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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021023
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】産業財産権の費用予測システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20250205BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124705
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】300010899
【氏名又は名称】NGB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 秀
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 拓也
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC16
5L049CC33
5L050CC16
5L050CC33
(57)【要約】
【課題】産業財産権に関する費用をより正確に予測する。
【解決手段】費用予測システムは、予測実行時点ですでに発生しているが未完了である発生済み未完了イベントを読み取る読取部と、発生済み未完了イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う第一予測部と、予測実行時点より後に発生が予想される未発生イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う第二予測部と、第一予測部の予測および第二予測部の予測に基づき、費用予測対象の産業財産権について発生すると予測される費用を所定期間単位で集計する集計部と、所定期間単位で集計した費用を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業財産権に係る費用を予測する費用予測システムであって、
産業財産権を識別するための識別情報および前記産業財産権の取得または維持に関連して発生したイベントを記録する記憶部にアクセス可能であり、前記記憶部にアクセスし、費用予測対象の産業財産権の取得または維持に関連するイベントであって予測実行時点ですでに発生しているが未完了である発生済み未完了イベントを読み取る読取部と、
前記発生済み未完了イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う第一予測部と、
前記費用予測対象の産業財産権の取得または維持に関連するイベントであって前記予測実行時点より後に発生が予想される未発生イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う第二予測部と、
前記第一予測部の予測および前記第二予測部の予測に基づき、前記費用予測対象の産業財産権について発生すると予測される費用を所定期間単位で集計する集計部と、
前記所定期間単位で集計した前記費用を出力する出力部と、
を備える、費用予測システム。
【請求項2】
前記記憶部は、産業財産権の取得または維持に関連するイベントで発生する標準的な費用および標準的な費用発生タイミングを記録しており、
前記第一予測部は、前記記憶部にアクセスし、前記標準的な費用および前記標準的な費用発生タイミングに基づいて、前記発生済み未完了イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う、請求項1に記載の費用予測システム。
【請求項3】
前記記憶部は、産業財産権の取得または維持に関連するイベントに関して費用が発生する割合である標準的な費用発生率を記録しており、
前記第一予測部は、前記発生済み未完了イベントに関する費用を前記標準的な費用に基づいて算出した金額に、前記発生済み未完了イベントの前記標準的な費用発生率を乗じることにより、前記発生済み未完了イベントに関する費用を予測する、請求項2に記載の費用予測システム。
【請求項4】
前記第二予測部は、前記所定期間単位で統計的に算出された未発生イベントに関する費用の統計データを用いて、前記未発生イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う、請求項1または2に記載の費用予測システム。
【請求項5】
前記統計データは、前記産業財産権に付随する属性情報を有する産業財産権で発生したイベントに関する統計データおよび/または特定のイベントに関する統計データである、請求項4に記載の費用予測システム。
【請求項6】
前記第二予測部は、前記産業財産権の属性情報と同一の属性情報を有する産業財産権で発生したイベントであって完了済みである完了済みイベントおよび/または前記特定のイベントと同一のイベントであり完了済みである完了済みイベントで発生した費用および費用発生タイミングに基づいて前記統計データを算出する、請求項5に記載の費用予測システム。
【請求項7】
前記第二予測部は、
前記統計データに基づいて、前記所定期間内で発生する発生済み未完了イベントに関する費用と未発生イベントに関する費用との合計費用に対する前記未発生イベントに関する費用の割合を示す未発生イベント占有率を算出し、
前記第一予測部により予測された前記発生済み未完了イベントに関する費用および前記未発生イベント占有率に基づいて、前記未発生イベントに関する費用を予測する、請求項4に記載の費用予測システム。
【請求項8】
前記第二予測部は、
過去一定期間で費用が発生した複数のイベントについて、イベントの発生から費用発生までに掛かった期間毎に、当該期間で発生した費用を集計した合算額を算出し、当該合算額の前記一定期間に発生した費用の総額に対する割合を算出し、
イベントの発生から費用発生までに掛かった期間毎に、前記期間までに発生した前記合算額の前記一定期間に発生した費用の総額に対する割合の累積値を算出し、
前記予測実行時点から前記所定期間単位で経過する期間に等価である前記イベントの発生から費用発生までに掛かった期間に対して算出された前記累積値を、前記所定期間における未発生イベント占有率と見なす、請求項7に記載の費用予測システム。
【請求項9】
前記第二予測部は、
過去一定期間で費用が発生した複数のイベントについて、イベントの発生から費用発生までに掛かった期間毎に、当該期間で発生した費用を集計した合算額を算出し、
イベントの発生から費用発生までに掛かった期間毎に、前記期間までに発生した合算額の累積値を算出し
前記予測実行時点から前記所定期間単位で経過する期間に等価である前記イベントの発生から費用発生までに掛かった期間に対して算出された前記累積値を、前記所定期間で発生すると予測される前記未発生イベントに関する費用と見なす、請求項4に記載の費用予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業財産権の費用予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、特許、実用新案、意匠、商標などの産業財産権に関する出願から権利維持までの将来的に発生する費用の見積もりシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-42412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多くの企業では、知的財産活動に関する予算をある一定の単位(例えば年単位)で策定し、当該単位の期間の中で予算を消化していくスタイルを取っている。
