(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021099
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/127 20060101AFI20250205BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20250205BHJP
G05B 19/4093 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B23K9/127 509B
B23Q17/20 Z
G05B19/4093 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124823
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】517425446
【氏名又は名称】リンクウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100175396
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 隆記
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 文生
【テーマコード(参考)】
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C029BB01
3C269AB12
3C269AB33
3C269BB08
3C269EF59
3C269EF71
3C269JJ19
3C269MN16
(57)【要約】
【課題】従来の手法では、三次元モデルデータにおいて溶接線が線として定義されていなければ、軌跡情報を生成することが出来ない問題があった。
【解決手段】本発明の情報処理システムは、作業対象物の三次元モデルデータから作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理(S3)と、作業対象物の作業対象箇所をマスタ点群データから抽出し、抽出した作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する第1の作業情報データ生成処理(S5)と、を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物の三次元モデルデータから前記作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理と、
前記作業対象物の作業対象箇所を前記マスタ点群データから抽出し、抽出した前記作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する第1の作業情報データ生成処理と、
を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える、情報処理システム。
【請求項2】
前記第1の作業情報データ生成処理は、
前記マスタ点群データから作業対象線が設定される母材面を抽出する母材面抽出処理と、
前記マスタ点群データ上の前記母材面の外周を規定する境界線を抽出する境界線抽出処理と、
前記境界線のうち前記作業対象線に指定される線を、近似線が連続する連続線データに変換する連続線データ変換処理と、
前記連続線データに基づきロボットアームに備え付けられたツールの移動軌跡を規定するツールパスを決定するツールパス決定処理と、
を含む、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記連続線データに含まれる近似線毎の端点を抽出する端点抽出処理と、
前記端点毎に法線を算出する法線算出処理と、
前記端点毎に、前記法線をZ軸、次の端点に向かう方向をX軸、Z軸とX軸の外積をY軸として、前記Z軸、前記X軸及び前記Y軸を正規化して直交座標系データを算出する直交座標系算出処理と、
前記端点毎に算出された前記直交座標系データを前記連続線データの始点から端点に向かって順につなぎ合わせて前記作業情報データを生成するデータ生成処理と、
を有する、請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記作業対象箇所の位置情報は、前記三次元モデルデータに含まれる属性データにより定義される請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記作業対象物の三次元モデルデータを取得して、前記作業対象物の三次元メッシュデータを生成するデータ変換処理と、
前記三次元メッシュデータ上に前記作業対象箇所が前記三次元モデルデータ上で線データとして定義されているか否かを判定する形状判定処理と、
前記形状判定処理において、前記作業対象箇所が前記三次元モデルデータ上で線データとして定義されている場合に、前記三次元メッシュデータから、プリミティブ形状を抽出して、プリミティブ形状データを生成するプリミティブ形状データ抽出処理と、
前記プリミティブ形状データ上の前記線データに沿って前記作業情報データを生成する第2の作業情報データ生成処理と、を含み、
前記形状判定処理において、前記作業対象箇所が前記三次元モデルデータ上で線データとして定義されている場合に、前記マスタ点群データ生成処理と、前記第1の作業情報データ生成処理と、を実施する請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
センサを用いて前記作業対象物から現物点群データを取得する現物点群データ取得処理と、
前記現物点群データに基づき前記作業情報データを補正した補正済み作業情報データを生成する作業情報データ補正処理と、を含み、
前記作業情報データ補正処理は、
