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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021156
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】脈波測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
A61B5/02 310M
A61B5/02 310P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124910
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】永井 拓也
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AB02
4C017AC03
4C017EE01
4C017FF15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脈波センサの突出量を調整可能な脈波測定装置を提供する。
【解決手段】本脈波測定装置は、センサ部10と、被験者に装着可能な装着部とを有し、前記センサ部は、筒状部を含む固定部40と、前記筒状部の内側に収容された可動部30と、前記固定部に対して回転する回転部60とを有し、前記可動部は、センサ保持部31と、筐体21、前記筐体の一方側に設けられた起歪体22、及び前記筐体の他方側に設けられた対向部23を備える、対向部と蓋部32の互いに対向する面の一方にピボット部23pが設けられ、他方に前記ピボット部を挿入可能な凹部が設けられ、前記ピボット部と前記凹部とが接触すると、前記脈波センサは、前記ピボット部と前記凹部との接触部分を支点として揺動可能となり、前記起歪体は、前記筒状部の他方の開口から露出し、前記可動部は、前記固定部に対して回転せずに、前記回転部の回転に伴って前記筒状部の軸方向に往復移動する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ部と、前記センサ部の外側に連結され、被験者に装着可能な装着部と、を有し、
前記センサ部は、筒状部を含む固定部と、前記筒状部の内側に収容された可動部と、前記筒状部の一方の開口を塞ぎ、前記筒状部の中心軸を回転軸として前記固定部に対して回転する回転部と、を有し、
前記可動部は、
センサ保持部と、
筐体、前記筐体の一方側に設けられた起歪体、及び前記筐体の他方側に設けられた対向部を備え、前記起歪体が前記センサ保持部の軸方向の一端側から露出するように前記センサ保持部の内側に保持された脈波センサと、
前記センサ保持部の軸方向の他端側に固定され、前記回転部と連結された蓋部と、を有し、
前記対向部と前記蓋部の互いに対向する面の一方にピボット部が設けられ、他方に前記ピボット部を挿入可能な凹部が設けられ、
前記ピボット部と前記凹部とが接触すると、前記脈波センサは、前記ピボット部と前記凹部との接触部分を支点として揺動可能となり、
前記起歪体は、前記筒状部の他方の開口から露出し、
前記可動部は、前記固定部に対して回転せずに、前記回転部の回転に伴って前記筒状部の軸方向に往復移動する、脈波測定装置。
【請求項2】
前記可動部は、前記蓋部から前記起歪体と反対方向に突出する第1ねじ部を有し、
前記回転部は、前記起歪体の側に突出する第2ねじ部を備えた第1円盤部を有し、
前記第1ねじ部及び前記第2ねじ部の一方は雄ねじ部、他方は雌ねじ部であり、
前記雄ねじ部と前記雌ねじ部とが回転自在に螺合され、
前記第1円盤部が回転すると、前記雄ねじ部と前記雌ねじ部との螺合状態が変わり、前記可動部が前記筒状部の軸方向に往復移動する、請求項1に記載の脈波測定装置。
【請求項3】
前記回転部は、前記第1円盤部よりも小径の第2円盤部をさらに有し、
前記固定部は、両端が開口された円筒状の連結部を有し、
前記連結部は、前記第1円盤部の側の端部に、外側面から径方向の内側に突出する第1フランジ部を有し、
前記第2円盤部は、前記連結部に収容され、前記第1フランジ部を挟んだ状態で前記第1円盤部と固定され、
前記連結部は、前記筒状部に固定される、請求項2に記載の脈波測定装置。
【請求項4】
前記対向部は、前記筐体の外側面から前記筐体の径方向の外側に突出する第2フランジ部を有し、
前記センサ保持部は、中心軸側に突出する段差面を有し、
前記第2フランジ部は、前記段差面と前記蓋部との間に配置され、
前記第2フランジ部は、前記脈波センサが前記センサ保持部から抜け落ちることを防止するストッパーとなる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脈波測定装置。
【請求項5】
前記センサ保持部は、前記段差面よりも上側に設けられて内側面から中心軸側に突出する位置決め部を有し、
前記対向部は、外周側から中心側に向かって窪む切り欠き部を有し、
前記脈波センサは、前記切り欠き部が前記位置決め部と位置合わせされて前記センサ保持部の内側に保持され、前記センサ保持部に対して回転防止される、請求項4に記載の脈波測定装置。
【請求項6】
前記センサ保持部は、外側面から中心側に窪む溝を有し、
前記溝は、前記センサ保持部の軸方向を長手方向とする細長状であり、
前記筒状部は、内側面から中心軸側に突出する凸部を有し、
前記凸部と前記溝とが嵌合し、前記センサ保持部は、前記筒状部に対して回転防止されると共に、前記溝の長手方向の長さの範囲に移動範囲が規制される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の脈波測定装置。
【請求項7】
前記対向部と前記蓋部の互いに対向する面の間に、前記脈波センサを前記蓋部から離れる方向に付勢する第1付勢部材が配置されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の脈波測定装置。
【請求項8】
前記起歪体は、複数のひずみゲージを有し、
前記脈波センサは、複数の前記ひずみゲージの抵抗体の抵抗値の変化に基づいて脈波を検出する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の脈波測定装置。
【請求項9】
複数の前記ひずみゲージは、前記起歪体の圧縮ひずみを検出する一対のひずみゲージと、前記起歪体の引張ひずみを検出する他の一対のひずみゲージと、を含み、
一対の前記ひずみゲージ及び他の一対の前記ひずみゲージは、1つのブリッジ回路の各辺を構成するように接続され、
前記脈波を示す信号は、前記ブリッジ回路により生成される、請求項8に記載の脈波測定装置。
【請求項10】
前記起歪体は、第1主面及び第1主面とは反対側に位置する第2主面を備え、
複数の前記ひずみゲージは前記第2主面に配置され、
前記第1主面側にカバー部材が装着されている、請求項8又は9に記載の脈波測定装置。
【請求項11】
前記装着部は、前記被験者の手首に装着できるように反対方向に湾曲して互いに対向する第1湾曲部材及び第2湾曲部材を有し、
前記第1湾曲部材と前記第2湾曲部材は、第2付勢部材に付勢されると共に、閉状態と開状態とを遷移可能に揺動軸に支持され、
前記センサ部は、前記第1湾曲部材の長手方向の一端側に配置され、
前記揺動軸は、前記第1湾曲部材の長手方向の他端側に配置されている、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の脈波測定装置。
【請求項12】
前記第1湾曲部材は、長手方向の一端側と他端側との間に配置された配線基板を有し、
