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特開2025-2117ラミネート型電池の製造方法、及びラミネート型電池の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002117
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ラミネート型電池の製造方法、及びラミネート型電池の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20241226BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20241226BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M50/105
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102054
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿下 健一
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011BB04
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD06
5H011DD26
5H011KK03
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM01
5H029AM12
5H029BJ04
5H029CJ03
5H029DJ02
5H029EJ01
5H029EJ12
5H029HJ00
(57)【要約】
【課題】融着部の曲げ部における保護樹脂層での亀裂の発生の有無を検知することができるラミネート型電池の製造方法及びラミネート型電池の製造装置の提供。
【解決手段】電極体とラミネートフィルムとを有し、ラミネートフィルムは金属層44u、44dと、保護樹脂層42u、42dと、が少なくとも積層された構造を有し、ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部40をする、ラミネート型電池の製造方法であって、融着部40に折り曲げ部材6を接触させて、90°以下の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げて1箇所以上の曲げ部40aを形成する折り曲げ工程を有し、折り曲げ部材6は導電性の素材で構成され、折り曲げ工程は、折り曲げ部材6とラミネートフィルムの金属層44u、44dとの導通を確認しながら折り曲げを実施する工程である、ラミネート型電池の製造方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、前記ラミネートフィルムは金属層と、前記金属層の外側に保護樹脂層と、が少なくとも積層された構造を有し、前記ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部をする、ラミネート型電池の製造方法であって、
前記融着部に折り曲げ部材を接触させて、90°以下の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げて1箇所以上の曲げ部を形成する折り曲げ工程を有し、
前記折り曲げ部材は導電性の素材で構成され、
前記折り曲げ工程は、前記折り曲げ部材と前記ラミネートフィルムの前記金属層との導通を確認しながら折り曲げを実施する工程である、ラミネート型電池の製造方法。
【請求項2】
前記折り曲げ部材が、前記ラミネートフィルムの前記曲げ部における谷折り側に支点として接触させる支点部材である、請求項1に記載のラミネート型電池の製造方法。
【請求項3】
前記折り曲げ工程は、前記折り曲げ部材として折り曲げロールが配置され、前記折り曲げロールの回転に準ずる方向に前記ラミネート型電池を移動させながら前記ラミネートフィルムにおける前記融着部に前記折り曲げロールを接触させて前記曲げ部を形成する工程である、請求項1に記載のラミネート型電池の製造方法。
【請求項4】
前記折り曲げ工程は、前記ラミネート型電池の移動方向に複数の前記折り曲げロールが配置され、前記ラミネート型電池を移動させながら前記ラミネートフィルムにおける前記融着部に複数の前記折り曲げロールを順次接触させて前記曲げ部を形成し、少なくとも最後に前記曲げ部に接触する前記折り曲げロールと前記ラミネートフィルムの前記金属層との導通を確認しながら折り曲げを実施する工程である、請求項3に記載のラミネート型電池の製造方法。
【請求項5】
電極体と、前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、前記ラミネートフィルムは金属層と、前記金属層の外側に保護樹脂層と、が少なくとも積層された構造を有し、前記ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部をする、ラミネート型電池の製造装置であって、
