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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002100
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】保守方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/40 20180101AFI20241226BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20241226BHJP
【FI】
G16H40/40
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102028
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓史
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 知弘
(72)【発明者】
【氏名】武本 誠司
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049CC15
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】施設外のネットワークに通信接続されていない分析装置であっても、容易に異常復旧できるようにする。
【解決手段】施設外のネットワークに通信接続されていない分析装置の保守方法であって、前記分析装置に実行させる処理に関する情報を施設外のネットワークに通信接続された端末にて提示する提示工程と、前記端末によって提示された前記情報を前記分析装置にて読み取る読取工程と、読み取った情報で示される前記処理を前記分析装置にて実行する実行工程と、を含む。
【選択図】図62
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設外のネットワークに通信接続されていない分析装置の保守方法であって、
前記分析装置に実行させる処理に関する情報を施設外のネットワークに通信接続された端末にて提示する提示工程と、
前記端末によって提示された前記情報を前記分析装置にて読み取る読取工程と、
読み取った情報で示される前記処理を前記分析装置にて実行する実行工程と、
を含む、保守方法。
【請求項2】
前記提示工程は、前記情報を含む光学的に読み取り可能な情報コードを表示することを含む、請求項1に記載の保守方法。
【請求項3】
前記情報は、複数の前記処理の組を含む、請求項1に記載の保守方法。
【請求項4】
前記情報は、複数の前記処理の実行順序を示す順序情報を含み、
前記実行工程は、読み取った前記順序情報で示される実行順序に従って複数の前記処理を前記分析装置にて実行する、請求項1に記載の保守方法。
【請求項5】
前記処理は、前記分析装置のユーザモードで実行不可であってサービスモードで実行可能である処理を含む、請求項1に記載の保守方法。
【請求項6】
前記情報は、前記処理に対応するコマンドを識別するIDを含み、
前記実行工程は、読み取った前記IDに対応する前記処理を前記分析装置にて実行する、請求項1に記載の保守方法。
【請求項7】
前記情報は、前記分析装置のIDを含み、
前記実行工程は、
読み取った前記IDと前記分析装置が記憶するIDとが一致するか否かを前記分析装置にて判定し、
一致する場合に前記処理を前記分析装置にて実行する、請求項1に記載の保守方法。
【請求項8】
前記情報コードは、前記情報コードの発行日時および有効期限の少なくとも一方を示す日時情報を含み、
前記実行工程は、
前記情報コードから読み取った前記日時情報に基づき前記情報コードが有効であるかを前記分析装置にて判定し、
前記情報コードが有効である場合に前記分析装置にて前記処理を実行する、請求項2に記載の保守方法。
【請求項9】
前記実行工程は、
前記情報コードが無効である場合、前記処理を前記分析装置にて実行せず、前記情報コードが無効である旨のメッセージを前記分析装置にて表示する、請求項8に記載の保守方法。
【請求項10】
前記分析装置に記憶された情報を読み取り可能な情報コードを前記分析装置にて表示する工程と、
当該情報コードを前記端末にて読み取る工程と、
当該情報コードから読み取った情報を、前記端末から、前記分析装置と通信接続されず前記端末と通信接続される管理装置に送信する工程と、
前記管理装置にて、前記送信された情報に対応する1または複数の前記処理の入力を受け付ける工程と、
を含む、請求項1に記載の保守方法。
【請求項11】
前記入力を受け付けた処理を示す情報を前記管理装置から前記端末へ送信する工程をさらに含み、
前記提示工程は、前記入力を受け付けた処理を示す情報が読み取り可能な前記情報コードを前記端末にて表示する、請求項10に記載の保守方法。
【請求項12】
前記実行工程は、前記処理を前記分析装置にて実行した後、前記分析装置にて得られた精度管理に関する情報を読み取り可能な情報コードを前記分析装置にて表示し、
当該情報コードを前記端末にて読み取る工程と、
当該情報コードから読み取った前記情報を前記管理装置へ送信する工程とをさらに含む、請求項10に記載の保守方法。
【請求項13】
前記分析装置は、インターネットに接続されていない、請求項1に記載の保守方法。
【請求項14】
前記端末は、移動体通信網を経由してインターネットに接続されている、請求項1に記載の保守方法。
【請求項15】
前記端末は、スマートフォンまたはタブレット端末である、請求項1に記載の保守方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設外のネットワークに通信接続されていない分析装置の保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分析装置は、主に病院の検査室に設置され、サービススタッフが定期的に検査室を訪問して保守を行うことで、一定の精度で検査が可能となるように状態が維持されている。分析装置に異常が発生した場合、できるだけ早く復旧できるように、サービススタッフを呼ばずに異常復旧できるようにする技術が種々提案されている。
例えば特許文献1には、ネットワーク4を介して分析装置20に通信可能に接続されるとともに分析装置20の装置異常に対する対処情報を格納する情報サーバ30を備え、分析装置20に生じる装置異常に応じた対処情報を情報サーバ30から取得し、当該分析装置20の操作者に表示する対処情報表示部とを備えた情報処理システムが開示されている。このシステムによれば、分析装置において発生した装置異常の情報を速やかに情報サーバに伝達し、異常に対応する対処情報をユーザが入手し、異常復旧を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-271334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析装置は、患者の健康に関する情報を扱うため高度のセキュリティが要求されており、施設によっては分析装置がインターネットに接続していないことがある。また、施設によってはインターネットが整備されていない環境もある。そのような施設では、特許文献1のように異常に対応する対処情報を入手できず、サービススタッフから電話で対処方法を聞き出したり、サービススタッフが現地に赴くのを待たなければならない場合があった。操作者が不慣れな場合には、対処情報を入手できたとしても、対処情報を理解して分析装置を異常復旧することは容易でない場合もありえる。
【0005】
本発明は、施設外のネットワークに通信接続されていない分析装置であっても、容易に異常復旧できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、施設外のネットワークに通信接続されていない分析装置(2)の保守方法であって、分析装置(2)に実行させる処理に関する情報を施設外のネットワークに通信接続された端末(3)にて提示する提示工程と、端末(3)によって提示された前記情報を分析装置(2)にて読み取る読取工程と、読み取った情報で示される前記処理を分析装置(2)にて実行する実行工程と、を含む保守方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施設外のネットワークに通信接続されていない分析装置であっても、端末にて提示された情報を分析装置によって読み取ることで容易に異常復旧できる。また、本発明によれば、操作者は分析装置に情報を読み取らせるだけでよく、操作者が不慣れな場合であっても、異常復旧が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】管理支援システムの概要を示す模式図である。
図2】分析装置の構成例を示す図である。
図3】分析装置の記憶装置の構成例を示す図である。
図4】装置属性データベースのデータ構造の例を示す図である。
図5】精度管理データベースのデータ構造の例を示す図である。
図6】精度管理データベースのレコードの具体例を示す図である。
図7】分析装置上で動作するアプリケーションの構成例を示す図である。
図8】精度管理情報抽出処理において作成される情報コードに記録されるデータの具体例を示す図である。
図9】分析装置にて表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
図10】分析装置にて情報コードを表示する画面の一例を示す図である。
図11】分析装置にて精度管理種別を設定するための画面の一例を示す図である。
図12】分析装置による精度管理情報の自動抽出のための抽出条件を設定するための画面の一例を示す図である。
図13】分析装置にて抽出条件を設定するための画面の他の一例を示す図である。
図14】分析装置にて実行される処理の流れの例を示すフローチャートである。
図15】分析装置にてシャットダウンを開始する際に表示される確認画面の一例を示す図である。
図16】精度管理測定処理の流れの例を示すフローチャートである。
図17】精度管理情報抽出処理の流れの例を示すフローチャートである。
図18図14に示したフローチャートの変形例を示すフローチャートである。
図19】未抽出の精度管理結果があることを通知するための画面の一例を示す図である。
図20】未抽出の精度管理結果の有無についての自動確認時刻を設定する画面の一例である。
図21】設定された自動確認時刻において分析装置に出力される確認画面の一例である。
図22】端末の構成例を示す図である。
図23】端末の記憶装置の構成例を示す図である。
図24】ユーザ属性データベースのデータ構造の例を示す図である。
図25】端末上で動作するアプリケーションの構成例を示す図である。
図26】端末にて表示されるログイン画面の一例である。
図27】ログイン後に端末に表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
図28】情報コードの読み取り完了後に端末に表示される画面の一例である。
図29】情報コードの読み取り完了後に端末に表示される画面の他の一例である。
図30】管理装置の構成例を示す図である。
図31】管理装置の記憶装置の構成例を示す図である。
図32】管理装置上で動作するアプリケーションの構成例を示す図である。
図33】端末および管理装置にて実行される処理の流れの例を示すフローチャートである。
図34】分析装置が免疫測定装置である場合の精度管理データベースのデータ構造の例を示す図である。
図35】分析装置が免疫測定装置である場合の精度管理データベースのレコードの具体例を示す図である。
図36】近距離無線通信により精度管理結果を送信するときの進捗状況を示す画面の一例を示す図である。
図37】管理装置の構成例を示す図である。
図38】管理装置の記憶装置の構成例を示す図である。
図39】指示情報データベースのデータ構造の例を示す図である。
図40】指示情報データベースのレコードの具体例を示す図である。
図41】ユーザ属性データベースのデータ構造の例を示す図である。
図42】管理装置上で動作するアプリケーションの構成例を示す図である。
図43】指示情報作成画面の一例を示す図である。
図44】端末の構成例を示す図である。
図45】端末上で動作するアプリケーションの構成例を示す図である。
図46】つまり除去および連続ブランクチェックを含む指示データを受信したときに端末に表示される画面の一例である。
図47】血液吸引センサのオフを含む指示データを受信したときに端末に表示される画面の他の一例である。
図48】スクリーンロックのオフを含む指示データを受信したときに端末に表示される画面の他の一例である。
図49】エラー履歴の読み出しを含む指示データを受信したときに端末に表示される画面の他の一例である。
図50】精度管理測定の実施を含む指示データを受信したときに端末に表示される画面の他の一例である。
図51】精度管理結果が記録されている情報コードを表示する分析装置の画面例である。
図52】分析装置の構成例を示す図である。
図53】分析装置の記憶装置の構成例を示す図である。
図54】コマンド情報データベースのデータ構造の例を示す図である。
図55】コマンド情報データベースのレコードの具体例を示す図である。
図56】エラー履歴データベースのデータ構造の例を示す図である。
図57】エラー履歴データベースのレコードの具体例を示す図である。
図58】分析装置上で動作するアプリケーションの構成例を示す図である。
図59】分析装置にて精度管理履歴に関する情報コードを表示する画面の一例を示す図である。
図60】分析装置にてエラー履歴に関する情報コードを表示する画面の一例を示す図である。
図61】分析装置にてサービスデータに関する情報コードを表示する画面の一例を示す図である。
図62】管理装置から端末を介して分析装置に処理を実行させる処理の流れの例を示すフローチャートである。
図63図62に示したフローチャートの変形例を示すフローチャートである。
図64】分析装置の構成例を示す図である。
図65】分析装置上で動作するアプリケーションの構成例を示す図である。
