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  • 特開-防虫剤用包材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021029
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】防虫剤用包材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20250205BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124714
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉津 麻衣
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086CA29
3E086CA35
4F100AB10B
4F100AK42C
4F100AR00B
4F100AT00
4F100BA03
4F100DG10A
4F100EH662
4F100EH66B
4F100GB15
4F100JD03
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】ピレスロイド系化合物及び香料の包材への吸着や包材外部への抜けを抑制できる防虫剤用包材を提供する。
【解決手段】常温揮散性ピレスロイド系化合物と、香料とを含有する防虫剤を包装する防虫剤用包材であって、前記防虫剤用包材が紙層と、ガスバリア層とを有し、前記ガスバリア層は樹脂層を有し、前記ガスバリア層の20℃、90%RHにおける酸素透過度が、5mL/m・day・MPa以下である、防虫剤用包材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温揮散性ピレスロイド系化合物と、香料とを含有する防虫剤を包装する防虫剤用包材であって、
前記防虫剤用包材が紙層と、ガスバリア層とを有し、
前記ガスバリア層は樹脂層を有し、
前記ガスバリア層の20℃、90%RHにおける酸素透過度が、5mL/m・day・MPa以下である、防虫剤用包材。
【請求項2】
前記ガスバリア層が、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートからなる、請求項1に記載の防虫剤用包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は常温揮散性ピレスロイド系化合物と、香料とを含有する防虫剤を包装する防虫剤用包材に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫を防除ないし駆除するために使用される防虫剤は種々の形態で使用されており、例えば、衣類用防虫剤の場合は、タブレット状の防虫剤を通気性シートで包装し、これを折り畳んだ衣類の上または中に載置して使用するものや、前面および背面に揮散用開口部を設けた樹脂製容器内に、通気性シートで包装した防虫剤を収納し、該容器に設けた吊り下げ用フックにて洋服ダンス内のハンガー吊り下げ棒に吊り下げて用いるもの等が知られている。
【0003】
従来用いられている防虫剤の薬剤としては、例えば、パラジクロロベンゼン、カンファー、ナフタレン等が挙げられる。しかし、これらの薬剤は特有の臭いがあるため、最近ではこれらに代わり、臭気の少ない常温揮散性のピレスロイド系化合物が広く使用されている。また、香り付けを目的として、香料を配合したものも普及している。
【0004】
しかしながら、ピレスロイド系化合物や香料のように揮散性が高い成分を含む製剤では、流通時や保管時に、これらの成分が包材へ吸着してしまうことや包材から外へ抜けてしまうことが問題となる。吸着や抜けが発生すると、実質的に有効成分や香料が減少してしまい、結果として使用期間中に十分な防虫効果、芳香効果が発揮できない恐れがあり、余分に有効成分や香料を配合しなくてはならないといった課題がある。
【0005】
そのため、揮散性薬剤や香料を含む製剤においては、これらの成分の包材への吸着や抜けを抑制する技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、特定構造を有する吸着抑制剤によって、常温揮散性のピレスロイド系化合物の樹脂への吸着を抑制できる旨が開示されている。
特許文献2には、内面がプロピレンホモポリマーからなる、揮散性薬剤の吸着を抑制し得る包装材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-029035号公報
【特許文献2】特開2001-278371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~2においては、常温揮散性のピレスロイド系化合物、及び香料の吸着や抜けについて、いずれをも評価したものはなく、常温揮散性のピレスロイド系化合物と香料とを含有する防虫剤の包材については、検討の余地が残されていた。
そこで本発明は、常温揮散性のピレスロイド系化合物や香料の吸着や抜けを抑制することができる防虫剤用の包材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の酸素透過度を有し、且つ樹脂層を有するガスバリア層と、紙層とを有する包材を用いると、内部に収容した防虫剤に含まれるピレスロイド系化合物や香料の吸着や抜けに対して、顕著な抑制効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の〔1〕及び〔2〕によって達成される。
