(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021217
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】情報コード読取装置、情報コード読取方法、及び情報コード読取プログラム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/12 20060101AFI20250205BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20250205BHJP
G06K 7/14 20060101ALI20250205BHJP
G06F 3/0487 20130101ALI20250205BHJP
【FI】
G06K7/12
G06K7/10 372
G06K7/10 436
G06K7/14 017
G06F3/0487
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125001
(22)【出願日】2023-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000179904
【氏名又は名称】山本化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】岡部 達哉
(72)【発明者】
【氏名】尼子 尊道
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA41
5E555AA54
5E555BA04
5E555BB04
5E555CA10
5E555CA42
5E555CB21
5E555CB48
5E555FA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可視光では認識できない透明な情報コードを読み取ることができる情報コード読取装置、情報コード読取方法及び情報コード読取プログラムを提供する。
【解決手段】携帯端末装置14は、印刷物12に印刷された可視光では視認できない透明QRコード10を可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取るQRコード(登録商標)読取装置であって、赤外光による影響を緩和する撮影を行うように誘導部が操作者の撮影操作を誘導し、赤外光照射部24によって赤外光を照射しながら、透明QRコード10をカメラ22が撮影して透明QRコード10を読み取る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光では視認できない情報コード(10)を可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取る情報コード読取装置(14)であって、
被写体を撮影する撮影部(22)と、
前記所定波長の光を照射する照射部(24)と、
前記撮影部によって前記情報コードを撮影する場合に、前記所定波長の光による影響を緩和する撮影を行うように操作者の撮影操作を誘導する誘導部(38)と、
を備える情報コード読取装置。
【請求項2】
前記誘導部は、前記撮影部と前記照射部との位置関係に基づいて、前記撮影部による前記情報コードの撮影位置が所定位置となるように、操作者の撮影操作を誘導する、請求項1に記載の情報コード読取装置。
【請求項3】
前記撮影部が撮影した画像を表示する表示部(20)を備え、
前記誘導部は、前記撮影部による前記情報コードの撮影位置が前記所定位置となるように、前記撮影部によって撮影された画像の一部領域を前記表示部に拡大表示させる、
請求項2に記載の情報コード読取装置。
【請求項4】
前記情報コードの撮影場所が屋内又は屋外であるかの判定を行う場所判定部(36)を備え、
前記誘導部は、前記場所判定部による判定結果に基づいて、操作者の撮影操作を誘導する、
請求項1又は請求項2に記載の情報コード読取装置。
【請求項5】
前記誘導部は、前記場所判定部による判定結果に基づいて、前記撮影部による前記情報コードの撮影位置が所定位置となるように、操作者の撮影操作を誘導する、請求項4に記載の情報コード読取装置。
【請求項6】
前記誘導部は、前記情報コードと前記撮影部との距離が前記場所判定部による判定結果に基づいた距離になるように、操作者の撮影操作を誘導する、請求項4に記載の情報コード読取装置。
【請求項7】
前記距離は、前記情報コードの撮影が屋外で行われる場合には屋内で行われるよりも短い、請求項6に記載の情報コード読取装置。
