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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021144
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20250205BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20250205BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/36
A61K8/25
A61K8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124888
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】土居 亮介
(72)【発明者】
【氏名】奥 里奈
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB171
4C083AB172
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC262
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC472
4C083AC532
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC02
4C083DD33
4C083DD47
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乳液のような高い浸透感を有しつつ、肌に塗布する際にクリームのようなコク感を有し、なおかつ、塗布後の肌にしっとりした感触を付与するという、従来にない本発明に特有の優れた特性を有する水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】本発明の水中油型乳化化粧料は、
(A)高級脂肪酸、
(B)分子量250万以上の水溶性多糖類、
(C)シリカ、及び
(D)高級アルコール
を含み、
(D)高級アルコールの配合量が水中油型乳化化粧料全量に対して0.95質量%未満であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)高級脂肪酸、
(B)分子量250万以上の水溶性多糖類、
(C)シリカ、及び
(D)高級アルコール
を含み、
(D)高級アルコールの配合量が水中油型乳化化粧料全量に対して0.95質量%未満である、
水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
(A)高級脂肪酸が炭素数16~22の高級脂肪酸である、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
(D)高級アルコールが炭素数16~22の高級アルコールである、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
(B)水溶性多糖類がサクシノグリカン及びキサンタンガムのいずれか一方又は両方である、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
(C)シリカが吸油量40mL/100g以上のシリカである、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項6】
(E)少なくとも1つのカルボキシル基又はその塩を有する水溶性成分をさらに含む、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項7】
ボトル容器又はパウチ容器で提供される、請求項1記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関する。より詳しくは、乳液のような高い浸透感を有しつつ、肌に塗布する際にクリームのようなコク感(濃厚な使用感触又は質感)を有し、なおかつ、塗布後の肌にしっとりした感触を付与する水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケア化粧料において、その使い心地は重要な要素である。特に乳液は、塗布の際になめらかで肌にのばしやすく、肌への浸透力が高く、肌触りがべたつかず、さらっとしているといった特徴を有する一方、濃厚な使用感触又は質感を併せ持つことを期待する消費者も多い。すなわち、乳液としてののびの軽さや優れた浸透感を保持しつつ、クリームのような塗布中のコク感や塗布後のしっとりさを持ち合わせた水中油型乳化化粧料の実現が求められている。
【0003】
そこで、例えば一定量以上の高級アルコールを配合することにより乳液の粘度を高め、コク感やしっとりさを向上させることが考えられる。しかし、高級アルコールを多く配合すると肌に塗布する際にのびが重くなり、乳液の持つ浸透力を損なう傾向がある。
【0004】
また、乳液等のスキンケア化粧料は、中栓ボトル、ディスペンサー、パウチなどの容器で消費者に提供されることが多く、容器からの化粧料の出方や製剤の安定性を担保するためには、化粧料を適切な粘度にコントロールすることが重要である。ところが一定量以上の高級アルコールを配合して粘度を高めた化粧料は高温での安定性は良いものの、低温においては流動性を失い、容器から取り出しにくくなり取り扱いが困難になることがある。
【0005】
