(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021094
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】給水システム及び給水方法
(51)【国際特許分類】
F03B 17/02 20060101AFI20250205BHJP
E03B 1/00 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
F03B17/02
E03B1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124816
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】521362885
【氏名又は名称】コベルコ・コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】壷井 昇
(72)【発明者】
【氏名】中村 元
(72)【発明者】
【氏名】宮武 利幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐介
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA10
3H074AA12
3H074BB10
3H074CC34
(57)【要約】
【課題】多層建築物の給水対象への給水にあたり、エネルギー効率を向上する。
【解決手段】給水システム1が、空気を圧縮する圧縮機2aと、常温水を貯留する常温水槽3Nと、圧縮機2aで圧縮された圧縮空気と常温水との間で熱交換する第1熱交換器8aと、第1熱交換器8aにおける熱交換により昇温された温水を貯留する温水槽3Hと、常温水槽3Nに供給された圧縮空気により、常温水槽3Nから給水対象へ常温水を供給する常温水供給ライン9Nと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層建築物の給水対象に水を供給する給水システムであって、
空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、
水源から供給される水を常温水として貯留するとともに前記圧縮空気が供給される常温水槽と、
前記圧縮空気と前記水源から供給される水との間で熱交換して、温水を生成する第1熱交換器と、
前記温水を貯留する温水槽と、
前記常温水槽に供給された前記圧縮空気により、前記常温水槽から第1の給水対象へ前記常温水を供給する常温水供給ラインと、
を備える、給水システム。
【請求項2】
前記第1の給水対象は、前記多層建築物の上層に設置された高置水槽、又は前記多層建築物の各層に設置された給水ヘッダーである、
請求項1に記載の給水システム。
【請求項3】
前記第1の給水対象としての前記高置水槽よりも下方に配置される受水槽と、
前記高置水槽から前記受水槽へと移動する水力で発電する水力発電機と、
を更に備える、請求項2に記載の給水システム。
【請求項4】
前記温水槽に前記圧縮空気を供給する温水槽給気ラインと、
前記温水槽に供給された前記圧縮空気により、前記温水槽から第2の給水対象へ前記温水を供給する温水供給ラインと、
を備える、請求項1に記載の給水システム。
【請求項5】
前記常温水槽の内圧を検出する常温水槽圧力センサと、
前記常温水槽内の水位を検出する常温水槽水位センサと、
前記常温水槽への前記圧縮空気の供給可否を切り換える常温水槽給気開閉弁と、
前記常温水槽への前記常温水の供給可否を切り換える常温水充填開閉弁と、
前記常温水槽から前記第1の給水対象への前記常温水の供給可否を切り換える常温水供給開閉弁と、
前記常温水槽圧力センサ及び前記常温水槽水位センサの検出結果に基づいて、前記常温水槽給気開閉弁、前記常温水充填開閉弁、及び前記常温水供給開閉弁を制御するコントローラと、
を更に備える、請求項1から4のいずれかに記載の給水システム。
【請求項6】
前記圧縮空気を貯蔵する蓄圧槽と、
前記蓄圧槽から供給される前記圧縮空気によって駆動される膨張機と、
前記膨張機と機械的に接続され、前記膨張機により駆動される発電機と、
を更に備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の給水システム。
【請求項7】
前記膨張機で膨張され降温した膨張後空気と前記水源から供給される前記水とで熱交換して、冷水を生成する第2熱交換器と、
前記冷水を貯留するとともに前記圧縮空気が供給される冷水槽と、
前記冷水槽に供給された前記圧縮空気により、前記冷水槽から第3の給水対象へ前記冷水を供給する冷水供給ラインと、
を更に備える、請求項6に記載の給水システム。
【請求項8】
前記膨張後空気を前記多層建築物の空調対象に供給する冷風供給ラインを更に備える、
請求項6に記載の給水システム。
【請求項9】
多層建築物の給水対象に水を供給する給水方法であって、
圧縮機で空気を圧縮して圧縮空気を生成することと、
水源から供給される水を常温水として常温水槽で貯留することと、
第1熱交換器において前記圧縮空気と前記水源から供給される前記水との間で熱交換して、温水を生成することと、
前記温水を温水槽で貯留することと、
前記常温水槽に前記圧縮空気を供給することで、前記常温水槽から常温水供給ラインを介して第1の給水対象へ前記常温水を供給することと、
を備える、給水方法。
【請求項10】
前記温水槽に前記圧縮空気を供給することで、前記温水槽から温水供給ラインを介して第2の給水対象へ前記温水を供給することを更に備える、
