(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021157
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20250205BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
A45D40/04 A
B65D83/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124912
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰紀
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014AC04
3E014AC05
(57)【要約】
【課題】被嵌合部にクラック発生することを抑制できる繰出容器を提供する。
【解決手段】本発明に係る態様の繰出容器では、操作体には、容器軸方向に延在し、外周面に容器軸に交差する径方向外方に突出する第1係止突起が形成されている嵌合部が形成され、繰出部材が、内側に嵌合部が容器軸方向に差し込まれることで嵌合部が嵌合され、内周面に径方向内方に突出しかつ第1係止突起が上方から係止する第2係止突起が形成されている筒状の被嵌合部を有し、被嵌合部の外周面には、スリーブが摺接する摺接リングが配置されており、被嵌合部の下端面のうち、容器軸方向に沿う縦断面視で、摺接リングと容器軸方向で重なる位置には、上方に窪む凹部が形成されており、第2係止突起は、容器軸回りに延在し、第2係止突起のうち凹部に対して容器軸回りの位置をずらした部分には、第2係止突起の、容器軸回りの延在を分断する切欠部が形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の操作体と、
容器軸回りに延びる螺旋溝を有し、前記操作体の底壁から上方に延びる伝達軸を有し、前記操作体に対する前記容器軸回りの回転が規制された状態で前記操作体に固定される繰出部材と、
前記操作体の内側に前記伝達軸の外側を取り囲んで配置され、前記伝達軸に対して前記容器軸回りの周方向に回転可能に設けられたスリーブと、
前記伝達軸に対する前記スリーブの回転に伴い前記スリーブに対して上下動可能に、前記スリーブの内側に設けられた中皿と、を備え、
前記操作体には、前記容器軸方向に延在し、外周面に前記容器軸に交差する径方向外方に突出する第1係止突起が形成されている嵌合部が形成され、
前記繰出部材が、内側に前記嵌合部が前記容器軸方向に差し込まれることで前記嵌合部が嵌合され、内周面に前記径方向内方に突出しかつ前記第1係止突起が上方から係止する第2係止突起が形成されている筒状の被嵌合部を有し、
前記被嵌合部の外周面には、前記スリーブが摺接する摺接リングが配置されており、
前記被嵌合部の下端面のうち、前記容器軸方向に沿う縦断面視で、前記摺接リングと前記容器軸方向で重なる位置には、上方に窪む凹部が形成されており、
前記第2係止突起は、前記容器軸回りに延在し、
前記第2係止突起のうち前記凹部に対して前記容器軸回りの位置をずらした部分には、当該第2係止突起の、前記容器軸回りの延在を分断する切欠部が形成されていることを特徴とする繰出容器。
【請求項2】
前記切欠部が、前記凹部に対して前記容器軸回りの両側に90度ずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
繰出容器は、有底筒状の操作体と、容器軸回りに延びる螺旋溝を有し、操作体の底壁から上方に延びる伝達軸を有し、操作体に対する容器軸回りの回転が規制された状態で操作体に固定される繰出部材と、操作体の内側に伝達軸の外側を取り囲んで配置され、伝達軸に対して容器軸回りの周方向に回転可能に設けられたスリーブと、伝達軸に対するスリーブの回転に伴いスリーブに対して上下動可能に、スリーブの内側に設けられた中皿と、を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。このような繰出容器では、操作体に形成された嵌合部を繰出部材に形成された筒状の被嵌合部内にアンダーカット嵌合させることによって操作体と繰出部材とを組み立てている。そして、操作体とスリーブとを相対的に回転させると、スリーブの内側で中皿が上下動することで、スリーブを通じて内容物が進退する。繰出部材の被嵌合部の外周面には、繰出部材とスリーブとを容器軸回りに相対的に回転させる際にスリーブに摺接する摺接リングが設けられており、繰出部材は、摺接リングをインサートとして成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、繰出部材のインサート成形後の離型時に、特に、被嵌合部内に配置されている中子を抜く際に、被嵌合部にクラックが発生することがあった。そのため、このようなクラックの抑制を図る点で未だ改善の余地があった。
