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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021130
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】通気部材
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/16 20060101AFI20250205BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
E04D13/16 A
E04D13/16 E
E04B1/70 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124867
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000230607
【氏名又は名称】日本化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】染谷 聖悟
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001FA16
2E001FA19
2E001NA07
2E001ND21
2E001ND25
2E001ND26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外気側から当たる風圧を軽減して、雨水を確実に滴下させて、排水することができる通気部材を提供する。
【解決手段】本発明の通気部材は、屋根の野地板の縁部に取り付けられ、外気と建物内部を連通する通気経路を形成する通気部材であって、第1開口を有する第1縦片と、第2開口を有する第2縦片と、前記通気経路の風圧力を低減させる多孔質ブロックと、前記第1縦片と前記第2縦片を覆い、記第1縦片の前記第1開口に前記外気側から空気を取り入れる外気流入口を有する外郭と、前記外殻に覆われ、前記外気流入口と前記第1開口との間に形成した流入空間と、前記建物側で前記第2開口と対向し、下方の前記外郭との間に前記建物内部に連通する通気口を形成するように配置される止水板と、を有し、前記通気経路は、前記外気流入口から前記流入空間、前記第1開口、前記多孔質ブロック、前記第2開口を介して、前記通気口に至ることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の野地板の縁部に取り付けられ、外気と建物内部を連通する通気経路を形成する通気部材であって、
第1開口を有する第1縦片と、
前記第1縦片に距離を置いて並行して設けられ、第2開口を有する第2縦片と、
前記第1縦片と前記第2縦片の間で、前記第1開口と前記第2開口の直接の連通を遮るように配置される、通気性を有するとともに前記通気経路の風圧力を低減させる多孔質ブロックと、
前記第1縦片と前記第2縦片を覆い、記第1縦片の前記第1開口に前記外気側から空気を取り入れる外気流入口を有する外郭と、
前記外殻に覆われ、前記外気流入口と前記第1開口との間に形成した流入空間と、
前記建物側で前記第2開口と対向し、下方の前記外郭との間に前記建物内部に連通する通気口を形成するように配置される止水板と、を有し、
前記通気経路は、前記外気流入口から前記流入空間、前記第1開口、前記多孔質ブロック、前記第2開口を介して、前記通気口に至ることを特徴とする通気部材。
【請求項2】
請求項1記載の通気部材であって、
前記外郭は、前記外気流入口を有して、前記第1開口との間に前記流入空間を形成する第1外郭部と、前記第2開口を外気と区画し、前記第2縦片と前記止水板とともに通気空間を形成する第2外郭部とを有することを特徴とする。
【請求項3】
請求項1記載の通気部材であって、
前記第1縦片と前記第2縦片との間において、前記多孔質ブロックの下方には隙間を形成することで、前記底面上には前記多孔質ブロックが受けた雨水が滴下する雨水の排水路を形成したことを特徴とする通気部材。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の通気部材であって、