【0005】
しかしながら、産業財産権を取得するためには、出願から登録まで様々なイベントが発生し、当該イベントに関して費用が発生する。特に、イベントの発生は特許庁からの通知を起点とするものが多く、イベントおよび当該イベントにかかる費用の発生タイミングを出願人の意志でコントロールするのは困難である。これにより、出願人が予期せぬイベントが発生し当該イベントにかかった費用により予算をオーバーしたり、あるいは出願人が予期していたイベントが発生せずに大幅に予算を下回ったりする場合がある。
【0006】
本発明の目的は、産業財産権に関する費用をより正確に予測することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示により提供される一態様例は、産業財産権に係る費用を予測する費用予測システムであって、
産業財産権を識別するための識別情報および前記産業財産権の取得または維持に関連して発生したイベントを記録する記憶部にアクセス可能であり、前記記憶部にアクセスし、費用予測対象の産業財産権の取得または維持に関連するイベントであって予測実行時点ですでに発生しているが未完了である発生済み未完了イベントを読み取る読取部と、
前記発生済み未完了イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う第一予測部と、
前記費用予測対象の産業財産権の取得または維持に関連するイベントであって前記予測実行時点より後に発生が予想される未発生イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う第二予測部と、
前記第一予測部の予測および前記第二予測部の予測に基づき、前記費用予測対象の産業財産権について発生すると予測される費用を所定期間単位で集計する集計部と、
前記所定期間単位で集計した前記費用を出力する出力部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、産業財産権に関する費用をより正確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る費用予測システムのブロック図である。
図2】制御部が実行する発生済み未完了イベントの費用予測処理のフローチャートである。
図3】未計上イベントリストの一例である。
図4】イベント別費用テーブルの一例である。
図5】予測費用の項目が追加された未計上イベントリストの一例である。
図6】イベント別費用発生タイミングテーブルの一例である。
図7】費用計上タイミングの項目が追加された未計上イベントリストの一例である。
図8】イベント別費用発生率テーブルの一例である。
図9】調整された予想費用の項目が追加された未計上イベントリストの一例である。
図10】発生済み未計上イベントの予測費用集計テーブルの一例である。
図11】未発生イベント占有率テーブルの一例である。
図12】未発生イベントの予測費用と最終予測費用の項目が追加された予測費用集計テーブルである。
図13】最終予測費用を示すグラフである。
図14】制御部が実行する未発生イベント占有率の算出処理のフローチャートである。
図15】過去一年間に発生した費用の総額に対するイベントの発生から費用発生までに掛かった期間で発生した費用の割合の累積値を示すテーブルの一例である。
図16】制御部により実行される未発生イベントの費用予測処理のフローチャートである。
図17】過去一定期間に発生した費用の総額に対するイベントの発生から費用発生までに掛かった期間で発生した費用の累積値を示すテーブルの一例である。
図18】最終予測費用を示すグラフの別例である。
図19】出願イベントと中間イベントについてそれぞれ未計上イベントの予測費用と未発生イベントの予測費用とが集計された最終予測費用を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。
【0011】
(費用予測システム)
図1は、本発明の一実施形態に係る費用予測システム1のブロック図を例示している。費用予測システム1は、産業財産権に係る費用を予測するように構成されている。
【0012】
なお、本明細書において用いられる「産業財産権」という用語は、登録された産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、および商標権)だけでなく、申請中であって未登録の産業財産権(特許出願、実用新案出願、意匠出願、および商標出願)も含む。以下では、申請中の産業財産権も含めて、単に産業財産権と称する。
【0013】
費用予測システム1は、例えば、中間代理人により管理される。中間代理人とは、顧客である出願人または権利者が自国および/または他国で産業財産権を取得するまたは維持するための手続きおよび/または手続きの支援を行う代理人である。中間代理人には、国内代理人、現地代理人、年金管理会社などが含まれる。
【0014】
費用予測対象の産業財産権は、例えば顧客により指定される。具体的には、図1に示されるように、費用予測システム1には、例えばインターネットなどの通信ネットワーク100を介して、顧客の端末装置200が接続されている。端末装置200は、例えば入力部201と表示部202を有している。入力部201は、例えば、端末装置200が備えるキーボード及びマウス等である。表示部202は、例えば、液晶ディスプレイやOLED(Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイなどである。
【0015】
顧客は、端末装置200の入力部201を用いて、費用予測対象の産業財産権に関する情報を入力する。費用予測システム1は、通信ネットワーク100を介して受信した費用予測対象の産業財産権に関する情報に基づいて、費用予測対象の産業財産権を特定し、当該産業財産権に係る費用を予測し、通信ネットワーク100を介して費用予測結果を顧客の端末装置200に送信する。費用予測結果は、顧客の端末装置200の表示部202に表示される。
【0016】
図1に示されるように、費用予測システム1は、記憶部2と制御部3を備えている。制御部3は、通信ネットワーク100を介して記憶部2に通信可能に接続されている。なお、制御部3は、記憶部2とともに一つの装置をなす構成としてもよいし、内部ネットワークを介して記憶部2に通信可能に接続されてもよい。
【0017】
記憶部2には、管理情報データベース21が保存されている。管理情報データベース21には、中間代理人が管理する産業財産権に関する情報が記録されている。産業財産権に関する情報には、産業財産権の識別情報、属性情報などが含まれる。
【0018】
産業財産権の識別情報は、産業財産権を識別するための情報であり、例えば、出願番号、登録番号、顧客整理番号、中間代理人管理番号などが含まれる。
【0019】
