IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-マニホールド 図1
  • 特開-マニホールド 図2
  • 特開-マニホールド 図3
  • 特開-マニホールド 図4
  • 特開-マニホールド 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021145
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】マニホールド
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/40 20210101AFI20250205BHJP
   F25B 41/20 20210101ALI20250205BHJP
【FI】
F25B41/40 Z
F25B41/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124890
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】間邉 崇志
(57)【要約】
【課題】複数の流路を有しつつろう付け不良を起こし難いマニホールドを提供する。
【解決手段】支持プレート20にろう付けされるマニホールド100であって、流体が流れる複数の流路Lが形成されるとともに、複数の流路Lを夫々区分する複数のリブ31を有する流路ハウジング10を備え、複数の流路L以外の部位には、空気を逃がすことが可能な空気抜け構造が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持プレートにろう付けされるマニホールドであって、
流体が流れる複数の流路が形成されるとともに、複数の前記流路を夫々区分する複数のリブを有する流路ハウジングを備え、
複数の前記流路以外の部位には、空気を逃がすことが可能な空気抜け構造が形成されているマニホールド。
【請求項2】
前記空気抜け構造は、前記流路ハウジングに形成された貫通孔、及び、対向する一対の前記リブの間に形成された連通路を含んでいる請求項1に記載のマニホールド。
【請求項3】
前記流路ハウジングには、前記流路を切り換え可能な切換弁が固定されており、
前記空気抜け構造は、前記切換弁を支持する前記リブに設けられた切欠きを含んでいる請求項1又は2に記載のマニホールド。
【請求項4】
前記連通路は、異なる温度の前記流体が夫々流れて隣接する二つの前記流路を分断している請求項2に記載のマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の空調システム等の熱管理に関するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、サブシステム内の低温の冷媒蒸気を高温の冷媒蒸気へと圧縮するコンプレッサを備える熱管理システムが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示の熱管理システムにおいて、例えばコンプレッサで圧縮された高温の冷媒蒸気が流通する高温流路と、低温の冷媒蒸気が流通する低温流路とが近接して配置されると、高温の冷媒と低温の冷媒との間で熱交換が発生してしまうおそれがある。そこで、熱管理システムでは、複数の流路が形成されるマニホールドを設けることがある。マニホールドは、例えば熱管理システムが有する支持プレートにろう付けされて固定される。ここで、「ろう付け」とは、接合する部材(母材)よりも融点の低い合金(ろう)を溶かして一種の接着剤として用い、母材自体を溶融させずに複数の部材を接合させるものである。このような「ろう付け」は、接合する部材の表面に酸化被膜が生成すると接着性が低下するため、接合面が外気に接する形状に形成され、且つ脱酸素雰囲気下で行われる。
【0004】
ただし、接合面の内部側に酸素が残存するおそれのある部材をろう付けする際には、接合面の内部の残存酸素が接合面に作用する場合があり、その場合には表面に酸化被膜が生成されてろう付け性が低下する。そのため、特許文献2に記載の技術では、接合する部材の内部に窒素ガスまたは不活性ガスを充填してから、接合する部材を接合対象の部材にろう付けする方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-255879号公報