前記通気部材は前記建物の外壁に当接する外壁当接部を有し、前記外壁当接部は、前記壁面当接部の面上に溜まった雨水を壁面から遠ざけるように水勾配を形成したことを特徴とする通気部材。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の小屋裏や壁内換気に使用する通気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物外観のデザイン性から、軒を出さない設計を行う場合がある。また、太陽光発電用パネルの取付け需要もあり、単一の屋根面から構成される、いわゆる片流れ屋根を持つ建物も人気を博している。
【0003】
軒を出さない建物にあっては、鼻隠しや破風、軒天部を省き、外壁と屋根部とは直に接続する設計とすれば、意匠性が向上し、また部材削減、施工の簡略化を図ることができ、これらの点で好適である。
【0004】
このような構造を採る場合、軒天を設け、軒天部分から通気を図る場合と異なり、壁の防水シート上端より上方に通気口が配置されることになるが、強風時、この通気口から室内への漏水を防止するため、通気部材には高い防水性が求められる。
【0005】
一方、屋根先端は、軒先、けらば、片流れ頂部などに生じることとなるが、どの部位にも同一の通気部材を設置できれば、部材統一、施工統一を図ることができ好適である。ただ、片流れ屋根の場合には、片流れ頂部側から雨水が浸入すると、この雨水が勾配になり、野地板を伝い、室内側へ漏水する懸念があり、いっそうの防水性が求められることとなる。
【0006】
このような、軒無し設置構造に対応する通気部材には、次のような従来技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-131893号公報
【特許文献2】特開2020-33764号公報
【0008】
特許文献1及び特許文献2に開示される見切部材は、いずれも軒先正面に配置され、外気と小屋裏空間あるいは壁裏空間とを連通する通気経路を有する。
【0009】
特許文献1の外気側の野外側開口(41)も、特許文献2の空気流入口(37)も、それぞれ縦片部(59)及び邪魔版(35)がこれらと対向する位置に配置され、外気側から雨水が吹き込んだ時に、その雨水をこれら縦片部(59)や邪魔版(35)が止水版として機能し、雨水を小屋裏空間や壁裏空間に侵入させない、防水性の高い通気部材としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この縦片部(59)や邪魔版(35)で受けた雨水は、下方の底面に溜まることとなり、この溜まった雨水は壁内に漏れだす懸念があり、ここまでに至る水の侵入を防止することが望ましい。また、自然状況下では、激しい強風になることもあり得、溜まった雨水が吸い上げられることも懸念される。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、意匠性の向上や太陽光発電に配慮した建物の設計に対応しつつ、施工性能を改善した高い防水性を有する通気部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する片流れ屋根の通気部材は、屋根の野地板の縁部に取り付けられ、外気と建物内部を連通する通気経路を形成する通気部材であって、第1開口を有する第1縦片と、前記第1縦片に距離を置いて並行して設けられ、第2開口を有する第2縦片と、前記第1開口と前記第2開口の直接の連通を遮るように前記第1縦片と前記第2縦片の間に配置される、通気性を有するとともに前記通気経路の風圧力を低減させる多孔質ブロックと、前記第1縦片と前記第2縦片を覆い、記第1縦片の前記第1開口に前記外気側から空気を取り入れる外気流入口を有する外郭と、前記外殻に覆われ、前記外気流入口と前記第1開口との間に形成した流入空間と、前記建物側で前記第2開口と対向し、下方の前記外郭との間に前記建物内部に連通する通気口を形成するように配置される止水板と、を有し、前記通気経路は、前記外気流入口から前記流入空間、前記第1開口、前記多孔質ブロック、前記第2開口を介して、前記通気口に至ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、まず第1開口を囲うように設けられた流入空間により、強風雨時に外部側の外気を減圧せしめ、さらに、第1開口及び第2開口との間に設けられた多孔質ブロックと、第2開口に対向する止水板とを設けることで、さらに建物内部に流入する外気圧力を減圧させることができる。このため、外気からの通気口を通って、建物内部に流れ込む雨水を制御することができ、高い防水性を有する通気部材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態にかかる通気部材を、片流れ屋根に設置した状態の断面図である。
