4]
態様1から態様3のいずれか一つに記載の錠剤の製造方法において、上記印刷工程は、粉末除去工程を含む。上記粉末除去工程は、上記錠剤の表面に印刷を施す前に、上記錠剤を搬送する印刷搬送面に対し搬送方向と逆方向に気体を吹き出し、かつ、上記錠剤の表面から離れた粉末を吸引する。
【0011】
[態様5]
態様1から態様4のいずれか一つに記載の錠剤の製造方法において、上記前処理工程は、混合工程と、顆粒工程と、打錠工程とを備える。上記混合工程は、酸化マグネシウム粒子と、内部添加剤とを混合し、混合物を得る。上記内部添加剤は、セルロース及び/又はセルロース誘導体を含む。上記顆粒工程は、上記混合物を造粒し、顆粒にする。上記打錠工程は、上記顆粒を打錠する。
【0012】
[態様6]
態様5に記載の錠剤の製造方法において、上記打錠工程は、上記顆粒に加え、外部添加剤を添加している。上記外部添加剤は、セルロース及び/又はセルロース誘導体を含む。上記セルロース及び/又は上記セルロース誘導体は、平均粒子径が50μm以下の結晶セルロースを含む。
【0013】
[態様7]
錠剤の製造装置は、第1搬送レーンと、第2搬送レーンとを備える。上記第1搬送レーンは、複数の錠剤を収容したホッパーの排出口より下方に、上記錠剤を搬送する搬送面が配置されている。上記第1搬送レーンは、上記ホッパーから上記錠剤が落下する上記搬送面に接続され気体を吸引する吸引口を有する。上記第2搬送レーンは、上記第1搬送レーンから供給された上記錠剤を搬送方向へ搬送する。上記第2搬送レーンは、上記錠剤の表面に印刷を施す印刷部を有する。
【0014】
[態様8]
態様7に記載の錠剤の製造装置において、上記第1搬送レーンは、厚み方向に貫通した通気孔が形成されている。さらに、上記第1搬送レーンは、第2吸引口を有する。上記第2吸引口は、上記搬送面と反対側に配置される。上記第2吸引口は、上記通気孔に接続され上記搬送面上の気体を吸引する。
【0015】
[態様9]
態様7又は態様8に記載の錠剤の製造装置において、上記第2搬送レーンは、上記第1搬送レーンの上記搬送面より下方に、上記錠剤を搬送する印刷搬送面が配置される。上記第2搬送レーンは、第3吸引口を有する。上記第3吸引口は、上記第1搬送レーンの上記搬送面から上記錠剤が落下する上記印刷搬送面に接続され気体を吸引する。
【0016】
[態様10]
態様7から態様9のいずれか一つに記載の錠剤の製造装置において、上記第2搬送レーンは、上記印刷部より上記印刷搬送面の上流側に粉末除去部を有する。上記粉末除去部は、カバーと、第4吸引口と、吹き出し口とを有する。上記カバーは、上記印刷搬送面に対向して設けられている。上記第4吸引口と上記吹き出し口とは、上記カバーに設けられる。上記第4吸引口と上記吹き出し口とは、搬送方向の上流から下流へ順に配置されている。上記第4吸引口は、気体を吸引する。上記吹き出し口は、気体を吹き出す。上記吹き出し口は、上記印刷搬送面に対し上記搬送方向と逆方向に開口している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面に印刷された識別情報に欠けがより少ない錠剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る製造装置を模式的に示す正面図である。
図2】第1実施形態に係る製造装置の粉末除去部を模式的に示す図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は模式的な正面断面図である。
図3】第1実施形態に係る製造装置の錠剤回収容器を示す模式的な外観図である。
図4】第2実施形態に係る製造装置のバケットリフター及び錠剤緩衝シュートを示す模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
[錠剤の製造装置]
以下、本発明の第1実施形態に係る錠剤の製造装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る製造装置を模式的に示す正面図、図2は、第1実施形態に係る製造装置の粉末除去部を模式的に示す図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は正面断面図である。
【0020】
製造装置10は、図1に示すように、搬送方向Fの上流から下流へ順に、ホッパー12と、第1搬送レーン14と、第2搬送レーン16と、回収部18と、を備える。ホッパー12は、前処理工程において打錠された複数の錠剤20を収容している。ホッパー12は、鉛直方向の下方に排出口22を有する。ホッパー12は、排出口22に図示しないがフィーダを有してもよい。
【0021】
錠剤20の形状は、特に限定されない。錠剤20は、例えば、円盤形、レンズ形、竿形が挙げられる。錠剤20は、円盤形の形状、若しくはレンズ形の形状の場合、例えば、直径の上限は14mm以下、又は10mm以下とすることができ、下限は5mm以上、又は6mm以上とすることができる。錠剤20は、厚みの上限も同様に特に制限されない。錠剤20の厚みは、例えば、上限を8mm以下、又は7mm以下、下限を3mm以上、又は4mm以上とすることができる。また、錠剤20は、例えば、円柱状の胴部と、胴部の軸方向端部にそれぞれ湾曲した凸状のキャップ部とを備える形状でもよい。さらに錠剤20は、平面視における形状が円形状である場合に限らず、楕円形状及び多角形状でもよい。
【0022】
第1搬送レーン14は、錠剤20を搬送する搬送面24を有する。搬送面24は、排出口22より鉛直方向の下方に配置されている。第1搬送レーン14は、連結管26と、連結管26に設けられた第1吸引口28と、搬送面24を有する搬送体30と、搬送体30に設けられた第2吸引口32と、を備える。
【0023】
連結管26は、ホッパー12の排出口22と搬送面24を接続している。連結管26は、ホッパー12内に収容された錠剤20が、自重により、排出口22から連結管26を通って搬送面24上に落下し得るように配置されている。連結管26は、軸方向の一端がホッパー12の排出口22に連結されている。連結管26は、軸方向の他端が搬送面24に向かって開口している。
【0024】
第1吸引口28は、連結管26と搬送面24との間の気体を吸引する。第1吸引口28は、筒状の部材であって、軸方向の一端が連結管26内を介して搬送面24に接続されている。第1吸引口28は、軸方向の他端が配管を通じて吸引ポンプ34に連結されている。本明細書において、(吸引口が)「搬送面に接続され」とは、搬送面24における上方の気体が流通し得るように吸引口が搬送面24に向かって開口していれば足りる。「搬送面に接続され」とは、吸引口が搬送面24と接していてもよく、離れていてもよい。第1吸引口28は、吸引ポンプ34によって他端を通じて一端から気体を吸引する。図1の場合、第1吸引口28は、連結管26を貫通するように設けられており、一端が連結管26内に配置されている。
【0025】
搬送体30は、連結管26を通じてホッパー12から排出された錠剤20を搬送する。搬送体30は、例えば、ベルトコンベア、振動フィーダを用いて構成することができる。図1に示す搬送体30は、振動により搬送物を直線方向へ搬送する振動フィーダである。搬送体30は、受容部36と、搬送部38とを備える。受容部36は、ホッパー12の排出口22における鉛直方向の直下に設けられている。受容部36は、ホッパー12の排出口22から落下した錠剤20を受け入れる。搬送部38は、受容部36に対し搬送方向Fの下流側に配置されている。搬送部38は、搬送面24に厚み方向に貫通した通気孔40が複数形成されている。搬送部38は、例えば、メッシュ、パンチングメタル、貫通穴を有する樹脂ベルトを適用することができる。搬送部38は、下流に向かって下方へ傾斜していてもよい。搬送体30は、ホッパー12から排出された衝撃によって錠剤20の表面から錠剤20に起因する粉末が生ずることもある。搬送体30は、錠剤20と共に錠剤20の表面から離れた粉末も搬送面24上を搬送する。
【0026】
第2吸引口32は、錠剤20の表面から離れた搬送面24上の粉末を吸引する。第2吸引口32は、搬送体30の搬送面24と反対側に配置される。第2吸引口32は、筒状の部材で構成されている。第2吸引口32は、軸方向の一端が通気孔40に接続されている。第2吸引口32は、軸方向の他端が配管を通じて吸引ポンプ34に連結されている。第2吸引口32は、吸引ポンプ34によって、軸方向の他端を通じて一端から気体を吸引する。第2吸引口32は、搬送面24上の気体を下方へ吸引する。本実施形態では、第2吸引口32は、空気取込口33に連結されている。空気取込口33は、搬送面24の反対側を覆っている。
【0027】
第2搬送レーン16は、第1搬送レーン14から供給された錠剤20の表面から粉末を除去しながら錠剤20を搬送する。第2搬送レーン16は、錠剤20の表面に印刷を施す。第2搬送レーン16は、第1搬送レーン14における搬送方向Fの下流側に配置されている。第2搬送レーン16は、第2搬送体44を備える。第2搬送体44は、印刷搬送面42を有している。第2搬送体44は、例えば、ベルトコンベアを用いて構成することができる。第2搬送体44は、搬送方向Fの上流から下流へ順に、第2受容部46と、粉末除去部48と、印刷部50とを通過するように、それぞれ錠剤20を搬送する。第2搬送体44は、印刷された錠剤20を回収部18まで搬送する。回収部18は、搬送されてきた錠剤20を回収する。