水中油型乳化化粧料にコク感を付与する別の試みとして、アクリルアミド系増粘剤及びヒドロキシプロピルメチルセルロースという2種の増粘剤の組合せを配合することも提案されている(特許文献1)。しかしながら、コク感の改善は依然として不十分であるほか、浸透感が損なわれてしまうことが確認されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-89741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、乳液のような高い浸透感を有しつつ、肌に塗布する際にクリームのようなコク感を有し、なおかつ、塗布後の肌にしっとりした感触を付与するという、従来にない本発明に特有の優れた特性を有する水中油型乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、高級脂肪酸、特定の分子量の水溶性多糖類、シリカ、及び、所定量の高級アルコールを配合することにより、目的とする浸透感、コク感、しっとりさを有し、さらに低温での流動性、高温での安定性にも優れた水中油型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)高級脂肪酸、
(B)分子量250万以上の水溶性多糖類、
(C)シリカ、及び
(D)高級アルコール
を含み、
(D)高級アルコールの配合量が水中油型乳化化粧料全量に対して0.95質量%未満である、
水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水中油型乳化化粧料は、上記構成とすることにより、乳液のような高い浸透感を有しつつ、肌に塗布する際にクリームのようなコク感を有し、なおかつ、塗布後の肌にしっとりした感触を付与することができる。
また、低温での流動性及び高温での安定性にも優れているため、保管時の製剤安定性や容器からの取り出しやすさが温度の影響を受けにくいといった効果も有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水中油型乳化化粧料は、(A)高級脂肪酸、(B)分子量250万以上の水溶性多糖類、(C)シリカ、及び(D)高級アルコールを含み、(D)高級アルコールを特定の量で含むことを特徴とする。以下、本発明の水中油型乳化化粧料について詳述する。
【0012】
<(A)高級脂肪酸>
(A)高級脂肪酸は、RCOOHという一般式で表される、化粧料に通常用いられる高級脂肪酸である。式中のRは、炭素数が16~22の直鎖または分岐鎖の飽和もしくは不飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0013】
(A)高級脂肪酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ベヘン酸、エライジン酸、リシノール酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
【0014】
(A)高級脂肪酸の配合量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、また、2.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。よって配合量範囲としては、0.1~2.0質量%、0.3~1.5質量%等が挙げられる。
【0015】
<(B)水溶性多糖類>
(B)水溶性多糖類は、多糖類またはその誘導体を基本骨格とし、分子量が250万以上の水溶性多糖類である。ここで、(B)水溶性多糖類の分子量とは重量平均分子量であり、例えば、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0016】
(B)水溶性多糖類の分子量は、250万以上であり、500万以上がより好ましく、600万以上がさらに好ましい。(B)水溶性多糖類の分子量の上限値は特に限定されないが、通常、2000万以下が好ましく、1000万以下がより好ましく、750万以下がさらに好ましい。
【0017】
(B)水溶性多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸又はその塩、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩、キサンタンガム、サクシノグリカン、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。なかでもキサンタンガム、サクシノグリカン、ジェランガム等の微生物由来の水溶性多糖類が好ましく、特に耐塩性に優れ各種薬剤と併用しても安定性等に問題を生じにくいことからキサンタンガム及びサクシノグリカンのいずれか一方又はこれらの両方を含むことが好ましい。
【0018】
(B)水溶性多糖類の好ましい市販品としては、例えば、レオザン(登録商標)(サクシノグルカン;分子量600万、ソルベイ日華株式会社)、ノムコートZZ(キサンタンガム;分子量2000万、日清オイリオグループ株式会社)等を挙げることができる。
【0019】
(B)水溶性多糖類の配合量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、また、0.50質量%以下が好ましく、0.30質量%以下がより好ましい。よって配合量範囲としては、0.01~0.50質量%、0.05~0.30質量%等が挙げられる。
【0020】
<(C)シリカ>
(C)シリカは、通常の化粧料に配合されるシリカを使用することができ、多孔質、無孔質、中空状のいずれのものも使用することができる。
【0021】
なかでも、(C)シリカは、吸油量が40ml/100g以上のものが好ましく、100ml/100g以上のものがより好ましい。吸油量が40ml/100g以上のシリカを配合することにより、コク感、浸透感、しっとりさをさらに改善することができる。
本明細書中における「吸油量」とは、JIS K5101-13-2:2004(煮あまに油法)に従って測定した数値である。具体的には、以下の方法により求めることができる。
まず、試料である球状無水ケイ酸1.5gを薬包紙に採取し、ガラス測定板に移す。次に、煮あまに油(JIS K 5101に規定するもの)をビュレットから1回に4、5滴ずつ試料に滴下し、その都度、全体をパレットナイフで充分に練り合わせる。この滴下と練り合わせを繰り返し、全体が硬いパテ状の塊となったら1滴ごとに練り合わせて、最後の1滴でパレットナイフを用いてらせん形に巻くことができる状態になったときを終点とし、以下の式にて、試料100g当たりの吸油量を算出する。
吸油量(ml/100g)=(A/W)×100
(Aは煮あまに油の滴下量(mL)、Wは試料の採取量(g)を表す)