請求項9の給水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水システム及び給水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高層建築物を対象とする給水システムを開示している。この給水システムでは、高層階への揚水のため、電動のポンプが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポンプで消費された電気エネルギーを回収することは難しい。従来の給水システムには、省エネルギー化に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、多層建築物への給水にあたって、エネルギー効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、多層建築物の給水対象に水を供給する給水システムであって、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、水源から供給される水を常温水として貯留するとともに前記圧縮空気が供給される常温水槽と、前記圧縮空気と前記水源から供給される前記水との間で熱交換して、温水を生成する第1熱交換器と、前記温水を貯留する温水槽と、前記常温水槽に供給された前記圧縮空気により、前記常温水槽から前記第1の給水対象へ前記常温水を供給する常温水供給ラインと、を備える、給水システムを提供する。
【0007】
上記構成によれば、圧縮機で生成された圧縮空気は高温高圧である。ポンプに代えて、圧縮空気の高圧を利用して、常温水を多層建築物に供給できる。第1熱交換器で圧縮空気の熱を回収でき、それにより温水が生成される。このように、圧縮機の作動で消費されたエネルギーを回収できるため、ポンプで揚水する場合と対比して、エネルギー効率が向上する。
【0008】
前記第1の給水対象は、前記多層建築物の上層に設置された高置水槽、又は前記多層建築物の各層に設置された給水ヘッダーであってもよい。
【0009】
上記構成によれば、状況に応じて、一旦常温水を高置水槽に貯留してから給水対象に供給することも、高置水槽を経由せず常温水を直接的に給水対象に供給することも可能である。従来の水ポンプで生じるおそれのあった軸封部からの水漏れを防止できる。
【0010】
前記給水システムが、前記第1給水対象としての前記高置水槽よりも下方に配置される受水槽と、前記高置水槽から前記受水槽へと移動する水力で発電する水力発電機と、を更に備えてもよい。
【0011】
上記構成によれば、高置水槽に貯留された常温水の位置エネルギーが、電気エネルギーとして回収される。エネルギー効率が一層向上する。
【0012】
前記給水システムが、前記温水槽に前記圧縮空気を供給する温水槽給気ラインと、前記温水槽に供給された前記圧縮空気により、前記温水槽から第2の給水対象へ前記温水を供給する温水供給ラインと、を更に備えてもよい。
【0013】
上記構成によれば、生成された温水も、圧縮空気の高圧を利用して多層建築物の給水対象に供給され、利便性が向上する。
【0014】
前記給水システムが、前記常温水槽の内圧を検出する常温水槽圧力センサと、前記常温水槽内の水位を検出する常温水槽水位センサと、前記常温水槽への前記圧縮空気の供給可否を切り換える常温水槽給気開閉弁と、前記常温水槽への前記常温水の供給可否を切り換える常温水充填開閉弁と、前記常温水槽から前記第1の給水対象への前記常温水の供給可否を切り換える常温水供給開閉弁と、前記常温水槽圧力センサ及び前記常温水槽水位センサの検出結果に基づいて、前記常温水槽給気開閉弁、前記常温水充填開閉弁、及び前記常温水供給開閉弁を制御するコントローラと、を更に備えてもよい。
【0015】
上記構成によれば、圧縮空気の圧力を利用して常温水を常温水槽から給水対象へ供給し、常温水を常温水槽に充填するという一連の動作からなる運転サイクルを、コントローラで自動化できる。
【0016】
前記給水システムが、前記圧縮空気を貯蔵する蓄圧槽と、前記蓄圧槽から供給される前記圧縮空気によって駆動される膨張機と、前記膨張機と機械的に接続され、前記膨張機により駆動される発電機と、を更に備えてもよい。
【0017】
上記構成によれば、圧縮空気のエネルギーが、電気エネルギーとして回収される。エネルギー効率が一層向上する。
【0018】
前記給水システムが、前記膨張機で膨張され降温した膨張後空気と前記水源から供給される前記水とで熱交換して、冷水を生成する第2熱交換器と、前記冷水を貯留する冷水槽と、前記冷水槽に供給された前記圧縮空気により、前記冷水槽から第3の給水対象へ前記冷水を供給する冷水供給ラインと、を更に備えてもよい。
【0019】
上記構成によれば、冷水が、膨張機で膨張されたエアの冷熱で生成され、圧縮空気の高圧を利用して多層建築物の給水対象に供給される。エネルギー効率が一層向上する。
【0020】
前記給水システムが、前記膨張後空気を前記多層建築物の空調対象に供給する冷風供給ラインを更に備えてもよい。
【0021】
上記構成によれば、給水システムを冷風の生成にも活用でき、エネルギー効率が一層向上する。
【0022】
本発明の一形態は、多層建築物の給水対象に水を供給する給水方法であって、圧縮機で空気を圧縮して圧縮空気を生成することと、水源から供給される水を常温水として常温水槽で貯留することと、第1熱交換器において前記圧縮空気と前記水源から供給される前記水との間で熱交換して、温水を生成することと、前記温水を温水槽で貯留することと、前記常温水槽に前記圧縮空気を供給することで、前記常温水槽から常温水供給ラインを介して第1の給水対象へ前記常温水を供給することと、を備える、給水方法を提供する。
【0023】
上記構成によれば、ポンプに代えて、圧縮空気の高圧を利用して、常温水を多層建築物に供給できる。第1熱交換器で圧縮空気の熱を回収でき、それにより温水が生成される。このように、圧縮機の作動で消費されたエネルギーを回収できるため、ポンプで揚水する場合と対比して、エネルギー効率が向上する。
【0024】
前記給水方法が、前記温水槽に前記圧縮空気を供給することで、前記温水槽から温水供給ラインを介して第2の給水対象へ前記温水を供給することを更に備えてもよい。
【0025】
上記構成によれば、生成された温水も、圧縮空気の高圧を利用して多層建築物の給水対象に供給され、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、多層建築物への給水にあたって、エネルギー効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】第1実施形態に係る給水システムの制御系を示すブロック図。
