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特開2025-21074保険支払業務支援システムおよび保険支払業務支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021074
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】保険支払業務支援システムおよび保険支払業務支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/08 20120101AFI20250205BHJP
【FI】
G06Q40/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124790
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】598063351
【氏名又は名称】明治安田生命保険相互会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB61
5L055BB61
(57)【要約】
【課題】給付金または保険金の支払いを迅速に行う仕組みを提供する。
【解決手段】第1取得部108は、給付金または保険金の請求に必要な第1請求情報を取得する。第2取得部110は、医療機関が発行した書類を撮影した書類画像から抽出された文字データから、給付金または保険金の請求に必要な第2請求情報を取得する。特定部112は、第1請求情報と第2請求情報から、傷病を特定する情報を含む請求内容を特定する。査定部114は、特定した請求内容と、契約内容DB120に保持された契約内容にもとづいて、給付金または保険金の金額を算出する。査定部114は、傷病査定DB122から、請求内容に含まれる傷病を特定する情報に対応付けられたモラルリスクに関する支払条件を取得し、請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たす場合に、給付金または保険金を支払うことを決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保険の給付金または保険金の金額を算出する保険支払業務支援システムであって、
保険の契約内容を保持する契約内容データベースと、
傷病を特定する情報と、給付金または保険金のモラルリスクに関する支払条件とを対応付けて保持する傷病査定データベースと、
給付金または保険金の請求に必要な第1請求情報を取得する第1取得部と、
医療機関が発行した書類を撮影した書類画像から抽出された文字データから、給付金または保険金の請求に必要な第2請求情報を取得する第2取得部と、
第1請求情報と第2請求情報から、傷病を特定する情報を含む請求内容を特定する特定部と、
特定した請求内容と、前記契約内容データベースに保持された契約内容にもとづいて、給付金または保険金の金額を算出する査定部とを備え、
前記査定部は、前記傷病査定データベースから、請求内容に含まれる傷病を特定する情報に対応付けられたモラルリスクに関する支払条件を取得し、請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たす場合に、給付金または保険金を支払うことを決定する、
ことを特徴とする保険支払業務支援システム。
【請求項2】
前記査定部は、請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たさない場合に、保険会社の担当者に、その旨を通知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の保険支払業務支援システム。
【請求項3】
モラルリスクに関する支払条件は、責任開始日から入院日までの期間が、傷病に対して設定される期間以上であることに設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の保険支払業務支援システム。
【請求項4】
モラルリスクに関する支払条件は、請求内容に含まれる入院日数が、傷病に対して設定される上限日数以下であることに設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の保険支払業務支援システム。
【請求項5】
前記第1取得部は、請求者が入力した、傷病を特定する情報を含む第1請求情報を受け付ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の保険支払業務支援システム。
【請求項6】
前記第1取得部は、入院日数を含む第1請求情報を受け付ける、