前記現物点群データと前記マスタ点群データとについて、予め指定した特徴箇所の位置が前記マスタ点群データと前記現物点群データとで一致するように前記マスタ点群データを変換させる変換行列を算出する変換行列算出処理と、
前記変換行列の逆行列を前記作業情報データに適用して前記補正済み作業情報データを生成するデータ補正処理と、
を行う、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項7】
作業対象物の三次元モデルデータから前記作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理と、
前記作業対象物の作業対象箇所を前記マスタ点群データから抽出し、抽出した前記作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する第1の作業情報データ生成処理と、
を演算装置に実行させる、情報処理プログラム。
【請求項8】
コンピュータを用いて三次元モデルデータから作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する情報処理方法であって、
作業対象物の前記三次元モデルデータから前記作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成し、
前記作業対象物の作業対象箇所を前記マスタ点群データから抽出し、抽出した前記作業対象箇所に対応した前記作業情報データを生成する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法に関し、特に、ロボット制御に用いる作業情報データを生成する情報処理システム、情報処理プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接等の作業を行う作業ロボットの制御では、アームをどのような軌跡で動作させるかの情報を少なくとも含む作業情報データを生成する必要がある。そこで、作業情報データの生成に必要な軌跡情報を生成する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1では、三次元CADデータを基に溶接線を迅速に抽出する、溶接線選定方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、三次元モデルデータにおいて溶接線が線として定義されていなければ、溶接線(例えば、軌跡情報)を生成することが出来ない問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、作業対象物の三次元モデルデータから前記作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理と、前記作業対象物の作業対象箇所を前記マスタ点群データから抽出し、抽出した前記作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する第1の作業情報データ生成処理と、を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える、情報処理システムである。
【0006】
本発明の一態様は、作業対象物の三次元モデルデータから前記作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理と、前記作業対象物の作業対象箇所を前記マスタ点群データから抽出し、抽出した前記作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する第1の作業情報データ生成処理と、を演算装置に実行させる情報処理プログラムである。
【0007】
本発明の一態様は、コンピュータを用いて三次元モデルデータから作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する情報処理方法であって、作業対象物の前記三次元モデルデータから前記作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成し、前記作業対象物の作業対象箇所を前記マスタ点群データから抽出し、抽出した前記作業対象箇所に対応した前記作業情報データを生成する情報処理方法である。
【0008】
本発明の一態様は、三次元モデルデータから生成したマスタ点群データを用いて、作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、三次元モデルデータにおいて線データとして定義されていない箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1にかかる作業ロボットシステムの概略図である。
【
図2】実施の形態1にかかる作業ロボットシステムを用いた作業の一例を説明する図である。
【
図3】実施の形態1にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図4】実施の形態1にかかる情報処理システムにおける作業情報データ生成処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図5】
図4に示したフローチャートのステップS10からステップS13までの動作の具体例を説明する図である。
【
図6】実施の形態1にかかる情報処理システムにおけるツールパス決定処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図7】
図6に示したフローチャートのステップS20、S22、S24の動作の具体例を説明する図である。
【
図8】実施の形態2にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図9】実施の形態3にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図10】実施の形態3にかかる情報システムにおける作業情報データ補正処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0013】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる作業ロボットシステムの概略図である。
