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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021077
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20230101AFI20250205BHJP
   B05B 11/10 20230101ALI20250205BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B05B11/00 102B
B05B11/00 102G
B05B11/10 102G
B05B11/10 102B
B65D47/34 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124795
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 宏太郎
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084AB02
3E084DA01
3E084DB12
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084KB03
3E084LD22
(57)【要約】
【課題】液体に直接的に添加剤を含ませた状態で噴出することができると共に、洗浄作業等を伴うことなく添加剤の容易な交換を行うこと。
【解決手段】液体が収容された容器体Aに装着される噴出器本体10と、噴出孔21が形成されたノズル部材20と、添加剤Wが収容され、ノズル部材に対して離脱可能に装着されるカートリッジ100とを備え、ノズル部材は、噴出孔が形成されたノズル壁部22と、ノズル壁部の前面に形成され、カートリッジの装着時に噴出孔に向けて添加剤を導く供給溝110とを備え、供給溝は、噴出孔の前方において噴出孔に向けて開口し、カートリッジは、ノズル部材への装着状態において供給溝内に連通する連通孔122と、添加剤が収容されると共に連通孔を通じて供給溝に連通する収容空間Sとを備えているトリガー式液体噴出器1を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体に装着され、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、
添加剤が収容され、前記ノズル部材に対して離脱可能に装着されるカートリッジと、を備え、
前記噴出器本体は、
前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、
前方付勢状態で後方に移動可能に配設されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、を備え、
前記ノズル部材は、
前記噴出孔が形成されたノズル壁部と、
前記ノズル壁部の前面に形成され、前記カートリッジの装着時に前記噴出孔に向けて前記添加剤を導く供給溝と、を備え、
前記供給溝は、前記噴出孔の前方において前記噴出孔に向けて開口し、
前記カートリッジは、
前記ノズル部材への装着状態において前記供給溝内に連通する連通孔と、
前記添加剤が収容されると共に、前記連通孔を通じて前記供給溝に連通する収容空間と、を備えていることを特徴とするトリガー式液体噴出器。
【請求項2】
請求項1に記載のトリガー式液体噴出器において、
前記ノズル部材は、前記ノズル壁部よりも前方に配置され、前記ノズル壁部の前面との間に係止溝を画成する係止枠を備え、
前記カートリッジは、前記係止溝内に挿入可能とされ、前記係止溝に対して係止する係止壁部を備え、
前記供給溝は、前記ノズル壁部の前面と前記係止壁部との間に形成されている、トリガー式液体噴出器。
【請求項3】
請求項2に記載のトリガー式液体噴出器において、
前記係止壁部には、前記係止溝に形成された係合孔に係合可能とされた係合突起を有する弾性片が形成され、
前記係合突起は、前記弾性片の弾性変形によって前記係合孔に対する係合が解除されると共に、前記弾性片の弾性復元変形によって前記係合孔に係合される、トリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー部の操作によって容器体内から液体を吸い上げ、噴出孔を通じて液体を噴出するトリガー式液体噴出器が知られている。この種のトリガー式液体噴出器において、液体に香料等の添加剤を添加したいというニーズがある。