図66】RBC検出部つまりが発生したときに分析装置に表示される画面例を示す図である。
図67】分析装置にてRBC検出部つまりに関する情報コードを表示する画面の一例を示す図である。
図68】管理装置から受領通知を受信した際に端末に表示される画面例を示す図である。
図69】分析装置にてショートサンプルに関する情報コードを表示する画面の一例を示す図である。
図70】分析装置にて発生したエラーに関する情報を端末を介して管理装置へ送る処理の流れの例を示すフローチャートである。
図71図70に示したフローチャートを拡張した例を示すフローチャートである。
図72】分析装置から抽出する情報を選択するための画面の一例を示す図である。
図73】情報抽出処理の流れの例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔管理支援システム1の概要〕
本発明に係る管理支援システム1の概要について図1を参照しながら説明する。管理支援システム1は、分析装置2、端末3、および管理装置4を含む。
【0010】
〔分析装置2の概要〕
分析装置2は、医療施設(例えば、病院、診療所)に設置され、医療施設の医療従事者に使用される。分析装置2は、オフライン環境で動作する(つまりスタンドアロンで動作する)か、または、医療施設内に配設されたLAN(Local Area Network)にのみ接続される。つまり、分析装置2は、医療施設外に配設されたインターネット等の通信ネットワーク5に接続されず、医療施設外の装置と通信接続されない環境下で運用される。この運用形態は、患者に関する情報を扱うために高度のセキュリティ対策が要求される医療施設において適用されることが多い。また、上記運用形態は、分析装置2をインターネットに接続することが一般的でない国または地域、或いは、通信ネットワーク環境が整備されていない国または地域において適用されることが多い。
【0011】
分析装置2は検体を分析する。分析装置2が分析する検体は、例えば、血液、尿などの生体試料、人間や動物の体、食品や飲料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。分析装置2の典型例は臨床検査装置である。臨床検査装置の典型例は血球計数装置である。分析装置2は、血球計数装置の他に、例えば、免疫測定装置、血液凝固測定装置、生化学分析装置、尿分析装置であってもよい。
【0012】
血球計数装置は、例えば電気抵抗検出法によって血液検体に含まれる赤血球、白血球、血小板等の血球成分を計数する。電気抵抗式検出法とは、血液検体を一対の電極間に流し、血球が電極の間を通過する際に発生する電気抵抗変化に基づいて血球数や血球容積を測定する。また、血球計数装置は、ノンシアンヘモグロビン法によって血液中のヘモグロビン量を測定可能である。このような血球計数装置としては、例えばXQ-320(シスメックス株式会社製)がある。血球計数装置は、電気抵抗式検出法以外にも、フローサイトメトリー法によって血球成分を計数してもよい。
【0013】
血球計数装置は、検体に関する測定(以下では「検体測定」と称する。)を、例えば一日あたり数十回から数百回実施する。また、血球計数装置においては、同じ検体を測定した際の測定結果に再現性が求められるため、測定の精度管理(QC:Quality Control)が必要となる。そのために、血球計数装置は、精度管理検体に関する測定(以下では「精度管理測定」と称する。)を実施する。血球計数装置は精度管理測定を例えば一日あたり数回実施する。精度管理測定を実施するタイミングの典型例は、一日の中で最初の検体測定を実施する前(例えば早朝)、および、一日の中で最後の検体測定を実施した後(例えば夕刻)である。上記タイミングの他の例は、一日の中で最初の検体測定を実施した後かつ最後の検体測定を実施する前(つまり、検体測定の実施期間中)である。このタイミングで実施する理由は、例えば、一日の途中で試薬を変更したりエラーを復旧した場合に精度管理測定を実施することがあるためである。
【0014】
精度管理測定では、精度管理検体の測定値が所定の正常範囲内にあるか否か(基準値とのずれ量が所定値以内であるか否か)について解析する。精度管理検体の測定値とは、具体的には、赤血球数(RBC)、白血球数(WBC)、血小板数(PLT)、ヘモグロビン濃度(HGB)、ヘマトクリット値(HCT)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)などである。以下では、精度管理検体の測定値を精度管理結果とも称する。正常範囲内にある測定値は正常な精度管理結果である。正常範囲外にある測定値は異常な精度管理結果である。
【0015】
精度管理は、内部精度管理と外部精度管理とに大別される。内部精度管理は、同一施設において同じ精度管理検体を測定した場合の測定結果のバラつきを低減することである。同一ロットの精度管理検体を同一の分析装置によって繰り返し測定し、日内変動や日差変動が許容範囲内であることを確認することで分析装置の精度が維持管理される。一般的には、分析装置によって精度管理検体を測定して得られた測定値が、精度管理検体のロットごとに定められた所定の正常範囲内にあるか否かに基づいて、分析装置が正常であるか異常であるかが判断される。例えばHGBの正常範囲が9.6~11.4と定められている場合、HGBの測定値が例えば10.9であれば正常な精度管理結果である。
【0016】
外部精度管理は、複数の施設間で同一の精度管理検体を測定した場合の測定結果のバラつきを低減することである。同一ロットの精度管理検体の測定結果を複数の施設から集計し、母集団の統計データ(例えば平均値又は中央値)に対する自施設の測定結果の差が許容範囲内であることを確認することで、分析装置の精度が維持管理される。本実施形態では、管理装置4が複数の施設から精度管理結果を受信して集計を行い、統計データの算出と、算出した統計データに基づく各分析装置の正常/異常の判定を行う。外部精度管理の種別は、施設が参加する外部精度管理の手法によって異なり、例えば、精度管理結果の日内変動を管理するための日内精度管理、精度管理結果の日次変動を管理するための日次精度管理、および、精度管理結果の月次変動を管理するための月次精度管理などがある。日内精度管理では、対象日(例えば当日)に得られた精度管理結果の各々を精度管理の対象として管理装置4に送信する。日次精度管理では、対象日(例えば当日)に得られた精度管理結果について精度管理検体のロット毎に統計処理を施した統計値を精度管理の対象として管理装置4に送信する。統計値の典型例は、平均値、中央値、標準偏差、偏差などである。日次精度管理は、通常、日に1回実施される。月次精度管理では、対象月(例えば当月)に得られた精度管理結果について精度管理検体のロット毎に統計処理を施した統計値を精度管理の対象として管理装置4に送信する。統計値の典型例は、平均値、中央値、標準偏差、偏差などである。月次精度管理は、通常、月に1回実施される。
【0017】
精度管理検体は、精度管理物質またはコントロール試料とも呼ばれる。精度管理検体は、例えば、既知濃度となるように調整された全血成分を含む。このような精度管理検体としては、例えばXN-CHECK(登録商標)、e-CHECK(登録商標)、およびEIGHTCHECK(登録商標)(シスメックス株式会社製)がある。精度管理検体は、低濃度、標準濃度、高濃度の3つの濃度レベルに調整された3種類の精度管理検体を含んでもよい。以下では、低濃度の精度管理検体をレベル1、標準濃度の精度管理検体をレベル2、高濃度の精度管理検体をレベル3と区別して称する。レベル1、レベル2、レベル3をそれぞれL1、L2、L3と略記する。
【0018】
〔端末3の概要〕
端末3は、医療施設にて医療従事者に使用されるコンピュータであり、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータである。端末3は、分析装置2と管理装置4との間で情報の受け渡しを仲介する役割を担う。
【0019】
端末3と分析装置2との情報の受け渡しには、典型的には、当該情報が光学的に読み取り可能な情報コードが用いられる。端末3および分析装置2の一方が情報コードを作成および表示し、それを他方が読み取ることで受け渡しが行われる。情報コードの典型例は2次元コードである。2次元コードは、情報密度、読取性能、情報容量などの点で優れ、小エリアで複雑な情報を正確に伝えることができる。2次元コードの具体例はQRコード(登録商標)であるがこれに限定されるものではない。分析装置2と端末3との情報の受け渡しは、情報コードを用いる代わりに近距離無線通信を用いて行われてもよい。近距離無線通信の典型例はBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)であるがこれに限定されるものではない。
【0020】
端末3は、移動体通信網を介して、または直接的に通信ネットワーク5に接続され、通信ネットワーク5を介して管理装置4と双方向に通信可能である。端末3は管理装置4と通信するにあたり認証を受けてもよい。通信ネットワーク5は、閉域ネットワーク(VPN網等)、オープンネットワーク(インターネット等)を含む。
【0021】
〔管理装置4の概要〕
管理装置4は、分析装置2が設置される医療施設と異なる施設(当該医療施設から見て遠隔地に位置する施設)に設置されるコンピュータである。管理装置4は1台のコンピュータで実現されてもよいし、複数台のコンピュータに機能分散して実現されてもよい。管理装置4は通信ネットワーク5に通信可能に接続され、通信ネットワーク5を介して端末3と双方向に通信可能である。管理装置4は、分析装置2へ送る情報を端末3へ送信し、また、分析装置2に記憶されている情報を端末3から受信する。管理装置4は、図1に示されるように、通信ネットワーク5を介して、分析装置2が設置される医療施設と異なる他の施設の分析装置や、他の施設の端末にも接続されている。このように管理装置4は複数の施設の分析装置又は端末からのデータを収集することが可能であり、例えば、外部精度管理に必要な大規模なデータ集計が可能である。
【0022】
管理装置4が設置される施設の典型例はサポートセンタである。管理装置4がサポートセンタに設置される場合、管理装置4はサポートセンタのサービススタッフに使用される。以降では、管理装置4の使用者はサービススタッフであるものとして説明する。サービススタッフは管理装置4を用いて、例えば(1)外部精度管理、(2)分析装置2の保守および運用支援(以下では「保守運用」と略記する。)、などを行う。
【0023】
外部精度管理は、複数の医療施設で構成される集計母集団の統計値(例えば平均値)と比較して精度管理検体の測定値が所定の許容範囲内にあるか否か等について統計解析する精度管理である。外部精度管理は、管理装置4が外部精度管理プログラムを実行することにより行われる。外部精度管理結果は、管理装置4から医療施設に提供される。提供形態としては、例えば、医療施設の医療従事者によって使用される端末3がアクセス可能なウェブページに掲載してもよいし、電子メールまたは専用アプリケーションを用いて端末3に通知してもよい。
【0024】
保守運用においてサービススタッフは分析装置2に発生した異常等に対処する。具体的には、サービススタッフは、例えば、分析装置2のステータスに関する情報(例えば、エラー履歴、サービスデータなど)を収集および分析し、分析装置2に実行させるコマンドを選定する作業などを行う。
【0025】
〔情報コードのフォーマットの例〕
端末3と分析装置2との情報の受け渡しに用いる情報コードに記録される情報は、例えば以下に示す(D01)~(D06)を含む。記録される情報のデータ形式の典型例はCSV(Comma Separated Values)形式であるがこれに限定されるものではない。
(D01)第1コード種別:情報コードに記録された情報を識別するためのメイン種別である。
(D02)第2コード種別:情報コードに記録された情報を識別するためのサブ種別である。第1コード種別のみで足りる場合は第2コード種別は使用しなくてもよい。
(D03)日時情報:分析装置2が情報コードを作成する場合は、情報コードの作成日時および/または有効期限である。端末3が情報コードを作成する場合は、管理装置4から発行される指示データ(後述する)の発行日時および/または有効期限である。
(D04)機種名:情報を受け渡す対象である分析装置2の機種名である。
(D05)装置ID:情報を受け渡す対象である分析装置2の識別子である。
(D06)データ本体:受け渡す情報の本体である。分析装置2が情報コードを作成する場合は、分析装置2から読み出された1または複数の情報である。端末3が情報コードを作成する場合は、指示データに含まれる1または複数の指示の識別子である。
【0026】
分析装置2が情報コードを作成する場合、情報コードには、上記(D01)~(D06)の情報に加えて、端末3からの送信先を示す情報が記録されてもよい。当該情報は、例えば、URL(Uniform Resource Locator)、メールアドレス、通信アドレスなどである。
【0027】
〔実施形態1]
本実施形態は、分析装置2が記憶する情報を、端末3を介して管理装置4に送る形態である。分析装置2が記憶する情報として精度管理結果を例に挙げて説明する。本実施形態によれば、医療施設外の装置と通信できない環境下で動作する分析装置2が記憶する精度管理結果を管理装置4に送ることができる。しかも、これを、情報コードを読み取らせるという簡便な操作のみで、かつ誤操作することなく実施できるため、分析装置2の取り扱いに習熟していない医療従事者であっても容易に実施することができる。
【0028】
〔分析装置2の構成例〕
図2に示すように、本実施形態に係る分析装置2は、例えば、吸引部21、試料調製部22、検出部23、表示/操作装置24(表示部)、記憶装置25A(記憶部)、プロセッサ26A、RAM(Random Access Memory)27、およびROM(Read Only Memory)28を備える。分析装置2と端末3との情報の受け渡しに近距離無線通信を用いる場合、分析装置2はさらに近距離無線通信部20を備える。近距離無線通信部20は、端末3の近距離無線通信部30(後述)との間で近距離無線通信を行う。
