(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021072
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/095 20060101AFI20250205BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20250205BHJP
G05B 19/4097 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B23K9/095 510D
B23Q17/20 Z
G05B19/4097 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124788
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】517425446
【氏名又は名称】リンクウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100175396
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 隆記
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 文生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昭英
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029BB01
3C269AB12
3C269AB33
3C269BB07
3C269EF02
3C269EF69
(57)【要約】
【課題】従来の手法では、作業ツールに適用するツール制御条件データを三次元モデルデータから生成することができない問題があった。
【解決手段】本発明の情報処理システムは、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理S1と、三次元モデルデータから少なくとも作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出する形状データ抽出処理S2と、属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して属性データに対応した制御条件を決定する制御条件決定処理S3と、決定した制御条件を、形状データにより定義される作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成するツール制御条件生成処理S4と、を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理と、
前記三次元モデルデータから少なくとも前記作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出する形状データ抽出処理と、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応した制御条件を決定する制御条件決定処理と、
決定した前記制御条件を、前記形状データにより定義される前記作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成するツール制御条件生成処理と、
を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える、情報処理システム。
【請求項2】
前記形状データは、前記三次元モデルデータにより表現される前記作業対象物の形状を点群情報により表現したマスタ点群データと、前記三次元モデルデータにより表現される前記作業対象物の形状を面及び境界線の情報を含み、かつ、それぞれが単純形状で定義されるプリミティブ形状ブロックの集合により表現したプリミティブ形状データと、の何れか一方である、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記ツール制御条件生成処理では、前記形状データが作業対象箇所が開かれた面としてとらえることができるものであることを示す場合は、前記制御条件をそのまま前記ツール制御条件データとし、前記形状データが作業対象箇所が面と面とが所定の角度で接する箇所であることができるものであることを示す場合は、前記制御条件のうち加工強度を示す制御値を増減して前記ツール制御条件データとする、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理と、
前記三次元モデルデータから少なくとも前記作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出する形状データ抽出処理と、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応した制御条件を決定する制御条件決定処理と、
決定した前記制御条件を、前記形状データにより定義される前記作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成するツール制御条件生成処理と、
を演算装置に実行させる、情報処理プログラム。
【請求項5】
コンピュータを用いて三次元モデルデータから作業ツールの制御に適用するツール制御条件データを生成する情報処理方法であって、
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出し、
