(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020978
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20250205BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250205BHJP
B32B 7/028 20190101ALI20250205BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250205BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250205BHJP
C08F 279/06 20060101ALI20250205BHJP
C08F 297/04 20060101ALI20250205BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B32B7/022
C08J5/18 CER
C08J5/18 CET
C08J5/18 CEY
B32B7/028
B32B27/00 104
B32B27/30 B
B32B27/30 A
C08F279/06
C08F297/04
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124636
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真洋
(72)【発明者】
【氏名】澤里 正
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F100
4J026
【Fターム(参考)】
3E086AB01
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4J026HE04
(57)【要約】
【課題】ビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位を有するブロック共重合体を用いた場合でも、薄膜化しても耐摩耗性及び耐衝撃性に優れる熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】本発明によれば、第1層と前記第1層の少なくとも一方の面に直接又は他の層を介して積層された第2層を有するフィルムであって、前記第1層のJISK5600に準拠した鉛筆硬度測定における表面の鉛筆硬度が5B以下であり、前記第1層のISO178に準拠した測定における曲げ弾性率が1000MPa以上であり、前記第2層のJISK5600に準拠した鉛筆硬度測定における表面の鉛筆硬度が4B以上であり、前記フィルムの100℃10秒における熱収縮率が60%以上であり、前記フィルムのASTMD3420に準拠したフィルムのインパクト強度の値が10kJ/m以上である、フィルムが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層と前記第1層の少なくとも一方の面に直接又は他の層を介して積層された第2層を有するフィルムであって、
前記第1層のJIS K5600に準拠した鉛筆硬度測定における表面の鉛筆硬度が5B以下であり、
前記第1層のISO178に準拠した測定における曲げ弾性率が1000MPa以上であり、
前記第2層のJIS K5600に準拠した鉛筆硬度測定における表面の鉛筆硬度が4B以上であり、
前記フィルムの100℃10秒における熱収縮率が60%以上であり、
前記フィルムのASTM D3420に準拠したフィルムのインパクト強度の値が10kJ/m以上である、フィルム。
【請求項2】
前記第1層の体積V1と、少なくとも1つの前記第2層の体積V2の比V1/V2が3~10である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記第1層は、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、共役ジエン単量体単位を有するブロック共重合体Aを含み、
前記第1層は、前記第1層に含まれる重合体の合計質量を100質量%とした場合に、共役ジエン単量体単位の含有量は15質量%~50質量%である、請求項1又は請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記第2層は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と有する共重合体Bを含み、
前記共重合体Bは、前記共重合体Bに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は20.0質量%~50.0質量%である、請求項1又は請求項2に記載のフィルム。
【請求項5】
前記フィルムの厚さは20~35μmである、請求項1又は請求項2に記載のフィルム。
【請求項6】
前記フィルムは、100cm×100cmに切り出した場合の質量が20~35gである、請求項1又は請求項2に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族系単量体と共役ジエン系単量体を重合してなるブロック共重合体を用いた熱収縮性フィルムは、熱収縮性や収縮後の仕上がりに優れ、被包装体の様々な形状および装着方式に対応できることから、収縮包装用として広く用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、軽量化、環境負荷低減等の観点から熱収縮性フィルムの薄膜化が求められている。