【0005】
本発明は、被嵌合部にクラック発生することを抑制できる繰出容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
本発明の一態様に係る繰出容器は、底筒状の操作体と、容器軸回りに延びる螺旋溝を有し、前記操作体の底壁から上方に延びる伝達軸を有し、前記操作体に対する前記容器軸回りの回転が規制された状態で前記操作体に固定される繰出部材と、前記操作体の内側に前記伝達軸の外側を取り囲んで配置され、前記伝達軸に対して前記容器軸回りの周方向に回転可能に設けられたスリーブと、前記伝達軸に対する前記スリーブの回転に伴い前記スリーブに対して上下動可能に、前記スリーブの内側に設けられた中皿と、を備え、前記操作体には、前記容器軸方向に延在し、外周面に前記容器軸に交差する径方向外方に突出する第1係止突起が形成されている嵌合部が形成され、前記繰出部材が、内側に前記嵌合部が前記容器軸方向に差し込まれることで前記嵌合部が嵌合され、内周面に前記径方向内方に突出しかつ前記第1係止突起が上方から係止する第2係止突起が形成されている筒状の被嵌合部を有し、前記被嵌合部の外周面には、前記スリーブが摺接する摺接リングが配置されており、前記被嵌合部の下端面のうち、前記容器軸方向に沿う縦断面視で、前記摺接リングと前記容器軸方向で重なる位置には、上方に窪む凹部が形成されており、前記第2係止突起は、前記容器軸回りに延在し、前記第2係止突起のうち前記凹部に対して前記容器軸回りの位置をずらした部分には、当該第2係止突起の、前記容器軸回りの延在を分断する切欠部が形成されている。
【0007】
本態様によれば、摺接リングをインサートとして繰出部材を成形した後の離型時に、特に筒状の被嵌合部の内側に配置された型を引き抜く際に、被嵌合部の内周面に径方向内方に突出する第2係止突起が形成されていることに起因して被嵌合部が径方向外方に広がるように弾性変形するが、第2係止突起に切欠部が形成されているので、離型時における被嵌合部の径方向外方への弾性変形量を抑制できる。これにより、被嵌合部に、特に繰出部材の成型時のゲート凹部に対応する被嵌合部のうち凹部が形成されている部分に過剰な負荷がかかることを抑制し、離型時に被嵌合部にクラックが生じにくくなる。また、切欠部が凹部に対して容器軸回りにおける位置をずらした部分に設けられているので、切欠部を凹部と容器軸回りで位置合わせした箇所に設ける場合と比較して、被嵌合部のうち凹部が形成されている部分における強度が低下しにくくなり、離型時のクラックの発生をより確実に抑制できる。なお、凹部が上下方向で見たときに摺接リングと少なくとも部分的に重なる径方向位置に形成されているので、繰出部材の成型時における材料の良好な湯流れを維持できる。
【0008】
上記態様に係る繰出容器において、前記切欠部が、前記凹部に対して前記容器軸回りの両側に90度ずれた位置に設けられていることが好ましい。
本態様によれば、離型時のクラックの発生をさらに確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被嵌合部を成形した後の離型時に、被嵌合部にクラックが生じることを確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】一実施形態に係る繰出容器の使用時における動作説明図である。
【
図8】外装モジュールとカートリッジとの着脱方法を説明するための動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示す繰出容器1は、棒状内容物(不図示)を繰り出して使用する。棒状内容物は、例えば化粧料(口紅やリップクリーム、スティックアイシャドー等)や薬剤、糊等が挙げられる。