産業財産権の属性情報は、産業財産権に付随する情報であり、例えば、出願人、権利者、顧客、顧客内の事業部、法域(特許、実用新案、意匠、商標)、出願国、国際特許分類(International Patent Classification、以下IPCとも言う)、出願ルートなどが含まれる。出願ルートには、パリルート(パリ条約による優先権を主張した直接出願)、PCT(Patent Cooperation Treaty)ルート(PCTに従う国際出願)などが含まれる。
【0020】
管理情報データベース21には、さらに、産業財産権の取得または維持に関連して発生したイベントに関する情報が記録されている。当該イベントに関する情報には、例えば、イベント名、イベントの発生日、イベントの手続き期限、イベントの進捗状況、イベントの完了日などが含まれる。
【0021】
産業財産権の取得または維持に関連して発生するイベントには、特許庁からの通知を起点とし、当該通知に対して出願人または権利者が特許庁に対して所定の手続きを行うイベントが含まれる。当該イベントとしては、指令書、認可通知などが挙げられる。また、産業財産権の取得または維持に関連して発生するイベントには、出願人または権利者が自発的に特許庁に対して所定の手続きを実行するイベントが含まれる。当該イベントとしては、出願、審査請求、IDS(Information Disclosure Statement)、維持費用(いわゆる年金)納付などが挙げられる。また、産業財産権の取得または維持に関連して発生するイベントには、特許庁から発行された通知に対して出願人または権利者が特許庁に対して所定の手続きを行う必要がないイベントが含まれうる。当該イベントとしては、公開通知、特許証/登録証などが挙げられる。
【0022】
なお、本明細書において用いられる表現「イベントが完了する」とは、例えば、特許庁からの通知を起点とするイベントについて、特許庁からの通知に対して所定の手続きが行われる、または特許庁からの通知に対して所定の手続きを行わず手続き期限が経過する、ことを意味する。あるいは、「イベントが完了する」とは、例えば、出願人または権利者による自発的な手続きイベントについて、特許庁に対して自発的な手続きが行われることを意味する。すなわち、イベントの完了日とは、例えば、特許庁からの通知に対して所定の手続きが行われた日、特許庁からの通知に対して所定の手続きを行われずに手続き期限が徒過した日、または特許庁に対して自発的な手続きが行われた日である。
【0023】
あるいは、「イベントが完了する」とは、例えば、上記のイベントに対して発生する費用の計上が完了する、当該計上された費用の請求が完了する、または当該請求に関する費用の支払いが完了することを意味する。すなわち、イベントの完了日とは、例えば、イベントに対して発生する費用の計上が完了した日、当該計上された費用の請求が完了した日、または当該請求に関する費用の支払いが完了した日である。
【0024】
記憶部2にはさらに、イベント別費用テーブル22およびイベント別費用発生タイミングテーブル23が保存されている。イベント別費用テーブル22には、各イベントで発生する標準的な費用が記録されている。各イベントに関する費用には、庁費用、中間代理人費用などが含まれる。イベント別費用発生タイミングテーブル23には、各イベントに関する費用が発生する標準的なタイミングが記録されている。具体的には、標準的な費用発生タイミングとして、例えば、イベントの発生から費用発生までの標準的な所要期間あるいはイベントの手続き期限から費用発生までの標準的な所要期間が記録されている。当該所要期間は、例えば日数、月数単位で表される。
【0025】
なお、本明細書において用いられる用語「費用発生」とは、例えば、費用の計上、費用の請求、または費用支払いを意味する。すなわち、「費用発生タイミング」とは、例えば、費用を計上するタイミング、費用を請求するタイミング、または費用を支払うタイミングを意味する。
【0026】
各イベントの標準的な費用および費用発生タイミングは、過去の膨大な産業財産権の経緯を基にして算出されたものであり、直近の状況が反映されるように定期的に更新されうる。また、各イベントの標準的な費用は、法改正を受けて庁費用が更新された場合に更新されうる。あるいは、各イベントの標準的な費用は、定期的に直近の通貨レートを反映させたり、定期的に代理人費用の変動を反映させてもよい。
【0027】
記憶部2にはさらに、イベント別費用発生率テーブル24が保存されてもよい。イベント別費用発生率テーブル24には、各イベントに対して費用が発生する標準的な割合(以下、費用発生率と称する)が記録されている。費用発生率は、例えば、過去のイベント履歴を参照し、各イベントにおいて、費用が発生した案件数/(費用が発生した案件数+費用が発生しなかった案件数)、により算出される。各イベントの標準的な費用発生率は、直近の状況が反映されるように定期的に更新されうる。
【0028】
記憶部2にはさらに、未発生イベント占有率テーブル25が保存されている。未発生イベント占有率テーブル25には、予測実行時点から所定期間単位で発生するイベントの費用のうち未発生イベントの費用が占める割合(以降、未発生イベント占有率と称する)が示されている。ここで、予測実行時点から所定期間単位で発生するイベントの費用は、発生済み未完了イベントの費用と未発生イベントの費用との合計費用である。発生済み未完了イベントとは、産業財産権の取得または維持に関連するイベントであって予測実行時点ですでに発生しているが未完了であるイベントである。未発生イベントとは、産業財産権の取得または維持に関連するイベントであって予測実行時点より後に発生が予想されるイベントである。
【0029】
したがって、未発生イベント占有率とは、所定期間単位で発生する発生済み未完了イベントの費用と未発生イベントの費用との合計費用に対する未発生イベントの費用の割合である。未発生イベント占有率は、例えば、所定期間単位で統計的に算出された未発生イベントの費用の統計データを用いて、算出される。
【0030】
制御部3は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体と、CPU(Central Processing Unit)等で構成された1つ又は複数のプロセッサと、を有する。ROMは、後述する処理を実行するコンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。プロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。制御部3は、物理的な計算機であってもよいし、仮想計算機(Virtual Machine:VM)、コンテナ(container)、又はこれらの組み合わせにより実現されるものであってもよい。
【0031】
制御部3は、読取部31、第一予測部32、第二予測部33、集計部34、および出力部35を有する。読取部31、第一予測部32、第二予測部33、集計部34、および出力部35は、制御部3のプロセッサがコンピュータプログラムを実行することで実現される機能ブロックである。
【0032】
読取部31は、記憶部2の管理情報データベース21にアクセスし、費用予測対象の産業財産権の取得または維持に関連する発生済み未完了イベントを読み取る。
【0033】
第一予測部32は、発生済み未完了イベントに関する費用の予測を行う。例えば、第一予測部32は、イベント別費用テーブル22にアクセスして発生済み未完了イベントに関する費用の予測を行う。あるいは、第一予測部32は、さらに、イベント別費用発生率テーブル24にアクセスして、イベント別費用テーブル22に基づいて算出した金額に、費用発生率を乗じることにより、発生済み未完了イベントに関する費用の予測を行ってもよい。