【0029】
吸引部21は、吸引ピペットおよびサンプリングバルブ等を含んでいる。吸引ピペットは、試料容器から試料を吸引し、その試料をサンプリングバルブへと送出する。サンプリングバルブは、導入された試料を所定量に定量し、試料調製部22に流出する。
【0030】
試料調製部22は、吸引部21から流入された試料を希釈して測定試料として調製するためのチャンバ、バルブ等からなる流体回路を含んでいる。
【0031】
検出部23は、試料調製部22によって調製された測定試料中の赤血球、白血球および血小板などを測定するための電気抵抗式検出器を備えている。検出部23は、電気抵抗式検出器によって測定された電気情報を検体のデータとして検出する。
【0032】
表示/操作装置24は、例えばタッチパネル式のディスプレイである。表示/操作装置24は、精度管理結果、検体測定結果、各種メニューなどを表示する。また、表示/操作装置24は、検体番号の入力操作および各種メニューの選択操作などを受け付ける。表示/操作装置24は、ユーザの操作を受け付けるためのデバイスとしてマウスやキーボードを備えてもよい。
【0033】
記憶装置25Aは、分析装置2が用いる各種データおよび各種プログラムを記憶するものであり、例えば、ソリッドステートドライブ等の半導体ドライブ、又は、ハードディスク等の磁気ディスクである。図3に示すように、記憶装置25Aは、例えば、装置属性データベース251、および精度管理データベース252を記憶する。
【0034】
装置属性データベース251は、分析装置2の属性情報を記憶するデータベースであり、例えばリレーショナルデータベース(RDB)である。図4は、装置属性データベース251がRDBである場合のデータ構造の例を示す図である。同図に示すように、装置属性データベース251は、例えば以下に示す(D11)~(D12)の情報を関連付けて記憶する。
(D11)装置ID:分析装置2の識別子である。
(D12)機種名:分析装置2の機種名である。一例として「XQ-320」。
【0035】
精度管理データベース252は、精度管理測定に関する情報を記憶するデータベースであり、例えばRDBである。図5は、精度管理データベース252がRDBである場合のデータ構造の例を示す図である。同図に示すように、精度管理データベース252は、例えば以下に示す(D21)~(D36)の情報を関連付けて記憶する。
(D21)測定ID:精度管理測定の識別子である。
(D22)測定項目名:精度管理測定の名称である。一例として「CBC」(Complete Blood Count:全血球計数)。
(D23)精度管理検体種別:精度管理測定に用いた精度管理検体の濃度レベルである。一例として「Control L1」(レベル1)、「Control L2」(レベル2)、「Control L3」(レベル3)。
(D24)ロット:精度管理測定に用いた精度管理検体のロット番号である。
(D25)有効期限:精度管理測定に用いた精度管理検体の有効期限である。
(D26)測定日:精度管理測定の実施日である。
(D27)測定時刻:精度管理測定の実施時刻である。測定日および測定時刻は統合されてもよい。
(D28)WBC:精度管理結果の一つである白血球数の測定値である。
(D29)RBC:精度管理結果の一つである赤血球数の測定値である。
(D30)HGB:精度管理結果の一つであるヘモグロビン濃度の測定値である。
(D31)HCT:精度管理結果の一つであるヘマトクリット値の測定値である。
(D32)MCV:精度管理結果の一つである平均赤血球容積の測定値である。
(D33)MCH:精度管理結果の一つである平均赤血球ヘモグロビン量の測定値である。
(D34)MCHC:精度管理結果の一つである平均赤血球ヘモグロビン濃度の測定値である。
(D35)PLT:精度管理結果の一つである血小板数の測定値である。
(D36)フラグ:精度管理結果が抽出済みであるか否かを示すフラグである。
【0036】
図6は、精度管理データベース252のレコードの具体例を示す。同図には4つのレコードが示されている。上側の2つのレコードは、精度管理検体種別がControl L1でありロットがS3422であり有効期限が2023年5月9日である精度管理検体の精度管理結果を示す。精度管理測定の実施日時はそれぞれ2023年4月11日7時53分28秒および同日19時5分36秒である。下側の2つのレコードは、精度管理検体種別がControl L2でありロットがM5652であり有効期限が2023年5月10日である精度管理検体の精度管理結果を示す。精度管理測定の実施日時はそれぞれ2023年4月11日7時59分22秒および同日19時7分39秒である。
【0037】
図2に戻り、プロセッサ26Aは、分析装置2の機能を統括して制御する制御部である。プロセッサ26Aは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ26Aは、例えば論理回路により実現してもよい。プロセッサ26Aは、アプリケーション261Aを記憶装置25Aから読み出してRAM27へ展開して実行する。アプリケーション261Aは、各種処理を実行する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムとして、例えば、記憶装置25Aに格納されている。
【0038】
〔アプリケーション261Aの構成例〕
図7は、アプリケーション261Aの構成例を示す。アプリケーション261Aは、例えば、精度管理測定部262、検体測定部263、および情報抽出部264を含む。
【0039】
表示/操作装置24にて精度管理測定を開始する入力操作を受け付けると、プロセッサ26Aは、精度管理測定部262の指示に従って精度管理測定処理を実行する。精度管理測定処理では、例えば、吸引部21、試料調製部22、検出部23を含む各部が動作することにより精度管理検体に関する測定が行われ、精度管理結果が表示/操作装置24に表示され、精度管理データベース252に記憶される。
【0040】
表示/操作装置24にて検体測定を開始する入力操作を受け付けると、プロセッサ26Aは、検体測定部263の指示に従って検体測定処理を実行する。検体測定処理では、例えば、吸引部21、試料調製部22、検出部23を含む各部が動作することにより検体に関する測定が行われ、測定結果が表示/操作装置24に表示され、記憶装置25Aに記憶される。
【0041】
また、プロセッサ26Aは、情報抽出部264の指示に従って精度管理情報抽出処理を実行する。精度管理情報抽出処理を実行する契機は、表示/操作装置24にて精度管理情報を抽出する入力操作を受け付けたことであってもよいし、予約設定された日時が到来したことであってもよい。精度管理情報抽出処理では、精度管理データベース252から抽出条件に合致する精度管理結果を取得し、取得した精度管理結果の各々またはこれらに基づき算出された値(統計値など)を読み取り可能な情報コードを作成し、作成された情報コードを表示/操作装置24に表示させる。これにより、管理装置4にて実施する外部精度管理の対象とする精度管理結果のみを抽出することができる。管理装置4にて実施する外部精度管理の対象とする精度管理結果は、管理装置4に取得させるべき管理情報の一つである。なお、精度管理データベース252において、抽出されたレコードのフラグ274に抽出済みであることが記録される。なお、本明細書において、記憶部から情報を「抽出する」ことを、記憶部から情報を「読み出す」とも表現する。
【0042】
抽出条件の第1典型例は、指定された時間範囲内に得られた精度管理結果のみを抽出対象とする。指定された時間範囲内に複数回の精度管理測定を実施している場合は、それらの精度管理結果の各々が抽出対象となる。時間範囲の具体例は、当日、当月などである。当日の具体的時刻は、例えば、前日23時から翌日9時までである。時間範囲の開始日時および終了日時は適宜設定可能であってもよい。
【0043】
第1典型例では、指定された時間範囲内に得られた精度管理結果の「全て」を抽出対象としてもよいし、指定された時間範囲内に得られた精度管理結果のうち「過去に抽出されていない(つまり未抽出の)精度管理結果のみ」を抽出対象としてもよい。後者の場合、情報コードに記録される情報の容量を低減することができる。
【0044】
抽出条件の第2典型例は、医療施設が定める精度管理の運用に応じた精度管理結果を抽出対象とする。日内精度管理を行う運用である場合は、対象日に得られた精度管理結果の各々を精度管理の対象とする。対象日に得られた精度管理結果の全てを抽出対象としてもよいし、対象日に得られた精度管理結果のうちまだ抽出対象とされていないもののみを抽出対象としてもよいし、対象日に得られた精度管理結果の中から抽出対象を個別に選択してもよい。
【0045】
日次精度管理を行う運用である場合は、対象日に得られた精度管理結果の各々を抽出対象とする。月次精度管理を行う運用である場合は、対象月に得られた精度管理結果の各々を抽出対象とする。
【0046】
また、一日における精度管理の実施タイミングとして例えば以下に示す(T1)~(T3)を定める運用である場合、定められたタイミングで得られた精度管理結果の各々を精度管理の対象としてもよい。
(T1)一日の中で最初の検体測定を実施する前。
(T2)一日の中で最初の検体測定を実施した後かつ最後の検体測定を実施する前。
(T3)一日の中で最後の検体測定を実施した後。
【0047】
なお、上記(T2)は、例えば、試薬交換またはエラー復旧などに起因するイレギュラーなタイミングであることが多い。そのため、上記(T1)および(T3)のみについて外部精度管理を行うことを基本としている医療施設においては、上記(T2)を選択しないことにより、上記(T2)のタイミングで得られた精度管理結果を外部精度管理の対象外とすることができる。
【0048】
抽出条件の第3典型例は、医療施設における内部精度管理基準に適合する精度管理結果のみを抽出対象とする。内部精度管理基準に適合する精度管理結果とは、正常な精度管理結果である。第3典型例によれば、正常な精度管理結果のみを抽出対象とし、異常な精度管理結果を抽出対象外とするため、外部精度管理における母集団のデータの信頼性を担保することができ、また、日次平均および月次平均のデータの信頼性を担保することができる。
【0049】
抽出条件の第4典型例は、指定された濃度レベルの精度管理検体の精度管理結果のみを抽出対象とする。具体例として、L1およびL2のみを抽出対象としてもよいし、L1のみを抽出対象としてもよい。
【0050】
抽出条件は、異なる複数の条件が組み合わされたものであってもよい。例えば、上述した第1典型例、第2典型例、第3典型例、および第4典型例の少なくともいずれかを組み合わせてもよい。例えば、当日に得られ、かつ、正常であり、かつ、濃度レベルがL1およびL2である精度管理結果のみを抽出対象としてもよい。
【0051】
抽出条件は、設定メニュー等を用いて予め設定可能であってもよいし、精度管理情報抽出処理の実行時に設定可能であってもよい。
【0052】
〔情報コードに記録される情報〕
精度管理情報抽出処理において作成される情報コードに記録される情報は、例えば、以下に示す(D41)~(D46)に示すとおりである。
(D41)第1コード種別:一例として「QC」。
(D42)第2コード種別:日内精度管理の場合は一例として「Intraday」。日次精度管理の場合は一例として「Daily」。月次精度管理の場合は一例として「Monthly」。
(D43)日時情報:分析装置2が情報コードを作成した日時。
(D44)機種名:情報コードを作成した分析装置2の機種名。装置属性データベース251から取得される。
(D45)装置ID:情報コードを作成した分析装置2の識別子。装置属性データベース251から取得される。
(D46)データ本体:上記(D22)~(D35)の精度管理情報。これらは精度管理データベース252から取得される。上記(D28)~(D35)について、日内精度管理の場合は、精度管理データベース252から取得された測定値そのものである。一方、日次精度管理および月次精度管理の場合は、精度管理データベース252から取得された測定値について統計処理が施された統計値(例えば平均値)である。
【0053】
図8は、精度管理情報抽出処理において作成される情報コードに記録されるデータの具体例を示す。同図では、第1コード種別「QC」、第2コード種別「Intraday」、日時情報「2023年4月11日17時59分22秒」、機種名「XQ-320」、装置ID「F5659」、および、日内精度管理の精度管理結果として図6に示す4つのレコードの情報が、CSV形式で示されている。なお、図8に示した情報は全340文字であるが、このデータ量は1つの情報コードに記録することができる。この場合の情報コードとしては、例えば、誤り訂正レベルがL(復元能力が7%)であるバージョン10のQRコードを使用すればよい。当該QRコードの最大記録可能文字数は英数字で395文字であるから、図8に示した情報を全て記録可能である。図8に例示するように、本実施形態によれば複数(図8の例では4つ)の精度管理結果が1つのQRコードに含まれるため、ユーザはQRコードを1回撮影するだけでよく、精度管理結果を1つずつQRコードに変換する場合に比べてユーザの利便性が高い。精度管理測定では、1日に異なる濃度レベルの精度管理検体を複数回測定することが多いため、精度管理結果を1つずつQRコードに変換していくと撮影回数が増え、場合によってはユーザが撮影し忘れるケースも想定される。この点、分析装置2が自動的に未送信の精度管理結果を抽出して1つのQRコードに変換することで、ユーザによる撮影忘れを防止できる。
【0054】