図2】同実施形態の通気部材を棟頂部に設置した通気部材の断面図である。
図3図2に示す通気部材の斜視図である。
図4】同実施形態の通気部材を軒先部に設置した状態の拡大断面図である。
図5】同実施形態の通気部材をけらば部に設置した拡大断面図である。
図6】同実施形態の通気部材の分解斜視図を示し、(a)は通気部材を構成する第1部材の斜視図であり、(b)は同第2部材の斜視図であり、(c)は同第3部材の斜視図である。
図7図6に示す通気部材を構成する各部材の組み立て方法を示す説明図である。
図8】本発明の第2実施形態にかかる通気部材の断面図である。
図9】本発明の第3実施形態にかかる通気部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至図5を用いて、本発明の第1実施形態の通気部材を片流れ屋根に使用した場合の具体的構造を説明する。なお、本発明の通気部材Aは、軒を出さない建物の屋根に設置可能であり、片流れ屋根、切妻屋根、寄棟屋根等屋根の種類を問わずに使用できるが、以下に示す実施形態においては片流れ屋根に取り付けた屋根構造を説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の通気部材Aは、屋根50は傾斜の上縁にあたる棟頂部50Aと、傾斜の下縁にあたる軒先部50Bのそれぞれ設置されるものである。図5で後述するように、本実施形態の通気部材Aは、屋根50の傾斜した側縁であるけらば部50Cにも取り付けることができ、屋根50の四方の縁を囲うように取り付けられている。
【0017】
屋根50は、野地板51を、これを支える垂木60を、桁材57を介して固定し、この際、野地板51は軒頂部50Aより軒先部50Bを低くすることで一方向に傾斜させている。そして、通気部材Aは、屋根50の野地板51と、胴縁54の外側に固定された外壁55の間にはめ込むことで建物の外側と内側を遮断し、後述する通気部材Aの換気構造によって、外気と建物の小屋裏空間71と壁裏空間72とを通気する構造となっている。
【0018】
(棟頂部50Aに取り付けられた通気部材A)
図2及び図3に、通気部材Aを片流れ屋根の棟頂部50Aに固定した状態を説明する。通気部材Aは、スチール、ステンレス、アルミなどの金属や、樹脂よりなる長尺材であって、後述するように、外装部材1、内装部材2,止水部材3の3つの部材を組み合わせて形成されている。
【0019】
通気部材Aの外装材たる外装部材1は通気部材Aの外殻を形成し、野地板51の上面に載せる上辺部11と、野地板51の端面を覆うように下方に延びる下垂部12と、さらに下垂部12下端から上辺部11と横方向に延びる下辺部13とを有する。また、外装部材1は、下辺部13に対して斜め上方に屈折して外壁55の上端に位置する傾斜辺部14を形成しており、この傾斜辺部14の縁部は内側に折り返されて返し部15が形成されている。
【0020】
通気部材Aの外装部材1の内側には別部材となる内装部材2がはめ込まれる。この内装部材2は外装部材1の下垂部12の裏面に面接して野地板51の端面を覆う下垂部21と、下垂部21から外装部材1の内側に屈折し、野地板51の下面に相対するように横に延びる第1横片部22と、横片部22の端部から下方に垂下する第1縦片たる第1縦片部23と、第1縦片部23から屈折し、第1横片部22と並行する底面部24と、底面部24から第1縦片部23と略平行に立ち上がる第2縦片たる第2縦片部25と、さらに第2縦片部25から前記第1横片部22の延長平面上に一致する第2横片部26とをから構成されている。
【0021】
ここで、第1縦片部23と底面部24と第2縦片部25は、一枚の金属板を折り曲げた断面U字形状を形成しており、第1縦片部23と第2縦片部25との間には、その上方に後述する多孔質ブロック4がはめ込まれて、多孔質ブロック4と底面部24との間には隙間Rが形成され、ここに水密な第1排水路W1が形成される。
【0022】
また、通気部材Aは、外装部材1と内装部材2に加えて、さらに別部材である止水部材3を有する。止水部材3は、内装部材2の第1横片部22と第2横片部26の上面に、第1縦片部23及び第2縦片部25の間を跨いで架け渡され、野地板51の裏面に相対する天面部31と、天面部31から下方に垂直に屈折し、第2縦片部25と所定距離を置いて対向する止水板たる止水板部32とから構成される。