【特許文献2】特開平10-277730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の熱管理システムのように、マニホールドに複数の流路を形成する必要がある場合には、複数の流路を夫々の流路長さが短くなるようにコンパクトに配置した際に、マニホールドにおいて外気に接しない空気溜りが形成されてしまうことがある。このような空気溜りには、特許文献2に記載された技術のように窒素ガス等を充填し難い。このため、マニホールドをろう付けする際に、接合する部材の表面に空気溜りに残存する酸素による酸化被膜が形成されてしまうと、マニホールドにおいてろう付け不良が起こる。したがって、複数の流路が形成されるマニホールドでは、接合される部材にろう付けして固定する上で改善の余地があった。
【0007】
そこで、複数の流路を有しつつろう付け不良を起こし難いマニホールドが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るマニホールドの特徴は、支持プレートにろう付けされるマニホールドであって、流体が流れる複数の流路が形成されるとともに、複数の前記流路を夫々区分する複数のリブを有する流路ハウジングを備え、複数の前記流路以外の部位には、空気を逃がすことが可能な空気抜け構造が形成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、マニホールドが複数の流路以外の部位に空気抜け構造が形成されているので、マニホールドは複数の流路の機能を維持しつつ空気溜りが形成され難い構成にできる。これにより、マニホールドは、支持プレートにろう付けする際に、窒素ガス等を充填し易くなり、空気溜りに内在する空気による酸化被膜の形成を阻害できるので、ろう付け不良を防止できる。その結果、マニホールドは、支持プレートにろう付けすることで支持プレートに安定的に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る冷媒回路を示す図である。
図2】実施形態に係る流路ハウジング及びプレート部材を示す模式図である。
図3】実施形態に係る流路ハウジングの構成を示す図である。
図4】実施形態に係るマニホールドの裏面側の形態を示す図である。
図5】比較例のマニホールドの裏面側の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るマニホールドについて、図面を参照しながら説明する。
ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0012】
〔冷媒回路〕
まず、図1を参照して、電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車等の車両に搭載される冷媒回路Cについて説明する。冷媒回路Cは、車両の室内の温度を調整する冷暖房用の冷媒F1(流体の一例)が流通する冷媒流路Lによって構成される。冷媒F1は、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等である。なお、冷媒流路Lは、車両に搭載されるマニホールド100(図2及び図3参照)によって構成される。
【0013】
図1に示すように、冷媒回路Cは、コンプレッサ1(圧縮機)、キャビンコンデンサ2(暖房用コンデンサ)、水冷コンデンサ3(凝縮器)、エバポレータ4(蒸発器)、バッテリクーラ5(蒸発器の一例)、アキュムレータ6及びバルブVを備える。コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、水冷コンデンサ3、エバポレータ4、バッテリクーラ5、アキュムレータ6及びバルブVは、冷媒流路Lを介して接続される。
【0014】
バルブVは、水冷コンデンサ3とアキュムレータ6との間に設けられる開閉弁V1(切換弁の一例)を含む。また、バルブVは、キャビンコンデンサ2と水冷コンデンサ3との間に設けられる第1膨張弁VE1及び水冷コンデンサ3とエバポレータ4との間に設けられる第2膨張弁VE2を更に含む。
【0015】
開閉弁V1は、水冷コンデンサ3とアキュムレータ6との間の冷媒F1の流れを制御(流通又は遮断)する。開閉弁V1が開いた状態にされると、冷媒F1は、コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、第1膨張弁VE1、水冷コンデンサ3、開閉弁V1、アキュムレータ6、コンプレッサ1の順に流れる。以下、コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、水冷コンデンサ3、開閉弁V1及びアキュムレータ6で構成される冷媒回路Cを「メイン回路Cm」という。
