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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025020992
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 1/32 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
B63B1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124659
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】502055377
【氏名又は名称】商船三井テクノトレード株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000144049
【氏名又は名称】株式会社三井造船昭島研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000205535
【氏名又は名称】株式会社 商船三井
(71)【出願人】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】池田 剛大
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】福田 紘大
(57)【要約】
【課題】 斜め向かい風に対する風圧抵抗を効果的に低減すると共に、推力を発生することを可能にした船舶を提供する。
【解決手段】 船体1の前方に位置する船首部2と、該船首部2に繋がる上甲板3と、該上甲板3の両側に位置して船首部2に繋がる一対の船側部4,4とを有する船舶において、船首部2は、船体1の垂直断面P1において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第1輪郭線C1を形成し、船体1の水平断面P2において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第2輪郭線C2を形成する湾曲面を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の前方に位置する船首部と、該船首部に繋がる上甲板と、該上甲板の両側に位置して前記船首部に繋がる一対の船側部とを有する船舶において、
前記船首部は、前記船体の垂直断面において、前記船体の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第1輪郭線を形成し、前記船体の水平断面において、前記船体の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第2輪郭線を形成する湾曲面を有することを特徴とする船舶。
【請求項2】
前記船首部の湾曲面は、前記船体の横断面において、前記船体の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第3輪郭線を形成することを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記船首部の湾曲面は、前記船体の中心線と平行であって前記垂直断面に対して傾斜する断面において、前記船体の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第4輪郭線を形成することを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記上甲板と前記船側部の各々とを繋ぐガンネル部は、前記船体の横断面において、前記船体の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第5輪郭線を形成する湾曲面を有することを特徴とする請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
前記上甲板は平面で構成されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の船舶
【請求項6】
前記船首部は、その最前面に前記船舶の中心線に対して直交する平面からなるフラット部を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風圧抵抗の少ない船舶に関し、更に詳しくは、斜め向かい風に対する風圧抵抗を効果的に低減すると共に、推力を発生することを可能にした船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
水上を走行する商船の殆どの船舶においては、船舶の水面下の船体形状の工夫による抵抗の低減や船体とプロペラと舵等の関係による推進性能の向上が求められ、また、水面付近での波による造波抵抗や破波抵抗についても船首形状や船尾形状の工夫により抵抗の低減が図られている。
【0003】
一方,水面上で生じる空気抵抗、即ち、風圧抵抗に関しても改善の要求があり、様々な努力がなされている。特に、乾舷が高く風圧面積が大きい自動車運搬船(自動車専用船)や上部構造部が大きい旅客船等は水面上の風圧面積が大きいため、風圧の影響を受け易く、風圧抵抗の低減は省エネルギーに繋がるので、大きな期待が寄せられている。
【0004】
これに関連して、上甲板上に設けた上部構造物の船尾側の形状、または、水面上の船体の船尾側の形状の少なくとも一方の水面上構造物の形状を、この水面上構造物の上下方向の範囲のうちで少なくとも0%~50%の範囲における、水面に平行な各断面の形状において、最大幅Bの船尾側最後部を下辺とし、該下辺の長さB1を0.9×Bとし、底角θ1を40deg~80degとし、上辺の長さB2を0.5×Bとする等脚台形よりも外側の範囲で、かつ、最大幅Bの船尾側最後部を底辺とし、該底辺の長さB3を1.2×Bとし、底角θ2を40deg~80degとする二等辺三角形よりも内側の領域に入るように形成した風圧抵抗の少ない船舶が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような風圧抵抗の少ない船舶では、水面上の風圧面積が比較的大きく、風圧力の影響を受け易い自動車運搬船、コンテナ船、客船などの風圧力の影響を低減することができて、船舶の運航性能を向上することを目的としているが、主に正面からの向かい風に関して、水面上構造物の後方において、死水領域に生じる停滞渦やカルマン渦のような流出渦の発生を防止する形状を提案している。