ことを特徴とする請求項5に記載の保険支払業務支援システム。
【請求項7】
前記第2取得部は、領収証を撮影した画像から抽出された第2請求情報を受け付ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の保険支払業務支援システム。
【請求項8】
保険の契約内容を保持する契約内容データベースと、傷病を特定する情報と、給付金または保険金のモラルリスクに関する支払条件とを対応付けて保持する傷病査定データベースとを備えた保険支払業務支援システムにおいて、保険支払業務を支援する保険支払業務支援方法であって、
給付金または保険金の請求に必要な第1請求情報を取得するステップと、
医療機関が発行した書類を撮影した書類画像から文字データを抽出するステップと、
抽出した文字データから、給付金または保険金の請求に必要な第2請求情報を取得するステップと、
第1請求情報と第2請求情報から、傷病を特定する情報を含む請求内容を特定するステップと、
前記傷病査定データベースから、請求内容に含まれる傷病を特定する情報に対応付けられたモラルリスクに関する支払条件を取得するステップと、
請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たすか否かを判定するステップと、
請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たす場合に、給付金または保険金を支払うことを決定するステップと、
を有することを特徴とする保険支払業務支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保険会社における支払業務を支援する技術に関し、特に顧客が契約している保険の内容にもとづいて給付金または保険金の金額を算出する保険支払業務支援システムおよび保険支払業務支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、保険の給付金申請手続きを支援するシステムを開示する。この保険給付金申請システムは、医療機関の証明書類を撮影した画像に含まれる情報を抽出し、抽出した情報と、申請手続き時に入力したテキスト情報や保険会社の顧客情報DBに登録されている個人情報等とを照合することで、申請情報の適切さを自動判定する。保険給付金申請システムは、自動判定の結果、正しくないと判定される情報については、再入力、証明書類の再撮影などを申請者に要求して、正しい申請情報を入力してもらうことで、保険給付金の申請手続きおよび給付手続をスムーズに実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-31501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、給付金や保険金の金額を算出する支払査定業務の多くが、人的対応を中心に行われてきた。そのため支払請求を受け付けてから、給付金や保険金を顧客に支払うまでの期間が長期化する傾向にあった。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、給付金または保険金の請求手続きを簡素化しつつ、給付金または保険金の支払いを迅速に行う仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の保険支払業務支援システムは、保険の給付金または保険金の金額を算出する保険支払業務支援システムであって、保険の契約内容を保持する契約内容データベースと、傷病を特定する情報と、給付金または保険金のモラルリスクに関する支払条件とを対応付けて保持する傷病査定データベースと、給付金または保険金の請求に必要な第1請求情報を取得する第1取得部と、医療機関が発行した書類を撮影した書類画像から抽出された文字データから、給付金または保険金の請求に必要な第2請求情報を取得する第2取得部と、第1請求情報と第2請求情報から、傷病を特定する情報を含む請求内容を特定する特定部と、特定した請求内容と、契約内容データベースに保持された契約内容にもとづいて、給付金または保険金の金額を算出する査定部とを備える。査定部は、傷病査定データベースから、請求内容に含まれる傷病を特定する情報に対応付けられたモラルリスクに関する支払条件を取得し、請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たす場合に、給付金または保険金を支払うことを決定する。
【0007】