【0034】
また、第一予測部32は、発生済み未完了イベントに関する費用発生タイミングの予測を行う。例えば、第一予測部32は、イベント別費用発生タイミングテーブル23にアクセスして発生済み未完了イベントの費用発生タイミングの予測を行う。
【0035】
第二予測部33は、費用予測対象の産業財産権の取得または維持に関連する未発生イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う。例えば、第二予測部33は、所定期間単位で統計的に算出された未発生イベントに関する費用の統計データを用いて、未発生イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う。
【0036】
集計部34は、第一予測部32の予測および第二予測部33の予測に基づき、費用を予測する期間において費用予測対象の産業財産権について発生すると予測される費用を所定期間単位で集計する。費用を予測する期間は、顧客により指定されてもよく、費用予測システム1で設定された標準的な期間が使用されてもよい。費用を予測する期間は、例えば半年、1年、または数年に設定される。集計単位である所定期間は、顧客により指定されてもよく、費用予測システム1で設定された標準的な期間が使用されてもよい。所定期間は、例えば日、月、または年単位で設定される。例えば、費用を予測する期間が数カ月から1年までの期間に設定される場合、所定期間は日または月単位に設定されうる。
【0037】
出力部35は、所定期間単位で集計した費用を出力する。出力部35により出力された集計費用は、通信ネットワーク100を介して費用予測結果として顧客の端末装置200へ送信される。費用予測結果は、端末装置200の表示部202に表示される。例えば、費用予測結果は、数値やグラフの形態で表示される。
【0038】
次に、図2図10を用いて、制御部3により実行される発生済み未完了イベントの費用予測について詳細に説明する。本例においては、発生済み未完了イベントの一例として、発生済み未計上イベントについて説明する。すなわち、費用の計上の完了をイベントの完了とみなし、管理情報データベース21にはイベントの完了日としてイベントに対して発生する費用の計上が完了した日が記録されている。
【0039】
(発生済み未計上イベントの費用予測)
図2は、制御部3が実行する発生済み未計上イベントの費用予測処理のフローチャートである。なお、本実施形態において、予測実行時点は2023年12月31日とする。
【0040】
まず、制御部3は、顧客から通信ネットワーク100を介して費用予測対象の産業財産権に関する情報を受け取ると、読取部31により管理情報データベース21にアクセスし、費用予測対象の産業財産権に関する情報に基づいて、費用予測対象の産業財産権について発生したイベントのうち費用が計上されていないイベントのリスト(以下、未計上イベントリストと称する)を作成する(図2におけるSTEP1)。未計上イベントリストは、例えば記憶部2に記憶される。費用予測対象の産業財産権に関する情報には、例えば産業財産権の識別情報、属性情報などが含まれる。
【0041】
図3は、未計上イベントリストの一例を示している。本例においては、未計上イベントリストには、中間代理人の管理番号、出願国、イベント名、および期限の項目が含まれている。期限の項目には、例えば、特許庁からの通知を起点として設定される期限、出願完了により自動的に設定される期限、出願人により任意に設定される期限などのイベントの手続き期限が示されている。なお、本例においては、顧客を出願人とする産業財産権を費用予測対象の産業財産権とする。
【0042】
図3において、例えば、管理番号0055の産業財産権の未計上イベントは、アメリカ(US)の指令書(Non-final Office Action)のイベントであり、当該イベントの通知を起点として設定される応答手続き期限は2024年2月15日である。例えば、管理番号0092の産業財産権の未計上イベントは、アメリカ(US)の新規出願のイベントであり、顧客により設定される出願手続き期限は2024年3月30日である。例えば、管理番号0020の産業財産権の未計上イベントは、中国(CN)の審査請求のイベントであり、出願日を起算日として自動的に設定される審査請求手続き期限は2025年3月27日である。例えば、管理番号0040の産業財産権の未計上イベントは、アメリカ(US)の公開通知のイベントであり、特許庁に対する手続きは不要であるため、手続き期限は設定されておらず、期限の項目は空欄である。なお、未計上イベントリストの項目は、図3の項目に限定されず、例えば、顧客の管理番号、出願番号などの項目が含まれてもよい。
【0043】
続いて、制御部3は、第一予測部32によりイベント別費用テーブル22にアクセスし、未計上イベントリストに含まれる各イベントの費用予測を行う(図2におけるSTEP2)。
【0044】
図4は、イベント別費用テーブル22の一例を示している。本例においては、イベント別費用テーブル22には、出願国、イベント名、および予測費用の項目が含まれている。予測費用の項目には、イベントで発生する庁費用、中間代理人費用などを含む標準的な費用が示されている。
【0045】
第一予測部32は、イベント別費用テーブル22を参照し、未計上イベントリストに含まれる各イベントの費用予測を行い、予測費用を未計上イベントリストに書き込む。
【0046】
図5は、予測費用の項目が追加された未計上イベントリストの一例を示している。例えば、図4のイベント別費用テーブル22において、アメリカ(US)の新規出願のイベントにおいて発生する標準的な費用は、550,000円である。したがって、図5の未計上イベントリストにおいて、管理番号0092の産業財産権の予測費用の項目には550,000円が書き込まれる。例えば、図4のイベント別費用テーブル22において、アメリカの公開通知のイベントにおいて発生する標準的な費用は、12,000円である。したがって、図5の未計上イベントリストにおいて、管理番号0040の産業財産権の予測費用の項目には12,000円が書き込まれる。なお、公開通知のイベントにおいて発生する費用は、中間代理人が顧客に公開通知を納品する際に発生する中間代理人費用である。
【0047】
続いて、制御部3は、第一予測部32によりイベント別費用発生タイミングテーブル23にアクセスし、未計上イベントリストに含まれる各イベントの費用計上タイミングの予測を行う(図2におけるSTEP3)。
【0048】
図6は、イベント別費用発生タイミングテーブル23の一例を示している。本例においては、イベント別費用発生タイミングテーブル23には、出願国、イベント名、および予測日数の項目が含まれている。予測日数は、イベントに関する費用が発生する標準的なタイミングが示されている。本例においては、予測日数は、イベントの手続き期限からイベントで発生する費用を計上するまでの日数である。また、公開通知などの手続き期限が設定されていないイベントについては、予測日数は、イベント発生時点からイベントで発生する費用を計上するまでの日数である。例えば、アメリカ(US)の新規出願のイベントについては、予測日数は7日であり、イベントの手続き期限から7日後に費用が計上されると予測されている。また、アメリカ(US)の認可通知(Notice of Allowance/Allowability)のイベントについては、予測日数は-13日であり、イベントの手続き期限よりも13日前に費用が計上されると予測されている。また、アメリカ(US)の公開通知のイベントについては、予測日数は10日であり、イベント発生(例えば中間代理人が公開通知を受領した日)から10日後に費用が計上されると予測されている。
