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特開2025-21001作業機械の性能を評価するためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021001
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】作業機械の性能を評価するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20250205BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
F02D45/00 364E
F02D45/00 362
F02D23/00 N
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124673
(22)【出願日】2023-07-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-01-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】小澤 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 遼二
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AA02
3G092AC06
3G092BB01
3G092EB01
3G092FA06
3G092HA04Z
3G092HA16Z
3G092HE01Z
3G092HE08Z
3G092HF08Z
3G092HF14Z
3G092HF21Z
3G092HG08Z
3G384AA24
3G384BA02
3G384BA07
3G384BA13
3G384BA43
3G384DA33
3G384ED06
3G384EE16
3G384FA06Z
3G384FA11Z
3G384FA28Z
3G384FA54Z
3G384FA55Z
3G384FA56Z
3G384FA57Z
3G384FA73Z
3G384FA79Z
3G384FA85Z
3G384FA86Z
(57)【要約】
【課題】作業機械において、チャージ圧の乖離度を精度よく算出する。
【解決手段】システムは、実チャージ圧取得部と、目標トルク取得部と、エンジン回転速度取得部と、チャージ圧推定部と、チャージ圧補正部と、乖離度算出部とを備える。実チャージ圧取得部は、実チャージ圧を取得する。目標トルク取得部は、エンジンの目標出力トルクを取得する。エンジン回転速度取得部は、エンジンの実回転速度を取得する。チャージ圧推定部は、目標出力トルクと実回転速度とに基づいて、推定チャージ圧を算出する。チャージ圧補正部は、目標出力トルクを変化させる所定の補正パラメータの変化量を、第1トルク変化量として取得する。チャージ圧補正部は、第1トルク変化量に基づいて、推定チャージ圧を補正する。乖離度算出部は、実チャージ圧と補正された推定チャージ圧との乖離度を算出する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンに接続されるターボチャージャとを含む作業機械の性能を評価するためのシステムであって、
前記ターボチャージャの実チャージ圧を取得する実チャージ圧取得部と、
前記エンジンの目標出力トルクを取得する目標トルク取得部と、
前記エンジンの実回転速度を取得するエンジン回転速度取得部と、
前記エンジンの目標出力トルクと前記エンジンの実回転速度とに基づいて、前記ターボチャージャの推定チャージ圧を算出するチャージ圧推定部と、
前記エンジンの目標出力トルクを変化させる所定の補正パラメータの変化量を、第1トルク変化量として取得し、前記第1トルク変化量に基づいて、前記推定チャージ圧を補正するチャージ圧補正部と、
前記実チャージ圧と補正された前記推定チャージ圧との乖離度を算出する乖離度算出部と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記所定の補正パラメータは、前記目標出力トルクである、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1トルク変化量は、第1時間の間の前記目標出力トルクの変化量である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記チャージ圧補正部は、前記第1時間よりも長い第2時間の間の前記目標出力トルクの変化量を示す第2トルク変化量を取得し、前記第1トルク変化量と前記第2トルク変化量とに基づいて、前記推定チャージ圧を補正する、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記チャージ圧補正部は、前記エンジンの実回転速度の変化量を示す第1回転速度変化量を取得し、前記第1回転速度変化量に基づいて、前記推定チャージ圧を補正する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1回転速度変化量は、第1時間の間の前記エンジンの実回転速度の変化量である、