本発明の別の態様は、保険の契約内容を保持する契約内容データベースと、傷病を特定する情報と、給付金または保険金のモラルリスクに関する支払条件とを対応付けて保持する傷病査定データベースとを備えた保険支払業務支援システムにおいて、保険支払業務を支援する保険支払業務支援方法に関する。この保険支払業務支援方法は、給付金または保険金の請求に必要な第1請求情報を取得するステップと、医療機関が発行した書類を撮影した書類画像から文字データを抽出するステップと、抽出した文字データから給付金または保険金の請求に必要な第2請求情報を取得するステップと、第1請求情報と第2請求情報から、傷病を特定する情報を含む請求内容を特定するステップと、傷病査定データベースから、請求内容に含まれる傷病を特定する情報に対応付けられたモラルリスクに関する支払条件を取得するステップと、請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たすか否かを判定するステップと、請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たす場合に、給付金または保険金を支払うことを決定するステップとを有する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】給付金または保険金の支払請求を処理する一連の業務プロセスを示す図である。
図2】領収証の一例を示す図である。
図3】実施例の保険システムの機能ブロックを示す図である。
図4】入力画面の例を示す図である。
図5】申し出内容の入力画面の例を示す図である。
図6】請求理由の入力画面の例を示す図である。
図7】傷病名の入力画面の例を示す図である。
図8】入院期間の入力画面の例を示す図である。
図9】手術名の入力画面の例を示す図である。
図10】入力内容の確認画面の例を示す図である。
図11】必要書類および必要事項の入力画面の例を示す図である。
図12】最終確認画面の例を示す図である。
図13】第1請求情報と第2請求情報から特定される請求内容を示す図である。
図14】自動査定処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、保険の給付金または保険金の支払請求を処理する一連の業務プロセスを示す。各業務プロセスは、保険会社に設けられた保険支払業務支援システムにより実施される。保険支払業務支援システムは、OCR(Optical Character Reader)装置やサーバ装置など複数の情報処理装置によって構成されてよい。
【0011】
(請求手続)
実施例の保険システムでは、顧客が、スマートホンやタブレットなどの端末装置を操作して、給付金または保険金の支払請求手続を行う。顧客は、端末装置に表示される入力画面に、傷病名や入院期間などの支払請求に必要な情報を入力して、請求書類を作成する。また顧客は、医療機関が発行した書類を、端末装置に搭載されたカメラで撮影する。撮影する書類は、領収証や診療明細書であってよい。顧客は、作成した請求書類および撮影した書類画像を含む支払請求を、端末装置から保険会社の保険支払業務支援システムに送信する。この請求手続は、保険会社の営業担当者が顧客の自宅を訪問して、営業担当者の端末装置から行われてもよい。
【0012】
図2は、領収証の一例を示す。領収証には、医療行為ごとの診療報酬点数と、負担割合にもとづいて算出される請求金額が記載される。図2に示す領収証は、患者が退院したときに発行された領収証であり、入院期間(令和4年10月10日~令和4年10月15日)および入院日数(6日間)が記載されている。領収証には、医療費の支払いに必要な情報のみが記載されるため、病名や手術名が記載されることはない。なお診療明細書(図示せず)には、診療内容や検査、処方箋薬剤、手術名など、領収証よりも詳細な情報が記載されるが、病名は記載されない。顧客は、領収証および/または診療明細書をカメラで撮影して、撮影した画像を請求書類とともに保険支払業務支援システムに送信する。
【0013】
(請求受付)
保険支払業務支援システムは、顧客の端末装置から、請求書類および書類画像を含む支払請求を受け付ける。請求受付プロセスでは、OCR装置が、書類画像に含まれるテキスト部分を認識して、文字データに変換する。
【0014】
(支払査定)
保険支払業務支援システムは、請求書類から、給付金または保険金の請求に必要な第1請求情報を取得し、書類画像から抽出された文字データから、給付金または保険金の請求に必要な第2請求情報を取得して、請求内容を特定する。保険支払業務支援システムは、特定した請求内容が、保険商品の約款が定める支払事由に該当しているか確認する。請求内容が約款の支払事由に該当していなければ、支払請求は却下され、顧客に給付金または保険金が支払われることはない。請求内容が約款の支払事由に該当する場合、保険支払業務支援システムは、契約内容にもとづいて給付金または保険金の金額を算出する。以下、説明の便宜上、給付金または保険金を、単に「給付金」と呼ぶこともある。