一方で、ビニル芳香族系化合物と共役ジエン系化合物を重合してなるブロック共重合体を用いた熱収縮性フィルムにおいては、耐摩耗性及び耐衝撃性が十分でなく、薄膜化に伴い、輸送時に熱収取性フィルムを装着した包装体と段ボールの擦れまたは包装体同士の擦れにより、装着したフィルムが破断に至る場合や包装体の落下により装着したフィルムが破断に至るといった課題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ビニル芳香族系単量体単位と共役ジエン系単量体単位を有するブロック共重合体を用いた場合でも、薄膜化しても耐摩耗性及び耐衝撃性に優れる熱収縮性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の組成物を有する層を組み合わせることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]第1層と前記第1層の少なくとも一方の面に直接又は他の層を介して積層された第2層を有するフィルムであって、前記第1層のJISK5600に準拠した鉛筆硬度測定における表面の鉛筆硬度が5B以下であり、前記第1層のISO178に準拠した測定における曲げ弾性率が1000MPa以上であり、前記第2層のJISK5600に準拠した鉛筆硬度測定における表面の鉛筆硬度が4B以上であり、前記フィルムの100℃10秒における熱収縮率が60%以上であり、前記フィルムのASTMD3420に準拠したフィルムのインパクト強度の値が10kJ/m以上である、フィルム。
[2]前記第1層の体積V1と、少なとも1つの前記第2層の体積V2の比V1/V2が3~10である、[1]に記載のフィルム。
[3]前記第1層は、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、共役ジエン単量体単位を有するブロック共重合体Aを含み、前記第1層は、前記第1層に含まれる重合体の合計質量を100質量%とした場合に、共役ジエン単量体単位の含有量は15質量%~50質量%である、[1]又は[2]に記載のフィルム。
[4]前記第2層は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と有する共重合体Bを含み、前記共重合体Bは、前記共重合体Bに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は20.0質量%~50.0質量%である、[1]~[3]の何れか1つに記載のフィルム。
[5]前記フィルムの厚さは20~35μmである、[1]~[4]の何れか1つに記載のフィルム。
[6]前記フィルムは、100cm×100cmに切り出した場合の質量が20~35gである、[1]~[5]の何れか1つに記載のフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0009】
1.フィルム
本実施形態に係るフィルムは、第1層と第1層の少なくとも一方の面に直接又は他の層を介して積層された第2層を有する多層の熱収縮性フィルムである。第2層は、例えば、ラベルとして用いられる場合には、特に耐摩耗性が求められることが多い外側(表側)となる表層とすることができる。
【0010】
また、フィルムは、第1層と第1層の少なくとも一方の面に直接積層された第2層を有する熱収縮性フィルムであってよい。接着層等の他の層を有しない構成とすることで、製造が容易性、コストダウンが図れる。
【0011】
また、フィルムは、第1層(中間層)と第1層の両方の面に直接又は他の層を介して積層された第2層(表層)を有する熱収縮性フィルムであってよい。すなわち、中間層は2つの表層により挟まれた構造となり得る。
【0012】
第1層の体積V1と、少なくとも1つの第2層の体積V2の比V1/V2は、好ましくは3~10であり、より好ましくは4~8である。V1/V2は、具体的には例えば、3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,8.0,8.5,9.0,9.5,10.0であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このような範囲とすることで、熱収縮性、耐摩耗性及び耐衝撃性が優れる。ここで、少なくとも1つの第2層の体積V2とは、例えば2つの第2層が第1層の両方の面に積層されている場合に、2つの第2層のうち少なくとも一方の体積を意味する。第2層のうち少なくとも一つが当該関係式を満たすことで、特に耐摩耗性が求められる表面(例えば、ラベルの外側とする面)において十分な効果を奏することができる。各層の体積は、例えば、フィルムの積層されている所定の範囲(例えば、100cm×100cmの範囲)を切り出した場合に、その範囲の面積と各層の厚さに基づき算出することができる。
【0013】
フィルムの厚さ(総厚)は、好ましくは20~35μmであり、より好ましくは20~30μmである。フィルムの厚さは、具体的には例えば、20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0014】
フィルムは、100cm×100cmに切り出した場合の質量が、好ましくは20~35gであり、より好ましくは20~30gである。当該フィルムの質量は、具体的には例えば、20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35gであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0015】
1-1.第1層(中間層)
第1層は、JIS K5600に準拠した鉛筆硬度測定における表面の鉛筆硬度が5B以下である層である。当該表面の鉛筆硬度は、具体的には例えば、5B又は6Bであってよい。第1層の鉛筆硬度は、第1層に含まれるブロック共重合体Aの単量体単位の組成(特に、共役ジエン単量体単位の含有量)及びその含有量を変更することにより調整することができる。
【0016】
また、第1層は、ISO178に準拠した測定における曲げ弾性率が1000MPa以上である層である。当該曲げ弾性率は、好ましくは1100MPa以上であり、より好ましくは1400MPa以上である。このような範囲とすることで、耐衝撃性及び耐摩耗性に優れる。当該曲げ弾性率の上限は特に制限されないが、例えば2500MPaである。当該曲げ弾性率は、具体的には例えば、1000,1050,1100,1150,1200,1250,1300,1350,1400,1450,1500,1550,1600,1650,1700,1750,1800,1850,1900,1950,2000,2500MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