プロセッサ26Aは、精度管理情報抽出処理において作成する情報コードのデータ量に応じてバージョン(QRコードのサイズ)を変更することが可能であってもよい。例えば、図8に示した情報よりもデータ量が小さければバージョン9以下のQRコードを生成し、図8に示した情報よりもデータ量が大きければバージョン11以上のQRコードを生成してもよい。ただし、分析装置2の表示/操作装置24の表示領域には限界があるため、情報コードに含まれるデータ量が所定のデータ量を超える場合には、バージョンを上げるのではなくQRコードを2つ以上の情報コードに分割して、順次表示するようにしてもよい。2つ以上の情報コードに分割する場合は、例えば1つ目の情報コードを表示し、ユーザが情報コードの撮影を完了した旨の入力が行われると、次の情報コードを表示する。この場合、それぞれの情報コードには分割された情報コードであることを示す情報が含まれていてもよい。例えば情報コードが3つの情報コードに分割されている場合、それぞれの情報コードに「1/3」、「2/3」、「3/3(END)」のような文字列が含まれる。端末3は、読み取った情報コードに分割された情報コードである旨の情報が含まれている場合、分割された情報コードの全てを読み取るようにユーザを促す画面を表示してもよい。このように情報コードを分割すれば、表示領域が限られていても大きなデータを情報コードに変換して端末3に受け渡すことができる。また、情報コードを分割した場合もユーザの撮影忘れによるデータの送信漏れを防止することができる。
【0055】
図8に例示される情報コードは、複数の精度管理結果のそれぞれに共通する情報、すなわち第1コード種別(D41)、第2コード種別(D42)、日時情報(D43)、機種名(D44)、装置ID(D45)は共通項目として記述されるデータ構造を有している。さらに、図8に例示される情報コードでは、図6に示す4つのレコードのうち、測定ID:001と測定ID:002の2つのレコードのうち共通する情報、すなわち測定項目、精度管理検体種別、ロット、有効期限の情報は共通化されている。このようなデータ構造により、情報コードに格納されるデータの情報量を削減することができる。
【0056】
〔分析装置2の画面例〕
表示/操作装置24に表示される画面の一例について説明する。図9は、メニュー画面の一例を示す図である。メニュー画面は、分析装置2が実行可能な各種処理を、選択可能な態様で一覧表示する画面である。同図に示す例では、メニュー画面におけるメニューの一つとしてアイコン700が設けられている。ユーザがアイコン700をタッチすると、プロセッサ26Aは、情報抽出部264の指示に従って精度管理情報抽出処理を実行し、作成した情報コードを表示/操作装置24に表示させる。図10は、当該作成した情報コードを表示する画面の一例を示す図である。図10に示すように、画面には作成された情報コードとともに「端末のカメラで情報コードを撮影してください」のように情報コードの撮影を促すメッセージが表示される。
【0057】
図11は、精度管理種別を設定するための画面の一例を示す図である。当該画面は、メニュー画面から遷移可能であってもよい。同図に示す例では、フィールド701に、「日内精度管理」、「日次精度管理」、および「月次精度管理」のいずれかを選択するためのラジオボタンが設けられている。ユーザがいずれかのラジオボタンを選択しボタン702をタッチすると、プロセッサ26Aは、情報抽出部264の指示に従って、フィールド701にて選択された精度管理種別を記憶装置25Aに記憶する。
【0058】
図12は、分析装置2による精度管理情報の自動抽出のための抽出条件を設定するための画面の一例を示す図である。当該画面は、メニュー画面から遷移可能であってもよいし、精度管理情報抽出処理の実行時に表示されてもよい。
【0059】
フィールド703には、「全てを対象とする」および「対象を指定する」のいずれかを選択するためのラジオボタンが設けられている。ユーザがタッチパネル上で「全てを対象とする」に対応するラジオボタンをタッチすると、対象日または対象月に得られた精度管理結果の全てを精度管理の対象とする設定となる。この場合、フィールド704およびフィールド705のチェックボックスは操作できないようロックされる。ユーザが「対象を指定する」に対応するラジオボタンを選択すると、フィールド704およびフィールド705が選択可能となる。
【0060】
フィールド704には、精度管理測定を実施するタイミングを選択するためのチェックボックスが設けられている。「検体測定前QC」は、対象日において最初の検体測定を実施する前に得られた精度管理結果であり、「検体測定中QC」は、対象日において最初の検体測定を実施した後かつ最後の検体測定を実施する前に得られた精度管理結果であり、「検体測定後QC」は、対象日において最後の検体測定を実施した後に得られた精度管理結果である。
【0061】
フィールド705には、精度管理検体の濃度レベル(L1、L2、L3)を選択するためのチェックボックスが設けられている。
【0062】
フィールド703、704、705においてユーザが抽出条件を設定し、ユーザがボタン706をタッチすると、プロセッサ26Aは、情報抽出部264の指示に従って、フィールド703~706にて選択された抽出条件を記憶装置25AまたはRAM27に記憶する。ここで記憶装置25AまたはRAM27に記憶された抽出条件は、後述する精度管理情報抽出処理(図17)において使用される。したがって、ユーザは図11または図12の画面を介して抽出条件を予め設定しておくことができ、外部精度管理のために管理装置4に送信する精度管理情報を毎回設定する必要がない。
【0063】
図13は、抽出条件を設定するための画面の他の一例を示す図である。当該画面は、例えば図9の精度管理アイコン710を選択することによって表示される精度管理結果の確認画面から遷移可能であってもよいし、精度管理情報抽出処理の実行時に表示されてもよい。精度管理結果の確認画面から遷移可能にする場合は、例えば精度管理結果確認画面に「情報コード作成」のようなボタンを設けておくことができる。ユーザが当該ボタンを選択することで図13の画面が表示される。図13の画面では、図11および図12で例示したようにユーザが予め抽出条件を設定しておくのではなく、外部送信したい精度管理結果を個別に指定するのに好適である。
【0064】
フィールド707は、精度管理結果である測定値の各々を時系列グラフとして表示するとともに、測定値を選択させるためのフィールドである。時系列グラフにプロットされた黒丸で示される測定値は選択可能である。一方、時系列グラフにプロットされた白丸で示される測定値は集計期間を過ぎているため選択できないようになっている。図13の時系列グラフでは、1つの精度管理結果、すなわち1回の精度管理測定に対応する複数の測定項目の測定値(WBC、RBC、HGB、HCT・・・)が上下方向に並んで表示されている。
【0065】
スライダー708は、抽出対象期間を指定するものである。スライダー708は、ユーザがタッチした状態でドラッグすることにより左右に動かすことができる。同図に示す例では、抽出対象期間の開始時刻および終了時刻の各々を、スライダー708を左右に動かすことにより設定可能となっている。図13の画面例では3点の精度管理結果が指定されているが、抽出対象としては1点のみ指定することもできる。なお、抽出対象期間の指定は、スライダー708を動かすことに限らず、例えば時系列グラフにプロットされた黒丸をユーザがタッチすることで指定できてもよい。
【0066】
ユーザによってボタン709が操作されると、プロセッサ26Aは、情報抽出部264の指示に従って、フィールド707およびスライダー708にて選択された抽出条件を記憶装置25AまたはRAM27に記憶する。
【0067】
〔分析装置2にて実行される処理の流れの例〕
図14は、分析装置2のプロセッサ26Aにて実行される処理の流れの例を示すフローチャートである。まず、分析装置2の電源を投入すると、プロセッサ26Aはスタートアップ処理を実行する(S11)。スタートアップ処理では、例えば、分析装置2の機構部および流体部の初期化、流体部の洗浄、測定モジュールの温度安定待ち、バックグラウンドチェックを行う。
【0068】
プロセッサ26Aは、スタートアップ処理の終了後、入力操作を受け付けると(S12にてYES)、入力操作に応じた処理を実行する(S13~S17)。入力操作が「精度管理測定」を開始する操作である場合、プロセッサ26Aは精度管理測定処理を実行する(S14)。入力操作が「検体測定」を開始する操作である場合、プロセッサ26Aは検体測定処理を実行する(S15)。入力操作が「精度管理情報抽出」を開始する操作である場合、プロセッサ26Aは精度管理情報抽出処理を実行する(S16、抽出工程)。入力操作が「シャットダウン」を開始する操作である場合、プロセッサ26Aは例えば図15に示す確認画面を表示/操作装置24に表示させたうえでシャットダウン処理を実行し(S17)、電源をオフする。シャットダウン処理には、例えば、廃液の排出、流路等の洗浄などが含まれる。
【0069】
ステップS16(抽出工程)は、分析装置2が記憶する情報のうち管理装置4に取得させるべき管理情報を準備する工程(準備工程)の一部である。なお、準備工程は、管理情報を端末3によって光学的に読み取ることが可能な情報コードに変換して表示/操作装置24に表示すること、または、管理情報を近距離無線通信により分析装置2から端末3へ送信するための送信用データを作成すること、を含む。
【0070】
図16は、精度管理測定処理の流れの例を示すフローチャートである。プロセッサ26Aは、吸引部21、試料調製部22、検出部23を含む各部が動作することにより精度管理検体に関する測定を行い(S141)、精度管理結果を精度管理データベース252に記憶させ、また、表示/操作装置24に表示させる(S142)。精度管理結果が異常である場合(S143にてNO)、プロセッサ26Aは再測定を促す情報を表示/操作装置24に出力してもよい(S144)。一方、精度管理結果が正常である場合(S143にてYES)、プロセッサ26Aは精度管理測定処理を終了する。
【0071】
図17は、精度管理情報抽出処理の流れの例を示すフローチャートである。プロセッサ26Aは、抽出条件に合致する精度管理結果を精度管理データベース252から取得する(S161)。プロセッサ26Aは、取得した精度管理結果の各々またはこれらに基づき算出された値を読み取り可能な情報コードを作成する(S162)。プロセッサ26Aは、作成した情報コードを表示/操作装置24に表示させる(S163)。精度管理情報抽出処理を終了する入力操作を受け付けると(S164にてYES)、プロセッサ26Aは精度管理情報抽出処理を終了する。
【0072】
図18は、図14に示したフローチャートの変形例を示すフローチャートである。本変形例では、図14に示したフローチャートに加えてS171~S174が追加されている。S12で受け付けた入力操作が「シャットダウン」を開始する操作である場合、プロセッサ26Aは、シャットダウン処理を行う前に、まず、未抽出の精度管理結果が精度管理データベース252に存在するか否かを判定し(S171)、未抽出の精度管理結果が存在する場合は(S171にてYES)、未抽出の精度管理結果を抽出するか否かを問い合わせる画面を表示/操作装置24に出力する(S172)。当該画面の例を図19に示す。図19では、未抽出の精度管理結果(QCファイル)があることを通知し、管理装置に送信するかどうかをユーザに問い合わせる旨のメッセージとともに、「はい」と「いいえ」のボタンを表示している。未抽出の精度管理結果について情報抽出を行う入力操作を受け付けると、すなわち図19の画面において「はい」が選択されると(S173にてYES)、精度管理情報抽出処理を実行し(S174)、その後にシャットダウン処理を実行する(S17)。なお、S171~S174とS17とは並列に実行されてもよい。並列に実行することにより、直列に実行する場合と比べて処理時間を短縮することができる。
【0073】
分析装置2のシャットダウンは日々の検体測定業務の最後に必ず行われるため、本変形例のようにシャットダウンを契機として未抽出の精度管理結果の有無を自動的に確認することにより、精度管理結果の管理装置4への送信忘れを防止することができる。
【0074】
未抽出の精度管理結果の有無についての自動確認はシャットダウン時に限られない。例えば自動確認時刻を任意に設定可能であってもよい。図20は、自動確認時刻を設定する画面の一例である。同図に示す例では、自動確認時刻として13時30分を設定している。図21は、設定された自動確認時刻において表示/操作装置24に出力される確認画面の一例である。同図に示す例では、図20に示す画面にて設定された自動確認時刻である13時30分に確認画面が出力されている。
【0075】
〔端末3の構成例〕
図22に示すように、本実施形態に係る端末3は、例えば、通信装置31、撮像装置32、操作装置33、出力装置34、記憶装置35A、プロセッサ36A、RAM37、ROM38、および近距離無線通信部30を備える。
【0076】
通信装置31は、プロセッサ36Aによる制御に従って通信ネットワーク5を介して管理装置4と通信を行うインターフェースである。撮像装置32は例えばCCD(Charge Coupled Device)などのイメージセンサーを備えるカメラである。撮像装置32の主な撮像対象は情報コードである。操作装置33は、端末3に対する各種データの操作を受け付ける。操作装置33は、例えば、タッチパネル、マイクである。出力装置34は、端末3で処理された各種データを出力する。出力装置34は、例えば、タッチパネルである。近距離無線通信部30は、分析装置2の近距離無線通信部20との間で近距離無線通信を行う。
【0077】
記憶装置35Aは、端末3が用いる各種データおよび各種プログラムを記憶するものであり、例えば、ソリッドステートドライブ等の半導体ドライブ、又は、ハードディスク等の磁気ディスクである。記憶装置35Aは、図23に示すように、例えばユーザ属性データベース351を記憶する。
【0078】
ユーザ属性データベース351は、端末3のユーザである医療従事者の情報を記憶するデータベースであり、例えばRDBである。図24は、ユーザ属性データベース351がRDBである場合のデータ構造の例を示す図である。同図に示すように、ユーザ属性データベース351には、例えば、以下に示す(D51)~(D56)の情報が関連付けられて記憶される。
(D51)ユーザID:医療従事者の識別子である。
(D52)ユーザ名:医療従事者の氏名である。
(D53)パスワード:医療従事者が端末3にログインする際のパスワードである。
(D54)装置ID:医療従事者と関連付けられた分析装置2の識別子である。
(D55)機種名:医療従事者と関連付けられた分析装置2の機種名である。