【請求項8】
前記誘導部は、前記撮影部と前記情報コードとの角度を調整するように、操作者の撮影操作を誘導する、請求項1又は請求項2に記載の情報コード読取装置。
【請求項9】
前記誘導部は、前記撮影部によって撮影された前記情報コードの歪みが相対的に小さい場合には前記角度を大きくし、前記歪みが相対的に大きい場合には前記角度を小さくするように、操作者の撮影操作を誘導する、請求項8に記載の情報コード読取装置。
【請求項10】
前記誘導部は、前記情報コードの撮影場所が屋外であり、前記情報コードを撮影しているものの前記情報コードが認識されない場合には、太陽光が前記情報コードを照らさないように撮影者の撮影向きを誘導する、請求項2に記載の情報コード読取装置。
【請求項11】
可視光では視認できない情報コードを可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取る情報コード読取方法であって、
前記所定波長の光による影響を緩和する撮影を行うように誘導部が操作者の撮影操作を誘導し、
照射部によって前記所定波長の光を照射しながら、前記情報コードを撮影部が撮影して前記情報コードを読み取る、情報コード読取方法。
【請求項12】
可視光では視認できない情報コードを可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取る情報コード読取装置が有する情報コード読取プログラムであって、
コンピュータを、
被写体を撮影する撮影部によって前記情報コードを撮影する場合に、前記所定波長の光による影響を緩和する撮影を行うように操作者の撮影操作を誘導する誘導部、
として機能させるための情報コード読取プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報コード読取装置、情報コード読取方法、及び情報コード読取プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、QRコード(登録商標)等の二次元コードやバーコード等の一次元コード等、様々な情報コードが普及している。
【0003】
このような情報コードにおいて、人間には視認でいない透明二次元コードの開発も行われている。透明二次元コードを用いる理由は様々である。例えば、複数の二次元コードを商品等に印刷するとデザインの観点から好ましくない、消費者が知る必要のない例えば流通に関する情報を透明二次元コードに記憶させる等の理由である。
【0004】
特許文献1には、可視光に対して吸収特性を示さず、且つ、赤外光に対して吸収特性を示すトナーで透明二次元コードを用紙に印刷することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、実際には、可視光では視認できない情報コードをカメラで撮影しても読み取りが困難であった。
【0007】
本発明は上記背景に鑑み、可視光では認識できない透明な情報コードを読み取ることができる、情報コード読取装置、情報コード読取方法、及び情報コード読取プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために以下の技術的手段を採用する。特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
本発明の一態様の情報コード読取装置は、可視光では視認できない情報コード(10)を可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取る情報コード読取装置(14)であって、被写体を撮影する撮影部(22)と、前記所定波長の光を照射する照射部(24)と、前記撮影部によって前記情報コードを撮影する場合に、前記所定波長の光による影響を緩和する撮影を行うように操作者の撮影操作を誘導する誘導部(38)と、を備える。
【0010】
可視光では視認できない情報コードである透明情報コードは、例えば赤外線や紫外線等の可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取られる。しかしながら、このような透明情報コードの読み取りは困難であり、読み取りが困難である原因も明らかでなかった。発明者はこの原因が透明情報コードを照らす所定波長の光にあり、透明情報コードを撮影する際には所定波長の光による影響を緩和する必要があることを新たに見出した。
【0011】
