IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンクウィズ株式会社の特許一覧

特開2025-21098情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法
<>
  • 特開-情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法 図1
  • 特開-情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法 図2
  • 特開-情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法 図3
  • 特開-情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021098
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/12 20060101AFI20250205BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20250205BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B23K9/12 C
B23Q17/20 Z
G05B19/18 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124822
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】517425446
【氏名又は名称】リンクウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100175396
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 隆記
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 文生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昭英
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029BB01
3C269AB12
3C269AB33
3C269BB03
3C269EF02
3C269EF66
(57)【要約】
【課題】従来の手法では、作業ツールに適用するツール制御条件データを三次元モデルデータから生成することができない問題がある。
【解決手段】本発明の情報処理システムは、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理S1と、属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して属性データに対応したツール制御条件データを決定するツール制御条件生成処理S2と、ツール制御条件データを適用して作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出する作業ずれデータ算出処理S5と、作業ずれデータにより示される差分の絶対値が予め設定した値となるように制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル書き換え処理S6と、を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理と、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応したツール制御条件データを決定するツール制御条件生成処理と、
前記ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出する作業ずれデータ算出処理と、
前記作業ずれデータにより示される前記差分の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル書き換え処理と、
を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える、情報処理システム。
【請求項2】
前記制御条件テーブルは、複数の作業箇所に共通して利用される、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記差分の絶対値が予め設定した閾値未満である場合、前記制御条件テーブル書き換え処理をスキップする、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記作業ずれデータの蓄積量が予め設定した規定個数以上となったことに応じて、蓄積した前記作業ずれデータに対して統計処理を施して差分統計値を算出する差分統計値算出処理を有し、
前記制御条件テーブル書き換え処理において、前記差分の絶対値に変えて前記差分統計値の絶対値を適用し、前記差分統計値の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記作業実施データは、実作業時に前記作業ツールを測定することで得られた動作パラメータであり、
前記基準データは、前記制御条件テーブルに設定された制御条件の初期値である、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記作業実施データは、実作業後に前記作業対象物を計測することで得られ、かつ、前記作業対象物の形状を点情報で表現した現物点群データであり、
前記基準データは、前記三次元モデルデータから生成され、かつ、前記作業対象物の形状を点情報で表現したマスタ点群データである、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理と、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応したツール制御条件データを決定するツール制御条件生成処理と、