【0028】
印刷搬送面42は、第1搬送レーン14の搬送面24より、鉛直方向の下方に配置されている。すなわち、第2受容部46の印刷搬送面42は、第1搬送レーン14の下流側の搬送面24より下方に配置されている。
【0029】
第2受容部46は、錠剤20を落下させた衝撃によって錠剤20の表面から離れた粉末を除去する。第2受容部46は、印刷搬送面42上の気体を吸引する第3吸引口52を有する。第3吸引口52は、筒状の部材で構成されている。第3吸引口52は、軸方向の一端に開口を有している。第3吸引口52は、一端が印刷搬送面42上に配置され、軸方向の他端が吸引ポンプ34に連結されている。第3吸引口52は、吸引ポンプ34によって他端を通じて一端から気体を吸引する。第2受容部46は、印刷搬送面42を覆う受容部用カバー54を有してもよい。本実施形態では、第3吸引口52の一端は、印刷搬送面42に対し垂直方向に配置されている。第3吸引口52は、印刷搬送面42上の気体を鉛直方向の上方へ吸引する。
【0030】
粉末除去部48は、印刷搬送面42上に残留した粉末を除去する。粉末除去部48は、印刷搬送面42に対向して設けられたカバー58と、第4吸引口60と、吹き出し口62とを有する。粉末除去部48は、第4吸引口60と吹き出し口62とが、カバー58に設けられている。第4吸引口60と吹き出し口62とは、搬送方向Fの上流から下流へ順に配置されている。
【0031】
カバー58は、印刷搬送面42上の所定領域の気体を滞留させるように、当該領域の印刷搬送面42上を覆う。カバー58は、図2(A)及び図2(B)に示すように、被覆部64と、ガイド部66とを有する。被覆部64は、印刷搬送面42に対向して設けられた板状の部材である。被覆部64は、平面視において、上流側へ突出した先細状の形状を有する。被覆部64は、正面視において、下流から上流へ向かって下方に傾斜する傾斜面68を有してもよい。ガイド部66は、板状であって、被覆部64の外縁に一体に設けられ、印刷搬送面42に向かって突出している。ガイド部66の下端と印刷搬送面42との間には、図2(B)に示すように、錠剤20の高さ方向の長さより短い高さ方向隙間70が形成されている。ガイド部66は、被覆部64の少なくとも下流端を除く外縁、すなわち、上流側の傾斜した一対の上流側外縁72と、搬送方向Fに沿った一対の幅側外縁74にそれぞれ設けられている。カバー58と第2搬送体44との幅方向の間には、図2(A)に示すように、平面視における1個の錠剤20の最大長さ以上の幅方向隙間76が形成されている。平面視における1個の錠剤20の最大長さは、平面視における錠剤20の形状が円形である場合、錠剤20の直径である。
【0032】
第4吸引口60は、粉末除去部48において、カバー58内に滞留した気体を吸引する。第4吸引口60は、筒状の部材で構成されている。第4吸引口60は、カバー58の上流側に配置されている。第4吸引口60は、軸方向の一端がカバー58内に接続されており、軸方向の他端が吸引ポンプ34に連結されている。第4吸引口60は、吸引ポンプ34によって他端を通じて一端から気体を吸引する。第4吸引口60は、図2(B)に示すように1個である場合に限られない。第4吸引口60は、2個以上設けられてもよい。
【0033】
吹き出し口62は、気体を吹き出すことによって、印刷搬送面42に残留した粉末を舞い上がらせる。吹き出し口62は、第4吸引口より下流側に設けられている。吹き出し口62は、図2(A)及び図2(B)の場合、カバー58の下流側の端部に設けられている。吹き出し口62は、筒状の部材で構成されている。吹き出し口62は、軸方向の一端が印刷搬送面42に対し搬送方向Fと逆方向に開口している。吹き出し口62は、軸方向の他端が配管(図示しない)を通じて空気圧縮機(図示しない)に連結されている。吹き出し口62は、空気圧縮機から他端へ供給された気体を一端から吹き出す。吹き出し口62は、印刷搬送面42に向かって気体を吹き出す。吹き出し口62は、図2(A)に示すように2個である場合だけに限られない。吹き出し口62は、1個でもよいし、3個以上でもよい。
【0034】
印刷部50は、搬送方向Fの上流から下流へ順に、検査カメラ78と、印刷ヘッド80とを有する。検査カメラ78は、錠剤20の表面の画像を撮影する。検査カメラ78は、特に限定されないが、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ及びCMOS(complementary metal oxide semiconductor)カメラでもよい。印刷ヘッド80は、例えば、インクジェット方式を用いることができる。
【0035】
以下、インクジェット方式での印刷に用いるインクを例として説明する。
例えば、インクジェットプリンター用のインクとしては、色素と、水と、エタノールと、樹脂とを含む。インクジェットプリンター用のインクは、その他、必要に応じて、例えば、水溶性高沸点有機溶剤、乳化剤、pH調整剤、着香料及び防腐剤を配合しても良い。インクの組成物は、いずれも食用のものが好ましい。
【0036】
(色素)
色素としては、合成食用色素、天然食用色素から1種または2種以上を選ぶことができる。合成食用色素として、例えば、タール系色素、天然色素誘導体、天然系合成色素、二酸化チタンが挙げられる。タール系色素は、例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色1号、食用青色2号、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色40号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用5号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキが挙げられる。天然色素誘導体としては、例えば、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、ノルビキシンカリウムが挙げられる。天然系合成色素としては、例えば、β-カロテン、リボフラビンが挙げられる。
【0037】
天然食用色素としては、例えば、植物炭末色素、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、フラボノイド系色素、ベタイン系色素、モナスカス色素、その他の天然物を起源とする色素が挙げられる。アントシアニン系色素としては、赤ダイコン色素、赤キャベツ色素、赤米色素、エルダーベリー色素、カウベリー色素、グーズベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、シソ色素、スィムブルーベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素、その他のアントシアニン系色素が挙げられる。カロチノイド系色素としては、アナトー色素、クチナシ黄色素、その他のカロチノイド系色素が挙げられる。キノン系色素としては、コチニール色素、シコン色素、ラック色素、その他のキノン系色素が挙げられる。フラボノイド系色素としては、ベニバナ黄色素、コウリャン色素、タマネギ色素、その他のフラボノイド系色素が挙げられる。ベタイン系色素としては、ビートレッド色素が挙げられる。モナスカス色素としては、ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素が挙げられる。その他の天然物を起源とする色素としては、例えば、ウコン色素、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、スピルリナ青色素が挙げられる。
【0038】
色素の含有量は、インクの組成物全体に対して、0.1~10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~8重量%である。インクは、色素の含有量が0.1重量%より少ないと印刷色が薄く視認性が悪くなる傾向にある。また、インクは、色素の含有量が10重量%より多いとインク粘度の上昇により、インクが正常に吐出され難く印刷不良となる傾向にある。
【0039】
(エタノール)
エタノールは、例えば、天然醸造の発酵エチルアルコール及びサトウキビアルコールが好ましい。エタノールの含有量は、インクの組成物全体に対して5~60重量%が好ましく、より好ましくは10~40重量%である。インクは、エタノールの含有量が5重量%より少ないとインクの乾燥性が悪くなる傾向にある。インクは、例えば、乾燥に印刷後3秒以上の時間がかかれば、印刷後の搬送でインクが剥がれたり、他の錠剤及び搬送面に付着したりして汚してしまう場合がある。また、インクは、インクの表面張力が高くなれば、印刷されたインクが錠剤の表面に弾かれやすくなる。つまり、インクは、錠剤の表面に濡れ広がらないためになかなか乾燥せず、錠剤表面との接触面積が少ないので付着力が小さくなる傾向にある。インクは、付着力が小さくなれば、例えば、24時間後でも擦ると剥がれてしまう場合もある。また、インクは、エタノールの含有量が60重量%より多いと、インクジェットノズルの開口内あるいは開口部周辺で乾燥して付着する虞がある。インクは、乾燥して開口部を塞げば、例えば、吐出不良、吐出されたインクの飛翔方向のずれが発生する虞がある。インクは、吐出不良、飛翔方向のずれが発生すれば、印刷不良となる場合がある。