〔1〕
常温揮散性ピレスロイド系化合物と、香料とを含有する防虫剤を包装する防虫剤用包材であって、
前記防虫剤用包材が紙層と、ガスバリア層とを有し、
前記ガスバリア層は樹脂層を有し、
前記ガスバリア層の20℃、90%RHにおける酸素透過度が、5mL/m・day・MPa以下である、防虫剤用包材。
〔2〕
前記ガスバリア層が、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートからなる、〔1〕に記載の防虫剤用包材。
【発明の効果】
【0010】
ピレスロイド系化合物及び香料の包材への吸着や包材外部への抜けを抑制できる防虫剤用包材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る防虫剤用包材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の防虫剤用包材について詳細に説明する。
【0013】
[防虫剤用包材]
本発明の防虫剤用包材は、常温揮散性ピレスロイド系化合物と、香料とを含有する防虫剤を包装する防虫剤用包材であって、
前記防虫剤用包材が紙層と、ガスバリア層とを有し、
前記ガスバリア層は樹脂層を含み、
前記ガスバリア層の、20℃、90%RHにおける酸素透過度が、5mL/m・day・MPa以下である。
【0014】
図1に本発明の一実施形態に係る防虫剤用包材10の断面図を示す。本発明の防虫剤用包材は、紙層1と、ガスバリア層2とを有する。以下、各層について説明する。
【0015】
<紙層>
本発明の防虫剤用包材10は、紙層1を有する。
紙層として用いる紙の繊維素材としては、植物性天然繊維、動物性天然繊維、化学繊維等が挙げられるが、環境負荷の観点から、天然繊維を含むものが好ましく、天然繊維を50質量%以上含むものがより好ましい。
紙としては、例えば、クラフト紙、グラシン紙、ボール紙等が挙げられ、クラフト紙が好ましい。
【0016】
また、本発明で使用する紙は、サイズ剤、定着剤、製紙用各種填料、歩留向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、結合剤、分散剤、凝集剤、可塑剤、接着剤を適宜含有していてもよい。
【0017】
紙層として用いる紙は、目付が、20~100g/mが好ましく、30~90g/mがより好ましく、40~80g/mがさらに好ましい。
【0018】
本発明の防虫剤用包材は、従来のプラスチックフィルムの包材と比較し、光沢を抑え、紙の風合いを表現することができ、自然由来の素材感があるため、使用中も部屋の雰囲気を壊さず置きやすいという観点から、最外層が紙層であることが好ましい。
【0019】
本発明の防虫剤用包材の全量に対する紙層の含有量が50質量%以上であることが好ましい。紙層の含有量を50質量%以上とすることにより包材に使用する樹脂量を削減でき、環境負荷を低減することができる。紙層の含有量は、より好ましくは52質量%以上である。また、紙層の含有量の上限としては、特に限定されないが、例えば70質量%以下とすることができ、60質量%以下が好ましい。
また、資源有効利用促進法によると、包材の全量に対する紙層の含有量が50質量%以上の場合、紙マークを付与することができ、紙としてリサイクルすることができる。これにより、環境負荷を低減することができる。
【0020】
<ガスバリア層>
本発明の防虫剤用包材10は、樹脂層を有し、且つ、20℃、90%RHにおける酸素透過度が、5mL/m・day・MPa以下であるガスバリア層2を有する。
【0021】
ガスバリア層の20℃、90%RHにおける酸素透過度は、5mL/m・day・MPa以下であり、4mL/m・day・MPa以下がより好ましく、3mL/m・day・MPa以下がさらに好ましい。酸素透過度の下限値としては特に限定されないが、例えば、0.01mL/m・day・MPa以上である。
【0022】
酸素透過度は、例えば、酸素透過率測定装置(モコン社製、製品名「オクストラン(OXTRAN)」)を用い、JIS K7126-2に従い、温度20℃、相対湿度90%の条件において測定した値を用い得る。
【0023】
ガスバリア層の構成としては、樹脂層を有しているものであればよく、単層構造であっても多層構造であってもよい。上記酸素透過度を満たすガスバリア層としては、例えば、シリカ蒸着PET層、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)層、アルミナ蒸着PET層、シリカ・アルミナ蒸着PET層、等が挙げられる。
【0024】
本発明の防虫剤用包材10は、ガスバリア層2がアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。すなわち、ガスバリア層2がアルミニウム蒸着層2aとポリエチレンテレフタレート層2bからなることが好ましい。
そして、図1に示すように、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートにおけるアルミニウム蒸着層2a側に紙層1が積層されていることが好ましい。上記構成とすることによって、紙層と接着する面がアルミニウム蒸着層となり、加工適性が良い構成順序となる。
【0025】
ガスバリア層の厚みとしては、例えば、5~40μmとすることができ、8~30μmが好ましく、10~20μmがより好ましい。カスバリア層が多層構造である場合、各層の厚みの合計が上記範囲となればよい。