【0016】
第1膨張弁VE1及び第2膨張弁VE2は、冷媒F1を膨張させて冷媒F1の圧力を調整する。第2膨張弁VE2が開いた状態とされると、冷媒F1は、第2膨張弁VE2、エバポレータ4の順に流れた後、開閉弁V1とアキュムレータ6との間でメイン回路Cmに流入する。以下、メイン回路Cmから分岐し、第2膨張弁VE2及びエバポレータ4が設けられる冷媒回路Cを「第1分岐回路Cb1」という。例えば、車室内の温度を上昇させる際(車室の暖房運転時)、開閉弁V1は、開いた状態とされ、第2膨張弁VE2は、閉じた状態とされる。一方、車室内の温度を降下させる際(車室の冷房運転時)、開閉弁V1は、閉じた状態とされ、第2膨張弁VE2は、開いた状態とされる。
【0017】
バッテリクーラ5は、膨張弁を含み、バッテリクーラ5の膨張弁は、バッテリの温度調整時に開いた状態とされる。バッテリクーラ5の膨張弁が開いた状態とされると、冷媒F1は、バッテリクーラ5を流れた後、開閉弁V1とアキュムレータ6との間でメイン回路Cmに流入する。以下、メイン回路Cmから分岐し、バッテリクーラ5が設けられる冷媒回路Cを「第2分岐回路Cb2」という。
【0018】
コンプレッサ1は、冷媒F1を圧縮することにより、冷媒F1を高圧の気体とする。以下、コンプレッサ1によって圧縮された冷媒F1の温度を第1熱媒温度という。なお、第1熱媒温度は、例えば80度~90度である。
【0019】
コンプレッサ1で圧縮された冷媒F1は、キャビンコンデンサ2に送られ、暖房運転時に車室内の空気と熱交換(熱が奪われて降温)し、第1膨張弁VE1を経て、水冷コンデンサ3へ送られる。水冷コンデンサ3では、冷媒回路Cとは別の回路(例えば、車両に搭載される電子回路等を冷却するための冷却回路)を循環する第1熱媒F2が流通している。第1熱媒F2は、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。水冷コンデンサ3に送られた冷媒F1は、水冷コンデンサ3を流通する第1熱媒F2と熱交換(熱が奪われて降温)する。以下、水冷コンデンサ3で降温した後の冷媒F1の温度を第2熱媒温度という。なお、第2熱媒温度は、例えば60度~85度であり、水冷コンデンサ3で降温した後の冷媒F1は高圧の液体である。
【0020】
第2膨張弁VE2に送られた冷媒F1は、膨張されて液体と気体とが混合した状態(霧状)となってエバポレータ4に送られる。以下、第2膨張弁VE2で膨張された後の冷媒F1の温度を第3熱媒温度という。第3熱媒温度は、例えば15度~25度である。エバポレータ4では、冷媒F1は、外部から導入された空気と熱交換(熱を奪って昇温)して気化する。
【0021】
また、バッテリクーラ5に送られた冷媒F1は、バッテリクーラ5の膨張弁により膨張される。バッテリクーラ5には冷媒回路Cとは更に別の回路(例えば、車両に搭載されるバッテリを冷却する冷却回路)を循環する第2熱媒F3が流通している。第2熱媒F3は、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の冷媒である。バッテリクーラ5に送られた冷媒F1は、バッテリクーラ5を流通する第2熱媒F3と熱交換(熱を奪って昇温)して気化する。以下、エバポレータ4又はバッテリクーラ5で熱交換した後の冷媒F1の温度を第4熱媒温度という。なお、第4熱媒温度は、例えば15度~25度である。
【0022】
エバポレータ4で熱交換した後の冷媒F1は、アキュムレータ6に送られ、冷媒F1に含まれる液体が分離される。液体が分離された冷媒F1は、コンプレッサ1に戻る。また、バッテリクーラ5で熱交換した後の冷媒F1も、アキュムレータ6に送られ、冷媒F1に含まれる液体が分離される。液体が分離された冷媒F1は、コンプレッサ1に戻る。
【0023】
上述のように、冷媒回路Cにおいて冷媒流路Lを流れる冷媒F1の温度は変化する。詳しくは、冷媒F1の温度は、コンプレッサ1から水冷コンデンサ3へ向かう冷媒F1の温度(第1熱媒温度)が最も高く、水冷コンデンサ3から第2膨張弁VE2及び/又はバッテリクーラ5へ向かう冷媒F1の温度(第2熱媒温度)がその次に高く、第2膨張弁VE2からエバポレータ4へ向かう冷媒F1の温度(第3熱媒温度)、及び、エバポレータ4及び/又はバッテリクーラ5からアキュムレータ6へ向かう冷媒F1の温度(第4熱媒温度)が最も低い。このため、以下では、第1熱媒温度を「高温」、第2熱媒温度を「中温」、第3熱媒温度と第4熱媒温度とを「低温」という。