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記チャージ圧補正部は、前記第1時間よりも長い第2時間の間の前記エンジンの実回転速度の変化量を示す第2回転速度変化量を取得し、前記第1回転速度変化量と前記第2回転速度変化量とに基づいて、前記推定チャージ圧を補正する、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記チャージ圧補正部は、大気圧を取得し、前記大気圧に基づいて、前記推定チャージ圧を補正する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記チャージ圧補正部は、外気温を取得し、前記外気温に基づいて、前記推定チャージ圧を補正する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
所定条件を満たす場合に取得された前記乖離度を選別するフィルタリング部をさらに備え、
前記所定条件は、前記エンジンの目標出力トルクが所定範囲内であることを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記乖離度を時系列的に記録することで、前記性能を評価するためのデータを生成する判定データ生成部をさらに備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
エンジンと、前記エンジンに接続されるターボチャージャとを含む作業機械の性能を評価するためのシステムであって、
前記ターボチャージャの実チャージ圧を取得する実チャージ圧取得部と、
前記エンジンの目標出力トルクを取得する目標トルク取得部と、
前記エンジンの実回転速度を取得するエンジン回転速度取得部と、
前記エンジンの目標出力トルクと前記エンジンの実回転速度とに基づいて、前記ターボチャージャの推定チャージ圧を算出するチャージ圧推定部と、
前記エンジンの実回転速度の変化量を示す第1回転速度変化量を取得し、前記第1回転速度変化量に基づいて、前記推定チャージ圧を補正するチャージ圧補正部と、
前記実チャージ圧と補正された前記推定チャージ圧との乖離度を算出する乖離度算出部と、
を備えるシステム。
【請求項13】
前記第1回転速度変化量は、第1時間の間の前記エンジンの実回転速度の変化量である、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記チャージ圧補正部は、前記第1時間よりも長い第2時間の間の前記エンジンの実回転速度の変化量を示す第2回転速度変化量を取得し、前記第1回転速度変化量と前記第2回転速度変化量とに基づいて、前記推定チャージ圧を補正する、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
所定条件を満たす場合に取得された前記乖離度を選別するフィルタリング部をさらに備え、
前記所定条件は、前記第1回転速度変化量が所定範囲内であることを含む、
請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記チャージ圧補正部は、大気圧を取得し、前記大気圧に基づいて、前記推定チャージ圧を補正する、
請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記チャージ圧補正部は、外気温を取得し、前記外気温に基づいて、前記推定チャージ圧を補正する、
請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記乖離度を時系列的に記録することで、前記性能を評価するためのデータを生成する判定データ生成部をさらに備える、
請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
エンジンと、前記エンジンに接続されるターボチャージャとを含む作業機械の性能を評価するための方法であって、
前記ターボチャージャの実チャージ圧を取得することと、
前記エンジンの目標出力トルクを取得することと、
前記エンジンの実回転速度を取得することと、
前記エンジンの目標出力トルクと前記エンジンの実回転速度とに基づいて、前記ターボチャージャの推定チャージ圧を算出することと、
前記エンジンの目標出力トルクを変化させる所定の補正パラメータの変化量を、第1トルク変化量として取得し、前記第1トルク変化量に基づいて、前記推定チャージ圧を補正することと、
