IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -リニアガイド 図1
  • -リニアガイド 図2
  • -リニアガイド 図3
  • -リニアガイド 図4
  • -リニアガイド 図5
  • -リニアガイド 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021020
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】リニアガイド
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20250205BHJP
   F16N 9/04 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
F16C29/06
F16N9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124702
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 翔太
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA02
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA76
3J104AA77
3J104BA80
3J104CA02
3J104CA06
3J104CA13
3J104CA16
3J104CA24
3J104CA35
3J104DA05
3J104EA01
(57)【要約】
【課題】簡易且つ低コストな構成の潤滑ユニットによって、長期間安定して案内レールに潤滑剤を供給できるリニアガイドを提供する。
【解決手段】案内レールと、スライダと、潤滑ユニットと、を備え、潤滑ユニットは、潤滑剤供給部材と、ケースと、抑え部材と、を有し、ケースの内周壁の少なくとも一部に、潤滑剤供給部材の外縁に対して傾斜する押圧面を設け、潤滑剤供給部材は、抑え部材と押圧面とに押されて変形することにより、前記案内レールへの接触力が加えられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内レールと、
前記案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、
潤滑剤を含浸可能な潤滑剤供給部材を有し、前記スライダの軸方向の端部に取付けられる潤滑ユニットと、を備え、
前記潤滑ユニットは、前記潤滑剤供給部材と、該潤滑剤供給部材を収容するケースと、前記潤滑剤供給部材を前記スライダとの間で挟むように取付ける抑え部材と、を有し、
前記ケースの内周壁の少なくとも一部に、前記潤滑剤供給部材の外縁に対して傾斜する押圧面を設け、
前記潤滑剤供給部材は、前記抑え部材と前記押圧面とに押されて変形することにより、前記案内レールへの接触力が加えられる、
リニアガイド。
【請求項2】
前記押圧面を前記スライダの進行方向に対して左右両側面に設ける、
請求項1に記載のリニアガイド。
【請求項3】
前記潤滑ユニットを前記スライダに固定するためのネジ部材を設け、
前記ネジ部材の締結力を調整することによって、前記潤滑剤供給部材の前記案内レールへの接触力を調整する、
請求項1又は2に記載のリニアガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑ユニットを備えたリニアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リニアガイドは、軸方向に延びる案内レールと、案内レールに相対移動可能に跨架されたスライダと、を備え、案内レール及びスライダに形成された転動体転動溝間を循環する複数の転動体(ボール)を介して、スライダが案内レール上を軸方向に相対移動する。リニアガイドを長期間に亘って安定して使用するためには、転動体転動溝及びボールに十分な量の潤滑剤を供給して、潤滑状態を良好に維持することが重要である。
【0003】
このため、潤滑剤を含有する多孔質の潤滑剤供給部材をケース内に収容してスライダの端部に取り付け、案内レールの転動体転動溝に接触する潤滑剤供給部材から潤滑剤を供給するリニアガイドが開示されている。しかし、潤滑剤供給部材は、長期間の使用によって含浸された潤滑剤の量が少なくなると収縮するため、案内レールの転動体転動溝との接触状態が保てなくなる。
