(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020979
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法、熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20250205BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20250205BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20250205BHJP
C09K 21/14 20060101ALI20250205BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20250205BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
C08G18/00 K
C08G18/10
C08G18/08 038
C09K21/14
C09K21/02
E04B1/94 T
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124638
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
【テーマコード(参考)】
2E001
4H028
4J034
【Fターム(参考)】
2E001DE04
2E001HA00
2E001HB06
2E001HD11
4H028AA03
4H028AA42
4H028AB03
4H028BA01
4J034BA03
4J034CA04
4J034CB03
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC23
4J034CC26
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4J034DF01
4J034DF02
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4J034DF14
4J034DF24
4J034DG03
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4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HC03
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4J034HC17
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4J034HC46
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4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034MA02
4J034MA04
4J034NA02
4J034QB01
4J034QB14
4J034QB17
4J034QC01
4J034RA08
4J034RA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、熱膨張性、熱膨張後形状安定性、及び柔軟性に優れる熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物を提供する。
【解決手段】本発明によれば、ウレタン化合物100質量部に対し、熱膨張性黒鉛5~100質量部、珪酸ナトリウム0.5~30質量部を含む、請求項1記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン化合物100質量部に対し、熱膨張性黒鉛5~100質量部、珪酸ナトリウム0.5~30質量部を含む、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物。
【請求項2】
ウレタン化合物は、ウレタンプレポリマーを含むか、又はウレタンプレポリマーに由来する構造を含む、請求項1記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物。
【請求項3】
前記熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物を、30mm幅×30mm長×10mm高の寸法の直方体に成形した試験片は、30mm幅×30mm長の両面である第1面及び第2面を、加重1kgでのショアE硬度を21℃の環境下でJIS K6253に準じて測定した前記第1面のショアE硬度と前記第2面のショアE硬度に基づき下記式により表される2つの硬度の差の絶対値である硬度差が5未満である、請求項1に記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物。
硬度差=|(第1面のショアE硬度)―(第2面のショアE硬度)|
【請求項4】
熱膨張性黒鉛を分散した珪酸ナトリウム水溶液に、イソシアネート化合物を配合する工程を備える、請求項1~請求項3の何れか1つに記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法。
【請求項5】
防火用目地材に使用される、請求項1~請求項3の何れか1つに記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法、熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材に関する。熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材は、例えば、防火区画体に設けられた貫通口の隙間の一部もしくは全部、または建造物の免震装置と耐火パネルの間もしくはその耐火パネルの端部などに使用される。