【0015】
続いて実施例の保険支払業務支援システムは、請求内容が、モラルリスクに関する支払条件を満たすか否かを確認する。ここで保険業界におけるモラルリスクとは、たとえば給付金や保険金を不正に取得するような、保険制度の悪用や道徳的な危険(非道徳的な行為)のことを意味する。モラルリスクに関する支払条件は、保険商品の約款が定める支払条件(支払事由)とは異なり、支払請求が不正に行われていないか判断するための条件となる。
【0016】
医療保険における保障は、保険契約の申込み、告知または診査、第一回保険料の払込みの3つ全てが完了した日から開始される。この日は「責任開始日」と呼ばれ、保険会社は責任開始日から契約上の責任を開始する。実施例の保険支払業務支援システムは、請求書類に含まれる第1請求情報と、領収証および/または診療明細書に含まれる第2請求情報とにもとづいて請求内容を特定するが、給付金請求の理由となる傷病名は、領収証や診療明細書に記載されていないため、顧客が作成した請求書類によって特定されることになる。つまり請求内容に含まれる傷病名は顧客による自己申告であり、顧客が誤った傷病名(実際とは異なる傷病名)を入力することも生じうる。そこで実施例の保険支払業務支援システムは、請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たすか否かを確認する処理を実施する。この確認処理については、後に詳述する。
【0017】
なお支払請求に診断書の撮影画像が添付されている場合は、診断書に含まれる文字から傷病名を特定できるため、保険支払業務支援システムは、顧客が入力した傷病名と、診断書に記載された傷病名とを突合チェックして、傷病名の正しさを確認できる。しかしながら診断書の取得には時間も費用もかかるため、保険会社は診断書の提出を顧客に要求することなく、給付金の支払請求を受け付けることが好ましい。そこで実施例の保険システムでは、顧客が、領収証および/または診療明細書の撮影画像を保険会社に提出することで、給付金の支払いを受けられるようにしている。なお保険商品によっては診断書の提出を義務づけるものもあり、その場合、顧客は、医療機関に診断書を作成してもらって、その診断書の撮影画像を端末装置から保険支払業務支援システムに送信する必要がある。
【0018】
請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たしていれば、保険支払業務支援システムは、すみやかに顧客への支払処理を実施する。請求受付プロセスおよび支払査定プロセスは、保険支払業務支援システムにより自動的に実施されるため、支払請求を受け付けてから、顧客への給付金支払いまでを、最速で当日中、遅くとも2営業日以内に完了することが可能となる。なお請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たしていなければ、自動支払することはできず、請求内容は保険会社の査定担当者に通知されて、査定担当者が支払条件に関する判断を行うことになる。その結果、モラルリスクに該当しないと判断されれば、保険支払業務支援システムは、顧客への支払処理を実施する。
【0019】
(確認査定)
給付金の支払後、保険支払業務支援システムは、顧客の請求漏れを自動点検する。保険支払業務支援システムは、給付金の支払い対象事由を見逃していないか確認する。
【0020】
(請求案内)
請求漏れがあることが確認された場合、保険支払業務支援システムは、顧客に請求漏れがあることを知らせるとともに、あらためて保険請求するよう案内する。以上のように保険支払業務支援システムは、保険支払業務の効率的な実施をサポートして、顧客満足度の高い保険サービスを提供する。
【0021】
図3は、実施例の保険システム1の機能ブロックを示す。保険システム1は、顧客が操作する端末装置10と、保険会社に設けられる保険支払業務支援システム100とを備える。端末装置10と保険支払業務支援システム100は、インターネットなどのネットワーク2によって通信可能に接続される。なお保険支払業務支援システム100の少なくとも一部の構成は、保険会社の外部に設けられてもよい。
【0022】
端末装置10は、スマートホンやタブレットなどの通信機能を有する機器であって、顧客により操作される。端末装置10は、タッチスクリーンなどの顧客が入力作業を行うことのできる入力部12、カメラ14、各種データ処理を実行する処理部16、処理部16により参照または更新されるデータを記憶する記憶部18、保険支払業務支援システム100と通信可能に接続する通信部20および表示部22を有する。表示部22は、液晶パネルや有機ELパネルであってよい。端末装置10は、顧客が個人的に保有する機器であってよいが、顧客の自宅を訪問した保険会社の担当者が所持する機器であってもよい。