図1に示すように、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1は、コンピュータ10と作業ロボット20とを備える。また、作業ロボット20は、基台にロボットアーム21が設けられ、作業ロボット20の先端に作業ツール22及び作業部センサ23が取り付けられる。
【0014】
コンピュータ10は、他で生成された三次元モデルデータの受信、或いは、三次元モデルデータの生成を行う。また、コンピュータ10は、三次元モデルデータを用いて作業ロボット20の制御で利用される作業情報データを生成する。ここで、作業データの生成では、複数の処理を行うが、これらの処理は、少なくとも1台のコンピュータ10を用いて実施されてもよく、作業ロボットシステム1に含まれるコンピュータ10は1台に限られない。また、コンピュータ10は、生成した作業情報データを作業ロボット20に送信する。実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業ロボット20は、ロボットアーム21を制御する制御部(不図示)を有し、制御部が受信した作業情報データを利用してロボットアーム21を制御する。
【0015】
作業ロボット20は、溶接作業、塗装作業、塗布作業、切削作業、研磨作業、研削作業、旋削作業のうちの少なくとも1つに対応する。ロボットアーム21は、先端に取り付けられる作業ツール22を作業情報データによって規定される軌跡に沿って作業ツール22及び作業部センサ23を動かす。
【0016】
作業ツール22は、実施する作業に応じて異なるツールとなるものである。作業ツール22は、例えば溶接作業を行う場合は溶接トーチ、ノズル、溶接棒等であり、塗装作業では塗装用ガンなどの塗装用具である。その他、作業ツールとしては、塗布用具(例えば、塗布スプレー)、切削工具(例えば、ドリル、エンドミル、フライス)、研磨用具(例えば、研磨ブラシ)、切削工具(砥石、カップブラシ、ダイヤモンドバー)、旋削用具(例えば、バイト)等が考えられる。
【0017】
作業部センサ23は、作業対象物の形状をスキャンするセンサである。このようなセンサとしては、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ラインスキャナ、三次元スキャナ等が考えられる。実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業部センサ23を用いて作業実施前の作業対象物の形状の認識、作業実施後の作業対象物の形状の認識を行う。
【0018】
図2は、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1を用いた作業の一例を説明する図である。
図2に示す例は、母材30に非溶接部材31が重ねられ、非溶接部材31を端部に設定した溶接対象線WLに沿って溶接を行うことで、非溶接部材31を母材30に接合する作業である。この場合、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業ロボット20は、作業ツール22の先端が溶接対象線WLに沿って所定の速度、かつ、母材30に対して所定の角度で溶接対象線WLに沿って進むようにロボットアーム21を制御する。
【0019】
実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、生産活動を行う前に、作業対象物に対して行う作業毎に作業情報データを作成する必要がある。そして、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、コンピュータ10において、三次元モデルデータから作業情報データを作成する。このように、三次元モデルデータから作業情報データを作成することで、作業ロボット20を用いて試作品等の現物を用いることなく作業情報データの作成を行う。
【0020】
ここで、三次元モデルデータは、三次元CAD(Computer Aided Design)データ、および、後述の属性データが含まれる。CADデータは、作業対象物の形状を示す面の情報があるデータであればよい。CADデータのデータ形式は、STEP(Standard for the Exchange of Product model data)、IGES(Intial Graphics Exchange Specification)、STL(STereoLithography)などである。また、属性データには、パーツ名、品番、材料、寸法、作業条件、輪郭形状等のデータが含まれる。後述のように、属性データには作業対象線が含まれていてもよい。属性データは、三次元モデルデータに含まれた、コンピュータ読み取り可能なデータ形式で構成されたデータであってもよく、紙に描かれた図面に記載された組立や部品のデータ(例えば、ASSY(Assenmbly)データ)であってもよい。作業情報データには、作業対象物が有する輪郭線の形状データ、および、作業対象物における輪郭線の位置を示す位置データ、作業対象物の寸法、作業位置、作業経路、作業対象物の部位毎の材質や板厚等の作業情報に関するデータが含まれる。属性データは、例えば、溶接作業であれば、溶接電流、溶接速度、トーチ角度等の溶接条件のデータの少なくとも1つを含む場合もある。
【0021】
実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、現物を用いることなく、コンピュータ10上で、三次元モデルデータから作業情報データを生成するモデルベース作業情報データ生成処理を実施する。このモデルベース作業情報データ生成処理は、コンピュータ10に搭載された記憶装置に格納された情報処理プログラムをCPU等の演算装置で実行することで行う。