前記実チャージ圧と補正された前記推定チャージ圧との乖離度を算出すること、
を備える方法。
【請求項20】
エンジンと、前記エンジンに接続されるターボチャージャとを含む作業機械の性能を評価するための方法であって、
前記ターボチャージャの実チャージ圧を取得することと、
前記エンジンの目標出力トルクを取得することと、
前記エンジンの実回転速度を取得することと、
前記エンジンの目標出力トルクと前記エンジンの実回転速度とに基づいて、前記ターボチャージャの推定チャージ圧を算出することと、
前記エンジンの実回転速度の変化量を示す第1回転速度変化量を取得し、前記第1回転速度変化量に基づいて、前記推定チャージ圧を補正することと、
前記実チャージ圧と補正された前記推定チャージ圧との乖離度を算出すること、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の性能を評価するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ターボチャージャの実チャージ圧と、推定されたチャージ圧との乖離度に基づいて、ターボチャージャの性能を評価するための方法が知られている。例えば、特許文献1の故障検出装置は、エンジン回転速度と、油圧ポンプのポンプ負荷とに基づいて、チャージ圧の推定値を算出する。そして、故障検出装置は、チャージ圧の推定値と、チャージ圧の測定値との偏差により、ターボチャージャの故障を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-184512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにチャージ圧を推定する場合、エンジンが安定した状態で取得されたデータにより、チャージ圧を算出することで、精度よくチャージ圧を推定することができる。そのため、所定条件を満たす場合に取得されたデータにより、チャージ圧が算出されることが望ましい。また、所定条件を厳しくすることにより、チャージ圧の推定の精度をさらに向上させることができる。
【0005】
しかし、鉱山などの作業現場で使用される作業機械では、安定した状態でチャージ圧を算出できる場合が少ない。そのため、所定条件を厳しくすることにより、チャージ圧の推定の精度を向上させようとすると、性能の評価に使用できるデータが少なくなってしまう。そのため、性能の評価の精度を向上させることは容易ではない。本開示の目的は、作業機械において、チャージ圧の乖離度を精度よく算出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係るシステムは、作業機械の性能を評価するためのシステムである。作業機械は、エンジンと、エンジンに接続されるターボチャージャとを含む。第1の態様に係るシステムは、実チャージ圧取得部と、目標トルク取得部と、エンジン回転速度取得部と、チャージ圧推定部と、チャージ圧補正部と、乖離度算出部とを備える。実チャージ圧取得部は、ターボチャージャの実チャージ圧を取得する。目標トルク取得部は、エンジンの目標出力トルクを取得する。エンジン回転速度取得部は、エンジンの実回転速度を取得する。チャージ圧推定部は、エンジンの目標出力トルクとエンジンの実回転速度とに基づいて、ターボチャージャの推定チャージ圧を算出する。チャージ圧補正部は、エンジンの目標出力トルクを変化させる所定の補正パラメータの変化量を、第1トルク変化量として取得する。チャージ圧補正部は、第1トルク変化量に基づいて、推定チャージ圧を補正する。乖離度算出部は、実チャージ圧と補正された推定チャージ圧との乖離度を算出する。
【0007】
本開示の第2態様に係るシステムは、作業機械の性能を評価するためのシステムである。作業機械は、エンジンと、エンジンに接続されるターボチャージャとを含む。第2の態様に係るシステムは、実チャージ圧取得部と、目標トルク取得部と、エンジン回転速度取得部と、チャージ圧推定部と、チャージ圧補正部と、乖離度算出部とを備える。実チャージ圧取得部は、ターボチャージャの実チャージ圧を取得する。目標トルク取得部は、エンジンの目標出力トルクを取得する。エンジン回転速度取得部は、エンジンの実回転速度を取得する。チャージ圧推定部は、エンジンの目標出力トルクとエンジンの実回転速度とに基づいて、ターボチャージャの推定チャージ圧を算出する。チャージ圧補正部は、エンジンの実回転速度の変化量を示す第1回転速度変化量を取得する。チャージ圧補正部は、第1回転速度変化量に基づいて、推定チャージ圧を補正する。乖離度算出部は、実チャージ圧と補正された推定チャージ圧との乖離度を算出する。
【0008】