例えば添加剤を添加する技術として、例えば下記特許文献1には、薬剤収納室に収納された添加剤(薬剤)を、吐出容器の使用前(吐出前)に容器体内に投入することで、添加剤が添加された液体を吐出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-83907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した吐出容器のように容器体内に添加剤を直接添加する構成にあっては、例えば添加剤が香料を含む場合に、現在使用している添加剤の香料とは異なる香料を含む添加剤を使用する際、容器体の匂い残りが課題となる。容器体に匂い残りが発生すると、消費者は、容器体の洗浄に手間が掛かったり、吐出容器全体を買い替えたりする必要があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、洗浄作業等を伴うことなく、異なる種類の添加剤を使用できるトリガー式液体噴出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るトリガー式液体噴出器は、液体が収容された容器体に装着される噴出器本体と、前記噴出器本体に装着され、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、添加剤が収容され、前記ノズル部材に対して離脱可能に装着されるカートリッジと、を備え、前記噴出器本体は、前記容器体内の液体を吸上げる縦供給筒部と、前方付勢状態で後方に移動可能に配設されたトリガー部を有し、前記トリガー部の後方への移動によって、液体を前記縦供給筒部内から前記噴出孔側に向けて流通させるトリガー機構と、を備え、前記ノズル部材は、前記噴出孔が形成されたノズル壁部と、前記ノズル壁部の前面に形成され、前記カートリッジの装着時に前記噴出孔に向けて前記添加剤を導く供給溝と、を備え、前記供給溝は、前記噴出孔の前方において前記噴出孔に向けて開口し、前記カートリッジは、前記ノズル部材への装着状態において前記供給溝内に連通する連通孔と、前記添加剤が収容されると共に、前記連通孔を通じて前記供給溝に連通する収容空間と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るトリガー式液体噴出器によれば、トリガー部を操作して後方に移動させることで、液体を縦供給筒部内から噴出孔側に向けて流通させることができる。これにより、ノズル部材の噴出孔を通じて液体を前方に向けて噴出させることができる。
また液体の噴出後、トリガー部の操作を解除すると、付勢力によってトリガー部を前方に向けて復元移動させることができるので、容器体内の液体を縦供給筒部内に吸い上げることができる。これにより、次回の噴出に備えることができる。
【0008】
特に、ノズル部材に対してカートリッジを装着することで、カートリッジの収容空間内に収容されている添加剤(例えば香料等)を連通孔及び供給溝を通じて噴出孔に向けて、例えば供給溝内での毛細管現象等を利用して導くことができる。この際、供給溝は噴出孔の前方において、噴出孔に向けて開口しているので、添加剤を噴出孔の噴出側周辺まで導くことが可能である。ところで、噴出孔における噴出側の周辺は、液体の噴出に伴う空気の流れによって負圧化する。そのため、液体の噴出時、負圧による影響によって、噴出孔に向けて開口している供給溝内から添加剤が強制的に引っ張り出される。これにより、液体に対して添加剤を直接的に含ませた状態で外部に噴出することができる。従って、例えば香料付きの液体を噴出することが可能である。
【0009】
さらに供給溝は、ノズル壁部の前面に形成されているので、例えばカートリッジを交換する等して異なる添加剤を使用する場合であっても、トリガー式液体噴出器の内部を添加剤が流動するものではないため、内部構成品等を洗浄作業する必要がない。従って、従来とは異なり、洗浄作業等の手間が不要であり、使い易く利便性に優れている。これらのことから、洗浄作業等を伴うことなく、異なる種類の添加剤を使用できるトリガー式液体噴出器とすることができる。
【0010】
(2)前記ノズル部材は、前記ノズル壁部よりも前方に配置され、前記ノズル壁部の前面との間に係止溝を画成する係止枠を備え、前記カートリッジは、前記係止溝内に挿入可能とされ、前記係止溝に対して係止する係止壁部を備え、前記供給溝は、前記ノズル壁部の前面と前記係止壁部との間に形成されても良い。
【0011】
この場合には、係止壁部を係止溝内に挿入して係止させることで、ノズル部材に対してカートリッジを安定して装着することができる。従って、トリガー式液体噴出器の全体の姿勢を安定にした状態で、狙った場所に液体を適切に噴出させることができる。さらに、ノズル壁部の前面と係止壁部との間に供給溝を形成することができるので、供給溝を所望のサイズ(微細)に設定し易く、毛細管現象等を利用して添加剤を噴出孔まで適切に導くことができる。