そこで本構成の情報コード読取装置は、透明情報コードを撮影する場合に、所定波長の光による影響を緩和する撮影を行うように操作者を誘導する。操作者は上記誘導に従って透明情報コードを撮影することで、本構成の情報コード読取装置は透明情報コードを読み取ることができる。
【0012】
上記の情報コード読取装置において、前記誘導部は、前記撮影部と前記照射部との位置関係に基づいて、前記撮影部による前記情報コードの撮影位置が所定位置となるように、操作者の撮影操作を誘導してもよい。
【0013】
発明者は透明情報コードの読み取りが困難な原因の一つに、照射部から照射される所定波長の光の反射が影響することを新たに見出した。すなわち、操作者が撮影部で透明情報コードを撮影しても、撮影部で撮影した画像が照射部からの光の反射の影響を強く受けていると、透明情報コードを読み取ることができない。本構成によれば、撮影部と照射部との位置関係に基づいて、透明情報コードの撮影位置が所定波長の光の影響を受け難い所定位置となるように操作者の撮影操作を誘導するので、より確実に透明情報コードを読み取ることができる。
【0014】
上記の情報コード読取装置において、前記撮影部が撮影した画像を表示する表示部(20)を備え、前記誘導部は、前記撮影部による前記情報コードの撮影位置が前記所定位置となるように、前記撮影部によって撮影された画像の一部領域を前記表示部に拡大表示させてもよい。
【0015】
本構成によれば、操作者は必然的に拡大表示の中央領域に透明情報コードを表示するように、情報コード読取装置を動かす。従って、本構成によれば、透明情報コードの撮影位置が反射光の影響を受け難い適切な位置となり、より確実な透明情報コードの読み取りが可能となる。
【0016】
上記の情報コード読取装置において、前記情報コードの撮影場所が屋内又は屋外であるかの判定を行う場所判定部(36)を備え、前記誘導部は、前記場所判定部による判定結果に基づいて、操作者の撮影操作を誘導してもよい。
【0017】
発明者は透明情報コードの読み取りが困難な原因の一つに、赤外線や紫外線等の所定波長が含まれる太陽光が影響することを新たに見出した。本構成によれば、撮影場所が屋内又は屋外であるかに基づいて操作者の撮影操作が誘導されるので、より確実に透明情報コードを読み取ることができる。
【0018】
上記の情報コード読取装置において、前記誘導部は、前記場所判定部による判定結果に基づいて、前記撮影部による前記情報コードの撮影位置が所定位置となるように、操作者の撮影操作を誘導してもよい。
【0019】
本構成によれば、透明情報コードと撮影部との位置関係が屋内又は屋外に基づいた適切な位置関係とされて透明情報コードの撮影が行われるので、より確実に透明情報コードを読み取ることができる。
【0020】
上記の情報コード読取装置において、前記誘導部は、前記情報コードと前記撮影部との距離が前記場所判定部による判定結果に基づいた距離になるように、操作者の撮影操作を誘導してもよい。
【0021】
本構成によれば、所定波長の光の影響が緩和される適切な距離で透明情報コードを撮影するので、より確実に透明情報コードを読み取ることができる。
【0022】
上記の情報コード読取装置において、前記距離は、前記情報コードの撮影が屋外で行われる場合には屋内で行われるよりも短くてもよい。
【0023】
本構成によれば、屋外の撮影において所定波長の光の影響が緩和されるので、より確実に透明情報コードを読み取ることができる。
【0024】
上記の情報コード読取装置において、前記誘導部は、前記撮影部と前記情報コードとの角度を調整するように、操作者の撮影操作を誘導してもよい。
【0025】
本構成によれば、撮影角度を最適化することで、より確実に透明情報コードを読み取ることができる。
【0026】
上記の情報コード読取装置において、前記誘導部は、前記撮影部によって撮影された前記情報コードの歪みが相対的に小さい場合には前記角度を大きくし、前記歪みが相対的に大きい場合には前記角度を小さくするように、操作者の撮影操作を誘導してもよい。
【0027】
本構成によれば、撮影された透明情報コードの歪みがより小さくなるので、より確実に透明情報コードを読み取ることができる。
【0028】
上記の情報コード読取装置において、前記誘導部は、前記情報コードの撮影場所が屋外であり、前記情報コードを撮影しているものの前記情報コードが認識されない場合には、太陽光が前記情報コードを照らさないように撮影者の撮影向きを誘導してもよい。
【0029】
本構成によれば、本構成によれば、屋外の撮影において所定波長の光の影響が緩和されるので、より確実に透明情報コードを読み取ることができる。
【0030】