(D56)送信先:医療従事者と関連付けられた送信先である。例えば、URL、メールアドレス、通信アドレスなどである。
【0079】
プロセッサ36Aは、端末3の機能を統括して制御する制御部である。プロセッサ36Aは、例えばCPUである。プロセッサ36Aは、例えば論理回路により実現してもよい。プロセッサ36Aは、アプリケーション361Aを記憶装置35Aから読み出してRAM37へ展開して実行する。アプリケーション361Aは、各種処理を実行する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムとして、例えば、記憶装置35Aに格納されている。
【0080】
〔アプリケーション361Aの構成例〕
図25は、アプリケーション361Aの構成例を示す。アプリケーション361Aは、例えば、読取/送信部362、および、外部精度管理結果取得部363を含む。
【0081】
操作装置33にて情報コードの読取を開始する入力操作を受け付けると、プロセッサ36Aは、読取/送信部362の指示に従って、情報コード読取処理を実行する。情報コード読取処理では、撮像装置32により情報コードを撮像し、撮像された情報コードから情報を読み取る。
【0082】
読み取り完了後、プロセッサ36Aは、読み取った情報を、医療従事者に確認させるために出力装置34に表示させてもよい。また、読み取り完了後、プロセッサ36Aは、読取/送信部362の指示に従って、読み取った情報の適否を判定してもよい。具体的には、プロセッサ36Aは、読み取った情報に含まれる機種名および装置IDの各々と、ユーザ属性データベース351に記憶されている機種名および装置IDの各々とが一致するか否かを判定する。一致する場合、プロセッサ36Aは、読み取った情報を管理装置4へ送信する。これにより精度管理結果が管理装置4へ送信される。送信先は、読み取った情報の中に含まれていてもよいし、端末3に予め設定されていてもよい。送信タイミングは、自動送信であってもよいし、入力操作を受け付けたタイミングであってもよい。一方、機種名および装置IDの少なくとも一方が一致しない場合、プロセッサ36Aは、医療従事者に確認を促す画面を出力装置34に表示させてもよい。これにより、分析装置2の取り間違い、偽造コードの読み取り、なりすまし等を防止することができる。
【0083】
また、プロセッサ36Aは、外部精度管理結果取得部363の指示に従って、管理装置4から外部精度管理結果を取得する。プロセッサ36Aは、端末3にログインしている医療従事者のユーザIDと関連付けてユーザ属性データベース351に記憶されている装置IDで識別される分析装置2の外部精度管理結果を取得してもよい。外部精度管理結果の取得先は、例えば、管理装置4が提供するウェブページであってもよいし、管理装置4から送信された電子メールであってもよい。外部精度管理結果を取得する契機は、操作装置33にて入力操作を受け付けたことであってもよいし、予め定められたタイミングで自動取得してもよい。
【0084】
〔端末3の画面例〕
図26は、出力装置34に表示されるログイン画面の一例である。フィールド800は、ユーザIDおよびパスワードを受け付ける。
【0085】
図27は、ログイン後に出力装置34に表示されるメニュー画面の一例を示す図である。フィールド801は、例えばユーザに関する情報を表示する。例えば、ログインしている医療従事者のユーザIDと関連付けてユーザ属性データベース351に記憶されているユーザ名、機種名、装置IDを表示する。
【0086】
ボタン802にて操作を受け付けると、プロセッサ36Aは、外部精度管理結果取得部363の指示に従って外部精度管理結果を取得する。
【0087】
ボタン803にて操作を受け付けると、プロセッサ36Aは、読取/送信部362の指示に従って、情報コード読取処理を実行する。図28および図29は、読み取り完了後に出力装置34に表示される画面の一例である。図28に示す例は、機種名および装置IDが一致した場合の画面例である。フィールド804には読み取った情報が表示されている。これにより、医療従事者は、送信する情報に不足がないかを確認できる。図29に示す例は、機種名および装置IDが一致しない場合の画面例である。フィールド805には医療従事者に確認を促すメッセージが表示されている。フィールド806には読み取った情報が表示されている。
【0088】
〔管理装置4の構成例〕
図30に示すように、本実施形態に係る管理装置4は、例えば、通信装置41、操作装置43、出力装置44、記憶装置45A、プロセッサ46A、RAM47、およびROM48を備える。通信装置41は、プロセッサ46Aによる制御に従って通信ネットワーク5を介して端末3と通信を行うインターフェースである。操作装置43は、管理装置4に対する各種データの操作を受け付ける。操作装置43は、例えば、タッチパネル、マイクである。出力装置44は、管理装置4で処理された各種データを出力する。出力装置44は、例えば、タッチパネル、スピーカ、プリンタである。記憶装置45Aは、管理装置4が用いる各種データおよび各種プログラムを記憶するものであり、例えば、ソリッドステートドライブ等の半導体ドライブ、又は、ハードディスク等の磁気ディスクである。図31に示すように、記憶装置45Aは、例えば外部精度管理データベース451を記憶する。外部精度管理データベース451は、外部精度管理に必要となる情報および外部精度管理結果を、分析装置2の機種毎および精度管理検体の種類毎に管理する。
【0089】
プロセッサ46Aは、管理装置4の機能を統括して制御する制御部である。プロセッサ46Aは、例えばCPUである。プロセッサ46Aは、例えば論理回路により実現してもよい。プロセッサ46Aは、アプリケーション461Aを記憶装置45Aから読み出してRAM47へ展開して実行する。アプリケーション461Aは、各種処理を実行する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムとして、例えば、記憶装置45Aに格納されている。
【0090】
〔アプリケーション461Aの構成例〕
図32は、アプリケーション461Aの構成例を示す。アプリケーション461Aは、例えば、外部精度管理部462を含む。プロセッサ46Aは、外部精度管理部462の指示に従って、外部精度管理処理を実行する。外部精度管理処理では、端末3から送信された情報を受信するとともに外部精度管理データベース451に格納し、所定の設定時刻に至るか又は入力操作に応じて外部精度管理を実施し、外部精度管理結果を医療施設に提供する。
【0091】
〔端末3および管理装置4にて実行される処理の流れの例〕
図33は、端末3および管理装置4にて実行される処理の流れの例を示すフローチャートである。図17で説明したS163にて分析装置2に情報コードが表示された状態で、端末3のプロセッサ36Aにて情報コード読取処理を実行することにより、端末3の撮像装置32にて情報コードを読み取り(S21、取得工程)、読み取った情報を管理装置4へ送信する(S22、送信工程)。管理装置4のプロセッサ46Aは、端末3から送信された情報を受信するとともに外部精度管理データベース451に格納する(S31)。また、管理装置4のプロセッサ46Aは、例えば所定の設定時刻に至ると(S32にてYES)、外部精度管理のデータ集計および判定を実施する(S33)。外部精度管理のデータ集計は、例えば、集計期間内に複数の施設から管理装置4に送信された外部精度管理データに基づいて、同一ロットの精度管理検体に関する測定結果を母集団として統計値(例えば平均値または中央値)を算出することによって行われる。管理装置4のプロセッサ46Aは、算出した統計値に基づいて、各分析装置の外部精度管理結果が正常会場化を判定する。例えば個別の精度管理結果が全体平均値に対して2SDの範囲内に入る場合は正常と判定し、2SD外であれば異常と判定する。管理装置4のプロセッサ46Aは、このようにして得られた集計結果と判定結果を外部精度管理結果として端末3へ送信する(S34)。端末3のプロセッサ36Aは、外部精度管理結果を受信し(S23)、例えば出力装置34に表示する。
【0092】
〔免疫測定装置の場合〕
分析装置2の他の一例として免疫測定装置について説明する。免疫測定装置としては、例えばHISCL-5000(シスメックス株式会社製)がある。免疫測定においては精度管理結果のデータ量が血球計数装置と比べて多いため、精度管理結果を情報コードに記録しきれない場合があることから、分析装置2と端末3との情報の受け渡しは情報コードに代えて、近距離無線通信部20と近距離無線通信30との間でBluetoothなどの近距離無線通信を用いて行うことが望ましい。なお、近距離無線通信を用いると、情報コードを用いる場合と比べて、送信対象データの容量および種類を増やすことができるため、例えば、分析装置2が記憶する検量線のデータ、各種ログ、エラー情報、ステータス情報など、分析装置2が記憶する様々な情報を送信対象データとすることが可能となる。
【0093】
図34は、分析装置2が免疫測定装置である場合の精度管理データベース252のデータ構造の例を示す図である。同図に示す精度管理データベース252は、例えば以下に示す(D61)~(D73)の情報を関連付けて記憶する。なお、下記(D62)に示す測定項目の種類は例えば最大24であるため、血球計数と比べて精度管理結果のデータ量が増大する。例えば、測定項目が最大の24種類であり、精度管理検体の濃度レベルが2種類であり、一日に精度管理測定を2回実施する場合、一日分の精度管理結果として精度管理データベース252には96(=24×2×2)レコードが記憶される。
(D61)測定ID:精度管理測定の識別子である。
(D62)測定項目:精度管理測定の項目名である。測定項目の一例は、「FLUA」(インフルエンザA型)、「FLUB」(インフルエンザB型)である。
(D63)精度管理検体種別:精度管理測定に用いた精度管理検体の濃度レベルを示す種別である。精度管理検体種別の一例は、「FLU-L1」(レベル1)、「FLU-L2」(レベル2)、「FLU-L3」(レベル3)である。
(D64)ロット:精度管理測定に用いた精度管理検体のロット番号である。
(D65)有効期限:精度管理測定に用いた精度管理検体の有効期限である。
(D66)測定日:精度管理測定の実施日である。
(D67)測定時刻:精度管理測定の実施時刻である。測定日および測定時刻は統合して一項目としてもよい。
(D68)Concentration:精度管理結果の一つである精度管理検体の濃度である。後述するカウント値を検量線に適用することで換算される。
(D69)Count:精度管理結果の一つであるカウント値である。カウント値は、免疫測定装置が備える光学検出器(例えば光電子増倍管)が検出した光学的な特徴値であって、精度管理検体に含まれる被検物質の量に比例する。光電子増倍管の場合には検出したフォトンの数である。
(D70)Curve ID:検量線を示す識別子である。
(D71)Reagent 1:使用した試薬の種類である。
(D72)Reagent 2:使用した試薬の種類である。
(D73)フラグ:精度管理結果が抽出済みであるか否かを示すフラグである。
【0094】
図35は、分析装置2が免疫測定装置である場合の精度管理データベース252のレコードの具体例を示す。同図には4つのレコードが示されている。上側の2つのレコードは、精度管理検体種別がFLU-L1でありロットがJ337であり有効期限が2023年4月17日である精度管理検体を用いた精度管理結果を示す。精度管理測定の実施日時はそれぞれ2023年4月11日7時53分28秒および同日19時43分36秒である。下側の2つのレコードは、精度管理検体種別がFLU-L2でありロットがJ882であり有効期限が2023年4月17日である精度管理検体を用いた精度管理結果を示す。精度管理測定の実施日時はそれぞれ2023年4月11日7時54分33秒および同日19時44分22秒である。
【0095】
プロセッサ26Aが実行する精度管理情報抽出処理では、精度管理データベース252から抽出条件に合致する精度管理結果を取得し、取得した精度管理結果の各々またはこれらに基づき算出された値(統計値など)を含む、1または複数の送信用データを作成する(準備工程)。そして、作成した送信用データを近距離無線通信部20を介して端末3に送信する。端末3のプロセッサ36Aは近距離無線通信部30を介して送信用データを受信する(取得工程)。
【0096】
近距離無線通信により精度管理結果を送信する期間において、送信の進捗状況を示す画面を表示/操作装置24に表示することが望ましい。進捗状況を示す画面の一例を図36に示す。同図では、進捗状況をゲージで表示し、進捗割合を表示し、送信完了までの所要時間を表示している。このような進捗状況が表示されることにより、医療従事者は進捗状況を把握しながら別作業を行うこともできる。
【0097】
〔実施形態2]
実施形態1で説明した構成および処理と同様の構成および処理には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0098】
本実施形態は、サービススタッフが管理装置4を用いて入力した指示を、端末3を介して分析装置2へ送る形態について説明する。本実施形態によれば、サービススタッフは、医療従事者と電話等でやりとりすることなく、また、医療施設に出向くことなく、分析装置2に処理を実行させることができるため、保守運用等を効率的かつ迅速に実施することができる。また、指示を仲介する医療従事者は、情報コードを読み取らせるという簡便な操作のみで、かつ誤操作することなく、分析装置2に処理を実行させることができる。つまり、サービススタッフが医療施設に出向かなくても、また、医療従事者が分析装置2の取り扱いに習熟していなくても、分析装置2に対する対処(例えば、エラー復旧、各種設定など)を容易に実施することができる。
【0099】
〔管理装置4の構成例〕
図37に示すように、本実施形態に係る管理装置4は、記憶装置45Aおよびプロセッサ46Aに代えて記憶装置45Bおよびプロセッサ46Bを備える以外は、実施形態1の管理装置4と同じ構成である。
【0100】