前記配線基板には、脈波の検出に寄与する部品が配置されている、請求項11に記載の脈波測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓が血液を送り出すことに伴い発生する脈波を検出する脈波センサを備えた脈波測定装置が知られている。このような脈波測定装置は、例えば、被験者の手首に装着可能に構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5094131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脈波センサは、微小な信号を検出する必要があるため、測定精度を向上するために、被験者に適度に密着させる必要がある。このような脈波センサにおいて、被験者と接する起歪体は薄く形成されているため、手首に脈波センサを着脱する際に起歪体に触れてしまい、起歪体が破損してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、脈波センサの突出量を調整可能な脈波測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る脈波測定装置は、センサ部と、前記センサ部の外側に連結され、被験者に装着可能な装着部と、を有し、前記センサ部は、筒状部を含む固定部と、前記筒状部の内側に収容された可動部と、前記筒状部の一方の開口を塞ぎ、前記筒状部の中心軸を回転軸として前記固定部に対して回転する回転部と、を有し、前記可動部は、センサ保持部と、筐体、前記筐体の一方側に設けられた起歪体、及び前記筐体の他方側に設けられた対向部を備え、前記起歪体が前記センサ保持部の軸方向の一端側から露出するように前記センサ保持部の内側に保持された脈波センサと、前記センサ保持部の軸方向の他端側に固定され、前記回転部と連結された蓋部と、を有し、前記対向部と前記蓋部の互いに対向する面の一方にピボット部が設けられ、他方に前記ピボット部を挿入可能な凹部が設けられ、前記ピボット部と前記凹部とが接触すると、前記脈波センサは、前記ピボット部と前記凹部との接触部分を支点として揺動可能となり、前記起歪体は、前記筒状部の他方の開口から露出し、前記可動部は、前記固定部に対して回転せずに、前記回転部の回転に伴って前記筒状部の軸方向に往復移動する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、脈波センサの突出量を調整可能な脈波測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る脈波測定装置を例示する斜視図(その1)である。
図2】第1実施形態に係る脈波測定装置を例示する斜視図(その2)である。
図3】第1実施形態に係る脈波測定装置を例示する側面図である。
図4】第1湾曲部材について説明する斜視図である。
図5】可動部を例示する分解斜視図である。
図6】固定部及び可動部を例示する分解斜視図である。
図7】センサ部を例示する分解斜視図である。
図8】センサ部を例示する断面図である。
図9】ピボット部について説明する断面図(その1)である。
図10】ピボット部について説明する断面図(その2)である。
図11】第1実施形態に係る脈波センサを例示する平面図である。
図12】第1実施形態に係る脈波センサを例示する断面図である。
図13】ブリッジ回路の一例である。
図14】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図15】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)である。
図16】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。
図17】付勢部材について説明する図(その1)である。
図18】付勢部材について説明する図(その2)である。
図19】脈波センサにカバー部材を装着した状態を示す断面図(その1)である。
図20】脈波センサにカバー部材を装着した状態を示す断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[脈波測定装置1]
図1は、第1実施形態に係る脈波測定装置を例示する斜視図(その1)であり、脈波測定装置を被験者の手首に装着した様子を模式的に示している。図2は、第1実施形態に係る脈波測定装置を例示する斜視図(その2)である。図3は、第1実施形態に係る脈波測定装置を例示する側面図である。
【0011】
図1図3を参照すると、脈波測定装置1は、被験者に装着可能なウェアラブルデバイスであり、主に、センサ部10と、装着部80とを有している。
【0012】
図1に示すように、脈波測定装置1は、例えば、後述の脈波センサ20が被験者の橈骨動脈300上の皮膚310に接するように、装着部80により被験者の手首に装着される。脈波は、心臓が血液を送り出すことに伴い発生する血管の容積変化を波形としてとらえたもので、脈波測定装置1は、血管の容積変化をモニターすることができる。
【0013】
センサ部10は、被験者の脈波を検出する脈波センサを含む部分である。センサ部10は、可動部30と、固定部40と、連結部50と、回転部60を有している。センサ部10の詳細については、後述する。
【0014】
装着部80は、センサ部10の外側に連結され、被験者に装着可能である。装着部80は、被験者の手首に装着できるように反対方向に湾曲して互いに対向する第1湾曲部材81及び第2湾曲部材82を有している。第1湾曲部材81上には、蓋部83が設けられている。第1湾曲部材81、第2湾曲部材82、及び蓋部83は、例えば、樹脂等から形成することができる。
【0015】
第1湾曲部材81と第2湾曲部材82は、略V字状に折り曲げられた付勢部材84及び85に付勢されると共に、閉状態と開状態とを遷移可能に揺動軸86に支持されている。図示の例では、付勢部材84及び85の一端は、蓋部83上に設けられたばね取付部83xに取り付けられ、他端は、第2湾曲部材82上に設けられたばね取付部82xに取り付けられている。付勢部材84及び85は、例えば、金属等から形成することができる。付勢部材84及び85は、例えば、トーションばねであるが、板ばね等であってもよい。
【0016】
センサ部10は、第1湾曲部材81の長手方向の一端側に配置され、揺動軸86は、第1湾曲部材81の長手方向の他端側に配置されている。センサ部10は、例えば、ねじ等により、第1湾曲部材81に取り付けられている。揺動軸86は、第1湾曲部材81と一体に形成されてもよいし、別体を接合した形態であってもよい。
【0017】
第1湾曲部材81の揺動軸86を挟んでセンサ部10とは反対側に、第1操作部87が設けられている。第2湾曲部材82の揺動軸86を挟んでセンサ部10とは反対側に、第2操作部88が設けられている。第1操作部87及び第2操作部88は、例えば、樹脂等から形成することができる。第1操作部87は、第1湾曲部材81と一体に形成されてもよいし、別体を接合した形態であってもよい。第2操作部88は、第2湾曲部材82と一体に形成されてもよいし、別体を接合した形態であってもよい。
【0018】
被験者または被験者を補助する補助者等は、脈波測定装置1を被験者に装着する際、第1操作部87及び第2操作部88をつまみ、互いを近接させる。これにより、第1湾曲部材81及び第2湾曲部材82のセンサ部10側が開き、脈波測定装置1を被験者に装着することができる。
【0019】
図4は、第1湾曲部材について説明する斜視図であり、脈波測定装置1から蓋部83を取り除いた状態を示している。図4に示すように、第1湾曲部材81は、長手方向の一端側と他端側との間に配置された配線基板90を有してもよい。配線基板90は、第1湾曲部材81と蓋部83との間隙に配置することができる。配線基板90は、線材25を介して脈波センサ20(後述)と電気的に接続されている。
【0020】
配線基板90には、例えば、脈波の検出に寄与する部品91が配置される。部品91としては、例えば、ひずみゲージ100の出力を増幅する増幅回路や、増幅回路の出力をデジタル信号に変換するAD変換器や、デジタル信号を処理する信号処理用の半導体や、信号処理の結果を外部に送信する無線通信用の半導体等が挙げられる。配線基板90に、外部回路と有線で接続されるコネクタ92を配置してもよい。コネクタ92は、電源の供給や信号の入出力に用いてもよい。