【0012】
繰出容器1は、操作部10と、スリーブ11と、中皿12と、キャップ13と、を備えている。操作部10、スリーブ11及び中皿12は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置する状態で配置されている。以下、共通軸を容器軸Oといい、容器軸Oに沿う方向を上下方向という。上下方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。この場合、繰出容器1のうち、上下方向におけるキャップ13の頂壁側を上方といい、操作部10の底壁(操作体21の底壁21a)側を下方という。また、周方向のうち、内容物を上昇させる方向を繰出方向といい、内容物を下降させる方向を収容方向という。
【0013】
操作部10は、繰出容器1における下部の外装部分を構成する。操作部10は、全体として容器軸Oと同軸に配置された有底筒状に形成されている。操作部10は、操作体21と、中具22と、繰出部材23と、を備えている。
【0014】
操作体21は、有底筒状に一体形成されている。操作体21の底壁21aには、上方に向けて延びる嵌合部21bが形成されている。嵌合部21bは、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。
【0015】
図1、
図2に示すように、嵌合部21bには、スリット21cが形成されている。スリット21cは、上下方向に延びるとともに、嵌合部21bの上端開口縁上で開口している。スリット21cは、周方向に間隔をあけて複数形成されている。平面視において、径方向に直交する一の方向を第1方向L1とすると、スリット21cは、容器軸Oに対して第1方向L1の一方側及び他方側にそれぞれ2つずつ設けられている。各スリット21cのうち、第1方向L1の一方側の領域内で隣り合うスリット21c1同士、又は他方側の領域内で隣り合うスリット21c2同士の間隔は、第1方向L1の一方側及び他方側の領域を跨いで隣り合うスリット21c1,21c2同士の間隔よりも狭くなっている。
【0016】
嵌合部21bのうち、隣り合うスリット21c同士の間に位置する部分は、舌片部21dを構成している。舌片部21dは、径方向に弾性変形可能に構成されている。舌片部21dは、スリット21c1同士又はスリット21c2同士の間に位置する第1舌片部21d1と、スリット21c1,21c2同士の間に位置する第2舌片部21d2と、を含んでいる。第1舌片部21d1は、第1方向L1で向かい合っている。第2舌片部21d2は、径方向のうち第1方向L1に直交する第2方向L2で向かい合っている。第1舌片部21d1における周方向の幅は、第2舌片部21d2における周方向の幅よりも狭い。但し、各スリット21c同士の間隔(舌片部21dの幅)は、適宜変更が可能である。なお、スリット21cは必須の構成ではない。
【0017】
第1舌片部21d1には、係合部21eが形成されている。係合部21eは、第1舌片部21d1から径方向の内側に突出するとともに、上下方向に延びる突条である。図示の例において、第1方向L1で向かい合う一対の第1舌片部21d1のうち、一方の第1舌片部21d1には、一つの係合部21e1が設けられている。第1方向L1で向かい合う一対の第1舌片部21d1のうち、他方の第1舌片部21d1には、二つの係合部21e2が設けられている。各係合部21eの上端縁は、上方に向けて突の円弧状に形成されている。係合部21eは、周方向に等間隔に形成されている。なお、係合部21eの数やピッチ等は、適宜変更が可能である。
【0018】
第2舌片部21d2には、第1係止突起21fが形成されている。第1係止突起21fは、各第2舌片部21d2の上端部から径方向の外側に突出している。第1係止突起21fは、各第2舌片部21d2において周方向の全長に亘って延びている。第1係止突起21fは、第1舌片部21d1に形成されていてもよい。
【0019】
図1に示すように、中具22は、操作体21と同軸に配置された筒状に形成されている。中具22は、操作体21の内側に上方から嵌合されている。中具22は、上端部が操作体21から上方に突出した状態で、操作体21に対して周方向に回転不能に設けられている。中具22は、操作体21と一体に形成されていてもよい。また、操作部10は、中具22の内周面が平面視で円形状に形成されていれば、操作体21の周壁21gの平面視形状は円形状以外の形状であってもよい。