記憶装置45Bは、管理装置4が用いる各種データおよび各種プログラムを記憶するものであり、例えば、ソリッドステートドライブ等の半導体ドライブ、又は、ハードディスク等の磁気ディスクである。図38に示すように、記憶装置45Bは、例えば、指示情報データベース452、およびユーザ属性データベース453を記憶する。
【0101】
指示情報データベース452は、分析装置2および分析装置2を取り扱う医療従事者に対する指示に関する情報を記憶するデータベースであり、例えばRDBである。当該指示とは、以下に示す(IN1)および(IN2)である。
【0102】
(IN1)分析装置2に対するコマンド
指示情報データベース452が記憶するコマンドは、分析装置2におけるユーザモードおよびサービスモード(サービススタッフのみがログイン可能なモード)の各々で実行可能なコマンドの全てが対象である。サービスモードで実行可能なコマンドを端末3を介して分析装置2に実行させることにより、サービススタッフが医療施設に出向かなくても分析装置2に対する対処が実施可能となる。コマンドの一例は、つまり除去、連続ブランクチェック、血液吸引センサのオフ、シャットダウン、シャットダウンして再起動、エラー履歴の読み出し、精度管理履歴の読み出し、サービスデータの読み出し、サービスデータの設定(例えば、スクリーンロックのオンおよびオフ、通知機能(例えば試薬残量通知機能)のオンおよびオフ、自動ウェイクアップの設定、自動シャットダウンの設定、など)、サービス設定リセットである。サービスモードでのみ実行可能なコマンドは例えば連続ブランクチェックである。つまり除去および連続ブランクチェックは、RBC検出器つまりに対処するためのコマンドであり、血液吸引センサのオフは、ショートサンプル(血液量不足)に対処するためのコマンドである。なお、連続ブランクチェックとは、ブランク値が閾値未満になるまでブランクチェックを繰り返す機能である。スクリーンロックとは、作業者が分析装置2から離れる場合などに別の作業者による操作ができないようにする機能である。
【0103】
(IN2)医療従事者に対する指示
医療従事者に実施してもらいたい作業等についての指示である。当該指示の一例は、精度管理測定の実施指示である。
【0104】
図39は、指示情報データベース452がRDBである場合のデータ構造の例を示す図である。同図に示すように、指示情報データベース452には、例えば以下に示す(D81)~(D83)の情報が関連付けられて記憶される。
(D81)装置ID:分析装置2の識別子である。
(D82)指示ID:指示の識別子である。具体的には、コマンドの識別子、および、医療従事者に対する指示の識別子のいずれかである。指示IDはこの両者を識別可能なID体系であることが望ましい。指示IDは、文字または数字の組み合わせで構成され、その桁数は少ないことが望ましい。
(D83)指示内容:指示の内容である。
【0105】
図40は、指示情報データベース452のレコードの具体例を示す。同図には、装置IDが「F5659」である分析装置2に関する指示が例示されている。
【0106】
ユーザ属性データベース453は、管理装置4のユーザであるサービススタッフに関する情報を記憶するデータベースであり、例えばRDBである。図41は、ユーザ属性データベース453がRDBである場合のデータ構造の例を示す図である。同図に示すように、ユーザ属性データベース453には、例えば以下に示す(D91)~(D97)の情報が関連付けられて記憶される。
(D91)ユーザID:サービススタッフの識別子である。
(D92)ユーザ名:サービススタッフの氏名である。
(D93)パスワード:サービススタッフが管理装置4にログインする際のパスワードである。
(D94)医療施設:サービススタッフと関連付ける分析装置2が設置されている医療施設の名称である。
(D95)送信先:サービススタッフから医療従事者へ送るデータの送信先を示す情報である。例えば、端末3の通信アドレスである。
(D96)装置ID:サービススタッフと関連付ける分析装置2の識別子である。
(D97)機種名:サービススタッフと関連付ける分析装置2の機種名である。
【0107】
図37に戻り、プロセッサ46Bは、管理装置4の機能を統括して制御する制御部である。プロセッサ46Bは、例えばCPUである。プロセッサ46Bは、例えば論理回路により実現してもよい。プロセッサ46Bは、アプリケーション461Bを記憶装置45Bから読み出してRAM47へ展開して実行する。アプリケーション461Bは、各種処理を実行する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムとして、例えば、記憶装置45Bに格納されている。
【0108】
〔アプリケーション461Bの構成例〕
図42は、アプリケーション461Bの構成例を示す。アプリケーション461Bは、例えば、指示情報作成部463を含む。
【0109】
プロセッサ46Bは、指示情報作成部463の指示に従って、指示情報作成画面4631を生成し、出力装置44に表示させる。指示情報作成画面4631は、指示情報を作成するための画面である。図43は、指示情報作成画面4631の一例を示す図である。図43に示すとおり、指示情報作成画面4631は、例えば、フィールド901~904、および、ボタン905を含む。
【0110】
フィールド901は、例えば、管理装置4にログインしているユーザに関する情報を表示する。フィールド901に表示する情報はユーザ属性データベース453から取得する。
【0111】
フィールド902は、例えば、分析装置2のステータスを表示する。図の例では、分析装置2のステータスとして「RBC検出部つまり」が表示されている。表示されるステータスは、分析装置2のステータスが記録された情報コードを読み取った端末3から送信されたものであってもよいし(後述の実施形態3を参照)、サービススタッフが医療従事者から聞き取ったステータスを操作装置43から入力したものであってもよい。
【0112】
フィールド903は、指示の選択、および、選択された指示の実行順序を受け付ける。選択候補となる指示は指示情報データベース452から取得する。同図に示す例では、指示として「つまり除去」および「連続ブランクチェック」の2つのコマンドが選択されており、「つまり除去」の実行順序が1番目(一次対応)であり「連続ブランクチェック」の実行順序が2番目(二次対応)とされている。このように、サービススタッフは、指示情報作成画面4631にて所望する指示を選択することができる。また、サービススタッフは、分析装置2に対する指示として複数のコマンドを連続して実行させたい場合、指示情報作成画面4631にて所望する複数のコマンドをまとめて選択し、それらの実行順序を指定することができる。よって、医療従事者であれば一つ一つ順番に分析装置2に実行させなければならないコマンドの各々をサービススタッフは一括で指示することができるとともに、実効性のあるトラブルシューティング等が可能となる。
【0113】
フィールド904は、選択された指示に関するメッセージの入力を受け付ける。メッセージとしては、例えば、分析装置2に実行させる処理に関する事項、医療従事者に知らせたい事項、医療従事者に実施してほしい事項などである。フィールド904には、指示毎に予め定められたメッセージが編集可能に表示されてもよい。
【0114】
ボタン905にて操作を受け付けると、プロセッサ46Bは、指示情報作成部463の指示に従って、フィールド903~904に入力された情報を含むデータ(指示データと記載する)を作成し、作成した指示データを端末3へ送信する。送信先はユーザ属性データベース443から取得する。
【0115】
指示データに含まれる情報の一例を以下の(D101)~(D104)に示す。(D101)は必須項目であり、(D102)~(D104)は任意項目である。
(D101)フィールド903において選択された指示の指示ID、および、指示の実行順序を示す順序情報。なお、指示データ内の指示IDの並び順を順序情報とみなしてもよいし、順序情報を示すデータを含んでいてもよい。
(D102)フィールド904において入力されたメッセージ。
(D103)指示対象となる分析装置2の装置IDおよび/または機種名。これらの情報は、指示対象となる分析装置2の取り間違えを防止するために利用できる。
(D104)指示データの発行日時および/または有効期限。発行日時は指示データの作成日時であり、有効期限は発行日時の所定時間後(例えば30分)である。これらの情報は、指示データの使い回しおよび不正利用を防止するために利用できる。
【0116】
〔端末3の構成例〕
図44に示すように、本実施形態に係る端末3は、プロセッサ36Aに代えてプロセッサ36Bを備える以外は、実施形態1の端末3と同じ構成である。
【0117】
プロセッサ36Bは、端末3の機能を統括して制御する制御部である。プロセッサ36Bは、例えばCPUである。プロセッサ36Bは、例えば論理回路により実現してもよい。プロセッサ36Bは、アプリケーション361Bを記憶装置35Aから読み出してRAM37へ展開して実行する。アプリケーション361Bは、各種処理を実行する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムとして、例えば、記憶装置35Aに格納されている。
【0118】
〔アプリケーション361Bの構成例〕
図45は、アプリケーション361Bの構成例を示す。アプリケーション361Bは、例えば、読取/送信部362、および表示制御部364を含む。
【0119】
管理装置4から指示データを受信すると、プロセッサ36Bは、表示制御部364の指示に従って表示制御処理を実行する。表示制御処理では次に示す(表示制御処理1)および(表示制御処理2)を行う。
【0120】
(表示制御処理1)指示データに含まれる指示IDがコマンドの識別子である場合、当該コマンドを読み取り可能な情報コードを作成し、作成された情報コードを出力装置34に表示させる。
【0121】
(表示制御処理2)指示データに含まれる指示IDが医療従事者に対する指示の識別子である場合、指示IDに応じた画面を出力装置34に表示させる。
【0122】
〔画面例および情報コードの例〕
図46は、指示ID「B1002」(つまり除去)および「B1003」(連続ブランクチェック)を含む指示データを受信したときに表示制御処理1により表示される画面の一例である。
【0123】
フィールド911は、メッセージを表示する。このメッセージは、図43に示した指示情報作成画面4631にて入力されたメッセージである。このようにメッセージを表示させることにより、例えば指示内容を医療従事者に知らせたり、情報コードを分析装置2に読み取らせる以外に実施してほしい事項について医療従事者に連絡することができるため、確実なトラブルシューティング等が可能となる。
【0124】
フィールド912は、情報コードを表示する。この情報コードは、図43に示した指示情報作成画面4631にて選択された「つまり除去」および「連続ブランクチェック」をこの順序で実行させるための情報コードである。この情報コードに記録される情報は、例えば以下の(D111)~(D116)に示すとおりである。これらの情報をCSV形式にしたデータが情報コードに記録されている。
(D111)第1コード種別:一例として「Instruction」。
(D112)第2コード種別:不使用。一例としてNULL値。
(D113)日時情報:指示データに含まれる日時情報(発行日時および/または有効期限)。
(D114)機種名:指示データに含まれる機種名。
(D115)装置ID:指示データに含まれる分析装置2の識別子。
(D116)データ本体:指示データに含まれる1または複数の指示ID。
【0125】
情報コードに記録されるデータの具体例を以下に示す。
「Instruction,,2023/04/11 17:59:22,XQ-320,F5659,B1002,B1003」。
【0126】
この具体例では、第1コード種別「Instruction」、第2コード種別「NULL値」、日時情報「2023年4月11日17時59分22秒」、機種名「XQ-320」、装置ID「F5659」、および、指示ID「B1002」「B1003」が、CSV形式で示されている。第1コード種別に「Instruction」の文字列が格納されていることにより、分析装置2はこの情報コードが指示を含むものであることを認識する。機種名及び装置IDは、分析装置2が指示の対象であることを確認するために使用される。読み取った情報コードに含まれる機種名及び装置IDが分析装置2に記憶されている機種名及び装置IDと一致しない場合、分析装置2はエラー表示を行う。指示IDの記録順序は実行順序を示す。「B1002」(つまり除去)および「B1003」(連続ブランクチェック)がこの順に記録されていることにより、情報コードを読み取った分析装置2はこの順序でコマンドを実行する。図46の例では、図示される情報コードを読み取った分析装置2は、つまり除去を実行した後に連続ブランクチェックを実行する。このように複数の処理を分析装置2に実行させる場合であっても情報コードの読み取り回数は1回で足りる。つまり、何度も分析装置2に情報コードを読み取らせる必要は無いため、医療従事者の操作が簡便となる。
【0127】
図47は、指示ID「S4099」(血液吸引センサのオフ)を含む指示データを受信したときに表示制御処理1により表示される画面の他の一例である。フィールド914には、分析装置2の血液吸引センサのオフを実行させるための情報コードが表示されている。この情報コードに記録されているデータの具体例を以下に示す。
「Instruction,,2023/04/11 17:59:22,XQ-320,F5659,S4099」
この具体例では、第1コード種別「Instruction」、第2コード種別「NULL値」、日時情報「2023年4月11日17時59分22秒」、機種名「XQ-320」、装置ID「F5659」、および、指示ID「S4099」(血液吸引センサのオフ)が、CSV形式で示されている。分析装置2は、この情報コードを読み取ると血液吸引センサをオフに切り替える。
【0128】