本開示の第3態様に係る方法は、作業機械の性能を評価するための方法である。作業機械は、エンジンと、エンジンに接続されるターボチャージャとを含む。第3の態様に係る方法は、ターボチャージャの実チャージ圧を取得することと、エンジンの目標出力トルクを取得することと、エンジンの実回転速度を取得することと、エンジンの目標出力トルクとエンジンの実回転速度とに基づいて、ターボチャージャの推定チャージ圧を算出することと、エンジンの目標出力トルクを変化させる所定の補正パラメータの変化量を、第1トルク変化量として取得し、第1トルク変化量に基づいて、推定チャージ圧を補正することと、実チャージ圧と補正された推定チャージ圧との乖離度を算出すること、を備える。
【0009】
本開示の第4態様に係る方法は、作業機械の性能を評価するための方法である。作業機械は、エンジンと、エンジンに接続されるターボチャージャとを含む。第4の態様に係る方法は、ターボチャージャの実チャージ圧を取得することと、エンジンの目標出力トルクを取得することと、エンジンの実回転速度を取得することと、エンジンの目標出力トルクとエンジンの実回転速度とに基づいて、ターボチャージャの推定チャージ圧を算出することと、エンジンの実回転速度の変化量を示す第1回転速度変化量を取得し、第1回転速度変化量に基づいて、推定チャージ圧を補正することと、実チャージ圧と補正された推定チャージ圧との乖離度を算出することと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、作業機械において、チャージ圧の乖離度を精度よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る作業機械の斜視図である。
図2】作業機械、及び、作業機械の性能を評価するためのシステムの構成を示すブロック図である。
図3】機械データの構成を示す表である。
図4】サーバの構成を示すブロック図である。
図5】性能を評価するための判定データを生成する処理を示すフローチャートである。
図6】チャージ圧推定データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1の斜視図である。本実施形態に係る作業機械1は、ダンプトラックである。図1に示すように、作業機械1は、車体2と走行装置3とを備える。車体2は、荷台6と運転室7とを含む。走行装置3は、車体2に取り付けられている。走行装置3は、走行輪4,5を含む。
【0013】
図2は、作業機械1、及び、作業機械1の性能を評価するためのシステムの構成を示すブロック図である。図2に示すように、作業機械1は、エンジン11と、PTO(パワーテイクオフ)12と、トルクコンバータ13と、トランスミッション14とを備える。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンである。エンジン11には、燃料噴射装置15とターボチャージャ18とが接続されている。燃料噴射装置15は、エンジン11内に燃料を噴射する。ターボチャージャ18は、例えばタービンを含む。ターボチャージャ18は、吸気を圧縮してエンジン11に供給する。
【0014】
エンジン11には、冷却管16を介して、ラジエータ17が接続されている。ラジエータ17は、エンジン11の冷却液を冷却する。トルクコンバータ13は、PTO12を介して、エンジン11に接続されている。トルクコンバータ13は、エンジン11からの駆動力をトランスミッション14に伝達する。
【0015】
トランスミッション14は、トルクコンバータ13に接続されている。トランスミッション14は、トルクコンバータ13からの駆動力を走行装置3に伝達する。それにより、走行装置3が駆動されることで、作業機械1が走行する。トランスミッション14は、複数の変速ギアと、前進ギアと、後進ギアと、クラッチとを含む。クラッチは、各ギアの係合を切り替える。トランスミッション14は、複数の変速ギアの係合を切り替えることで、複数の速度段に切り替え可能である。
【0016】
作業機械1は、油圧ポンプ19とアクチュエータ20とを含む。油圧ポンプ19は、PTO12を介して、エンジン11に接続されている。油圧ポンプ19は、エンジン11によって駆動されることで、作動油を吐出する。アクチュエータ20は、油圧ポンプ19からの作動油によって駆動される。アクチュエータ20は、例えば、走行輪4を操舵するためのステアリングアクチュエータを含む。なお、図2においては、1つの油圧ポンプ19のみが図示されているが、作業機械1は複数の油圧ポンプを備えてもよい。図2においては、1つのアクチュエータ20のみが図示されているが、作業機械1は複数のアクチュエータを備えてもよい。
【0017】
作業機械1は、アクセル操作装置21と、FR操作装置22と、ステアリング操作装置23とを備える。アクセル操作装置21は、作業機械1の車速を調整するために、オペレータによって操作可能である。アクセル操作装置21は、例えばアクセルペダルを含む。或いは、アクセル操作装置21は、レバー、或いはスイッチを含んでもよい。アクセル操作装置21は、アクセル操作装置21への操作を示すアクセル操作信号を出力する。