本発明の一態様の情報コード読取方法は、可視光では視認できない情報コードを可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取る情報コード読取方法であって、前記所定波長の光による影響を緩和する撮影を行うように誘導部が操作者の撮影操作を誘導し、照射部によって前記所定波長の光を照射しながら、前記情報コードを撮影部が撮影して前記情報コードを読み取る。
【0031】
本発明の一態様の情報コード読取プログラムは、可視光では視認できない情報コードを可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取る情報コード読取装置が有する情報コード読取プログラムであって、コンピュータを、被写体を撮影する撮影部によって前記情報コードを撮影する場合に、前記所定波長の光による影響を緩和する撮影を行うように操作者の撮影操作を誘導する誘導部、として機能させる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、可視光では認識できない透明な情報コードを読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施形態の透明QRコードと携帯端末装置の概略構成図である。
【
図2】実施形態の携帯端末装置における透明QRコードの読み取りに関する機能ブロック図である。
【
図3】実施形態の携帯端末装置の拡大画面表示に関する外観図であり、(A)は拡大前の画面表示であり、(B)は拡大後の画面表示である。
【
図4】本実施形態の携帯端末装置による透明QRコードの撮影角度を示す外観図である。
【
図5】実施形態の透明QRコード読取処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施形態の操作者の撮影向きを変更される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0035】
図1は、本実施形態の透明QRコード10が印刷された印刷物12及び携帯端末装置14の概略構成図である。
【0036】
透明QRコード10は、可視光では視認できない情報コードであり、可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取られる。すなわち、印刷物12に印刷された透明QRコード10は、可視光以外の所定波長の光で照らされることによって視認可能となる。
【0037】
所定の波長は、例えば、赤外線領域の波長(以下「赤外光」という。)である。すなわち、本実施形態の透明QRコード10は、赤外光で照らされた状態で撮影されることで読み取られる。このため、本実施形態の透明QRコード10は、可視光は吸収せずに赤外光を吸収するインクによって印刷物12に印刷される。また、本実施形態では透明とする情報コードをQRコードとしているが、これは一例であり、他の2次元コードやバーコード等の1次元コードでもよい。
【0038】
印刷物12は、透明QRコード10が印刷可能な物であれば限定されない。透明QRコード10がシール等に印刷され、当該シールが他の物体に貼り付けられてもよい。
【0039】
携帯端末装置14は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の可搬型の情報処理装置であり、QRコードを読み取る機能を有する。なお、携帯端末装置14は、通話機能を有さずに、透明QRコード10を読み取る専用の読取装置でもよい。
【0040】
携帯端末装置14は、プログラムを実行可能なCPU(Central ProcessingUnit)等の演算装置、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、インターネットやイントラネットに接続するための通信装置、各種のコネクタを備える。また、携帯端末装置14は、画像を表示すると共に携帯端末装置14に対する操作を受け付けるタッチパネルディスプレイ20、被写体を撮影するカメラ22、赤外光を照射する赤外光照射部24、及び携帯端末装置14に対する操作を受け付ける操作部26を備える。
【0041】
なお、携帯端末装置14の一方の面である正面にタッチパネルディスプレイ20が備えられ、他方の面である裏面にカメラ22及び赤外光照射部24が備えられる。本実施形態の携帯端末装置14は、一例として、カメラ22が正面から見て右上に備えられ、赤外光照射部24が裏面の左上に備えられる。
【0042】