ガスバリア層がアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートである場合、アルミニウム蒸着層の厚みとしては、例えば、5~40nmとすることができ、8~30nmが好ましく、10~20nmがより好ましい。
【0026】
<ヒートシール層>
図1に示すように、本発明の防虫剤用包材10は、最内層として、さらにヒートシール層3を有することが好ましい。ヒートシール層は、熱や圧力等によって充分に接着することができる接着性が必要である。
【0027】
ヒートシール層は、このような要件を満たす材質を選択すればよく、単層構造であっても多層構造であってもよい。ヒートシール層としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン(PE)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)等のポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー(IO)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂を用いることができる。中でも、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく、ポリエチレン(PE)がより好ましい。
【0028】
ヒートシール層の厚みとしては、例えば、10~100μmとすればよく、20~80μmが好ましい。
【0029】
図1に示すように、本発明の防虫剤用包材10は、紙層1、ガスバリア層2、及びヒートシール層3の積層体とすることができる。各層は、必要に応じそれぞれ接着剤等により接着してもよい。
【0030】
<防虫剤>
本発明の防虫剤用包材は、常温揮散性ピレスロイド系化合物と、香料とを含有する防虫剤を包装するための包材である。以下、内容物となる防虫剤について説明する。
【0031】
該防虫剤は、常温揮散性ピレスロイド系化合物と、香料とを含有する害虫防除組成物を含浸させた含浸体を含む。
害虫防除組成物に含まれるピレスロイド系化合物は、常温で揮散するピレスロイド系化合物であれば特に限定されず、例えば、エムペントリン、トランスフルスリン、メトフルトリン、プロフルトリン、テトラメスリン等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、プロフルトリン、エムペントリンが好ましく用いられる。
【0032】
害虫防除組成物に含まれる香料は、常温で揮散する香料であれば特に限定されず、例えば、シトロネラ油、ユーカリ油、レモン油、レモングラス油、ハッカ油、オレンジ油、テレピン油などの天然香料、ピネン、リモネン、リナロール、ゲラニオール、シトロネラール、ボルネオール、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、アネトール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、メントン、メントール、シネオールなどの合成香料及び調合香料が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
害虫防除組成物としては、ピレスロイド系化合物および香料以外にも、従来公知の各種添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、BHT、BHA等の安定化剤、青色、黄色、赤色等の色素、光触媒、活性炭、炭等の脱臭剤、竹、柿、グレープフルーツ等の抽出物、銀や銅化合物等の除菌剤、パラフィン、ナフテン等の有機溶剤、終点判別機能等を併用してもよい。
【0034】
また含浸体としては、例えば、動物性、植物性、鉱物性の天然繊維、合成繊維、半合成繊維、再生繊維等のシート、マット、粒状物、顆粒ないし粉末;高分子化合物;ケイ酸、カオリン、活性炭、ベントナイト、珪藻土、タルク、炭酸カルシウム等の無機粉末;木紛、大豆紛、小麦粉、澱粉等の植物粉末;シクロデキストリン等の包摂化合物等が挙げられる。
【0035】
上記のような害虫防除組成物は、上記各種成分を常法により混合することによって得られるが、さらにこれらの成分を適当な溶剤に溶解させてもよい。
【0036】
上記溶剤としては特に限定されるものではなく、例えば、水、ヘキサン、パラフィン、エタノール、プロパノール、デカノール、グリセリン、炭化水素、ジエチルエーテル、ミリスチン酸イソプロピル、アセトン、酢酸、オレイン酸、酢酸エステル、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-フェノキシエタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチルフタレート、トリエチルシトレート、リノール油等の1種又は2種以上を混合して用いることができる。また必要により界面活性剤を用いることもでき、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤等の1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
上記のようにして調製された含浸体を、通気性を有する容器、例えば、開口を設けた紙容器や不織布袋等に収容したものを防虫剤とすることができる。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0039】