【0020】
図1、
図3に示すように、繰出部材23は、操作体21の内側において、中皿12を上下動可能に支持する。繰出部材23は、固定軸部材23aと、外側伝達軸23bと、を備えている。
固定軸部材23aは、操作体21に対して周方向に回転不能に設けられている。具体的に、固定軸部材23aは、被嵌合部24と、台座部25と、内側伝達軸(伝達軸)26と、挿入部27と、を備えている。
【0021】
被嵌合部24は、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。被嵌合部24の内側には、嵌合部21bがアンダーカット嵌合されている。具体的に、被嵌合部24には、第2係止突起24aが形成されている。第2係止突起24aは、被嵌合部24における上下方向の中間部分から径方向の内側に突出している。第2係止突起24aは、被嵌合部24において周方向の全長に亘って延びている。第2係止突起24aは、第1係止突起21fに第1係止突起21fの下方から係止されている。また、第2係止突起24aのうち容器軸Oを径方向で挟む両側には、径方向外側に向けて窪む切欠部24bが形成されている。
【0022】
被嵌合部24の下端部には、径方向の外側に張り出す張出部24cが形成されている。また、被嵌合部24の下端部のうち容器軸Oを径方向で挟む両側には、凹部24dが形成されている。凹部24dは、繰出部材23を成形する際のゲート凹部に対応している。
図4に示すように、凹部24dは、張出部24cを含む被嵌合部24の外周縁部において上下方向に延在しており、下方及び径方向外方に開口している。なお、
図3に示すように、凹部24dは、切欠部24bとは周方向で90度ずらした位置に形成されている。すなわち、一対の凹部24dと一対の切欠部24bとは、周方向で90度ごとに交互に配設されている。
【0023】
図1、
図4に示すように、被嵌合部24の上部には、周溝24eが形成されている。周溝24eは、被嵌合部24の外周面上で開口するとともに、被嵌合部24の外周面上を周方向の全周に亘って延びている。周溝24eは、上下方向から見た平面視において、凹部24dと少なくとも部分的に重なる径方向位置に形成されている。これにより、繰出部材23の成型時における材料の良好な湯流れを維持できる。また、周溝24eは、上下方向から見た平面視において、第2係止突起24aと位置をずらして形成されており、第2係止突起24aよりも上方に位置している。さらに、周溝24e内には、摺接リング24fがインサート成形によって埋め込まれている。なお、凹部24dの上端は、周溝24eに連なっている。
【0024】
摺接リング24fは、摺接リング24f内を全周に亘って延びている。摺接リング24fの外周面には、スリーブ11の突部11aが摺接している。摺接リング24fは、固定軸部材23aの材質(例えば、PP等)よりも軟らかい軟材質であって、固定軸部材23aよりも弾性率が高く、かつ固定軸部材23aよりも摩擦係数の高い材質により形成されている。摺接リング24fは、ニトリルゴム、ブチルゴム、若しくはシリコンゴム等をインサート品として、固定軸部材23aをインサート成形することによって、固定軸部材23aに固着されていてもよい。なお、摺接リング24fは、周溝24eが形成されていない被嵌合部24の外周面に配設されてもよい。
【0025】
図1に示すように、台座部25は、被嵌合部24の上端開口縁から径方向の内側に張り出している。台座部25は、容器軸Oと同軸に配置された円環状に形成されている。台座部25の内周部分は、嵌合部21bの上端縁が下方から近接又は当接している。
【0026】
内側伝達軸26は、台座部25の内周縁から上方に延びている。内側伝達軸26は、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。内側伝達軸26の外周面には、内側螺旋溝(螺旋溝)26aが形成されている。内側螺旋溝26aは、繰出方向に向かうに従い上方に向けて螺旋状に延びている。本実施形態において、内側螺旋溝26aは、二条形成されている。但し、内側螺旋溝26aは、一条であっても、三条以上であってもよい。
【0027】
図1、