【0023】
この止水板部32と第2縦片部25との間には、さらに外装部材1の下辺部13とを含めて囲われることによって(これらが第2外殻部となる)通気空間S2が形成されるが、この通気空間S2は先に説明した流入空間S1と同様に、外気から流入する風圧を減圧する作用効果を有する。この部位においても、建物内部へ侵入する雨水の勢いを弱めることができる。
【0024】
この止水板部32の下端は、外装部材1の下辺部13から離れて位置し、その下方に通気口Hが形成される。また、この止水板部32の下方には、外装部材1の下辺部13と傾斜辺部14との屈曲部14a上に第2排水部W2が形成される。
【0025】
傾斜辺部14の下面と外壁55の上端との間は防水充填剤56(場合によってはモルタル)を充填し、または、図示しない防水シートを配置することで、建物の内側に雨水が侵入しない構造としている。また、止水板部32の下方には、下辺部13の上面に加熱膨張剤5が取り付けられている。隣家の火災時、熱風が通気部材A内に流入した際には、この加熱膨張剤5が膨張して通気口Hを塞ぎ、熱気の小屋裏空間71への侵入を遅らせることができる。
【0026】
なお、棟頂部50Aに取り付けられた通気部材Aはさらにその外側に、屋根の雨仕舞いのための断面V字状の棟頂部カバー部材53が取り付けられている。この棟頂部カバー部材53は、野地板覆い部53aと破風覆い部53bを屈折して形成した長尺部材であって、野地板覆い部53aを、桟部材52を介して野地板51に取り付けることで固定しており、破風覆い部53bは通気部材Aの外気スリット13Sの下方まで延長されて、返し部53cが形成されることにより、雨水が直接、外気スリット13Sに吹き込まないようにしている。
(棟板金の形状が)
【0027】
(通気経路Fの構成)
次に、通気部材Aの通気経路Fについて説明する。外装部材1の下辺部13には、外気流入口ENたる外気スリット13Sが開口しており、この上部には、外装部材1の下辺部13と内装部材2の第1縦片部23とにより仕切られた流入空間S1が形成される(これら流入空間S1を形成する部材が第1外殻部となる)。
【0028】
ここで、流入空間S1は、第1スリット23Sに広がった所定容積を有する空間となるため、暴風雨時に強い風が外気スリット13Sから流入しても、流入空間S1が風圧を減圧し、それに伴う雨水が強い圧力でスリット23S内に運ばれてしまうことを防ぐことができる。
【0029】
特に、この流入空間S1内では、第1縦片部23には第1開口たる第1スリット23Sが外気スリット13Sの開口方向に対して直行する方向に開口しているが、この流入空間S1で流入した外気は屈曲して進行し、風圧が直接、第1スリット13Sに当たることはない。さらに、第1縦片部23に間隔をおいて立設している第2縦片部25にも、第2開口たる第2スリット25Sを形成している。
【0030】
ここで、多孔質ブロック4は、例えば、通常のウレタンフォームを特殊処理して発泡膜を除去し、通気性、水切れ性に優れたウレタンフォームからなる株式会社ブリヂストン製の「エバーライトSF(商品名)」等のフィルタ材となる長尺状の部材であり、その内部には多数の連続気泡を有しているために通気性を有する。そして、多孔質ブロック4は第1縦片部23と第2縦片部25の距離と略同じ幅を有し、上述したように、第1縦片部23と第2縦片部25が多孔質ブロック4を挟持することで、前記第1スリット23Sと第2スリット25Sを覆って塞ぎながら、この第1スリット23Sと第2スリット25S間に通気性を確保する構造となっている。
【0031】
また、第2スリット25Sに対面する止水板部32の下方には、通気隙間Hが形成されており、さらに、外装部材1の傾斜辺部14及び返し部15と、止水板部32との間には空間が形成されて、建物側への外気流出口EXが形成される。
【0032】
このため、通気部材Aには、、外気側から外気スリット13S(外気流入口EN)、流入空間S1、第1スリット23S、多孔質ブロック4、第2スリット25S、通気隙間H、建物側への外気流出口EXに至る通気経路Fが形成される。なお、建物の内部に流入する外気は、小屋裏空間71への第1通気経路F1と壁裏空間72への第2通気経路F2とに分岐し、両空間を換気する。なお、第1通気経路F1は壁裏空間72の内装側に張設される防水シート80の上方を通るように形成される。