【
図3A】第1実施形態に係る給水システムの動作図。
【
図3B】第1実施形態に係る給水システムの動作図。
【
図3C】第1実施形態に係る給水システムの動作図。
【
図3D】第1実施形態に係る給水システムの動作図。
【
図7A】第5実施形態に係る給水システムの動作図。
【
図7B】第5実施形態に係る給水システムの動作図。
【
図7C】第5実施形態に係る給水システムの動作図。
【
図7D】第5実施形態に係る給水システムの動作図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。なお、同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付し、詳細な説明の重複を省略する。
【0029】
図1を参照して、給水システム1は、給水対象に水を供給する。給水対象は、建築物Bに設けられている。給水対象は、例えば、上層階に設けられた高置水槽3E、各階層に設けられたタンク、給水ヘッダーあるいは蛇口等である。
図1は、6階建ての建築物Bを模式的に示すが、建築物Bの階層数は、特に限定されない。本実施形態に係る給水システム1においては、70m級(例えば、20階建て)の高層建築物にも適用可能である。建築物Bの用途も特に限定されず、住宅、オフィス、又は学校であってもよい。
【0030】
給水システム1により給水対象に供給される水は、常温水、温水、及び冷水である。なお、これら3種の水の給水対象を区別して説明する際に、常温水の給水対象を第1の給水対象と称し、温水の給水対象を第2の給水対象と称し、冷水の給水対象を第3の給水対象と称する場合がある。常温水とは、例えば、水道水、井戸水、又は地下水であり、水源W(典型例として上水道設備)から取水される。本実施形態においては、温水も冷水も、常温水と水源Wを同じとする。温水は、水源Wから供給される常温水を昇温することで生成される。冷水は、水源Wから供給される常温水を降温することで生成される。単なる一例として、常温水は20~30℃、温水は50~70℃、冷水は5~15℃である。
【0031】
給水システム1は、圧縮機ユニット2、槽群、給気ライン4、水充填ライン5、発電機ユニット6、膨張機ライン7、熱交換器群、給水ライン9、ポンプ群、バルブ群を備える。
【0032】
圧縮機ユニット2は、圧縮機2a、モータ2b、及びインバータ2cを含む。モータ2bは、圧縮機2aの駆動源であり、三相交流モータである。モータ2bは、圧縮機2aのロータを回転駆動する。それにより、圧縮機2aは、空気を吸い込み、空気を圧縮し、圧縮空気を吐出する。インバータ2cは、商用電源あるいは太陽電池などの電源設備と接続され、モータ2bに供給される交流を制御する。それにより、モータ2bひいては圧縮機2aの回転数を調整でき、また、圧縮機2aの吐出圧を調整できる。
【0033】
圧縮機2aは、オイルフリー圧縮機であると好ましい。オイルフリー圧縮機には、オイルフリー式のスクリュ圧縮機が含まれる。オイルフリー圧縮機の場合、圧縮空気、ひいては各槽内に貯留されている水への潤滑油の混入が発生しない。そのため、フィルタあるいはセパレータを省略又は小型化しつつ、給水対象に供給される水の水質を高く維持できる。また、圧縮機2aは、オイルフリースクリュ圧縮機であることがさらに好ましい。オイルフリースクリュ圧縮機は、吐出温度が高温であるため、排熱回収が容易である。
【0034】
槽群は、常温水槽3N、温水槽3H、冷水槽3C、及び蓄圧槽3Aを含む。常温水槽3N、温水槽3H、及び冷水槽3Cは、水を貯留可能である。また、圧縮機2aで生成された圧縮空気が、常温水槽3N、温水槽3H、及び冷水槽3Cに供給される。蓄圧槽3Aは、空気タンクであり、圧縮空気を貯留可能である。槽群は、高置水槽3Eを更に含む。常温水槽3N、温水槽3H、冷水槽3C、及び蓄圧槽3Aが、建築物Bの1階と同じレベルに設置されるのに対し、高置水槽3Eは、建築物Bの上層階、例えば屋上階に設置される。高置水槽3Eも、水を貯留可能である。
【0035】
給気ライン4は、圧縮機2aの吐出口を常温水槽3N、温水槽3H、冷水槽3C、及び蓄圧槽3Aに接続する。給気ライン4は、各槽の頂部に接続されている。給気ライン4は、圧縮機2aの吐出口から延在する主給気ライン4Mと、主給気ライン4Mから分岐して常温水槽3N、温水槽3H、冷水槽3C、及び蓄圧槽3Aそれぞれに接続される常温水槽給気ライン4N、温水槽給気ライン4H、冷水槽給気ライン4C、及び蓄圧槽給気ライン4Aとを含む。
【0036】
水充填ライン5は、水源Wを常温水槽3N、温水槽3H、及び冷水槽3Cに接続する。水充填ライン5は、一例として、各槽の底部に接続されている。水充填ライン5は、水源Wを常温水槽3Nに接続する常温水充填ライン5N、常温水充填ライン5Nから分岐して温水槽3Hに接続される温水充填ライン5H、及び常温水充填ライン5Nから分岐して冷水槽3Cに接続される冷水充填ライン5Cを含む。以下、水充填ライン5を流れる常温水を水源水と称することもある。
【0037】
発電機ユニット6は、膨張機6a及び発電機6bを含む。膨張機ライン7は、蓄圧槽3Aを膨張機6aの吸込口に接続する膨張機供給ライン7aと、膨張機6aの排出口から延在する膨張機排出ライン7bとを含む。膨張機6aは、蓄圧槽3Aに貯留されている圧縮空気によって駆動され、圧縮空気を膨張させ、膨張及び降温された膨張後空気を排出する。発電機6bは、膨張機6aのロータと機械的に接続され、膨張機6aによって駆動され、交流を発電する。発電機6bにより発生された電力が、圧縮機2aのモータ2bの駆動に利用されてもよい。
【0038】
主給気ライン4M及び温水充填ライン5Hが、第1熱交換器8aを通過する。圧縮機2aから吐出された圧縮空気は、第1熱交換器8aにおいて、温水充填ライン5Hを通流する常温水(水源水)と熱交換を行う。これにより、圧縮空気は冷却される一方、常温水(水源水)は昇温される。これにより、温水が、第1熱交換器8aにおいて生成され、温水槽3Hに供給される。