【0040】
(水溶性高沸点有機溶剤)
水溶性高沸点有機溶剤は、インクジェットヘッドのノズルの乾燥を防ぐ目的で使用することができる。水溶性高沸点有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール、グリセリンから1種以上を選ぶことができる。水溶性高沸点有機溶剤の含有量は、インク組成物全体に対して1~60重量%が好ましく、より好ましくは2~55重量%である。インクは、水溶性高沸点有機溶剤の含有量が1重量%より少ないと、インクジェットノズルでのインクの乾燥による印刷不良となる虞がある。また、インクは、水溶性高沸点有機溶剤の含有量が60重量%より多いと、インク粘度が高くなりすぎる傾向にある。インクは、インク粘度が高すぎればインクが正常に吐出されないため印刷不良となる虞がある。
【0041】
(樹脂)
インクは、必要に応じて、可食性樹脂を添加することができる。可食性樹脂としては、例えば、セラック、アラビアガム、デンプン類、セルロース樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドンから選択される1種または2種以上を用いることができる。
【0042】
(乳化剤)
乳化剤は、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルより水溶性のものを、1種または2種以上を選択することができる。乳化剤は、必ずしもインクに配合しなくてよい。乳化剤の含有量は、インクに配合する場合、インクの組成物全体に対して0.01~5重量%が好ましく、より好ましくは0.1~2重量%である。乳化剤の含有量は、0.01重量%より少ないと、インクの表面張力が大きくなりすぎる傾向にある。インクは、表面張力が大きくなりすぎると、ノズル開口部で適切なメニスカス状態となりにくい場合がある。インクは、メニスカス状態とならない場合、ノズルからインクが吐出されなかったり、吐出されても所定の位置に着弾しなかったりすることで印刷不良が生じる虞がある。また、インクは、乳化剤の含有量が5重量%より多い場合、例えば、インクの増粘、及び時間の経過とともに析出物が生じやすくなる傾向にある。インクは、インクの増粘、析出物により、ノズルが詰まったりして、やはり印刷不良が生じる場合がある。
【0043】
(pH調整剤)
pH調整剤は、インクに含まれる樹脂の溶解性や安定性を調整するために、加えることができる。pH調整剤は、酸性への調整のために、例えば、酢酸、クエン酸が挙げられる。pH調整剤は、アルカリ性への調整のために、例えば、炭酸アンモニウムが挙げられる。
【0044】
インクの調製における攪拌には、例えば、マグネチックスターラー、プロペラ撹拌機、一般的に使用される攪拌機を使用することができる。
【0045】
また、例えば、植物炭末色素、二酸化チタン、アルミニウムレーキ、いわゆる顔料を配合したインクの調製には、顔料の分散処理を行なうことが好ましい。この分散処理は、分散機で行うことができる。分散機は、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミルが挙げられる。
【0046】
インクの濾過方法は、例えば、遠心濾過、フィルター濾過を採用することができる。
【0047】
本実施形態の錠剤の製造方法では、前処理工程で打錠された錠剤を図3に示す錠剤回収容器82を用いて、図1に示すホッパー12へ投入することができる。言い換えれば、錠剤回収容器82は、図示しない打錠機で打錠された錠剤20を収納し、錠剤20をホッパー12へ投入することができるように構成されている。錠剤回収容器82は、容器84と、容器84を支持するフレーム86と、フレーム86に回転自在に設けられた車輪88とを有する。容器84は、逆角錐型の形状を有し、底面に排出口90を有する。容器84は、排出口90にバタフライ弁92を有する。フレーム86は、上端部が容器84の四隅に設けられた支柱93と、支柱93の下端部同士を連結する連結体94とを有する。錠剤回収容器82は、支柱93の下端にそれぞれ車輪88が回転自在に設けられている。錠剤回収容器82は、打錠機で打錠された錠剤20を容器84に収納する。その後、錠剤回収容器82は、打錠工程から印刷工程へ移動し、ホッパー12の上部に配置される。次いで錠剤回収容器82は、バタフライ弁92を開き、排出口90から容器84内の錠剤20をホッパー12に投入する。なお、容器84は、逆角錐型である場合に限らず、逆円錐型であってもよい。
【0048】
[錠剤の製造方法]
以下、本発明を適用した錠剤の製造方法(以下、単に製造方法と称する場合がある。)について説明する。第1実施形態においては、図1及び図2に示した第1実施形態の製造装置10を用いて錠剤20を製造する方法について説明する。なお、以下の説明において、上記製造装置10の説明と重複する構成に関する説明は、省略する。
【0049】
第1実施形態の製造方法は、打錠された錠剤20に対し、錠剤20の表面に付着した粉末を除去した後、錠剤20の表面に印刷を施すことにより、印字がなされた錠剤20を得る方法である。すなわち、第1実施形態の錠剤20の製造方法は、以下の工程を備える。
(1)錠剤20を搬送する搬送面24の上に、前処理工程から錠剤20を落下させ、錠剤20を搬送する搬送工程
(2)搬送工程後の錠剤20に対し、錠剤20の表面に印刷を施す印刷工程
(3)搬送工程において、落下させた錠剤20の表面から離れた粉末を吸引する第1吸引工程
また、搬送工程(1)は、搬送面24の下側から搬送面24上の気体を吸引する第2吸引工程(4)を含む方法について説明する。
さらに、印刷工程(2)は、以下の工程を含む場合について説明する。
(5)錠剤20を搬送する印刷搬送面42の上に搬送面24から錠剤20を落下させ、錠剤20の表面に印刷を施す前に、錠剤20の表面から離れた粉末を吸引する第3吸引工程
(6)錠剤20の表面に印刷を施す前に、印刷搬送面42に対し搬送方向Fと逆方向に気体を吹き出しながら、錠剤20の表面から離れた粉末を吸引する粉末除去工程
そして、第1実施形態の製造方法は、上記(3)から(6)の工程を経た後に、錠剤20の表面に印刷を施す印刷処理工程(7)を含む。
【0050】
以下、順に説明する。前処理工程において、粉末が打錠されることによって成形された複数の錠剤20がホッパー12に収容されている。まず、搬送工程(1)において、ホッパー12の排出口22から複数の錠剤20を排出する。排出された錠剤20は、自重により、連結管26を通って、ランダムに受容部36の搬送面24上に落下する。錠剤20は、ホッパー12から排出される際に他の錠剤20と接触することに加え、落下して搬送面24から受ける衝撃によって、錠剤20の表面に付着していた粉末の少なくとも一部が錠剤20の表面から離れる。錠剤20の表面から離れた粉末は、連結管26内に舞い上がる場合がある。
【0051】
第1吸引工程(3)において、第1吸引口28は、一端から連結管26内の気体を吸引することによって、連結管26内に舞い上がった粉末を吸引する。したがって、第1実施形態に係る製造方法は、錠剤20から粉末をより効率的に除去することができるので、表面に付着した粉末がより少ない錠剤20を製造することができる。
【0052】
さらに、錠剤20は、受容部36から搬送部38を通じて第2搬送レーン16へ搬送される。搬送部38が振動フィーダであることによって、錠剤20は搬送部38と共に振動する。これにより錠剤20は、搬送方向Fへ搬送されると共に、表面に付着した残りの粉末の少なくとも一部が錠剤20の表面から離れる。錠剤20の表面から離れた粉末は、錠剤20と共に搬送面24上を搬送方向Fへ搬送される。
【0053】
第2吸引工程(4)において、搬送部38の第2吸引口32は、搬送面24に形成された通気孔40を通じて、搬送面24上の気体を搬送面24の下側から吸引することによって、搬送面24上の粉末、とりわけ搬送面24と錠剤20の間に存在する粉末を吸引する。したがって、製造方法は、錠剤20の表面から一旦離れた粉末が、錠剤20の表面に再度付着することを抑制することができる。
【0054】
そして、錠剤20は、第1搬送レーン14から第2搬送レーン16へ搬送される。印刷工程(2)において第2搬送レーン16の印刷搬送面42は、第1搬送レーン14の搬送面24より下方に設けられているので、錠剤20は、自重により、搬送面24から第2受容部46の印刷搬送面42へ落下する。錠剤20が落下して印刷搬送面42から受ける衝撃によって、錠剤20の表面に付着していた残りの粉末の少なくとも一部が錠剤20の表面から離れ、第2受容部46の印刷搬送面42上に舞い上がる場合がある。
【0055】
第3吸引工程(5)において、第3吸引口52は、第2受容部46の印刷搬送面42上の気体を吸引することによって、第2受容部46の印刷搬送面42上に舞い上がった粉末を吸引する。したがって、第1実施形態の製造装置10は、錠剤20からより効率的に粉末を除去することができる。第2受容部46は、受容部用カバー54を設けることによって、舞い上がった粉末が離散することを防いで、より確実に第3吸引口52から粉末を吸引することができる。