前記三次元モデルデータから少なくとも前記作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出し、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応した制御条件を決定し、
決定した前記制御条件を、前記形状データにより定義される前記作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法に関し、特に、作業対象箇所に対する作業を実施する作業ツールの制御に適用されるツール制御条件データを生成する情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接等の作業を行う作業ロボットの制御では、アームを制御すると共に、アームに取り付けられる作業ツールをどのような制御方法により制御するかを定義するツール制御条件データが必要である。そこで、ツール制御条件データの生成で利用する作業対象物の三次元モデルデータにおいて作業ツールを動かす軌跡の元となる稜線データを三次元モデルデータに設定する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、稜線データを抽出するのみであり、利用する作業ツールに適用するためのツール制御条件データを三次元モデルデータから生成することに関しては開示も示唆もしていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理と、前記三次元モデルデータから少なくとも前記作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出する形状データ抽出処理と、前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応した制御条件を決定する制御条件決定処理と、決定した前記制御条件を、前記形状データにより定義される前記作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成するツール制御条件生成処理と、を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える、情報処理システムである。
【0006】
本発明の一態様は、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理と、前記三次元モデルデータから少なくとも前記作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出する形状データ抽出処理と、前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応した制御条件を決定する制御条件決定処理と、決定した前記制御条件を、前記形状データにより定義される前記作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成するツール制御条件生成処理と、を演算装置に実行させる、情報処理プログラムである。
【0007】
本発明の一態様は、コンピュータを用いて三次元モデルデータから作業ツールの制御に適用するツール制御条件データを生成する情報処理方法であって、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出し、前記三次元モデルデータから少なくとも前記作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出し、前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応した制御条件を決定し、決定した前記制御条件を、前記形状データにより定義される前記作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成する、情報処理方法である。
【0008】
本発明の一態様は、三次元モデルデータから抽出した属性データと、三次元モデルデータから生成した形状データと、を用いて作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールに適用するツール制御条件データを生成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、三次元モデルデータを用いて作業ツールに適用するツール制御条件データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる作業ロボットシステムの概略図である。
【
図2】実施の形態1にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図3】実施の形態1にかかる情報処理システムにおける形状データ生成処理の流れの第1の例を説明するフローチャートである。
【
図4】実施の形態1にかかる情報処理システムにおける形状データ生成処理の流れの第2の例を説明するフローチャートである。
【
図5】実施の形態1にかかる情報処理システムにおける形状データ生成処理の流れの第3の例を説明するフローチャートである。
【
図6】実施の形態1にかかる情報処理システムにおける作業対象箇所の第1の具体例を説明する図である。
【
図7】実施の形態1にかかる情報処理システムにおける作業対象箇所の第2の具体例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0013】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる作業ロボットシステムの概略図である。