【0039】
膨張機排出ライン7b及び冷水充填ライン5Cが、第2熱交換器8bを通過する。膨張機6aから排出された膨張後空気は、第2熱交換器8bにおいて、冷水充填ライン5Cを通流する常温水(水源水)と熱交換を行う。これにより、膨張後空気は昇温する一方、常温水(水源水)は膨張後空気の冷熱で冷却される。これにより、冷水が、第2熱交換器8bにおいて生成され、冷水槽3Cに供給される。
【0040】
給水ライン9は、常温水槽3N、温水槽3H、及び冷水槽3Cを給水対象に接続する。給水ライン9は、各槽の底部に接続されている。給水ライン9は、常温水供給ライン9N、温水供給ライン9H、及び冷水供給ライン9Cを含む。常温水供給ライン9Nは、常温水槽3Nを第1の給水対象に接続する。本実施形態では、第1の給水対象が高置水槽3Eである。温水供給ライン9Hは、温水槽3Hを第2の給水対象に接続する。冷水供給ライン9Cは、冷水槽3Cを第3の給水対象に接続する。本実施形態では、第2の給水対象及び第3の給水対象は、各層に設けられたタンク、給水ヘッダー、又は蛇口である。当然ながら、第2の給水対象と第3の給水対象が、同種の要素(例えば、どちらも給水ヘッダー)であっても、温水用と冷水用とで別々とされる。常温水槽3N、温水槽3H、冷水槽3C、及び蓄圧槽3Aは、建築物Bの1階と同じレベルに設置される。
【0041】
常温水供給ライン9Nは、常温水槽3Nを高置水槽3Eに直接的に接続する。温水供給ライン9H及び冷水供給ライン9Cは、鉛直上向きに延在する上下延在部と、階層ごとに上下延在部から分岐する複数の分岐部とを含む。これらの各ラインにおいて、水は、槽に供給されている圧縮空気により、上向きに揚水され、対応の給水対象に供給される。高置水槽3Eは、落水ライン30を介し、階層ごとに設けられた給水対象(例えば、タンク、給水ヘッダー、又は蛇口等)に接続される。落水ライン30は、高置水槽3Eから鉛直下向きに延在する上下延在部と、上下延在部から分岐して給水対象に接続される複数の分岐部とを含む。落水ライン30において、水は、高置水槽3Eの水頭圧により、下向きに流れる。
【0042】
ポンプ群は、温水充填ライン5H上に設けられた温水ポンプ10H、及び冷水充填ライン5C上に設けられた冷水ポンプ10Cを含む。温水ポンプ10H及び冷水ポンプ10Cは、電動式である。その電源は、商用電源でもよく、発電機6bでもよい。温水ポンプ10Hは、常温水(水源水)を常温水充填ライン5Nから温水充填ライン5Hに引き込み、常温水(水源水)を第1熱交換器8aに供給し且つ温水を温水槽3Hに供給する。冷水ポンプ10Cは、常温水(水源水)を常温水充填ライン5Nから冷水充填ライン5Cに引き込み、常温水(水源水)を第2熱交換器8bに供給し且つ冷水を冷水槽3Cに供給する。
【0043】
バルブ群は、主給気ライン4Mを開閉する主給気開閉弁14M、常温水槽給気ライン4Nを開閉する常温水槽給気開閉弁14N、温水槽給気ライン4Hを開閉する温水槽給気開閉弁14H、冷水槽給気ライン4Cを開閉する冷水槽給気開閉弁14C、蓄圧槽給気ライン4Aを開閉する蓄圧槽給気開閉弁14A、常温水充填ライン5Nを開閉する常温水充填開閉弁15N、温水充填ライン5Hを開閉する温水充填開閉弁15H、冷水充填ライン5Cを開閉する冷水充填開閉弁15C、膨張機供給ライン7aを開閉する膨張機開閉弁17、常温水供給ライン9Nを開閉する常温水供給開閉弁19N、温水供給ライン9Hを開閉する温水供給開閉弁19H、及び冷水供給ライン9Cを開閉する冷水供給開閉弁19Cを含む。
【0044】
図1では図示を省略するが、バルブ群は、更に、常温水槽3Nを大気開放する常温水槽大気開放弁13N、温水槽3Hを大気開放する温水槽大気開放弁13H、冷水槽3Cを大気開放する冷水槽大気開放弁13C、及び蓄圧槽3Aを大気開放する蓄圧槽大気開放弁13Aを含む。
【0045】
以上のバルブはいずれも、電磁開閉弁である。その弁位置は、コントローラ20(
図2を参照)から供給される信号に応じて、開位置と閉位置との間で切り換わる。
【0046】
図2を参照して、給水システム1は、槽群の内圧を検出する圧力センサ群、及び槽群の水位を検出する水位センサ群を備える。圧力センサ群は、常温水槽圧力センサ21N、温水槽圧力センサ21H、冷水槽圧力センサ21C、及び蓄圧槽圧力センサ21Aを含む。水位センサ群は、常温水槽水位センサ22N、温水槽水位センサ22H、及び冷水槽水位センサ22Cを含む。
【0047】
常温水槽圧力センサ21Nは、常温水槽3Nの内圧を検出する。温水槽圧力センサ21Hは、温水槽3Hの内圧を検出する。冷水槽圧力センサ21Cは、冷水槽3Cの内圧を検出する。蓄圧槽圧力センサ21Aは、蓄圧槽3Aの内圧を検出する。常温水槽水位センサ22Nは、常温水槽3N内の水位を検出する。温水槽水位センサ22Hは、温水槽3H内の水位を検出する。冷水槽水位センサ22Cは、冷水槽3C内の水位を検出する。
【0048】
各水位センサは、満水位と空水位との2つの水位を検出可能に構成される。例えば、常温水槽水位センサ22Nは、満水位を検出する満水位センサと、空水位を検出する空水位センサとの2つのセンサで構成されてもよい。2つのセンサは、常温水槽3Nの内面側に取り付けられ且つ鉛直方向に離れて配置される。温水槽水位センサ22H及び冷水槽水位センサ22Cについても、これと同様である。
【0049】
給水システム1は、コントローラ20を備える。コントローラ20は、上記のセンサ群に接続される。コントローラ20は、インバータ2c、ポンプ群、及びバルブ群と接続される。コントローラ20は、例えば、CPU、メモリ、及び入出力インターフェイスを有するコンピュータである。コントローラ20は、メモリに予め記憶されたプログラムの指示に沿った情報処理を通じて、給水対象に水を供給する給水方法を実行する。以降の説明において、インバータ2c、ポンプ群、及びバルブ群の動作は、コントローラ20による制御の結果として生ずる。
【0050】
図3A~