【0056】
次いで、さらに錠剤20は、粉末除去部48へ搬送される。粉末除去工程(6)において、粉末除去部48に到達した錠剤20は、高さ方向隙間70が錠剤20の高さ方向の長さより短いので、カバー58のガイド部66に接触することによって、印刷搬送面42の幅方向に移動し、カバー58と第2搬送体44の幅方向の間を通過する。すなわち、錠剤20は、高さ方向隙間70からカバー58内へ入らず、カバー58と印刷搬送面42の間を通過しない。
【0057】
吹き出し口62は、印刷搬送面42に対し搬送方向Fと逆方向に気体を吹き出す。印刷搬送面42に対し搬送方向Fと逆方向に吹き出された気体は、印刷搬送面42上の粉末を印刷搬送面42から浮き上がらせる。これにより粉末は吹き出された気体と共に印刷搬送面42上に舞い上がり、舞い上がった粉末の一部は被覆部64の印刷搬送面42側の表面に衝突することで、舞い上がった粉末はカバー58内に滞留する。第4吸引口60は、カバー58内、すなわち被覆部64と印刷搬送面42の間の気体を吸引することにより、印刷搬送面42上に舞い上がりカバー58内に滞留した粉末を吸引する。したがって、製造装置10は、錠剤20と印刷搬送面42に付着した粉末を分離して、印刷搬送面42に付着した粉末を吸引することによって、錠剤20の表面から離れた粉末が、錠剤20の表面に再度付着することを抑制することができる。
【0058】
粉末除去部48は、錠剤20を印刷搬送面42の幅方向外側へ移動させ、印刷搬送面42の幅方向内側に錠剤20が通過しない領域を形成する。印刷搬送面42に対し搬送方向Fと逆方向に吹き出された気体は、錠剤20が通過しない印刷搬送面42に吹き付けられるので、錠剤の20の搬送を妨げない。したがって、製造装置10は、搬送効率を低下させずに、粉末を効率的に除去することができる。被覆部64は、正面視において、下流から上流へ向かって下方に傾斜する傾斜面68を有することによって、被覆部64の印刷搬送面42側の表面に衝突した粉末を下流側へ戻す。したがって、製造装置10は、より効率的に粉末を印刷搬送面42から除去することができる。
【0059】
次いで、粉末除去部48を通過した錠剤20は、第2搬送体44によって印刷部50に搬送される。印刷処理工程(7)において、検査カメラ78は錠剤20の表面を撮影する。製造装置10は、撮影結果に基づき、例えば、錠剤20の位置及び向きを検出し、錠剤20の位置に応じて、錠剤20の表面に、印刷ヘッド80によって印刷を施す。印刷が施された錠剤20は、第2搬送体44でさらに下流へ搬送され、回収部18に回収される。第1実施形態に係る製造装置10は、印刷が施される前に、錠剤20の表面から粉末を効率的に除去するので、印字の文字欠けなど識別情報の印刷不良が生じにくい錠剤20を得ることができる。
【0060】
[作用及び効果]
以上説明したように、第1実施形態の製造方法は、錠剤20を搬送する搬送面24の上に、前処理工程から錠剤20を落下させ、錠剤20を搬送する搬送工程(1)と、搬送工程(1)後の錠剤20に対し、錠剤20の表面に印刷を施す印刷工程(2)と、を備え、搬送工程(1)において、落下させた錠剤20の表面から離れた粉末を吸引する第1吸引工程(3)を含む構成を採用している。搬送工程(1)において、前処理工程のホッパー12から錠剤20を搬送面24に落下させ、落下した衝撃によって錠剤20の表面から離れた粉末を第1吸引工程(3)において吸引することによって、錠剤から粉末をより効率的に除去できる。したがって、本製造方法は、表面に付着した粉末がより少ない錠剤20を製造することができる。さらに、本製造方法によれば、上記搬送工程(1)を経た錠剤20の表面に対し、印刷工程(2)において印刷が施されるので、文字欠けなど識別情報の印刷不良が生じにくい錠剤が得られる。
【0061】
また、第1実施形態の錠剤の製造装置10は、複数の錠剤20を収容したホッパー12の排出口22より下方に、錠剤20を搬送する搬送面24が配置された第1搬送レーン14と、第1搬送レーン14から供給された錠剤20を搬送方向Fへ搬送する第2搬送レーン16と、を備える。第1搬送レーン14は、ホッパー12から錠剤20が落下する搬送面24に接続され気体を吸引する第1吸引口28を有している。第2搬送レーン16は、錠剤20の表面に印刷を施す印刷部50を有するという構成を採用している。これにより、上記同様、前処理工程のホッパー12から錠剤20を搬送面24に落下させ、落下した衝撃によって錠剤20の表面から離れた粉末を、第1吸引口28を通じて吸引することによって、錠剤20から粉末をより効率的に除去できる。したがって、本製造装置10は、表面に付着した粉末がより少ない錠剤20を製造することができる。さらに、本製造装置10によれば、第1搬送レーン14において粉末を除去した錠剤20の表面に対し、印刷部50において印刷が施されるので、文字欠けなど識別情報の印刷不良が生じにくい錠剤20が得られる。
【0062】
[変形例]
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨の範囲内で適宜変更することができる。例えば、第1吸引口28、第2吸引口32、第3吸引口52の数は、特に限定されず、それぞれ、1個でもよいし、2個以上でもよい。また、第1吸引口28、第2吸引口32、第3吸引口52は、筒状の部材である場合に限らず、角筒状の部材であってもよい。
【0063】
第1実施形態の場合、第1吸引口28は、連結管26に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、連結管26の下端と、搬送面24との間に第1吸引口28の一端を配置するように設けてもよい。
【0064】
第1実施形態の場合、第2吸引口32の一端が、通気孔40を有する搬送面24の反対側を覆う空気取込口に連結されている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、第2吸引口32の一端は、搬送体30の幅方向に沿って延びる線状の開口を有し、搬送面24に形成され通気孔40のうち、搬送体30の幅方向に並ぶ一部の通気孔40から搬送面24上の気体を吸引する構成としてもよい。
【0065】
第1実施形態の場合、第3吸引口52の一端は、印刷搬送面42上であって、印刷搬送面42に対し垂直方向に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、第3吸引口52の一端は、印刷搬送面42上であって、印刷搬送面42の垂直方向に対し、幅方向±90度未満の範囲、及び搬送方向±90度未満の範囲の所定の角度に傾けて配置してもよい。また、第3吸引口52の一端は、印刷搬送面42に接続されていれば、搬送体30の搬送方向F及び鉛直方向に直交する方向(以下、「幅方向」ともいう。)の外側に配置してもよい。
【0066】
第1実施形態の場合、粉末除去部48のカバー58は、ガイド部66を有する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、ガイド部66を有していなくともよい。カバー58がガイド部66を有していない場合、印刷搬送面42上の錠剤20は、粉末除去部48と印刷搬送面42の間を通過するので、吹き出し口62から吹き出された気体に逆行しながら搬送される。吹き出し口62から吹き出された気体を浴びることによって、錠剤20の表面に付着した粉末がより確実に錠剤20の表面から離れ、第4吸引口60によって吸引される。
【0067】
第1実施形態の場合、粉末除去部48は印刷搬送面42上に1個設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、粉末除去部48は、搬送方向Fに直交する幅方向に複数設けてもよいし、搬送方向Fに沿って複数設けてもよいし、さらに千鳥状など、ランダムに設けてもよい。
【0068】
第1実施形態の場合、吹き出し口62は、搬送方向Fと逆方向に気体を吹き出す場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、製造装置10は、搬送方向Fに対し逆方向に気体を吹き出す吹き出し口62に加え、搬送方向Fに対し、順方向に吹き出す吹き出し口と交差する方向に吹き出す吹き出し口とのうち、少なくとも一方を有することとしてもよい。
【0069】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る製造装置10Aについて、図4を参照して説明する。第2実施形態に係る製造装置10Aは、打錠機110で打錠された錠剤20を回収してからホッパー12に投入するまでの機構が、第1実施形態に係る製造装置10と異なる。第2実施形態に係る製造装置10Aは、バケットリフター96及び錠剤緩衝シュート98を含む。錠剤緩衝シュート98及びホッパー12は、図4において、説明の便宜上、一部断面を模式的に示している。第2実施形態に係る製造装置10Aは、バケットリフター96及び錠剤緩衝シュート98が、打錠機110とホッパー12との間に配置されている。