【0049】
第一予測部32は、イベント別費用発生タイミングテーブル23を参照し、未計上イベントリストに含まれる各イベントの費用計上タイミングを予測し、予測した各イベントの費用計上タイミングを未計上イベントリストに書き込む。
【0050】
図7は、費用計上タイミングの項目が追加された未計上イベントリストの一例を示している。例えば、図6のイベント別費用発生タイミングテーブル23において、アメリカ(US)の新規出願のイベントにおける費用計上タイミングは、イベントの手続き期限の7日後である。したがって、図7の未計上イベントリストにおいて、管理番号0092の産業財産権の予測日の欄にはイベントの手続き期限(2024年3月30日)の7日後の2024年4月7日が書き込まれる。例えば、図6のイベント別費用発生タイミングテーブル23において、アメリカ(US)の公開通知のイベントにおける費用計上タイミングは、イベント発生から10日後である。ここで、当該イベントの発生日を2023年12月25日とすると、図7の未計上イベントリストにおいて、管理番号0040の産業財産権の予測日の欄にはその10日後の2024年1月4日が書き込まれる。なお、予測実行時点で予測日が過去となっている場合には、所定の日数を加算する処理などを施し、予測日が将来となるよう調整してもよい。
【0051】
続いて、制御部3は、第一予測部32によりイベント別費用発生率テーブル24にアクセスし、未計上イベントリストに含まれる各イベントの費用発生率に基づいて、費用予測の金額を調整する(図2におけるSTEP4)。
【0052】
図8は、イベント別費用発生率テーブル24の一例を示している。本例においては、イベント別費用発生率テーブル24には、出願国、イベント名、および請求率の項目が含まれている。請求率とは、イベントに関して費用が発生する割合(費用発生率)であり、本例においては、中間代理人が顧客に対して費用を計上または請求する標準的な割合である。
【0053】
第一予測部32は、イベント別費用発生率テーブル24を参照し、未計上イベントリストに含まれる各イベントの予測費用に請求率を乗じた金額を算出し、当該金額を調整された予測費用として、未計上イベントリストに書き込む。
【0054】
図9は、調整された予想費用の項目が追加された未計上イベントリストの一例を示している。例えば、図8のイベント別費用発生率テーブル24において、アメリカ(US)の新規出願のイベントの請求率は、100%である。したがって、図9の未計上イベントリストにおいて、管理番号0092の産業財産権の調整済予測費用の欄には550,000円の100%である550,000円が書き込まれる。あるいは、例えば、図8のイベント別費用発生率テーブル24において、アメリカ(US)の公開通知のイベントの請求率は、20%である。したがって、図9の未計上イベントリストにおいて、管理番号0040の産業財産権の調整済予測費用の欄には12,000円の20%である2,400円が書き込まれる。
【0055】
なお、STEP4は、省略されてもよい。
【0056】
続いて、制御部3は、集計部34により、第一予測部32による発生済み未計上イベントに関する費用および費用計上タイミングの予測に基づき、費用を予測する期間において発生済み未計上イベントで発生すると予測される費用を所定期間単位で集計する(図2におけるSTEP5)。
【0057】
図10は、発生済み未計上イベントの予測費用集計テーブルの一例を示している。予測費用集計テーブルは、例えば記憶部2に記憶される。本例においては、予測費用集計テーブルには、費用を予測する期間を4カ月間とし、集計する所定期間を月単位とする予測費用集計結果が示されている。具体的には、予測費用集計テーブルには、2024年1月から4月までの各予測月の予測費用が示されている。
【0058】
例えば、2024年1月に発生すると予測される費用は、¥15,000,000円である。当該費用は、図9の未計上イベントリストにおいて費用計上タイミングの予測日が2024年1月1日から2024年1月31日までの期間に該当するイベントの調整済予測費用の合計額となる。図2においてSTEP4が実行されない場合は、当該費用は、図9の未計上イベントリストにおいて、費用計上タイミングの予測日が2024年1月1日から2024年1月31日までの期間に該当するイベントの予測費用の合計金額となる。
【0059】
なお、制御部3により実行される発生済み未完了イベントの費用予測処理は、上記例に限られない。例えば、制御部3は、図2のSTEP1において全ての発生済み未計上イベントを特定して未計上イベントリストを作成した後に、STEP2からSTEP4において費用予測および費用発生タイミング予測を行っている。しかしながら、制御部3は、STEP1において一つの発生済み未計上イベントを特定した後、STEP2からSTEP4において特定した一つの発生済み未計上イベントについて費用予測および費用発生タイミング予測を行い、全ての発生済み未計上イベントに関する費用予測および費用発生タイミング予測が終わるまで、STEP1からSTEP4を繰り返すように、構成されてもよい。
【0060】
また、STEP3の処理は、STEP2の処理の前に行われてもよい。すなわち、制御部3は、未計上イベントリストに含まれる各イベントの費用予測を行う前に、未計上イベントリストに含まれる各イベントの費用発生タイミング予測を行うように構成されてもよい。この場合、STEP2の予測費用の算出は、STEP3において予測された費用発生タイミングの予測日が費用を予測する期間に属するイベントについてのみ、行われてもよい。これにより、制御部3の処理が軽減される。
【0061】
(未発生イベントの費用予測)
次に、図11図13を用いて、制御部3による未発生イベントの費用予測について詳細に説明する。
【0062】
図11は、未発生イベント占有率テーブル25の一例を示している。本例においては、未発生イベント占有率テーブル25には、予測実行時点からの月毎の未発生イベント占有率が示されている。具体的には、未発生イベント占有率テーブル25には、予測実行時点から1カ月から4カ月までの各月の未発生イベント占有率が示されている。未発生イベント占有率は、例えば制御部3により予め算出されて未発生イベント占有率テーブル25に記録される。
【0063】
制御部3は、第二予測部33により未発生イベント占有率テーブル25にアクセスし、未発生イベント占有率を用いて、未発生イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行う。
【0064】
具体的には、制御部3は、第二予測部33により、図2のSTEP5で算出された発生済み未完了イベントに関する予測費用および未発生イベント占有率に基づいて、未発生イベントに関する費用および費用発生タイミングを予測する。
【0065】