【0021】
図5は、可動部を例示する分解斜視図である。図5に示すように、可動部30は、脈波センサ20と、センサ保持部31と、蓋部32と、雄ねじ部33とを有している。センサ保持部31、蓋部32、及び雄ねじ部33は、例えば、金属や樹脂等から形成することができる。
【0022】
脈波センサ20は、例えば、筐体21、筐体21の一方側に設けられた起歪体22、及び筐体21の他方側に設けられた対向部23を備えている。筐体21は、例えば、両端が開口された円筒状の部材である。筐体21は、例えば、金属や樹脂等から形成することができる。
【0023】
起歪体22は、略円板状であり、筐体21の一方側を塞ぐように筐体21に接着剤等により固定されている。起歪体22は、後述のように、例えばひずみゲージが配置されて脈波を検出する部分である。なお、起歪体22を含む脈波センサ20の詳細な構造例については後述する。
【0024】
対向部23は、略円板状であり、筐体21の他方側を塞ぐように筐体21に固定されている。対向部23は、例えば、貫通孔23xを有し、貫通孔23xに挿通されたねじ24により、筐体21に設けられた溝21xに螺合されている。対向部23は、筐体21の内側の空間を介して、起歪体22と対向する。対向部23と起歪体22の互いに対向する面は、例えば、平行である。
【0025】
対向部23は、起歪体22と対向する面の反対面である第1面23aを備えている。対向部23の第1面23aは、例えば、平面である。対向部23の第1面23aの略中心部には、起歪体22とは反対側に突起するピボット部23pが設けられている。ピボット部23pは、例えば、略円柱状の部材である。ピボット部23pの中心軸は、例えば、対向部23の第1面23aと垂直である。
【0026】
対向部23は、例えば、筐体21の外側面から筐体21の径方向の外側に突出するフランジ部23fを有している。フランジ部23fは、例えば、リング状である。対向部23は、回転防止用等に用いることができる1又は複数の切り欠き部23yを有してもよい。切り欠き部23yは、例えば、対向部23の外周側から中心側に向かって窪む。
【0027】
対向部23は、例えば、金属や樹脂等から形成することができる。ピボット部23pは、対向部23の他の部分と一体に形成されてもよいし、別体を接合した形態であってもよい。
【0028】
脈波センサ20は、筐体21の内部と外部との間で電気信号の入出力を行う線材25を有している。線材25の内側には、互いに絶縁された複数の線材が配置されてもよい。複数の線材の一端は、後述のひずみゲージの電極と電気的に接続される。脈波センサ20は、線材25の代わりに、フレキシブル基板等を有してもよい。
【0029】
また、筐体21の内側面に1又は複数の配線基板26を固定し、ひずみゲージの一対の電極とこの配線基板26とを細線で電気的に接続してもよい。そして、この配線基板26と線材25とを電気的に接続してもよい。この構造により、線材25からの力が起歪体22に伝わり難くなり、脈波の検出精度を向上することができる。
【0030】
センサ保持部31は、例えば、両端が開口された円筒状の部材である。センサ保持部31の内側面は、例えば、中心軸側(センサ部10の中心側)に突出する段差面31aを有している。段差面31aは、例えば、センサ保持部31の軸方向と垂直である。段差面31aは、例えば、リング状である。
【0031】
センサ保持部31は、段差面31aよりも上側に設けられて内側面から中心軸側に突出する位置決め部31bを有している。図示の例では、2つの位置決め部31bが互いに対向するように設けられている。各々の位置決め部31bには、溝31xが設けられている。なお、位置決め部31bは、1つ以上あればよい。
【0032】
脈波センサ20は、切り欠き部23yが位置決め部31bと位置合わせされて、センサ保持部31の内側に保持され、センサ保持部31に対して回転防止される。ただし、脈波センサ20は、センサ保持部31には固定されていなく、センサ保持部31に対して可動できるような隙間を有している。脈波測定装置1が被験者に装着されていない場合、フランジ部23fは段差面31aと接している。
【0033】
センサ保持部31は、外側面から中心側に窪む溝31yを有している。溝31yは、センサ保持部31の軸方向を長手方向とする細長状である。溝31yは、センサ保持部31の外側面の上端には達せず、下端に達するように設けられている。溝31yは、例えば、平面視でセンサ保持部31の中心を挟んで対向するように2つ配置することができる。なお、溝31yは、1つ以上あればよい。
【0034】
蓋部32は、貫通孔32xを有している。蓋部32は、例えば、貫通孔32xに挿通されたねじ34により、位置決め部31bに設けられた溝31xに螺合され、センサ保持部31の軸方向の他端側に固定される。雄ねじ部33は、蓋部32の上面の中央部に設けられ、蓋部32の上面から起歪体22と反対方向に突出する。雄ねじ部33は、蓋部32と一体に形成されてもよいし、別体を接合した形態であってもよい。
【0035】
このように、脈波センサ20は、起歪体22がセンサ保持部31の軸方向の一端側から露出するようにセンサ保持部31の内側に保持されている。そして、蓋部32は、センサ保持部31の軸方向の他端側に固定されている。
【0036】
図6は、固定部及び可動部を例示する分解斜視図である。なお、図6において、固定部40は、便宜上、異なる方向から視た2つの図を示している。
【0037】
固定部40は、筒状部41と、フランジ部42とを有している。筒状部41は、例えば、両端が開口された円筒状の部材である。フランジ部42は、筒状部41の外側面の少なくとも一部から筒状部41の径方向の外側に突出する部材である。フランジ部42は、切り欠き部を有してもよい。固定部40は、例えば、金属や樹脂等から形成することができる。フランジ部42は、筒状部41と一体に形成されてもよいし、別体を接合した形態であってもよい。
【0038】
筒状部41は、例えば、中心軸側(筒状部41の中心側)に突出する段差面41aを有している。段差面41aは、例えば、筒状部41の軸方向と垂直である。段差面41aは、例えば、リング状である。筒状部41は、内側面41bから中心軸側に突出する2つの凸部41cを有している。凸部41cは、例えば、円柱状である。凸部41cは、例えば、平面視で筒状部41の中心を挟んで対向するように2つ配置することができる。なお、凸部41cは、1つ以上あればよい。
【0039】
筒状部41は、外側面から内側面に貫通する貫通孔41xを有している。貫通孔41xは、例えば、平面視で筒状部41の中心を挟んで対向するように2つ配置することができる。筒状部41は、線材25を通すための切り欠き部41yを有してもよい。フランジ部42は、貫通孔42xを有している。貫通孔42xは、例えば、平面視で筒状部41の中心を挟んで対称となる位置に4つ配置することができる。
【0040】
可動部30は、2つの溝31yが2つの凸部41cと嵌合するように、固定部40の筒状部41の内側に配置されている。可動部30は、筒状部41の軸方向に可動自在である。可動部30は、凸部41cと溝31yとが嵌合しているため、筒状部41の周方向にはほとんど可動しない。つまり、凸部41cと溝31yとが嵌合し、センサ保持部31は、筒状部41に対して回転防止される。また、可動部30は、下側への移動範囲が、凸部41cと溝31yとが嵌合できる範囲、すなわち溝31yの長手方向の長さの範囲に規制されている。
【0041】
図7は、センサ部を例示する分解斜視図である。図7に示すように、センサ部10は可動部30と、固定部40と、連結部50と、回転部60とを有している。連結部50及び回転部60は、例えば、金属や樹脂等から形成することができる。なお、図7において、第1円盤部61は、便宜上、異なる方向から視た2つの図を示している。
【0042】
回転部60は、筒状部41の一方の開口を塞ぎ、筒状部41の中心軸を回転軸として固定部40に対して回転する。起歪体22は、筒状部41の他方の開口から露出している。