【0024】
〔マニホールドの構成〕
続いて、図2及び図3を参照して、図1を参照して説明した冷媒流路Lが形成されるマニホールド100の構成について説明する。図2及び図3は、マニホールド100の構成を示す図である。なお、図3は、プレート部材20とは反対側から見た流路ハウジング10を示す図であり、流路ハウジング10のプレート部材20とは反対側に設けられる表面壁を取り除いた断面を示す。
【0025】
図2及び図3に示すように、マニホールド100は、流路ハウジング10を備え、プレート部材20(支持プレートの一例)に後述のリブ31等がろう付けされる。本実施形態において、プレート部材20は、平面視矩形状であり(図3参照)、流路ハウジング10及びプレート部材20の各々は、アルミニウムを含む金属(合金も含む)を材料とする。
【0026】
〔流路ハウジングの構成〕
流路ハウジング10は、2つに分離されている。以下、2つの流路ハウジング10の一方を「第1ハウジング11」といい、他方を「第2ハウジング12」という。第1ハウジング11と第2ハウジング12とは離間してプレート部材20に接合される。第1ハウジング11及び第2ハウジング12の各々は、例えば、ろう付け及びボルト等によってプレート部材20に接合される。
【0027】
流路ハウジング10がプレート部材20に接合されることにより、図1を参照して説明した冷媒流路Lが流路ハウジング10とプレート部材20との間に形成される(図3参照)。また、水冷コンデンサ3の近傍には、熱媒流路Rの一部も流路ハウジング10に形成される。熱媒流路Rには、水冷コンデンサ3において冷媒F1と熱交換する対象の第1熱媒F2(図1参照)が流れる。
【0028】
〔冷媒流路の構成〕
図3に示すように、冷媒流路L(「複数の流路」の一例)は、高温流路LH、中温流路LM、及び低温流路LLを含む。高温流路LHは、コンプレッサ1から水冷コンデンサ3へ向かう第1熱媒温度(高温)の冷媒F1が流れる流路である。中温流路LMは、水冷コンデンサ3から第2膨張弁VE2及び/又はバッテリクーラ5へ向かう第2熱媒温度(中温)の冷媒F1が流れる流路である。低温流路LLは、第2膨張弁VE2からエバポレータ4へ向かう第3熱媒温度(低温)の冷媒F1、及び、エバポレータ4及び/又はバッテリクーラ5からアキュムレータ6へ向かう第4熱媒温度(低温)の冷媒F1が流れる流路である。低温流路LLは、第1低温流路LL1及び第2低温流路LL2を含む。第1低温流路LL1は、第2膨張弁VE2からエバポレータ4へ向かう冷媒F1が流れる流路である。第2低温流路LL2は、エバポレータ4及び/又はバッテリクーラ5からアキュムレータ6へ向かう冷媒F1が流れる流路である。
【0029】
コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、水冷コンデンサ3、エバポレータ4、バッテリクーラ5、アキュムレータ6及びバルブV(開閉弁V1、第1膨張弁VE1及び第2膨張弁VE2)は、流路ハウジング10の外部に設けられる。したがって、流路ハウジング10には、コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、水冷コンデンサ3、エバポレータ4、バッテリクーラ5、アキュムレータ6、及び、バルブVの各々との間で冷媒F1が流通する流入出口が形成される。
【0030】
以下、コンプレッサ1、キャビンコンデンサ2、水冷コンデンサ3、エバポレータ4、及び、バッテリクーラ5の各々からの冷媒F1が流路ハウジング10へ流入する流入口をそれぞれ「第1流入口Pa1」、「第2流入口Pa2」、「第3流入口Pa3」、「第4流入口Pa4」及び「第5流入口Pa5」と称する(図3参照)。また、開閉弁V1、第1膨張弁VE1及び第2膨張弁VE2の各々から冷媒F1が流路ハウジング10に流入する流入口をそれぞれ、「第6流入口Pa6」、「第7流入口Pa7」及び「第8流入口Pa8」と称する(図3参照)。また、開閉弁V1、第1膨張弁VE1及び第2膨張弁VE2の各々へ向けて冷媒F1が流路ハウジング10から流出する流出口をそれぞれ、「第6流出口Pb6」、「第7流出口Pb7」及び「第8流出口Pb8」と称する(図3参照)。