【0070】
バケットリフター96は、タワー100と、バケット102と、昇降機構104とを有する。タワー100は、鉛直方向に延在する。タワー100は、受容口部106と、供給口部108とを有する。受容口部106は、打錠機110から錠剤20を受け入れる。受容口部106は、タワー100の下端部から打錠機110に架け渡された管状の部材である。供給口部108は、錠剤20を錠剤緩衝シュート98へ供給する。供給口部108は、タワー100の上端部から錠剤緩衝シュート98に向かって延在する管状の部材である。
【0071】
バケット102は、タワー100内に配置される。バケット102は、錠剤20を収納する内部空間112と、内部空間112に通じる受容口114及び供給口116とを有する。バケット102は、昇降機構104によってタワー100内を鉛直方向に移動可能である。バケット102は、タワー100内の下端部に位置するとき、受容口114が受容口部106に接続される。バケット102は、タワー100内の上端部に位置するとき、供給口116が供給口部108に接続される。
【0072】
昇降機構104は、タワー100内において、鉛直方向の上向き及び下向きにバケット102を移動させる。昇降機構104は、例えば、空気圧を動力源とするアクチュエータで構成することができる。また昇降機構104は、例えば、モータを動力源とするチェーン機構で構成されてもよい。
【0073】
錠剤緩衝シュート98は、供給口部108と、ホッパー12との間に配置されている。第2実施形態に係る製造装置10Aでは、錠剤緩衝シュート98は、ホッパー12の中央に配置されている。錠剤緩衝シュート98は、筒状部118と、第2吹き出し口120と、第5吸引口122とを有する。筒状部118は、鉛直方向に沿って、開口を有する筒状の部材である。筒状部118は、内面に緩衝材としての、すべり部124を有する。すべり部124は、らせん状の曲面を有し、筒状部118の上端から下端に延在している。
【0074】
第2吹き出し口120は、筒状部118の鉛直方向の中央より下側に設けられている。第2実施形態に係る製造装置10Aでは、2個の第2吹き出し口120が設けられている。第2吹き出し口120は、2個だけでなく、1個及び3個以上設けられてもよい。第2吹き出し口120は、筒状の部材であり、軸方向の一端が筒状部118の内部に開口しており、軸方向の他端が図示していない配管を通じて空気圧縮機に連結されている。第5吸引口122は、第2吹き出し口120より鉛直方向の上側、好ましくは筒状部118の鉛直方向中央より上側に設けられている。第5吸引口122は、複数設けてもよい。第5吸引口122は、筒状の部材であり、軸方向の一端が筒状部118の内部に開口しており、軸方向の他端が配管を通じて吸引ポンプ34に連結されている。
【0075】
打錠機110で打錠された錠剤20は、受容口部106を通じてタワー100内に供給される。錠剤20は、受容口部106を通り受容口114からバケット102の内部空間112に収納される。内部空間112内に錠剤20が一定量以上収納されると、バケット102は昇降機構104によってタワー100の上端部へ移動する。タワー100の上端部に到達したバケット102は、供給口116から供給口部108へ錠剤20を供給する。供給口部108へ供給された錠剤20は、錠剤緩衝シュート98の上端の開口からすべり部124をすべりながら下方へ移動する。錠剤緩衝シュート98の下端に到達した錠剤20は、ホッパー12内に落下する。
【0076】
第2吹き出し口120は、筒状部118の内部に向かって気体を吹き出す。筒状部118の内部に向かって吹き出された気体は、すべり部124上の粉末をすべり部124の表面から浮き上がらせる。これにより粉末は吹き出された気体とともに筒状部118内を上方へ舞い上がる。第5吸引口122は、筒状部118内の気体を吸引することによって、錠剤20の表面から離れた粉末が、錠剤20の表面に再度付着することを抑制することができる。
【0077】
第2実施形態に係る製造装置10Aは、バケットリフター96を用いることによって、ホッパー12へ錠剤20を連続的に投入することができる。製造装置10Aは、第1実施形態のように錠剤回収容器82を移動させる場合に比べ、錠剤20に与える振動を低減できる。したがって、第2実施形態に係る製造装置10Aは、錠剤20から粉末が発生することを、より抑制することができる。
【0078】
錠剤緩衝シュート98に供給された錠剤20は、すべり部124をすべり、筒状部118の内面をらせん状に周回しながら下方へ移動する。すなわち錠剤緩衝シュート98は、ホッパー12に投入される際の錠剤20に与える衝撃を緩和することができる。これにより、第2実施形態に係る製造装置10Aは、ホッパー12内に錠剤20を一時的に貯留することができるとともに、ホッパー12内で粉末が発生することを、より抑制できる。
【0079】
(第3実施形態)
次に、上記製造装置で製造される錠剤の実施形態について説明する。第3実施形態に係る錠剤は、上記第1実施形態及び上記第2実施形態に係る製造方法及び製造装置によって製造することができる。第3実施形態に係る錠剤は、後述する酸化マグネシウムを有効成分とする錠剤である。このような錠剤は、打錠直後の錠剤の表面に付着する粉末が特に多い傾向にあることが分かった。より具体的には、第3実施形態に係る錠剤は、酸化マグネシウム粒子及び内部添加剤を含む顆粒を含んでいる。錠剤は、更に顆粒と、外部添加剤とを含んでいることが好ましい。また、錠剤は、例えば、内部添加剤及び/又は外部添加剤として、セルロース及び/又はセルロース誘導体を含有することが、より好ましい。錠剤は[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比が一定範囲内にあることが更に好ましい。上述の錠剤は、錠剤の摩損度の低減とキャッピング発生率の低減とを両立することができる。第3実施形態に係る製造装置及び製造方法は、上記錠剤に対し、好適である。すなわち、上記錠剤に対し、第3実施形態に係る製造装置及び製造方法を適用することによって、表面に付着した粉末がより少ない錠剤を得ることができる。
【0080】
錠剤は、外部添加剤が、平均粒子径が50μm以下の結晶セルロースを含んでもよい。平均粒子径が50μm以下の結晶セルロースを外部添加剤として添加した場合、粒子径の大きい外部添加剤を添加する場合と比較して、特に錠剤表面に付着した粉末が増加する傾向にある。本製造方法によれば、効率的に粉末を除去できるので、錠剤表面に付着した粉末がより少ない錠剤が得られる。
【0081】
[摩損度]
第3実施形態において「摩損度」とは、例えば、錠剤の衝撃に対する摩損性及び脆さの指標であって、「第十七改正日本薬局方、参考情報・錠剤の摩損度試験法」に記載の方法で測定できる。具体的には、6.5gに近い量の錠数に対し、錠剤摩損度計(富山産業株式会社製、錠剤摩損度試験器 TFT-1200)を用いて、100回転(24~26回転/分)の摩損を試験錠剤に与え、摩損前の錠剤初期質量と摩損後の錠剤質量を測定し、下記の式1に従い摩損度を算出することにより求めることができる。
【0082】
【数1】
【0083】
第3実施形態の錠剤の摩損度の範囲は、上記測定法を用いた場合、上限としては、0.40%未満であればよいが、中でも0.35%未満、さらには0.30%未満が好ましい。一方で、摩損度は低ければ低いほうが望ましいため下限は特に設けない。
【0084】
[キャッピング]
第3実施形態において、「キャッピング」とは、錠剤の上面又は下面部分が断面片として剥離することを指す。「キャッピング」は、例えば、錠剤製造過程の打錠時、輸送時、分包時の衝撃により発生する。キャッピング発生率は、カセットローター試験により求めることができる。キャッピング発生率は、以下の式2に従って算出することで求めることができる。より具体的には、キャッピング発生率は、高さ2mの位置にセットしたカセットローターより錠剤を排出させ、落下した錠剤よりキャッピング錠数をカウントする。キャッピング発生率は、十分な数として、例えば、100錠の試験錠剤を試験する。キャッピング発生率は、100錠の試験錠剤を試験したものの内、キャッピングが発生した錠剤の数をカウントし、その割合を算出する。カセットローターは、例えば、TOSHO製、マグミット錠500mg用を用いることができる。なお、キャッピング発生率の算出の際は、使用する床材仕様として、コンクリート金ごて+エポキシ系塗床材+ペースト工法(厚み2mm)(ABC商会)ケミクリートE又はその同等品仕様を採用することができる。
【0085】
【数2】
【0086】
第3実施形態の錠剤のキャッピング発生率の範囲は、上記測定法を用いた場合、12%未満、中でも11%未満、さらには10%未満が好ましい。一方で、キャッピング発生率は低ければ低いほうが望ましいため下限は特に設けない。
【0087】
[硬度]
第3実施形態において「硬度」とは、錠剤の硬さの指標であって、錠剤硬度計で測定できる。錠剤硬度計は、岡田精工(株)のDC-50を用いることができる。硬度は、例えば、錠剤硬度計を用いて、直径方向の錠剤硬度を測定することで求めることができる。錠剤は、硬度が低すぎると摩損度が上昇するため、下限としては30N以上、中でも40N以上、さらには50N以上が好ましい。一方で、錠剤は、粉末の発生の観点から、硬度が高ければ高いほうが望ましいため上限は特に設けない。