第1層の鉛筆硬度や曲げ弾性率は、例えば、第1層を構成する組成物と同等の組成物を用いて成形したISOダンベルまたはシートの測定によって得ることができる。
【0018】
第1層は、好ましくは、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と、共役ジエン単量体単位を有するブロック共重合体Aを含む組成物により構成される。ブロック共重合体Aは、ブロック構造を有する共重合体である。
【0019】
ブロック共重合体Aは、好ましくはビニル芳香族炭化水素ブロック(S)と、共役ジエンブロック(B)及び/又は共重合ブロック(S/B)を有する。
【0020】
ブロック共重合体Aは、例えば、次のブロック構造を有する。
(S)-(S/B)-(S/B)
(S)-(S/B)
(S)-(S/B)-(S)
(S)-(S/B)-(B)-(S)
(S)-(B)-(S)
【0021】
ビニル芳香族炭化水素ブロック(S)は、当該ブロックに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合、ビニル芳香族炭化水素単量体単位を90質量%超含み、より好ましくは98質量%以上含み、好ましくは100質量%含む。ビニル芳香族炭化水素ブロック(S)は、実質的にビニル芳香族系単量体単位のみで構成されてよい。
【0022】
共役ジエンブロック(B)は、当該ブロックに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合、共役ジエン単量体単位を90質量%超含み、より好ましくは98質量%以上含み、好ましくは100質量%含む。ビニル芳香族炭化水素ブロック(S)は、実質的にビニル芳香族系単量体単位のみで構成されてよい。
【0023】
共重合ブロック(S/B)は、当該ブロックに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合、共役ジエン単量体単位を10~90質量%含み、好ましくは10~60質量%含み、より好ましくは10~40質量%含む。共重合ブロック(S/B)は、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位の組成が連続的に変化するテーパ型や、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位の組成がほぼ一定であるランダム型が存在していてもよい。
【0024】
ビニル芳香族炭化水素単量体単位は、ブロック共重合体Aの重合に用いたビニル芳香族炭化水素単量体に由来する単位である。ビニル芳香族炭化水素単量体は、芳香環にビニル基が結合した単量体である。ビニル芳香族炭化水素単量体は、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等のビニル芳香族炭化水素単量体が挙げられる。ビニル芳香族炭化水素単量体は、好ましくはスチレンである。これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
共役ジエン単量体単位は、ブロック共重合体Aの重合に用いた共役ジエン単量体に由来する単位である。共役ジエン単量体は、C=C-C=Cで表される化学構造を有する単量体である。共役ジエン単量体は、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン単量体は、好ましくは1,3-ブタジエンである。これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
ブロック共重合体Aは、ブロック共重合体Aに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、共役ジエン単量体単位の含有量は好ましくは15.0~50.0質量%であり、より好ましくは17.0~45.0質量%であり、さらに好ましくは17.0~30.0質量%である。このような範囲とすることで耐衝撃性及び熱収縮性に優れる。当該共役ジエン単量体単位の含有量は、具体的には例えば、15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
ブロック共重合体Aは、ビニル芳香族炭化水素単量体及び共役ジエン単量体以外のこれらと共重合可能な他の単量体に由来する単量体単位(その他の単量体単位)を有していてもよい。ブロック共重合体Aは、ブロック共重合体Aに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、その他の単量体単位の含有量は例えば0~10質量%であり、好ましくは0~5質量%である。
【0028】
第1層は、第1層に含まれる重合体の合計質量を100質量%とした場合に、共役ジエン単量体単位の含有量は、好ましくは15.0~50.0質量%であり、より好ましくは17.0~45.0質量%であり、さらに好ましくは17.0~30.0質量%である。このような範囲とすることで耐衝撃性及び熱収縮性に優れる。当該共役ジエン単量体単位の含有量は、具体的には例えば、15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
なお、第1層は、2種以上のブロック共重合体Aを含んでいてもよい。また、第1層は、ブロック共重合体A以外の共重合体を含んでいてよい。2種以上のブロック共重合体A或いはブロック共重合体A以外の重合体も併用する場合には、中間層に含まれる共役ジエン単量体単位の含有量は併用する重合体に含有される共役ジエン単量体単位の合計含有量を意味する。
【0030】
ブロック共重合体Aの重量平均分子量は、例えば、5~25万である。
【0031】
第1層は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、各種安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤(アンチブロッキング剤)、帯電防止剤、防曇剤、耐光性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料等が挙げられる。各添加剤はブロック共重合体溶液に添加しても良いし、回収したブロック共重合体とブレンドし、溶融混合しても良い。
【0032】