【0043】
回転部60は、中央部に起歪体22の側に突出する雌ねじ部61xを備えた第1円盤部61と、第1円盤部61よりも小径の第2円盤部62とを有している。第1円盤部61の外側面には、例えば、被験者等が回転部60を回転させる際に滑りにくいように、凹凸構造が形成されている。雌ねじ部61xは、内側面に雌ねじが切られた円筒状の部材である。第1円盤部61は、貫通孔61yを有している。
【0044】
第2円盤部62は、中央部に貫通孔62xを有している。また、第2円盤部62は、平面視で貫通孔62xを囲むように設けられたリング状の突起部62yを有し、突起部62yの外側はリング状の段差面62aとなっている。段差面62aは、例えば、第2円盤部62の軸方向と垂直である。第2円盤部62は、貫通孔62zを有している。
【0045】
連結部50は、例えば、両端が開口された円筒状の部材である。連結部50は、第1円盤部61の側の端部に、外側面から径方向の内側に突出するリング状のフランジ部50fを有している。連結部50は、側面に、貫通孔50xを有している。貫通孔50xは、例えば、平面視で連結部50の中心を挟んで対向するように2つ配置することができる。
【0046】
第2円盤部62は、連結部50に収容され、フランジ部50fを挟んだ状態で第1円盤部61と固定されている。具体的には、第1円盤部61の下面と第2円盤部62の段差面62aとの間に連結部50のフランジ部50fを挟んだ状態で、第1円盤部61と第2円盤部62はねじ63により螺合されている。この構造により、連結部50は、第1円盤部61と第2円盤部62で構成される回転部60からはずれない。回転部60は、連結部50に対して回転自在である。
【0047】
連結部50と回転部60とを含む構造体は、固定部40上に配置される。このとき、第1円盤部61の雌ねじ部61xと、可動部30の雄ねじ部33とが回転自在に螺合される。これにより、蓋部32は回転部60と連結される。そして、固定部40の貫通孔41xと連結部50の貫通孔50xとが位置合わせされ、ねじ64により螺合され、連結部50は筒状部41に固定される。これにより、回転部60は、固定部40に対して回転自在となる。
【0048】
図8は、センサ部を例示する断面図である。図8に示すように、可動部30は、固定部40に対して回転せずに、回転部60の回転に伴って筒状部41の軸方向に往復移動する。すなわち、第1円盤部61及び第2円盤部62を含む回転部60が矢印Aの方向に回転すると、雌ねじ部61xと雄ねじ部33との螺合状態が変わり、脈波センサ20を含む可動部30が筒状部41の軸方向(矢印Bの方向)に往復移動する。可動部30は、起歪体22が固定部40の下端から突出する位置から、固定部40の下端よりも上方の位置まで移動可能に構成することができる。
【0049】
このような構造により、脈波測定装置1を被験者に装着していないときには、起歪体22が固定部40の下端よりも上方の位置にくるように可動部30の位置を調整することができる。その結果、脈波測定装置1を被験者に装着する際に起歪体22が被検者と接触しないため、起歪体22の塑性変形を抑制可能となる。
【0050】
また、脈波測定装置1を被験者に装着した後に、回転部60を回転させて可動部30の位置を変えることにより、被験者の橈骨動脈を適度に押圧することができる。この際、例えば、脈波センサ20から得られる脈波信号をモニターしながら回転部60を回転させ、脈波信号の振幅ができるだけ大きくなるように調整してもよい。あるいは、脈波信号の振幅が所定範囲に入ったことを知らせる音声信号や光信号を生成し、被験者に可動部30の最適な調整位置を知らせるようにしてもよい。
【0051】
図9は、ピボット部について説明する断面図(その1)である。図9に示すように、蓋部32は、第1面32aと、第1面32aとは反対側の第2面32bとを有している。第1面32aと第2面32bは、例えば、平行である。蓋部32の第1面32aの略中心部には、第1面32a側に開口する凹部32yが設けられている。凹部32yの内側面は、例えば、雄ねじ部33の軸方向に対して傾斜する1つの曲面である。断面視において、凹部32yの内側面は、一部又は全部が湾曲していてもよい。
【0052】
凹部32yは、例えば、円錐状または円錐台状である。凹部32yは、ピボット部23pより大径の円柱状であってもよい。ピボット部23pと凹部32yとのがたを少なくしてセンタリングを容易にする観点からは、凹部32yの内側面は、円錐状または円錐台状等のセンサ部10の軸方向に対して傾斜する1つの曲面であることが好ましい。
【0053】
凹部32yは、可動部30の軸方向(図9では上下方向)に視て、雄ねじ部33と重なる位置に配置され、凹部32yの一部は雄ねじ部33内に配置されてもよい。このようにすると、蓋部32を部分的に薄型化することができる。
【0054】
対向部23の第1面23aと、蓋部32の第1面32aとは、互いに対向している。対向部23において、ピボット部23pの先端側(凹部32y側)は、例えば、ドーム状である。ここで、ドーム状とは、第1面23aを基準として、中心軸付近の高さが最も高く、周辺部に行くほど高さが低くなる形状である。ピボット部23pの先端側は、球面の一部であってもよいし、非球面の一部であってもよい。
【0055】
対向部23のフランジ部23fは、センサ保持部31の段差面31aと蓋部32の第1面32aとの間に配置されている。このような構造により、フランジ部23fは、脈波センサ20がセンサ保持部31から下側に抜け落ちることを防止するストッパーとなる。
【0056】
図10は、ピボット部について説明する断面図(その2)である。図10では、いずれも、脈波測定装置1の装着部80が被験者に装着されている。300は、被験者の橈骨動脈を模式的に示したものである。装着部80が被験者に装着されると、図10に示すように、脈波センサ20の起歪体22が被験者の橈骨動脈300上の皮膚310に接し、脈波センサ20が蓋部32側に押し上げられ、ピボット部23pと凹部32yとが接触する。ピボット部23pと凹部32yは、例えば、線接触する。これにより、ピボット部23pと凹部32yとのがたを少なくしてセンタリングを容易にすることができる。ただし、これには限定されず、ピボット部23pと凹部32yは、点接触や面接触してもよい。
【0057】
このように、脈波測定装置1では、装着部80が被験者に装着されていないとき、ピボット部23pと凹部32yが接触しない第1状態となる(図9参照)。そして、装着部80が被験者に装着されると、ピボット部23pと凹部32yが接触する第2状態に切り替わる(図10参照)。
【0058】
図10の上段、中段、及び下段に示すように、ピボット部23pと凹部32yとが接触すると、脈波センサ20は、ピボット部23pと凹部32yとの接触部分を支点として360度の方向に揺動可能となる。すなわち、脈波センサ20の起歪体22の検出面は、被験者の橈骨動脈300に沿ってあらゆる角度で傾くことができる。
【0059】
これにより、脈波センサ20の起歪体22の検出面の角度を被験者の橈骨動脈300に対して追従させることが可能となるため、起歪体22の検出面を適切な角度で被験者の橈骨動脈300と接触させることができる。すなわち、脈波センサ20の起歪体22の検出面を、被験者の橈骨動脈300に対して略平行に配置することができる。その結果、微小な脈波信号を検出することが可能となり、脈波の測定精度を向上することができる。
【0060】
また、脈波測定装置1では、第1操作部87及び第2操作部88を操作して開状態と閉状態とを複数回遷移させ、脈波センサ20の位置を微調整することにより、脈波センサ20を橈骨動脈上に容易に配置することができる。この際、脈波センサ20の出力信号をモニターし、出力信号の振幅ができるだけ大きくなる位置を探すことが好ましい。
【0061】
また、脈波測定装置1では、第1湾曲部材81の空きスペースに配線基板90を設け、脈波の検出に寄与する部品を配線基板90に配置することにより、必要な部品を搭載した小型の脈波測定装置を実現することができる。
【0062】