【0022】
以下では、このモデルベース作業情報データ生成処理について詳細に説明する。また、モデルベース作業情報データ生成処理には複数の処理が含まれるが、この複数の処理は、1台のコンピュータで実行されても良く、複数台のコンピュータで実行されても良いため、以下の説明では、コンピュータ10を情報処理システムと称す。また、モデルベース作業情報データ生成処理について、以下では、説明を簡単にするために溶接作業に対応した作業情報データを生成する例を用いて説明する。しかしながら、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理は、溶接作業以外の種々の作業に適用可能である。
【0023】
図3は、実施の形態1にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
【0024】
図3に示すように以下で説明する情報処理システムは、作業対象物の三次元モデルデータから作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理(ステップS1~S3)と、作業対象物の作業対象箇所をマスタ点群データから抽出し、抽出した作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する第1の作業情報データ生成処理(ステップS5)と、を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える。
【0025】
図3に示すように、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、まず、既に生成されている作業対象物の三次元モデルデータを取得するモデルデータ取得処理を行う(ステップS1)。次いで、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、ステップS1で取得した三次元モデルデータから作業対象物の三次元メッシュデータを生成する三次元メッシュデータ生成処理を行う(ステップS2)。このステップS1とステップS2をまとめてデータ変換処理と称すことがある。
【0026】
ここで、ステップS2で生成する三次元メッシュデータは、所定の大きさで定義される単位メッシュにより作業対象物の全体の形状を表したものである。三次元メッシュデータによれば、作業対象物の形状を面の集合により作業対象物の形状を扱うことが可能になる。
【0027】
続いて、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理は、作業対象物の三次元モデルデータから作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理を行う(ステップS3)。
図2に示す例では、ステップS2において生成した三次元メッシュデータを三次元モデルデータとしてステップS3で利用する。実施の形態1にかかるマスタ点群データ生成処理では、例えば、三次元メッシュデータ全体を覆うような仮想立方体を定義し、仮想立方体の一面から面に垂直な計測線を三次元メッシュデータに延ばした時に、計測線と三次元メッシュデータと交わる点をマスタ点群データの1つとする。マスタ点群データは、多数の計測線と三次元メッシュデータとの交点を含むものであり、無数の点情報の集合である。この点情報は例えば、座標情報である。ここで、例えば、仮想立方体の一面は、作業対象物が作業台に設置された状態で、作業部センサ23が作業対象物を観測可能と考えられる面であると、実際の作業において作業部センサ23が取得する作業対象物の現物点群データとの相関が取れるため、作業効率を高めることができる。
【0028】
続いて、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理は、三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理を行う(ステップS4)。ステップS4において抽出される属性データには、作業対象物の寸法、作業位置、作業経路により定義される作業対象箇所の位置情報が少なくとも含まれる。また、属性データには、作業対象物における輪郭線の位置を示す位置データ、作業対象物の部位毎の材質や板厚等の作業情報に関するデータが含まれることもある。ここで、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、一例として、前記作業対象箇所の位置情報は、前記三次元モデルデータに含まれる属性データにより定義される。
【0029】
続いて、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理は、作業対象物の作業対象箇所をマスタ点群データから抽出し、抽出した作業対象箇所に対して作業を行う作業ツール22の動作経路(例えば、ツールパス)を少なくとも含む作業情報データを生成する第1の作業情報データ生成処理(例えば、ステップS5の作業情報データ生成処理)を行う。ステップS5の作業情報データ生成処理は、複数の処理を含むため、
図4及び
図5を参照してステップS5の作業情報データ生成処理について詳細に説明する。
【0030】
図4は、実施の形態1にかかる情報処理システムにおける作業情報データ生成処理の流れを説明するフローチャートである。
図5は、
図4に示したフローチャートのステップS10からステップS13までの動作の具体例を説明する図である。なお、
図5では、点群が設定される作業対象物の面をハッチングで示した。また、
図5では、母材30の表面に被作業対象材(例えば、非溶接部材31)が載せられ、非溶接部材31の外周のうち局面で構成される部分を溶接の対象とする。つまり、実施の形態1では、曲線を有する作業対象線に対応する作業情報データを生成する例を説明する。