安定剤としては、例えば、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートや2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、トリスノニルフェニルフォスファイト等の燐系酸化防止剤などが挙げられる。ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤としては、例えば、脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ソルビタンモノステアレート、脂肪族アルコールの飽和脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの添加剤はブロック共重合体Aに対して5質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0033】
<ブロック共重合体Aの製造方法>
本実施形態に係るブロック共重合体Aの製造方法は、特に制限されないが、例えば、有機溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として上記ビニル芳香族炭化水素単量体及び共役ジエン単量体を含む原料単量体を重合する方法が挙げられる。
【0034】
有機溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0035】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物である。有機リチウム化合物としては、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が挙げられる。
【0036】
有機リチウム化合物を開始剤とする所謂リビングアニオン重合では、重合反応に供したビニル芳香族炭化水素及び共役ジエン等の原料単量体はほぼ全量が重合体に転化し得る。また、重合反応開始後、有機リチウム化合物を追加で添加しさらに単量体単位を添加してもよい。
【0037】
また、重合状態の制御のためにランダム化剤を添加してもよい。ランダム化剤としては主としてテトラヒドロフラン(THF)が用いられるが、その他のエーテル類やアミン類、チオエーテル類、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等も使用できる。適当なエーテル類としてはTHFの他にジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。アミン類としては第三級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンの他、環状アミン等も使用できる。その他にトリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム又はナトリウム、カリウム又はナトリウムブトキシド等もランダム化剤として用いることができる。
【0038】
ランダム化剤の添加量としては、例えば、全仕込み単量体100質量部に対し、0.001~10質量部添加することができる。添加時期は重合反応の開始前が望ましい。また必要に応じ追加添加することもできる。
【0039】
このようにして得られたブロック共重合体は、水、アルコール、二酸化炭素等の重合停止剤を、活性末端を不活性化させるのに充分な量を添加することにより、不活性化される。また、添加量を調整した当該重合停止剤(失活水等)を加えた後、単量体をさらに添加して重合を再開してもよい。
【0040】
得られたブロック共重合体溶液より共重合体を回収する方法としては、(1)メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、(2)加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、(3)濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、(4)溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0041】
1-2.第2層(表層)
第2層は、JIS K5600に準拠した鉛筆硬度測定における表面の鉛筆硬度が4B以上である層である。当該表面の鉛筆硬度は、具体的には例えば、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H、7H、8H、9Hであり、ここで例示した硬度の何れか2つの間の範囲内であってもよい。第2層の鉛筆硬度は、第2層に含まれる共重合体Bの単量体単位の組成(特に、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量)及びその含有量を変更することにより調整することができる。
【0042】
第2層は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、ビニル芳香族炭化水素単量体単位とを有する共重合体Bを含む組成物により構成されることが好ましい。共重合体Bは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、共役ジエン単量体単位と、ビニル芳香族炭化水素単量体単位とを有する共重合体、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とビニル芳香族炭化水素単量体単位とを有する共重合体の少なくとも一方を含む。
【0043】
ビニル芳香族炭化水素単量体単位は、共重合体Bの重合に用いたビニル芳香族炭化水素単量体に由来する単位である。ビニル芳香族炭化水素単量体は、芳香環にビニル基が結合した単量体である。ビニル芳香族炭化水素単量体は、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等のビニル芳香族炭化水素単量体が挙げられる。ビニル芳香族炭化水素単量体は、好ましくはスチレンである。これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