【0023】
図4は、専用サイトのログイン画面を示す。ログイン画面で、顧客が保険証券番号およびログインパスワードを入力してログインボタンを操作すると、本人確認が行われた後、顧客が専用サイトにログインする。処理部16は、顧客が保険会社に対して行うことのできる複数の手続の一覧を表示部22に表示する。顧客(以下、「請求者」とも呼ぶ)は、入力部12を操作して手続一覧の中から「給付金・保険金の請求」を選択し、給付金の支払請求の手続きを開始する。
【0024】
図5は、申し出内容の入力画面の例を示す。この入力画面には、請求者の契約内容にもとづく申し出内容の選択肢が表示される。この例で請求者は、「入院」、「手術・放射線治療」を選択している。請求者が「次へ」ボタンを操作すると、請求理由の入力画面が表示される。
【0025】
図6は、請求理由の入力画面の例を示す。この入力画面には、請求理由の選択肢が表示され、請求者は「病気」を選択している。請求者が「次へ」ボタンを操作すると、傷病名の入力画面が表示される。
【0026】
図7は、傷病名の入力画面の例を示す。請求者は、「入院」、「手術・放射線治療」の要因となった傷病名を入力する。入力欄は、請求者が傷病名の一部を入力すると、請求が多い傷病名を選択可能に一覧表示するように構成されてよい。たとえば入力欄に「胃」と入力すると、「胃潰瘍」、「胃ポリープ」、「胃腸炎」、「急性胃腸炎」、「胃癌」、「胃炎」・・・など、「胃」を一部に含む傷病名であって、入力される可能性が高い傷病名のリストが表示される。請求者は、リストの中から傷病名を選択することで、入力欄に傷病名を入力できる。
【0027】
入力欄には、保険会社が管理する傷病査定データベース(DB)122に登録されている傷病名のみを入力できる。保険会社における傷病査定DB122は、世界保健機関(WHO)が定める国際疾病分類(ICD)に準拠したMEDIS標準マスターをベースとするマスターデータを登録しており、約53000個の傷病名が登録されている。傷病名を統一して扱うために、入力欄に傷病名の類義語がテキスト入力されると、入力された類義語が、マスターデータの1つである傷病名に自動変換される仕組みが導入されてよい。なお入力欄は、請求者による自由なテキスト入力を受け付けず、請求者が、約53000個の登録された傷病名の中から該当する傷病名を選択することで、入力欄に傷病名が入力されるように構成されてもよい。この例で請求者は、傷病名として「白内障」を入力している。請求者が「次へ」ボタンを操作すると、入院期間の入力画面が表示される。
【0028】
図8は、入院期間の入力画面の例を示す。この例で請求者は、令和5年5月15日から令和5年5月17日に入院していたこと、現在は既に退院していることを入力している。請求者が「次へ」ボタンを操作すると、手術・放射線治療に関する入力画面が表示される。
【0029】
図9は、手術名の入力画面の例を示す。請求者は、入院中に受けた手術名を入力する。手術名は診療明細書に記載されているため、請求者は、診療明細書の記載を参考にして、手術名を入力してよい。
【0030】
入力欄には、保険会社が管理する手術査定データベース(DB)124に登録されている手術名のみを入力できる。手術査定DB124は、社会保険診療報酬支払基金が定める医療診療行為(レセプト)に登録されている手術名をベースとするマスターデータを登録しており、約5500個の手術名が登録されている。手術名を統一して扱うために、入力欄に手術名の類義語がテキスト入力されると、入力された類義語が、マスターデータの1つである手術名に自動変換される仕組みが導入されてよい。なお入力欄は、請求者による自由なテキスト入力を受け付けず、請求者が、約5500個の登録された手術名の中から該当する手術名を選択することで、入力欄に手術名が入力されるように構成されてもよい。
【0031】
この例で請求者は、手術名として「水晶体再建術(レンズ挿入、そのほかのもの)」を入力し、手術日が令和5年5月15日であることを入力している。また入院中に放射線照射を受けていないことも入力している。請求者が「次へ」ボタンを操作すると、入院内容の確認画面が表示される。
【0032】
図10は、入力内容の確認画面の例を示す。請求者は、入力内容に間違いがあると、「修正ボタン」を操作して、正しい内容に修正する。請求者が「次へ」ボタンを操作すると、必要書類および必要事項の入力画面が表示される。
【0033】
図11は、必要書類および必要事項の入力画面の例を示す。今回の請求で必要とされる書類は、これまで請求者が入力した内容から自動的に判断されて、図11に示す入力画面に表示される。この入力画面では、上段に、請求に際して領収証および/または診療明細書が必要となることが示されている。