図3Dは、常温水の給水の説明図である。
図3Aを参照して、常温水槽3N内の水位が空水位になると、常温水が常温水槽3Nに貯留される。そのために、常温水槽給気開閉弁14N、常温水供給開閉弁19Nが閉となる一方、常温水充填開閉弁15N、常温水槽大気開放弁13Nが開となる。これにより、常温水槽3Nの内圧(槽内空気層の圧力)は、大気圧となる。水源Wが上水道設備である場合、常温水(この場合、水道水)は、大気圧を超える水圧(例えば、0.2MPa)を有する。このため、水源Wからの常温水が、常温水槽3N内に充填されていく。
【0051】
水位が満水位に達すると、常温水充填開閉弁15N、常温水槽大気開放弁13Nが閉となる。
【0052】
次に、常温水を常温水槽3Nから常温水供給ライン9Nを介し高置水槽3Eに供給する。そのために、常温水充填開閉弁15N、常温水槽大気開放弁13Nは閉となる一方、主給気開閉弁14M、常温水槽給気開閉弁14N、常温水供給開閉弁19Nが開となる。これにより、圧縮空気が、圧縮機2aから主給気ライン4M及び常温水槽給気ライン4Nを介して常温水槽3Nに供給される。常温水槽3Nの内圧は、圧縮空気の圧力に上昇する。圧縮空気に押され、常温水槽3N内の常温水は、常温水槽3Nから排出され、揚水される。圧縮空気の圧力は、例えば約0.7MPaである。この場合、常温水槽3Nが建築物Bの1階と同じレベルに設置されている場合において、常温水は約70m揚水される。すなわち、常温水は、20階級の建築物Bの屋上階まで、問題なく揚水可能である。
【0053】
圧縮空気の常温水槽3Nへの供給、ひいては常温水の高置水槽3Eへの供給は、常温水槽3N内の水位が空水位に達するまで継続される。高置水槽3Eの容積は、常温水槽3Nの容積よりも大きい。そのため、常温水が常温水槽3Nの満水位から空水位まで連続的に且つ高速に推移しても、高置水槽3Eは供給される常温水を受容できる。
【0054】
図3Cを参照して、水位が空水位に達すると、一旦、常温水槽給気開閉弁14N、常温水供給開閉弁19Nが閉となる。
【0055】
図3Dを参照して、常温水槽3N内に貯留された圧縮空気を蓄圧槽3Aで回収する。そのために、主給気開閉弁14M、常温水供給開閉弁19Nが閉となる一方、常温水槽給気開閉弁14N、蓄圧槽給気開閉弁14Aが開となる。なお、膨張機開閉弁17は閉であることが好ましい。これにより、常温水槽3N内の圧縮空気が、常温水槽給気ライン4N及び蓄圧槽給気ライン4Aを介し、蓄圧槽3Aに供給される。蓄圧槽3Aの内圧が常温水槽3Nの内圧と均衡すると、圧縮空気の移送が停止する。圧縮機2aが常温水槽3N及び蓄圧槽3Aから遮断され、且つ常温水槽3Nが蓄圧槽3Aと連通する状態を形成することで、このような圧縮空気のエネルギー回収を実現できる。
【0056】
圧縮空気の移送が停止すると、蓄圧槽給気開閉弁14Aが閉となる。その後は、
図3Aに戻り、上記の動作が常温水の充填から繰り返される。
【0057】
高置水槽3E内の常温水は、水頭圧を利用して、落水ライン30を鉛直下向きに流れ、各階層の給水対象に供給される。なお、高置水槽3Eには、高置水槽3E内の水を流出させるためのポンプが設けられていてもよい。
【0058】
詳細な動作図を省略するが、温水槽3H及び冷水槽3Cに関しても、常温水槽3Nと同様である。温水槽3Hにおいても、温水の温水槽3Hでの貯留、温水槽3Hから給水対象への温水の供給、及び温水槽3H内の圧縮空気からのエネルギー回収の一連の動作が繰り返される。冷水槽3Cにおいても、冷水の冷水槽3Cでの貯留、冷水槽3Cから給水対象への冷水の供給、及び冷水槽3C内の圧縮空気からのエネルギー回収の一連の動作が繰り返される。
【0059】
温水貯留時には、温水槽3Hに関連付けられた開閉弁が、常温水槽3Nに関連付けられた開閉弁と同様に作動する。これにより、温水槽3Hが大気開放され且つ温水槽3Hが圧縮機2a及び他の槽から遮断された状態で、温水が温水充填ライン5Hを介して温水槽3Hに供給される。このとき、常温水貯留時との相違として、温水ポンプ10Hが作動し、水源Wからの常温水が常温水充填ライン5Nから温水充填ライン5Hに引き込まれる。この温水貯留時には、圧縮空気が温水槽3Hには供給されない一方で、常温水槽3N、冷水槽3C、又は蓄圧槽3Aに供給され、その過程で圧縮空気が第1熱交換器8aを通過している。圧縮空気の温度は、圧縮機2aから吐出された直後において、150~180℃である。一方、常温水の温度は、20~30℃である。常温水は、温水充填ライン5Hを通流する過程において、第1熱交換器8aにて圧縮空気と熱交換を行い、50~70℃に昇温され、温水となる。温水ポンプ10Hは、温水貯留時を除き、停止している。
【0060】
温水供給時にも、温水槽3Hに関連付けられた開閉弁が、常温水槽3Nに関連付けられた開閉弁と同様に作動する。これにより、温水が、温水供給ライン9Hを介して揚水され、給水対象に供給される。温水槽3H内の圧縮空気の回収時にも、温水槽3Hに関連付けられた開閉弁が、常温水槽3Nに関連付けられた開閉弁と同様に作動する。これにより、温水槽3H内の圧縮空気が、温水槽給気ライン4H及び蓄圧槽給気ライン4Aを介し、蓄圧槽3Aに供給される。蓄圧槽3Aの内圧が温水槽3Hの内圧と均衡すると、圧縮空気の移送が停止する。
【0061】
冷水貯留時には、冷水槽3Cに関連付けられた開閉弁が、常温水槽3Nに関連付けられた開閉弁と同様に作動する。これにより、冷水槽3Cが大気開放され且つ冷水槽3Cが圧縮機2a及び他の槽から遮断された状態で、冷水が冷水充填ライン5Cを介して冷水槽3Cに供給される。このとき、常温水貯留時との相違として、冷水ポンプ10Cが作動し、水源Wからの常温水が常温水充填ライン5Nから冷水充填ライン5Cに引き込まれる。この冷水貯留時には、膨張機6aが蓄圧槽3Aに貯留されている圧縮空気で作動し、膨張機6aから排出された膨張後空気が第2熱交換器8bを通過している。常温水は、冷水充填ライン5Cを通流する過程において、第2熱交換器8bにて膨張機6aから排出された膨張後空気と熱交換を行い、5~15℃に降温され、冷水となる。冷水ポンプ10Cは、冷水貯留時を除き、停止している。