本実施形態では、携帯端末装置14の操作者が赤外光照射部24から赤外光を透明QRコード10に照らしつつ、カメラ22によって透明QRコード10を撮影することで、透明QRコード10に記録されている情報を読み出す。このとき、タッチパネルディスプレイ20には、透明QRコード10が操作者に視認可能なように表示されることとなる。
【0043】
ここで、透明QRコード10の読み取りは困難であり、読み取りが困難である原因も明らかでなかった。発明者はこの原因が透明QRコード10を照らす所定波長の光(本実施形態では赤外光)にあり、透明QRコード10を撮影する際には所定波長の光による影響を緩和する必要があることを新たに見出した。
【0044】
そこで、本実施形態の携帯端末装置14は、カメラ22によって透明QRコード10を撮影する場合に、赤外光による影響を緩和する撮影を行うように操作者の撮影操作を誘導する誘導処理を行う。操作者はこの誘導に従って透明QRコード10を撮影することで、携帯端末装置14は透明QRコード10を読み取ることができる。
【0045】
図2は、携帯端末装置14の透明QRコード読取機能に関する機能ブロック図である。
【0046】
携帯端末装置14は、タッチパネルディスプレイ20、カメラ22、赤外光照射部24と共に、通信部30、記憶部32、QRコード認識部34、撮影場所判定部36、及び誘導部38を備える。
【0047】
通信部30は、インターネット等を介して、他の情報処理装置等との間で情報の送受信を行う。
【0048】
記憶部32は、透明QRコード10の読み取りに関するプログラムや各種データを記憶する。
【0049】
QRコード認識部34は、カメラ22で撮影された画像データから透明QRコード10を認識する。QRコード認識部34は、認識した透明QRコード10に記録された情報を解読するためのデコード処理を行う。
【0050】
撮影場所判定部36は、透明QRコード10の撮影場所が屋内又は屋外であるかの判定を行う。なお、撮影場所は、カメラ22で検知される照度によって判定される。
【0051】
誘導部38は、カメラ22によって透明QRコード10を撮影する場合に、赤外光による影響を緩和する撮影を行うように操作者の撮影操作を誘導する誘導処理を行う。
【0052】
ここで、本実施形態の誘導部38が実行する誘導処理について説明する。なお、本実施形態の誘導処理には複数の処理がある。誘導部38は、以下に説明する複数の誘導処理のうち少なくとも一つを実行すればよい。
【0053】
まず、発明者は透明QRコード10の読み取りが困難な原因の一つに、赤外光照射部24から照射される赤外光の反射が影響することを新たに見出した。すなわち、操作者がカメラ22で透明QRコード10を撮影しても、カメラ22で撮影した画像が照射される赤外光の反射の影響を強く受けていると、透明QRコード10を読み取ることができない。例えば、一般的に操作者は、タッチパネルディスプレイ20の中央領域に透明QRコード10が表示されるように、カメラ22と透明QRコード10の位置関係を調整する。しかしながら、この位置関係では赤外光照射部24から照射される赤外光の反射の影響により、透明QRコード10の読み取りができない場合がある。
【0054】
そこで、本実施形態の誘導処理は、カメラ22と赤外光照射部24との位置関係に基づいて、カメラ22による透明QRコード10の撮影位置が所定位置となるように、操作者の撮影操作を誘導する。すなわち、誘導処理は、赤外光照射部24が照射する赤外光の影響を受け難い適切な撮影位置、換言すると赤外光照射部24からの赤外光の反射を避ける位置に透明QRコード10が位置するように、操作者の撮影操作を誘導する。
【0055】
透明QRコード10の最適な撮影位置は、カメラ22と赤外光照射部24との位置関係によって異なる。従って携帯端末装置14は、カメラ22と赤外光照射部24との位置関係に基づいた透明QRコード10の適切な撮影位置を記憶している。そして、誘導処理は、タッチパネルディスプレイ20において例えば右側上方や左側下方とのように、赤外光の反射を避ける位置に透明QRコード10が位置するように、カメラ22と赤外光照射部24との位置関係に基づいて操作者の撮影操作を誘導する。
【0056】
本実施形態の誘導処理は、カメラ22による透明QRコード10の撮影位置が所定位置となるように、カメラ22によって撮影される画像の一部領域をタッチパネルディスプレイ20に拡大表示させる。
【0057】
図3は、本実施形態の携帯端末装置14の拡大画面表示に関する外観図である。
図3(A)は拡大前の画面表示であり、
図3(B)は拡大後の画面表示である。なお、
図3の矢印A,Bは実際にはタッチパネルディスプレイ20に表示されなくてもよい。