図3に示すように、挿入部27は、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。被嵌合部24内に嵌合部21bが嵌合された状態において、挿入部27は嵌合部21b内に挿入されている。挿入部27には、被係合部27aが形成されている。被係合部27aは、挿入部27から径方向の外側に突出するとともに、上下方向に延びている。
被係合部27aの下端縁は、下方に向けて突の円弧状に形成されている。被係合部27aは、挿入部27において周方向に間隔をあけて複数形成され、本実施形態ではローレット状に設けられている。被係合部27aの数は、係合部21eの数よりも多くなっている。
被嵌合部24内に嵌合部21bが嵌合された状態において、係合部21e1は、係合部21eに対して周方向の両側に位置する被係合部27aによって周方向に挟まれる。一方、係合部21e2は、二つの係合部21e2間に位置する被係合部27aと、二つの係合部21e2に対して周方向の外側に位置する被係合部27aと、の間にそれぞれ周方向に挟まれる。これにより、係合部21eと被係合部27aとが周方向に係合することで、操作部10に対する固定軸部材23aの相対回転が規制されている。
【0028】
外側伝達軸23bは、内側伝達軸26の外側で内側伝達軸26の周囲を取り囲んでいる。外側伝達軸23bの下端部には、径方向の内側に突出する第1係合突起31が形成されている。第1係合突起31は、内側伝達軸26の内側螺旋溝26a内に収容(係合)されている。外側伝達軸23bは、内側伝達軸26に対する周方向の回転に伴い、第1係合突起31が内側螺旋溝26a内を螺旋状に移動することで、内側伝達軸26に対して上下動する。本実施形態において、第1係合突起31は、内側螺旋溝26aの条数に合わせて周方向に間隔をあけて2つ設けられている。各第1係合突起31は、内側螺旋溝26aに沿って傾斜して延びている。
【0029】
外側伝達軸23bの外周面には、外側螺旋溝32が形成されている。外側螺旋溝32は、繰出方向に向かうに従い上方に向けて螺旋状に延びている。本実施形態において、外側螺旋溝32は、二条形成されている。但し、外側螺旋溝32は、一条であっても、三条以上であってもよい。
【0030】
スリーブ11は、操作部10の内側において、操作部10に対して周方向に回転可能に設けられている。スリーブ11は、容器軸Oと同軸に配置された筒状に形成されている。スリーブ11は、中具22の内側において、中具22と台座部25との間を通じて操作部10に挿入されている。したがって、スリーブ11は、繰出部材23の周囲を取り囲んでいる。スリーブ11の下端縁は、張出部24cに下方から支持されている。スリーブ11の上端縁は、操作部10よりも上方において、容器軸Oに対して傾斜している。なお、スリーブ11は、金属材料等により形成されていてもよい。
【0031】
図1、
図5に示すように、スリーブ11には、突部11aが形成されている。
突部11aは、スリーブ11の下端部において径方向の内側に突出している。突部11aは、周溝24e内に収容された状態で、周溝24eの上端開口縁及び下端開口縁に係合する。これにより、スリーブ11は、操作部10に対する上下方向への移動が規制された状態で、周方向に回転可能に固定軸部材23aに支持されている。
【0032】
スリーブ11のうち、突部11aよりも上方に位置する部分には、薄肉部11bが形成されている。薄肉部11bは、スリーブ11の下端部において、周方向の全周に亘って延びている。
スリーブ11のうち、薄肉部11bよりも上方に位置する部分には、縦溝11cが形成されている。縦溝11cは、スリーブ11の内周面上で開口している。縦溝11cは、上下方向に延びている。縦溝11cの下端部は、スリーブ11の下端部において、薄肉部11bで終端している。縦溝11cの上端部は、スリーブ11における上下方向の中央部で終端している。縦溝11cは、周方向に間隔をあけて複数(例えば、8本)形成されている。なお、縦溝11cは、スリーブ11を径方向に貫通していてもよい。
【0033】
中皿12は、スリーブ11内において、スリーブ11に対する周方向の回転が規制された状態で、スリーブ11に対して上下方向に移動可能に設けられている。中皿12は、中皿本体51と、可動筒52と、規制筒53と、を備えている。本実施形態において、中皿本体51、可動筒52及び規制筒53は、一体に形成されている。なお、中皿本体51、可動筒52及び規制筒53は、別体に形成されてもよい。