【0033】
(排水路W1、W2の構成)
通気経路Fに沿って、外気から雨水が風圧を伴って侵入した場合、上述のように多孔質ブロック4が風圧を軽減し、かつ、雨水を吸収する。そして、多孔質ブロック4の連続気泡に溜まった雨水は滴下し、第1排水路W1に溜まることとなる。
【0034】
ここで、屋根50の棟頂部50Aに取り付けられた通気部材Aは、内装部材2の底面部24が第2縦片部25側(建物側)で低くなるように傾いているため水は第2縦片部角部25aの内側に溜まるが、第1縦片部23、底面部24、第2縦片部25は一枚の金属板を折り曲げ加工して形成した場合には、ここに形成される第1排水路W1は水密性が確保され、通気部材Aから漏れ出ることなく排水される。
【0035】
また、長時間、暴風雨にさらされる厳しい自然条件になった場合、外気からの雨水が、後述する第1スリット23S、第2スリット25Sを通過することもあり得るが、雨水は第2スリット25Sに対向する止水板部32の表面に付着し、下端から下方に滴下する。そして、止水版部32から滴下する雨水は第2排水路W2上に溜まるが、同様に傾いた通気部材Aでは、第2排水路W2においても、外装部材1の下辺部13は傾斜辺部14側(建物側)が低くなるように傾斜するため、その雨水は下辺部13と傾斜辺部14との屈曲部14a側に溜まることになる。
【0036】
この際、第2排水路W2上に溜まった雨水が通気経路Fを吹き抜ける風圧で、建物側に吹き上げられても、傾斜辺部14の傾斜と、その先端に形成される返し15とにより、雨水の建物側への侵入を阻止することができる。また、傾斜辺部14によって、外壁55の外側に雨水を留めることができ、この雨水の外壁55内への侵入を防止することができる。
【0037】
(軒先部50Bに取り付けられた通気部材A)
図4に基づいて、通気部材Aを屋根50の軒先部50Bに取り付ける構造を説明する。なお、構造については同じ符号を付けて説明を省略する。
【0038】
軒先部50Bに取り付けられた通気部材Aは、屋根の雨仕舞いのための断面T字型の縁部カバー部材58が外側に取り付けられている。縁部カバー部材58は、野地板覆い部58aと破風覆い部58bを屈折させた長尺部材であって、棟頂部カバー53と同じように、破風覆い部58bは通気部材Aの外気スリット13Sの下方まで延長されて、返し部58cが形成されることにより、雨水が直接、外気スリット13Sに吹き込まないようにしている。
【0039】
また、縁部カバー部材58は、野地板覆い部58aが建物の外側に張り出すように延長して、水切部58dが形成されており、屋根面から伝い落ちる雨水が外気スリット13Sに回り込まないようにしている。なお、水切部58の縁から落ちる雨水は、図示しない樋が受けて、これを排水する。
【0040】
軒先部50Bに取付けられた通気部材Aの傾斜は、棟頂部50Aに取り付けられた通気部材Aの傾斜と反対になっているため、第1排水路W1に溜まった雨水は、第1縦片部隅部23aの内側に偏って溜まることになる。また、第2排水路W2に溜まった雨水は、第2縦片部隅部25aの外側に偏って溜まることとなる。
【0041】
なお、この軒先部50Bにおいて形成される、小屋裏空間71への第1通気経路F1も、棟頂部50Aに形成される第1通気経路F1と同様に、壁裏空間72の内装側に張設される防水シート80の上方を通るように形成される。
【0042】
(けらば部50Cに取り付けられた通気部材A)
図5に基づいて、通気部材Aを屋根50のけらば部50Cに取り付ける構造を説明する。なお、構造については同じ符号を付けて説明を省略する。けらば部50Bに取り付けられた通気部材Aは、その上端側で棟頂部50Aに取り付けられた通気部材Aと、その下端部側で軒先部50Bと、図示しないジョイント等を用いて屋根50の各コーナーで連結され、排水路W1、W2も連通している。
【0043】
図5は屋根50のけらば部の端面であるため、図に現れないが、通気部材A、野地板51、野地板51を支持する垂木59、さらに縁部カバー部材58には図面前後方向に傾斜している。従って、通気部材Aの第1排水路W1及び第2排水路W2も前後方向に傾斜しているため、そこに溜まる雨水は、低い方向、すなわち、屋根50の軒先部50B方向に流れ、図示しない排水構造によって、下方から排水される。
【0044】