【0058】
図3の例では、携帯端末装置14の正面から見て左上に赤外光照射部24が備えられるので、タッチパネルディスプレイ20の左上側において赤外光の反射光が強く、タッチパネルディスプレイ20の右下側において反射光が最も弱い。このため、
図3(A)の矢印Aで示すように、透明QRコード10は、タッチパネルディスプレイ20の右下側の位置に表示されて読み取られることが好ましい。
【0059】
そこで、本実施形態の携帯端末装置14は、タッチパネルディスプレイ20を仮想的に上下左右に4分割し、
図3(B)に示すように赤外光の反射光が最も弱い右下の領域を拡大表示する。タッチパネルディスプレイ20における右下の領域が拡大表示されることで、操作者は拡大表示の中央領域に透明QRコード10が表示されるように、矢印Bの方向に携帯端末装置14を動かす。この結果、透明QRコード10の撮影位置が反射光の影響を受け難い適切な位置となり、より確実な透明QRコード10の読み取りが可能となる。
【0060】
カメラ22による透明QRコード10の撮影位置を適切な所定位置とする誘導処理は、上記拡大表示に限らない。例えば、誘導処理は、矢印をタッチパネルディスプレイ20に表示することで、透明QRコード10の表示位置を誘導してもよい。また、誘導処理は、「タッチパネルディスプレイの右下に透明QRコードを表示させてください。」とのように音声を携帯端末装置14から出力することで操作者を誘導してもよい。
【0061】
さらに、発明者は透明QRコード10の読み取りが困難な原因として、赤外光や紫外線等が含まれる太陽光が影響することを新たに見出した。そこで、本実施形態の誘導処理は、屋内又は屋外であるかに基づいて操作者の撮影操作を誘導する。
【0062】
すなわち、屋内と屋外とでは太陽光の強さが異なるので、透明QRコード10の読み取りに太陽光が与える影響が異なる。このため、誘導処理は、屋内又は屋外であるかに基づいて操作者の撮影操作を誘導する。これにより、本実施形態の携帯端末装置14より確実に透明QRコード10の読み取りを可能とする。
【0063】
例えば誘導処理は、撮影場所判定部36による判定結果に基づいて、カメラ22による透明QRコード10の撮影位置が所定位置となるように、操作者の撮影操作を誘導する。具体的には、上述したように、誘導処理は、タッチパネルディスプレイ20における透明QRコード10の表示位置が適切な位置(所定領域内)となるように、操作者の撮影操作を誘導する。これにより、透明QRコード10とカメラ22との位置関係が屋内又は屋外に基づいた適切な位置関係とされて透明QRコード10の撮影が行われるので、より確実に透明QRコード10を読み取ることができる。
【0064】
なお、上述のように、カメラ22と赤外光照射部24との位置関係によっても、適切な透明QRコード10の表示位置は異なる。そこで、携帯端末装置14は、カメラ22と赤外光照射部24との位置関係と撮影場所(屋内又は屋外)の組み合わせに基づいて、適切な透明QRコード10の表示位置を記憶している。
【0065】
例えば、本実施形態の携帯端末装置14は、透明QRコード10の撮影場所が屋内である場合には、透明QRコード10の適切な表示位置がタッチパネルディスプレイ20の右下とされる。一方で、透明QRコード10の撮影場所が屋外である場合には、透明QRコード10の適切な表示位置がタッチパネルディスプレイ20の左上とされる。
【0066】
透明QRコード10の撮影場所が屋外である場合には、撮影場所における太陽の位置も加味して適切な透明QRコード10の表示位置が決められてもよい。撮影場所の太陽の位置は、例えば撮影日時や撮影場所の緯度及び経度等から求められる。撮影日時は、携帯端末装置14のカレンダー機能や時計機能から取得される。撮影場所の緯度及び経度は、携帯端末装置14のGPSから取得される。
【0067】
また、誘導処理は、透明QRコード10とカメラ22との距離である撮影距離が撮影場所判定部36による判定結果に基づいた最適撮影距離になるように、操作者の撮影操作を誘導する。この誘導処理によって、赤外光の影響が緩和される適切な距離で透明QRコード10が撮影されるので、携帯端末装置14は、より確実に透明QRコード10を読み取ることができる。
【0068】