前記融着部に接触して90°以下の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げて曲げ部を形成する、導電性の素材で構成された折り曲げ部材と、
前記折り曲げ部材及び前記ラミネートフィルムの前記金属層に接続され、前記折り曲げ部材と前記金属層との導通を確認する、導通確認手段と、を有するラミネート型電池の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラミネート型電池の製造方法、及びラミネート型電池の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極体がラミネートフィルムに覆われたラミネート型電池では、電極体を封入するためにラミネートフィルムの一部を融着して融着部を形成することが行われている。そして、電池における構造効率を向上させるため、この融着部を折り曲げることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ラミネート加工が施された外装体において、少なくとも1つの端部に折り曲げ部を有する二次電池の製造方法であって、外装体の端部の折り曲げの基点に押さえ板を当接させる工程と、当接させる工程後、端部を挟むように押さえ板と押さえ板に対向する位置に配置されている押し付け板とを摺動させて、基点を中心に端部を折り曲げるとともに、押さえ板と押し付け板とで端部を挟持することにより折り曲げ部を形成する工程と、を備え、押し付け板の端部と摺動する面は、端部の折り曲げを行う傾斜面と端部を挟持する挟持面とを有し、傾斜面は押し付け板の幅方向に直交する断面において、押し付け板の断面積が摺動方向に狭まるように傾斜しており、傾斜面は前記幅方向に傾斜している二次電池の製造方法、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-200973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラミネートフィルムの融着部を90°以下の角度となるよう折り曲げて曲げ部を形成する際、ラミネートフィルムの保護樹脂層において亀裂が生じることがあった。なお、この亀裂の発生は、曲げ部における山折り側の保護樹脂層に生じることもあるが、特に曲げ部における谷折り側の保護樹脂層において顕著である。そのため、曲げ部における谷折り側及び山折り側の保護樹脂層における亀裂の発生を検知することができ、これにより保護樹脂層において亀裂が生じたラミネート型電池(つまり欠陥を有するラミネート型電池)を、出荷前に取り除くことができる、ラミネート型電池の製造方法及び製造装置が求められている。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、融着部の曲げ部における保護樹脂層での亀裂の発生の有無を検知することができるラミネート型電池の製造方法及びラミネート型電池の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>
電極体と、前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、前記ラミネートフィルムは金属層と、前記金属層の外側に保護樹脂層と、が少なくとも積層された構造を有し、前記ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部をする、ラミネート型電池の製造方法であって、
前記融着部に折り曲げ部材を接触させて、90°以下の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げて1箇所以上の曲げ部を形成する折り曲げ工程を有し、
前記折り曲げ部材は導電性の素材で構成され、
前記折り曲げ工程は、前記折り曲げ部材と前記ラミネートフィルムの前記金属層との導通を確認しながら折り曲げを実施する工程である、ラミネート型電池の製造方法。
<2>
前記折り曲げ部材が、前記ラミネートフィルムの前記曲げ部における谷折り側に支点として接触させる支点部材である、<1>に記載のラミネート型電池の製造方法。
<3>
前記折り曲げ工程は、前記折り曲げ部材として折り曲げロールが配置され、前記折り曲げロールの回転に準ずる方向に前記ラミネート型電池を移動させながら前記ラミネートフィルムにおける前記融着部に前記折り曲げロールを接触させて前記曲げ部を形成する工程である、<1>又は<2>に記載のラミネート型電池の製造方法。
<4>
前記折り曲げ工程は、前記ラミネート型電池の移動方向に複数の前記折り曲げロールが配置され、前記ラミネート型電池を移動させながら前記ラミネートフィルムにおける前記融着部に複数の前記折り曲げロールを順次接触させて前記曲げ部を形成し、少なくとも最後に前記曲げ部に接触する前記折り曲げロールと前記ラミネートフィルムの前記金属層との導通を確認しながら折り曲げを実施する工程である、<3>に記載のラミネート型電池の製造方法。
<5>
電極体と、前記電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、前記ラミネートフィルムは金属層と、前記金属層の外側に保護樹脂層と、が少なくとも積層された構造を有し、前記ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部をする、ラミネート型電池の製造装置であって、