【0022】
(C)シリカの好ましい市販品としては、例えば、サンスフェアL-51(吸油量150ml/100g、AGCエスアイテック株式会社)、サンスフェアH-52(吸油量300ml/100g、AGCエスアイテック株式会社)、BA4(吸油量40mL/100g、日揮触媒化成株式会社)等を挙げることができる。
【0023】
(C)シリカの配合量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、また、3.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。よって配合量範囲としては、0.01~3.0質量%、0.05~1.0質量%等が挙げられる。
【0024】
<(D)高級アルコール>
(D)高級アルコールは、化粧料に通常用いられる高級アルコールであり、炭素数16~22の高級アルコールであれば特に好ましい。(D)成分の好ましい例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。その中でも、直鎖非分岐であるセチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが特に好ましい。
【0025】
(D)高級アルコールの配合量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.95質量%未満であり、0.80質量%以下が好ましく、0.60質量%以下がより好ましい。(D)高級アルコールの配合量が0.95質量%以上では浸透感が悪くなる場合がある。(D)高級アルコールの配合量の下限は特に限定されないが、通常、0.10質量%以上が好ましく、0.20質量%以上がより好ましい。
【0026】
<(D)/(A)重量比>
本発明の水中油型乳化化粧料では、(A)高級脂肪酸に対する(D)高級アルコールの重量比([(D)/(A)重量比])が0.4~0.8であることが好ましく、0.5~0.7であることがより好ましい。(D)/(A)重量比がこの範囲内にあれば、高い浸透感を有しつつ、十分な粘度と安定性を付与するゲルを形成できるため好ましい。
【0027】
<任意成分>
本発明の水中油型乳化化粧料は、本発明の効果を阻害しない範囲において、上記(A)~(D)以外の成分、例えば、水性溶媒、油分、保湿剤、薬剤のほか、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0028】
水性溶媒としては、例えば、水(精製水、イオン交換水、水道水等)、低級アルコール、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0029】
油分は、特に限定されるものではなく、化粧料に広く用いられている種々の油分を配合できる。しかし、本発明においては、半固形・固形油分の割合が多すぎると化粧料の粘度が高くなって、浸透感や低温の流動性を損なう傾向があり、また、液状油分の割合が多すぎると化粧料の粘度が低くなってコク感、しっとりさ、高温安定性が不十分になる傾向がある。そのため、半固形・固形油分と液状油分の質量比([半固形・固形油分]/[液状油分])を好ましくは0.01~0.40、さらに好ましくは0.05~0.30、より好ましくは0.10~0.25の範囲となるように調整することが好ましい。
なお、本発明において半固形・固形油分と液状油分の質量比([半固形・固形油分]/[液状油分])を算出する際には、上記(D)高級アルコールも半固形・固形油分に含めるものとする。
また、油分の総量は、水中油型乳化化粧料の全量に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、また、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。よって油分の総量の範囲としては、3~25質量%、5~20質量%等が挙げられる。
【0030】
半固形・固形油分とは、室温(25℃)において半固形状又は固形状の油分である。このような油分として、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨油、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂;ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等のロウ類;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、ルナセラ等の炭化水素系ワックス;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)等の脂肪酸グリセリルエーテル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
液状油分とは、室温(25℃)において液体の油分である。このような油分として、例えば、アボカド油、月見草油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、ヒマワリ油、アーモンド油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油等の液体油脂;オクタン酸セチル、セチル2-エチルヘキサノエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、エチルラウレート、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ペンタエリスリトール、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリエチルヘキサノイン、エチルヘキサン酸セチル等のエステル油;流動パラフィン、スクワレン、プリスタン、ポリブテン、水添ポリデセン等の炭化水素油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の各種変性ポリシロキサン等のシリコーン油が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