【0004】
特許文献1では、スライダの幅方向に設けられたケースの側壁に、潤滑剤供給部材の一対の袖部をスライダの幅方向内側に向けてそれぞれ押圧するネジ部材や弾性部材からなる一対の側面押圧手段を設けたリニアガイドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-79259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、潤滑剤の量が少なくなって潤滑剤供給部材が収縮しても転動体転動溝に潤滑剤を安定して供給可能にすることを目的としているが、潤滑ユニットに、ネジ部材や弾性体からなる別体の側面押圧手段を設ける必要があるため、製造コストが高くなるという課題があった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易且つ低コストな構成の潤滑ユニットによって、長期間安定して案内レールに潤滑剤を供給できるリニアガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 案内レールと、
前記案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、
潤滑剤を含浸可能な潤滑剤供給部材を有し、前記スライダの軸方向の端部に取付けられる潤滑ユニットと、を備え、
前記潤滑ユニットは、前記潤滑剤供給部材と、該潤滑剤供給部材を収容するケースと、前記潤滑剤供給部材を前記スライダとの間で挟むように取付ける抑え部材と、を有し、
前記ケースの内周壁の少なくとも一部に、前記潤滑剤供給部材の外縁に対して傾斜する押圧面を設け、
前記潤滑剤供給部材は、前記抑え部材と前記押圧面とに押されて変形することにより、前記案内レールへの接触力が加えられる、
リニアガイド。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリニアガイドによれば、潤滑ユニットとは別体の部材を用いることなく、潤滑剤供給部材を押圧する押圧手段を設けることができるため、簡易且つ低コストな構成で長期間安定して案内レールに潤滑剤を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明に係るリニアガイドの斜視図である。
図2図2は、図1に示すスライダの斜視図である。
図3図3は、図2に示すスライダの一部分解斜視図である。
図4図4(A)は、潤滑ユニットを示す正面図であり、図4(B)は、潤滑ユニットを案内レールに取付ける前の状態を示した図4(A)のA-A断面図であり、図4(C)は、潤滑ユニットを案内レールに取付けた後の状態を示した図4(A)のA-A断面図である。
図5図5(A)は、第2実施形態の潤滑ユニットを示す正面図であり、図5(B)は、第2実施形態の潤滑ユニットを案内レールに取付ける前の状態を示した図5(A)のB-B断面図であり、図5(C)は、第2実施形態の潤滑ユニットを案内レールに取付けた後の状態を示した図5(A)のB-B断面図である。
図6図6は、第3実施形態の潤滑ユニットを示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係るリニアガイド(直動案内装置)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、スライダの上下方向、幅方向、軸方向とは、長手方向を水平にして配置された案内レールに組み付けられたスライダの状態における方向をそれぞれ表しており、スライダの幅方向は、案内レールの長手方向及びスライダの上下方向に垂直な方向であって、左右方向とも言い、スライダの軸方向は、案内レールの長手方向に沿う方向であって、前後方向とも言う。
【0012】
(第1実施形態)