【0062】
冷水供給時にも、冷水槽3Cに関連付けられた開閉弁が、常温水槽3Nに関連付けられた開閉弁と同様に作動する。これにより、冷水が、冷水供給ライン9Cを介して揚水され、給水対象に供給される。冷水槽3C内の圧縮空気の回収時にも、冷水槽3Cに関連付けられた開閉弁が、常温水槽3Nに関連付けられた開閉弁と同様に作動する。これにより、冷水槽3C内の圧縮空気が、冷水槽給気ライン4C及び蓄圧槽給気ライン4Aを介し、蓄圧槽3Aに供給される。蓄圧槽3Aの内圧が冷水槽3Cの内圧と均衡すると、圧縮空気の移送が停止する。
【0063】
本実施形態に係る給水システム1は、多層の建築物Bの各階層に設けられた給水対象に水を供給する。給水システム1は、空気を圧縮する圧縮機2aと、常温水(水源水)を貯留する常温水槽3Nと、圧縮機2aで圧縮された圧縮空気と常温水(水源水)との間で熱交換する第1熱交換器8aと、第1熱交換器8aにおける熱交換により昇温された温水を貯留する温水槽3Hと、常温水槽3Nに供給された圧縮空気により、常温水槽3Nから給水対象へ常温水を供給する常温水供給ライン9Nと、温水槽3Hに供給された圧縮空気により、温水槽3Hから給水対象へ温水を供給する温水供給ライン9Hと、を備える。
【0064】
別の言い方では、本実施形態に係る給水方法は、多層の建築物Bの各階層に設けられた給水対象に水を供給するための方法である。給水方法は、圧縮機2aで空気を圧縮することと、常温水を常温水槽3Nで貯留することと、第1熱交換器8aにおいて圧縮機2aで圧縮された圧縮空気と常温水との間で熱交換することと、第1熱交換器8aにおける熱交換により昇温された温水を温水槽3Hで貯留することと、常温水槽3Nに圧縮空気を供給することで、常温水槽3Nから常温水供給ライン9Nを介して給水対象へ常温水を供給することと、温水槽3Hに圧縮空気を供給することで、温水槽3Hから温水供給ライン9Hを介して給水対象へ温水を供給することと、を備える。
【0065】
圧縮機2aで生成された圧縮空気は高温高圧である。ポンプに代えて、圧縮空気の高圧を利用して、常温水を建築物Bの各階層に供給できる。第1熱交換器8aで圧縮空気の熱を回収でき、それにより温水が生成される。この温水も、圧縮空気の高圧を利用して、建築物Bの各階層に供給される。このように、圧縮機2aの作動で消費されたエネルギーが、給水対象において利用可能な温水として回収される。ポンプで揚水する場合と比べ、エネルギー効率が向上する。
【0066】
給水システム1が、建築物Bの上層に設置された高置水槽3Eを備える。常温水供給ライン9Nが、常温水槽3Nから高置水槽3Eへと常温水を揚水する。一旦常温水が高置水槽3Eに貯留されてから給水対象に供給される。従来の水ポンプで生じるおそれのあった軸封部からの水漏れを防止できる。
【0067】
給水システム1が、常温水槽3Nの内圧を検出する常温水槽圧力センサ21Nと、常温水槽3N内の水位を検出する常温水槽水位センサ22Nと、常温水槽3Nへの圧縮空気の供給可否を切り換える常温水槽給気開閉弁14Nと、常温水槽3Nへの常温水の供給可否を切り換える常温水充填開閉弁15Nと、常温水槽3Nから給水対象への常温水の供給可否を切り換える常温水供給開閉弁19Nと、常温水槽圧力センサ21N及び常温水槽水位センサ22Nの検出結果に基づいて、常温水槽給気開閉弁14N、常温水充填開閉弁15N、及び常温水供給開閉弁19Nを制御するコントローラ20と、を更に備える。これにより、圧縮空気の圧力を利用して常温水を常温水槽3Nから供給対象へ供給し、常温水を常温水槽3Nに充填するという一連の動作からなる運転サイクルが、コントローラ20によって自動化される。
【0068】
給水システム1が、圧縮空気を貯蔵する蓄圧槽3Aと、蓄圧槽3Aから供給される圧縮空気によって駆動される膨張機6aと、膨張機6aと機械的に接続され、膨張機6aにより駆動される発電機6bと、を更に備える。常温水槽3N及び温水槽3Hに供給された圧縮空気のエネルギーが、電気エネルギーとして回収される。したがって、給水システム1のエネルギー効率が一層向上する。なお、上記の説明では、常温水、温水、及び冷水の揚水に使用された圧縮空気が蓄圧槽3Hに移送され、当該移送された圧縮空気のエネルギーが発電機ユニット6において電気エネルギーとして回収され、それにより高いエネルギー効率が達成されている。ただし、圧縮機2aから吐出された圧縮空気が直接的に蓄圧槽3Aに供給されてもよく、この場合においても、圧縮機2aの駆動に使用された電気エネルギーを発電機6bにおいて回収できる。
【0069】
給水システム1が、膨張機6aで膨張された膨張後空気と常温水とで熱交換する第2熱交換器8bと、第2熱交換器8bにおける熱交換により降温された冷水を貯留する冷水槽3Cと、冷水槽3Cに供給された圧縮空気により、冷水槽3Cから給水対象へ冷水を供給する冷水供給ライン9Cと、を更に備える。冷水が、膨張機6aで膨張された膨張後空気の冷熱で生成され、圧縮空気の高圧を利用して建築物Bの各階層に供給される。したがって、給水システム1のエネルギー効率が一層向上する。
【0070】
次に、
図4を参照して、上記実施形態との相違点を中心にして、第2実施形態に係る給水システム1について説明する。
【0071】
本実施形態に係る給水システム1は、受水槽31、落水ライン32、及び水力発電機33を備える。受水槽31は、高置水槽3Eよりも鉛直下方に設置される。一例として、受水槽31は、建築物Bの1階又は地下階に設置される。落水ライン32は、給水対象に接続された落水ライン30からは独立しており、高置水槽3E内の常温水を受水槽31まで落水させる。落水ライン32上には、高置水槽3E内の水を落水ライン32に引き込むため、ポンプが設けられていてもよい。
【0072】
水力発電機33は、水流発電機であり、落水ライン32上に介在する。水力発電機33は、落水ライン32を通流する水流によって駆動され、交流を発電する。水力発電機33は、水力で回転駆動される水車によって構成されていてもよく、水力で回転駆動されるポンプによって構成されていてもよい。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0073】