前記融着部に接触して90°以下の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げて曲げ部を形成する、導電性の素材で構成された折り曲げ部材と、
前記折り曲げ部材及び前記ラミネートフィルムの前記金属層に接続され、前記折り曲げ部材と前記金属層との導通を確認する、導通確認手段と、を有するラミネート型電池の製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、融着部の曲げ部における保護樹脂層での亀裂の発生の有無を検知することができるラミネート型電池の製造方法及びラミネート型電池の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るラミネート型電池の製造方法及び製造装置によって製造されるラミネート型電池を例示する概略断面図である。
図2】本実施形態に係るラミネート型電池の製造方法における曲げ部を形成する折り曲げ工程、及び曲げ部を形成するラミネート型電池の製造装置を例示する概略断面図である。
図3図2において、保護樹脂層に亀裂が発生した状態を例示する概略断面図である。
図4】固体電池の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ラミネート型電池の製造方法及び製造装置>
本開示の実施形態に係るラミネート型電池の製造方法は、電極体と、電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、ラミネートフィルムは金属層と、金属層の外側に保護樹脂層と、が少なくとも積層された構造を有し、ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部をするラミネート型電池を製造する製造方法である。
ラミネート型電池の製造方法では、融着部に折り曲げ部材を接触させて、90°以下の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げて1箇所以上の曲げ部を形成する折り曲げ工程を有する。折り曲げ部材は導電性の素材で構成される。そして、折り曲げ工程では、折り曲げ部材とラミネートフィルムの金属層との導通を確認しながら折り曲げを実施する。
【0011】
本開示の実施形態に係るラミネート型電池の製造装置は、電極体と、電極体を覆って内部に封入するラミネートフィルムと、を有し、ラミネートフィルムは金属層と、金属層の外側に保護樹脂層と、が少なくとも積層された構造を有し、ラミネートフィルムは端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部をする、ラミネート型電池を製造する製造装置である。
ラミネート型電池の製造装置は、融着部に接触して90°以下の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げて曲げ部を形成する、導電性の素材で構成された折り曲げ部材と、折り曲げ部材及びラミネートフィルムの金属層に接続され、折り曲げ部材と金属層との導通を確認する、導通確認手段と、を有する。
【0012】
以下、本開示に係るラミネート型電池の製造方法及び製造装置の一実施形態について、図面を用いて説明する。
以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。
【0013】
図1は、本実施形態に係るラミネート型電池の製造方法及び製造装置によって製造されるラミネート型電池を例示する概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池10は、電極体2と、電極体2を覆って内部に封入するラミネートフィルム4と、を有する。ラミネートフィルム4は端部同士が重ね合わされて内面が融着された融着部40をする。そして、融着部40は90°以下の角度となるよう角状又は弧状に折り曲げられた曲げ部40aを有する。
【0014】
ここで、曲げ部40aを形成する折り曲げ工程、及び曲げ部40aを形成するためのラミネート型電池の製造装置について、図2を用いて説明する。
図2に示す融着部40は、ラミネートフィルム4の端部同士が重ね合わされて内面が融着されており、つまりラミネートフィルム4の一端4uと他端4dとが重ね合わされている。ラミネートフィルム4の一端4u及び他端4dは、いずれも金属層44u、44dと、金属層44u、44dの外側に保護樹脂層42u、42dと、金属層44u、44dの内側に融着樹脂層46u、46dと、が積層された3層構造を有する。
【0015】