【背景技術】
【0002】
防火区画体を貫通する電力ケーブル、通信ケーブル等のケーブル類や空調設備等の配管類と防火壁の間には目地材として防火用膨張材料が使用されてきている。防火用膨張材料は、火災時加熱により膨張して膨張層を形成し、これにより防火区画体にある貫通口の隙間を閉塞して火災の延焼防止を図るものである。このため防火用膨張材料からなる防火用目地材では、特に膨張層の形成後、膨張層が炎熱によって容易に形崩れを起こさず、所定の形状を出来るだけ長時間保持できることが要求される。
【0003】
弾性・柔軟性に優れた防火用膨張材料として、耐火性を付与したポリウレタンの製造方法が開示されている(特許文献1)。これは、ポリオールとポリイソシアネートに、難燃剤として膨張性黒鉛を配合し、粉末状カゼインを形状の安定化剤として使用することを特徴としている。
【0004】
また、軟質ウレタンフォーム、エポキシ樹脂、熱膨張性黒鉛からなる防火用目地材が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平03-504738
【特許文献2】特開2006-070155
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、耐火性能としては単に材料自体が燃えにくいばかりでなく、火炎が部材の裏側に回らないような性能(例えば、火災発生時には熱膨張し、防火壁と電源ケーブル等の隙間を閉塞させて火炎の流入を防止する等)、すなわち防火性能も要求されている。
【0007】
特許文献1、2等では300℃を超える温度になると膨張後の形状安定効果がなくなるという課題があった。一方で、目地等の隙間を埋めるために柔軟性を有する必要があった。
【0008】
本発明は、前記の従来技術の問題点を解消し、熱膨張性、熱膨張後形状安定性、及び柔軟性に優れる熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物、当該熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法、当該熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物による熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の組成を有する熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]ウレタン化合物100質量部に対し、熱膨張性黒鉛5~100質量部、珪酸ナトリウム0.5~30質量部を含む、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物。
[2]ウレタン化合物は、ウレタンプレポリマーを含むか、又はウレタンプレポリマーに由来する構造を含む、[1]記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物。
[3]前記熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物を、30mm幅×30mm長×10mm高の寸法の直方体に成形した試験片は、30mm幅×30mm長の両面である第1面及び第2面を、加重1kgでのショアE硬度を21℃の環境下でJISK6253に準じて測定した前記第1面のショアE硬度と前記第2面のショアE硬度に基づき下記式により表される2つの硬度の差の絶対値である硬度差が5未満である、[1]又は[2]に記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物。硬度差=|(第1面のショアE硬度)―(第2面のショアE硬度)|
[4]熱膨張性黒鉛を分散した珪酸ナトリウム水溶液に、イソシアネート化合物を配合する工程を備える、[1]~[3]の何れか1つに記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法。
[5]防火用目地材に使用される、[1]~[3]の何れか1つに記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱膨張性、熱膨張後形状安定性、及び柔軟性に優れる熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物が得られる。このような熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物を目地材として用いた場合には、優れた防火性能が期待される。例えば、このような熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物は、柔軟であることから目地等の隙間を効果的に埋めることができ、また火災時、熱膨張性黒鉛が膨張層を形成し、珪酸ナトリウムの形状保持性能による形状保持効果で長時間(例えば、0.5時間)高温下にさらされても脆弱化しにくく安定した防火性能が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例におけるウレタンフォーム組成物からの試料片の切出し方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0014】
1.熱膨張性ウレタンフォームの組成
本発明の一実施形態に係る熱膨張性ウレタンフォーム組成物(以下、ウレタンフォーム組成物)は、ウレタン化合物、熱膨張性黒鉛、珪酸ナトリウム、を含有する。
【0015】
<ウレタン化合物>
ウレタン化合物は、ウレタン結合を有する化合物である。ウレタン化合物は、ウレタンフォーム(発泡体)を形成していることが好ましい。ウレタンフォームは、例えば、ウレタン原料と発泡剤を反応させることで得られる。例えば、ウレタン原料のイソシアネート基と水が反応することにより二酸化炭素が発生し、これにより発泡した結果ウレタンフォームが得られる。ウレタンフォームは、好ましくは、発泡倍率が2~20倍であり、密度が120~500kg/m3である。