【0012】
(3)前記係止壁部には、前記係止溝に形成された係合孔に係合可能とされた係合突起を有する弾性片が形成され、前記係合突起は、前記弾性片の弾性変形によって前記係合孔に対する係合が解除されると共に、前記弾性片の弾性復元変形によって前記係合孔に係合されても良い。
【0013】
この場合には、係合孔に係合突起を係合させた状態で、係止壁部を係止溝内に係止することができるので、カートリッジを抜け止めした状態でノズル部材に装着することができる。従って、カートリッジの姿勢をさらに安定させることができる。また弾性片を例えば指先等で摘まんで弾性変形させることで、係合孔から係合突起を抜け出させて係合を解除することができる。これにより、カートリッジの交換作業等を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、洗浄作業等を伴うことなく、異なる種類の添加剤を使用できるトリガー式液体噴出器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るトリガー式液体噴出器の実施形態を示す縦断面図である。
図2図1に示すノズル部材とカートリッジとの装着部分の周辺を拡大した拡大断面図である。
図3図1に示すノズル部材及びカートリッジを前方から見た正面図である。
図4図3に示す状態からカートリッジを取り外した状態を示す縦断面図である。
図5図4に示す状態を前方から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るトリガー式液体噴出器の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、トリガー式液体噴出器が容器体に取り付けられた噴出容器を例にして説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1は、液体を収容する容器体Aに装着される噴出器本体10と、液体を噴出する噴出孔21が形成され、噴出器本体10に装着されたノズル部材20と、噴出器本体10及びノズル部材20を覆う外装カバー30、添加剤Wが収容され、ノズル部材20に対して離脱可能に装着されるカートリッジ100と、を備えている。
なお、トリガー式液体噴出器1の各構成部品は、特に記載がなければ、合成樹脂を用いた成形品とされている。
【0018】
なお、容器体Aに収容される液体としては、例えば化粧料や薬剤、消臭剤や洗浄剤等の溶媒として用いられる液体であって、無色透明、無香料のような容器体Aに色や匂いが移り難いものが好適に用いられる。液体としては、水やアルコール等であっても良い。ただし、液体はこれらの場合に限定されるものではない。
カートリッジ100に収容される添加剤Wとしては、例えば液体に溶質として混合される液体等である。具体的に添加剤Wとしては、液体と同様の用途に用いられる液体であって、例えば顔料や香料が含まれたものが好適に用いられる。ただし、添加剤Wとしては、必ずしも顔料や香料が含まれたものに限られない。液体として水を用い、添加剤Wとして例えば濃縮された機能性の添加剤を混合する用途等であっても良い。
【0019】
(噴出器本体)
噴出器本体10は、縦供給筒部60と、射出筒部66と、中継部材70と、トリガー機構80と、ボール弁90と、貯留弁91と、を主に備えている。
【0020】
本実施形態では、縦供給筒部60の中心軸線を軸線O1とし、この軸線O1に沿って容器体A側を下側、その反対側を上側といい、軸線O1に沿う方向を上下方向という。また、上下方向から見た平面視において、軸線O1に交差する一方向を前後方向L1といい、上下方向及び前後方向L1の双方向に直交する方向を左右方向L2という。さらに前後方向L1のうち、噴出孔21が液体を噴出する方向を前方という。従って、本実施形態のトリガー式液体噴出器1は、液体を前方に向けて噴出する。
【0021】
(縦供給筒部)
図1に示すように、縦供給筒部60は、上下方向に延在し、容器体A内の液体を吸い上げる機能を有する。縦供給筒部60は、装着キャップ65によって、容器体Aに装着されている。縦供給筒部60は、有頂筒状の外筒61と、外筒61内に嵌合された内筒62と、を備えている。
なお、縦供給筒部60の軸線O1は、容器体Aの口部の中心を上下方向に貫く容器軸よりも後方側に寄った位置に配置されている。
【0022】
縦供給筒部60は、後述するトリガー部81の後方への移動によって、液体が射出筒部66を通じてノズル部材20の噴出孔21側に向けて流れる内部流路Rを備えている。内部流路Rは、内筒62の内側に位置する内部空間とされている。内筒62には、上下方向に延びると共に容器体Aから液体を吸い上げるパイプ67の上部が嵌合されている。