また、脈波測定装置1では、付勢部材84及び85を設けているため、被験者の橈骨動脈を適度に押圧することができる。
【0063】
[脈波センサ]
ここでは、脈波センサ20の一例として、複数のひずみゲージを有する脈波センサの例を示す。脈波センサ20の構成要素において、すでに説明した部分については、重複する説明は省略する。
【0064】
図11は、第1実施形態に係る脈波センサを例示する平面図である。図12は、第1実施形態に係る脈波センサを例示する断面図であり、図11のA-A線に沿う断面を示している。
【0065】
図11及び図12を参照すると、脈波センサ20は、筐体21と、起歪体22と、対向部23と、線材25と、複数のひずみゲージ(ひずみゲージ100、100、100、100)とを有している。対向部23及び線材25については、前述のとおりである。なお、特に区別する必要がない場合は、ひずみゲージ100、100、100、100を、ひずみゲージ100と総称する場合がある。
【0066】
起歪体22は、基部22aと、梁部22bと、負荷部22cと、延伸部22dとを有している。起歪体22は平板状である。起歪体22は、第1主面22m、及び第1主面22mとは反対側に位置する第2主面22nを備えている。第1主面22mは、被験者側を向く面となる。
【0067】
起歪体22の材料としては、例えば、金属、セラミック、ガラス等を用いることができる。起歪体22の材料として用いる金属としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)、銅、アルミニウム等が挙げられる。起歪体22は、例えば、プレス加工法等により一体に形成することができる。負荷部22cを除く起歪体22の厚さtは一定である。厚さtは、例えば、0.03mm以上0.3mm以下とすることができる。
【0068】
なお、図11及び図12の説明では、便宜上、脈波センサ20において、起歪体22の負荷部22cが設けられている側を「上側」と称し、起歪体22の負荷部22cが設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、脈波センサ20は天地逆の状態で用いることもできる。又、脈波センサ20は任意の角度で配置することもできる。又、平面視とは、起歪体22の第1主面22mに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。
【0069】
脈波センサ20において、筐体21は起歪体22を保持する部分である。筐体21は、例えば、金属や樹脂等から形成できる。
【0070】
起歪体22において、基部22aは、図11で示す円形の破線よりも外側の円形枠状(リング状)の領域である。なお、円形の破線よりも内側の領域を円形開口部と称する場合がある。つまり、起歪体22の基部22aは、円形開口部を備えている。基部22aの幅wは、例えば、1mm以上5mm以下である。基部22aの内径d(すなわち、円形開口部の直径)は、例えば、10mm以上15mm以下である。
【0071】
梁部22bは、基部22aの内側を橋渡しするように設けられている。梁部22bは、例えば、平面視で十字状に交差する2本の梁を有し、2本の梁の交差する領域は円形開口部の中心を含む。図11の例では、十字を構成する1本の梁がX方向を長手方向とし、十字を構成する他の1本の梁がY方向を長手方向とし、両者は直交している。直交する2本の梁の各々は、基部22aの内径d(円形開口部の直径)より内側にあり、かつ可能な限り長いことが好ましい。つまり、各々の梁の長さは、円形開口部の直径と略等しいことが好ましい。梁部22bを構成する各々の梁において、交差する領域以外の幅wは一定であり、例えば、1mm以上5mm以下である。幅wが一定であることは必須ではないが、幅wを一定とすることで、ひずみをリニアに検出するできる点で好ましい。
【0072】
負荷部22cは、梁部22bに設けられている。負荷部22cは、例えば、梁部22bを構成する2本の梁の交差する領域に設けられる。負荷部22cは、梁部22bの上面から突起している。梁部22bの上面を基準とする負荷部22cの突起量は、例えば、0.1mm程度である。梁部22bは可撓性を有しており、負荷部22cに負荷が加わると弾性変形する。なお、梁部22bの上面は、起歪体22の第1主面22mの一部である。
【0073】
4つの延伸部22dは、平面視で基部22aの内側から梁部22bの方向に延伸する扇形の部分である。各々の延伸部22dと梁部22bとの間には、1mm程度の隙間が設けられている。延伸部22dは、脈波センサ20のセンシングには寄与しないため、設けなくてもよい。
【0074】
脈波センサ20の出力信号は、複数のひずみゲージの出力に基づいて生成される。図示の例では、脈波センサ20は、起歪体22の第2主面22nにおいて、Y方向に延びる梁に、平面視で負荷部22cを挟んで対向して配置された一対のひずみゲージ100及び100を有している。また、一対のひずみゲージ100及び100が配置された梁と交差するX方向に延びる梁に、平面視で負荷部22cを挟んで対向して配置された他の一対のひずみゲージ100及び100を有している。
【0075】
ひずみゲージ100及び100は、Y方向に延びる梁において、負荷部22cの押圧に伴なって生じる起歪体22の圧縮ひずみを検出する。また、ひずみゲージ100及び100は、X方向に延びる梁において、負荷部22cの押圧に伴なって生じる起歪体22の引張ひずみを検出する。圧縮ひずみを検出するひずみゲージ100とひずみゲージ100との間隔は、引張ひずみを検出するひずみゲージ100とひずみゲージ100との間隔よりも広い。各ひずみゲージ100をこのように配置することにより、圧縮ひずみと引張ひずみを有効に検出してフルブリッジを構成するブリッジ回路により大きな出力を得ることができる。
【0076】
ひずみゲージ100~100は、1つのブリッジ回路の各辺を構成するように接続され、脈波センサ20の出力信号(脈波を示す信号)は、ブリッジ回路により生成することができる。図13は、ブリッジ回路の一例である。図13に示すブリッジ回路では、ひずみゲージ100は、左上の一辺を構成している。また、ひずみゲージ100は、右下の一辺を構成している。また、ひずみゲージ100は、右上の一辺を構成している。また、ひずみゲージ100は、左下の一辺を構成している。
【0077】
図13において、左上の辺と左下の辺の接続部と、右上の辺と右下の辺の接続部との間には、直流電圧Eが供給される。これにより、左上の辺と右上の辺の接続部と、左下の辺と右下の辺の接続部との間から、アナログ電圧の出力信号S1を得ることができる。ブリッジ回路を構成する配線パターンは、例えば、配線基板90に設けることができる。
【0078】
脈波センサ20において、負荷部22cが被験者の橈骨動脈に当たると、被験者の脈波に応じて負荷部22cに負荷が加わって梁部22bが弾性変形し、ひずみゲージ100の抵抗体の抵抗値が変化する。脈波センサ20は、梁部22bの変形に伴なうひずみゲージ100の抵抗体の抵抗値の変化に基づいて脈波を検出できる。脈波は、ブリッジ回路から、周期的な電圧の変化として出力信号S1として検出される。
【0079】
なお、以上では、脈波センサ20が4つのひずみゲージを有し、4つのひずみゲージをフルブリッジ接続することにより出力信号S1を生成する例を示した。しかし、脈波センサ20が2つのひずみゲージを有し、2つのひずみゲージをハーフブリッジ接続することにより出力信号S1を生成してもよい。
【0080】
[ひずみゲージ100]
図14は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図15は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)であり、図14のB-B線に沿う断面を示している。
【0081】