【0006】
また、船の進行方向への空気力学的揚力を相対風により発生し、船殻が帆として機能するように、水面上の船穀の形状を対称形のNACA翼型の空中翼とし、船尾側となる後縁をカットオフして、船殻の前後方向に垂直な断面としている船殻が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この船殻では、約13から39度の風のセクターで船の移動方向に作用する風力の成分が得られたとの風洞試験の結果を開示している。
【0007】
このように船舶の進行方向の正面からの向かい風だけではなく、船舶が航行する航路や航行時の気象条件により、斜め向かい風に対しても風圧抵抗の減少を図ることが重要視されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-57052号公報
【特許文献2】特表2014-501194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、斜め向かい風に対する風圧抵抗を効果的に低減すると共に、推力を発生することを可能にした船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の船舶は、船体の前方に位置する船首部と、該船首部に繋がる上甲板と、該上甲板の両側に位置して前記船首部に繋がる一対の船側部とを有する船舶において、
前記船首部は、前記船体の垂直断面において、前記船体の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第1輪郭線を形成し、前記船体の水平断面において、前記船体の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第2輪郭線を形成する湾曲面を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明者は、船舶の形状について鋭意研究した結果、船体が特定の断面においてクロソイド曲線を含む輪郭線を形成する湾曲面を有することにより、航行時に受ける風を船体に沿ってスムーズに誘導し、風の流れを上甲板に貼り付かせて風下側の剥離や渦の発生を減らせるのみならず、負圧を発生させ、その負圧が推力を発生させることを知見し、本発明に至ったのである。
【0012】
即ち、本発明では、船首部は、船体の垂直断面において、船体の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第1輪郭線を形成し、船体の水平断面において、船体の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第2輪郭線を形成する湾曲面を有することにより、航行時に受ける風を船体に沿ってスムーズに誘導し、風の流れを上甲板に貼り付かせて風下側の剥離や渦の発生を低減することができる。これにより、特に斜め向かい風に対する風圧抵抗を効果的に低減することができる。また、上述のクロソイド曲線を含む湾曲面を有する船首部を設けた場合、上甲板上の風を増速することができる。その結果、正面風の時には有効な抵抗削減効果をもたらし、斜め向かい風や横風を受けた際には、その風力を最大限に推力に変換することができる。
【0013】
本発明において、船首部の湾曲面は、船体の横断面において、船体の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第3輪郭線を形成することが好ましい。また、船首部の湾曲面は、船体の中心線と平行であって垂直断面に対して傾斜する断面において、船体の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第4輪郭線を形成することが好ましい。これにより、斜め向かい風のスムーズな抜けをもたらし、斜め向かい風に対する風圧抵抗をより効果的に低減することができる。更に、斜め向かい風や横風を受けた際には、上甲板上の風が増速することにより、風下側への淀みがなくなって抵抗が減り、その結果、風力を最大限に推力に変換することができる。
【0014】
上甲板と船側部の各々とを繋ぐガンネル部は、船体の横断面において、船体の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第5輪郭線を形成する湾曲面を有することが好ましい。これにより、航行時に受ける風を船体に沿ってスムーズに誘導し、風の流れを上甲板に貼り付かせて風下側の剥離や渦の発生を低減し、横風や斜め向かい風に対する風圧抵抗を効果的に低減することができる。また、上述のクロソイド曲線を含む湾曲面を有する船首部と共に上述のクロソイド曲線を有するガンネル部を設けた場合、数値流体力学(CFD)に基づく計算によれば、斜め向かい風や横風を受けた際の上甲板上の風を、船に入ってくる相対風速(自船の速度と自然風の合力)に対して約2割増速することができる。その結果、斜め向かい風や横風を受けた際には、その風力を最大限に推力に変換することができる。
【0015】
上甲板は平面で構成されることが好ましい。これにより、航行時に受ける風を船体に沿ってスムーズに誘導し、風の流れを上甲板に貼り付かせて風下側の剥離や渦の発生を低減し、横風や斜め向かい風に対する風圧抵抗を効果的に低減することができる。
【0016】
船首部は、その最前面に船舶の中心線に対して直交する平面からなるフラット部を有することが好ましい。このようなフラット部は斜め向かい風を受けた際に風の導入部として働いて翼の見掛け上のキャンバーとして機能するので、推力の増大に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態からなる船舶を示す前方斜視図である。