【0023】
(射出筒部)
縦供給筒部60の上端部には、射出筒部66が設けられている。射出筒部66は、軸線O2を中心として前方向けて延びるように形成されている。射出筒部66は、噴出器本体10の前方に開口した射出開口部66aを有する筒状に形成され、縦供給筒部60の内部流路Rのうち、後述するボール弁90よりも上方に位置する部分に連通している。これにより、射出筒部66は、内部流路R内の液体を噴出孔21に導くことが可能とされている。
【0024】
射出筒部66の下方、且つ、装着キャップ65の上方には、シリンダ用筒部68が設けられている。シリンダ用筒部68は、縦供給筒部60から前方に向けて突出すると共に、前方に向けて開口している。
【0025】
(中継部材)
射出筒部66の前端部には、射出筒部66とノズル部材20との間を接続する中継部材70が装着されている。
中継部材70は、射出筒部66に対して前方から装着されている。中継部材70は、射出筒部66の射出開口部66aよりも前方側に位置すると共に、射出開口部66aに対して対向配置された隔壁部71と、隔壁部71から後方に向けて延びると共に射出筒部66に外嵌された第1中継筒部72と、隔壁部71から前方に向けて延びる第2中継筒部73と、第2中継筒部73の内側に位置し、且つ隔壁部71から前方に向けて延びるガイド軸74と、を備えている。
【0026】
第2中継筒部73及びガイド軸74は、射出筒部66の軸線O2に対して下方に偏心した軸線O3を中心に配置されている。隔壁部71のうち、ガイド軸74の上方に位置し、且つ第2中継筒部73の内側に位置する部分には、射出筒部66の射出開口部66aに連通する連通孔75が形成されている。これにより、第2中継筒部73の内部は、連通孔75及び射出開口部66aを通じて射出筒部66の内部に連通している。
なお、隔壁部71のうち第1中継筒部72を挟んで左右方向L2の両側に位置する部分には、後方に向けて延びる図示しない一対のレバー支持壁が形成されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、ガイド軸74の外周面には、前後方向に延びる第1切換溝76が形成されている。第1切換溝76は、ガイド軸74の軸線回りに間隔をあけて複数形成されている。
【0028】
(トリガー機構)
図1に示すように、トリガー機構80は、トリガー部81と、シリンダ部82と、ピストン部83とを備えている。トリガー機構80は、トリガー部81の後方への揺動によって、液体を縦供給筒部60の内部流路R内から射出筒部66内を通じて噴出孔21側に向けて流通させることが可能とされている。
【0029】
トリガー部81は、縦供給筒部60の前方に前方付勢状態で後方に移動可能に配置されている。トリガー部81は、上下方向に延びるように形成されていると共に、射出筒部66の下方に配置されている。トリガー部81は、上端部が一対のレバー支持壁に前後方向L1に揺動可能に軸支された状態でシリンダ部82の前方に配置される。
なお、トリガー部81は、上方から下方に向かうに従い前方に傾斜するように延びている。これにより、噴出操作時に、例えば人差し指等の指先をトリガー部81に前方から引っ掛け易い。
【0030】
シリンダ部82は、シリンダ用筒部68内に嵌合されている。シリンダ部82は、前方に開口すると共に後方が閉塞された有底筒状に形成され、縦供給筒部60における内部流路Rのうち、ボール弁90よりも上方に位置する部分に連通している。
シリンダ部82における後壁部には、該後壁部の中央部分から前方に向けて突出したピストンガイド84と、後壁部を前後方向L1に貫通して縦供給筒部60の内部流路R内に連通する連通孔85と、が形成されている。なお、連通孔85は、後壁部のうちピストンガイド84よりも上方に位置する部分に形成されている。
ピストンガイド84は、前方が閉塞した有頂筒状に形成されているが、この場合に限定されるものではなく、例えば中実の円柱状に形成されていても構わない。
【0031】
ピストン部83は、シリンダ部82の内部に、トリガー部81の揺動(移動)に連動して前後方向L1に移動可能に配置されている。これにより、シリンダ部82の内部は、ピストン部83の前後方向L1の揺動に伴って加圧及び減圧される。なお、ピストン部83は、後方に開口すると共に前方が閉塞された有頂筒状に形成されている。
【0032】
ピストン部83は、トリガー部81と共に弾性板86の弾性復元力(付勢力)によって前方に付勢されている。なお、ピストン部83は、トリガー部81が最前方揺動位置にあるときに、これに対応して最前方位置に位置している。なお、弾性板86は、射出筒部66とトリガー部81との間に配置され、トリガー部81を前方に向けて付勢している。