図2では、折り曲げ部材としての折り曲げロール6が、融着部40におけるラミネートフィルム4の一端4u側の保護樹脂層42uに接触しており、折り曲げロール6が接触している点を支点として、90°以下の角度となるよう折り曲げることで曲げ部40aが形成される。つまり、折り曲げロール6は曲げ部40aにおける谷折り側に支点として接触させられる支点部材である。なお、折り曲げロール6はラミネートフィルム4との接触点が図2における手前側に向かう方向に回転している。融着部40を有するラミネート型電池は、折り曲げロール6の回転に準ずる方向、つまり図2における手前側に向かう方向に移動しており、移動する融着部40に折り曲げロール6を接触させることで曲げ部40aが形成される。なお、図示は省略するが、曲げ部40aにおける山折り側(図2における融着部40の下側)にも、折り曲げ部材としての対向部材(例えば対向ロール)を接触させてもよい。
【0016】
図2に示すラミネート型電池の製造装置は、導通確認手段としての電流計8を有する。電流計8は、折り曲げ部材としての折り曲げロール6、及びラミネートフィルム4における一端4u側の金属層44uに対して、導線82、84により接続される。なお、ラミネートフィルム4における一端4u側の金属層44uは、導線82と接続させるため、一部が露出する態様となっている。
【0017】
ここで、従来におけるラミネート型電池の製造方法及び製造装置について説明する。
ラミネートフィルムの融着部を90°以下の角度となるよう折り曲げて曲げ部を形成する際、ラミネートフィルムの保護樹脂層において亀裂が生じることがあった。これは、折り曲げによって保護樹脂層の曲げ部の箇所に応力が集中することで、生じる亀裂であると考えられる。なお、この亀裂の発生は、曲げ部における山折り側の保護樹脂層に生じることもあるが、特に曲げ部における谷折り側の保護樹脂層において顕著である。谷折り側の方がより応力が集中し易く、且つ折り曲げ部材が押し当てられていることでこの接触位置を起点として亀裂が生じ易くなるためであると考えられる。
また、曲げ部における谷折り側の保護樹脂層に亀裂が生じている場合、亀裂の有無の判別が難しくなり、さらに曲げ部における折り曲げの角度が浅くなるほど(つまり角度が鋭角になるほど)亀裂の判別はより難しくなる。しかし、薄膜であるラミネートフィルムにおいてはX線検査などの非破壊検査による亀裂の発見が難しい。
そのため、曲げ部における谷折り側及び山折り側の保護樹脂層における亀裂の発生を検知することができる、ラミネート型電池の製造方法及び製造装置が求められていた。
【0018】
これに対し、本実施形態では、図2に示すように折り曲げ部材である折り曲げロール6及び金属層44uに接続され、折り曲げロール6と金属層44uとの導通を確認する、導通確認手段として電流計8を有する。そして、電流計8により、折り曲げロール6と金属層44uとの導通を確認しながら折り曲げが実施される。ラミネートフィルム4の一旦4u側の保護樹脂層42uに亀裂が発生していない状態(つまり図2に示す状態)では、折り曲げロール6と金属層44uとは接触しておらず、電気的な導通は確認されない。しかし、図3に示すようにラミネートフィルム4の一旦4u側の保護樹脂層42uに亀裂420が発生して、折り曲げロール6と金属層44uとが接触した状態となると、電流計8において電気的な導通が確認される。これにより、本実施形態では、保護樹脂層に裂けが生じている場合に電気的な導通が確認されるため、製造されるラミネート型電池のラミネートフィルムにおける保護樹脂層での裂けの有無を確認することができる。その結果、保護樹脂層において亀裂が生じたラミネート型電池(つまり欠陥を有するラミネート型電池)を、出荷前に取り除くことができる。
【0019】
なお、図2では、導通確認手段として電流計8に接続される折り曲げ部材としての折り曲げロール6が、融着部40の曲げ部40aにおける谷折り側に支点として接触させられる支点部材である態様を示している。しかし、これに限定されるものではなく、導通確認手段に接続される折り曲げ部材(例えば折り曲げロール)を、融着部の曲げ部における山折り側に接触させてもよい。この場合、融着部の曲げ部における山折り側の保護樹脂層での亀裂の発生の有無を検知することができる。また、導通確認手段に接続される折り曲げ部材(例えば折り曲げロール)を、融着部の曲げ部における谷折り側及び山折り側の両方に接触させてもよい。この場合、融着部の曲げ部における山折り側の保護樹脂層及び谷折り側の保護樹脂層での亀裂の発生の有無を検知することができる。
【0020】
本開示の実施形態においては、ラミネート型電池の移動方向に複数の折り曲げロールが配置されていてもよく、ラミネート型電池を移動させながらラミネートフィルムにおける融着部に複数の折り曲げロールを順次接触させて折り曲げを行うことで曲げ部を形成してもよい。この場合には、少なくとも最後に曲げ部に接触する折り曲げロールとラミネートフィルムの金属層との導通を確認しながら折り曲げを実施することが好ましい。最後に曲げ部に接触する折り曲げロールとラミネートフィルムの金属層との導通を確認することで、この折り曲げロールが曲げ部に接触するよりも前に生じた亀裂についても検知することができる。
【0021】
融着部における曲げ部の数は1箇所以上であり、2箇所以上の曲げ部を有していてもよい。融着部の曲げ部における角度は90°以下であればよく、90℃よりも鋭角な角度であってもよく、また曲げ部の角度が0°(つまり融着部が180°折り曲げられた形状の曲げ部)であってもよい。曲げ部は角状又は弧状に曲げられた形状を有する。角状とは角を有する形状を意味し、弧状とは角を有さない湾曲状の形状を意味する。