【0031】
なお、アキュムレータ6からコンプレッサ1へ向かう冷媒F1が流れる冷媒流路Lは、流路ハウジング10の外部に設けられている。このため、冷媒F1がアキュムレータ6から流路ハウジング10へ流入する流入口、及び冷媒F1が流路ハウジング10からコンプレッサ1へ流出する流出口は、流路ハウジング10には形成されない。
【0032】
以下では、説明の便宜上、図3に示すように、プレート部材20の中央Oから見て第2流入口Pa2へ向かう方向を「X1方向」とし、その反対方向を「X2方向」とし、X1方向及びX2方向に沿う方向「X方向」とする。また、プレート部材20の中央Oから見て、第4流入口Pa4へ向かう方向を「Y1方向」とし、その反対方向を「Y2方向」とし、Y1方向とY2方向とに沿う方向を「Y方向」とする。なお、X方向とY方向とは直交する。また、プレート部材20の中央Oは、プレート部材20の対角線の交点である。
【0033】
〔第1ハウジングの構成〕
次に、図3を参照して、第1ハウジング11の構成について説明する。
【0034】
〔第1ハウジングの流路〕
図3に示すように、第1ハウジング11には、高温流路LHと第2低温流路LL2とが設けられる(形成されている)。高温流路LHは、コンプレッサ1からキャビンコンデンサ2へ向かう冷媒F1が流れる第1高温流路LH1と、キャビンコンデンサ2から第1膨張弁VE1を経て水冷コンデンサ3へ向かう冷媒F1が流れる第2高温流路LH2とを含む。
【0035】
第1高温流路LH1は、第1ハウジング11のX1方向における端部に設けられた第1流入口Pa1を基端とし、第1ハウジング11のY1方向における端部に設けられた第1流出口Pb1まで、L字状に延在する。
【0036】
第2高温流路LH2は、第1ハウジング11のY1方向における端部に設けられた第2流入口Pa2を基端とし、X2方向の端部に設けられた第2流出口Pb2まで延在する。
詳しくは、第2高温流路LH2は、第2流入口Pa2を基端とし、第7流出口Pb7までY方向に沿って延在する第1高温延在部LHaと、第7流入口Pa7を基端とし、Y1方向及びX2方向に膨らむように湾曲する第2高温延在部LHbと、第2高温延在部LHbの終端を基端とし、X方向に沿って第2流出口Pb2まで延在する第3高温延在部LHcとを含む。なお、第1高温延在部LHaは、第2低温流路LL2から見てY2方向の位置まで延在する。すなわち、第2高温延在部LHbと第3高温延在部LHcとは、第2低温流路LL2から見てY2方向に位置する。
【0037】
第2低温流路LL2は、第1ハウジング11のX2方向及びY1方向における端部に設けられた第4流入口Pa4を基端とし、第5流出口Pb5及び第6流入口Pa6までT字状に延在する。なお、第5流入口Pa5及び第5流出口Pb5は、第1ハウジング11のY1方向における端部に設けられる。第4流入口Pa4、第5流入口Pa5及び第5流出口Pb5は、X1方向に沿ってこの順で設けられる。
【0038】
〔第1ハウジングの空気抜け構造〕
図4は、実施形態のマニホールド100を示す。図5は、比較例のマニホールド200を示す。図4に示される第1ハウジング11の空気抜け構造について、図5に示される比較例のマニホールド200の第1ハウジング111を参照しつつ説明する。
【0039】
図4及び図5に示すように、第1ハウジング11(111)はプレート部材20との対向面に設けられた複数のリブ31を有する。第1ハウジング11(111)において、複数のリブ31は冷媒流路Lを囲むように設けられている。第1ハウジング111(図5)には、複数のリブ31に囲まれた部位に複数の面部61~68が設けられている。面部61は、第1高温流路LH1に隣接する端部(X1側及びY1側の端部)に設けられている。面部62~65は、第1ハウジング11の中央部寄りであって第2低温流路LL2又は第2高温流路LH2に隣接する部位に設けられている。面部66~68は、第1ハウジング11のX2方向寄りであって第2高温流路LH2の第2高温延在部LHbに隣接する部位に設けられている。また、第1高温流路LH1と第2低温流路LL2との間の部位に貫通孔81が形成され、第2低温流路LL2と面部66との間の部位に貫通孔82が形成されている。この場合には、第1ハウジング111(図5)では、面部61~65の夫々、及び、面部66~68が互いに近接する部位において空気溜りが発生し易い。
【0040】