【0016】
ウレタン原料は、イソシアネート化合物を含む。ウレタン化合物は、イソシアネート化合物を含むか、又はイソシアネート化合物に由来する構造を含む。ウレタン化合物は、好ましくは、ウレタンプレポリマーを含むか、又はウレタンプレポリマーに由来する構造を含む。
【0017】
<イソシアネート化合物>
イソシアネート化合物は、例えば、イソシアネート基を2つ以上有する化合物である。イソシアネート化合物は、イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート、及び、ポリオールと過剰なポリイソシアネートを反応させて得られる高分子であって分子末端にイソシアネート基を有する化合物(ウレタンプレポリマー)からなる群から選択される1種以上を含む。イソシアネート化合物は、
【0018】
ウレタン原料は、イソシアネート化合物に加えて、ポリオールを含んでいてよい。ウレタン原料は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールを含むことができる。ウレタン原料が複数の成分を含む場合には、一部の成分又は全ての成分について反応系中で混合するようにしてもよい。
【0019】
ウレタン原料としてポリイソシアネートとポリオールが添加される場合、ポリイソシアネート100質量部に対し、例えばポリオールを10~200質量部添加することができ、ポリオールを50~150質量部添加することが好ましい。ポリオールの添加量は、具体的には例えば、ポリイソシアネート100質量部に対し、50,60,70,80,90,100,110,120,130,140,150,160,170,180,190,200質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
<ポリイソシアネート>
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族イソシアネート、脂環族イソシアネート、脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
【0021】
芳香族イソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
脂環族イソシアネートとしては、例えば、シクロへキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロへキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0023】
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
ポリイソシアネートは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0025】
<ウレタンプレポリマー>
ウレタンプレポリマーとは、ポリオールと過剰なポリイソシアネートを反応させて得られる高分子で、分子末端にイソシアネート基を有する化合物である。
【0026】
<ポリオール>
ポリオールとしては、例えばポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0027】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。
【0028】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物と、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0029】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
【0030】
脂環族ポリオールとしては、例えばシクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロへキシルメタンジオール、ジメチルジシクロへキシルメタンジオール等が挙げられる。
【0031】
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0032】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
【0033】
ポリマーポリオールとしては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、多価アルコールの変性ポリオールまたは、これらの水素添加物等が挙げられる。
【0034】
ポリエーテルポリオ-ルとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも一種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
【0035】
ポリオールは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0036】
<発泡剤>
発泡剤は、ウレタンの発泡を促進する。発泡剤としては、トランス-1-クロロ-3,3,3- トリフルオロプロペン等の炭素数3または4のハイドロフルオロオレフィン、水が挙げられる。この中で、珪酸ナトリウムが溶解しやすい水が好ましい。
【0037】
<熱膨張性黒鉛>
熱膨張性黒鉛は、天然グラファイト、熱分解グラファイト等の粉末を、硫酸、硝酸等の無機酸と濃硝酸、過マンガン酸塩等の強酸化剤とで処理されたものであり、グラファイト層状構造を維持した結晶化合物である。これらは200℃程度以上の温度に曝されると、例えば、100倍以上に熱膨張するものである。なお、これら天然グラファイト、熱分解グラファイト等の粉末は、脱酸処理に加え、更に中和処理したタイプ他、各種品種があるがいずれも使用できる。