【0031】
図4に示すように、ステップS5の作業情報データ生成処理では、マスタ点群データから作業対象線が設定される母材面を抽出する母材面抽出処理(ステップS10、S11)と、マスタ点群データ上の母材面の外周を規定する境界線を抽出する境界線抽出処理(ステップS12)と、境界線のうち作業対象線に指定される線を、近似線が連続する連続線データに変換する連続線データ変換処理(ステップS13)と、連続線データに基づきロボットアーム21に備え付けられた作業ツール22の移動軌跡を規定するツールパスを決定するツールパス決定処理(ステップS14)と、を含む。
【0032】
図4に示すように、ステップS5の作業情報データ生成処理では、まず、ステップS3で生成したマスタ点群データを取得する(ステップS10)。ステップS10で取得するマスタ点群データは、例えば、
図5のステップS10に対応して示した図のものであり、母材30の表面に非溶接部材31が載せられたものである。実施の形態1では、非溶接部材31の外周のうち局面で構成される部分を溶接の対象とする。
【0033】
続いて、ステップS5の作業情報データ生成処理では、マスタ点群データから作業対象線が設定される母材面を抽出する母材面抽出処理を行う(ステップS11)。
図5のステップS11に対応する図に示すように、ステップS11では、マスタ点群データからから非溶接部材31に対応する部分の点群データを除く領域を母材面として抽出する。
【0034】
続いて、ステップS5の作業情報データ生成処理では、マスタ点群データ上の母材面の外周を規定する境界線を抽出する境界線抽出処理を行う(ステップS12)。
図5のステップS12に対応する図に示すように、ステップS12では、母材面の外周を規定する境界線32をマスタ点群データから抽出する。
【0035】
続いて、ステップS5の作業情報データ生成処理では、境界線32のうち作業対象線33に指定される線を、近似線が連続する連続線データに変換する連続線データ変換処理を行う(ステップS13)。
図5のステップS13に対応する図では、ステップS13において抽出された作業対象線33のみを示した。この作業対象線33は、それぞれが直線となる複数の近似線の組み合わせにより連続線データとして定義される。また、近似線には、曲線が含まれていても良い。なお、この作業対象線33は、ステップS4で抽出した属性データにより指定されたものでもよく、ユーザーが画面を参照しながら指定するものであっても良い。
【0036】
続いて、ステップS5の作業情報データ生成処理では、連続線データに基づきロボットアームに備え付けられたツール(例えば、作業ツール22)の移動軌跡を規定するツールパスを決定するツールパス決定処理を行う(ステップS14)。ここで、ステップS14のツールパス決定処理は、複数の処理により実行されるため、
図6及び
図7を参照して、ツールパス決定処理について詳細に説明する。
【0037】
図6は、実施の形態1にかかる情報処理システムにおけるツールパス決定処理の流れを説明するフローチャートである。
図7は、
図6に示したフローチャートのステップS20、S22、S24の動作の具体例を説明する図である。なお、
図7においても、点群が設定される作業対象物の面をハッチングで示した。また、
図7は、
図5と同じ例を示したものである。なお、
図7で示した連続線データは、説明のために実際の連続線データを構成する近似線の数よりも少ない近似線を有する模式的なものとした。
【0038】
図6に示すように、ステップS14のツールパス決定処理では、連続線データに含まれる近似線毎の端点34を抽出する端点抽出処理(ステップS20)と、端点34毎に法線36を算出する法線算出処理(ステップS22、S23)と、端点34毎に、法線36をZ軸、次の端点34に向かう方向をX軸、Z軸とX軸の外積をY軸として、Z軸、X軸及びY軸を正規化して直交座標系データを算出する直交座標系算出処理(ステップS24)と、端点34毎に算出された直交座標系データを連続線データの始点から端点に向かって順につなぎ合わせて作業情報データを生成するデータ生成処理(ステップS27)と、を有する。
【0039】
図6に示すように、ステップS14のツールパス決定処理では、まず、ステップS13で得た連続線データに含まれる近似線毎の端点を抽出する端点抽出処理を行う(ステップS20)。
図7に示したステップS20に対応した図に示すように、端点抽出処理により、連続線データ上に多数の端点34が設定される。なお、複数の端点34は、連続線データの始点となるものを0番、終点となるものをNe番とした。また、
図6では、端点の番号を示す変数としてNを示した。
【0040】
続いて、ステップS14のツールパス決定処理では、Nを0に初期化し(ステップS21)、Nを1つずつ増やし(ステップS26)ながら端点番号Nが終点の端点番号Neとなるまで、ステップS22~ステップS24の処理を繰り返し行う(ステップS25)。
【0041】
ステップS14のツールパス決定処理では、端点毎に法線を算出する法線算出処理をステップS22、S23にて行う。ステップS22では、処理対象の端点を中心とした半径Rの範囲にある点群データを抽出する。
図7に示したステップS22に対応した図に示すように、ステップS22では、処理対象の端点34を中心とした半径Rの範囲内にある点群データのみが抽出される。そして、ステップS23では、ステップS22で抽出した点群データを用いて処理対象の端点34における法線を算出する。
図7に示したステップS23に対応した図に示すように、ステップS23では、処理対象の端点34を始点とした法線36が算出される。この法線は、例えば、主成分分析(Principle Component Analysis、PCA)等の手法を用いて端点34を中心とした半径Rの範囲内にある点群データを分析することで算出される。
【0042】