本実施形態によれば、高置水槽3Eまで供給された常温水の位置エネルギーを電気エネルギーとして回収できる。したがって、給水システム1のエネルギー効率が一層向上する。
【0074】
次に、
図5を参照して、上記実施形態との相違点を中心にして、第3実施形態に係る給水システム1について説明する。
【0075】
本実施形態においては、第1実施形態における膨張機排出ライン7bが、冷風供給ライン34に置き換えられている。冷風供給ライン34は、膨張機6aの吐出口を空調対象に接続する。空調対象は、給水対象と同じく、多層の建築物Bの各階層に設けられている。空調対象は、例えば、各階層に設けられたダクト、あるいは各部屋に設けられた通風口である。
【0076】
この構成により、膨張機6aで発生した冷熱を使用して、空調対象に冷風を供給できる。給水システム1を冷風の生成にも活用でき、給水システム1のエネルギー効率が一層向上する。
【0077】
なお、給水システム1は、第2実施形態に示した水力発電機33(
図4を参照)と、第3実施形態に示した冷風供給ライン34(
図5を参照)とを両方とも備えていてもよい。
【0078】
次に、
図6を参照して、上記実施形態との相違点を中心にして、第4実施形態に係る給水システム1について説明する。
【0079】
本実施形態においては、高置水槽3E、及び落水ライン30(
図1を参照)が設けられていない。代わりに、第1の給水対象が、第2の給水対象及び第3の給水対象と同様、各層に設けられたタンク、給水ヘッダー、又は蛇口である。常温水供給ライン9Nは、常温水槽3Nをこのような第1の給水対象に直接的に接続する。常温水供給ライン9Nは、温水供給ライン9H及び冷水供給ライン9Cと同様、常温水槽3Nから鉛直上向きに延在する上下延在部と、階層ごとに上下延在部から分岐して給水対象に接続される複数の分岐部とを含む。このように、高置水槽3Eは省略可能であり、その場合にあっても、給水システム1のエネルギー効率の改善効果は、上記実施形態と同様にして得られる。
【0080】
なお、給水システム1は、第3実施形態に示した冷風供給ライン34(
図5を参照)と、第4実施形態に示した常温水供給ライン9Nとを両方とも備えていてもよい。
【0081】
次に、
図7A~
図7Dを参照して、上記実施形態との相違点を中心にして、第5実施形態に係る給水システム1について説明する。システム全体の図示は省略する。
【0082】
図7Aに示すように、本実施形態においては、常温水槽3Nが、二連式であり、第1常温水槽3Na及び第2常温水槽3Nbの2つを含む。
【0083】
常温水槽給気ライン4Nの下流端部は、第1常温水槽3Na及び第2常温水槽3Nbそれぞれに接続されるべく、分岐されている。常温水槽給気ライン4Nは、第1常温水槽3Naに接続される第1常温水槽給気ライン4Naと、主給気ライン4Mから分岐して第2常温水槽3Nbに接続される第2常温水槽給気ライン4Nbとを含む。
【0084】
常温水充填ライン5Nの下流端部は、第1常温水槽3Na及び第2常温水槽3Nbそれぞれに接続されるべく、分岐されている。常温水充填ライン5Nは、第1常温水槽3Naに接続される第1常温水充填ライン5Naと、第2常温水槽3Nbに接続される第2常温水充填ライン5Nbとを含む。
【0085】
常温水供給ライン9Nの上流端部は、第1常温水槽3Na及び第2常温水槽3Nbそれぞれに接続されるべく、分岐されている。常温水供給ライン9Nは、第1常温水槽3Naに接続される第1常温水供給ライン9Naと、第2常温水槽3Nbに接続される第2常温水供給ライン9Nbとを含む。
【0086】
常温水槽給気開閉弁14Nは、第1常温水槽給気ライン4Naを開閉する第1常温水槽給気開閉弁14Naと、第2常温水槽給気ライン4Nbを開閉する第2常温水槽給気開閉弁14Nbとを含む。常温水充填開閉弁15Nは、第1常温水充填ライン5Naを開閉する第1常温水充填開閉弁15Naと、第2常温水充填ライン5Nbを開閉する第2常温水充填開閉弁15Nbとを含む。常温水供給開閉弁19Nは、第1常温水供給ライン9Naを開閉する第1常温水供給開閉弁19Naと、第2常温水供給ライン9Nbを開閉する第2常温水供給開閉弁19Nbとを含む。第1常温水槽3Naには第1常温水槽大気開放弁13Naが設けられ、第2常温水槽3Nbには第2常温水槽大気開放弁13Nbが設けられている。
【0087】
図7A~
図7Dは、このように構成される本実施形態における常温水の給水の説明図である。
図7Aを参照して、第1常温水槽3Na内の水位が空水位になると、常温水が第1常温水槽3Naに貯留される。そのために、第1常温水槽給気開閉弁14Na、第1常温水供給開閉弁19Naが閉となる一方、第1常温水充填開閉弁15Na、第1常温水槽大気開放弁13Naが開となる。なお、主給気開閉弁14Mの弁位置は第1常温水槽給気開閉弁14Naよりも常温水槽給気ライン4Nにおいて圧縮機2aに近い位置にある限りにおいて問わない。これにより、第1常温水槽3Naの内圧が大気圧となる。水源Wからの常温水が第1常温水槽3Na内に充填されていく。なお、このときの第2常温水槽3Nbにおける動作は、説明の都合上後述する。
【0088】
第1常温水槽3Na内の水位が満水位に達すると、一旦、第1常温水供給開閉弁19Na、第1常温水槽大気開放弁13Naが閉となる。第1常温水槽3Na及び第2常温水槽3Nbに関連付けられた他のバルブも全て閉となる。
【0089】
次に、
図7Bを参照して、常温水を第1常温水槽3Naから常温水供給ライン9Nを介し高置水槽3Eに供給する。そのために、第1常温水充填開閉弁15Na、第1常温水槽大気開放弁13Naが閉となる一方、主給気開閉弁14M、第1常温水槽給気開閉弁14Na、第1常温水供給開閉弁19Naが開となる。これにより、圧縮空気が、圧縮機2aから主給気ライン4M及び第1常温水槽給気ライン4Naを介して第1常温水槽3Naに供給される。第1常温水槽3Naの内圧は、大気圧から圧縮空気の圧力まで上昇する。圧縮空気に押され、第1常温水槽3Na内の常温水は、第1常温水槽3Naから排出され、上流部9NUを介して高置水槽3Eまで揚水される。