【0038】
熱膨張性黒鉛の含有量は、ウレタン化合物100質量部に対して5~100質量部であり、20~85質量部が好ましく、35~70質量部がさらに好ましい。熱膨張性黒鉛の含有量は、ウレタン化合物100質量部に対して、具体的には例えば、5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。熱膨張性黒鉛の含有量が20質量部未満であると、火災時における耐火材の熱膨張性が悪くなる。一方で、熱膨張性黒鉛の含有量が100質量を超えると、熱膨張性耐火材の熱膨張後の形状安定性が悪くなる。
【0039】
<珪酸ナトリウム>
珪酸ナトリウム自体は固体であるが、その水溶液は水ガラスとも呼ばれるアルカリ性の粘性液体であり、二酸化珪素(SiO2)、酸化ナトリウム(Na2O)、水(H2O)の3成分の比により、1号から5号の5種類がある。珪酸ナトリウムは、形状保持材として機能することができ、珪酸ナトリウムを適量配合することによって、熱膨張後の形状安定性を向上することができる。なお、珪酸ナトリウムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
珪酸ナトリウムの含有量は、ウレタン化合物100質量部に対し、0.5~30質量部であり、好ましくは5~25質量部であり、より好ましくは10~20質量部である。珪酸ナトリウムの含有量は、ウレタン化合物100質量部に対して、具体的には例えば、0.5,1,5,10,15,20,25,30であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。珪酸ナトリウムの含有量が0.5質量部未満の場合は、熱膨張後の形状安定性が悪い。珪酸ナトリウムの含有量が30質量部を超えると、硬度が高くなってしまうことにより熱膨張性が悪くなる。
【0041】
熱膨張性ウレタンフォーム組成物は、特性を損なわない範囲で、必要に応じて他の添加剤を配合することもできる。例えば、無機化合物、界面活性剤、整泡剤、触媒、発泡剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、等である。
【0042】
また、シリカやアルミナなどの繊維を使用した無機系シートを積層させてもよい。
【0043】
熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物を、30mm幅×30mm長×10mm高の寸法の直方体に成形した試験片は、30mm幅×30mm長の両面である第1面(上面)及び第2面(下面)を、加重1kgでのショアE硬度を21℃の環境下でJIS K6253に準じて測定した場合の第1面のショアE硬度と第2面のショアE硬度はそれぞれ、例えば25未満であり、好ましくは20未満であり、より好ましくは15未満である。
【0044】
第1面のショアE硬度と第2面のショアE硬度に基づき下記式により表される2つの硬度の差の絶対値である硬度差は、好ましくは5未満であり、より好ましくは3未満であり、さらに好ましく1未満である。このような硬度差が小さい熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物は、例えば後述の水ガラス反応による製造方法によって得ることができる。
硬度差=|(第1面のショアE硬度)―(第2面のショアE硬度)|
【0045】
なお、上記硬度差に係る硬度を測定するための試験片は、例えば後述の実施例に記載の方法によって準備することができる。
【0046】
(製造方法:水ガラス反応)
本発明の一実施形態に係る熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法は、熱膨張性黒鉛を分散した珪酸ナトリウム溶液(好ましくは、珪酸ナトリウム水溶液)に、イソシアネート化合物を配合する配合工程を備える。当該配合工程では、添加や撹拌等を伴う配合により発泡成形が行われる。なお、イソシアネート化合物100質量部に対し、珪酸ナトリウム溶液に含まれる(発泡剤、例えば水)の含有量は、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは50~500質量部であり、さらに好ましくは80~200質量部である。
【0047】
また、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法は、熱膨張性黒鉛、珪酸ナトリウムの混合物に、溶媒(好ましくは、水)を配合し熱膨張性黒鉛を分散させた珪酸ナトリウム溶液を調製する調製工程をさらに備えることができる。
【0048】
また、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法は、発泡成形後のウレタンフォーム組成物(発泡体)を乾燥させる乾燥工程を備えることができる。乾燥工程は、例えば70~100℃(一例においては80℃)で行われうる。
【0049】
(製造方法:水ガラス含浸)
また、本発明の別の側面によれば、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法は、熱膨張性黒鉛を分散した混合液(好ましくは、熱膨張性黒鉛を水に分散させた混合液)に、イソシアネート化合物を配合する配合工程と、配合工程出られた発泡体(ウレタンフォーム)に珪酸ナトリウム溶液(好ましくは、珪酸ナトリウム水溶液)を含浸させる含浸工程と、を備える。
【0050】
配合工程では、添加や撹拌等を伴う配合により発泡成形が行われる。なお、イソシアネート化合物100質量部に対し、混合液に含まれる発泡剤(例えば、水)の含有量は、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは50~500質量部であり、さらに好ましくは80~200質量部である。
【0051】