図14及び図15を参照すると、ひずみゲージ100は、基材110と、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とを有している。すなわち、ひずみゲージ100は、検出素子として抵抗体130を有している。カバー層160は、必要に応じて設けることができる。なお、図14及び図15では、便宜上、カバー層160の外縁のみを破線で示している。まずは、ひずみゲージ100を構成する各部について詳細に説明する。
【0082】
なお、図14図16を用いて行うひずみゲージの説明は、上面と下面の定義が他の図の場合とは異なる。具体的には、図14図16では、便宜上、ひずみゲージ100において、基材110の抵抗体130が設けられている側を「上側」と称し、抵抗体130が設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、ひずみゲージ100は天地逆の状態で用いることもできる。又、ひずみゲージ100は任意の角度で配置することもできる。又、平面視とは、基材110の上面110aに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。ひずみゲージ100は、基材110が起歪体22の第2主面22n側を向くように、起歪体22の第2主面22nに貼り付けられる。
【0083】
基材110は、抵抗体130等を形成するためのベース層となる部材である。基材110は可撓性を有する。基材110の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、基材110の厚さは5μm~500μm程度であってよい。なお、起歪体22の第2主面22nから受感部へのひずみの伝達性、及び、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材110の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材110の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0084】
基材110は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成される。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、かつ可撓性を有する部材を指す。
【0085】
基材110が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材110は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0086】
基材110の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられる。又、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材110の材料としてもよい。又、基材110の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属製の基材110を用いる場合、上面110aを被覆するように絶縁膜が設けられる。
【0087】
抵抗体130は、基材110の上側に所定のパターンで形成された薄膜である。ひずみゲージ100において、抵抗体130は、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体130は、基材110の上面110aに直接形成されてもよいし、基材110の上面110aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図14では、便宜上、抵抗体130を密度の高い梨地模様で示している。
【0088】
抵抗体130は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(図14の例ではB-B線の方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(図14の例ではB-B線と垂直な方向)となる。
【0089】
グリッド幅方向の最も外側に位置する2つの細長状部の長手方向の一端部は、グリッド幅方向に屈曲し、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eを形成する。抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eは、配線140を介して、電極150と電気的に接続されている。言い換えれば、配線140は、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eと各々の電極150とを電気的に接続している。
【0090】
抵抗体130は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体130は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0091】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、及びCrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0092】
抵抗体130の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、抵抗体130の厚さは0.05μm~2μm程度であってよい。特に、抵抗体130の厚さが0.1μm以上である場合、抵抗体130を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、抵抗体130の厚さが1μm以下である場合、抵抗体130を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラック及び(ii)膜の基材110からの反りが、低減される。
【0093】
横感度を生じ難くすることと、断線対策とを考慮すると、抵抗体130の幅は10μm以上100μm以下であることが好ましい。更に言えば、抵抗体130の幅は10μm以上70μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であるとより好ましい。
【0094】
例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。又例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、抵抗体130がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、抵抗体130はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、抵抗体130はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0095】
又、抵抗体130がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ひずみゲージ100のゲージ率の低下を抑制することができる。
【0096】
又、Cr混相膜におけるCrNとCrNとの比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。CrNは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで抵抗体130のセラミックス化を低減し、抵抗体130の脆性破壊が起こりにくくすることができる。
【0097】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点を有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のNもしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0098】