そこで、図4に示す第1ハウジング11では、面部61(図5)に対応する部位において、貫通孔41が形成される。また、第1ハウジング11では、面部62~64に対応する部位において、面部62と面部63と面部64との間に介在するリブ31が除去されて一つの面部52(連通路の一例)が形成される。これにより、面部52は、第1高温流路LH1と第2低温流路LL2との間に形成された貫通孔42に連通する。また、本実施形態では、マニホールド100において、面部52は、異なる温度の流体が夫々流れて隣接する二つの流路である、第1高温流路LH1と第2低温流路LL2とを分断している。
【0041】
また、第1ハウジング11では、面部65に対応する部位において、Y2側のリブ31が除去されて外部に連通する面部53(連通路の一例)が形成される。なお、本実施形態では、第1ハウジング11の軽量化を図るべく、貫通孔42のY1側にはリブ31が設けられていない。
【0042】
第1ハウジング11では、面部66(図5)に対応する部位において、一部に貫通孔43が形成され、残りの部位が面部54(連通路の一例)になる。面部67(図5)に対応する部位については、一部に貫通孔44が形成され、残りの部位が面部55(連通路の一例)になる。これにより、第1ハウジング11では、面部54は貫通孔43に連通し、面部55は貫通孔44に連通する。また、面部54と面部55との間に配置されるリブ32は、中途部に切欠き56が形成されており、切欠き56を介して面部54及び面部55が連続する。また、リブ33は面部55に対してY1側に設けられてX方向に延びており、当該リブ33はリブ32との間に間隙G(切欠き56)を有する。これにより、面部55は間隙Gを介して外部へと連通している。また、第1ハウジング11では、面部68(図5)に対応する部位において、貫通孔45が形成される。
【0043】
本実施形態では、面部66(図5)に対応する部位において、一部に貫通孔43が形成され、残りの部位が面部54(連通路の一例)になる。面部67(図5)に対応する部位については、一部に貫通孔44が形成され、残りの部位が面部55(連通路の一例)になる。また、面部54と面部55との間に配置されるリブ32は、中途部に切欠き56が形成されており、切欠き56を介して面部54及び面部55が連続し、リブ33はリブ32との間に間隙G(切欠き56)を有する。本来、切欠き56に接続されるリブ31を除去して全て貫通孔としてもよいが、本実施形態では、図3に示すように開閉弁V1の支持ブラケット(不図示)が取り付けられ、切欠き56の周辺は開閉弁V1の重量を支持する強度が要求されるため、切欠き56の形態を採用した。
【0044】
〔第2ハウジングの構成〕
次に、図3を参照して、第2ハウジング12の構成について説明する。
【0045】
〔第2ハウジングの流路〕
図3に示すように、第2ハウジング12には、中温流路LMと第1低温流路LL1とが設けられる。中温流路LMは、第2ハウジング12のX1方向及びY2方向における端部に設けられた第3流入口Pa3を基端とし、第6流出口Pb6を経て、第8流出口Pb8及び第2ハウジング12のY1方向における端部に設けられた第4流出口Pb4まで延在する。
【0046】
第1低温流路LL1は、第8流入口Pa8を基端とし、第2ハウジング12のY1方向の端部に設けられた第3流出口Pb3までY方向に沿って延在する。なお、第3流出口Pb3は、第4流出口Pb4から見てX2方向に位置する。
【0047】
〔第2ハウジングの空気抜け構造〕
図4に示されるマニホールド100の第2ハウジング12の空気抜け構造についても、図5に示される比較例のマニホールド200の第2ハウジング112を参照しつつ説明する。
【0048】
図4及び図5に示すように、第2ハウジング12(112)は、プレート部材20との対向面に設けられた複数のリブ31を有する。第2ハウジング12(112)において、複数のリブ31は冷媒流路Lを囲むように設けられている。第2ハウジング112(図5)には、複数のリブ31に囲まれた部位に複数の面部69~73が設けられている。面部69は、中温流路LMに隣接する端部(X1側及びY1側の端部)に設けられている。面部70は、中温流路LMと第1低温流路LL1との間の部位に設けられている。面部71~73は、第1低温流路LL1のY2側、且つ中温流路LMのX2側の部位に分散して設けられている。また、中温流路LMと第1低温流路LL1との間の部位には、貫通孔83が形成されている。また、中温流路LMのX2側から第1低温流路LL1のY2側に亘って貫通孔84が形成されている。この場合には、第2ハウジング112(図5)では、面部69,70,72,73において空気溜りが発生し易い。