図1図4(C)に基づいて、リニアガイドの構成について説明する。図1は、本発明に係るリニアガイドの斜視図であり、図2は、スライダの斜視図であり、図3は、スライダの一部分解斜視図であり、図4(A)は、潤滑ユニットを示す正面図であり、図4(B)は、潤滑ユニットを案内レールに取付ける前の状態を示した図4(A)のA-A断面図であり、図4(C)は、潤滑ユニットを案内レールに取付けた後の状態を示した図4(A)のA-A断面図である。図1に示すように、第1実施形態のリニアガイド10は、直線状の案内レール20と、案内レール20を跨ぐように組み付けられ、不図示の複数の転動体(ボール)を介してスライド自在に係合するスライダ30と、を備えている。
【0013】
案内レール20の両側面23には、断面略半円形または断面ゴシックアーチ形状のレール側軌道面21が軸方向に形成され、案内レール20の上面24と両側面23とが交差する稜線部には、断面略1/4円弧状のレール側軌道面22が軸方向に形成されている。
【0014】
スライダ30は、図2及び図3に示すように、スライダ本体31と、スライダ本体31の軸方向両端部に取り付けられたエンドキャップ32と、各エンドキャップ32の更に軸方向端部に取り付けられた潤滑ユニット33と、からなる。
【0015】
スライダ本体31は、略コ字状に形成されており、両袖部の内側面に、案内レール20のレール側軌道面21、22に対向する不図示のスライダ側軌道面を有するとともに、転動体戻し路を有している。また、略コ字状に形成されたエンドキャップ32は、スライダ本体31のスライダ側軌道面及び転動体戻し路を連通させる不図示の湾曲路を有しており、レール側軌道面21、22、スライダ側軌道面、転動体戻し路、及び両端部の湾曲路で、転動体循環路を形成している。転動体循環路内には、複数のボールが転動自在に装填されている。
【0016】
潤滑ユニット33は、合成樹脂製のケース40と、ケース40内に収容される潤滑剤供給部材50と、サイドシール60と、を備える。この構成は、図3を参照するとよい。
【0017】
サイドシール60は、エンドキャップ32の外形に合わせた略コ字形状の鋼板であり、その両袖部62には、取付ネジ用の貫通孔61が形成されるとともに、それら両袖部62を連結する連結部63には、グリースニップル用の貫通孔64が形成されている。サイドシール60と案内レール20とは非接触であり、略コ字形状の鋼板の内側には、スライダ30と案内レール20との間の隙間をシールするため、ニトリルゴムやグリースを含有したポリウレタンゴムなどの弾性体65が設けられている。
サイドシール60は、ケース40に収容された潤滑剤供給部材50の軸方向一端側の全体を抑える抑え部材としても機能する。
【0018】
潤滑剤供給部材50は、ゴムや合成樹脂等の多孔質体、繊維交絡体などで形成されて、潤滑剤を含浸するように構成している。潤滑剤としては、鉱油、合成油、グリースなどを用いることができる。合成樹脂としては、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。繊維交絡体としては、羊毛フェルト、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などを用いることができる。
これにより、潤滑剤供給部材50は、潤滑剤を多く含浸するとともに、変形し易い材料によって形成されている。
【0019】
潤滑剤供給部材50は、案内レール20の上面24及びレール側軌道面21、22を含む両側面23に対向するように略コ字状に成形されている。この構成は、図4(A)を参照するとよい。
潤滑剤供給部材50の袖部内側には、案内レール20のレール側軌道面21に摺接して潤滑剤を供給するための略半円形の突部51が突設されている。また、略コ字状の潤滑剤供給部材50の内隅部には、案内レール20のレール側軌道面22に摺接して潤滑剤を供給するための1/4円弧状の突部52が突設されている。
【0020】
また、潤滑剤供給部材50の上端部略中央には、上方に開放する第1の凹部53が形成されている。また、潤滑剤供給部材50の両外側面には、側方に開放する略コの字形の第2の凹部54が形成されている。第1の凹部53は、幅方向に対向する互いに平行な2つの平面を持って略コの字形に形成され、第2の凹部54は、上下方向に対向する互いに平行な2つの平面を持った略コの字形に形成され、該2つの平面と鉛直面との隅部は曲面形状とされている。
【0021】
ケース40は、ポリアセタールやポリアミドなどの硬質樹脂を射出成型して製作されており、エンドキャップ32と略同一サイズの略コ字状に形成されている。なお、ケース40は、鋼、アルミニウムなどの金属材料を、切削加工やプレス加工して製作したものであってもよい。