また、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法は、発泡成形後のウレタンフォーム組成物(発泡体)を乾燥させる第1乾燥工程を備えることができる。また、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法は、含浸後のウレタンフォーム組成物(含浸発泡体)を乾燥させる第2乾燥工程を備えることができる。これらの乾燥工程は、例えば70~100℃(一例においては80℃)で行われうる。
【0052】
2.熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材
本発明の一実施形態に係る熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材は、上記熱膨張性ウレタンフォーム組成物を用いた防火用目地材である。熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材は、上記熱膨張性ウレタンフォーム組成物から構成されうる。当該熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材は、その弾性、柔軟性、熱膨張性、断熱性、耐火性、制振性、防音性等の特性が要求される様々な分野に利用できるが、防火膨張性材料を用いる公知の工法にも適用でき、各工法における使用方法に従って用いればよい。使用部位も特に制限されず、防火性が要求される箇所に幅広く用いることができる。
【0053】
熱膨張性耐火ウレタンフォーム目地材材は、防火区画体に設けられた貫通口の隙間の一部もしくは全部を閉塞するために用いられる。また、建造物の免震装置の防火部位にも好適に用いられる。具体的には、防火壁、床スラブ等の防火区画体に設けられた貫通口を通る電源ケーブルや通信ケーブル、パイプ等と防火壁の隙間を本発明の防火用目地材で被覆したり、施工部分に適合する形状に成形したガスケットを装着して用いたりすることが出来る。また、本防火用目地材は、免震装置本体とそれを覆う耐火パネルの間もしくはその耐火パネルの端部に使用され、粘着剤や接着剤で貼り付けたり、ボルトや釘などで固定したりして用いられる。
【実施例0054】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。なお、以下の説明における部及び%は質量基準に基づく。
【0055】
<珪酸ナトリウム水溶液反応によるウレタンフォーム組成物の作製>
(A:イソシアネート化合物としてポリイソシアネートを用いた場合[実施例4~5]
)
表1~3に示す配合量で、熱膨張性黒鉛、珪酸ナトリウムの混合物に、水を配合して熱膨張性黒鉛混合珪酸ナトリウム水溶液を調製した。
この水溶液にポリイソシアネートおよびポリオール(表中のウレタン原料100質量部は、ポリイソシアネート50質量部、ポリオール50質量部を含む)を加えて攪拌し、直径10cm×高さ15cmの円筒状型に注入して発泡成形させ、型と共にオーブン中80℃で3日間静置することにより、水分を蒸発させてウレタンフォーム組成物の試料原体を得た。なお、水の量は、ポリイソシアネート50質量部に対し100質量部とした。
(B:イソシアネート化合物としてウレタンプレポリマーを用いた場合[実施例6~24、比較例1~4])
表1~3に示す配合量で、熱膨張性黒鉛、珪酸ナトリウムの混合物に、水を配合して熱膨張性黒鉛混合珪酸ナトリウム水溶液を調製した。
この水溶液にウレタンプレポリマーを加えて攪拌し、直径10cm×高さ15cmの円筒状型に注入して発泡成形させ、型と共にオーブン中80℃で3日間静置することにより、水分を蒸発させてウレタンフォーム組成物の試料原体を得た。なお、水の量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対し200質量部とした。
(A、B共通:試料片の切出し)
その後、
図1に示すように各試料原体の上面から75mmの位置で横方向に半裁し、半裁面の円の中心部分から30mm幅×30mm長×10mm高の寸法の試料片を採取した。
【0056】
<珪酸ナトリウム水溶液含浸によるウレタンフォーム組成物の作製[実施例1~3]>
表1~3に示す配合量で、熱膨張性黒鉛に水を加えて熱膨張性黒鉛含有水溶液を調整した。
この水溶液にウレタンプレポリマーを加えて攪拌し、直径10cm×高さ15cmの円筒状型に注入して発泡成形させ、型と共にオーブン中80℃で3日間静置することにより、水分を蒸発させてウレタンフォーム組成物の試料原体を得た。
その後、試料原体の上面から75mmの位置で横方向に半裁し、半裁面の円の中心部分から30mm幅×30mm長×10mm高の寸法の試料を採取し、珪酸ナトリウム水溶液(固形分濃度40重量%、水ガラス2号)に21℃の環境下にて24時間浸し、取り出し後30mm幅×30mm長さの一面を下側にし、オーブン中80℃で3日間静置することにより、水分を蒸発させて試料片を得た。
なお、珪酸ナトリウム含有質量部は、珪酸ナトリウム水溶液浸漬前と浸漬乾燥後の重量を測定することで算出した。また、熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物を作製するうえでのウレタンプレポリマー配合量と、水の配合量は、質量比で同量(ウレタンプレポリマー:水=100質量部:100質量部)とした。
【0057】
実施例および比較例において使用した材料は、それぞれ以下に示したものである。なお、実施例/比較例における珪酸ナトリウム量は、水を含まない固形分換算による値である。
【0058】
<ポリイソシアネート>
・トルエン-2,4-ジイソシアネート:三井化学株式会社製「コスモネートT100」
・ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン:三井化学株式会社製「コスモネートPH」
<ポリオール>
・ポリエーテルポリオール:三洋化成工業株式会社製「サンニックスFA-195」