【0018】
FR操作装置22は、作業機械1の前進と後進とを切り替えるために、オペレータによって操作可能である。FR操作装置22は、例えばFRレバーを含む。或いは、FR操作装置22は、スイッチを含んでもよい。FR操作装置22は、FR操作装置22への操作を示すFR操作信号を出力する。
【0019】
ステアリング操作装置23は、作業機械1を操舵するために、オペレータによって操作可能である。ステアリング操作装置23は、例えば、ステアリングホイールを含む。或いは、ステアリング操作装置23は、レバー、或いはスイッチを含んでもよい。ステアリング操作装置23は、ステアリング操作装置23への操作を示すステアリング操作信号を出力する。
【0020】
作業機械1は、エンジン回転速度センサ24と出力回転速度センサ25とを含む。エンジン回転速度センサ24は、エンジン11の実回転速度を検出する。出力回転速度センサ25は、トランスミッション14の出力回転速度を検出する。
【0021】
作業機械1は、冷却温度センサ26とチャージ圧センサ27とを含む。冷却温度センサ26は、エンジン11の冷却液の温度を検出する。チャージ圧センサ27は、ターボチャージャ18の実チャージ圧を検出する。作業機械1は、大気圧センサ28と外気温センサ29とを備える。大気圧センサ28は、大気圧を検出する。外気温センサ29は、外気温を検出する。
【0022】
作業機械1は、コントローラ30を備える。コントローラ30は、作業機械1を制御する。コントローラ30は、記憶装置31とプロセッサ32とを含む。記憶装置31は、例えばRAM及びROMなどのメモリを含む。記憶装置31は、HDD、或いはSSDなどのストレージを含んでもよい。記憶装置31は、作業機械1を制御するためのプログラム及びデータを記憶している。プロセッサ32は、例えばCPUである。プロセッサ32は、プログラム及びデータに従い、作業機械1を制御するための処理を実行する。
【0023】
コントローラ30は、エンジン回転速度センサ24から、エンジン11の実回転速度を取得する。コントローラ30は、出力回転速度センサ25から、トランスミッション14の出力回転速度を取得する。コントローラ30は、チャージ圧センサ27から、ターボチャージャ18の実チャージ圧を取得する。コントローラ30は、冷却温度センサ26から、エンジン11の冷却液の温度を取得する。コントローラ30は、大気圧センサ28から、大気圧を取得する。コントローラ30は、外気温センサ29から、外気温を取得する。
【0024】
コントローラ30は、アクセル操作装置21から、アクセル操作信号を受信する。コントローラ30は、アクセル操作信号に応じて、エンジン11の目標回転速度を決定する。コントローラ30は、アクセル操作信号に応じて、燃料噴射装置15からの燃料噴射量を制御する。なお、燃料噴射装置15からの燃料噴射量は、コントローラ30によらずに、アクセル操作装置21の操作に応じて、直接的に制御されてもよい。
【0025】
コントローラ30は、FR操作装置22から、FR操作信号を受信する。コントローラ30は、FR操作信号に応じて、トランスミッション14の前進と後進とを切り替える。なお、トランスミッション14の前進と後進とは、コントローラ30によらずに、FR操作装置22の操作に応じて、直接的に切り替えられてもよい。
【0026】
コントローラ30は、車速、或いは、エンジン11の実回転速度に応じて、トランスミッション14の速度段を切り替える。コントローラ30は、例えばトランスミッション14の出力回転速度から車速を算出する。
【0027】
コントローラ30は、ステアリング操作装置23から、ステアリング操作信号を受信する。コントローラ30は、ステアリング操作信号に応じて、走行輪4のステアリング角度を変更するように、アクチュエータ20を制御する。なお、アクチュエータ20は、コントローラ30によらずに、ステアリング操作装置23の操作に応じて、直接的に制御されてもよい。
【0028】
作業機械1は、通信装置33を備える。通信装置33は、コントローラ30と通信可能に接続されている。通信装置33は、無線通信により、作業機械1の外部のサーバ40と通信を行う。サーバ40は、作業機械1の状態を示す機械データにより、作業機械1の状態を遠隔から監視する。
【0029】
サーバ40は、記憶装置41とプロセッサ42とを含む。記憶装置41は、例えばRAM及びROMなどのメモリを含む。記憶装置41は、HDD、或いはSSDなどのストレージを含んでもよい。記憶装置41は、作業機械1の状態を監視するためのプログラム及びデータを記憶している。プロセッサ42は、例えばCPUである。プロセッサ42は、プログラム及びデータに従い、作業機械1の状態を監視するための処理を実行する。
【0030】