図1に示すように、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1は、コンピュータ10と作業ロボット20とを備える。また、作業ロボット20は、基台にロボットアーム21が設けられ、作業ロボット20の先端に作業ツール22及び作業部センサ23が取り付けられる。
【0014】
コンピュータ10は、他で生成された三次元モデルデータの受信、或いは、三次元モデルデータの生成を行う。また、コンピュータ10は、三次元モデルデータを用いて作業ロボット20の制御で利用されるツール制御条件データを生成する。ここで、ツール制御条件データの生成では、複数の処理を行うが、これらの処理は、少なくとも1台のコンピュータ10を用いて実施されてもよく、作業ロボットシステム1に含まれるコンピュータ10は1台に限られない。また、コンピュータ10は、生成したツール制御条件データを作業ロボット20に送信する。実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業ロボット20は、ロボットアーム21を制御する制御部(不図示)を有し、制御部が受信したツール制御条件データを利用してロボットアーム21に取り付けられた作業ツール22を制御する。
【0015】
作業ロボット20は、溶接作業、塗装作業、塗布作業、切削作業、研磨作業、研削作業、旋削作業のうちの少なくとも1つに対応する。ロボットアーム21は、先端に取り付けられる作業ツール22を作業情報データに基づき移動させる。作業情報データには、作業ツール22の移動軌跡を定義するツールパス、作業ツール22の姿勢を定義するツール姿勢情報が少なくとも含まれる。
【0016】
作業ツール22は、実施する作業に応じて異なるツールとなるものである。作業ツール22は、例えば溶接作業を行う場合は溶接トーチ、ノズル、溶接棒等であり、塗装作業では塗装用ガンなどの塗装用具である。その他、作業ツールとしては、塗布用具(例えば、塗布スプレー)、切削工具(例えば、ドリル、エンドミル、フライス)、研磨用具(例えば、研磨ブラシ)、切削工具(砥石、カップブラシ、ダイヤモンドバー)、旋削用具(例えば、バイト)等が考えられる。実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業ツール毎に異なるツール制御条件データに基づき作業ツール22を制御する。また、同じ作業ツール22に対応するツール制御条件データであっても、作業対象となる部材の材質や厚みによって異なる値の制御値を有する場合がある。
【0017】
作業部センサ23は、作業対象物の形状をスキャンするセンサである。このようなセンサとしては、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ラインスキャナ、三次元スキャナ等が考えられる。実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業部センサ23を用いて作業実施前の作業対象物の形状の認識、作業実施後の作業対象物の形状の認識を行う。
【0018】
実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、生産活動を行う前に、作業対象物に対して行う作業毎に作業ツール22の制御に適用するツール制御条件データを作成する必要がある。そして、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、コンピュータ10において、三次元モデルデータからツール制御条件データを作成する。このように、三次元モデルデータからツール制御条件データを作成することで、作業ロボット20を用いて試作品等の現物を用いることなくツール制御条件データの作成を行うことが可能になる。
【0019】
ここで、三次元モデルデータは、三次元CAD(Computer Aided Design)データ、および、後述の属性データが含まれる。CADデータは、作業対象物の形状を示す面の情報があるデータであればよい。CADデータのデータ形式は、STEP(Standard for the Exchange of Product model data)、IGES(Intial Graphics Exchange Specification)、STL(STereoLithography)などである。また、属性データには、パーツ名、品番、材料、寸法、作業条件、輪郭形状等のデータが含まれる。後述のように、属性データには作業対象線が含まれていてもよい。属性データは、モデルデータに含まれた、コンピュータ読み取り可能なデータ形式で構成されたデータであってもよく、紙に描かれた図面に記載された組立や部品のデータ(例えば、ASSY(Assenmbly)データ)であってもよい。属性データには、作業対象物に対する作業において利用される作業ツール22の種類、作業対象物が有する輪郭線の形状データ、および、作業対象物における輪郭線の位置を示す位置データ、作業対象物の寸法、作業位置、作業経路、作業対象物の部位毎の材質や板厚等の作業情報に関するデータが含まれる。属性データは、例えば、溶接作業であれば、溶接電流、溶接速度、トーチ角度等の溶接条件のデータの少なくとも1つを含む場合もある。
【0020】
実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、現物を用いることなく、コンピュータ10上で、三次元モデルデータからツール制御条件データを生成するツール制御条件データ生成処理を実施する。このツール制御条件データ生成処理は、コンピュータ10に搭載された記憶装置に格納された情報処理プログラムをCPU等の演算装置で実行することで行う。