【0088】
[崩壊時間]
第3実施形態において、「崩壊時間」とは、溶液中における錠剤の崩壊しやすさの指標である。崩壊時間は、第十七改正日本薬局方、一般試験法・崩壊試験法により測定することができる。崩壊試験器を用いて、崩壊時間を測定することができる。より具体的には、「崩壊時間」は、適切な数として、例えば、6錠の試験錠剤の試験溶液として、水における崩壊時間を崩壊試験器により測定する。崩壊試験器は、例えば、富山産業株式会社製の崩壊試験器 NT-20HSを用いることができる。錠剤は、崩壊時間が適切であると服用により口腔内で短時間で崩壊する飲み易い錠剤が提供できるため好ましい。適切な崩壊時間の上限としては、20秒以下、中でも15秒以下、さらには11秒以下が好ましい。下限は特に制限されないが、通常は0.5秒以上、又は1秒以上である。
【0089】
[セルロース及び/又はセルロース誘導体]
第3実施形態において「セルロース」とは、β-グルコース分子がグリコシド結合により直鎖状に重合した(C6H10O5)nで表される直鎖状高分子を指し、例えば、結晶セルロース、微結晶セルロース、粉末セルロースが挙げられる。「セルロース誘導体」とは、このようなセルロース分子中のヒドロキシ基に、エーテル結合あるいはエステル結合により異なる置換基を導入したものを指し、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。第3実施形態において定義される「セルロース及び/又はセルロース誘導体」は、上述の「セルロース」及び「セルロース誘導体」から選択される少なくとも1種を指す。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとは、極めて少量のヒドロキシプロポキシ基をグルコース環に導入したセルロース、つまり低いレベルでO-(2-ヒドロキシプロピル)化したモル置換度=0.2~0.4のセルロースを指す。このようなセルロース誘導体の形状としては、例えば、粉末状、粒子状、微粒子状がある。
【0090】
セルロース及び/又はセルロース誘導体としては、合成してもよく市販のものを使用してもよい。市販品としては、旭化成株式会社の各種グレードのセオラス(登録商標)、例えば、セオラス(登録商標)PH-101、UF-711、PH-102、PH-200、PH-301、PH-302、PH-20JP、UF-702、KG-802、KG-1000といった結晶セルロースが使用できる。
【0091】
[酸化マグネシウム粒子]
第3実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子は、マグネシウムの酸化物(MgO)の粒子である。第3実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子は、水酸化マグネシウム粒子を焼成して得ることができる。例えば、レーザー回折散乱法による平均粒子径が1~10μmの水酸化マグネシウムを600~1000℃で焼成することにより得ることができる。酸化マグネシウム粒子としては、合成してもよく市販のものを使用してもよい。酸化マグネシウム粒子は、例えば、協和化学工業(株)製の重質グレード、神島化学工業(株)製の粉末グレード、又は富田製薬(株)製の軽質グレード、及び重質グレードの日局酸化マグネシウムが使用できる。
【0092】
第3実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子は、粉末状又は顆粒状のいずれでもよいが、顆粒状の方が打錠機の摩耗防止効果に優れ、しかもより形状保持安定性に優れた高含有量の錠剤を得ることができる。
【0093】
第3実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子は、限定されるものではないが、所定の粒子径を有していることが好ましい場合がある。例えば、レーザー回折散乱法で測定される酸化マグネシウム粒子の平均粒子径の上限は、例えば、通常40μm以下、又は20μm以下、又は10μm以下とすることができる。酸化マグネシウム粒子の平均粒子径を上述の上限以下とすることにより、錠剤崩壊時の懸濁粒子径が小さくなり、口腔内でのザラツキが少ない錠剤が得られるという効果が得られる場合がある。一方、当該平均粒子径の下限は、制限されるものではないが、例えば、製造上の限界及び費用対効果から、例えば、通常0.25μm以上、又は0.5μm以上、又は1μm以上とすることができる。
【0094】
第3実施形態の酸化マグネシウム粒子及びその原料となる水酸化マグネシウム粒子の平均粒径及び平均粒子径は、レーザー回折散乱法による測定装置で測定することができる。レーザー回折散乱法による測定装置は、例えば、マイクロトラックベル株式会社 MT3300EX2の粒度分布測定器を用いることにより達成できる。
【0095】
第3実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子の嵩密度は、高過ぎると硬度低下を引き起こす場合があるので、上限としては、0.8g/mL以下、又は0.7g/mL以下とすることができる。一方で、嵩密度が低過ぎるとキャッピング及びラミネーション引き起こす場合があるので、下限としては、0.1g/mL以上、又は0.2g/mL以上とすることができる。嵩密度は、例えば、100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))を用いて測定することができる。
【0096】
第3実施形態において使用する酸化マグネシウム粒子の安息角は、大き過ぎると流動性悪化から打錠時の錠剤質量バラツキに繋がる場合があるので、上限としては、50°以下、又は48°以下とすることができる。一方で、安息角は低ければ低いほうが望ましいため下限は特に設けない。安息角は、例えば、株式会社セイシン企業製のマルチテスターMT-1を用いて測定することができる。
【0097】
[錠剤]
第3実施形態のある側面は、酸化マグネシウムを有効成分とする錠剤である。第3実施形態の錠剤は、酸化マグネシウム粒子及び内部添加剤を含む顆粒を含む。第3実施形態の錠剤は、顆粒に外部添加剤を添加してもよい。第3実施形態の錠剤は、内部添加剤及び/又は外部添加剤として、少なくともセルロース及び/又はセルロース誘導体を含有してもよい。第3実施形態の錠剤は、[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比が一定範囲内にある。
【0098】
酸化マグネシウム粒子は、内部添加剤と共に顆粒に含まれることが好ましい。酸化マグネシウム粒子の含有率は、高すぎると成形性が不十分となる場合があるため、錠剤全体に対し例えば、90質量%以下、又は88質量%以下とすることができる。一方で、 酸化マグネシウム粒子の含有率は、低すぎるとその分、高圧縮性および塑性変形性の高い添加剤を配合できるため成形性が高い錠剤が得られる一方、一錠あたりのコストが高くなる。よって、錠剤全体に対し、例えば、80質量%以上、又は85質量%以上とすることが好ましい。
【0099】
第3実施形態の錠剤は、[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比が一定範囲内にある。錠剤は、外部添加剤が含有される比率を増加させることにより、硬度上昇と摩損度低減が期待できる。錠剤は、外部添加剤が含有される比率を増加させすぎると、例えば、キャッピング発生率の増加及びチューブ通過性の低下を招いてしまう。よって、外部添加剤として含有される質量比は、錠剤全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、上限を90以下、例えば、88以下、85以下、80以下、75以下とすることが好ましく、下限を20超、例えば、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上とすることが好ましい。一方で、錠剤は、内部添加剤が含有される割合が少な過ぎると、圧密化が不十分となることで微細粒子が多く発生し、空気を抱きやすくなり、その後の打錠時に空気が抜けきらず、キャッピング錠を発生させる場合がある。そのため、錠剤は、一定量の内部添加剤の配合が必要であるが、逆に内部添加剤の含有される割合が多過ぎると、造粒により圧密化された顆粒が得られるため、打錠時の更なる圧密化により顆粒が破壊されにくくなる。錠剤は、打錠時の更なる圧密化により顆粒が破壊されにくくなると、成型性の低下、すなわち摩損度の上昇を惹起する。よって、内部添加剤として含有される質量比は、錠剤全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、上限を80未満とすることが好ましい。内部添加剤として含有される質量比は、錠剤全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、例えば、上限を79以下、78以下、77以下、76以下、75以下とすることがより好ましい。内部添加剤として含有される質量比は、錠剤全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、下限を10以上、例えば、12以上、15以上、20以上、25以上とすることがより好ましい。