【0033】
(ボール弁、貯留弁)
縦供給筒部60における内筒62内には、ボール弁90及び貯留弁91が設けられている。
ボール弁90は、シリンダ部82内の加圧時に、内部流路R内を通じた容器体A内とシリンダ部82内との連通を遮断すると共に、シリンダ部82内の減圧時に上方に向けて変位することで、内筒62内を通じた容器体A内とシリンダ部82内との連通を許容する逆止弁とされている。
【0034】
ボール弁90の上方には、貯留弁91が配置されている。貯留弁91は、内部流路R内から射出筒部66内への液体の供給を許容すると共に、射出筒部66内からシリンダ部82内への液体の逆流を規制する逆止弁とされている。これにより、貯留弁91は、シリンダ部82内が減圧したときに、射出筒部66側からの液体(及び外気)がシリンダ部82内に入ることを規制する機能を有している。
【0035】
なお、貯留弁91としては、上述した逆止弁としての機能を有するものだけに限定されるものではなく、例えば内部流路Rのうちボール弁90よりも上方に位置する部分の圧力が所定圧力に達したときに開弁して、内部流路R内から射出筒部66内に加圧した液体の供給を許容する蓄圧弁を採用しても構わない。
【0036】
(外装カバー)
図1に示すように、外装カバー30は、噴出器本体10を少なくとも左右方向L2の両側及び上方から覆うように形成されている。図示の例では、外装カバー30は、主に噴出器本体10のうち装着キャップ65を除いた部分を左右方向L2の両側及び上方から覆っている。なお、外装カバー30は、縦供給筒部60よりも後方に向けて膨らむように形成され、噴出器本体10を後方からも覆うように形成されている。
【0037】
(ノズル部材)
図1及び図2に示すように、ノズル部材20は、第2中継筒部73に装着されている。これにより、ノズル部材20は、中継部材70を介して噴出器本体10に装着されている。本実施形態のノズル部材20は、カートリッジ100が装着される連結ノズルとしても機能する。
【0038】
ノズル部材20は、噴出孔21が形成されたノズル壁部22と、ノズル壁部22から後方に向けて延びると共に、第2中継筒部73に対して前方から外嵌された装着筒部23と、を備えている。なお、装着筒部23は、第2中継筒部73に対して前方に抜け止めがされた状態で軸線O3回りに回転可能に装着されている。これにより、ノズル部材20は、軸線O3回りに回転可能に中継部材70に組み合わされている。
【0039】
ノズル壁部22のうち装着筒部23の内側に位置する部分には、ガイド軸74に対して回転可能に外嵌する内筒部24が後方に向けて突設されている。内筒部24の内周面には、前後方向L1に沿って延びる第2切換溝25が形成されている。さらにノズル壁部22の後面のうち、内筒部24の内側に位置する部分には、第1切換溝76に連通可能なスピン室26が凹状に形成されている。
【0040】
ガイド軸74に形成された第1切換溝76と、内筒部24に形成された第2切換溝25とは、軸線O3を中心としたノズル部材20の所定の回転位置で連通し、それ以外の回転位置で非連通状態となる。
第1切換溝76と第2切換溝25とが連通することで、噴出孔21と第2中継筒部73内とがスピン室26を経由して連通する。従って、ノズル部材20は、軸線O3回りの回転に伴って、噴出孔21からの液体の噴出を許容する噴出許容状態と、噴出が規制される噴出規制状態との切り換えを行うことが可能とされている。
【0041】
さらにノズル部材20は、ノズル壁部22から後方に向けて突出すると共に、装着筒部23を外側から囲む外装筒部27を備えている。
図2図5に示すように、本実施形態のノズル壁部22は、ノズル部材20が噴出許容状態に位置しているときに、前方から見た正面視で、左右方向L2に沿った延びた直線の段差部28を境にして、段差部28よりも上方に位置する上部壁部22aの形状と、段差部28よりも下方に位置する下部壁部22bの形状とが異なっている。段差部28は、軸線O3よりも上方に位置するように配置されている。
【0042】
ノズル壁部22は、上部壁部22aの厚み(前後方向L1の肉厚)の方が下部壁部22bの厚みよりも若干厚肉となるように形成されている。これにより、ノズル壁部22の前面は、上部壁部22aの方が下部壁部22bよりも若干前方に位置するように、段差部28を境にして段差がつくように形成されている。
【0043】
そしてノズル壁部22の前面には、ノズル部材20に対してカートリッジ100が装着された際、カートリッジ100の後述する連通孔122から噴出孔21に向けて添加剤Wを導く供給溝110が形成されている。