続いて、ステップS14のツールパス決定処理では、端点毎に、法線をZ軸、次の端点に向かう方向をX軸、Z軸とX軸の外積をY軸として、Z軸、X軸及びY軸を正規化して直交座標系データを算出する直交座標系算出処理を行う(ステップS24)。
図7に示したステップS24に対応した図では、3つの端点34について、Z軸、X軸及びY軸が定義されることを示したが、ステップS24では、全ての端点についてZ軸、X軸及びY軸を正規化した直交座標系データを算出する。
【0043】
続いて、ステップS14のツールパス決定処理では、ステップS22~S26の繰り返し処理のステップS24において算出された端点毎に算出された直交座標系データを連続線データの始点から端点に向かって順につなぎ合わせて作業情報データ(ツールパス)を生成するデータ生成処理を行う(ステップS27)。また、ステップS27では、生成した作業データをコンピュータ10上の格納部の1つである作業情報データ格納部に格納する。
【0044】
上記説明より、実施の形態1かかる情報処理システムでは、三次元モデルデータから生成したマスタ点群データを用いて作業情報データを生成する。このように、三次元モデルデータをマスタ点群データに変換することで、作業対象箇所が三次元モデルデータ上では線データとして定義されていない場合であっても、マスタ点群データ上で作業対象線33を定義することが可能になる。そして、この作業対象線33を用いることで、実施の形態1にかかる情報処理システムでは、作業ロボット20に適用可能な作業情報データを生成することが可能になる。
【0045】
また、実施の形態1にかかる情報処理システムにより、現物を用いることなく、作業情報データを生成することで、作業ロボット20と試作品を利用して作業情報データを生成する必要がなくなるため、例えば、作業ロボット20の設置場所にかかわらず作業情報データを生成することができる。つまり、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、作業ロボット20を事前に動作させることなく作業情報データを作成できるため、事業効率を高めることが可能になる。
【0046】
また、実際の作業対象物と作業ロボット20とを用いて作業情報データを作成した場合、作業対象物の置き方のばらつき等が作業情報データの精度に悪影響を及ぼすことがある。しかしながら、実施の形態1にかかる作業ロボットシステム1では、ばらつきのない三次元モデルデータから作業情報データを生成するため、作業対象物の置き方のばらつき等に関係の無い、精度の高い作業情報データを生成することが可能になる。
【0047】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理の別の形態について説明する。なお、実施の形態2の説明において実施の形態1で説明した事項に関しては、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0048】
図8は、実施の形態2にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
図8に示すように、実施の形態2にかかるモデルベース作業情報データ生成処理は、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理にステップS30~S33の処理を追加したものである。
【0049】
実施の形態2にかかる情報処理システムは、作業対象物の三次元モデルデータを取得して、作業対象物の三次元メッシュデータを生成するデータ変換処理(ステップS1、S2)と、三次元メッシュデータ上に作業対象箇所が三次元モデルデータ上で線データとして定義されているか否かを判定する形状判定処理(ステップS30)と、形状判定処理(ステップS30)において、作業対象箇所が三次元モデルデータ上で線データとして定義されている場合に、三次元メッシュデータから、プリミティブ形状を抽出して、プリミティブ形状データを生成するプリミティブ形状データ抽出処理(ステップS31)と、プリミティブ形状データ上の線データに沿って作業情報データを生成する第2の作業情報データ生成処理(ステップS32、S33)と、を含み、形状判定処理(ステップS30)において、作業対象箇所が三次元モデルデータ上で線データとして定義されている場合に、マスタ点群データ生成処理(ステップS3)と、第1の作業情報データ生成処理(ステップS5)と、を実施する。
【0050】
実施の形態2にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、三次元メッシュデータ生成処理(ステップS2)の次に、作業対象箇所が三次元モデルデータ上で線データとして定義されているか否かを判断する形状判定処理を実施する(ステップS30)。
【0051】
3次元モデルデータでは、部材の形状を規定する線が線データとして定義される。そのため、端面と端面を接合するような場合は、部材の端面の外周を定義する線データが三次元モデルデータ上に定義されているため、この線データを作業対象線として作業情報データを生成することができる。一方、例えば、一方の部材の面上に他の部材を重ね合わせるような加工を行う場合、一方の部材の面上には線データが定義されず、実施の形態1で説明したマスタ点群データ(ステップS3)を用いた作業情報データ生成処理(ステップS5)を実施する必要がある。
【0052】
そして、実施の形態2にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、ステップS30の形状判定処理において、作業対象箇所が三次元モデルデータ上で線データとして定義されていない場合は、実施の形態1で説明したステップS3~S5の処理を実施する。
【0053】
一方、実施の形態2にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、ステップS30の形状判定処理において、作業対象箇所が三次元モデルデータ上で線データとして定義されている場合は、三次元メッシュデータから、プリミティブ形状を抽出して、プリミティブ形状データを生成するプリミティブ形状データ抽出処理を行う(ステップS31)。