なお、ここで垂木59の一部は、上面に間欠部59aが所定間隔で形成され、屋根裏空間72の内装側に張設される防水シート80の上を超えて、小屋裏空間へ連通する第1通気経路F1が形成される。
【0045】
(通気部材Aの部材構成)
図6及び図7を用いて、通気部材Aの部材構成を説明する。上述したように、通気部材Aは、外装部材1、内装部材2、止水部材3の、それぞれ長尺の3の金属部材から構成される。
【0046】
図6(a)は、止水部材3の斜視図を示す。止水部材3は、矩形の長尺な金属板を折り曲げることで製作されており、横方向に延びる天面部31と、天面部31から略直角に屈折する止水板部32とから構成される。
【0047】
図6(b)は、内装部材2の斜視図を示す。内装部材2も矩形の長尺な金属板を折り曲げることで製作されており、縦方向に延びる下垂部21と、下垂部21から略水平に屈折する第1横片部22と、第1横片部22の端部から直角に曲がって下方向に延びる第1縦片部23と、第1縦片部23から屈折して水平となる底面部24と、底面部24から垂直に立ち上がる第2縦片部25と、さらに第2縦片部25から水平に曲がり、前記第1横片部22と同一平面に位置する第2横片部26とをから構成されている。
【0048】
そして、第1縦片部23と第2縦片部25のそれぞれ上部には、複数の縦穴を連続させた第1スリット23S、第2スリット25Sが形成されている。また、第1縦片部23と底面部24と第2縦片部25はは、断面U字形状となっている。また、下垂部21には、所定間隔でネジ穴27が開口してあり、野地板51(図1参照)にネジや釘を用いて、通気部材Aを固定するために用いられる。
【0049】
そして、図6(c)は、外装部材1の斜視図を示す。外装部材1も同様に、矩形の長尺な金属板を折り曲げることで製作されており、横方向に伸びる上辺部11と、上辺部11から下方に屈折する下垂部12と、下垂部12下端から上辺部11と並行して延びる下辺部13と、さらに、下辺部13から斜め上方に屈折する傾斜辺部14とから構成されており、この傾斜辺部14の縁部は内側に折り返される返し部15が形成されている。
【0050】
下辺部13の、下垂部12との屈曲部側には多数の横穴が連続する外気スリット13Sが形成されており、上述したように、外装部材1と内装部材2とを重ねた状態では、第1縦片部23、下辺部13、下垂部12とにより囲まれた、外気スリット13Sと第1スリット23Sとが直行する関係で開口する流入空間S1(図2参照)が形成される。なお、下垂部12には、前述の内装部材2のネジ穴27と一致する位置に、ネジ穴17が開口してある。
【0051】
次に、図7を用いて、外装部材1、内装部材2、止水部材3の組み立て方法を説明する。止水部材3の天面部31の裏面には両面テープ6Aが貼着されており、この両面テープ6Aの所定位置に多孔質ブロック4の天面が固定されている。
【0052】
この状態で、止水部材3を内装部材2に取り付けることで、多孔質ブロック4は内装部材2の第1縦片部23と第2縦片部25との間に嵌め込まれるとともに、止水部材3の天面部31の裏面に貼着した両面テープ6Aが内装部材2の第1横片部22と第2横片部26の天面に接着して、内装部材2と止水部材3を固定する。
【0053】
次に、止水部材3を取り付けた内装部材2を外装部材1に取り付けるが、内装部材2の底面部24の裏面と同下垂部21の外面に、それぞれ両面テープ6B,6Cを貼着している。そして、両面テープ6B,6Cを外装部材1の下垂部12内面と、同下辺部13の天面に接着することで、内装部材2を外装部材1に固定する。以上の工程により、図2図4図5にそれぞれ示した通気部材Aを構成することができる。
【0054】
以上説明した通り、本実施形態の通気部材Aは、共通の部材として、屋根50の棟頂部50A、軒先部50B、そして両側面のけらば部50Cに取り付けることができ、屋根50の施工において複数種類の通気部材を用意する必要がなく、施工現場の利便性を上げるとともに施工コストを抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態の通気部材Aによれば、外気から建物の小屋裏空間71や壁裏空間72に至る通気経路Fの途中に多孔質ブロック4を配置することで、強い風雨の際に、その風圧を減じるとともに、雨水を吸収し、小屋裏空間71や壁裏空間72への雨水の侵入を防止することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の通気部材Aでは、雨水を除去する多孔質ブロック4と止水板部32の下方に、それぞれ第1排水路W1、第2排水路W2を形成したので、それぞれの雨水を阻止する部材から滴下する雨水を水密状態を保った状態で排水することができる。