図2図1の船舶を示す側面図である。
図3図1の船舶の各部における輪郭線を示す斜視図である。
図4】船体の垂直断面における船首部の第1輪郭線を示す断面図である。
図5】船体の水平断面における船首部の第2輪郭線を示す断面図である。
図6】船体の横断面における船首部の第3輪郭線を示す断面図である。
図7】船体の中心線と平行であって垂直断面に対して傾斜する断面における船首部の第4輪郭線を示す断面図である。
図8】船体の横断面におけるガンネル部の第5輪郭線を示す断面図である。
図9図1の船舶に対する風の流れを示す前方斜視図である。
図10】本発明の他の実施形態からなる船舶を示す前方斜視図である。
図11図10の船舶を示す側面図である。
図12図10の船舶の各部における輪郭線を示す斜視図である。
図13】船首部において生じる推力を示し、(a)は船首部がフラット部を持たない場合の平面図であり、(b)は船首部がフラット部を有する場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図8は本発明の実施形態からなる船舶を示すものである。なお、図1図8に示す船舶は自動車運搬船(自動車専用船)を例示するものであるが、本発明は所定の要件を満足するものであれば、その用途が特に限定されるものではなく、客船やフェリー等への適用も可能である。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態の船舶は、全長が例えば40m~400mの範囲にある船体1から構成されている。船体1は、その前方に位置する船首部2と、船首部2から連続する上甲板3と、上甲板3の両側に位置して船首部2から連続する一対の船側部4,4とを有している。
【0020】
船体1は、船首から船尾にわたって、自動車を固定して搬送するために、その内部に階層構造を有する複数の甲板(不図示)を備えている。また、船体1の船尾には、自動車の荷役を行うためのランプウェイ用の開口部とその扉(不図示)が設けられている。上甲板3上には、煙突5等が配設されているが、船橋や居住区等の船楼は設置されていない。この船舶では、船橋(不図示)や居住区(不図示)が上甲板3よりも下側に配設され、上甲板3上からは突出した構造物が可及的に排除されている。船体1の船尾側の下部には、図2に示すように、プロペラ6と舵7が配設されている。ここでは1軸1舵となっているが、これに限定されることはなく、2軸2舵のような多軸船であっても良い。
【0021】
上述のように構成される船舶において、図3に示すように、船首部2は湾曲面を有している。この船首部2の湾曲面は、船体1の垂直断面P1において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第1輪郭線C1(図4参照)を形成し、船体1の水平断面P2において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第2輪郭線C2(図5参照)を形成している。更に、船首部2の湾曲面は、船体1の横断面P3において、船体1の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第3輪郭線C3(図6参照)を形成している。また、船首部2の湾曲面は、船体1の中心線CLと平行であって垂直断面P1に対して傾斜する断面P4において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第4輪郭線C4(図7参照)を形成している。船体1の中心線CLとは、船体1の幅方向の中心位置において船体1の長手方向(水平方向)に沿って延びる仮想線である。
【0022】
クロソイド曲線とは、曲率を一定割合で変化させていった場合に描かれる軌跡である。船体1の垂直断面P1における船首部2の第1輪郭線C1は、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を連続的又は断続的に含み、好ましくは上記クロソイド曲線を連続的に含んでいる。そのため、第1輪郭線C1の曲率半径R11~R13は船体1の後方側に向かって順次大きくなり、第1輪郭線C1が上甲板3に対して滑らかに接続されている。同様に、船体1の水平断面P2における船首部2の第2輪郭線C2は、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を連続的又は断続的に含み、好ましくは上記クロソイド曲線を連続的に含んでいる。そのため、第2輪郭線C2の曲率半径R21~R23は船体1の後方側に向かって順次大きくなり、第2輪郭線C2が船側部4に対して滑らかに接続されている。船体1の横断面P3における船首部2の第3輪郭線C3は、船体1の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を連続的又は断続的に含み、好ましくは上記クロソイド曲線を連続的に含んでいる。そのため、第3輪郭線C3の曲率半径R31~R33は船体1の幅方向内側に向かって順次大きくなっている。船体1の中心線CLと平行であって垂直断面P1に対して傾斜する断面P4における船首部2の第4輪郭線C4は、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を連続的又は断続的に含み、好ましくは上記クロソイド曲線を連続的に含んでいる。そのため、第4輪郭線C4の曲率半径R41~R43は船体1の後方側に向かって順次大きくなり、第4輪郭線C4が上甲板3又は船側部4に対して滑らかに接続されている。
【0023】