【0100】
また、錠剤全体に対するセルロース及び/又はセルロース誘導体の含有率は、多過ぎると一錠あたりのコストが高くなるため、錠剤全体に対し20質量%以下、又は15質量%以下、又は12質量%以下とすることができる。一方で、少な過ぎると本発明の効果が奏されなくなる場合があるため、錠剤全体に対し5質量%以上、又は7質量%以上、又は9質量%以上とすることができる。
【0101】
第3実施形態の錠剤において、上で定義したセルロース及び/又はセルロース誘導体は、内部添加剤及び外部添加剤いずれにおいても賦形剤又は結合剤として使用されることが好ましい。また、内部添加剤と外部添加剤に含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体は、同一のものであっても異なっていてもよい。
【0102】
第3実施形態において、内部添加剤とは、錠剤の製造において造粒工程の前に有効成分に添加され混合される一又は複数の物質を含む添加剤を指す。内部添加剤として、上で定義したセルロース及び/又はセルロース誘導体以外にも他の添加剤を添加してもよい。とりわけ、上述のような好ましい崩壊時間に調整するため、上で定義した特定の比率で内部添加剤及び外部添加剤に含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体に加えて、内部添加剤として、クロスカルメロースナトリウム、トウモロコシデンプン、カルメロースカルシウム、クロスポビドン及びカルボキシスターチナトリウムといった崩壊剤を添加することが好ましい。崩壊剤としては、合成してもよく市販のものを使用してもよい。市販品としては、例えば、ニチリン化学工業(株)製のキッコレート(登録商標)ND-2HSの市販品が使用できる。錠剤の成形が困難となる場合があるため、上限としては、錠剤全体に対し、例えば、5質量%以下、又は3.5質量%以下とすることができる。一方で、少な過ぎると崩壊が困難となる場合があるため、下限としては、錠剤全体に対し、例えば、1質量%以上、又は2質量%以上とすることができる。
【0103】
第3実施形態において、外部添加剤とは、錠剤の製造において、造粒工程後に製造された顆粒に添加され顆粒と共に打錠される一又は複数の物質を含む添加剤を指す。外部添加剤として、上で定義した特定の比率で内部添加剤及び外部添加剤に含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体以外にも他の添加剤を添加してもよい。とりわけ、本発明の奏功の観点から滑沢剤を添加することが好ましい。滑沢剤として、例えば、ステアリン酸及びその塩(Mg,Ca塩)が挙げられる。滑沢剤は、好ましくはステアリン酸塩、中でもステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムがより好ましい。滑沢剤は、多すぎると崩壊遅延につながる場合があるため、上限としては、錠剤全体に対し、例えば、2質量%以下、又は1.5質量%以下、又は1.0質量%以下とすることができる。一方で、滑沢剤が少なすぎると杵、臼に付着する場合があるため、錠剤全体に対する滑沢剤の添加量の下限としては、例えば、0.2質量%以上、又は0.5質量%以上、又は0.9質量%以上とすることができる。
【0104】
第3実施形態の錠剤の質量は、酸化マグネシウムを有効成分とする錠剤として、例えば、1個当たり、上限は1000mg以下、又は800mg以下、又は600mg以下とすることができる。第3実施形態の錠剤の質量の下限は、10mg以上、又は50mg以上、又は100mg以上とすることができる。
【0105】
第3実施形態の錠剤は、ヒト又は動物用の医薬品として、例えば、制酸、緩下、尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防のために経口投与される。また、例えば、マグネシウム補給、抗低マグネシウム血症を目的としたヒト又は動物用のサプリメントとしても用いることができる。その投与量は用途、目的あるいは病状によって左右される。例えば、制酸剤として使用する場合は、酸化マグネシウム換算で成人1人当り、通常1日0.5~1.0gを数回に分割経口投与される。緩下剤として使用する場合は、酸化マグネシウム換算で成人1人当り、通常1日2gを食前又は食後の3回に分割経口投与するか、または就寝前に1回投与される。尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防として使用する場合は、酸化マグネシウム換算で成人1人当り、通常1日0.2~0.6gを多量の水ともに経口投与される。その他の用途の場合、通常マグネシウムの耐容上限量の範囲内で摂取される。例えば、通常の食品以外からの摂取につき、マグネシウム換算で健康な成人の場合1日350mg、健康な小児の場合1日体重1kg当たり5mgが米国の食事摂取基準として設定されている(Institute of Medicine (IOM). Food and Nutrition Board. “Dietary Reference Intakes: Calcium, Phosphorus, Magnesium, Vitamin D and Fluoride”. Washington, DC: National Academy Press, 1997)。
【0106】
第3実施形態の医薬品は、有効成分による所望の制酸剤、緩下剤、尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防が用法として日本国内で承認されている。その各用途において期待する効果、ならびに摩損度の低減とキャッピング発生率の低減を実質的に妨げない限りにおいて、内部添加剤及び/又は外部添加剤に、更に1種又は2種以上の他の任意の成分を含有していてもよい。斯かる他の成分としては、制限されるものではないが、例えば、各種の医薬的に許容可能な種々の医薬添加剤、例えば、色素、風味剤が挙げられる。これらの成分は、何れか1種を単独で使用してもよく、何れか2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0107】
上記の錠剤は、例えば、以下の前処理工程の方法で製造することができる。すなわち、酸化マグネシウムを有効成分とする錠剤の製造方法であって、酸化マグネシウム粒子と、セルロース及び/又はセルロース誘導体を含む内部添加剤とを混合しすること;
上記混合物を造粒し、顆粒にすること;
上記顆粒にセルロース及び/又はセルロース誘導体を含む外部添加剤を添加し打錠すること;を含み、
[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比が75:25~10:90の範囲内である、製造方法に関する。
【0108】
まず、酸化マグネシウム粒子、セルロース及び/又はセルロース誘導体及び任意により1種又は2種以上の他の成分を含む内部添加剤を混合する。
その後、結果物である混合物を造粒し顆粒にする。第3実施形態の錠剤の成分から鑑みて乾式造粒により造粒することが好ましい。乾式造粒により造粒は、例えば、フロイント産業株式会社製 乾式造粒機 RC-156を用いて、造粒を行うことにより顆粒を製造できる。
【0109】
このようにして製造された顆粒に、セルロース及び/又はセルロース誘導体及び任意により1種又は2種以上の他の成分を含む外部添加剤を添加し打錠する。外部添加剤の添加は、顆粒の周囲に外部添加剤を添加できるような方法であれば任意の方法が採用される。打錠圧は一錠当りのパンチ圧として、例えば、上限は20kN以下、又は18kN以下、又は16kN以下、下限は2kN以上、又は3kN以上、又は4kN以上とすることができる。杵の形状は標準Rの他、例えば、二段R、糖衣R、隅角R、隅角平面、隅丸平面のいずれであってもよい。
【0110】
以上、本発明の種々の側面について説明したが、本発明はこれらの側面に限定されるものではない。当業者であれば明らかなように、上記の詳細な説明及び後述の実施例の記載から、本発明の別の任意の側面を抽出することも可能である。
【実施例0111】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
[処方]
以下の表に示す処方にて錠剤を製造した。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
上記各実施例および比較例で使用した原料の詳細は以下の通りである。
酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製 日局酸化マグネシウム(重質グレード)
結晶セルロース:旭化成株式会社製 セオラスPH-101 (実施例1-4、比較例1-3)、セオラスUF-711(実施例5-8、比較例4-6)
クロスカルメロースナトリウム:ニチリン化学工業(株)製 キッコレートND-2HS
ステアリン酸カルシウム:太平化学産業(株)製 ステアリン酸カルシウム 植物性
【0116】