【0034】
実施例の保険システム1において、請求者は、領収証30および/または診療明細書32を撮影し、撮影した書類画像を保険会社に送ることを要求される。なお領収証30と診療明細書32は、いずれか一方のみであってもよい。請求者が「カメラ撮影開始ボタン」を操作すると、カメラ14が起動して、請求者は、領収証30および/または診療明細書32を撮影する。なお書類の撮影は、請求書類の作成が終了した後に行われてもよい。
【0035】
この入力画面で請求者は、口座および住所を入力する。請求者が過去に請求手続きを行ったことがある場合は、口座および住所の入力欄に、過去に入力した内容がデフォルトで入力されていてよい。請求者が「次へ」ボタンを操作すると、最終確認画面が表示される。
【0036】
図12は、最終確認画面の例を示す。最終確認画面において、請求者は、カナ、氏名を署名し、これで請求書類の作成処理は終了する。請求者が「手続を完了する」ボタンを操作すると、通信部20が、請求書類および書類画像を含む支払請求を、保険支払業務支援システム100に送信する。なお領収証30および/または診療明細書32の撮影は、「手続を完了する」ボタンが操作された後に行われてもよく、その場合は撮影が終了した後に、通信部20が、請求書類および書類画像を含む支払請求を、保険支払業務支援システム100に送信する。
【0037】
図3に戻って、保険支払業務支援システム100は、請求受付部102、OCR処理部104、取得部106、特定部112、査定部114、契約内容データベース(DB)120、傷病査定データベース(DB)122、手術査定データベース(DB)124および顧客情報データベース(DB)126を有する。取得部106は、第1取得部108および第2取得部110を有する。
【0038】
契約内容DB120は、保険会社が提供する保険商品の契約内容を保持する。傷病査定DB122は、約53000個の傷病名をマスタデータとして登録しており、手術査定DB124は、約5500個の手術名をマスタデータとして登録している。顧客情報DB126は、顧客の個人情報および顧客が契約している保険の内容(保険商品および特約の内容など)を保持する。
【0039】
傷病査定DB122は、傷病を特定する情報と、当該傷病に適用できる保険商品とを対応付けて保持する。ここで傷病を特定する情報は、傷病名であってよいが、傷病査定DB122において傷病に対して割り当てた識別番号(傷病ID)であってもよい。保険会社が複数種類の保険商品を提供している場合、傷病査定DB122は、約53000種類の傷病ごとに、適用可能(支払可能)な保険商品を対応付けて保持している。これにより、たとえば請求者が「白内障」を理由とする給付金の支払請求を行った場合に、「白内障」に対して支払可能な保険商品を請求者が契約しているかどうか判断することで、給付金を支払えるか否かを自動判定できるようになる。
【0040】
また実施例において、傷病査定DB122は、傷病を特定する情報と、給付金または保険金のモラルリスクに関する支払条件とを対応付けて保持する。上記したように傷病を特定する情報は傷病名であってよいが、傷病に対して割り当てられる識別番号(傷病ID)であってもよい。モラルリスクに関する支払条件については、後に詳述する。
【0041】
図3に示す保険支払業務支援システム100は1つ以上のコンピュータを備え、コンピュータがプログラムを実行することによって、図3に示す様々な機能が実現される。コンピュータは、プログラムをロードするメモリ、ロードされたプログラムを実行する1つ以上のプロセッサ、補助記憶装置、その他のLSIなどをハードウェアとして備える。プロセッサは、半導体集積回路やLSIを含む複数の電子回路により構成され、複数の電子回路は、1つのチップ上に搭載されてよく、または複数のチップ上に搭載されてもよい。図3に示す機能ブロックは、ハードウェアとソフトウェアとの連携によって実現され、したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0042】
請求受付部102は、請求書類および書類画像を含む支払請求を受け付ける。第1取得部108は、請求書類から、給付金または保険金の請求に必要な第1請求情報を取得する。OCR処理部104は、書類画像に含まれるテキストを認識して文字データに変換し、第2取得部110は、書類画像から抽出された文字データから、給付金または保険金の請求に必要な第2請求情報を取得する。特定部112は、第1請求情報と第2請求情報から、傷病を特定する情報を含む請求内容を特定する。傷病を特定する情報は、傷病名であってよい。
【0043】