ケース40は、収容される潤滑剤供給部材50の外周部を覆う外周壁41と、収容される潤滑剤供給部材50の軸方向一端側を覆う内壁42と、収容される潤滑剤供給部材50を内側に押圧するように突出形成された押圧手段44、45、46とによって、潤滑剤供給部材50を嵌合収容する収容部43を形成している。
収容部43は、スライダ30の軸方向視で、外周壁41の内側と、第1の円筒部44と、第2の円筒部45と、押圧面46と、スライダ30が嵌合される案内レール20とによって囲まれる略コ字状の空間となる。この構成は、図4(A)を参照するとよい。
【0022】
外周壁41は、潤滑剤供給部材50の上面と、両側面外側と、下端面とを覆う略コ字状に形成されている。これにより、収容部43に収容される潤滑剤供給部材50の外周面は案内レール20に対向するように凹設された部分のみが露出する。
【0023】
内壁42は、ケース40に収容される潤滑剤供給部材50の軸方向のエンドキャップ32側の端面を覆っている。ケース40は、軸方向のエンドキャップ32側と反対側の端部、言い換えると、軸方向のサイドシール60側の端部は開放形成されている。
【0024】
押圧手段44、45、46は、第1の円筒部44と、第2の円筒部45と、押圧面46と、を有する。
第1の円筒部44は、外周壁41内側の上部で、左右方向略中央に設けられる上部押圧手段である。
第2の円筒部45は、外周壁41内側の左右両側で、高さ方向略中央部に設けられる側面押圧手段である。また、第2の円筒部45には、潤滑ユニット33をスライダ本体31にねじ固定するためのネジ固定孔45aが設けられている。
押圧面46は、ケース40の外周壁41内側に設けられる押圧手段である。
【0025】
図4(A)~図4(C)に基づいて、押圧面46について説明する。
押圧面46は、外周壁41の上部の内壁面に一体成形されており、外周壁41の軸方向開放端側から内壁42に向かって下方に傾斜する傾斜面である。すなわち、押圧面46は、収容部43に収容された潤滑剤供給部材50の上縁の軸方向一端側を、下方に向けて押圧する。
【0026】
具体的に説明すると、潤滑剤供給部材50は、サイドシール60を用いて収容部43に押込むようにして収容される際に、押圧面46によって潤滑剤供給部材50の上縁が案内レール20に向けて下方に押圧される(図4(B)参照)。このため、ケース40に収容された潤滑剤供給部材50は、上縁の軸方向一端側が下方に潰れるように変形する。これに伴い、突部52がレール側軌道面22に向けて下方に突出変形する(図4(C)参照)。
すなわち、潤滑剤供給部材50に対し、突部52を案内レール20のレール側軌道面22に押付けるための接触力を加えることができる。
【0027】
図4(A)に基づいて、第1の円筒部44と、第2の円筒部45について説明する。
第1の円筒部44の外径は、第1の凹部53の内幅(左右幅)より大きく設定されているので、第1の円筒部44と第1の凹部53とは、片面当たりT1だけ干渉する。また、第2の円筒部45の外径は、第2の凹部54の内幅(上下幅)より大きく設定されているので、第2の円筒部45と第2の凹部54とは、片面当たりT2だけ干渉する。即ち、第1の円筒部44は、締め代T1で第1の凹部53に圧入され、第2の円筒部45は、締め代T2で第2の凹部54に圧入されている。この構成は、図4(A)を参照するとよい。
円筒部44,45と凹部53,54との締め代T1,T2は、0.1~0.5mm程度とするのが好ましい。例えば、本実施形態の一例として、潤滑剤供給部材50の第1の凹部53には、第1の円筒部44が締め代T1=0.3mmで圧入され、第2の凹部54には、第2の円筒部45が締め代T2=0.2mmで圧入される。
【0028】
なお、第1の円筒部44は、第1の凹部53に対して幅方向の押圧力を作用させるが、上下方向への移動は許容され、拘束されない。また、第2の円筒部45は、第2の凹部54に対して上下方向の押圧力を作用させるが、幅方向への移動は許容され、拘束されない。
また、本実施形態では、第1の円筒部44及び第2の円筒部45は、ケース40の外周壁41と連続して設けられているため、第1の円筒部44の外径及び第2の円筒部45の外径は、それぞれ対向する円弧面によって与えられるものとする。
【0029】
(作用及び効果)