【0054】
ここで、プリミティブ形状とは、立方体、直方体、球、円柱、円錐など、予め決定された比較的単純な形状である。このような形状の線及び面の情報を有するデータをプリミティブ形状データと称す。そして、ステップS31のプリミティブ形状データ抽出処理では、作業対象物をプリミティブ形状の組み合わせたモデルデータに置き換える。
【0055】
続いて、実施の形態2にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、ステップS4と同様に三次元モデルデータから属性データを抽出する属性データ抽出処理を行う(ステップS32)。その後、実施の形態2にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、プリミティブ形状データ上の線データに沿って作業情報データを生成する第2の作業情報データ生成処理(例えば、作業情報データ生成処理(ステップS33))を行う。
【0056】
プリミティブ形状データを用いたモデルデータの置き換えは、マスタ点群データを作成する場合に比べて計算負荷を軽くすることができる。そのため、実施の形態2にかかるモデルベース作業情報データ生成処理を用いることで、作業対象物の複雑さや、作業内容に応じて適宜情報処理システムの演算量を抑えることができる。つまり、実施の形態2にかかるモデルベース作業情報データ生成処理を用いることで、作業情報データの生成に要する時間を削減することが可能になる。
【0057】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理の別の形態について説明する。なお、実施の形態3の説明において実施の形態1で説明した事項に関しては、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0058】
図9は、実施の形態3にかかる情報処理システムの動作を説明するフローチャートである。
図10は、実施の形態3にかかる情報システムにおける作業情報データ補正処理の流れを説明するフローチャートである。
【0059】
図9及び
図10に示すように、実施の形態3にかかるモデルベース作業情報データ生成処理は、作業部センサ23を用いて作業対象物から現物点群データを取得する現物点群データ取得処理(ステップS40)と、現物点群データに基づき作業情報データを補正した補正済み作業情報データを生成する作業情報データ補正処理(ステップS41)と、を含み、作業情報データ補正処理(ステップS41)は、現物点群データとマスタ点群データとについて、予め指定した特徴箇所の位置がマスタ点群データと現物点群データとで一致するようにマスタ点群データを変換させる変換行列を算出する変換行列算出処理(ステップS50、S51)と、変換行列の逆行列を作業情報データに適用して補正済み作業情報データを生成するデータ補正処理(ステップS52)と、を行う。
【0060】
図9に示すように、実施の形態3にかかるモデルベース作業情報データ生成処理は、実施の形態1にかかるモデルベース作業情報データ生成処理にステップS40、S41の処理を追加したものである。具体的には、実施の形態3にかかるモデルベース作業情報データ生成処理は、ステップS40、41により、作業台に載置された作業対象物(現物)の状況に応じてステップS5で生成した作業情報データを補正する。
【0061】
そこで、実施の形態3にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、ステップS5の作業情報データ生成処理の後に、センサ(例えば、作業部センサ23)を用いて作業対象物から現物点群データを取得する現物点群データ取得処理を行う(ステップS40)。
【0062】
続いて、実施の形態3にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、現物点群データに基づき作業情報データを補正した補正済み作業情報データを生成する作業情報データ補正処理を行う(ステップS41)。ここで、ステップS41の作業情報データ補正処理では、複数の処理を行うため、この複数の処理を
図10を参照して説明する。
【0063】
図10に示すように、ステップS41の作業情報データ補正処理では、ステップS3で作成したマスタ点群データとステップS40で取得した現物点群データとの両方から形状的な特徴となる特徴部分を抽出する特徴部分抽出処理を行う(ステップS50)。この特徴部分は、例えば、作業対象物に設けられたノッチ、穴、特定の場所の法線が考えられる。
【0064】
続いて、ステップS41の作業情報データ補正処理では、現物点群データとマスタ点群データとについて、予め指定した特徴箇所(例えば、ステップS50で抽出した特徴部分)の位置がマスタ点群データと現物点群データとで一致するようにマスタ点群データを変換させる変換行列を算出する変換行列算出処理を行う(ステップS51)。
【0065】
続いて、ステップS41の作業情報データ補正処理では、変換行列の逆行列をステップS5で生成した作業情報データに適用して補正済み作業情報データを生成するデータ補正処理を行う(ステップS52)。このステップS52のデータ補正処理により、マスタ点群データに対する現物点群データのズレ量に対応したオフセット量によりステップS5で生成した作業情報データをオフセットした補正済み作業情報データが生成される。
【0066】
上記説明より、実施の形態3にかかるモデルベース作業情報データ生成処理では、現物がマスタ点群データで規定される形状とズレた位置或いは傾きで作業台に載置された倍においても、当該ズレに対応した補正を加えた作業情報データに基づき作業ロボット20を動作させることが可能になる。このような作業情報データを行うことで、作業ロボット20による作業の精度を向上させることが可能になる。