保湿剤としては、ポリオキシアルキレン・ポリオキシエチレン共重合体ジアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、D-マンニット等が挙げられる。
【0033】
薬剤としては、化粧料に通常用いられる美白作用、肌荒れ改善作用、抗アクネ作用等を有する薬剤を幅広く配合することができる。なかでも、(E)少なくとも1つのカルボキシル基又はその塩を有する水溶性成分を配合することが好ましい。
(E)水溶性成分としては、例えば、アスコルビン酸、サリチル酸、トラネキサム酸、コウジ酸、エラグ酸、アルコキシサリチル酸、ニコチン酸アミド及びグリチルリチン酸並びにこれらの塩又は誘導体(例えば、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸エステルマグネシウム塩、L-アスコルビン酸グルコシド、2-O-エチル-L-アスコルビン酸、3-O-エチル-L-アスコルビン酸、4-メトキシサリチル酸ナトリウム塩、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、グリチルリチン酸ジカリウム及びグリチルリチン酸ステアリル等)を例示することができる。
本発明の水中油型乳化化粧料は、水溶性増粘剤のなかでも耐塩性が高い(B)水溶性多糖類によって増粘されているため、上記のような薬剤を高配合しても使用性や安定性を損ないにくい。例えば(E)水溶性成分の配合量を、水中油型乳化化粧料の全量に対して、0.01~5.00質量%、さらには0.05~3.00質量%、またさらには0.4~1.2質量%等とすることができる。
【0034】
<粘度>
本発明の水中油型乳化化粧料は、0℃においてB型粘度計で測定した粘度が15000mPa・s以下が好ましく、10000mPa・s以下がさらに好ましい。0℃における粘度が15000mPa・s以下であれば、低温でも優れた流動性を維持できる。
また、本発明の水中油型乳化化粧料は、50℃においてB型粘度計で測定した粘度が500mPa・s以上が好ましく、1500mPa・s以上がさらに好ましい。50℃における粘度が500mPa・s以上であれば、高温でも優れた安定性を維持することができる。
【0035】
<製法>
本発明の水中油型乳化化粧料は、特に限定されないが、例えば、(B)成分及び他の水性成分を含む水相パーツに、(A)成分、(D)成分及び他の油性成分を含む油分パーツ及び(C)成分を加えて常法により乳化することによって製造することができる。
【0036】
本発明の水中油型乳化化粧料は、乳液等のスキンケア化粧料として提供することが可能であり、特にボトル容器又はパウチ容器で提供するのに適している。
【実施例0037】
以下に具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例における配合量は特に断らない限り、化粧料全量に対する質量%を示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0038】
(1)低温における流動性
0℃で保存した各化粧料(サンプル)の粘度をB型粘度計(ローターNo.3)で測定した。得られた粘度から以下の評価基準をもとに、低温における流動性を評価した。
【0039】
<評価基準>
A:粘度が10000mPa・s以下
B:粘度が10000mPa・sより高く、15000mPa・s以下
C:粘度が15000mPa・sより高い
【0040】
(2)高温における安定性
50℃で保存した各化粧料(サンプル)の粘度をB型粘度計(ローターNo.3)で測定した。得られた粘度から以下の評価基準をもとに、高温における安定性を評価した。
【0041】
<評価基準>
A:粘度が1500mPa・s以上
B:粘度が500mPa・s以上、1500mPa・s未満
C:粘度が500mPa・s未満
【0042】
(3)コク感
各化粧料(サンプル)を専門パネラーが使用し、塗布中のコク感について、以下の基準で評価した。
<評価基準>
A:塗布中にとてもコク感がある
B:塗布中にコク感がある
C:塗布中にコク感があまりない
D:塗布中にコク感がない
【0043】
(4)浸透感
各化粧料(サンプル)を専門パネラーが使用し、塗布中の肌への浸透感について、以下の基準で評価した。
<評価基準>
A:塗布中にとても浸透感がある
B:塗布中に浸透感がある
C:塗布中に浸透感があまりない
D:塗布中に浸透感がない
【0044】
(5)しっとりさ
各化粧料(サンプル)を専門パネラーが使用し、塗布後のしっとりさについて、以下の基準で評価した。
<評価基準>
A:塗布中にとてもしっとりしている
B:塗布中にしっとりしている
C:塗布中にあまりしっとりしていない
D:塗布中にしっとりしていない
【0045】
[実施例1~12及び比較例1~5]
以下の表1に記載の水中油型乳化化粧料を調製し、上記の項目(1)~(5)について評価した。
【0046】
【表1A】
【0047】
【表1B】
【0048】
表1に示されるように、(A)高級脂肪酸、(B)分子量250万以上の水溶性多糖類、(C)シリカ、及び(D)高級アルコールを含み、(D)高級アルコールの配合量が水中油型乳化化粧料全量に対して0.95質量%未満である水中油型乳化化粧料は、全ての評価項目について十分な結果を示した(実施例1~12)。
一方、(A)高級脂肪酸及び(D)高級アルコールを含まない場合には、コク感、浸透感及びしっとりさが著しく劣っていた(比較例1)。
また、(B)分子量250万以上の水溶性多糖類を配合せず、代わりにキサンタンガム(分子量120万)、カルボマーおよび(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーのなかから選択して配合した場合には、いずれかの評価項目が著しく劣っていた(比較例2及び3)。
(C)シリカに代わる粉体として硫酸バリウムを配合した場合には十分なコク感や浸透感が得られなかった(比較例4)。
さらに、(D)高級アルコールは0.95質量%を超えて配合してしまうと、浸透感や低温での流動性が損なわれる結果となった(比較例5)。