【0021】
以下では、このツール制御条件データ生成処理について詳細に説明する。また、ツール制御条件データ生成処理には複数の処理が含まれるが、この複数の処理は、1台のコンピュータで実行されても良く、複数台のコンピュータで実行されても良いため、以下の説明では、コンピュータ10を情報処理システムと称す。また、以下で説明するツール制御条件データ生成処理は、説明を簡単にするために溶接作業に対応したツール制御条件データを生成する例を用いて説明する。しかしながら、実施の形態1にかかるツール制御条件データ生成処理は、溶接作業以外の種々の作業に適用可能である。
【0022】
図2は、実施の形態1にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【0023】
図2に示すように、実施の形態1にかかる情報処理システムは、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理(ステップS1)と、三次元モデルデータから少なくとも作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出する形状データ抽出処理(ステップS2)と、属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して属性データに対応した制御条件を決定する制御条件決定処理(ステップS3)と、決定した制御条件を、形状データにより定義される作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成するツール制御条件生成処理(ステップS4)と、を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える。
【0024】
図2に示すように、実施の形態1にかかる情報処理システムにおいて実行されるツール条件データ生成処理では、まず、三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理を行う(ステップS1)。ステップS1において抽出される属性データには、作業対象物の寸法、作業位置、作業経路により定義される作業対象箇所の位置情報が少なくとも含まれる。また、属性データには、作業対象物の部位毎の材質及び板厚に関するデータが少なくとも含まれることがある。
【0025】
続いて、実施の形態1にかかるツール制御条件データ生成処理では、三次元モデルデータから少なくとも作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出する形状データ抽出処理を行う(ステップS2)。
【0026】
ここで、形状データは、三次元モデルデータにより表現される作業対象物の形状を点群情報により表現したマスタ点群データと、三次元モデルデータにより表現される作業対象物の形状を面及び境界線の情報を含み、かつ、それぞれが単純形状で定義されるプリミティブ形状ブロックの集合により表現したプリミティブ形状データと、の何れか一方である。そこで、この形状データ生成処理の具体例を
図3~
図5を参照して説明する。
【0027】
図3は、実施の形態1にかかる情報処理システムにおける形状データ生成処理の流れの第1の例を説明するフローチャートである。
図3に示すように、実施の形態1にかかる形状データ生成処理では、まず、既に生成されている作業対象物の三次元モデルデータを取得するモデルデータ取得処理を行う(ステップS11)。次いで、実施の形態1にかかる形状データ生成処理では、ステップS11で取得した三次元モデルデータから作業対象物の三次元メッシュデータを生成する三次元メッシュデータ生成処理を行う(ステップS12)。このステップS11とステップS12をまとめてデータ変換処理と称すことがある。
【0028】
ここで、ステップS2で生成する三次元メッシュデータは、所定の大きさで定義される単位メッシュにより作業対象物の全体の形状を表したものである。三次元メッシュデータによれば、作業対象物の形状を面の集合により作業対象物の形状を扱うことが可能になる。
【0029】
続いて、実施の形態1にかかる形状データ生成処理は、作業対象物の三次元モデルデータから作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理を行う(ステップS13)。
図3に示す例では、ステップS12において生成した三次元メッシュデータを三次元モデルデータとしてステップS3で利用する。実施の形態1にかかるマスタ点群データ生成処理では、例えば、三次元メッシュデータ全体を覆うような仮想立方体を定義し、仮想立方体の一面から面に垂直な計測線を三次元メッシュデータに延ばした時に、計測線と三次元メッシュデータと交わる点をマスタ点群データの1つとする。マスタ点群データは、多数の計測線と三次元メッシュデータとの交点を含むものであり、無数の点情報の集合である。この点情報は例えば、座標情報である。ここで、例えば、仮想立方体の一面は、作業対象物が作業台に設置された状態で、作業部センサ23が作業対象物を観測可能と考えられる面であると、実際の作業において作業部センサ23が取得する作業対象物の現物点群データとの相関が取れるため、作業効率を高めることができる。
【0030】
図4は、実施の形態1にかかる情報処理システムにおける形状データ生成処理の流れの第2の例を説明するフローチャートである。
図4に示すように、形状データ生成処理の第2の例は、