【0022】
折り曲げ部材として図2には折り曲げロールを示したが、これに限定されるものではない。例えば折り曲げ部材として、曲げ部の谷折り側に支点部材となる板状部材を接触させ、曲げ部の山折り側にブロック状の押圧部材を接触させて、折り曲げる態様等であってもよい。折り曲げ部材は、少なくとも一部が導電性の素材で構成される。具体的には、融着部の保護樹脂層に接触する箇所(つまり保護樹脂層に亀裂が生じた際にその内側の金属層と接触する箇所)と、導通確認手段に接続される箇所と、が電気的に導通されるように少なくとも一部が導電性の素材で構成される。折り曲げ部材は、全体が導電性の素材で構成されていてもよい。導電性の素材としては、例えば金属が挙げられる。
【0023】
導通確認手段として図2には電流計を示したが、これに限定されるものではなく、例えば電圧計、及び抵抗測定器など、電気的な導通を確認可能な手段であればよい。
【0024】
(電池の部材)
次いで、本実施形態に係るラミネート型電池の製造方法及び製造装置によって製造されるラミネート型電池を構成する、電極体及びラミネートフィルムについて説明する。
【0025】
(1)ラミネートフィルム
ラミネートフィルムは、金属層と、金属層の外側に保護樹脂層と、が少なくとも積層された構造を有する。なお、さらに金属層の内側に融着樹脂層を有する三層構造のフィルムであってもよい。
【0026】
融着樹脂層の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が挙げられる。保護樹脂層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンが挙げられる。融着樹脂層の厚さは、例えば40μm以上100μm以下である。金属層の厚さは、例えば30μm以上60μm以下である。保護樹脂層の厚さは、例えば20μm以上60μm以下である。ラミネートフィルム全体の厚さは、例えば70μm以上、220μm以下である。
【0027】
(2)電極体
電極体は、電池の発電要素として機能する。電極体は、通常、正極集電体、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体を、厚さ方向において、この順に有する。
【0028】
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。正極活物質の形状は、例えば粒子状である。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。また、正極活物質として硫黄(S)を用いてもよい。
【0029】
正極活物質として、リチウム複合酸化物を含むことが好ましい。リチウム複合酸化物は、F、Cl、N、S、Br及びIよりなる群から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。また、リチウム複合酸化物は、空間群R-3m、Immm、及びP63-mmc(P63mc、P6/mmcともいう。)より選ばれる少なくとも1つの空間群に属する結晶構造を有してもよい。また、リチウム複合酸化物は、遷移金属、酸素、及びリチウムの主たる配列がO2型構造であってもよい。
【0030】
R-3mに属する結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、LiMeαβ(MeはMn、Co、Ni、Fe、Al、Cu、V、Nb、Mo、Ti、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、Ag、Ru、W、B、Si及びPからなる群より選択される少なくとも一種を表し、Xは、F、Cl、N、S、Br及びIからなる群より選択される少なくとも一種を表し、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.0、1≦α<2、0<β≦1を満たす。)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
Immmに属する結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、Lix1 (1.5≦x1≦2.3を満たし、MはNi、Co、Mn、Cu及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種を含み、Aは少なくとも酸素を含み、Aに占める酸素の比率は85原子%以上である。)で表される複合酸化物(具体的な例としてLiNiO)、Lix11A 1-x21B x22-y (0≦x2≦0.5、0≦y≦0.3であり、x2及びyの少なくとも一方は0でなく、M1AはNi、Co、Mn、Cu及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種を表し、M1BはAl、Mg、Sc、Ti、Cr、V、Zn、Ga、Zr、Mo、Nb、Ta及びWよりなる群から選択される少なくとも1種を表し、A2はF、Cl、Br、S及びPよりなる群から選択される少なくとも1種を表す。)で表される複合酸化物が挙げられる。
【0032】