前記ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出する作業ずれデータ算出処理と、
前記作業ずれデータにより示される前記差分の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル書き換え処理と、
を演算装置に実行させる、情報処理プログラム。
【請求項8】
コンピュータを用いて作業ツールの制御に適用するツール制御条件データを実作業において取得されるデータに基づき補正する情報処理方法であって、
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出し、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応したツール制御条件データを決定し、
前記ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出し、
前記作業ずれデータにより示される前記差分の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法に関し、特に、作業ツールの制御に用いるツール制御条件データを生成する情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接等の作業を行う作業ロボットの制御では、アームを制御すると共に、アームに取り付けられる作業ツールをどのような制御方法により制御するかを定義するツール制御条件データが必要である。そこで、ツール制御条件データの生成で利用する作業対象物の三次元モデルデータにおいて作業ツールを動かす軌跡の元となる稜線データを三次元モデルデータに設定する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-184278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、稜線データを抽出するのみであり、利用する作業ツールに適用するためのツール制御条件データを三次元モデルデータから生成することに関しては開示も示唆もしていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理と、前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応したツール制御条件データを決定するツール制御条件生成処理と、前記ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出する作業ずれデータ算出処理と、前記作業ずれデータにより示される前記差分の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル書き換え処理と、を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える、情報処理システムである。
【0006】
本発明の一態様は、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理と、前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応したツール制御条件データを決定するツール制御条件生成処理と、前記ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出する作業ずれデータ算出処理と、前記作業ずれデータにより示される前記差分の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル書き換え処理と、を演算装置に実行させる、情報処理プログラムである。
【0007】
本発明の一態様は、コンピュータを用いて作業ツールの制御に適用するツール制御条件データを実作業において取得されるデータに基づき補正する情報処理方法であって、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出し、前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応したツール制御条件データを決定し、前記ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出し、前記作業ずれデータにより示される前記差分の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える、情報処理方法である。
【0008】
本発明の一態様は、制御条件テーブルに定義された制御条件を、実作業時に得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分が小さくなるように予め設定したルールに基づき書き換える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、三次元モデルデータを用いて作業ツールに適用するツール制御条件データを生成し、さらに、実際の作業の実績に基づき制御条件の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる作業ロボットシステムの概略図である。
図2】実施の形態1にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
図3】実施の形態2にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
図4】実施の形態3にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0013】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態1にかかる作業ロボットシステムの概略図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1は、コンピュータ10と作業ロボット20とを備える。また、作業ロボット20は、基台にロボットアーム21が設けられ、作業ロボット20の先端に作業ツール22及び作業部センサ23が取り付けられる。
【0014】