図13は、第1請求情報と第2請求情報から特定される請求内容を示す。この請求内容において、傷病名は「白内障」である。入院期間に関して、請求者は、図8に示す入力画面で入院期間を入力し、また領収証30や診療明細書32においても入院期間は記載されている。そこで特定部112は、第1請求情報に含まれる入院期間と、第2請求情報に含まれる入院期間とが一致しているか否かを判定して、一致している場合に入院期間が正しいことを認識する。なお両者が一致しない場合、特定部112は請求情報に不備があることを判定して、その旨を保険会社の査定担当者に通知する。
【0044】
この例では入院期間が令和5年5月15日から令和5年5月17日であるが、入院期間が複数月にまたがる場合、請求者は、各月分の領収証の撮影画像を提出する必要がある。たとえば入院期間が令和5年5月15日から令和5年7月5日である場合、請求者は5月分、6月分、7月分の領収証の撮影画像を提出しなければならない。このとき請求者が5月分、6月分の領収証の撮影画像を提出し、7月分の領収証の撮影画像を提出していなければ、特定部112は、第1請求情報に含まれる入院期間と、第2請求情報に含まれる入院期間とが一致していないこと、具体的には第2請求情報に7月分の入院期間が含まれていないことを判定する。
【0045】
この場合、特定部112は、第1請求情報と第2請求情報から、令和5年5月15日から令和5年6月30日までを入院期間とする請求内容を特定する。つまり特定部112は、第1請求情報に含まれる入院期間と第2請求情報に含まれる入院期間とが一致(重複)している期間を、入院期間として特定する。この場合、保険会社の査定担当者は、当該顧客に対して、7月分の領収証が添付されていなかったため、7月分の入院は支払対象となっていないこと、7月分の請求をする場合には7月分の領収証を添付した請求を再度行ってほしいことを知らせる。
【0046】
特定部112が請求内容を特定すると、査定部114は、特定した請求内容と、契約内容DB120に保持された保険の契約内容にもとづいて、給付金または保険金の金額を算出する。具体的に査定部114は、傷病査定DB122を参照して、「白内障」に適用可能な保険商品を特定するとともに、顧客情報DB126を参照して、当該顧客が契約している保険商品を特定する。顧客が契約している保険商品が「白内障」に適用可能である場合に、査定部114は、請求内容と、保険の契約内容にもとづいて、給付金または保険金の金額を算出する。たとえば、領収証に記載の金額や診療報酬点数に応じて給付金額が定まる保険商品の場合、査定部114は、第2請求情報に含まれる金額や診療報酬点数から、給付金額を算出する。
【0047】
査定部114は、金額を算出した後、請求内容がモラルリスクに関する支払条件を満たすか否かを判定する。実施例において、モラルリスクに関する支払条件は傷病ごとに設定されており、傷病査定DB122は、責任開始日から支払事由の発生日までの期間についての第1の支払条件と、入院期間についての第2の支払条件を、傷病ごとに保持する。なお傷病には外傷と病気(疾患)が含まれるが、実施例では傷病査定DB122が、第1の支払条件に関する「早期判定期間」と第2の支払条件に関する「入院上限日数」を、病気(疾患)ごとに保持している。査定部114は、傷病査定DB122から、請求内容に含まれる病気(疾患)を特定する情報に対応付けられたモラルリスクに関する支払条件を取得し、請求内容が当該支払条件を満たす場合に、給付金または保険金を支払うことを決定する。
【0048】
図14は、査定部114による自動査定処理のフローチャートを示す。特定部112が請求内容を特定すると(S10)、査定部114が、少なくとも傷病査定DB122および顧客情報DB126を参照して、請求内容が保険商品の約款の支払事由に該当するか否かを判断する(S12)。ここで約款の支払事由に該当していなければ(S12のN)、支払請求は却下される。請求内容が約款の支払事由に該当する場合(S12のY)、査定部114は、保険の契約内容にもとづいて給付金または保険金の金額を算出する(S14)。
【0049】
続いて査定部114は、請求内容がモラルリスクに該当するか否かを確認する処理を実施する。
まず査定部114は、傷病査定DB122から、請求内容に含まれる傷病に設定された早期判定期間を取得する(S16)。実施例では、「白内障」にもとづく支払請求が行われているため、特定部112は、傷病査定DB122において「白内障」に設定された早期判定期間を取得する。
【0050】