作業機械1のコントローラ30は、通信装置33を介して、機械データをサーバ40に送信する。図3は、機械データの構成を示す表である。図3に示すように、機械データは、エンジン11の実回転速度と、エンジン11の目標出力トルクと、大気圧と、外気温と、エンジン11の冷却液の温度と、稼働時間とを含む。エンジン11の目標出力トルクは、エンジン11の回転速度と燃料噴射量とに基づいて、算出される。稼働時間は、例えばエンジン11が駆動されている間の時間の積算値である。コントローラ30は、稼働時間をカウントして記録する。
【0031】
作業機械1は、上述したデータを所定のサンプリング周期ごとにサンプリングして、機械データとして、記憶装置31に記憶する。作業機械1は、蓄積した機械データを、所定の送信タイミングで、サーバ40に送信する。例えば、作業機械1は、無線LANなどの通信可能エリア内に入ったときに、蓄積した機械データを、サーバ40に送信する。サーバ40は、受信した機械データに基づいて、作業機械1の性能を評価するための判定データを生成する。以下、性能を評価するための判定データを生成するためのサーバ40による処理について説明する。
【0032】
図4は、サーバ40の構成を示すブロック図である。図4に示すように、サーバ40は、機械データ受信部51と、実チャージ圧取得部52と、目標トルク取得部53と、エンジン回転速度取得部54と、チャージ圧推定部55と、チャージ圧補正部56と、乖離度算出部57と、フィルタリング部58と、判定データ生成部59と、判定データ出力部60とを含む。機械データ受信部51と、実チャージ圧取得部52と、目標トルク取得部53と、エンジン回転速度取得部54と、チャージ圧推定部55と、チャージ圧補正部56と、乖離度算出部57と、フィルタリング部58と、判定データ生成部59と、判定データ出力部60とは、サーバ40のプロセッサ42によって実現される。
【0033】
図5は、性能を評価するための判定データを生成する処理を示すフローチャートである。図5に示すように、ステップS101で、機械データ受信部51は、機械データを受信する。機械データ受信部51は、作業機械1のコントローラ30から、上述した機械データを受信する。
【0034】
ステップS102で、実チャージ圧取得部52は、ターボチャージャ18の実チャージ圧を取得する。実チャージ圧取得部52は、作業機械1のコントローラ30から受信した機械データから、実チャージ圧を取得する。ステップS103で、目標トルク取得部53は、エンジン11の目標出力トルクを取得する。目標トルク取得部53は、作業機械1のコントローラ30から受信した機械データから、エンジン11の目標出力トルクを取得する。ステップS104で、エンジン回転速度取得部54は、エンジン11の実回転速度を取得する。エンジン回転速度取得部54は、作業機械1のコントローラ30から受信した機械データから、エンジン11の実回転速度を取得する。
【0035】
ステップS105で、チャージ圧推定部55は、推定チャージ圧を算出する。チャージ圧推定部55は、チャージ圧推定データを参照して、エンジン11の目標出力トルクとエンジン11の実回転速度とから、推定チャージ圧を算出する。図6は、チャージ圧推定データの一例を示す図である。チャージ圧推定データは、エンジン11の目標出力トルクとエンジン11の実回転速度とに対する推定チャージ圧の関係を規定する。チャージ圧推定データは、例えばエンジン11の目標出力トルクとエンジン11の実回転速度とに対する推定チャージ圧の関係を規定するマップである。ただし、チャージ圧推定データは、マップに限らず、数式、或いはテーブルなどの他の形態で示されてもよい。チャージ圧推定データは、シミュレーション、或いはベンチ試験等によって予め求められて、記憶装置41に保存されている。
【0036】
ステップS106で、チャージ圧補正部56は、ステップS105で算出された推定チャージ圧を補正する。チャージ圧補正部56は、以下の式(1)により、推定チャージ圧を補正する。
Pcp_corrは、補正された推定チャージ圧である。Pcp(Tr,S)は、ステップS105において、エンジン11の目標出力トルクTrとエンジン11の実回転速度Sとから算出された推定チャージ圧である。Corr1(ΔTr1,ΔTr2,ΔS1,ΔS2)は、エンジン11の目標出力トルクとエンジン11の実回転速度とによる推定チャージ圧の第1補正項である。
【0037】
ΔTr1とΔTr2とは、エンジン11の目標出力トルクTrの変化量を示す。すなわち、チャージ圧補正部56は、エンジン11の目標出力トルクTrの変化量に基づいて、推定チャージ圧を補正する。ΔTr1は、第1トルク変化量である。ΔTr2は、第2トルク変化量である。第1トルク変化量ΔTr1は、第1時間の間のエンジン11の目標出力トルクの変化量である。第2トルク変化量ΔTr2は、第2時間の間のエンジン11の目標出力トルクの変化量である。第2時間は、第1時間より長い。例えば、第1時間は1秒間であり、第2時間は2秒間である。ただし、第1時間と第2時間とは、これらの時間に限られず、変更されてもよい。