【0049】
そこで、図4に示す第2ハウジング12では、面部69(図5)の部位に貫通孔46が形成される。第2ハウジング12では、面部70,71に対応する部位において、面部70と面部71との間に介在するリブ31が除去されて一つの面部57(連通路の一例)が形成される。また、第2ハウジング12では、貫通孔84と面部72及び面部73に対応する部位において、貫通孔84と面部72と面部73との間に介在するリブ31が除去されて1つの貫通孔48が形成される。これにより、第2ハウジング12では、面部57は、中温流路LMと第1低温流路LL1との間に形成された貫通孔47と貫通孔48とに連通する。また、本実施形態では、マニホールド100において、面部57は、異なる温度の流体が夫々流れて隣接する二つの流路である、中温流路LMと第1低温流路LL1とを分断している。なお、本実施形態では、第2ハウジング12の軽量化を図るべく、貫通孔47のY1側にはリブ31が設けられていない。
【0050】
〔プレートの構成〕
続いて、図2に戻り、プレート部材20の構成について説明する。図2に示すように、プレート部材20は、流路ハウジング10と対向する平坦な対向面21(主面)と、対向面21よりも流路ハウジング10から離れる方向に凹む溝部22と、溝部22に配置される断熱材23とを有する。
【0051】
プレート部材20の対向面21は、第1ハウジング11と第2ハウジング12とがX方向において離間する部分、すなわち、第1ハウジング11と第2ハウジング12とのいずれにも対向しない非対向領域21Rを含む。溝部22は、非対向領域21Rに設けられる。上述のように、溝部22には、断熱材23が配置される。これにより、プレート部材20を介した熱伝導が抑制される。なお、断熱材23は、プレート部材20よりも熱伝導率の低い樹脂等で構成されている。
【0052】
本実施形態のマニホールド100によれば、高温の冷媒F1が流れる高温流路LHが形成される第1ハウジング11と、高温の冷媒F1よりも低い中温の冷媒F1が流れる中温流路LMが形成される第2ハウジング12とが離間(分離)してプレート部材20に接合される。つまり、第1ハウジング11と第2ハウジング12とが一体的ではなく、第1ハウジング11と第2ハウジング12とが離間しているので、第1ハウジング11と第2ハウジング12との間には熱伝導率の低い空気が介在することとなる。したがって、異なる温度の冷媒F1間での熱交換を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、高温流路LHには、コンプレッサ1から水冷コンデンサ3へ向かう冷媒F1が流れ、中温流路LMには、水冷コンデンサ3から、エバポレータ4及び/又はバッテリクーラ5へ向かう冷媒F1であって、高温流路LHよりも低温の冷媒F1が流れる。このため、コンプレッサ1から水冷コンデンサ3へ向かう冷媒F1と、水冷コンデンサ3からエバポレータ4及び/又はバッテリクーラ5へ向かう冷媒F1との間での熱交換を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、プレート部材20には、第1ハウジング11と第2ハウジング12との間に溝部22が形成され、当該溝部22には断熱材23が配置される。このため、プレート部材20を介して、第1ハウジング11と第2ハウジング12との間での熱伝導を抑制することができる。
【0055】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成してもよい(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0056】
(1)上記実施形態で説明した冷媒流路L(高温流路LH、中温流路LM、及び低温流路LL)の形状及び位置は一例であって、冷媒流路Lは、上記実施形態で説明した形状及び位置に限定されない。
【0057】
(2)流路ハウジング10は、第1ハウジング11と第2ハウジング12とが接続されて一体として構成されていてもよい。
【0058】
(3)本実施形態では、プレート部材20が溝部22と溝部22に配置される断熱材23とを有する場合を説明したが、プレート部材20は、溝部22及び断熱材23を省略することも可能である。この場合、プレート部材20の材料として熱伝導率の低い材料を選択すると好適である。