図3で説明した形状データ生成処理のステップS12に続いて、プリミティブ形状データ抽出処理を行う。三次元メッシュデータから、プリミティブ形状を抽出して、プリミティブ形状データを生成するプリミティブ形状データ抽出処理を行う(ステップS21)。ここで、プリミティブ形状とは、立方体、直方体、球、円柱、円錐など、予め決定された比較的単純な形状である。このような形状の線及び面の情報を有するデータをプリミティブ形状データと称す。そして、ステップS21のプリミティブ形状データ抽出処理では、作業対象物をプリミティブ形状の組み合わせたモデルデータに置き換える。
【0031】
図5は、実施の形態1にかかる情報処理システムにおける形状データ生成処理の流れの第3の例を説明するフローチャートである。
図5に示すように、形状データ生成処理の第3の例では、ステップS12の三次元メッシュデータ生成処理に続いて形状判定処理(ステップS30)を行い、形状判定処理の結果に応じてマスタ点群データ生成処理(ステップS13)か、プリミティブ形状データ抽出処理(ステップS21)の何れか一方を実行する。ステップS30の形状判定処理では、作業対象箇所が三次元モデルデータ上で線データとして定義されているか否かを判断する。
【0032】
三次元モデルデータでは、部材の形状を規定する線が線データとして定義される。そのため、端面と端面を接合するような場合は、部材の端面の外周を定義する線データが三次元モデルデータ上に定義されているため、この線データを作業対象線として参照することができる。一方、例えば、一方の部材の面上に他の部材を重ね合わせるような加工を行う場合、一方の部材の面上には線データが定義されず、実施の形態1で説明したマスタ点群データ(ステップS3)を用いた作業情報データ生成処理(ステップS5)を実施する必要がある。
【0033】
プリミティブ形状データを用いたモデルデータの置き換えは、マスタ点群データを作成する場合に比べて計算負荷を軽くすることができる。そのため、形状データ生成処理の第3の例を用いることで、作業対象物の複雑さや、作業内容に応じて適宜情報処理システムの演算量を抑えることができる。つまり、形状データ生成処理の第3の例を用いることで、作業情報データの生成に要する時間を削減することが可能になる。
【0034】
次いで、
図1を再度参照し、実施の形態1にかかるツール制御条件データ生成処理について説明する。実施の形態1にかかるツール制御条件データ生成処理では、ステップS2の形状データ生成処理に続いて、制御条件決定処理を行う(ステップS3)。制御条件決定処理では、ステップS1で抽出した属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して属性データに対応した制御条件を決定する。
【0035】
ここで、制御条件テーブルは、作業ツール22の種類毎に異なる複数のテーブルデータを含む。そして、制御条件決定処理では、属性データによって示される作業ツール22に従って、制御条件を読み出す制御条件テーブルを選択する。そして、制御条件決定処理は、属性データによって示される少なくとも1つのパラメータをキーとして選択した制御条件テーブルから制御条件を決定する。例えば、制御条件決定処理では、制御条件を決定するためのキーとして第1のパラメータと第2のパラメータが考えられる場合、第1のパラメータと第2のパラメータをキーとして選択した制御条件テーブルから制御条件を決定する。より具体的には、作業ツール22が溶接トーチであり、この溶接トーチに対応する制御条件テーブルが、第1のパラメータとして作業対象箇所の部材の材質、第2のパラメータとして作業対象箇所の厚みをキーに指定するものであった場合、制御条件テーブルには、部材の材質と厚みの組み合わせ毎にツール送り速度と溶接トーチに流す電流値とが少なくとも定義されることが考えられる。この場合、制御条件決定処理では、作業対象箇所の部材の材質と厚みをキーとして、キーに対応するツール送り速度と溶接トーチに流す電流値とを制御条件として決定する。
【0036】
続いて、実施の形態1にかかるツール制御条件データ生成処理は、ステップS3で決定した制御条件を、形状データにより定義される作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成するツール制御条件生成処理を行う(ステップS4)。
【0037】
ツール制御条件生成処理(ステップS4)では、形状データが作業対象箇所が開かれた面としてとらえることができるものであること示す場合は、制御条件をそのままツール制御条件データとし、形状データが作業対象箇所が面と面とが所定の角度で接する箇所であることができるものであることを示す場合は、制御条件のうち加工強度を示す制御値を増減してツール制御条件データとする。ここで、
図6及び
図7を参照して作業対象箇所毎の制御条件の違いを説明する。
【0038】
図6は、実施の形態1にかかる情報処理システムにおける作業対象箇所の第1の具体例を説明する図である。
図6に示す作業対象箇所の第1の具体例は、並べられた平板30及び平板31を2つの平板が接する位置に設定された溶接対象線WLに沿って溶接を行うことで隣り合った2つの平板をつなぎ合わせる例である。つまり、
図6に示した第1の具体例は、形状データが作業対象箇所が開かれた面としてとらえる事ができる例である。このような場合、ツール制御条件生成処理では、ステップS3で決定された制御条件をそのままツール制御条件データとする。
【0039】
図7は、実施の形態1にかかる情報処理システムにおける作業対象箇所の第2の具体例を説明する図である。
図7に示す作業対象箇所の第2の具体例は、平板30に平板31を重ね合わせ、平板30の上面と平板31の端面との境界線に設定された溶接対象線WLに沿って溶接を行うことで重なり合った2つの平板をつなぎ合わせる例である。つまり、