中皿本体51は、容器軸Oと同軸の有底筒状に形成されている。中皿本体51は、スリーブ11の内側において、内側伝達軸26の上方に位置する部分に収容されている。中皿本体51には、内容物が充填される。内容物は、中皿本体51から上方に突出した状態で充填される。
【0034】
可動筒52は、中皿本体51に一体形成されている。可動筒52は、中皿本体51の底壁から下方に延びている。可動筒52は、スリーブ11の内側に挿入されて、外側伝達軸23bの周囲を取り囲んでいる。可動筒52の下端部には、径方向の内側に突出する第2係合突起52aが形成されている。第2係合突起52aは、外側螺旋溝32内に収容(係合)されている。可動筒52は、外側伝達軸23bに対する周方向の回転に伴い、第2係合突起52aが外側螺旋溝32内を螺旋状に移動することで、外側伝達軸23bに対して上下動する。本実施形態において、第2係合突起52aは、外側螺旋溝32の条数に合わせて周方向に間隔をあけて2つ設けられている。各第2係合突起52aは、外側螺旋溝32に沿って傾斜して延びている。
【0035】
可動筒52には、スリット52bが形成されている。スリット52bは、可動筒52を径方向に貫通するとともに、上下方向に延びている。スリット52bは、可動筒52の下端縁上で開口している。スリット52bは、周方向に間隔をあけて複数(例えば、2つ)形成されている。これにより、可動筒52は、スリット52bによって周方向に2分割された状態となり、径方向に向けて弾性変形し易く形成されている。
【0036】
図1、
図6に示すように、規制筒53は、中皿本体51の底壁のうち可動筒52よりも外側に位置する部分から下方に向けて延びている。規制筒53は、容器軸Oと同軸に配置されている。図示の例において、規制筒53の外径は、中皿本体51の外径よりも大きい。規制筒53の下端縁は、可動筒52の下端縁と同等の高さに位置している。
【0037】
規制筒53の外周面には、リブ53aが形成されている。リブ53a、規制筒53から径方向の外側に突出するとともに、上下方向に延びている。リブ53aの上下方向の長さは、縦溝11cの長さよりも短い。図示の例において、リブ53aの下端縁は、規制筒53の下端縁に達している。リブ53aの上端縁は、規制筒53の中間部分に達している。
リブ53aは、周方向に間隔をあけて複数(例えば、4本)形成されている。すなわち、リブ53aの本数は、縦溝11cよりも少ない。但し、リブ53a及び縦溝11cの本数は、適宜変更可能である。
【0038】
各リブ53aは、対応する縦溝11cにそれぞれ収容(係合)されている。リブ53aは、スリーブ11に対する中皿12の上下動に伴い、縦溝11c内を上下動する。リブ53aは、縦溝11cの内面(周方向を向く面)に当接することで、スリーブ11に対する中皿12の回転を規制する。すなわち、中皿12は、リブ53aによってスリーブ11に対する回転が規制された状態で、スリーブ11に対して上下動可能に構成されている。
また、規制筒53には、可動筒52の径方向外側への変形を規制する変形抑制部60が設けられている。
【0039】
図1に示すように、キャップ13は、容器軸Oと同軸に配置された有頂筒状に形成されている。キャップ13には、スリーブ11の上部が挿通された状態で、中皿12が着脱可能に装着される。
【0040】
次に、上述した繰出容器1の作用について説明する。以下の説明では、まず繰出容器1の使用方法について説明する。
繰出容器1を使用する際には、まずキャップ13を操作部10から取り外す。次に、スリーブ11及び操作体21(周壁21g)をそれぞれ把持し、操作部10及びスリーブ11を繰出方向に相対回転させる。このとき、中具22及び固定軸部材23aは、操作体21にそれぞれ相対回転不能に取り付けられているため、操作体21、中具22及び固定軸部材23aが一体に回転する。一方、スリーブ11及び中皿12同士は、それぞれ相対回転不能に取り付けられているため、スリーブ11及び中皿12が一体に回転する。
【0041】
操作部10及びスリーブ11を相対回転させると、内側伝達軸26及び外側伝達軸23bが一体となって可動筒52に対して回転するか、或いは、内側伝達軸26が外側伝達軸23bに対して回転するか、の少なくとも一方の動作が生じる。
【0042】