押圧面46によれば、上縁を下方に押込むように変形させた潤滑剤供給部材50をケース40に収容できる。これにより、収容部43に収容された潤滑剤供給部材50に、突部52をレール側軌道面22に押付ける接触力が付与されるため、潤滑剤供給部材50に含まれる潤滑剤が長期に亘って案内レール20に供給できる。
【0030】
押圧面46は、ケース40を構成する外周壁41の内壁面側に一体的に形成される傾斜面であるため、潤滑剤供給部材50を案内レール20に向けて押圧するための押圧部材を別途に用意する必要がない。このため、長期間に亘って案内レール20に潤滑剤を供給可能な潤滑ユニット33を簡易且つ低コストに製造できる。
【0031】
また、潤滑剤供給部材50を収容部43に収容する際に、第1の凹部53に第1の円筒部44が締め代T1で圧入されることで、第1の凹部53には、第1の凹部53の内幅を広げる方向の左右方向の押圧力が作用する。これにより、潤滑剤供給部材50の突部51,52は幅方向に変位して、案内レール20のレール側軌道面21,22に対する突部51,52の押圧力が増加する。
また、潤滑剤供給部材50の側面下部に第2の円筒部45が締め代T2で圧入されることで、潤滑剤供給部材50には、両袖部下端側である開放端側を閉じる方向に作用する押圧力が作用する。
【0032】
これにより、本実施例のように、潤滑剤供給部材50の突部51、52に、案内レール20のレール側軌道面21,22に向けて押圧する押圧力をさらに効果的に作用させることができる。
また、例えば、潤滑剤供給部材50に含浸された潤滑剤の量が少なくなり、潤滑剤供給部材50の外形が縮小して両袖部が離間する方向に変形した場合であっても、第2の円筒部45によって、潤滑剤供給部材50の両袖部が離間する方向に変形することを防止できる。すなわち、潤滑剤供給部材50の突部51がレール側軌道面21から離間して非接触となり、潤滑剤の供給が途中で止まってしまうことを防止できる。
【0033】
以上によれば、潤滑剤供給部材50に含浸される潤滑剤を、突部51,52からレール側軌道面21,22へ最後までスムーズに供給できる。なお、レール側軌道面21,22に対する突部51,52の押圧力は、潤滑剤供給部材50の外形と、第1の凹部53及び第2の凹部54と、第1の円筒部44及び第2の円筒部45と、押圧面46と、の寸法で調整される。
なお、押圧面46と同様、第1の円筒部44と、第2の円筒部45も全てケース40に一体成形される。このため、部品点数を増やすことなく、製造コストを抑えて、潤滑剤供給部材50を押圧する押圧手段を設けることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図5(A)は、第2実施形態の潤滑ユニットを示す正面図であり、図5(B)は、第2実施形態の潤滑ユニットを案内レールに取付ける前の状態を示した図5(A)のB-B断面図であり、図5(C)は、第2実施形態の潤滑ユニットを案内レールに取付けた後の状態を示した図5(A)のB-B断面図である。本実施形態の潤滑ユニット33は、第1実施形態のケース40とは押圧面47を設けた場所が異なる。
【0035】
押圧面47、47は、外周壁41の両側面の内壁面にそれぞれ一体成形されており、外周壁41の軸方向開放端側から内壁42に向かって左右内側に傾斜する傾斜面である。すなわち、押圧面47、47は、収容部43に収容された潤滑剤供給部材50の袖部左右外側の縁部の軸方向一端側を、左右内側に向けて押圧する。
【0036】
具体的に説明すると、潤滑剤供給部材50は、サイドシール60を用いて収容部43に押込むようにして収容される際に、押圧面47、47によって潤滑剤供給部材50の袖部の左右外側の縁部が案内レール20に向けて左右内側に押圧される(図5(B)参照)。このため、ケース40に収容された潤滑剤供給部材50は、袖部の左右外側の縁部が左右内側に潰れるように変形する。これに伴い、突部52がレール側軌道面22に向けて左右内側に突出変形する(図5(C)参照)。
本実施形態の押圧面47、47によれば、潤滑剤供給部材50の袖部の上下方向中途部に形成された突部51、51も同様に案内レール20のレール側軌道面21に向けて左右内側に突出変形させることができる。
すなわち、潤滑剤供給部材50に対し、突部51、52を案内レールのレール側軌道面21、22に押付けるための接触力を加えることができる。