上記したとおり、医療保険における保障は、保険契約の申込み、告知または診査、第一回保険料の払込みの3つ全てが完了した責任開始日から開始される。しかしながら、責任開始日の翌日に顧客が白内障のために入院して、給付金の支払いを請求してくるようなケースでは、自身の健康状態を適切に告知しなかった可能性が疑われる。そこで保険システム1では、保険会社が過去の膨大な数の査定実績を分析して、モラルリスク案件を自動で抽出するための早期判定期間を傷病ごとに設定し、傷病査定DB122に登録している。早期判定期間は、責任開始日から入院日までの適正な最短期間として設定され、責任開始日から入院日までの期間が早期判定期間未満である場合に、支払請求をモラルリスク案件として抽出することになる。
【0051】
たとえば白内障の早期判定期間が60日と設定されている場合、入院日が責任開始日から60日経過していなければ、査定部114は、早期判定期間未満の給付金支払請求であることを判定して(S18のN)、判定結果を保険会社の査定担当者に通知し(S26)、自動査定を終了する。なお査定担当者は、この通知を受けると、本人や医療機関などに問い合わせて請求に関する事実確認を行う。責任開始日から発病(入院)までの期間が早期判定期間より短いものの、責任開始日前の発病でないことが確認できたような場合には、査定担当者は、早期判定期間についての問題はないことを決定して、顧客に支払を行えるようにする。
【0052】
このように実施例において、第1の支払条件は、責任開始日から入院日までの期間が、病気に対して設定される早期判定期間以上であることに設定される。早期判定期間は傷病ごとに、過去の査定実績を統計処理することで設定され、たとえば緑内障の早期判定期間が40日に設定され、糖尿病の早期判定期間が90日に設定されてよい。入院日が責任開始日から60日以上経過していると(S18のY)、査定部114は、第1の支払条件が成立していることを判定する。
【0053】
続いて査定部114は、傷病査定DB122から、「白内障」に設定された入院上限日数を取得する(S20)。保険システム1では、保険会社が過去の膨大な数の査定実績を分析して、適正な入院日数の上限となる入院上限日数を傷病ごとに設定し、傷病査定DB122に登録している。請求内容に含まれる入院日数が入院上限日数を超える場合に(S22のN)、支払請求が適正でない可能性があることが判定される。
【0054】
たとえば白内障の入院上限日数が4日と設定されている場合、入院日数が4日を超えていると、査定部114は、入院日数が適正でない可能性のある給付金支払請求であることを判定して(S22のN)、判定結果を保険会社の査定担当者に通知し(S26)、自動査定を終了する。なお査定担当者は、この通知を受けると、本人や医療機関などに問い合わせて請求に関する事実確認を行う。入院日数は入院上限日数より長いものの、正当な治療を目的とする入院であることが確認できたような場合には、査定担当者は、入院期間についての問題はないことを決定して、顧客に支払を行えるようにする。
【0055】
このように実施例において、第2の支払条件は、請求内容に含まれる入院日数が、病気に対して設定される入院上限日数以下であることに設定される。入院上限日数は傷病ごとに、過去の査定実績を統計処理することで設定され、たとえば緑内障の入院上限日数が6日に設定され、糖尿病の入院上限日数が45日に設定されてよい。入院日数が入院上限日数以下である場合(S22のY)、査定部114は、第2の支払条件が成立していることを判定する。
【0056】
第1の支払条件および第2の支払条件が成立すると、査定部114は、給付金または保険金を自動で支払うことを決定し(S24)、自動査定を終了する。このように保険システム1によると、顧客は、入力画面に必要事項を入力して請求書類を作成し、領収証30および/または診療明細書32を撮影して、請求書類と撮影画像を保険支払業務支援システム100に送信するだけで、請求手続きを完了できる。傷病名については顧客の自己申告となるが、保険支払業務支援システム100は、傷病ごとに設定されたモラルリスクに関する支払条件を用いて支払請求の適正さを判断することで、迅速且つ公平な支払処理を実現することができる。
【0057】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0058】
1・・・保険システム、2・・・ネットワーク、10・・・端末装置、12・・・入力部、14・・・カメラ、16・・・処理部、18・・・記憶部、20・・・通信部、22・・・表示部、30・・・領収証、32・・・診療明細書、100・・・保険支払業務支援システム、102・・・請求受付部、104・・・OCR処理部、106・・・取得部、108・・・第1取得部、110・・・第2取得部、112・・・特定部、114・・・査定部、120・・・契約内容DB、122・・・傷病査定DB、124・・・手術査定DB、126・・・顧客情報DB。
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