内側伝達軸26及び外側伝達軸23bが一体となって可動筒52に対して回転する場合には、第2係合突起52aが外側螺旋溝32内に係合した状態で、外側螺旋溝32内を螺旋状に移動することで、可動筒52(中皿12)が繰出部材23に対して上昇する。このように、繰出部材23と可動筒52とが繰出方向に相対回転することで中皿12が上昇する動作を、本明細書では「第1動作」という。
【0043】
内側伝達軸26が外側伝達軸23bに対して回転する場合には、第1係合突起31が内側螺旋溝26a内に係合した状態で、内側螺旋溝26a内を螺旋状に移動することで、外側伝達軸23bが内側伝達軸26に対して上昇する。このとき、外側螺旋溝32の内面を介して第2係合突起52aが押し上げられることで、中皿12が外側伝達軸23bとともに上昇する。このように、内側伝達軸26と外側伝達軸23bとが繰出方向に相対回転することで、中皿12が外側伝達軸23bとともに上昇する動作を、本明細書では「第2動作」という。
【0044】
つまり、
図1、
図7に示すように、操作部10及びスリーブ11を繰出方向に相対回転させると、第1動作及び第2動作の少なくとも一方の動作により中皿12が上昇する。これにより、内容物がスリーブ11から上方に繰り出される。第1動作及び第2動作のうちどちらが生じるかは、各部材間の摩擦抵抗等によって変動する。但し、何れの動作が優先的に行われるとしても、内容物が繰り出されるため、使用者は内容物を使用することができる。なお、第1動作及び第2動作の双方が同時に生じてもよい。
【0045】
スリーブ11に対して中皿12が上昇する際、リブ53aが縦溝11c内を案内される。これにより、スリーブ11に対する中皿12の回転が規制された上で、中皿12がスリーブ11に対して上昇する。なお、リブ53aが縦溝11cの上端縁に当接することで、スリーブ11に対する中皿12の上昇が規制される。これにより、中皿12が最上端位置に到達する。
【0046】
中皿12を下降させる際には、操作部10及びスリーブ11を収容方向に相対回転させる。すると、内側伝達軸26及び外側伝達軸23bが一体となって可動筒52に対して回転するか、或いは、内側伝達軸26が外側伝達軸23bに対して回転するか、によってスリーブ11に対して中皿12が下降する。すなわち、スリーブ11に対して中皿12が下降する際、リブ53aが縦溝11c内に案内される。スリーブ11に対する中皿12の回転が規制された上で、中皿12がスリーブ11に対して下降する。なお、リブ53aが薄肉部11bの付近当接することで、スリーブ11に対する中皿12の下降が規制される。
これにより、中皿12が最下端位置に到達する。
【0047】
図1、
図8に示すように、上述した繰出容器1では、操作体21及び中具22が組み合わされた外装モジュール100に対し、スリーブ11、中皿12及び繰出部材23が組み合わされたカートリッジ101が着脱可能に組み付けられる。以下では、外装モジュール100に対するカートリッジ101の着脱方法(交換方法)について説明する。
まず、カートリッジ101を外装モジュール100に組み付けるには、外装モジュール100(中具22)の上端開口部を通じてカートリッジ101を外装モジュール100に挿入する。すると、被嵌合部24の第2係止突起24aが、嵌合部21bの第1係止突起21fの上方から接触し、この状態において、係合部21eと被係合部27aとが平面視で重ならないように、カートリッジ101を外装モジュール100に対して下方に押し込む。本実施形態においては、被係合部27aがローレット状に形成されているため、位置合わせをすることなくカートリッジ101を外装モジュール100に対して下方に押し込むことができる。
【0048】
すると、第2係止突起24aが第1係止突起21fを下方に乗り越えることで、第2係止突起24aが第1係止突起21fに下方から係止される。これにより、被嵌合部24内に嵌合部21bがアンダーカット嵌合される。その後、被嵌合部24が底壁21aに近接又は当接することで、カートリッジ101の挿入が完了する。この状態において、外装モジュール100に対するカートリッジ101の上下方向の移動が規制される。
【0049】