【0090】
これと同時に、常温水が第2常温水槽3Nbに供給される。そのために、第2常温水槽給気開閉弁14Nb、第2常温水供給開閉弁19Nbが閉となる一方、第2常温水充填開閉弁15Nb、第2常温水槽大気開放弁13Nbが開となる。第1常温水槽3Naから給水対象(あるいは高置水槽3E)への常温水の供給のため、主給気開閉弁14Mは開であるが、第2常温水槽3Nbは圧縮機2aからは遮断され、第2常温水槽3Nbの内圧は大気圧となる。水源Wからの常温水が第2常温水槽3Nb内に充填されていく。
【0091】
このように、第1常温水槽3Naから常温水を給水対象に供給している間に、第2常温水槽3Nbに常温水が充填されていく。
図7Cを参照して、第1常温水槽3Na内の水位が空水位に達すると、一旦、第1常温水槽給気開閉弁14Na、第1常温水供給開閉弁19Na、第1常温水充填開閉弁15Na、第1常温水槽大気開放弁13Naが閉となる。
【0092】
図7Dを参照して、第1常温水槽3Na内に貯留されている圧縮空気を蓄圧槽3Aで回収する。そのために、主給気開閉弁14M、第1常温水槽大気開放弁13Na、第1常温水充填開閉弁15Na、第1常温水供給開閉弁19Naが閉となる。一方、第1常温水槽給気開閉弁14Na、蓄圧槽給気開閉弁14Aが閉となる。膨張機開閉弁17は閉であることが好ましい。これにより、蓄圧槽3Aの内圧が第1常温水槽3Naの内圧と均衡すると、圧縮空気の移送が停止する。圧力の均衡は、圧力センサから出力される検出結果に基づいて判断される。
【0093】
圧縮空気の移送が停止すると、蓄圧槽給気開閉弁14Aが閉となる。その後は、
図7Aに戻り、第1常温水槽3Naに常温水が再び供給される。
【0094】
図7Aに示すように、第1常温水槽3Naに常温水が充填されている間に、第2常温水槽3Nbから常温水を給水対象に供給する。そのために、第2常温水充填開閉弁15Nb、第2常温水槽大気開放弁13Nbが閉となる一方、主給気開閉弁14M、第2常温水槽給気開閉弁14Nb、第2常温水供給開閉弁19Nbが開となる。これにより、圧縮空気が、圧縮機2aから主給気ライン4M及び第2常温水槽給気ライン4Nbを介して第2常温水槽3Nbに供給される。第2常温水槽3Nbの内圧は、大気圧から圧縮空気の圧力まで上昇する。圧縮空気に押され、第2常温水槽3Nb内の常温水は、第2常温水槽3Nbから排出され、高置水槽3Eまで揚水される。
【0095】
このように常温水槽が二連式であることにより、片方の常温水槽への充填時に、もう片方の常温水槽から給水対象又は高置水槽3Eに常温水を供給できる。給水が連続的に行われ、給水対象への常温水の安定供給を実現できる。
【0096】
詳細図示を省略するが、第2常温水槽3Nbに貯留された圧縮空気についても、第1常温水槽3Naと同様にして、蓄圧槽3Aで回収可能である。温水槽3H又は冷水槽3Cが二連式で構成されてもよい。これにより、常温水と同様にして、温水又は冷水を給水対象に安定供給できる。
【0097】
これまで、実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜追加、変更、又は削除可能である。
【0098】
本実施形態では、常温水槽3N、温水槽3H、冷水槽3C、及び蓄圧槽3Aは、建築物Bの1階と同じレベルに設置されるが、地階と同じレベルに設置してもよい。
【0099】
また、温水槽3Hに貯留される温水を温度調整(例えば、保温)するヒータあるいは冷水槽3Cに貯留される水を温度調整(例えば、保冷)するクーラを設けてもよい。また、それらヒータあるいはクーラの電力として、発電機6b、水力発電機33で発電した電力あるいは電源設備からの電力を用いてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 給水システム
2 圧縮機ユニット
2a 圧縮機
2b モータ
2c インバータ
3A 蓄圧槽
3C 冷水槽
3E 高置水槽
3H 温水槽
3N 常温水槽
3Na 第1常温水槽
3Nb 第2常温水槽
4 給気ライン
4A 蓄圧槽給気ライン
4C 冷水槽給気ライン
4H 温水槽給気ライン
4M 主給気ライン
4N 常温水槽給気ライン
4Na 第1常温水槽給気ライン
4Nb 第2常温水槽給気ライン
5 水充填ライン
5C 冷水充填ライン
5H 温水充填ライン
5N 常温水充填ライン
5Na 第1常温水充填ライン
5Nb 第2常温水充填ライン
6 発電機ユニット
6a 膨張機
6b 発電機
7 膨張機ライン
7a 膨張機供給ライン
7b 膨張機排出ライン
8a 第1熱交換器
8b 第2熱交換器
9 給水ライン
9C 冷水供給ライン
9H 温水供給ライン
9N 常温水供給ライン
9Na 第1常温水供給ライン
9Nb 第2常温水供給ライン
10C 冷水ポンプ
10H 温水ポンプ
13A 蓄圧槽大気開放弁
13C 冷水槽大気開放弁
13H 温水槽大気開放弁
13N 常温水槽大気開放弁
13Na 第1常温水槽大気開放弁
13Nb 第2常温水槽大気開放弁
14A 蓄圧槽給気開閉弁
14C 冷水槽給気開閉弁
14H 温水槽給気開閉弁
14M 主給気開閉弁
14N 常温水槽給気開閉弁
14Na 第1常温水槽給気開閉弁
14Nb 第2常温水槽給気開閉弁
15C 冷水充填開閉弁
15H 温水充填開閉弁
15N 常温水充填開閉弁
15Na 第1常温水充填開閉弁
15Nb 第2常温水充填開閉弁
17 膨張機開閉弁
19C 冷水供給開閉弁
19H 温水供給開閉弁
19N 常温水供給開閉弁
19Na 第1常温水供給開閉弁
19Nb 第2常温水供給開閉弁
20 コントローラ
21A 蓄圧槽圧力センサ
21C 冷水槽圧力センサ
21H 温水槽圧力センサ
21N 常温水槽圧力センサ
22C 冷水槽水位センサ
22H 温水槽水位センサ
22N 常温水槽水位センサ
30 落水ライン
31 受水槽
32 落水ライン
33 水力発電機
34 冷風供給ライン
B 建築物
W 水源