【0059】
(4)本実施形態では、冷媒回路C(第2分岐回路Cb2)がバッテリクーラ5を備える構成を例に説明したが、冷媒回路Cは、バッテリクーラ5に変えて、チラーを備えてもよい。なお、冷媒回路Cがバッテリクーラ5に変えてチラーを備える場合、冷媒回路Cは、水冷コンデンサ3とチラーとの間に膨張弁をバルブVとして更に含む。
【0060】
(5)本実施形態では、冷却流体の一例として冷媒F1を説明したが、本発明は、冷媒F1以外の流体、例えば、ロングライフクーラント(LLC)等の冷却水、パラフィン系等の絶縁油等であってもよい。
【0061】
(6)本実施形態では、プレート部材20が矩形状である場合を説明したが、プレート部材20の形状は、矩形状に限定されず、適宜変更可能である。
【0062】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した実施形態の概要について説明する。
【0063】
(1)マニホールド(100)は、支持プレート(20)にろう付けされるマニホールド(100)であって、流体が流れる複数の流路(L)が形成されるとともに、複数の流路(L)を夫々区分する複数のリブ(31)を有する流路ハウジング(10)を備え、複数の流路(L)以外の部位には、空気を逃がすことが可能な空気抜け構造が形成されている。
【0064】
本構成によれば、マニホールド(100)が複数の流路(L)以外の部位に空気抜け構造が形成されているので、マニホールド(100)は複数の流路(L)の機能を維持しつつ内部に空気溜りが形成され難い構成にできる。これにより、マニホールド(100)は、支持プレート(20)にろう付けする際に、窒素ガス等を充填し易くなり、空気溜りに内在する空気による酸化被膜の形成を阻害できるので、ろう付け不良を防止できる。その結果、マニホールド(100)は、支持プレート(20)にろう付けすることで支持プレート(20)に安定的に固定できる。
【0065】
(2)マニホールド100において、空気抜け構造は、流路ハウジング(10)に形成された貫通孔(41~48)及び、対向する一対のリブ(31)の間に形成された連通路(52~57)を含んでいると好適である。
【0066】
本構成によれば、マニホールド(100)に形成される空気抜け構造が貫通孔(41~48)及び連通路(52~57)を含んで構成されるので、マニホールド(100)において空気抜け構造を簡易に形成できる。
【0067】
(3)マニホールド100において、流路ハウジング(10)には、流路(L)を切り換え可能な切換弁(V1)が固定されており、空気抜け構造は、切換弁(V1)を支持するリブ(31)に設けられた切欠き(56)を含んでいると好適である。
【0068】
本構成によれば、マニホールド(100)に形成される空気抜け構造が、切換弁(V1)を支持するリブ(31)に設けられた切欠き(56)を含んで構成される。これにより、マニホールド(100)は、リブ(31)による強度を維持しつつ、リブ(31)に設けられた切欠き(56)を用いて空気抜け構造を形成できる。その結果、マニホールド(100)は、切換弁(V1)を安定的に支持でき、且つ支持プレート(20)に安定的に固定できる。
【0069】
(4)マニホールド(100)において、連通路(52,57)は、異なる温度の流体が夫々流れて隣接する二つの流路(L)を分断していると好適である。
【0070】
本構成によれば、異なる温度の流体が流れて隣接する二つの流路(L)が連通路(52,57)によって分断されるので、隣接する二つの流路(L)において一方の流路(L)から他方の流路(L)への熱伝導を抑制できる。これにより、マニホールド(100)は、隣接する二つの流路(L)の夫々に異なる温度の流体が流れる場合でも、二つの流路(L)において夫々の流体の温度を維持できる。その結果、マニホールド(100)は、複数の流路(L)を流れる流体を適正な温度で利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、マニホールドに利用できる。
【符号の説明】
【0072】
10:流路ハウジング、20:プレート部材(支持プレート)、31:リブ、41~48:貫通孔、52,53,54,55,57:連通路、56:切欠き、100:マニホールド、L:冷媒流路(複数の流路)、V1:開閉弁(切換弁)、G:間隙(切欠き)
図1
図2
図3
図4
図5