コンピュータ10は、他で生成された三次元モデルデータの受信、或いは、三次元モデルデータの生成を行う。また、コンピュータ10は、三次元モデルデータを用いて作業ロボット20の制御で利用されるツール制御条件データを生成する。ここで、ツール制御条件データの生成では、複数の処理を行うが、これらの処理は、少なくとも1台のコンピュータ10を用いて実施されてもよく、作業ロボットシステム1に含まれるコンピュータ10は1台に限られない。また、コンピュータ10は、生成したツール制御条件データを作業ロボット20に送信する。実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業ロボット20は、ロボットアーム21を制御する制御部(不図示)を有し、制御部が受信したツール制御条件データを利用してロボットアーム21に取り付けられた作業ツール22を制御する。
【0015】
作業ロボット20は、溶接作業、塗装作業、塗布作業、切削作業、研磨作業、研削作業、旋削作業のうちの少なくとも1つに対応する。ロボットアーム21は、先端に取り付けられる作業ツール22を作業情報データに基づき移動させる。作業情報データには、作業ツール22の移動軌跡を定義するツールパス、作業ツール22の姿勢を定義するツール姿勢情報が少なくとも含まれる。
【0016】
作業ツール22は、実施する作業に応じて異なるツールとなるものである。作業ツール22は、例えば溶接作業を行う場合は溶接トーチ、ノズル、溶接棒等であり、塗装作業では塗装用ガンなどの塗装用具である。その他、作業ツールとしては、塗布用具(例えば、塗布スプレー)、切削工具(例えば、ドリル、エンドミル、フライス)、研磨用具(例えば、研磨ブラシ)、切削工具(砥石、カップブラシ、ダイヤモンドバー)、旋削用具(例えば、バイト)等が考えられる。実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業ツール毎に異なるツール制御条件データに基づき作業ツール22を制御する。また、同じ作業ツール22に対応するツール制御条件データであっても、作業対象となる部材の材質や厚みによって異なる値の制御値を有する場合がある。
【0017】
作業部センサ23は、作業対象物の形状をスキャンするセンサである。このようなセンサとしては、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ラインスキャナ、三次元スキャナ等が考えられる。実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業部センサ23を用いて作業実施前の作業対象物の形状の認識、作業実施後の作業対象物の形状の認識を行う。
【0018】
実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、生産活動を行う前に、作業対象物に対して行う作業毎に作業ツール22の制御に適用するツール制御条件データを作成する必要がある。そして、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、コンピュータ10において、三次元モデルデータからツール制御条件データを作成する。このように、三次元モデルデータからツール制御条件データを作成することで、作業ロボット20を用いて試作品等の現物を用いることなくツール制御条件データの作成を行うことが可能になる。
【0019】
ここで、三次元モデルデータは、三次元CAD(Computer Aided Design)データ、および、後述の属性データが含まれる。CADデータは、作業対象物の形状を示す面の情報があるデータであればよい。CADデータのデータ形式は、STEP(Standard for the Exchange of Product model data)、IGES(Intial Graphics Exchange Specification)、STL(STereoLithography)などである。また、属性データには、パーツ名、品番、材料、寸法、作業条件、輪郭形状等のデータが含まれる。後述のように、属性データには作業対象線が含まれていてもよい。属性データは、モデルデータに含まれた、コンピュータ読み取り可能なデータ形式で構成されたデータであってもよく、紙に描かれた図面に記載された組立や部品のデータ(例えば、ASSY(Assenmbly)データ)であってもよい。作業情報データには、作業対象物が有する輪郭線の形状データ、および、作業対象物における輪郭線の位置を示す位置データ、作業対象物の寸法、作業位置、作業経路、作業対象物の部位毎の材質や板厚等の作業情報に関するデータが含まれる。属性データは、例えば、溶接作業であれば、溶接電流、溶接速度、トーチ角度等の溶接条件のデータの少なくとも1つを含む場合もある。
【0020】
実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、現物を用いることなく、コンピュータ10上で、三次元モデルデータからツール制御条件データを生成するツール制御条件データ生成処理を実施する。また、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分の絶対値を小さくするようにツール制御条件データの制御値の候補が定義される制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル更新処理を行う。このツール制御条件データ生成処理及び制御条件テーブル更新処理は、コンピュータ10に搭載された記憶装置に格納された情報処理プログラムをCPU等の演算装置で実行することで行う。
【0021】
以下では、このツール制御条件データ生成処理及び制御条件テーブル更新処理を含む作業ロボットシステム1の動作について詳細に説明する。また、ツール制御条件データ生成処理及び制御条件テーブル更新処理には複数の処理が含まれるが、この複数の処理は、1台のコンピュータで実行されても良く、複数台のコンピュータで実行されても良いため、以下の説明では、コンピュータ10を情報処理システムと称す。また、以下で説明するツール制御条件データ生成処理及び制御条件テーブル更新処理は、説明を簡単にするために溶接作業に対応したツール制御条件データを生成及び更新する例を用いて説明する。しかしながら、実施の形態1にかかるツール制御条件データ生成処理及び制御条件テーブル更新処理は、溶接作業以外の種々の作業に適用可能である。