本実施例で使用した酸化マグネシウムの物性を測定したところ、以下の通りであった。
・平均粒子径:7.691μm(マイクロトラックベル株式会社 MT3300 EX2を使用したレーザー回折散乱法により測定)
・嵩密度:0.249g/mL(100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))により測定)
・安息角:41.7°(株式会社セイシン企業製 マルチテスターMT-1により測定)
【0117】
[製造方法]
上記処方に従い各原料を電子天秤(メトラートレド社製、5kg秤量 PB5001-S/FACT)を用いて1.5万錠スケールで秤量した。
1.混合
秤量した酸化マグネシウム及び内添剤の原料をポリエチレン袋(1100mm×600mm)に投入し、袋を左右30回振り混合した。混合工程後、100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))を用いて嵩密度を測定した。
2.造粒
得られた混合物に対し乾式造粒機(フロイント産業株式会社製 乾式造粒機 RC-156)を用い、下記の造粒条件で造粒を行うことにより顆粒を製造した。
【0118】
【表3】
【0119】
造粒後、以下評価項目につき評価を行った。
・フレーク率:造粒工程を1分間行った1分間処理品(A)及び該1分間処理品(A)を1000μmでふるったもの(B)の質量を測定し下記の式3より算出
【0120】
【数3】
【0121】
・嵩密度:100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))を用いて測定
・粒度分布:粒度分布測定器(株式会社セイシン企業製 レーザー回折散乱式粒度分布測定器 LMS-2000e)を用いて測定
3.外添剤添加
上記顆粒と秤量した外添剤の原料をポリエチレン袋(1100mm×600mm)に投入し、袋を左右30回振り混合した。
混合後、以下評価項目につき評価を行った。
・嵩密度:100mL ステンレスCup(実測質量値(g)/100(mL))を用いて測定
・安息角:株式会社セイシン企業製 マルチテスターMT-1により測定
4.打錠
混合した顆粒及び外添剤を以下の条件で打錠機(株式会社菊水製作所製 小型高速回転式錠剤機 VIRG)を用いて打錠した。
【0122】
【表4】
【0123】
打錠後、以下評価項目につき評価を行った。
・質量:(試験錠数:10錠)
・厚み:(試験錠数:5錠)、ピーコック社製 シックネスゲージを使用
・硬度:(試験錠数:10錠)、岡田精工株式会社製 ロードセル式卓上硬度計 DC-50を使用
・摩損度試験:富山産業株式会社製 錠剤摩損度試験器 TFT-1200を使用し、100回転(試験錠数:6.5gにできるだけ近い量の錠数)で実施
・崩壊時間:(試験錠数:6錠)、第十七改正日本薬局方、一般試験法・崩壊試験法に準拠。崩壊試験器(富山産業株式会社製、崩壊試験器 NT-20HS)を用い、水における試験錠剤の崩壊時間を測定
・打錠状況:打錠圧/打錠障害の有無を目視で確認
・懸濁粒子径D50(μm):(試験錠数:1錠)、セイシン企業(株)製レーザー回折散乱式粒度分布測定器LMS-2000eを用い、試験錠剤を水に懸濁させた際の懸濁粒子径を測定
・チューブ通過性5Fr:カテーテル用シリンジ(ニプロ(株)製 経腸栄養注入セットシリンジDS20mLカテーテルイエロー)の押子を抜き取り、外筒内に錠剤を1錠入れ、押子を戻し、55℃の温湯20mLを吸い取り、筒先に蓋をして5分間静置する。5分後に上記カテーテルシリンジを手で90度15往復横転した後に、経管栄養チューブ(アトムメディカル製 アトム栄養カテーテルT;太さ5Fr、長さ120cm)を連結し、内部の懸濁液および洗浄用のイオン交換水20mLをさらに注入し、チューブ閉塞の可否を確認した。本試験は3回行い、チューブが閉塞しなかった場合は適、閉塞した場合は不適で評価した。
・打錠工程圧縮率の算出:充填深さ(a)、本圧圧縮厚み(b)とし、下記式4により算出
【0124】
【数4】
【0125】
[結果]
混合後の結果物(混合品)嵩密度の測定結果を以下表に示す。
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
混合品の嵩密度は実施例及び比較例のいずれも0.20~0.25(g/mL)の範囲内にあり特に大きな差は見られなかった。
造粒後の顆粒(造粒品)の各項目の測定結果を以下表に示す。
【0129】
【表7】
【0130】
【表8】
【0131】
造粒性に関しては、内部添加剤として含有される結晶セルロースが多いほど処理能力、フレーク率は良く、造粒品の嵩密度を高めることができた。よって内部添加剤にある程度の結晶セルロースを含めた方が好ましいことが導かれる。
【0132】
外添剤添加後の測定結果を以下表に示す。
【0133】
【表9】
【0134】
【表10】
【0135】
外部添加剤に結晶セルロースを含まない比較例1、比較例4と、外部添加剤に含まれる結晶セルロースが100%の比較例3、比較例6の外部添加剤添加後の粒子径を比較すると、比較例3、比較例6では150μm Passの増加が見られたが、安息角はいずれも40°~44°の範囲内でさほど差は見られなかった為、流動性に差はないものと考えられる。
【0136】
打錠後の各項目の測定結果を以下表に示す。
【0137】
【表11】
【0138】
【表12】
【0139】
内部添加剤として含有される結晶セルロースに対し外部添加剤として含有される結晶セルロースの質量比が増大するほど(比較例1→比較例3、比較例4→比較例6)、硬度は上昇し摩損度は低減するが、キャッピング発生率の上昇と懸濁粒子の凝集が見られた。内部添加剤として含有される結晶セルロースに対し外部添加剤として含有される結晶セルロースの質量比が増大するほど、錠剤成形に寄与できる未圧縮の結晶セルロースの割合が多くなり、打錠時の圧縮率が上昇することで、硬度が上昇し摩損度の低下に繋がったものと考えられる。一方、造粒時の圧密化が不十分となるため、フレークになりきれなかった微粒子が空気を抱き込みやすくなる事と、後で添加された未圧縮の結晶セルロースに影響されて打錠する顆粒全体の嵩密度も低下することから、圧縮時に脱気不足が発生し空気を抱え込んだ状態になることがキャッピング発生率上昇の原因であると考えられる。また、結晶セルロースの全量が外部添加剤として含有される比較例3では、チューブ通過性試験における詰まりも見られた。よって、摩損度の低減のために外部添加剤として含有される結晶セルロースの質量比は、錠剤全体に含まれるセルロース及び/又はセルロース誘導体の質量を100とした場合、おおよそ25以上であると好ましく、おおよそ90以下であると適切であると考えられる。
【0140】
打錠後の錠厚はいずれも5.3~5.5mmの範囲内にあり大きな差は見られなかった。崩壊時間は、実施例及び比較例いずれも適切な範囲内にあった。
【0141】
以上の結果より、とりわけ、[内部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]:[外部添加剤として含有されるセルロース及び/又はセルロース誘導体]の質量比を75:25~10:90の範囲内、例えば、75:25~20:80の範囲内、とりわけ75:25~25:75の範囲内に調整することにより摩損度及びキャッピング発生率の低減を両立できる酸化マグネシウム錠剤を効率よく製造できることが分かった。更には、このような比率とすると、成形性、造粒性、打錠性、流動性、チューブ通過性といった錠剤製造時に求められる物性、並びに崩壊性といった酸化マグネシウム錠剤に求められる物性を担保しつつ、摩損度の低減とキャッピング発生率の低減との両立を図ることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、表面に印刷された識別情報に欠けがより少ない錠剤が求められる産業分野、特に医薬品製造及び流通の分野において、極めて高い利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0143】
10、10A 製造装置
12 ホッパー
14 第1搬送レーン
16 第2搬送レーン
18 回収部
20 錠剤
22 排出口
24 搬送面
26 連結管
28 第1吸引口
30 搬送体
32 第2吸引口
33 空気取込口
34 吸引ポンプ
36 受容部
38 搬送部
40 通気孔
42 印刷搬送面
44 第2搬送体
46 第2受容部
48 粉末除去部
50 印刷部
52 第3吸引口
54 受容部用カバー
58 カバー
60 第4吸引口
62 吹き出し口
64 被覆部
66 ガイド部
68 傾斜面
70 方向隙間
72 上流側外縁
74 幅側外縁
76 幅方向隙間
78 検査カメラ
80 印刷ヘッド
82 錠剤回収容器
84 容器
86 フレーム
88 車輪
90 排出口
92 バタフライ弁
93 支柱
94 連結体
96 バケットリフター
98 錠剤緩衝シュート
100 タワー
102 バケット
104 昇降機構
106 受容口部
108 供給口部
110 打錠機
112 内部空間
114 受容口
116 供給口
118 筒状部
120 第2吹き出し口
122 第5吸引口
124 すべり部
図1
図2
図3
図4