<ウレタンプレポリマー>
・ポリエーテル系:三井化学株式会社製「ハイプレンEGH-401」
・ポリエーテル系:三井化学株式会社製「ハイプレンL-80」
・ポリエステル系:三井化学株式会社製「タケネートL-1270」
<熱膨張性黒鉛>
・熱膨張性黒鉛:エア・ウオーター・ケミカル株式会社製「SS-3」
<珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス)>
・1号:SiO2 33%、Na2O 16%、H2O 51%、富士化学株式会社製
・2号:SiO2 28%、Na2O 12%、H2O 60%、富士化学株式会社製
・3号:SiO2 29%、Na2O 10%、H2O 61%、富士化学株式会社製
・4号:SiO2 25%、Na2O 8%、H2O 67%、富士化学株式会社製
・5号:SiO2 26%、Na2O 7%、H2O 67%、富士化学株式会社製
<発泡剤>
・水
【0059】
実施例及び比較例において下記の各特性を評価し、表1~3にまとめた。各特性の測定方法を以下に示す。
【0060】
<硬度>
実施例及び比較例の試料片を、縦30mm×横30mm×厚み10mmの試験片とし、その縦30mm×横30mm面の両面である第1面(上面)及び第2面(下面)を、加重1kgでのショアE硬度を21℃の環境下でJIS K6253に準じて測定した。そして、測定値に基づいて、硬度を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:ショアE硬度が15未満である。
○:ショアE硬度が15以上、20未満である。
△:ショアE硬度が20以上、25未満である。
×:ショアE硬度が25以上である。
【0061】
<硬度均一性>
第1面のショアE硬度と第2面のショアE硬度に基づき下記式により表される2つの硬度の差の絶対値である硬度差を算出し、以下の評価基準で硬度均一性を判定した。
硬度差=|(第1面のショアE硬度)―(第2面のショアE硬度)|
〔評価基準〕
◎:硬度差が3未満である。
○:硬度差が3以上、5未満である。
△:硬度差が5以上、12未満である。
×:硬度差が12以上である。
【0062】
<熱膨張性>
実施例及び比較例の試料片を、縦30mm×横30mm×厚み10mmの試験片とし、これを600℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後の体積を測定し、その体積から膨張倍率を算出した。そして、体積膨張倍率に基づいて、熱膨張性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:体積膨張倍率が6倍以上である。
○:体積膨張倍率が4倍以上、6倍未満である。
△:体積膨張倍率が2倍以上、4倍未満である。
×:体積膨張倍率が2倍未満である。
【0063】
<熱膨張後の形状安定性>
実施例及び比較例の試料片を、縦30mm×横30mm×厚み10mmの試験片とし、これを600℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後、3点曲げ試験治具(上部押し側先端R1mmおよび幅80mm、下部2点支点側R1mm、幅80mm、支点間距離20mm)を用い、試験片を圧縮速度50mm/minの条件にて破壊した際の強度(3点曲げ破壊強度)を測定した。ここで、3点曲げ破壊強度が大きいほど、熱膨張後の形状安定性がよいことを示す。そして、3点曲げ破壊強度に基づいて、熱膨張後の形状安定性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:3点曲げ破壊強度が3.0[N]以上である。
○:3点曲げ破壊強度が2.0[N]以上、3.0[N]未満である。
△:3点曲げ破壊強度が1.0[N]以上、2.0[N]未満である。
×:3点曲げ破壊強度が1.0[N]未満である。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
珪酸ナトリウム水溶液含浸により珪酸ナトリウム水溶液(水ガラス)を含浸させたウレタンフォーム組成物は、含浸した珪酸ナトリウムが重力で発泡体の下方に溜まってしまい、珪酸ナトリウム水溶液反応によるものに比べ硬度均一性が乏しく、かつ熱膨張性が悪くなってしまう傾向にあった。
前記熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物を、30mm幅×30mm長×10mm高の寸法の直方体に成形した試験片は、30mm幅×30mm長の両面である第1面及び第2面を、加重1kgでのショアE硬度を21℃の環境下でJIS K6253に準じて測定した前記第1面のショアE硬度と前記第2面のショアE硬度に基づき下記式により表される2つの硬度の差の絶対値である硬度差が5未満である、請求項1に記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物。
硬度差=|(第1面のショアE硬度)―(第2面のショアE硬度)|
熱膨張性黒鉛を分散した珪酸ナトリウム水溶液に、イソシアネート化合物を配合する工程を備える、請求項1~請求項3の何れか1つに記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物の製造方法。
前記熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物を、30mm幅×30mm長×10mm高の寸法の直方体に成形した試験片は、30mm幅×30mm長の両面である第1面及び第2面を、加重1kgでのショアE硬度を21℃の環境下でJIS K6253に準じて測定した前記第1面のショアE硬度と前記第2面のショアE硬度に基づき下記式により表される2つの硬度の差の絶対値である硬度差が5未満である、請求項2に記載の熱膨張性耐火ウレタンフォーム組成物。
硬度差=|(第1面のショアE硬度)―(第2面のショアE硬度)|