【0022】
図2は、実施の形態1にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【0023】
図2に示すように、実施の形態1にかかる情報処理システムは、作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理(ステップS1)と、属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して属性データに対応したツール制御条件データを決定するツール制御条件生成処理(ステップS2)と、ツール制御条件データを適用して作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出する作業ずれデータ算出処理(ステップS5)と、作業ずれデータにより示される差分の絶対値が予め設定した値となるように制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル書き換え処理(ステップS6)と、を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える。
【0024】
図2に示す例は、実施の形態1にかかる情報処理システムが作業対象物に対して作業ツール22の種類に応じた作業を行う場合の処理の流れを説明するものである。実施の形態1にかかる作業手順では、まず、三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理を行う(ステップS1)。ステップS1において抽出される属性データには、作業対象物に対して作業を行う作業ツール22の情報、作業対象物の寸法、作業位置、作業経路により定義される作業対象箇所の位置情報が少なくとも含まれる。また、属性データには、作業対象物の部位毎の板厚に関するデータが少なくとも含まれていてもよい。
【0025】
続いて、実施の形態1にかかる作業手順では、属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して属性データに対応したツール制御条件データを決定するツール制御条件生成処理を行う(ステップS2)。なお、ステップS2のツール制御条件生成処理において参照される制御条件テーブルは、複数の作業箇所に共通して利用されることがある。このように、制御条件テーブルを複数の作業箇所に共通して利用することで、1つの作業において書き換えられて精度が向上した制御条件を他の作業においても利用できるため、加工精度向上のために要する演算負荷を更に低減することが可能になる。
【0026】
ここで、制御条件テーブルは、作業ツール22の種類毎に異なる複数のテーブルデータを含む。そして、ツール制御条件生成処理では、属性データによって示される作業ツール22に従って、制御条件を読み出す制御条件テーブルを選択する。そして、ルール制御条件生成処理は、属性データによって示される少なくとも1つのパラメータをキーとして選択した制御条件テーブルから制御条件を生成する。例えば、ツール制御条件生成処理では、制御条件を決定するためのキーとして第1のパラメータと第2のパラメータが考えられる場合、第1のパラメータと第2のパラメータをキーとして選択した制御条件テーブルから制御条件を生成する。より具体的には、作業ツール22が溶接トーチであり、溶接トーチに対応する制御条件テーブルが、第1のパラメータとして作業対象箇所の部材の材質、第2のパラメータとして作業対象箇所の厚みをキーに指定するものであった場合、制御条件テーブルには、部材の材質と厚みの組み合わせ毎にツール送り速度と溶接トーチに流す電流値とが少なくとも定義されることが考えられる。この場合、ツール制御条件生成処理では、作業対象箇所の部材の材質と厚みをキーとして、キーに対応するツール送り速度と溶接トーチに流す電流値とを制御条件として生成する。
【0027】
続いて、実施の形態1にかかる作業手順では、ステップS2で生成したツール制御条件データを用いて作業対象物の作業対象箇所に対して所定の作業(例えば、溶接作業)を実施する(ステップS3)。また、実施の形態1にかかる作業手順では、ステップS3の作業が完了した後に、ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データを取得する作業実施データ取得処理を行う(ステップS4)。そして、実施の形態1にかかる作業手順では、ステップS4で取得した作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出する作業ずれデータ算出処理を行う(ステップS5)。
【0028】
ここで、作業実施データと基準データについて説明する。作業実施データには、作業ツール22側で取得される計測データと、作業部センサ23を用いて作業実施後の作業対象物をスキャンすることで得られる作業対象物の形状データと、の少なくとも一方が含まれる。計測データは、例えば、実作業時に作業ツール22を測定することで得られた動作パラメータである。計測データが作業ツール22の動作パラメータである場合、基準データは、制御条件テーブルに設定された制御条件の初期値である。また、形状データは、実作業後に作業対象物を計測することで得られ、かつ、作業対象物の形状を点情報で表現した現物点群データである。形状データに対応する基準データは、三次元モデルデータから生成され、かつ、作業対象物の形状を点情報で表現したマスタ点群データである。
【0029】
つまり、作業実施データは、実作業時に作業ツールを測定することで得られた動作パラメータであり、基準データは、制御条件テーブルに設定された制御条件の初期値である。また、作業実施データは、実作業後に作業対象物を計測することで得られ、かつ、作業対象物の形状を点情報で表現した現物点群データであり、基準データは、三次元モデルデータから生成され、かつ、作業対象物の形状を点情報で表現したマスタ点群データである。
【0030】