共役ジエン単量体単位は、共重合体Bの重合に用いた共役ジエン単量体に由来する単位である。共役ジエン単量体は、C=C-C=Cで表される化学構造を有する単量体である。共役ジエン単量体は、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン単量体は、好ましくは1,3-ブタジエンである。これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する単位である。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル等が挙げられる。これらの中でも工業的の観点から、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルであることが好ましく、特にメタクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチルであることが好ましい。共重合体Bは、共重合体Bに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が20.0~60.0質量%であり、好ましくは35.0~50.0質量%である。このような範囲とすることで、耐摩耗性及び破断伸びに優れる。当該(メタ)アクリル酸メチル単位の含有量は、具体的には例えば、20.0,25.0,30.0,35.0,40.0,45.0,50.0,55.0,60.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。これらの単量体は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
共重合体Bは、共重合体Bに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、ビニル芳香族炭化水素単量体単位の含有量が好ましくは30.0~70.0質量%である。当該ビニル芳香族炭化水素単量体単位の含有量は、具体的には例えば、30.0,35.0,40.0,45.0,50.0,55.0,60.0,65.0,70.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0047】
共重合体Bは、共重合体Bに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、共役ジエン単量体単位の含有量が好ましくは0~10.0質量%である。当該共役ジエン単量体単位の含有量は、具体的には例えば、0,1.0,2.0,3.0,4.0,5.0,6.0,7.0,8.0,9.0,10.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0048】
共重合体Bは、(メタ)アクリル酸エステル単量体、ビニル芳香族炭化水素単量体、及び共役ジエン単量体単位以外のこれらと共重合可能な他の単量体に由来する単量体単位(その他の単量体単位)を有していてもよい。共重合体Bは、ブロック共重合体Bに含まれる単量体単位の合計質量を100質量%とした場合に、その他の単量体単位の含有量は例えば0~10質量%であり、好ましくは0~5質量%である。
【0049】
第2層は、2種以上の共重合体Bを含んでいてもよい。また、第2層は、共重合体B以外の重合体を含んでいてもよい。第2層は、例えば、共重合体Bとブロック共重合体A(2種以上でもよい)を含むことができる。第2層は、第2層に含まれる重合体の合計質量を100質量%とした場合に、共重合体Bの含有量は、例えば50~100質量%であり、好ましくは65~100質量%である。このような範囲とすることで、耐摩耗性や硬度が優れる。共重合体Bの含有量は、具体的には例えば、50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0050】
第2層のJIS K5600に準拠した鉛筆硬度測定における表面の鉛筆硬度が、好ましくは5B以上であり、より好ましくは4B以上であり、さらに好ましくは4B以上である。
【0051】
共重合体Bの重量平均分子量は、例えば、10~20万である。
【0052】
第2層は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、各種安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤(アンチブロッキング剤)、帯電防止剤、防曇剤、耐光性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料等が挙げられる。各添加剤はブロック共重合体溶液に添加しても良いし、回収したブロック共重合体とブレンドし、溶融混合しても良い。
【0053】
安定剤としては、例えば、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートや2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等のフェノール系酸化防止剤、トリスノニルフェニルフォスファイト等の燐系酸化防止剤などが挙げられる。ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤としては、例えば、脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ソルビタンモノステアレート、脂肪族アルコールの飽和脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの添加剤はブロック共重合体Aに対して5質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0054】
<共重合体Bの製造方法>
本実施形態に係る共重合体Bの製造方法は、特に制限されないが、例えば、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を好適に採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程が挙げられる。
【0055】
1-3.フィルムの特性