【0057】
(第2実施形態)
多孔質ブロックの形状を変更した、本願発明の第2実施形態を、図8を用いて説明する。上記実施形態では、多孔質ブロック4の幅を内装部材2の第1縦片部23と第2縦片部25との間隔と略同じとしたが、図8に示す第2実施形態の通気部材Bは、多孔質ブロック104の幅を第1縦片部23と第2縦片部25との間隔より小さくし、多孔質ブロック104と、第1スリット23S及び第2スリット25Sとの間に隙間ができる構造としている。
【0058】
かかる構造によっても、第1スリット23Sから第2スリット25Sに通過する風圧力を低減することができるとともに、一部が多孔質ブロック104下の隙間Rを通過するクランク状の迂回通気経路FXとなり、多孔質ブロック104の連続気泡により制限される通気経路Fの通気量を増やすことができる。
【0059】
この際、第1スリット23Sから侵入する雨水は、多孔質ブロック104の表面にぶつかるが、直接、第2スリット25Sへ通過することが無く、かつ、迂回通気経路FXの流れにより、下方、すなわち第1排水路W1側に雨水を誘導することができるため、この働きによっても雨水の、小屋裏空間71や壁裏空間72への通過を阻止することができる。
【0060】
(第3実施形態)
多孔質ブロックの形状を変更した、本願発明の第3実施形態を、図9を用いて説明する。第1実施形態と同一の構造は、同じ符号を付けて説明を省略する。
【0061】
本実施形態の通気部材Cは、多孔質ブロック114の高さを、第1縦片部23及び第2縦片部25と同じ高さとして、両者間の空間を多孔質ブロック114で埋めた構成を有する。
【0062】
すなわち、本実施形態の通気部材Cにおいては、第1縦片部23と第2縦片部25との間には排水路が形成されず、排水路Wは止水板31の下方の1つだけが形成される。
【0063】
多孔質ブロック114が受け止めた雨水はその内部に留まり、許容量を超えた場合のみ、第2スリット25Sから止水版31へ吹き付けられ、排水路W上に滴下して排水される。なお、多孔質ブロック114内に捉えられた雨水は、通気経路Fに空気が流れることで第1スリット23S、第2スリット25Sから蒸発して多孔質ブロック114は自然乾燥する。
【0064】
(他のバリエーション)
本願発明の第1実施形態乃至第3実施形態の通気部材A,B,3の他に、下記のような多様な構成を採用できる。
【0065】
通気部材A、Bでは、それぞれを外装部材1、内装部材2、止水部材3の3つ部材から構成したが、例えば、内装部材の一部に止水板を形成して、2つの部材から構成することも可能である。
【0066】
また、これら通気部材A、Bでは、第1排水路W1、第2排水路W2を別に形成したが、両者間を仕切る第2縦片部25に孔を開口して、両排水路の水を一方に集めて排水する構造としてもよい。
【0067】
さらに、流入空間S1に開口する外気スリット13S(外気流入口)の開口位置は任意に設定でき、外装部材の片に設けることでもよい。
【0068】
また、本願発明の通気部材を覆うカバー部材は、上述したカバー部材53,58の形状に限定されることなく、建物の形状に合わせて、多様な形状を選択できる。
【符号の説明】
【0069】
A,B,C…通気部材
1…外装部材(外殻)
11…上辺部
12…下垂部
13…下辺部
13A…第1外殻部
13B…第2外殻部
13S…外気スリット(外気流入口EN)
14…(水勾配を形成した)傾斜辺部
15…返し部
2…内装部材
21…下垂部
22…第1横片部
23…第1縦片部(第1縦片)
23S…第1スリット(第1開口)
24…底面部
25…第2縦片部(第2縦片)
25S…第2スリット(第2開口)
26…第2横片部
3…止水部材
31…天面部
32…止水板部(止水板)
4,104,114…多孔質ブロック
F…通気経路
F1…(小屋裏空間への)第1通気経路
F2…(壁裏空間への)第2通気経路
EN…外気流入口
EX…外気流出口
S1…流入空間
S2…通気空間
H…通気隙間
W…排水路
W1…第1排水路
W2…第2排水路
50…(片流れ)屋根
50A…棟頂部
50B…軒先部
50C…けらば部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9