【0067】
なお、実施の形態3にかかるモデルベース作業情報データ生成処理の現物点群データ取得処理(ステップS40)と作業情報データ補正処理(ステップS41)は、コンピュータ10で行っても良いが、作業ロボット20の近くに置かれるコンピュータ、或いは、作業ロボット20に内蔵される制御部内のプロセッサで行っても良い。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施の形態で説明した特徴を適宜組み合わせて実施することは当業者であれば容易に想到しうるものである。
【0069】
最後に、本発明の実施の形態を図面等を用いて総括する。本発明の実施の形態は、
図1~
図10に示すように、以下のように示される。
【0070】
(付記1)
作業対象物の三次元モデルデータから前記作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理(S1~S3)と、
前記作業対象物の作業対象箇所を前記マスタ点群データから抽出し、抽出した前記作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する第1の作業情報データ生成処理(S5)と、
を行うように構成された少なくとも1つの演算装置を備える、情報処理システム。
【0071】
(付記2)
前記第1の作業情報データ生成処理(S5)は、
前記マスタ点群データから作業対象線が設定される母材面を抽出する母材面抽出処理(S10、S11)と、
前記マスタ点群データ上の前記母材面の外周を規定する境界線を抽出する境界線抽出処理(S12)と、
前記境界線のうち前記作業対象線に指定される線を、近似線が連続する連続線データに変換する連続線データ変換処理(S13)と、
前記連続線データに基づきロボットアームに備え付けられたツールの移動軌跡を規定するツールパスを決定するツールパス決定処理(S14)と、
を含む、付記1に記載の情報処理システム。
【0072】
(付記3)
前記連続線データに含まれる近似線毎の端点を抽出する端点抽出処理(S20)と、
前記端点毎に法線を算出する法線算出処理(S22、S23)と、
前記端点毎に、前記法線をZ軸、次の端点に向かう方向をX軸、Z軸とX軸の外積をY軸として、前記Z軸、前記X軸及び前記Y軸を正規化して直交座標系データを算出する直交座標系算出処理(S24)と、
前記端点毎に算出された前記直交座標系データを前記連続線データの始点から端点に向かって順につなぎ合わせて前記作業情報データを生成するデータ生成処理(S27)と、
を有する、付記2に記載の情報処理システム。
【0073】
(付記4)
前記作業対象箇所の位置情報は、前記三次元モデルデータに含まれる属性データにより定義される、付記3に記載の情報処理システム。
【0074】
(付記5)
前記作業対象物の三次元モデルデータを取得して、前記作業対象物の三次元メッシュデータを生成するデータ変換処理(S1、S2)と、
前記三次元メッシュデータ上に前記作業対象箇所が前記三次元モデルデータ上で線データとして定義されているか否かを判定する形状判定処理(S30)と、
前記形状判定処理において、前記作業対象箇所が前記三次元モデルデータ上で線データとして定義されている場合に、前記三次元メッシュデータから、プリミティブ形状を抽出して、プリミティブ形状データを生成するプリミティブ形状データ抽出処理(S31)と、
前記プリミティブ形状データ上の前記線データに沿って前記作業情報データを生成する第2の作業情報データ生成処理(S32、S33)と、を含み、
前記形状判定処理(S30)において、前記作業対象箇所が前記三次元モデルデータ上で線データとして定義されている場合に、前記マスタ点群データ生成処理(S3)と、前記第1の作業情報データ生成処理(S5)と、を実施する、付記1乃至4のいずれか1つに記載の情報処理システム。
【0075】
(付記6)
センサを用いて前記作業対象物から現物点群データを取得する現物点群データ取得処理(S40)と、
前記現物点群データに基づき前記作業情報データを補正した補正済み作業情報データを生成する作業情報データ補正処理(S41)と、を含み、
前記作業情報データ補正処理(S41)は、
前記現物点群データと前記マスタ点群データとについて、予め指定した特徴箇所の位置が前記マスタ点群データと前記現物点群データとで一致するように前記マスタ点群データを変換させる変換行列を算出する変換行列算出処理(S50、S51)と、
前記変換行列の逆行列を前記作業情報データに適用して前記補正済み作業情報データを生成するデータ補正処理(S52)と、
を行う、付記1乃至5のいずれか1つに記載の情報処理システム。
【0076】
(付記7)
作業対象物の三次元モデルデータから前記作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成するマスタ点群データ生成処理(S1~S3)と、
前記作業対象物の作業対象箇所を前記マスタ点群データから抽出し、抽出した前記作業対象箇所に対して作業を行う作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する第1の作業情報データ生成処理(S5)と、
を演算装置に実行させる、情報処理プログラム。
【0077】
(付記8)
コンピュータを用いて三次元モデルデータから作業ツールの動作経路を少なくとも含む作業情報データを生成する情報処理方法であって、
作業対象物の前記三次元モデルデータから前記作業対象物の表面形状を点群にて定義したマスタ点群データを生成し(S1~S3)、
前記作業対象物の作業対象箇所を前記マスタ点群データから抽出し、抽出した前記作業対象箇所に対応した前記作業情報データを生成する(S5)、
情報処理方法。
【符号の説明】
【0078】
1 作業ロボットシステム
10 コンピュータ
20 作業ロボット
21 ロボットアーム
22 作業ツール
23 作業部センサ
30 母材
31 非溶接部材
WL 溶接対象線