【0038】
ΔS1とΔS2とは、エンジン11の実回転速度の変化量である。すなわち、チャージ圧補正部56は、エンジン11の実回転速度の変化量に基づいて、推定チャージ圧を補正する。ΔS1は、第1回転速度変化量である。ΔS2は、第2回転速度変化量である。第1回転速度変化量ΔS1は、第1時間の間のエンジン11の実回転速度の変化量である。第2回転速度変化量ΔS2は、第2時間の間のエンジン11の実回転速度の変化量である。
【0039】
詳細には、第1補正項Corr1(ΔTr1,ΔTr2,ΔS1,ΔS2)は、以下の式(2)により表される。式(2)において、a1~a6は、所定の係数である。a1~a6は、シミュレーション、或いはベンチ試験等によって予め求められて、記憶装置41に保存されている。
Corr2(P_atm,Te_atm)は、大気圧と外気温とによる推定チャージ圧の第2補正項である。P_atmは、大気圧である。Te_atmは、外気温である。すなわち、チャージ圧補正部56は、大気圧と外気温とに基づいて、推定チャージ圧を補正する。第2補正項Corr2(P_atm,Te_atm)は、以下の式(3)により表される。
Pcp_ratedは、定格点でのチャージ圧である。Pcp_ratedは、シミュレーション、或いはベンチ試験等によって予め求められて、記憶装置41に保存されている。P_standardは、標準気圧である。Te_standardは、標準気温である。P_standardとTe_standardとは、記憶装置41に保存されている。b1,b2は、所定の係数である。b1,b2は、シミュレーション、或いはベンチ試験等によって予め求められて、記憶装置41に保存されている。Pcp’は、第1補正項によって補正された推定チャージ圧である。すなわち、Pcp’は、以下の式(4)で表される。
ステップS107で、乖離度算出部57は、実チャージ圧と補正された推定チャージ圧との乖離度を算出する。乖離度算出部57は、以下の式(5)により、乖離度を算出する。Pcrは、実チャージ圧である。乖離度Dev_chargeは、補正された推定チャージ圧に対する、実チャージ圧と補正された推定チャージ圧との差の比である。乖離度Dev_chargeは、100分率で示される。
ステップS108で、フィルタリング部58は、ステップS107で算出された乖離度のフィルタリングを行う。フィルタリング部58は、所定条件を満たす場合に取得された乖離度を選別する。所定条件は、以下の第1~第11条件を含む。
【0040】
第1条件は、エンジン11の実回転速度が、所定の下限値以上であることである。第2条件は、第1時間前のエンジン11の実回転速度が、所定の下限値以上であることである。第3条件は、第2時間前のエンジン11の実回転速度が、所定の下限値以上であることである。第4条件は、エンジンの目標出力トルクが、所定の下限値以上であることである。第5条件は、第1時間前のエンジンの目標出力トルクが、所定の下限値以上であることである。第6条件は、第2時間前のエンジンの目標出力トルクが、所定の下限値以上であることである。第1~第6条件は、例えばエンジンがアイドリング状態である場合に取得されたデータを除外するために設定される。
【0041】
第7条件は、第1回転速度変化量が所定範囲内であることである。第8条件は、第2回転速度変化量が所定範囲内であることである。第9条件は、第1トルク変化量が所定範囲内であることである。第10条件は、第2トルク変化量が所定範囲内であることである。第7~第10条件は、精度のよい補正が可能な範囲を超える変化量の大きなデータを除外するために設定される。第11条件は、エンジンの冷却液の温度が所定範囲内であることである。第11条件は、エンジンが十分に暖気されていない状態でのデータを除外するために設定される。
【0042】
フィルタリング部58は、上述した機械データにより、第1~第11条件が満たされているかを判定する。フィルタリング部58は、第1~第11条件の全てを満たす乖離度を選別する。フィルタリング部58は、第1~第11条件の少なくとも1つを満たさない乖離度を除外する。
【0043】
ステップS109で、判定データ生成部59は、判定データを生成する。判定データ生成部59は、ステップS108で選別された乖離度を時系列的に記録することで、性能を評価するための判定データを生成する。例えば、判定データ生成部59は、所定の稼働時間ごとの乖離度の平均値を算出し、乖離度の平均値の時系列データを、判定データとして生成する。
【0044】
ステップS110で、判定データ出力部60は、判定データを出力する。例えば、判定データ出力部60は、作業機械1の使用者のコンピュータに、判定データを送信する。或いは、判定データ出力部60は、作業機械1の管理用のアプリケーションによって、判定データをディスプレイに表示させてもよい。
【0045】