図48は、指示ID「S1181」(スクリーンロックのオフ)を含む指示データを受信したときに表示制御処理1により表示される画面の他の一例である。フィールド916には、分析装置2のスクリーンロックのオフを実行させるための情報コードが表示されている。この情報コードに記録されているデータの具体例を以下に示す。
「Instruction,,2023/04/11 17:59:22,XQ-320,F5659,S1181」
この具体例では、第1コード種別「Instruction」、第2コード種別「NULL値」、日時情報「2023年4月11日17時59分22秒」、機種名「XQ-320」、装置ID「F5659」、および、指示ID「S1181」(スクリーンロックのオフ)が、CSV形式で示されている。分析装置2は、この情報コードを読み取るとスクリーンロック機能をオフに切り替える。
【0129】
図49は、指示ID「X882」(エラー履歴の読み出し)を含む指示データを受信したときに表示制御処理1により表示される画面の他の一例である。フィールド918には、分析装置2から直近のエラー履歴を抽出する処理を実行させるための情報コードが表示されている。この情報コードに記録されているデータの具体例を以下に示す。
「Instruction,,2023/04/11 17:59:22,XQ-320,F5659,X882」
この具体例では、第1コード種別「Instruction」、第2コード種別「NULL値」、日時情報「2023年4月11日17時59分22秒」、機種名「XQ-320」、装置ID「F5659」、および、指示ID「X882」(エラー履歴の読み出し)が、CSV形式で示されている。分析装置2は、この情報コードを読み取ると、分析装置2に記憶されている直近のエラー履歴を読み出し、読み出されたエラー履歴の情報に基づいて情報コードを作成して表示する(画面例について後述の図60参照)。ユーザは、図49の情報コードを分析装置2に読み取らせた後、端末3の画面に表示されている「カメラ起動」ボタンを操作する。カメラが起動すると、ユーザは端末3によってエラー履歴の情報に基づく情報コードを撮影し、管理装置4に送信することが可能となる。
【0130】
図50は、指示ID「Q220」(精度管理測定の実施)を含む指示データを受信したときに表示制御処理2により表示される画面の一例である。本画面例では、医療従事者に対する指示として、精度管理測定すること、および、精度管理結果として分析装置2に表示される情報コードを読み取ること、が表示されている。医療従事者はこれらの指示に従って分析装置2を操作する。分析装置2にて精度管理測定を実施した後に、精度管理結果が記録されている情報コードを表示する分析装置2の画面例を図51に示す。医療従事者は当該情報コードを端末3の撮像装置32にて読み取る。
【0131】
〔分析装置2の構成例〕
図52に示すように、本実施形態に係る分析装置2は、記憶装置25Aおよびプロセッサ26Aに代えて記憶装置25B(記憶部)およびプロセッサ26Bを備え、さらに、読取部29を備えるか又は取り付け可能である以外は、実施形態1の分析装置2と同じ構成である。
【0132】
読取部29は、端末3の出力装置34に表示された情報コードを光学的に読み取るためのリーダである。医療従事者の読み取り作業の容易化のために読取部29はハンディタイプであってもよい。
【0133】
記憶装置25Bは、分析装置2が用いる各種データおよび各種プログラムを記憶するものであり、例えば、ソリッドステートドライブ等の半導体ドライブ、又は、ハードディスク等の磁気ディスクである。図53に示すように、記憶装置25Bは、例えば、装置属性データベース251、精度管理データベース252に加え、コマンド情報データベース253、エラー履歴データベース254、およびサービスデータ情報データベース255を記憶する。
【0134】
コマンド情報データベース253は、分析装置2が実行可能なコマンドを記憶するデータベースであり、例えばRDBである。図54は、コマンド情報データベース253がRDBである場合のデータ構造の例を示す図である。同図に示すように、コマンド情報データベース253は、例えば以下に示す(D121)~(D122)の情報を関連付けて記憶する。
(D121)コマンドID:コマンドの識別子である。管理装置4の指示情報データベース452に記憶される指示IDのうちのコマンドの識別子と対応している。
(D122)処理:コマンドIDに対応する1つの処理、または、複数の処理の組である。
【0135】
図55は、コマンド情報データベース253のレコードの具体例を示す。
【0136】
エラー履歴データベース254は、分析装置2にて発生したエラーに関する履歴を記憶するデータベースであり、例えばRDBである。エラーとは、例えば、圧力、温度、試薬、モータ、検体測定、カバー、メンテナンス、サンプラ測定動作などに関連する異常および警告などである。エラーの具体例は、RBC検出器つまり、圧力異常低下、などである。図56は、エラー履歴データベース254がRDBである場合のデータ構造の例を示す図である。同図に示すように、エラー履歴データベース254は、例えば以下に示す(D31)~(D134)の情報を関連付けて記憶する。
(D131)エラーID:エラー毎に付される識別子である。
(D132)発生日時:エラーが発生した日時である。
(D133)エラーコード:エラーの種別を示す識別子である。エラーコードは、例えばエラー発生時に表示/操作装置24に表示される。
(D134)エラーメッセージ:エラーの概要を示すメッセージである。エラーメッセージは、例えばエラー発生時に表示/操作装置24に表示される。
【0137】
図57は、エラー履歴データベース254のレコードの具体例を示す。同図には2つのレコードが示されている。図の上側のレコードは、「RBC検出器つまり」が発生した履歴を示す。図の下側のレコードは、「圧力異常低下」が発生した履歴を示す。
【0138】
サービスデータ情報データベース255は、分析装置2にて収集される各種情報または分析装置2に設定する各種パラメータ(これらを以下では「サービスデータ」と称する。)を記憶するデータベースであり、例えばRDBである。サービスデータ情報データベース255に記憶されるハードウェア関連のサービスデータの一例を以下に示す。
・ユニットの動作回数(例えば、トータル、定期洗浄、ピアサー、全血吸引モータ、エアーポンプ、ピンチバルブなど)
・各種圧力データ(陽圧、陰圧)
・環境温度
・各部の監視に使用されるセンサのデータ(例えば、血液吸引センサ、WBC/HGB検出センサ、RBC検出センサ、MIXチャンバー検出センサ)
サービスデータ情報データベース255に記憶される血球数測定関連のサービスデータの一例を以下に示す。
・ノイズを監視するためのサンプリングデータ(例えば、一定間隔で計測したRBC/PLTチャンネルの粒子数)
・参考データ(例えば、赤血球容積最頻値、血小板容積最頻値、RBC二峰粒度分布の平均大型赤血球容積、RBC二峰粒度分布の平均小型赤血球容積、RBC二峰粒度分布の大型赤血球数、RBC二峰粒度分布の小型赤血球数)
・RBC粒度分布のディスクリミネータの位置(例えば、RBC粒度分布の赤血球領域の下限位置、RBC粒度分布の二峰間の谷の位置、RBC粒度分布の赤血球領域の上限位置)
・PLT粒度分布のディスクリミネータの位置(例えば、PLT粒度分布の赤血球領域の下限位置、RBC粒度分布の赤血球領域の上限位置)
・ヘモグロビンの測定値(例えば、A/D変換されたサンプル試料の光学的濃度、A/D変換されたブランク試料の光学的濃度)
・粒度分布異常フラグ
・RBC測定に関する値(例えば、RBC検出器のつまり度合いを電気的に検出した数値、RBC検出器の泡の個数)
図52に戻り、プロセッサ26Bは、分析装置2の機能を統括して制御する制御部である。プロセッサ26Bは、例えばCPUである。プロセッサ26Bは、例えば論理回路により実現してもよい。プロセッサ26Bは、アプリケーション261Bを記憶装置25Bから読み出してRAM27へ展開して実行する。アプリケーション261Bは、各種処理を実行する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムとして、例えば、記憶装置25Bに格納されている。
【0139】
〔アプリケーション261Bの構成例〕
図58は、アプリケーション261Bの構成例を示す。アプリケーション261Bは、精度管理測定部262、検体測定部263、および情報抽出部264に加えて、例えば読取実行部265を含む。
【0140】
プロセッサ26Bは、読取実行部265の指示に従って、読取部29にて情報コードから読み取った情報に基づき以下に示す(処理P1)を実行する。(処理P1)を実行する前に(処理P2)および/または(処理P3)を実行してもよい。
【0141】
(処理P1)プロセッサ26Bは、読み取った情報に含まれる「第1コード種別」および「第2コード種別」により情報コードに記録されている情報の種別を判定する。第1コード種別が「Instruction」である場合、読み取った情報に含まれる指示IDに対応する処理をコマンド情報データベース253を参照して特定し、特定した処理を実行するよう、分析装置2の各部を制御する。
【0142】
特定した処理が精度管理履歴の読み出しである場合、プロセッサ26Bは、情報抽出部264の指示に従って精度管理情報抽出処理を実行する。精度管理情報抽出処理では、精度管理データベース252から所定の抽出条件に合致する精度管理結果(例えば、直近1週間に得られた精度管理結果)を取得し、取得した精度管理結果の各々またはこれらに基づき算出された値(統計値など)を読み取り可能な情報コードを作成し、作成された情報コードを表示/操作装置24に表示させる。この場合に表示される画面例を図59に示す。所定の抽出条件に合致する精度管理結果は、管理装置4に取得させるべき管理情報の一つである。
【0143】
特定した処理がエラー履歴の読み出しである場合、プロセッサ26Bは、情報抽出部264の指示に従ってエラー履歴抽出処理を実行する。エラー履歴抽出処理では、エラー履歴データベース254から所定の抽出条件に合致するエラー履歴(例えば、直近1週間に得られたエラー履歴、ユーザ設定等により出力が許可されているエラー履歴、など)を取得し、取得したエラー履歴の各々を読み取り可能な情報コードを作成し、作成された情報コードを表示/操作装置24に表示させる。この場合に表示される画面例を図60に示す。所定の抽出条件に合致するエラー履歴は、管理装置4に取得させるべき管理情報である。
【0144】
特定した処理がサービスデータの読み出しである場合、プロセッサ26Bは、情報抽出部264の指示に従ってサービスデータ抽出処理を実行する。サービスデータ抽出処理では、サービスデータ情報データベース255から所定の抽出条件に合致するサービスデータ(例えば、予め定められたサービスデータ、ユーザ設定等により出力が許可されているサービスデータ、など)を取得し、取得したサービスデータの各々を読み取り可能な情報コードを作成し、作成された情報コードを表示/操作装置24に表示させる。この場合に表示される画面例を図61に示す。所定の抽出条件に合致するサービスデータは、管理装置4に取得させるべき管理情報の一つである。
【0145】
(処理P2)プロセッサ26Bは、読み取った情報に含まれる装置IDと、装置属性データベース251に記憶される装置IDとが一致するか否かを判定してもよい。装置IDが一致した場合はプロセッサ26Bは読取処理を実行し、装置IDが一致しない場合はプロセッサ26Bは読取処理を中止してもよい。これにより、例えば医療施設に複数の分析装置2が設置されている場合、本来の分析装置に読み取らせるべき情報コードを誤って別の分析装置に読み取らせることにより実行すべきでない処理を当該別の分析装置に実行させてしまうという事態を回避することができる。つまり、処理を実行させる分析装置2の取り間違えを防止することができるので、例えば確実なトラブルシューティング等が可能となる。なお、読取処理を中止する場合、プロセッサ26Bは、装置IDが一致しないことを示すメッセージを表示/操作装置24に表示させてもよい。
【0146】
(処理P3)プロセッサ26Bは、読み取った情報に含まれる日時情報(発行日時および/または有効期限)に基づき情報コードが有効であるか否かを判定してもよい。例えば、読み取った情報に含まれる発行日時と現在時刻との差が所定時間(例えば30分)以上である場合は情報コードは無効であると判定してもよい。また、例えば、読み取った情報に含まれる有効期限を過ぎている場合は情報コードは無効であると判定してもよい。有効と判定した場合はプロセッサ26Bは読取処理を実行し、無効と判定した場合はプロセッサ26Bは読取処理を中止してもよい。これにより、過去に使用された情報コードの使い回しを防止することができる。そのため、例えば、サービスモードでしか得られない情報をユーザが不正利用目的で入手したり、サービスモードでしか実行できない処理をサービススタッフの許可なく分析装置2に実行させることを防止できる。なお、読取処理を中止する場合、プロセッサ26Bは、情報コードが無効であることを示すメッセージを表示/操作装置24に表示させてもよい。
【0147】
〔処理の流れの例〕
図62は、管理装置4から端末3を介して分析装置2に処理を実行させる処理の流れの例を示すフローチャートである。管理装置4のプロセッサ46Aは、例えば指示情報作成画面4631にて指示を受け付け(S41)、指示データを端末3へ送信する(S42)。端末3のプロセッサ36Aは、指示データを受信し(S43)、例えば指示データを読み取り可能な情報コードを作成し出力装置34に表示させる(S44、表示工程)。言い換えれば、ステップS44では、プロセッサ36Aは、分析装置2に実行させる処理に関する情報を出力装置34に提示する(提示工程)。分析装置2のプロセッサ26Aは、情報コードを読み取り(S45、読取工程)、読み取った情報に含まれる指示に応じた処理を実行する(S46、実行工程)。このように、医療従事者は、端末3に表示された情報コードを分析装置2に読み取らせるという簡便な操作を行うだけでサービススタッフからの指示に基づく処理を分析装置2に実行させることができる。また、サービススタッフは、医療従事者と電話等でやりとりすることなく、また、医療施設に出向くことなく、分析装置2に処理を実行させることができるため、保守運用等を効率的かつ迅速に実施することができる。