一方、第2係止突起24aが第1係止突起21fを下方に乗り越える過程で、隣り合う被係合部27a同士の間に係合部21eが進入する。これにより、係合部21eと被係合部27aとが周方向に係合する。その結果、操作体21に対する固定軸部材23aの周方向の移動が規制される。また、係合部21eが隣り合う被係合部27a同士の間に進入することで、挿入部27が嵌合部21bの内側に挿入される。これにより、嵌合部21bが挿入部27と被嵌合部24との間で径方向に挟持される。その結果、外装モジュール100に対するカートリッジ101の径方向の移動が規制される。
以上により、外装モジュール100に対するカートリッジ101の装着が完了する。
【0050】
内容物を使い切った場合等において、外装モジュール100からカートリッジ101を取り外す際は、外装モジュール100に対してカートリッジ101を上方に引き上げる。すると、第2係止突起24aが第1係止突起21fを上方に乗り越えることで、被嵌合部24と嵌合部21bとの嵌合が解除される。また、外装モジュール100に対してカートリッジ101を引き上げることで、嵌合部21bが被嵌合部24と挿入部27との間から抜け出すとともに、係合部21eが隣り合う被係合部27a同士の間から抜け出す。
その結果、外装モジュール100からカートリッジ101が取り外される。
【0051】
ここで、本実施形態の繰出容器1において、被嵌合部24の第2係止突起24aのうち凹部24dとは周方向で異なる部分に切欠部24bを形成した。
この構成によれば、繰出部材23を成形した後の離型時における被嵌合部24の径方向外側への弾性変形量を抑制し、被嵌合部24のうち特に凹部24dが形成されている部分に過剰な負荷がかかることを回避して被嵌合部24にクラックが生じることを抑制できる。また、切欠部24bが凹部24dとは周方向で異なる位置に形成されており、特に周方向の双方で凹部24dから90度離間した位置に形成されているので、離型時のクラックの発生をより確実に抑制できる。さらに、上下方向から見た平面視において、凹部24dが摺接リング24fと少なくとも部分的に重なる径方向位置に形成されているので、繰出部材23の成型時における材料の良好な湯流れを維持できる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、繰出部材23が内側伝達軸26及び外側伝達軸23bを備える構成について説明したが、この構成に限られない。繰出部材23は、内側伝達軸26を少なくとも有していればよい。
上述した実施形態では、操作部として操作体21及び中具22を備える構成について説明したが、この構成に限られない。操作筒部は、操作体21のみを備えていてもよい。
上述した実施形態では、伝達軸の外周面に螺旋溝が形成され、可動軸が伝達軸の外側を取り囲む構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、筒状の伝達軸の内周面に螺旋溝が形成され、係合突起を有する可動軸が伝達軸の内側に配置される構成であってもよい。
【0053】
上述した実施形態では、本発明に係る嵌合部、被嵌合部及び挿入部が筒状に形成される構成について説明したが、この構成に限られない。少なくとも被嵌合部が筒状であれば、嵌合部は柱状等であってもよい。
上述した実施形態では、切欠部24b及び凹部24dを一対ずつ形成した構成について説明したが、この構成に限られない。凹部24d及び切欠部24bの数は、1以上であればよく、同数である必要はない。また、凹部24dは、切欠部24bと周方向で異なる位置に形成されていればよい。
【0054】
上述した実施形態では、本発明に係る嵌合部及び被嵌合部の平面視形状が円形状(円筒状)に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。嵌合部及び被嵌合部の平面視形状は、互いに対応する多角形状等であってもよい。この場合、嵌合部及び被嵌合部同士が嵌合した状態において、対応する各角部同士が互いに周方向に係合することで、嵌合部と被嵌合部との周方向の相対回転が規制される。すなわち、互いに対応する角部同士が回り止め部を構成する。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:繰出容器
10:操作部
11:スリーブ
12:中皿
21a:底壁
21b:嵌合部
21f:第1係止突起
24:被嵌合部
24a:第2係止突起
24d:凹部
24f:摺接リング
26:内側伝達軸(伝達軸)
O:容器軸