具体的には、供給溝110は、ノズル壁部22の上部壁部22aの前面に形成されている。供給溝110は、上部壁部22aの左右方向L2の中央に配置され、上下方向に沿って直線状に形成されている。供給溝110は、上方、前方及び下方に向けて開口する縦溝状に形成されている。特に供給溝110は、噴出孔21の上方に位置し、下端が段差部28に開口している。従って、供給溝110の下端開口は、噴出孔21に向けて開口している。
【0044】
供給溝110は、ノズル部材20にカートリッジ100が装着されることで、カートリッジ100の後述する係止壁部133によって前方から塞がれる(図2参照)。これにより、供給溝110は、ノズル壁部22の上部壁部22aの前面と係止壁部133との間に形成される。
特に供給溝110は、左右方向L2に沿った幅及び前面からの深さが、いずれも噴出孔21の直径よりも小さいサイズに形成されている。そのため供給溝110は、微小サイズの溝とされている。従って、カートリッジ100内の添加剤Wを、毛細管現象を利用して供給溝110内に引き込むことができると共に、噴出孔21に向けて下端開口まで添加剤Wを導くことができる。
【0045】
さらに本実施形態では、外装筒部27の外周面に、供給溝110に連通する連絡溝111が形成されている。連絡溝111は、前後方向L1に沿って直線状に延びる溝状に形成され、上方に向けて開口している。連絡溝111の左右方向L2に沿った幅は供給溝110と同等とされている。さらに連絡溝111は、ノズル部材20にカートリッジ100が装着されることで、カートリッジ100の後述する中栓121及び接続キャップ130によって上方から塞がれる(図2参照)。
従って、連絡溝111は、供給溝110と同様に微小サイズの溝とされ、カートリッジ100内の添加剤Wを、毛細管現象を利用して引き込んで、供給溝110内に導くことが可能とされている。
【0046】
さらにノズル壁部22の前面には、前方に向けて突出すると共にノズル壁部22の外形形状に倣って延びるフランジ片112が形成されている。フランジ片112は、ノズル壁部22の周縁部に沿って形成されている。そのため、フランジ片112は、ノズル壁部22の上部壁部22aの前面では、上下方向に沿って直線状に形成され、ノズル壁部22の下部壁部22bの前面では、下方に向けて突となる半円形状に形成されている。
【0047】
さらにノズル壁部22の上部壁部22aの前面に形成されたフランジ片112には、前面との間に係止溝113を画成する係止枠114が形成されている。
係止枠114は、前後方向L1の厚みがフランジ片112の前方に向けた突出量よりも小さく形成され、フランジ片112の前端縁から左右方向L2に沿って突出するようにそれぞれ形成されている。この際、係止枠114は、ノズル壁部22の上部壁部22aの前面との間に所定の隙間をあけた状態で、前面に対して前方から向かい合うように形成されている。これにより、一対の係止枠114と、ノズル壁部22の上部壁部22aの前面との間には、上方、下方及び左右方向L2の内側に向けて開口した係止溝113が形成されている。
【0048】
さらに係止溝113には、係合孔115が形成されている。具体的に係合孔115は、一対の係止枠114に連設されたフランジ片112のそれぞれに、該フランジ片112を左右方向L2に貫通するように形成されている。
【0049】
(カートリッジ)
図1図5に示すように、カートリッジ100は、内部に添加剤Wが収容された交換容器であり、必要に応じてノズル部材20に対して交換可能に装着される。
カートリッジ100は、添加剤Wが収容された収容空間Sを有する有頂筒状のボトル120と、ボトル120の口部の内側に装着された中栓121と、ボトル120の口部に装着された接続キャップ130と、を備えている。
【0050】
なおカートリッジ100は、商品流通時、未使用時等の段階では、接続キャップ130に換えて、ボトル120の口部に中栓121を取り外した状態で密封キャップが装着されている。これにより、添加剤Wを収容空間S内に密封した状態でカートリッジ100を保管等することが可能とされている。
【0051】
中栓121には、添加剤Wを外部に排出する連通孔122が形成されている。接続キャップ130は、ボトル120の口部を囲むキャップ周壁131と、キャップ周壁131に連設され、連通孔122を除いて中栓121を覆うキャップ頂壁132と、を有する有頂筒状に形成されている。
図示の例では、キャップ周壁131は、ボトル120の口部にねじ結合によって螺着されているが、この場合に限定されるものではなく、例えばアンダーカット嵌合によって装着されても構わない。
【0052】