〔防虫剤用包材〕
(実施例1)
厚み12μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(VMPET12、酸素透過度:約1[ml/m・day・MPa])のアルミニウム蒸着層側の面に、目付50g/mの紙層が積層され、VMPET12のPET樹脂層側の面に、厚み30μmのリニア低密度ポリエチレン(LLDPE30、酸素透過度:3000以上[ml/m・day・MPa])が積層された包材を実施例1の防虫剤用包材とした。なお、上記包材において、紙層が最外層である。
【0040】
(比較例1)
厚み12μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(VMPET12)のアルミニウム蒸着層側の面に、厚み15μmのポリエチレン(PE15)、厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET12、酸素透過度:約100[ml/m・day・MPa])がこの順に積層され、VMPET12のPET樹脂層側の面に、厚み50μmのリニア低密度ポリエチレン(LLDPE50、酸素透過度:3000以上[ml/m・day・MPa])が積層された包材を比較例1の防虫剤用包材とした。なお、上記包材において、PET12が最外層である。
【0041】
(比較例2)
厚み25μmのアルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレン(VMCPP25、酸素透過度:約10[ml/m・day・MPa])のアルミニウム蒸着層側の面に、目付30g/mの紙層が積層された包材を、比較例2の防虫剤用包材とした。なお、上記包材において、紙層が最外層である。
【0042】
〔常温揮発性ピレスロイド系化合物の吸着・抜け〕
下記表1に示す組成の薬液140mgを、8.5cm×6.5cmの紙製シートに含浸させた。紙製シート1枚あたりのプロフルトリンの含浸量は50mgである。
次に、上記薬液を含浸させた紙製シート3枚を、15cm×20cmの実施例及び比較例の包材へそれぞれ封入し、50℃の条件にて1カ月間静置した。
静置終了後、各紙製シート内に残存するプロフルトリンを抽出し、ガスクロマトグラフ装置(島津製作所製、GC-2014)を用いてプロフルトリンの残存量を確認し、以下の式に従って残存率を算出した(n=3)。
残存率(%)={静置後の残存量(mg)/含浸量(50mg)}×100
得られた残存率の平均値を用いて、下記評価基準にて評価した。
【0043】
<評価基準>
◎:プロフルトリンの残存率(n=3平均)が95%以上
○:プロフルトリンの残存率(n=3平均)が90%以上95%未満
×:プロフルトリンの残存率(n=3平均)が90%未満
【0044】
【表1】

【0045】
〔香り抜け〕
上記表1に示す組成の薬液140mgを、8.5cm×6.5cmの紙製シートに含浸させた。
次に、上記薬液を含浸させた紙製シート2枚を、15cm×20cmの実施例及び比較例の包材へそれぞれ封入し、耐候性試験機(スガ試験機株式会社製、キセノンウェザーメーターX25型)を用いて、60Wの出力で30分間処理を行った。
処理後の包材を手に取り、包材からの匂い漏れがあるかどうかを臭気判定士3名の官能評価により評価した。具体的には、下記に従って、1~4のスコアを付けた。
【0046】
4:全く感じない
3:ほとんど感じない
2:少し感じる
1:感じる
得られた臭気判定士3名のスコアの平均値を用いて、最終的に下記評価基準にて評価した。〇と◎が実用上問題ない水準である。
【0047】
<評価基準>
◎:スコア平均が3.5以上
〇:スコア平均が3.0以上3.5未満
△:スコア平均が2.0以上3.0未満
×:スコア平均が2.0未満
【0048】
評価結果を下記表2に示す。各例の包材の構成についても併せて示す。なお、紙層の含有量は、包材の全量に対する紙層の含有量を示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示す包材の構成において、左が最外層、右が最内層(内容物側)を意味する。
VMPET、LLDPE、PET、PE、VMCPP等の略号の後の数字は、フィルムの厚み(単位はμm)を表す。
紙の後の数字gは目付(単位はg/m)を示す。
アルミニウム蒸着樹脂(VMPET12、VMCPP25)については、アルミニウム蒸着層は最外層側、樹脂層は最内層側(内容物側)である。
【0051】
紙層及びガスバリア層を有する実施例1の包材を使用した場合、プロプルトリンの残存率が高く、且つ、香り抜けが抑制できることが分かった。
一方、紙層を有していない比較例1の包材では、プロプルトリンの残存率が低く、実施例1に比して香り抜けが認められた。また、ガスバリア層を有していない比較例2の包材では、プロフルトリンの残存率は実施例1と同等であるものの、明らかな香り抜けが認められた。
【0052】
なお、実使用系においては、上記ピレスロイド系化合物の吸着・抜け評価及び香り抜け評価がいずれも◎であれば、外装を開封する前の上記成分の減少を考慮する必要がなく、内容物に含まれる上記成分の含有量から使用期間の設定が可能となる。いずれか1つでも×があれば、外装を開封する前に上記成分や香り強度が低下してしまい、内容物に含まれる上記成分の含有量に対して、短い使用期間を設定しなければならない。
【符号の説明】
【0053】
1 紙層
2 ガスバリア層
2a アルミニウム蒸着層
2b 樹脂層(ポリエチレンテレフタレート層)
3 ヒートシール層
10 防虫剤用包材
図1