具体的には、発生済み未完了イベントの費用A、未発生イベントの費用B、発生済み未完了イベント占有率a、未発生イベント占有率bは、A:B=a:b が成り立つ。したがって、未発生イベントの費用Bは、B=A*(1/a)*bにより算出できる。なお、費用予測するイベントは、発生済み未完了イベントおよび未発生イベントのみなので、発生済み未完了イベント占有率aと未発生イベント占有率bとの合計は1となる。したがって、発生済み未完了イベント占有率aは、a=1-bにより算出できる。
【0066】
例えば、図11の未発生イベント占有率テーブル25において、予測実行時点から1カ月目の未発生イベント占有率は20%である。また、図10の予測費用集計テーブルにおいて、予測実行日から1カ月目である2024年1月の発生済み未完了イベントの予測費用は、15,000,000円である。したがって、2024年1月の未発生イベントの予測費用は、15,000,000*(1/0.8)*0.2=3,750,000円となる。
【0067】
図12は、未発生イベントの予測費用と最終予測費用の項目が追加された予測費用集計テーブルを示している。なお、ここでは費用算出時に生じた小数点以下は四捨五入している。また、図13は、最終予測費用を示すグラフを示している。図13においては、予測月を横軸、最終予測費用を縦軸として、各予測月の最終予測費用が棒グラフで表されている。
【0068】
最終予測費用は、未計上イベントの予測費用と未発生イベントの予測費用の合計である。最終予測費用は、費用予測対象の産業財産権において、予測実行時点から費用を予測する期間において発生すると予測されるイベント(未計上イベントおよび未発生イベント)の費用を所定期間ごとに集計することにより算出される。
【0069】
本実施形態に係る費用予測システム1によれば、未計上イベントの費用予測だけでなく、未発生イベントの費用予測も考慮するので、産業財産権に関する費用をより正確に予測できる。また、発生すると予測される費用を所定期間単位で把握できる。
【0070】
さらに、本実施形態に係る費用予測システム1によれば、標準的な費用および標準的な費用発生タイミングに基づいて、未計上イベントに関する費用および費用発生タイミングの予測を行っているので、簡単に正確な費用を予測できる。
【0071】
さらに、本実施形態に係る費用予測システム1によれば、イベントの中では費用が発生しない場合もあるので、標準的な費用に基づいて予測した未計上イベントに関する費用に費用発生率を乗じることにより、より正確に費用を予測できる。
【0072】
さらに、本実施形態に係る費用予測システム1によれば、未発生イベント占有率を用いて未発生イベントに関する費用を予測するので、簡単に費用を予測できる。また、未発生イベント占有率は、過去の統計データに基づいて算出されるので、正確な費用を予測できる。
【0073】
(未発生イベント占有率の算出方法)
次に、図14を用いて、制御部3による未発生イベント占有率の算出方法について詳細に説明する。
図14は、制御部3が実行する未発生イベント占有率の算出処理のフローチャートである。なお、未発生イベント占有率は、費用予測する前に予め算出される、あるいは未発生イベントの費用予測する際に算出される。
【0074】
まず、制御部3は、第二予測部33により、過去一定期間で費用が発生した複数のイベントの各々について、イベントで発生した費用と当該イベントの発生から費用発生までに掛かった期間とを含むデータを取得する(STEP11)。
【0075】
具体的には、第二予測部33は、管理情報データベース21にアクセスし、過去一定期間で費用が発生した複数のイベント各々についての費用情報を取得する。費用情報には、イベントで発生した費用の情報と、当該イベントの発生から費用発生までに掛かった期間に関する情報と、が含まれる。イベントの発生から費用発生までに掛かった期間に関する情報には、イベントの発生から費用発生までに掛かった期間、またはイベントの発生から費用発生までに掛かった期間を算出するためのイベントの発生日および費用発生日が含まれる。イベントの発生から費用発生までに掛かった期間は、日数、月数または年数で表される。
【0076】
続いて、制御部3は、第二予測部33により、イベントの発生から費用発生までに掛かった期間毎に、当該期間で発生した費用を集計した合算額を算出し、一定期間に発生した費用の総額に対する合算額の割合を算出する(STEP12)。
【0077】
続いて、制御部3は、第二予測部33により、イベントの発生から費用発生までに掛かった期間毎に、一定期間に発生した費用の総額に対する当該期間までに発生した費用の合算額の割合の累積値を算出する(STEP13)。当該累積値は、所定期間単位で統計的に算出された未発生イベントに関する費用の統計データの一例である。
【0078】
図15は、過去一年間に発生した費用の総額に対するイベントの発生から費用発生までに掛かった期間で発生した費用の合算額の割合の累積値を示すテーブルである。本例においては、イベントの発生から費用発生までに掛かった期間を日数単位で表し、費用予測対象の産業財産権と同一の属性情報を有する産業財産権(本例においては、顧客を出願人とする産業財産権)において2020年の1年間で費用が発生したイベントについての累積値が示されている。
【0079】
例えば、日数0とは、イベントが発生した日に当該イベントの費用の計上を行ったことを意味する。日数0における累積値は3.87%である。すなわち、2020年の1年間で費用が発生したイベントの費用の総額に対する、日数0であるイベントの費用の合算額の割合が3.87%である。例えば、日数1とは、イベントが発生した日の翌日に当該イベントの費用の計上を行ったことを意味する。日数1における累積値は4.58%である。すなわち、2020年の1年間で費用が発生したイベントの費用の総額に対する、イベントが発生した日の翌日に当該イベントの費用の計上を行ったイベントの費用の合算額の割合は、0.71%である。そして、2020年の1年間で費用が発生したイベントの費用の総額に対する日数1で発生した合算額の割合の累積値は4.58%(=3.87%+0.71%)となる。
【0080】
続いて、第二予測部33は、予測実行時点から所定期間単位で経過する期間に等価であるイベントの発生から費用発生までに掛かった期間に対して算出された累積値を、所定期間における未発生イベント占有率と見なす(STEP14)。
【0081】
例えば、本例においては、図12に示されるように費用を予測する期間は4カ月であり、費用が集計される所定期間は月単位である。したがって、予測実行時点から所定期間単位で経過する期間に等価であるイベントの発生から費用発生までに掛かった期間とは、予測実行時点から1カ月経過する期間に等価である30日、予測実行時点から2カ月経過する期間に等価である60日、予測実行時点から3カ月経過する期間に等価である90日、予測実行時点から4カ月経過する期間に等価である120日となる。したがって、図15において、予測実行時点から所定期間単位で経過する期間が30日、60日、90日、120日における累積値を、予測実行時点から1カ月目、2カ月目、3カ月目、4カ月目における未発生イベント占有率とみなす。
【0082】