【0148】
図63は、図62に示したフローチャートの変形例を示す。本変形例ではS47~S50が追加されている。分析装置2のプロセッサ26Aは、S46にて処理を実行した後、例えば、精度管理結果を読み取り可能な情報コードを表示/操作装置24に表示させる(S47、準備工程)。端末3のプロセッサ36Aは、撮像装置32にて情報コードを読み取り(S48)、読み取った情報を管理装置4へ送信する(S49)。管理装置4のプロセッサ46Aは当該情報を受信する(S50)。このように、サービススタッフは、S41にて指示した結果としてS50にて例えば精度管理結果を受け取ることができるため、指示後の分析装置2の状態を確認しながらさらなる他の指示を行う等、柔軟な保守運用を実施することができる。なお、分析装置2から端末3へ送るデータ量が多い場合、S47~S48において情報コードを読み取る代わりに、実施形態1で説明したようにBluetooth等の近距離無線通信により分析装置2から端末3へ情報を送信してもよい。
【0149】
〔実施形態3]
上述した実施形態で説明した構成および処理と同様の構成および処理には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0150】
本実施形態は、分析装置2にて発生したエラーに関する情報(以下では「エラー情報」と称する。)を、端末3を介して管理装置4へ送る形態について説明する。エラーとは、実施形態2で説明したとおり、例えば、圧力、温度、試薬、モータ、検体測定、カバー、メンテナンス、サンプラ測定動作などに関連する異常および警告などである。エラーの具体例は、RBC検出器つまり、圧力異常低下、などである。本実施形態によれば、医療施設外の装置と通信できない環境下で動作する分析装置2が記憶するエラー情報を管理装置4に送ることができる。しかも、これを、情報コードを読み取らせるという簡便な操作のみで、かつ誤操作することなく実施できるため、分析装置2の取り扱いに習熟していない医療従事者であっても容易に実施することができる。また、分析装置2のエラー情報について医療従事者が電話等でサービススタッフに伝えずとも、サービススタッフはエラー情報を正確に知ることができ、確実なトラブルシューティング等を実施することができる。
【0151】
〔分析装置2の構成例〕
図64に示すように、本実施形態に係る分析装置2は、プロセッサ26Bに代えてプロセッサ26Cを備える以外は、実施形態2の分析装置2と同じ構成である。
【0152】
プロセッサ26Cは、分析装置2の機能を統括して制御する制御部である。プロセッサ26Cは、例えばCPUである。プロセッサ26Cは、例えば論理回路により実現してもよい。プロセッサ26Cは、アプリケーション261Cを記憶装置25Bから読み出してRAM27へ展開して実行する。アプリケーション261Cは、各種処理を実行する制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラムとして、例えば、記憶装置25Bに格納されている。
【0153】
〔アプリケーション261Cの構成例〕
図65は、アプリケーション261Cの構成例を示す。アプリケーション261Cは、精度管理測定部262、検体測定部263、情報抽出部264、および読取実行部265に加えて、例えばエラー情報通知部266を含む。
【0154】
プロセッサ26Cは、エラー情報通知部266の指示に従ってエラー情報抽出処理を実行する。エラー情報抽出処理を実行する契機の典型例は、エラーが発生した時点であるが、表示/操作装置24にて所定の入力操作を受け付けたときであってもよい。
【0155】
エラー情報抽出処理の典型例は、エラー履歴データベース254から所定の抽出条件に合致するエラー履歴(例えば直近に発生した1つまたは複数のエラー)を取得し、取得したエラー履歴を読み取り可能な情報コードを作成し、作成された情報コードを表示/操作装置24に表示させる。エラー情報抽出処理により作成される情報コードに記録される情報は、例えば以下の(D141)~(D146)に示すとおりである。これらの情報をCSV形式にしたデータが情報コードに記録される。
(D141)第1コード種別:一例として「Error」。
(D142)第2コード種別:不使用。一例としてNULL値。
(D143)日時情報:情報コードを作成した日時である。
(D144)機種名:情報コードを作成した分析装置2の機種名。装置属性データベース251から取得される。
(D145)装置ID:情報コードを作成した分析装置2の識別子。装置属性データベース251から取得される。
(D146)データ本体:エラーに関する情報。具体的には、エラー発生日時、エラーコード、およびエラーメッセージが含まれる。エラー履歴データベース254から取得される。
【0156】
〔画面例〕
図66は、「RBC検出部つまり」が発生したときにエラー情報通知部266が表示/操作装置24に表示させる画面例を示す。
【0157】
ボタン1001にて操作を受け付けると、プロセッサ26Cは、分析装置2に各部を制御し、RBC検出部つまりを解消するための予め設定された動作を実行させる。これにより、例えば、当日にRBC検出部つまりが初めて発生したときなど、サービススタッフの支援を得ずに医療従事者がまずは自力でエラーの解消を試みることができる。
【0158】
ボタン1002にて操作を受け付けると、プロセッサ26Cは、エラー情報通知部266の指示に従ってエラー情報抽出処理を実行し、作成した情報コードを表示/操作装置24に表示させる。図67は、当該作成した情報コードを表示する画面の一例を示す図である。これにより、医療従事者がRBC検出部つまりを自力で解消できないときなどサービススタッフのサポートを得る必要がある場合において、端末3を介してサービススタッフにエラー情報を知らせることができる。
【0159】
この情報コードに記録されているデータの具体例を以下に示す。
「Error,,2023/04/11 17:59:22,XQ-320,F5659,2023/03/30 16:28:00,311240」
この具体例では、第1コード種別「Error」、第2コード種別「NULL値」、日時情報「2023年4月11日17時59分22秒」、機種名「XQ-320」、装置ID「F5659」、エラー発生日時「2023年3月30日16時28分00秒」、およびエラーコード「311240」(RBC検出部つまり)が、CSV形式で示されている。
【0160】
なお、端末3にて情報コードを読み取り、読み取った情報を管理装置4へ送信した後、その応答として端末3は管理装置4から受領通知を受信することが望ましい。これにより、医療従事者はサービススタッフへエラー情報を知らせることができたことを認識できる。図68は、端末3にて受領通知を表示する画面例である。
【0161】
図69は、「ショートサンプル(血液量不足)」が発生したときに作成される情報コードを表示する画面の一例を示す図である。この情報コードに記録されているデータの具体例を以下に示す。
「Error,,2023/04/11 17:59:22,XQ-320,F5659,2023/03/30 16:28:00,228239」
この具体例では、第1コード種別「Error」、第2コード種別「NULL値」、日時情報「2023年4月11日17時59分22秒」、機種名「XQ-320」、装置ID「F5659」、エラー発生日時「2023年3月30日16時28分00秒」、およびエラーコード「228239」(ショートサンプル)が、CSV形式で示されている。
【0162】
〔処理の流れ〕
図70は、分析装置2にて発生したエラーに関する情報を端末3を介して管理装置4へ送る処理の流れの例を示すフローチャートである。分析装置2のプロセッサ26Cは、エラーを検出すると(S51)、エラー情報抽出処理を実行し、エラー情報を読み取り可能な情報コードを表示/操作装置24に表示させる(S52、準備工程)。端末3は、撮像装置32にて情報コードを読み取り(S53)、読み取った情報を管理装置4へ送信する(S54)。管理装置4は当該情報を受信し(S55)、サービススタッフは当該情報に基づき対処を実施する。
【0163】
図71は、図70に示したフローチャートを拡張した例を示す。本例は、S55の後、実施形態2で説明した図62に示すS41~S46を実施する例である。サービススタッフが実施する対処の一例として、管理装置4において例えば図43に示した指示情報作成画面4631にてエラーに対処するための指示を受け付け(S41)、指示データを端末3へ送信する(S42)。
【0164】
一例として、S55でRBC検出部つまりに関するエラー情報を受け取ったときの対処例として、S41では、指示情報作成画面4631を用いて「つまり除去」および「連続ブランクチェック」を分析装置2にて実行させるための指示の入力を受け付ける。なお、この場合の指示情報作成画面4631におけるフィールド902には図43に示したとおり分析装置2のステータスとして「RBC検出部つまり」と表示されていることが望ましい。
【0165】
他の一例として、S55でショートサンプルに関するエラー情報を受け取ったときの対処例として、S41では、指示情報作成画面4631を用いて「血液吸引センサのオフ」を分析装置2にて実行させるための指示の入力を受け付ける。なお、この場合の指示情報作成画面4631におけるフィールド902には分析装置2のステータスとして「ショートサンプル」と表示されていることが望ましい。
【0166】
端末3は、指示データを受信し(S43)、指示データを読み取り可能な情報コードを出力装置34に表示させる(S44)。分析装置2のプロセッサ26Cは、情報コードを読み取り(S45)、読み取った情報に応じた処理を実行する(S46)。以上の流れにより、エラー情報を受けたサービススタッフがエラーに対処するためのコマンドを分析装置2に実行させることができる。
【0167】
[変形例1]
図71に示したS41において、エラーに対処するための指示をサービススタッフから受け付ける代わりに、管理装置4が当該指示を自動的に決定してもよい。具体的には、管理装置4は、エラー情報と指示とが対応付けられたデータベースを記憶装置25Bに記憶し、S55にて受信した情報に対応する指示を当該データベースを参照することにより自動的に決定してもよい。
【0168】
[変形例2]
上記変形例1にて説明した自動化を行う場合において、指示を決定する動作主体は端末3であってもよい。具体的には、端末3は、エラー情報と指示とが対応付けられたデータベースを端末3の記憶装置35Aが記憶し、S53にて読み取った情報に対応する指示を当該データベースを参照することにより決定してもよい。
【0169】
〔実施形態4]
上述した実施形態で説明した構成および処理と同様の構成および処理には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0170】
本実施形態は、分析装置2が記憶する情報を抽出し、端末3を介して管理装置4に送る形態である。分析装置2が記憶する情報を抽出する処理が実行される契機は、例えば、分析装置2の表示/操作装置24にて入力操作の受け付けたときであってもよい。これにより、医療従事者は、自発的に、または、サービススタッフから電話等で依頼を受けた場合に、分析装置2に情報抽出処理を実行させることができる。
【0171】
例えば、表示/操作装置24にて所定の入力操作を受け付けると、プロセッサ26Bは、情報抽出部264の指示に従って情報抽出処理を実行し、作成した情報コードを表示/操作装置24に表示させる。図72は、抽出する情報を選択するための画面の一例を示す図である。当該画面はメニュー画面から遷移可能であってもよい。同図に示す例では、精度管理履歴、エラー履歴、サービスデータのいずれかを選択するメニューとしてのボタン1101~1103が設けられている。
【0172】
ボタン1101にて操作を受け付けると、プロセッサ26Bは、精度管理データベース252から所定の抽出条件に合致する精度管理結果を取得し、取得した精度管理結果の各々またはこれらに基づき算出された値(統計値など)を読み取り可能な情報コードを作成し、作成された情報コードを表示/操作装置24に表示させる。この場合に表示される画面例は例えば図59と同様である。
【0173】
ボタン1102にて操作を受け付けると、プロセッサ26Bは、エラー履歴データベース254から所定の抽出条件に合致するエラー履歴を取得し、取得したエラー履歴の各々を読み取り可能な情報コードを作成し、作成された情報コードを表示/操作装置24に表示させる。この場合に表示される画面例は例えば図60と同様である。
【0174】
ボタン1103にて操作を受け付けると、プロセッサ26Bは、サービスデータ情報データベース255から所定の抽出条件に合致するサービスデータを取得し、取得したサービスデータの各々を読み取り可能な情報コードを作成し、作成された情報コードを表示/操作装置24に表示させる。この場合に表示される画面例は例えば図61と同様である。
【0175】
図73は、情報抽出処理の流れの例を示すフローチャートである。分析装置2のプロセッサ26Bは、情報コードを作成する入力操作を受け付けると(S61)、入力操作に応じた情報を読み取り可能な情報コードを表示/操作装置24に表示させる(S62、準備工程)。端末3は、撮像装置32にて情報コードを読み取り(S63)、読み取った情報を管理装置4へ送信する(S64)。管理装置4は当該情報を受信し(S65)、サービススタッフは当該情報に基づき保守運用等を実施する。なお、分析装置2から端末3へ送るデータ量が多い場合、S62~S63において情報コードを読み取る代わりに、実施形態1で説明したようにBluetooth等の近距離無線通信により分析装置2から端末3へ情報を送信してもよい。
【0176】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0177】
1 管理支援システム
2 分析装置
3 端末
4 管理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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