続いて、実施の形態1にかかる作業手順では、ステップS5で算出された作業ずれデータにより示される差分の絶対値が予め設定した値となるように制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル書き換え処理を行う(ステップS6)。この制御条件テーブル書き換え処理では、例えば、作業ロボット20に与えたツール制御条件データに定義された電流値の初期値と、作業ツール22上で計測された電流値とずれていた場合、そのズレを解消するように制御条件テーブルの電流値をズレを解消する方向に更新する。また、別の例としては、現物点群データとマスタ点群データとの形状に、溶接により形成されるビートに起因する差が生じるが、予め設定したビートの長さ、幅、根元部の角度、および表面の凹凸等のビート形状基準よりもずれていた場合、このずれを解消するように制御条件テーブルの電流値或いはツール送り速度を更新する。
【0031】
ここで、上記制御条件テーブルの書き換えにおいては、予め設定したルールに基づき行うことができる。予め設定したルールとは、ある作業に関する製造ばらつきのばらつき要因を是正するためのルールであり、所定の数式、或いは、条件変更テーブル等により定義されるものである。このようなルールに従った制御条件テーブルの書き換えでは、限定的な演算能力しかない演算装置においても高速に処理が可能である。
【0032】
上記説明より、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1によれば、三次元モデルデータに含まれる属性データ及び三次元モデルデータから生成した形状データを用いて作業ツール22及び作業対象箇所に適したツール制御条件データを生成することができる。これにより、例えば、生産活動の開始時点、或いは、試作工程の開始時点から、適切な制御条件データを利用可能になる。つまり、作業ロボットシステム1を用いると、作業ロボット20が載置される工場に出向いて作業を行うことなく、ツール制御条件データを作成可能になるため、工場における生産効率を高めることができる。
【0033】
実際の作業ツール22のばらつき(或いは制御値に対するオフセット)や、現物の状態に基づき、予め設定したルールに基づいた制御条件テーブルに書き換えを行う。このように、予め設定したルールに基づき行う制御条件テーブルの更新は、演算能力が非常に低い演算装置でも可能であり、書き換えに要する演算能力の低減させる効果が高い。
【0034】
また、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1によれば、複数の作業対象箇所で共通に利用される制御条件テーブルを更新して、作業精度を高めることができる。そして、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、制御条件テーブルを更新することで同じ作業ツール22を用いて他の作業対象箇所に対して作業を行う場合であっても、作業精度を高めることが可能である。これにより、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業精度向上に要する演算負荷を低減することができる。
【0035】
また、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、1つの作業対象箇所に対する作業実績を用いた加工精度向上の効果を他の作業対象箇所でも得られるため、工程全体の作業精度向上に関する効率を高めることが可能になる。
【0036】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかる作業手順の別の形態について説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1で説明した内容については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0037】
図3は、実施の形態2にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。図4に示すように、実施の形態3にかかる情報処理システムでは、差分の絶対値が予め設定した閾値未満である場合、前記制御条件テーブル書き換え処理をスキップする(ステップS10)。
【0038】
図3に示すように、実施の形態2にかかる作業手順は、実施の形態1にかかる作業手順に対してステップS10を追加したものである。ステップS10は、差分の絶対値が予め設定した閾値未満である場合、前記制御条件テーブル書き換え処理をスキップするスキップ処理である。
【0039】
このように、差分の絶対値が小さい場合には、ツール制御条件テーブルの更新を行わないようにすることで、作業実施データの小さな揺らぎに起因するツール制御条件テーブルの更新を抑制して、ツール制御条件データ及び作業精度を安定させることが可能になる。また、差分の絶対値が小さい場合のツール制御条件データの更新を防止することで、ツール制御条件データの更新に要する演算量及び時間を削減することが可能になる。
【0040】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかる作業手順の別の形態について説明する。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1で説明した内容については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
図4は、実施の形態3にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。図4に示すように、実施の形態3にかかる情報処理システムは、作業ずれデータの蓄積量が予め設定した規定個数以上となったことに応じて、蓄積した前記作業ずれデータに対して統計処理を施して差分統計値を算出する差分統計値算出処理(ステップS20~S22)を有し、制御条件テーブル書き換え処理(ステップS23)において、差分の絶対値に変えて差分統計値の絶対値を適用し、差分統計値の絶対値が予め設定した値となるように制御条件テーブルを書き換える。
【0042】