ひずみゲージ100において、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0099】
配線140は、基材110上に設けられている。配線140は、抵抗体130及び電極150と電気的に接続されている。配線140は、直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、配線140は、任意の幅及び任意の長さとすることができる。なお、図14では、便宜上、配線140を抵抗体130よりも密度の低い梨地模様で示している。
【0100】
電極150は、基材110上に設けられている。電極150は、配線140を介して抵抗体130と電気的に接続されている。電極150は、平面視において、配線140よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極150は、ひずみにより生じる抵抗体130の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。電極150には、例えば外部接続用のリード線等が接合される。電極150の上面に、銅等の抵抗の低い金属層、または、金等のはんだ付け性が良好な金属層を積層してもよい。抵抗体130と配線140と電極150とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、図14では、便宜上、電極150を配線140と同じ密度の梨地模様で示している。
【0101】
カバー層160(保護層)は、必要に応じ、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように設けられる。カバー層160の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層160は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層160の厚さは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カバー層160の厚さは2μm~30μm程度とすることができる。カバー層160を設けることで、抵抗体130に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。又、カバー層160を設けることで、抵抗体130を湿気等から保護することができる。
【0102】
[ひずみゲージ100の製造方法]
本実施形態に係るひずみゲージ100では、基材110上に、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とが形成される。なお、基材110とこれらの部材の層の間に別の層(後述する機能層等)が形成されてもよい。
【0103】
以下、ひずみゲージ100の製造方法について説明する。ひずみゲージ100を製造するためには、まず、基材110を準備し、基材110の上面110aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体130、配線140、及び電極150となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体130、配線140、及び電極150の材料や厚さと同様である。
【0104】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法、蒸着法、アークイオンプレーティング法、またはパルスレーザー堆積法等を用いて成膜されてもよい。基材110の上面110aに金属層Aを成膜後、周知のフォトリソグラフィ法により、金属層Aを図14の抵抗体130、配線140、及び電極150と同様の平面形状にパターニングする。
【0105】
なお、基材110の上面110aに下地層を形成してから金属層Aを形成してもよい。例えば、基材110の上面110aに、所定の膜厚の機能層をコンベンショナルスパッタ法により真空成膜してもよい。このように下地層を設けることによって、ひずみゲージ100のゲージ特性を安定化させることができる。
【0106】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体130)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材110に含まれる酸素または水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および/または、基材110と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0107】
基材110を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むことがあり、また、Crは自己酸化膜を形成することがある。そのため、特に金属層AがCrを含む場合、金属層Aの酸化を防止する機能を有する機能層を成膜することが好ましい。
【0108】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製することができる。その結果、ひずみゲージ100において、ゲージ特性の安定性が向上する。又、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ100において、ゲージ特性が向上する。
【0109】
機能層の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0110】
図16は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。図16は、抵抗体130、配線140、及び電極150の下地層として機能層120を設けた場合のひずみゲージ100の断面形状を示している。
【0111】
機能層120の平面形状は、例えば抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と略同一にパターニングされてよい。しかしながら、機能層120と抵抗体130、配線140、及び電極150との平面形状は略同一でなくてもよい。例えば、機能層120が絶縁材料から形成される場合には、機能層120を抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と異なる形状にパターニングしてもよい。この場合、機能層120は例えば抵抗体130、配線140、及び電極150が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層120は、基材110の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0112】
抵抗体130、配線140、及び電極150を形成した後、必要に応じ、基材110の上面110aにカバー層160を形成する。カバー層160は抵抗体130及び配線140を被覆するが、電極150はカバー層160から露出していてよい。例えば、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように、半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートして、その後に当該絶縁樹脂フィルムを加熱して硬化させることにより、カバー層160を形成することができる。以上の工程により、ひずみゲージ100が完成する。
【0113】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、脈波センサと蓋部との間に付勢部材を配置する例を示す。なお、第1実施形態の変形例1では、既に説明した実施形態と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0114】