【0037】
なお、潤滑ユニット33は、外周壁41の上面に形成される押圧面46と、外周壁41の左右両側面に形成される押圧面47、47と、を両方設けた構成としてもよい。
【0038】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の潤滑ユニットを示した分解斜視図である。
潤滑ユニット33は、ケース40と、潤滑剤供給部材50と、サイドシール60と、を備え、ネジ部材39によってスライダ30側にねじ固定される。
【0039】
ネジ部材39は、サイドシール60の貫通孔61に挿通され、ケース40の第2の円筒部45に設けたネジ固定孔45aと、エンドキャップ32側のネジ固定孔32aとに締結することにより、潤滑ユニット33がスライダ30側に取付けられる。
このとき、ネジ部材39の締結力を調整することにより、収容部43内においてサイドシール60及び押圧面46、47で押圧される潤滑剤供給部材50の変形量、言い換えると、潤滑剤供給部材50の案内レール20への接触力を微調整できる。
【0040】
該構成によれば、長期間の使用によって潤滑剤供給部材50に含有される潤滑剤の量が減少して、潤滑剤供給部材50の寸法が小さくなった場合であっても、ネジ部材39の締結量を増やして、収容部43内の潤滑剤供給部材50の押圧量を増やすことによって、潤滑剤供給部材50の案内レール20側への接触状態を維持することができる。すなわち、上記の潤滑ユニット33によれば、簡易且つ低コストな構成で案内レール20の潤滑状態をより長期間に亘って保つことができる。
【0041】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0042】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 案内レールと、
前記案内レールを跨ぐようにスライド自在に係合するスライダと、
潤滑剤を含浸可能な潤滑剤供給部材を有し、前記スライダの軸方向の端部に取付けられる潤滑ユニットと、を備え、
前記潤滑ユニットは、前記潤滑剤供給部材と、該潤滑剤供給部材を収容するケースと、前記潤滑剤供給部材を前記スライダとの間で挟むように取付ける抑え部材と、を有し、
前記ケースの内周壁の少なくとも一部に、前記潤滑剤供給部材の外縁に対して傾斜する押圧面を設け、
前記潤滑剤供給部材は、前記抑え部材と前記押圧面とに押されて変形することにより、前記案内レールへの接触力が加えられる、
リニアガイド。
本構成によれば、長期間安定して案内レールに潤滑剤を供給できる潤滑ユニットを、潤滑ユニットとは別体の部材を用いることなく、簡易且つ低コストに製造できる。
【0043】
(2) 前記押圧面を前記スライダの進行方向に対して左右両側面に設ける、
(1)に記載のリニアガイド。
本構成によれば、潤滑剤供給部材50を左右方向から挟むように押圧できるため、案内レールへの接触力をより効率的に作用させることができる。
【0044】
(3) 前記抑え部材と、前記潤滑ユニットと、を前記スライダに固定するためのネジ部材を設け、
前記ネジ部材の締結力を調整することによって、前記潤滑剤供給部材の前記案内レールへの接触力を調整する、
(1)又は(2)に記載のリニアガイド。
本構成によれば、潤滑剤供給部材を押圧する押圧力を微調整できるため、潤滑剤が供給されることにより徐々に収縮する潤滑剤供給部材に対して、常に適した押圧力を与えることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 リニアガイド
20 案内レール
21 レール側軌道面
22 レール側軌道面
23 両側面
24 上面
30 スライダ
31 スライダ本体
32 エンドキャップ
33 潤滑ユニット
39 ネジ部材
40 ケース
41 外周壁
42 内壁
43 収容部
44 第1の円筒部(押圧手段)
45 第2の円筒部(押圧手段)
45a ネジ固定孔
46 押圧面(押圧手段)
47 押圧面(押圧手段)
50 潤滑剤供給部材
50a 袖部
51 突部
52 突部
53 第1の凹部
54 第2の凹部
55 取付孔
60 サイドシール(抑え部材)
61 貫通孔
63 連結部
64 貫通孔
65 弾性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6