接続キャップ130には、係止壁部133が立設されている。係止壁部133は、前後方向L1に一定の厚みを有し、且つ前方から見た正面視で外形が四角形状に形成されている。係止壁部133は、キャップ周壁131及びキャップ頂壁132に対して一体に形成されている。さらに前方から見た正面視で、係止壁部133は、接続キャップ130及びボトル120よりも左右方向L2に幅広となるように形成されていると共に、キャップ頂壁132から上下方向に沿って外方に向けて延びるように形成されている。
【0053】
係止壁部133の前後方向L1の厚みは、係止溝113の前後方向L1に沿った長さと同等とされている。係止壁部133の左右方向L2に沿った長さは、ノズル壁部22の上部壁部22aの前面に形成されたフランジ片112同士の左右方向L2に沿った長さと同等とされている。さらにキャップ頂壁132からの係止壁部133の突出長さは、係止溝113の深さと同等とされている。
これにより、係止溝113内に係止壁部133を挿入して、係止溝113に対して係止壁部133を係止することが可能とされている。カートリッジ100は、係止溝113内への係止壁部133の挿入によって、ノズル部材20に対して装着される。またカートリッジ100の装着時、キャップ頂壁132はノズル部材20の外装筒部27に対して密に接触して、連絡溝111を上方から塞ぐ。
【0054】
なお、係止壁部133は、連通孔122よりも前方に位置するように形成されている。係止壁部133の下端部は、前方に傾斜面が向くように斜めにカットされている。これにより、係止溝113内に係止壁部133を挿入し易い設計とされている。
【0055】
係止壁部133のうちキャップ周壁131よりも左右方向L2の外側に位置する部分には、該係止壁部133を前後方向L1に貫通するスリット孔134が形成されている。スリット孔134は、上下方向に沿って延びた縦長状に形成されている。これにより、係止壁部133のうちスリット孔134よりも左右方向L2の外側に位置する部分は、左右方向L2に弾性変形可能な弾性片135として機能する。
弾性片135には、左右方向L2の外側に向けて突出すると共に、係止溝113に形成された係合孔115に係合可能な係合突起136が形成されている。係合突起136は、弾性片135の弾性変形によって係合孔115に対する係合が解除されると共に、弾性片135の弾性復元変形によって係合孔115に係合される。
【0056】
(トリガー式液体噴出器の作用)
次に、上述のように構成されたトリガー式液体噴出器1を使用する場合について説明する。なお、図1に示すトリガー部81の複数回の操作によって、トリガー式液体噴出器1の各部内に液体が充填され、縦供給筒部60内に液体を吸い上げることができる状態になっているものとする。
【0057】
さらに図1に示すように、ノズル部材20にカートリッジ100が装着されているものとする。ここで、カートリッジ100の装着について簡単に説明する。
カートリッジ100を装着する場合には、図4に示すように、係止壁部133を下向きにした状態で、係止溝113内に係止壁部133を上方から挿入する。そして図2に示すように、係止溝113内に係止壁部133が全て差し込まれ、中栓121及び接続キャップ130が外装筒部27に対して接触するまでカートリッジ100を下方に押し込む。これにより、ノズル部材20に対してカートリッジ100を組み合わせることができる。
【0058】
なお、カートリッジ100の挿入過程において、係合突起136が一対のフランジ片112の上端縁に一旦接触するので、弾性片135が左右方向L2に内側に弾性変形する。そしてカートリッジ100のさらなる挿入に伴って、弾性片135が弾性復元変形することで、係合突起136が係合孔115内に係合する。これにより、図3に示すように、係合孔115に係合突起136を係合させた状態で、係止壁部133を係止溝113内に係止することができる。従って、カートリッジ100を抜け止めした状態で、ノズル部材20に装着することができる。
【0059】
さらにカートリッジ100の装着によって、連絡溝111及び供給溝110が画成される。これにより、図2に示す矢印F1の如く、カートリッジ100の収容空間S内に収容されている添加剤Wを連通孔122から連絡溝111を経由して供給溝110内に毛細管現象等を利用して引き出すことができる共に、供給溝110を通じて噴出孔21に向けて導くことができる。
特に供給溝110は、噴出孔21の前方において、噴出孔21に向けて開口しているので、添加剤Wを噴出孔21の噴出側周辺まで導くことができる。添加剤Wは、この状態で待機している。
【0060】
次いで、カートリッジ100の装着後、図1に示すように、トリガー部81を弾性板86の付勢力に抗して、後方に引くように操作することで、トリガー部81に連動させてピストン部83を最前方位置から後方に向けて移動させることができる。これにより、シリンダ部82内を加圧することができる。そのため、シリンダ部82内の液体を、縦供給筒部60における内筒62の内側、すなわち内部流路R内に供給することができると共に、ボール弁90を下方に押し付け、且つ貯留弁91を上方に押し上げることができる。