本実施形態に係るフィルムは、フィルムの100℃10秒(100℃で10秒間加熱した場合)における熱収縮率が60%以上であり、好ましくは65%以上であり、より好ましくは67%以上である。当該熱収縮率は、具体的には例えば、60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,75,80,85,90,95,100%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。フィルムは、好ましくは少なくともTD方向においてそのような熱収縮率を満たす。
【0056】
本実施形態に係るフィルムは、フィルムのASTM D3420に準拠したフィルムのインパクト強度の値が10kJ/m以上である。このような範囲とすることで、耐衝撃性に優れる。当該インパクト強度は、具体的には例えば、10,20,30,40,50,60,70kJ/mであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0057】
本実施形態に係るフィルムのMD方向の破断伸びが、好ましくは100%以上であり、より好ましくは120%以上であり、さらに好ましくは150%以上である。当該破断伸びの上限は特に制限されないが、例えば500%である。当該破断伸びは、具体的には例えば、100,110,120,130,140,150,160,170,180,190,200,210,220,230,240,250,260,270,280,290,300,310,320,330,340,350,360,370,380,390,400,450,500%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0058】
本実施形態に係るフィルムのMD方向の引張弾性率は、好ましくは1000MPa以上である。当該引張弾性率は、より好ましくは1100MPa以上である。このような範囲とすることで、耐衝撃性に優れ、フィルムを容器に装着する際の挫屈等を防止するための剛性に優れ、工業的に安定的に生産可能となる。当該引張弾性率の上限は特に制限されないが、例えば2000MPaである。当該引張弾性率は、具体的には例えば、1000,1050,1100,1150,1200,1250,1300,1350,1400,1450,1500,1550,1600,1650,1700,1750,1800,1850,1900,1950,2000MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0059】
1-4.フィルム製造方法
本実施形態に係るフィルムは、各層を構成する組成物を押出したシートを一軸、二軸あるいは多軸に延伸することによって得ることができる。特にTダイ法にて押出して二軸延伸する方法が好ましい。
【0060】
「フィルム」は「シート」とも称することができるが、以下熱収縮性の「フィルム」と区別するため未延伸のものを「シート」と称する。
【0061】
本実施形態に係るフィルムを多層構造とするためには、各層のシートを延伸後積層させてもよく、各層のシートをそれぞれ押し出した後積層させたものを延伸してもよく、各層を多層押出成形により積層させた多層シートを延伸してもよい。
【0062】
一軸延伸の例としては、例えば、押出された(単層又は多層)シートをテンターで押出方向と直交する方向(TD)に延伸する方法、押出されたチューブ状フィルムを円周方向に延伸する方法等が挙げられる。
【0063】
二軸延伸の例としては、例えば、押し出された(単層又は多層)シートをロールで押し出し方向(MD)に延伸した後、テンター等で押出方向と直交する方向(TD)に延伸する方法、押出されたチューブ状シートを押出方向及び円周方向に同時または別々に延伸する方法等が挙げられる。
【0064】
延伸温度は、例えば、60~120℃が好ましい。60℃以上とすることで延伸時にシートが破断しにくくなり、また120℃以下とすることで、得られたフィルムの熱収縮率や厚み精度が良好となりやすい。延伸倍率は、特に制限はないが、1.5~8倍が好ましい。1.5倍以上とすることで熱収縮性が良好となりやすく、また8倍以下とすることで、延伸時にシートが破断しにくくなる。
【0065】
本実施形態に係るフィルムは、熱収縮性ラベル、熱収縮性キャップシール等として用いることができる。その他、包装フィルム等として用いることができる。このような、フィルムをラベルとして用いることにより、ラベルが装着されたペットボトルなどの容器が得られる。
【0066】
各層を構成する組成物は、複数種類の重合体を含む場合があるが、これらの重合体の混合方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー及びVブレンダー等でドライブレンドしても良く、更に押出機で溶融してペレット化しても良い。一態様においては、溶融混合が好ましい。また、重合体溶液同士を混合した後、溶剤を除去する方法も用いることができる。
【実施例0067】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0068】
[ブロック共重合体の製造]
以下の操作により、製造例a1~a3のブロック共重合体を製造し、それぞれ表1、2に示す単量体単位の組成で得た。
【0069】
<製造例a1>
(1)反応容器中にシクロヘキサン233.0kg、テトラヒドロフラン(THF)42.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液810mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン17kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は51℃まで上昇した。
(4)内温35℃で、33kgのスチレンと8.5kgのブタジエンを添加し、昇温して重合させた。内温は80℃まで上昇した。
(5)内温50℃で、水1.5gを添加し十分反応させた後、33kgのスチレンと8.5kgのブタジエンを添加し、昇温して重合させた。内温は98℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびスチレンとブタジエンのテーパーブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することにより製造例a1のブロック共重合体を得た。