図4に示すように、実施の形態3にかかる作業手順は、実施の形態1にかかる作業手順に対してステップS20、S21、S22を追加し、ステップS6をステップS23に置き換えた。
【0043】
ステップS20では、ステップS5で算出された作業ずれデータを蓄積する。そして、ステップS21では、ステップS20での作業ずれデータの蓄積量が規定個数以上になるまでステップS3の作業実施からステップS20の作業ずれデータの蓄積までの処理を繰り返す。そして、作業ずれデータの蓄積量が規定個数以上になった後、ステップS22では、蓄積した作業ずれデータに対して統計処理を施して差分統計値を算出する差分統計値算出処理を行う。そして、実施の形態3にかかる作業手順では、ステップS6を置き換えた制御条件テーブル書き換え処理(ステップS23)において、差分の絶対値に変えて差分統計値の絶対値を適用し、差分統計値の絶対値が予め設定した値となるように制御条件テーブルを書き換える。
【0044】
ここで、ステップS21の規定個数は、例えば、量産工程における1ロットに含まれる製品個数や、任意に設定した数を適用することが考えられる。また、ステップS22における統計処理は、例えば作業ずれデータの平均値、荷重平均、値の揺らぎを抑制するフィルタ処理等が考えられる。
【0045】
上記説明より、実施の形態3にかかる作業手順によれば、蓄積した作業ずれデータ対して統計処理を施すことで得られる差分統計値が予め設定した値となるように制御条件テーブルを書き換える。これにより、実施の形態3にかかる作業手順では、ノイズ成分と考えられる作業ずれデータの揺らぎの影響を低減した安定した制御条件テーブルの運用が可能になる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施の形態で説明した特徴を適宜組み合わせて実施することは当業者であれば容易に想到しうるものである。
【0047】
最後に、本発明の実施の形態を図面等を用いて総括する。本発明の実施の形態は、図1図7に示すように、以下のように示される。
【0048】
(付記1)
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理(S1)と、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応したツール制御条件データを決定するツール制御条件生成処理(S2)と、
前記ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出する作業ずれデータ算出処理(S5)と、
前記作業ずれデータにより示される前記差分の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル書き換え処理(S6)と、
を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える、情報処理システム。
【0049】
(付記2)
前記制御条件テーブルは、複数の作業箇所に共通して利用される、付記1に記載の情報処理システム。
【0050】
(付記3)
前記差分の絶対値が予め設定した閾値未満である場合、前記制御条件テーブル書き換え処理をスキップする、付記1に記載の情報処理システム。
【0051】
(付記4)
前記作業ずれデータの蓄積量が予め設定した規定個数以上となったことに応じて、蓄積した前記作業ずれデータに対して統計処理を施して差分統計値を算出する差分統計値算出処理(S20~S22)を有し、
前記制御条件テーブル書き換え処理(S23)において、前記差分の絶対値に変えて前記差分統計値の絶対値を適用し、前記差分統計値の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える、付記1に記載の情報処理システム。
【0052】
(付記5)
前記作業実施データは、実作業時に前記作業ツールを測定することで得られた動作パラメータであり、
前記基準データは、前記制御条件テーブルに設定された制御条件の初期値である、付記1乃至4のいずれか1つに記載の情報処理システム。
【0053】
(付記6)
前記作業実施データは、実作業後に前記作業対象物を計測することで得られ、かつ、前記作業対象物の形状を点情報で表現した現物点群データであり、
前記基準データは、前記三次元モデルデータから生成され、かつ、前記作業対象物の形状を点情報で表現したマスタ点群データである、付記1乃至5のいずれか1つに記載の情報処理システム。
【0054】
(付記7)
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理(S1)と、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応したツール制御条件データを決定するツール制御条件生成処理(S2)と、
前記ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出する作業ずれデータ算出処理(S5)と、
前記作業ずれデータにより示される前記差分の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える制御条件テーブル書き換え処理(S6)と、
を演算装置に実行させる、情報処理プログラム。
【0055】
(付記8)
コンピュータを用いて作業ツールの制御に適用するツール制御条件データを実作業において取得されるデータに基づき補正する情報処理方法であって、
作業対象物の三次元モデルデータから属性データを抽出し(S1)、
前記属性データと作業ツールの制御条件との関係が予め規定される制御条件テーブルを参照して前記属性データに対応したツール制御条件データを決定し(S2)、
前記ツール制御条件データを適用して前記作業対象物に対してした実作業の結果から得られた作業実施データと、予め設定された基準データと、の差分を示す作業ずれデータを算出し(S5)、
前記作業ずれデータにより示される前記差分の絶対値が予め設定した値となるように前記制御条件テーブルを書き換える(S6)、
情報処理方法。
【符号の説明】
【0056】
1 作業ロボットシステム
10 コンピュータ
20 作業ロボット
21 ロボットアーム
22 作業ツール
23 作業部センサ
図1
図2
図3
図4