P63-mmcに属する結晶構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、M1M2(M1はアルカリ金属(Na及びKの少なくとも一種が好ましい)を表し、M2は遷移金属(Mn、Ni、Co及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい)を表し、x+yは0<x+y≦2を満たす。)で表される複合酸化物が挙げられる。
【0033】
O2型構造を有するリチウム複合酸化物としては、例えば、Li[Liα(MnCo1-α]O(0.5<x<1.1、0.1<α<0.33、0.17<a<0.93、0.03<b<0.50、0.04<c<0.33であり、MはNi、Mg、Ti、Fe、Sn、Zr、Nb、Mo、W及びBiよりなる群から選ばれる少なくとも一種を表す。)で表される複合酸化物が挙げられ、具体的な例としてLi0.744[Li0.145Mn0.625Co0.115Ni0.115]O等が挙げられる。
【0034】
また、正極は、正極活物質に加え、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及びハロゲン化物固体電解質からなる固体電解質群より選ばれる固体電解質を含むことが好ましく、正極活物質の表面の少なくとも一部が、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、又はハロゲン化物固体電解質で被覆されている態様がより好ましい。正極活物質の表面の少なくとも一部を被覆するハロゲン化物固体電解質としては、Li6-(4-x)b(Ti1-xAl(0<x<1、0<b≦1.5)〔LTAF電解質〕が好ましい。
【0035】
導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。固体電解質は、ゲル電解質等の有機固体電解質であってもよく、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質等の無機固体電解質であってもよい。また、液体電解質(電解液)は、例えば、LiPF等の支持塩と、カーボネート系溶媒等の溶媒とを含有する。また、バインダーとしては、例えば、ゴム系バインダー、フッ化物系バインダーが挙げられる。
【0036】
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する。負極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、Li、Si等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、LiTi12等の酸化物活物質が挙げられる。負極集電体の形状は、例えば、箔状、メッシュ状である。導電材、電解質およびバインダーについては、上述した内容と同様である。
【0037】
電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に配置され、少なくとも電解質を含有する。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。電解質層としては、固体電解質層であることが好ましい。電解質層は、セパレータを有していてもよい。
【0038】
固体電解質として、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及びハロゲン化物固体電解質からなる固体電解質群より選ばれる少なくとも1つの固体電解質種を含むことが好ましい。
【0039】
硫化物固体電解質として、アニオン元素の主成分として硫黄(S)を含有することが好ましく、更には例えばLi元素、A元素、及びS元素を含有することが好ましい。A元素は、P、As、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、及びInよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。硫化物固体電解質は、O及びハロゲン元素の少なくとも一方を更に含有してもよい。ハロゲン元素(X)としては、例えば、F、Cl、Br、I等が挙げられる。硫化物固体電解質の組成は、特に限定されず、例えば、xLiS・(100-x)P(70≦x≦80)、yLiI・zLiBr・(100-y-z)(xLiS・(1-x)P)(0.7≦x≦0.8、0≦y≦30、0≦z≦30)が挙げられる。硫化物固体電解質は、下記一般式(1)で表される組成を有してもよい。
Li4-xGe1-x (0<x<1) ・・・式(1)
式(1)において、Geの少なくとも一部は、Sb、Si、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V及びNbよりなる群から選ばれる少なくとも一つで置換されてもよい。また、Pの少なくとも一部は、Sb、Si、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、V及びNbよりなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されてもよい。Liの一部は、Na、K、Mg、Ca及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1つで置換されてもよい。Sの一部は、ハロゲンで置換されてもよい。ハロゲンとしては、F、Cl、Br及びIの少なくとも1つである。