なお、得られたブロック共重合体の重量平均分子量は、19.3万と8.5万であり、これらの平均は16.8万であった。
【0070】
<製造例a2>
(1)反応容器中にシクロヘキサン233.0kg、テトラヒドロフラン(THF)42.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1200mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン15kgを加え、昇温してスチレンをアニオン重合させた。内温は47℃まで上昇した。
(4)内温40℃で4kgのスチレンと30kgのブタジエンを添加し、昇温し重合させた。内温は97℃まで上昇した。
(5)内温45℃で51kgのスチレンを添加し、昇温し重合させた。内温は88℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびスチレンとブタジエンのテーパーブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することにより製造例a2のブロック共重合体を得た。
なお、得られたブロック共重合体の重量平均分子量は、11.9万であった。
【0071】
<製造例a3>
(1)反応容器中にシクロヘキサン233.0kg、テトラヒドロフラン(THF)42.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn-ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1850mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン20kgを加え、昇温してスチレンをアニオン重合させた。内温は57℃まで上昇した。
(4)内温35℃で60kgのブタジエンを添加し、昇温し重合させた。内温は91℃まで上昇した。
(5)内温40℃で20kgのスチレンを添加し、昇温し重合させた。内温は70℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、およびスチレンとブタジエンのブロックを持つブロック共重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、押出機で溶融ペレット化することにより製造例a3のブロック共重合体を得た。
なお、得られたブロック共重合体の重量平均分子量は、9.2万であった。
【0072】
[ブロック共重合体の分析]
<ビニル芳香族炭化水素単量体単位・共役ジエン単量体単位の含有率>
ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素単量体単位(スチレン)・共役ジエン単量体単位(ブタジエン)の含有率、は、下記のハロゲン付加法により測定、算出した。
(A1) 試料0.2gを完全に溶解することが可能な溶媒(四塩化炭素等)に溶解させた後、ウィイス試薬(0.1mоl/l一塩化よう素・酢酸溶液)を15ml添加し十分反応させ、4%よう化カリウム溶液20mlを添加し、0.1mоl/lチオ硫酸ナトリウム/エタノール溶液で滴定し、二重結合量を算出した。
(A2) (A1)の方法により得られた二重結合量に基づき、ブタジエンの含有率(ゴム分)を算出した。
スチレンの含有率については、試料全体からブタジエンの含有率を差し引いた値をスチレンの含有率として算出した。
【0073】
<重合平均分子量>
ブロック共重合体の重合平均分子量は、下記のGPC測定装置、および条件で測定を実施し、標準ポリスチレンを用いた検量線によるポリスチレン換算分子量として計算した。
装置名:HLC-8220GPC(東ソー社製)
カラム:ShodexGPCKF-404(昭和電工社製)を直列に4本接続
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:2質量%
検量線:標準ポリスチレン(VARIAN社製)を用いて作製した。
【0074】
[共重合体の製造]
以下の操作により、製造例b1~b4の共重合体を製造し、それぞれ表1、2に示す単量体単位の組成で得た。
【0075】
<製造例b1>
撹拌機を付した第1完全混合型反応器、撹拌機を付した第2完全混合型反応器、塔式プラグフロー型反応器、予熱器を付した脱揮槽を直列に接続して構成した。ゴム状重合体としてスチレン-ブタジエンゴム(ブタジエン含有率60%)9質量部を、スチレン51質量部、メタクリル酸メチル(以下MMA)36質量部、アクリル酸n-ブチル(以下n-BA)7.5質量部、エチルベンゼン12質量部で構成される混合溶液に溶解し、さらに1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン0.02質量部、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製IRGANOX1076)を0.2質量部を混合し原料溶液とした。この原料溶液を毎時7kgで温度110℃に制御した第1完全混合型反応器に導入した。第1完全混合型反応器より反応液を連続的に抜き出し、この反応液にn-ドデシルメルカプタン(花王社製チオカルコール20)を毎時3.0g加えた後、温度130℃に制御した第2完全混合型反応器に導入した。なお、第2完全混合型反応器の撹拌数は100rpmで実施した。次いで第2完全混合型反応器より反応液を連続的に抜き出し、この反応液にn-ドデシルメルカプタンを毎時3.0gとジ-t-ブチルパーオキサイド(日本油脂社製パーブチルD、1時間半減期温度144.1℃)を毎時0.7g加えた後、流れの方向に向かって温度130℃から150℃の勾配がつくように調整した塔式プラグフロー型反応器に導入した。この反応液を予熱器で加温しながら、温度240℃で圧力1.0kPaに制御した脱揮槽に導入し、未反応単量体等の揮発分を除去した。この樹脂液をギアポンプで抜き出し、ストランド状に押出し切断することによりペレット形状の樹脂として共重合体を得た。なお、ブロック共重合体と同様に測定した共重合体の重合平均分子量は、13.5万であった。