なお、サーバ40は、判定データに基づいて、ターボチャージャ18の性能を評価してもよい。判定データ出力部60は、判定データに基づいて判定されたターボチャージャ18の性能の評価結果を、作業機械1の使用者のコンピュータに送信してもよい。例えば、サーバ40は、判定データにおいて乖離度が急低下、或いは急上昇している場合に、ターボチャージャ18に突発的な性能の低下が発生していると判定してもよい。サーバ40は、判定データにおいて乖離度が所定の閾値以下となっている場合に、ターボチャージャ18に経年劣化による性能の低下が発生していると判定してもよい。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る作業機械1の性能を評価するためのシステムでは、エンジン11の目標出力トルクの変化量と、エンジン11の実回転速度の変化量とに基づいて、推定チャージ圧が補正される。そのため、作業機械1への負荷の変動、或いはアクセル操作装置21の操作に応じたエンジン11の稼働状態の変化を考慮して、推定チャージ圧が補正される。それにより、作業機械1において、乖離度を精度よく算出することができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
作業機械1は、ダンプトラックに限らず、ブルドーザ、ショベル、ホイールローダ、或いはグレーダなどの他の機械であってもよい。ダンプトラックは、リジッドダンプトラックに限らず、アーティキュレートダンプトラックであってもよい。走行装置3は、走行輪4に限らず、履帯を含んでもよい。作業機械1は、複数のコントローラを備えてもよい。上述した作業機械1のコントローラ30による制御は、複数のコントローラに分散して実行されてもよい。
【0049】
作業機械1は、遠隔から操作可能であってもよい。その場合、アクセル操作装置21と、FR操作装置22と、ステアリング操作装置23とは、作業機械1の外部に配置されてもよい。作業機械1は、自律走行可能であってもよい。その場合、アクセル操作信号、FR操作信号、及びステアリング操作信号は、コントローラ30によって自動的に生成されてもよい。
【0050】
上述した判定データを生成するための処理は、作業機械1のコントローラ30によって実行されてもよい。或いは、上述した判定データを生成するための処理は、作業機械1のコントローラ30とサーバ40とに分散して実行されてもよい。ターボチャージャ18の性能の評価は、作業機械1のコントローラ30によって実行されてもよい。コントローラ30は、ターボチャージャ18の性能の評価を、作業機械1のディスプレイに表示させてもよい。
【0051】
判定データを生成するための処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、推定チャージ圧を補正するための補正パラメータは、エンジン11の目標出力トルクに限らない。補正パラメータは、燃料噴射量、瞬時燃料消費量、アクセル操作装置21の操作量、或いはスロットル開度であってもよい。第1トルク変化量と第2トルク変化量とは、これらの補正パラメータの変化量であってもよい。
【0052】
推定チャージ圧は、エンジン11の実回転速度によらず、エンジン11の目標出力トルクのみによって補正されてもよい。推定チャージ圧は、エンジン11の目標出力トルクによらず、エンジン11の実回転速度のみによって補正されてもよい。大気圧による推定チャージ圧の補正は、省略されてもよい。外気温による推定チャージ圧の補正は、省略されてもよい。
【0053】
乖離度は、上記の実施形態のものに限らず変更されてもよい。例えば、乖離度は、実チャージ圧と補正された推定チャージ圧との比であってもよい。或いは、乖離度は、実チャージ圧と補正された推定チャージ圧との偏差であってもよい。乖離度をフィルタリングするための所定条件は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。上述した第1~第11条件の一部が省略、或いは変更されてもよい。例えば、所定条件は、燃料噴射量、瞬時燃料消費量、アクセル操作装置21の操作量、或いはスロットル開度によるフィルタリングの条件を含んでもよい。機械データは、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示によれば、作業機械において、チャージ圧の乖離度を精度よく算出することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:作業機械
11:エンジン
18:ターボチャージャ
52:実チャージ圧取得部
53:目標トルク取得部
54:エンジン回転速度取得部
55:チャージ圧推定部
56:チャージ圧補正部
57:乖離度算出部
58:フィルタリング部
59:判定データ生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6