本例においては、予測実行時点から所定期間単位で経過する期間が30日、60日、90日、120日における累積値を簡便化のため5%単位で丸め込みをしている。具体的には、図15に示す30日の累積値である21.51%を5%単位で丸め込みした値の20%を、図11に示す予測実行時点から1カ月目の未発生イベント占有率とする。同様に、図15に示す60日の累積値である35%を、図11に示す予測実行時点から2カ月目の未発生イベント占有率とする。図15に示す90日の累積値である47%を5%単位で丸め込みした値の50%を、図11に示す予測実行時点から3カ月目の未発生イベント占有率とする。図15に示す120日の累積値である85%を、図11に示す予測実行時点から4カ月目の未発生イベント占有率とする。
なお、未発生イベント占有率テーブルを日数レベルで作成する場合には、日数に等価となる月数への変換の必要はない。その場合、日数に対応する累積値を未発生イベント占有率とする。
【0083】
本実施形態に係る費用予測システム1によれば、過去の統計データに基づいて未発生イベント占有率が算出されるので、正確な未発生イベント占有率を算出できる。
【0084】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0085】
上記の実施形態では、発生済み未完了イベントの予測費用と未発生イベント占有率を用いて未発生イベントの予測費用を算出している。しかしながら、未発生イベントの予測費用は、他の方法で算出されてもよい。
【0086】
例えば、図16は、制御部3により実行される未発生イベントの費用予測処理のフローチャートを示している。
【0087】
まず、制御部3は、第二予測部33により、過去一定期間で費用が発生した複数のイベントの各々について、イベントで発生した費用と当該イベントの発生から費用発生までに掛かった期間とを含むデータを取得する(STEP21)。具体的には、第二予測部33は、管理情報データベース21にアクセスし、過去一定期間で費用が発生した複数のイベント各々についての費用情報を取得する。
【0088】
続いて、制御部3は、第二予測部33により、イベントの発生から費用発生までに掛かった期間毎に、期間までに発生した費用を集計した合算額の累積値を算出する(STEP22)。当該累積値は、所定期間単位で統計的に算出された未発生イベントに関する費用の統計データの一例である。
【0089】
続いて、制御部3は、第二予測部33により、予測実行時点から所定期間単位で経過する期間に等価であるイベントの発生から費用発生までに掛かった期間に対して算出された累積値を、所定期間で発生すると予測される未発生イベントに関する費用とみなす(STEP23)。
【0090】
例えば、図17は、過去一定期間に発生した費用の総額に対するイベントの発生から費用発生までに掛かった期間で発生した費用の合算額の累積値を示すテーブルである。本例においては、イベントの発生から費用発生までに掛かった期間を日数単位で表し、2020年の1年間で費用が発生したイベントについての累積値が示されている。図17において、予測実行時点から所定期間単位で経過する期間が30日、60日、90日、120日における累積値を、予測実行時点から1カ月目、2カ月目、3カ月目、4カ月目で発生すると予想される未発生イベントの予測費用とみなす。
【0091】
本変形例に係る費用予測システム1によれば、未発生イベント占有率を算出する必要がないので、より簡単に未発生イベントの予測費用を算出できる。また、未発生イベントの予測費用は、過去の統計データに基づいて算出されるので、正確な費用を予測できる。
【0092】
上記の実施形態では、図13に示されるように、最終予測費用は、未計上イベントの予測費用と未発生イベントの予測費用と区別されずに表示されている。しかしながら、図18に示されるように、最終予測費用は、未計上イベントの予測費用と未発生イベントの予測費用が視覚的に区別されるように表示されてもよい。
【0093】
上記の実施形態では、図12図13に示されるように、最終予測費用は、全てのイベントについての未計上イベントの予測費用と未発生イベントの予測費用とが集計された費用となっている。しかしながら、最終予測費用は、単一または複数のイベント単位で集計されてもよい。
【0094】
例えば、図19は、出願イベントと中間イベントについてそれぞれ未計上イベントの予測費用と未発生イベントの予測費用とが集計された最終予測費用を示している。出願イベントとは、出願手続きに関するイベントである。中間イベントとは、出願後から権利化までの間で発生したイベントを含むイベント群を意味する。
【0095】
具体的には、図2のSTEP5において、制御部3は、集計部34により、費用を予測する期間において、発生済みであるが未計上である出願イベントで発生すると予測される費用を、所定期間単位で集計する。また、制御部3は、集計部34により、費用を予測する期間において、発生済みであるが未計上である中間イベントで発生すると予測される費用を、所定期間単位で集計する。
【0096】
また、制御部3は、第二予測部33により、出願イベント用の未発生イベント占有率を用いて、未発生である出願イベントに関する予測費用を算出する。また、制御部3は、第二予測部33により、中間イベント用の未発生イベント占有率を用いて、未発生である中間イベントに関する予測費用を算出する。
【0097】
出願イベント用の未発生イベント占有率は、過去一定期間で費用が発生した複数の出願イベントのデータに基づいて算出される。すなわち、出願イベント用の未発生イベント占有率を算出するために用いる統計データは、完了済みである出願イベントで発生した費用および費用発生タイミングに基づいて算出される。また、中間イベント用の未発生イベント占有率は、過去一定期間で費用が発生した複数の中間イベントのデータに基づいて算出される。すなわち、中間イベント用の未発生イベント占有率を算出するために用いる統計データは、完了済みである中間イベントで発生した費用および費用発生タイミングに基づいて算出される。
【0098】
あるいは、最終予測費用は、単一または複数のイベント単位で集計されるのに代えてまたは加えて、産業財産権が有する属性情報単位で集計されてもよい。集計される属性情報単位としては、PCT出願やパリルート出願などの出願ルート、出願人、IPC、事業分野、法域(特許、実案、意匠、商標)などが挙げられる。例えば、PCT出願の産業財産権とパリルート出願の産業財産権についてそれぞれ未計上イベントの予測費用と未発生イベントの予測費用とが集計された最終予測費用が算出されうる。
【0099】
この場合も、未発生イベントに関する予測費用を算出する場合は、集計される属性情報用の未発生イベント占有率が用いられる。具体的には、集計される属性情報用の未発生イベント占有率は、集計される属性情報を有する産業財産権において過去一定期間で費用が発生した複数のイベントのデータに基づいて算出される。すなわち、集計される属性情報用の未発生イベント占有率を算出するために用いる統計データは、集計される属性情報を有する産業財産権に関する完了済みであるイベントで発生した費用および費用発生タイミングに基づいて算出される。
【0100】
上記の実施形態では、制御部3は、費用予測対象の産業財産権において全てのイベントについての発生済み未完了イベントおよび未発生イベントに関する予測費用を算出している。しかしながら、制御部3は、費用予測対象の産業財産権における特定のイベントについての発生済み未完了および未発生イベントに関する予測費用を算出するように構成されうる。
【0101】