【0076】
<製造例b2>
ゴム状重合体10質量部を、スチレン36質量部、MMA50質量部、n-BA8質量部、エチルベンゼン12質量部で構成される混合溶液に溶解した以外は製造例b1と同様に行った。なお、ブロック共重合体と同様に測定した共重合体の重合平均分子量は、14.0万であった。
【0077】
<製造例b3>
容積約20Lの完全混合型攪拌槽である第一反応器と容積約40Lの攪拌機付塔式プラグフロー型反応器である第二反応器を直列に接続し、さらに予熱器を付した脱揮槽を2基直列に接続して構成した。4-tert-ブチルカテコールを12ppm含むスチレン47質量部、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノールを4ppm含むMMA53質量部で構成する単量体溶液100質量部に対し、エチルベンゼン15質量部、tert-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.01質量部、n-ドデシルメルカプタン(以下n-DDMと略す)0.01質量部、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.03質量部を混合し原料溶液とした。この原料溶液を毎時6.0kgで127℃に制御した第1反応器に供給した。第一反応器出口での転化率は35質量%であった。第二反応器入り口で単量体溶液85質量部に対して、流れの方向に向かって127℃から155℃の勾配がつくように調整した。第二反応器出口での転化率は85質量%であった。次に予熱器で160℃に加温した後67kPaに減圧した第一脱揮槽に導入し、さらに予熱器で230℃に加温した後1.3kPaに減圧した第二脱揮槽に導入し単量体を除去した。これをストランド状に押出し切断することによりペレット形状の樹脂として共重合体を得た。なお、ブロック共重合体と同様に測定した共重合体の重合平均分子量は、13.5万であった。
【0078】
【0079】
【0080】
[フィルムの製造(実施例1~8、比較例1~3)]
各製造例で得られたブロック共重合体、共重合体、及び他の重合体(ポリスチレン)を用いて、表2~3の配合に基づいた組成物により各層が構成されるように多層シートを作製した。多層シートは、第1層(中間層)の両方の面に直接第2層(表層)が形成された2種3層構造となるように作製された。Tダイ方式の多層押出機を用いて全体厚みが140μmとなるシートを押し出し成型した。多層シート成膜機を出たシートは、直ぐに逐次延伸装置の縦延伸機に送られ、90℃でMD方向に1.1倍、100℃でTD方向に4.5倍延伸し、熱収縮性多層フィルムを得た。
【0081】
なお、ポリスチレン(PS)は、G-200C(東洋スチレン社製)を用いた。
【0082】
[フィルムの測定・評価]
得られた多層フィルムの厚さ(総厚、各層の体積比)及び物性に関する測定・評価について、表1、表2に示す。総厚はマイクロメーターを用いて測定した。また、各層の体積比はシート断面のTEM画像より、厚さに基づき算出した。
【0083】
<中間層の曲げ弾性率>
フィルム成型前のブロック共重合体のペレットを用い、射出成型機により厚さ4mmtのISOダンベル試験片を作製した。このダンベル片を用いてISO178に準拠して、曲げ速度2mm/min、相対湿度50%、雰囲気温度23℃の条件で測定した。
【0084】
<製膜安定性>
製膜安定性ついて、下記の基準で評価した。評価が「良」であれば、フィルム製造は可能であり、外観上も問題無い。
良:フィルム製造時の破断やシートの外観不良が発生しない
不良:フィルム製造時の破断や外観不良が発生
【0085】
<層間剥離>
フィルムの表層にスクラッチペンで切り込みを入れ、その上からテープを貼り、テープを剥がしたときの表層の剥離の有無を観察した。
無:表層の剥離はなく、中間層との接着強度は良好であった
有:表層が剥離し、中間層との接着強度は不十分であった
【0086】
<鉛筆硬度>
各表面の鉛筆硬度を、JIS K5600-5-4:1999[引っかき硬度(鉛筆法)]に準拠した方法によって測定した。
(各重合体)
各製造例の重合体を用いて積層せずに作製したシート状の試験片の表面の鉛筆硬度を測定した。
(中間層)
中間層(第1層)を構成する組成物を調整し、積層せずに当該組成物を用いて作製したシート状の試験片の表面の鉛筆硬度を測定した。
(フィルム・表層)
多層フィルムの表面(第2層の表面)の鉛筆硬度を測定し表層の鉛筆硬度とした。
【0087】
<100℃10秒熱収縮率>
フィルムの熱収縮率は、下記の方法で測定した。
(1)延伸して得られたフィルムから、MD幅が100mm、TD幅が100mmの試験片を切り出した。
(2)この試験片を100℃の温水中に、10秒間、完全に浸漬させた後、取り出し、水分を十分に拭き取り、TDの長さL(mm)を測定した。
(3)次式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)={(100-L)/100}×100
【0088】
<インパクト強度>
フィルムのインパクト強度は、ASTM D3420に準拠し、下記の方法で測定した。
(1)熱収縮性フィルムから、MDが100mm、TDが100mmの試料片を切り出した。
(2)テスター産業株式会社製 インパクトテスターを使用し、切り出した試料片を測定台に挟み込み、トルク3N・m、振り子先端直径25mm、測定温度23℃でフィルムを打ち抜き、装置に表示されるインパクト強度を読み取り、フィルム厚みで除して単位厚みのインパクト強度(kJ/m)を算出した。
【0089】
<摩耗性試験>
(1)熱収縮フィルムから、MDが200mm、TDが35mmの短冊状の試料片を切り出した。
(2)テスター産業(株)製の学振型摩擦堅牢度試験機を使用し、試験片台に切り出した熱収縮フィルムを貼り付け、摩擦子に20mm×20mmの段ボール片を貼り付けた。500gの荷重をかけて、熱収縮フィルムと段ボール片が接するように、振幅120mm、1周期2秒の条件で、往復1000回擦り合わせた。試験中のフィルムの破断の有無を判断し、以下の基準で評価した。
○:1000サイクルで切れ・破れが発生しなかった
×:1000サイクル未満において切れ・破れが発生した