【0061】
従って、内部流路R内の液体を、射出筒部66を通じてノズル部材20の噴出孔21側に向けて流通させることができる。具体的には、図2に示すように、射出開口部66aを通じて射出筒部66から第2中継筒部73内に向けて液体を射出させることができると共に、第1切換溝76、第2切換溝25及びスピン室26を通じて噴出孔21に導くことができ、噴出孔21から外部に向けて噴出させることができる。その結果、噴出孔21から前方に向けて液体を噴出させることができる。
【0062】
液体の噴出後、図1に示すトリガー部81を解放した場合には、弾性板86の弾性復元力によってトリガー部81を前方に向けて付勢することができるので、該トリガー部81を復元移動させることができる。そのため、トリガー部81に連動させて、ピストン部83をシリンダ部82内で前方に向けて復元移動させることができる。
従って、シリンダ部82内を減圧させて、容器体A内の圧力よりも低い圧力にすることができ、ボール弁90を上昇させることができる。従って、容器体A内の液体を内部流路R内に吸い上げることができ、シリンダ部82内に吸入することができる。これにより、次回の噴出に備えることができる。
【0063】
特に液体の噴出時、噴出孔21における噴出側の周辺は、液体の噴出に伴う空気の流れによって負圧化する。そのため、図2に示す矢印F2のように、液体の噴出時に負圧による影響によって、噴出孔21に向けて開口している供給溝110内から添加剤Wを強制的に引っ張り出すことができる。これにより、液体に対して添加剤Wを直接的に含ませた状態で外部に噴出することができる。従って、例えば香料付きの液体を噴出することが可能である。
【0064】
しかも供給溝110は、ノズル壁部22の前面に形成されているので、例えばカートリッジ100を交換する等して異なる添加剤Wを使用する場合であっても、トリガー式液体噴出器1の内部を添加剤Wが流動するものではない。従って、従来とは異なり、内部構成品等を洗浄作業する手間が不要であり、使い易く利便性に優れている。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1によれば、液体に直接的に添加剤Wを含ませた状態で噴出することができると共に、洗浄作業等を伴うことなく添加剤Wの容易な交換を行うことができる。つまり、洗浄作業等を伴うことなく、異なる種類の添加剤Wを使用できるトリガー式液体噴出器1とすることができる。
【0066】
さらに、係止壁部133を係止溝113内に挿入して係止させることで、ノズル部材20に対してカートリッジ100を安定して装着することができる。従って、トリガー式液体噴出器1の全体の姿勢を安定にした状態で、狙った場所に液体を適切に噴出させることができる。さらに、ノズル壁部22の前面と係止壁部133との間に供給溝110を形成することができるので、供給溝110を所望のサイズ(微細)に設定し易く、毛細管現象を利用して添加剤Wを噴出孔21まで適切に導くことができる。
【0067】
さらに、係合孔115に係合突起136を嵌合させた状態で係止壁部133を係止溝113内に係止することができるので、カートリッジ100を抜け止めした状態でノズル部材20に装着することができる。従って、カートリッジ100の姿勢をさらに安定させることができる。
また、弾性片135を例えば指先等で摘まんで弾性変形させることで、係合孔115から係合突起136を抜け出させて係合を解除することができる。これにより、カートリッジ100の交換作業等を容易に行うことができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0069】
例えば上記実施形態では、液体を噴出孔21から前方に向けて噴出するトリガー式液体噴出器1について説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば上向きや左向き等、前方以外の方向に向けて液体を噴出するトリガー式液体噴出器1としても構わない。
【符号の説明】
【0070】
A…容器体
S…収容空間
W…添加剤
1…トリガー式液体噴出器
10…噴出器本体
20…ノズル部材
21…噴出孔
22…ノズル壁部
60…縦供給筒部
80…トリガー機構
81…トリガー部
100…カートリッジ
122…連通孔
110…供給溝
113…係止溝
114…係止枠
115…係合孔
133…係止壁部
135…弾性片
136…係合突起
図1
図2
図3
図4
図5