図17は、付勢部材について説明する図(その1)であり、センサ部10と脈波センサ20と蓋部32とを示す部分断面図である。図17では、センサ部10の内側において、対向部23と蓋部32の互いに対向する面の間に付勢部材400が配置されている点が、図9に示す構造と異なる。
【0115】
付勢部材400は、対向部23の第1面23aと蓋部32の第1面32aとの間に、対向部23の第1面23a及び蓋部32の第1面32aに接するように配置することができる。付勢部材400を配置することにより、脈波センサ20を蓋部32の第1面32aから離れる方向に付勢することができる。
【0116】
図18は、付勢部材について説明する図(その2)であり、付勢部材のみを示す斜視図である。図18に示すように、付勢部材400は、例えば、ヘリカル状(螺旋状)の板ばねである。付勢部材400は、平面視でピボット部23pが略中心となるように配置することができる。付勢部材400は、例えば、金属や樹脂やゴム等により形成することができる。
【0117】
付勢部材400は、円錐形のばねであっても円筒形のばねであってもよいが、円錐形のばねである場合、円筒形のばねである場合に比べて圧縮した際の高さを低くできるため、センサ部10の低背化が可能である。付勢部材400が円錐形のばねである場合、付勢部材400を安定して配置するために、円錐形のばねの径が小さい部分を蓋部32側に向けて配置することが好ましい。
【0118】
なお、脈波センサ20を蓋部32の第1面32aから離れる方向に付勢することができれば、付勢部材400の形状や材料は問わない。
【0119】
このように、付勢部材400を配置することにより、脈波センサ20が被験者の手首等に接していない状態で振動等が加わっても、フランジ部23fが段差面31aと接した状態を維持できるため、脈波センサ20と蓋部32との間にガタが生じることを防止できる。これにより、例えば、脈波測定装置1を持ち運ぶ際に異音が生じるおそれ等を低減できる。
【0120】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、脈波センサの起歪体の第1主面側にカバー部材が装着されている例を示す。なお、第1実施形態の変形例2では、既に説明した実施形態と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0121】
脈波センサ20の起歪体22の全体を覆うように、カバー部材を設けてもよい。例えば、起歪体22に、シリコーン樹脂等の材料で作製されたカバー部材を被せてもよい。また、当該カバー部材は、起歪体22との間に間隙を有していることが望ましい。なお、カバー部材の脈波センサ20への装着方法は特に限定されない。
【0122】
図19は、脈波センサにカバー部材を装着した状態を示す断面図(その1)である。なお、図19では一例として、カバー部材500は、起歪体22との間に間隙520を有しており、表面(被験者の肌に当たる側)が略半球状の形状をしている。また、カバー部材500の中央部には凸部510が設けられており、凸部510と負荷部22cとが対向するように設けられている。
【0123】
なお、凸部510は、起歪体22(図19の場合は、負荷部22c)と接していても良いし、図19のように僅かな隙間を空けて設けられていてもよい。いずれにしても、凸部510は、カバー部材500に圧力がかかったときに、起歪体22と凸部510とが接するように設計されることが望ましい。このような設計とすることにより、カバー部材500にかかる圧力を、起歪体22の、凸部510が接する部分に集中させることができる。したがって、起歪体22の特定の範囲に応力を集中させることができる。
【0124】
また、起歪体22をカバー部材500で覆うことで、起歪体22の円形開口部にごみ及びホコリ等が混入することを防止できる。また、起歪体22が金属製であっても、被験者の金属アレルギーを防止できる。
【0125】
図20は、脈波センサにカバー部材を装着した状態を示す断面図(その2)である。図20に示すカバー部材530は、起歪体22と対向する側の面において凸部510のような明確に突出した部位が存在しない点で、図19に示すカバー部材500と異なる。なお、カバー部材530のその他の点については、カバー部材500と同様の構成であってよいし、カバー部材500と同様の改変を施してもよい。
【0126】
カバー部材530は、起歪体22と対向する側の面の少なくとも一部が、起歪体22の側に湾曲した曲面から成る。図20の例では、カバー部材530は起歪体22と対向する側の面の中央部がなだらかに傾斜した曲面である。このような設計とすることで、カバー部材530にかかる圧力を、カバー部材530と起歪体22が接する部分(例えば、起歪体22のロードポイント)に集中させることができる。したがって、カバー部材530により、脈波センサ20は起歪体22の特定の範囲に応力を集中させることができる。また、カバー部材500と同様に、カバー部材530を用いた場合でも、起歪体22の円形開口部からのごみ及びホコリ等の混入を防止できる。また、起歪体22が金属製であっても、被験者の金属アレルギーを防止できる。
【0127】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0128】
例えば、上記の実施形態では、対向部23の第1面23aにピボット部23pが設けられ、蓋部32の第1面32aにピボット部23pを挿入可能な凹部32yが開口する例を示した。しかし、これには限定されず、蓋部32の第1面32aにピボット部が設けられ、対向部23の第1面23aにピボット部を挿入可能な凹部が開口する構造であってもよい。すなわち、対向部23と蓋部32の互いに対向する面の一方にピボット部が設けられ、他方にピボット部を挿入可能な凹部が開口する構造であればよい。
【0129】
また、第1円盤部61の雌ねじ部61xと、可動部30の雄ねじ部33との関係は、反対であってもよい。すなわち、第1円盤部61に雄ねじ部を設け、可動部30に雌ねじ部を設け、両者が螺合する構造としてもよい。
【0130】
また、装着部80は、図3等に示すクリップ型ではなく、時計ベルト型等であってもよい。例えば、第1湾曲部材81や第2湾曲部材82を皮やゴム等により形成し、第1湾曲部材81と第2湾曲部材82の端部同士を面ファスナー等により取り外し自在に接続可能な構成としてもよい。あるいは、第1湾曲部材81と第2湾曲部材82を一体化して1本のベルト状とし、伸縮自在の材料から構成してもよい。
【0131】
また、脈波センサ20の構造は、図11等に示したものには限定されず、任意の構造としてかまわない。例えば、梁部の周囲にスリットを設けない構造としてもよい。また、起歪体の第1面側を樹脂等で被覆してもよい。
【符号の説明】
【0132】
1 脈波測定装置、10 センサ部、20 脈波センサ、21 筐体、21x 溝、22 起歪体、22m 第1主面、22n 第2主面、23 対向部、23a 第1面、23f フランジ部、23p ピボット部、23x 貫通孔、23y 切り欠き部、30 可動部、31 センサ保持部、31a 段差面、31b 位置決め部、31x,31y 溝、 32 蓋部、32x 貫通孔、33 雄ねじ部、40 固定部、41 筒状部、41a 段差面、41b 内側面、41c 凸部、41x 貫通孔、41y 切り欠き部、42 フランジ部、42x 貫通孔、50 連結部、50f フランジ部、50x 貫通孔、60 回転部、61 第1円盤部、61x 雌ねじ部、61y 貫通孔、62 第2円盤部、62a 段差面、62x 貫通孔、62y 突起部、80 装着部、81 第1湾曲部材、82 第2湾曲部材、83 蓋部、84,85 付勢部材、86 揺動軸、87 第1操作部、88 第2操作部、90 配線基板、91 部品、100、100、100、100 ひずみゲージ、300 橈骨動脈、310 皮膚、400 付勢部材、500,530 カバー部材、510 凸部、520 間隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図20