費用予測対象となるイベントとしては、単一のイベントまたは複数のイベント単位でもよく、例えば、出願イベントや中間イベント、あるいは、これらのイベントに含まれる個々のイベントでもよい。
【0102】
費用予測対象のイベントは、例えば顧客により指定される。例えば、顧客は、端末装置200の入力部201を用いて、費用予測対象のイベントに関する情報を含む費用予測対象の産業財産権に関する情報を入力する。
【0103】
例えば、図2のSTEP1において、制御部3は、顧客から受取った費用予測対象の産業財産権に関する情報に費用予測対象のイベントに関する情報が含まれている場合には、費用予測対象の産業財産権について発生した費用予測対象のイベントのうち費用が計上されていないイベントのリストを作成する。そして、制御部3は、当該リストに基づいて、発生済み未完了イベントに関する予測費用を算出する。
【0104】
あるいは、図2のSTEP5において、制御部3は、図9の未計上イベントリストにおける費用予測対象のイベントの調整済予測費用または予測費用のみを用いて、発生済み未完了イベントに関する予測費用を算出してもよい。
【0105】
また、制御部3は、発生済み未完了イベントに関する予測費用および未発生イベント占有率に基づいて未発生イベントに関する予測費用を算出する。このとき、未発生イベントに関する予測費用を算出するために用いる未発生イベント占有率は、過去一定期間で費用が発生した複数のイベントの中から費用予測対象のイベントと同一のイベントのデータに基づいて算出される。すなわち、未発生イベント占有率を算出するために用いる統計データは、費用予測対象イベントと同一のイベントであって完了済みであるイベントで発生した費用および費用発生タイミングに基づいて算出される。
【0106】
費用予測対象のイベントは、発生済み未完了イベントおよび未発生イベントの各々について設定されてもよい。例えば、発生済み未完了イベントについては、全てのイベントが費用予測対象に設定され、未発生イベントについては、特定のイベントが費用予測対象に設定されてもよい。
【0107】
例えば、未発生イベントについては、費用予測対象のイベントとして中間イベントが設定されうる。ここで、出願イベントよりも中間イベントの方が、未発生イベント占有率が高く予測しにくい。一方、出願イベントは出願人(顧客)でコントロールできる。したがって、顧客は予測が難しい中間イベントについての未発生イベントの予測費用を把握でき、かつ、制御部3の処理負担を軽減できる。
【0108】
上記の実施形態では、顧客を出願人とする産業財産権を費用予測対象の産業財産権としている。しかしながら、例えば出願人に代えてまたは加えて特定の属性情報を有する産業財産権が費用予測対象の産業財産権として設定されてもよい。費用予測対象の属性情報は、例えば顧客により指定される。例えば、顧客は、端末装置200の入力部201を用いて、特定の属性情報を含む費用予測対象の産業財産権に関する情報を入力する。
【0109】
例えば、費用予測対象の属性情報がPCT出願(またはパリルート出願)を示す場合、PCT出願(またはパリルート出願)された産業財産権について発生済み未完了イベントに関する予測費用および未発生イベントに関する予測費用が算出される。
【0110】
未発生イベントに関する予測費用を算出するために用いる未発生イベント占有率は、費用予測対象の属性情報と同一の属性情報を有する産業財産権において過去一定期間で費用が発生した複数のイベントのデータに基づいて算出される。すなわち、未発生イベント占有率を算出するために用いる統計データは、費用予測対象の属性情報と同一の属性情報を有する産業財産権について発生したイベントであって完了済みであるイベントで発生した費用および費用発生タイミングに基づいて算出される。
【0111】
費用予測対象の属性情報は、発生済み未完了イベントおよび未発生イベントの各々について設定されてもよい。
【0112】
上記の実施形態では、イベントの費用の計上の完了をイベントの完了と見なしている。しかしながら、イベントの費用の請求の完了または顧客による費用の支払い完了をイベントの完了と見なしてもよい。
【0113】
上記の実施形態では、費用予測システム1は、顧客から費用予測対象の産業財産権に関する情報を受け取った場合に、費用予測を行い、費用予測結果を顧客に提供している。しかしながら、費用予測システム1は、例えば、定期的に費用予測を行い、費用予測結果を顧客に提供するように構成されてもよい。
【0114】
上記の実施形態では、図3の未計上リストには産業財産権の権利化までのイベントが列挙されている。しかしながら、例えば中間代理人が年金管理会社である場合、図3の未計上リストには、産業財産権の権利化後のイベント、すなわち権利化後の産業財産権を維持するための維持費用(いわゆる年金)の支払い手続きのイベントが含まれうる。費用予測システム1を用いて年金を予測する場合は、例えば、費用を予測する期間は数年に設定され、集計単位である所定期間は年単位に設定されうる。
【0115】
上記の実施形態では、費用予測システム1は、中間代理人が管理している。しかしながら、費用予測システム1は、産業財産権の費用の予測のみを行う費用予測会社により管理されてもよい。この場合、制御部3は、通信ネットワーク100を介して外部の産業財産権情報データベース300(図1)にアクセスし、費用予測対象の産業財産権の取得または維持に関連するイベントであって予測実行時点ですでに発生しているが未完了である発生済み未完了イベントの情報を取得するように構成されうる。産業財産権情報データベース300は、記憶部の一例である。
【0116】
産業財産権情報データベース300は、例えば、独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供するJ-PlatPat(登録商標)、欧州特許庁及び欧州特許条約加盟国の特許庁が提供するEspacenet(登録商標)、世界知的所有権機関が提供するWIPO Patentscope(登録商標)、米国特許商標庁が提供するPatent Full-Text and Image Database等の無料データベースであってもよいし、民間企業が提供する商用データベースであってもよい。
【0117】
産業財産権情報データベース300には、例えば、イベントの完了日として、特許庁からの通知に対して所定の手続きが行われた日、特許庁からの通知に対して所定の手続きを行われずに設定期間が経過した日、特許庁に対して自発的な手続きが行われた日などが、記憶されている。
【0118】
あるいは、費用予測システム1は、顧客により管理されてもよい。この場合、端末装置200は、費用予測システム1とともに一つの装置をなす構成としてもよいし、内部ネットワークを介して費用予測システム1に通信可能に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 費用予測システム
2 記憶部
3 制御部
21 管理情報データベース
22 イベント別費用テーブル
23 イベント別費用発生タイミングテーブル
24 イベント別費用発生率テーブル
25 未発生イベント占有率テーブル
31 読取部
32 第一予測部
33 第二予測部
34 集計部
35 出力部
100 通信ネットワーク
200 端末装置
201 入力部
202 表示部
300 産業財産権情報データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19