図7に示した第2の具体例は、形状データが作業対象箇所が面と面とが所定の角度で接する箇所であることを示す例である。このような場合、ツール制御条件生成処理では、ステップS3で決定された制御条件のうち加工強度を示す制御値を増減して前記ツール制御条件データとする。加工強度を示す制御値は、例えば、溶接トーチに流す電流値、塗布スプレーの塗料の噴射量等が考えられる。
【0040】
ここで、ツール制御条件生成処理における制御値の補正方法の具体例を1つ説明する。例えば、作業対象線が定義される箇所の2つの面がなす角が第1の角度未満又は第2の角度以上である場合、ツール制御条件生成処理では、溶接トーチに流す電流値が小さくなるように補正する。一方、作業対象線が定義される箇所の2つの面がなす角が第1の角度以上又は第2の角度未満である場合、ツール制御条件生成処理では、溶接トーチに流す電流値をステップS3で決定された制御条件をそのままツール制御条件データとする。なお、第1の角度は、例えば、120度程度である。第2の角度は、例えば、240度程度である。
【0041】
上記説明より、実施の形態1にかかる情報処理システムでは、三次元モデルデータと予め準備した制御条件テーブルとを用いることで、実物を用いた検証結果を利用することなく、作業開始前にツール制御条件データを生成することができる。このように、実物が無い状態でツール制御条件データを生成することで、実物の試作タイミング等に関係ない期間にツール制御条件データの生成を行うことが可能になり、生産活動を効率化することができる。
【0042】
最後に、本発明の実施の形態を図面等を用いて総括する。本発明の実施の形態は、
図1~
図7に示すように、以下のように示される。
【0043】
(付記1)
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理(S1)と、
前記三次元モデルデータから少なくとも前記作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出する形状データ抽出処理(S2)と、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応した制御条件を決定する制御条件決定処理(S3)と、
決定した前記制御条件を、前記形状データにより定義される前記作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成するツール制御条件生成処理(S4)と、
を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える、情報処理システム。
【0044】
(付記2)
前記形状データは、前記三次元モデルデータにより表現される前記作業対象物の形状を点群情報により表現したマスタ点群データと、前記三次元モデルデータにより表現される前記作業対象物の形状を面及び境界線の情報を含み、かつ、それぞれが単純形状で定義されるプリミティブ形状ブロックの集合により表現したプリミティブ形状データと、の何れか一方である、付記1に記載の情報処理システム。
【0045】
(付記3)
前記ツール制御条件生成処理(S4)では、前記形状データが作業対象箇所が開かれた面としてとらえることができるものであること示す場合は、前記制御条件をそのまま前記ツール制御条件データとし、前記形状データが作業対象箇所が面と面とが所定の角度で接する箇所であることができるものであることを示す場合は、前記制御条件のうち加工強度を示す制御値を増減して前記ツール制御条件データとする、付記1又は2に記載の情報処理システム。
【0046】
(付記4)
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理(S1)と、
前記三次元モデルデータから少なくとも前記作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出する形状データ抽出処理(S2)と、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応した制御条件を決定する制御条件決定処理(S3)と、
決定した前記制御条件を、前記形状データにより定義される前記作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成するツール制御条件生成処理(S4)と、
を演算装置に実行させる、情報処理プログラム。
【0047】
(付記5)
コンピュータを用いて三次元モデルデータから作業ツールの制御に適用するツール制御条件データを生成する情報処理方法であって、
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出し(S1)、
前記三次元モデルデータから少なくとも前記作業対象物の作業対象箇所の形状情報含む形状データを抽出し(S2)、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定された制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応した制御条件を決定し(S3)、
決定した前記制御条件を、前記形状データにより定義される前記作業対象箇所の形状情報に基づき補正してツール制御条件データを生成する(S4)、
情報処理方法。
【符号の説明】
【0048】
1 作業ロボットシステム
10 コンピュータ
20 作業ロボット
21 ロボットアーム
22 作業ツール
23 作業部センサ
30、31 平板
WL 溶接対象線