また、上述のように構成される船舶において、上甲板3と船側部4の各々とを繋ぐガンネル部8は湾曲面を有している。ガンネル部8の湾曲面は、船体1の横断面P5において、船体1の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第4輪郭線C5(図8参照)を形成している。つまり、船体1の横断面P5におけるガンネル部8の第5輪郭線C5は、船体1の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を連続的又は断続的に含み、好ましくは上記クロソイド曲線を連続的に含んでいる。そのため、第5輪郭線C5の曲率半径R51~R53は船体1の幅方向内側に向かって順次大きくなり、第5輪郭線C5が上甲板3に対して滑らかに接続されている。
【0024】
上述した船舶によれば、船首部2は、船体1の垂直断面P1において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第1輪郭線C1を形成し、船体1の水平断面P2において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第2輪郭線C2を形成する湾曲面を有しているので、図9に示すように、例えば、航行時に斜め向かい風を受けた際に、その風を船体1に沿ってスムーズに誘導し、風の流れを上甲板3に貼り付かせて風下側の剥離や渦の発生を低減することができる。これにより、斜め向かい風に対する風圧抵抗を効果的に低減することができる。また、航行時に斜め向かい風を受けた際には、その風圧を最大限に推力に変換することができる。その結果、船舶の運航において、燃費を改善し、省エネルギー化を図ることができる。
【0025】
また、上述した船舶において、船首部2の湾曲面は、船体1の横断面P3において、船体1の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第3輪郭線C3を形成することが望ましい。この場合、斜め向かい風のスムーズな抜けをもたらし、斜め向かい風に対する風圧抵抗をより効果的に低減することができる。また、船首部2の湾曲面は、船体1の中心線CLと平行であって垂直断面P1に対して傾斜する断面P4において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第4輪郭線C4を形成することが望ましい。この場合、斜め向かい風のスムーズな抜けをもたらし、斜め向かい風に対する風圧抵抗をより効果的に低減することができる。
【0026】
更に、上述した船舶において、上甲板3と船側部4の各々とを繋ぐガンネル部8は、船体1の横断面P5において、船体1の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第5輪郭線C5を形成する湾曲面を有することが望ましい。この場合、航行時に受ける風を船体1に沿ってスムーズに誘導し、風の流れを上甲板3に貼り付かせて風下側の剥離や渦の発生を低減し、横風や斜め向かい風に対する風圧抵抗を効果的に低減することができる。
【0027】
また、上述した船舶において、上甲板3は水平方向に延びる平面で構成されることが望ましい。この場合、航行時に受ける風を船体1に沿ってスムーズに誘導し、風の流れを上甲板3に貼り付かせて風下側の剥離や渦の発生を低減し、横風や斜め向かい風に対する風圧抵抗を効果的に低減することができる。上甲板3は可及的に平面で構成されることが望ましいが、煙突5等の最小限の突起物を設けることは許容される。例えば、上甲板3の総面積(船首部2及びガンネル部8の各々の湾曲部や隅切部を除く)に占める平面部分の面積の比率が90%以上であれば良い。
【0028】
図10図12は本発明の他の実施形態からなる船舶を示すものである。図10図12において、図1図8と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。本実施形態の船舶では、船首部2は、船体1の垂直断面P1において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第1輪郭線C1を形成し、船体1の水平断面P2において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第2輪郭線C2を形成し、船体1の横断面P3において、船体1の幅方向外側から内側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第3輪郭線C3を形成し、船体1の中心線CLと平行であって垂直断面P1に対して傾斜する断面P4において、船体1の前方側から後方側に向かって曲率半径が増加するクロソイド曲線を含む第4輪郭線C4を形成する湾曲面を有するという条件を満たすものの、船首部2の形状が前述した実施形態とは若干相違している。
【0029】
特に、船首部2は、その最前面に船舶1の中心線CLに対して直交する平面からなるフラット部9を備えている。このようなフラット部9を設けた場合、船舶1が斜め向かい風を受けた際にフラット部9が風の導入部として働いて翼の見掛け上のキャンバーとして機能するので、推力を増大させることができる。即ち、図13(a)のように船首部2がフラット部9を持たない場合に比べて、図13(b)のように船首部2がフラット部9を有する場合、フラット部9が風下に向かって風を誘導する際に翼の見掛け上のキャンバーとして機能するので、より大きな推力Fを得ることができる。このような効果は左右両側から流入する風に対して生じる。なお、フラット部9の幅は船体1の全幅の1/3以下とすることが望ましい。
【0030】
フラット部9の面積は、船舶の常用速力に応じて調整することができる。例えば、横風を受ける頻度が少なくなる船速の速い船舶の場合、フラット部9を小さくするか、或いはフラット部9を設けない構造(図1参照)とする。一方、横風を受ける頻度が多くなる船速の遅い船舶の場合、フラット部9を大きくした構造(図10参照)とする。
【符号の説明】
【0031】
1 船体
2 船首部
3 上甲板
4 船側部
5 煙突
6 プロペラ
7 舵
8 ガンネル部
9 フラット部
C1 第1輪郭線
C2 第2輪郭線
C3 第3輪郭線
C4 第4輪郭線
C5 第5輪郭線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13