【0040】
酸化物固体電解質として、アニオン元素の主成分として、酸素(O)を含有することが好ましく、例えば、Li、Q元素(Qは、Nb、B、Al、Si、P、Ti、Zr、Mo、W及びSの少なくとも一種を表す。)、及びOを含有してもよい。酸化物固体電解質としては、ガーネット型固体電解質、ペロブスカイト型固体電解質、ナシコン型固体電解質、Li-P-O系固体電解質、Li-B-O系固体電解質等が挙げられる。ガーネット型固体電解質としては、例えば、LiLaZr12、Li7-xLa(Zr2-xNb)O12(0≦x≦2)、LiLaNb12等が挙げられる。ペロブスカイト型固体電解質としては、例えば、(Li、La)TiO、(Li、La)NbO、(Li、Sr)(Ta、Zr)O等が挙げられる。ナシコン型固体電解質としては、例えば、Li(Al、Ti)(PO、Li(Al、Ga)(PO等が挙げられる。Li-P-O系固体電解質としては、LiPO、LIPON(LiPOのOの一部をNに置換した化合物)、Li-B-O系固体電解質としては、LiBO、LiBOのOの一部をCで置換した化合物等が挙げられる。
【0041】
ハロゲン化物固体電解質として、Li、M及びXを含む固体電解質(MはTi、Al及びYの少なくとも1つを表し、XはF、Cl又はBrを表す。)が好適である。具体的には、Li6-3z(XはCl又はBrを表し、zは0<z<2を満たす。)、Li6-(4-x)b(Ti1-xAl(0<x<1、0<b≦1.5)が好ましい。Li6-3zの中でも、リチウムイオン伝導度に優れる点で、LiYX(XはCl又はBr表す。)がより好ましく、更にはLiYClが好ましい。また、Li6-(4-x)b(Ti1-xAl(0<x<1、0<b≦1.5)は、例えば、硫化物固体電解質の酸化分解を抑える等の観点から、硫化物固体電解質等の固体電解質とともに含まれることが好ましい。
【0042】
正極集電体は、正極活物質層の集電を行う。正極集電体は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、カーボン等が挙げられ、アルミニウム合金箔又はアルミニウム箔が好ましい。アルミニウム合金箔及びアルミニウム箔は、粉末を用いて製造されてもよい。正極集電体の形状は、例えば、箔状、メッシュ状である。
【0043】
負極集電体は、負極活物質層の集電を行う。負極集電体の材料としては、例えば、銅、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。
【0044】
・電池構造
固体電池の構造は、正極/固体電解質層/負極の積層構造を有する。固体電池には、電解質として固体電解質を用いたいわゆる全固体電池が含まれ、固体電解質は電解質全量に対して10質量%未満の電解液を含んでもよい。なお、固体電解質は、無機系固体電解質とポリマー電解質を含む複合固体電解質であってもよい。
【0045】
正極は、正極活物質層と集電体とを有し、負極は、負極活物質層と集電体とを有する。
固体電解質層は、単層構造でもよいし、2層以上の多層構造でもよい。
固体電池は、例えば、図4に示す断面構造を有していてもよく、固体電解質層Bは図4のように2層構造でもよい。図4は、固体電池の一例を示す概略断面図である。図4に示す固体電池は、負極集電体113及び負極活物質層Aを含む負極と、固体電解質層Bと、正極集電体115及び正極活物質層Cを含む正極と、を有している。負極活物質層Aは、負極活物質101、導電助剤105及びバインダー109を含む。正極活物質層Cは、被覆正極活物質103、導電助剤107及びバインダー111を含み、被覆正極活物質103は、正極活物質の表面がLTAF電解質又はLiNbO電解質で被覆されている。
また、固体電池は、正極/固体電解質層/負極の積層構造の積層端面(側面)を樹脂で封止して構成されていてもよい。電極の集電体は、表面に緩衝層、弾性層、又はPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタ層が配置された構成であってもよい。
【0046】
・電池
本開示におけるラミネート型電池は、典型的にはリチウムイオン二次電池である。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0047】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0048】
2 電極体、4 ラミネートフィルム、4a 一端、4d 他端、10 ラミネート型電池、40 融着部、40a 曲げ部、42u、42d 保護樹脂層、44u、44d 金属層、46u、46d 融着樹脂層、6 折り曲げロール、8 電流計、84、86 導線、101 負極活物質、103 被覆正極活物質、105、107 導電助剤、109、111 バインダー、113 負極集電体、115 正極集電体、A 負極活物質層、B 固体電解質層、C 正極活物質層
図1
図2
図3
図4