なお、屋内よりも屋外の方が太陽光の影響は大きく、屋外の撮影において撮影距離が長いと透明QRコード10の読み取りが難しくなる傾向にある。屋外において撮影距離が長くなるほど、透明QRコード10を照らす太陽光が相対的に強くなるためである。そこで、最適撮影距離は、透明QRコードの撮影が屋外で行われる場合には屋内で行われるよりも短い。例えば、屋内における最適撮影距離が11cmであるのに対して、屋外における最適撮影距離は8cmとされる。これにより、屋外の撮影において赤外光の影響が緩和されるので、携帯端末装置14は、より確実に透明QRコード10を読み取ることができる。
【0069】
屋内及び屋外の最適撮影距離は携帯端末装置14に記憶されている。誘導処理は、撮影場所判定部36による判定結果に基づいた最適撮影距離をタッチパネルディスプレイ20に表示したり、音声による出力等を行うことで、操作者の撮影操作を誘導する。
【0070】
また、誘導処理は、カメラ22と透明QRコード10との撮影角度を調整するように、操作者の撮影操作を誘導する。撮影角度が変化すると、赤外光の反射光による透明QRコード10の認識状態も変化する。従って、撮影角度を最適化することで、携帯端末装置14は、より確実に透明QRコード10を読み取ることができる。
【0071】
図4は、透明QRコード10の撮影角度を示した概略図である。撮影角度は、携帯端末装置14が透明QRコード10に対して平行な場合に0°とされる。赤外光の反射光がない場合において撮影角度は0°が好ましい。一方で、反射光がある場合には撮影角度を大きくすることが好ましい。このように発明者は、反射光による影響が大きいほど、撮影角度を大きくして透明QRコード10の撮影を行うことが好ましいことを新たに見出した。このため、誘導処理は、透明QRコード10の撮影を行う場合に、操作者に対して画像表示や音声出力によって、撮影角度の調整を行うことを誘導してもよい。
【0072】
一方で、撮影角度が大きくなるほど、透明QRコード10が歪んで撮影され、透明QRコード10の認識性能が低下する。このため、撮影角度は撮影された透明QRコード10の歪も考慮して最適な角度に調整されてもよい。
【0073】
そこで誘導処理は、カメラ22によって撮影された透明QRコード10の歪みが相対的に小さい場合には撮影角度を大きくし、歪みが相対的に大きい場合には撮影角度を小さくするように、操作者の撮影操作を誘導する。これにより、撮影された透明QRコード10の歪みがより小さくなるので、携帯端末装置14は、より確実に透明QRコード10を読み取ることができる。なお、撮影された透明QRコード10の歪みの大小は、透明QRコード10を画像解析し、予め定められた基準に基づいて決定される。
【0074】
図5は、本実施形態の透明QRコード読取処理の流れを示すフローチャートである。透明QRコード読取処理は、携帯端末装置14が備える記憶部32等の記録媒体に格納されたプログラム(透明QRコード読取アプリ)によって実行される。なお、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。また、透明QRコード読取処理が行われる場合には、赤外光照射部24が赤外光を発光した状態となっている。
【0075】
まず、ステップS100では、トライアル数nを設定する。トライアル数nは、透明QRコード10の認識を試行する回数である。すなわち、カメラ22が透明QRコード10の撮影を開始すると、QRコード認識部34は透明QRコード10の認識処理を行い、認識処理がN回を超えても透明QRコード10を認識できなければ認識の失敗となる。
【0076】
なお、トライアル回数Nの設定と共に、例えば、透明QRコード10の認識に適した各種設定が行われてもよい。ここで各種設定とは、例えば解像度の設定やカメラ22のズーム倍率の設定である。
【0077】
次のステップ102では、カメラ22の機能を用いて、透明QRコード10を読み取る環境、換言すると携帯端末装置14の周囲の照度を測定する。
【0078】
次のステップ104では、ステップ102で測定した照度に基づいて、透明QRコード10の撮影場所が屋内又は屋外であるかの判定を撮影場所判定部36が行う。なお、実際には屋外であっても、照度が低い場合にはステップ104において屋内と判定される可能性もある。このような結果となっても透明QRコード10の読み取りに対する太陽光の影響が少ないため、屋内と判定されても問題はない。ステップ104によって撮影場所が屋内と判定された場合にはステップ106へ移行し、撮影場所が屋外と判定された場合にはステップ110へ移行する。
【0079】
ステップ106では、誘導部38が屋内用の画像表示の設定を行う。屋内用の画像表示は、例えば、タッチパネルディスプレイ20の右下を拡大表示する処理である。
【0080】
次のステップ108では、屋内用の撮影距離の調整を行うように誘導部38が操作者を誘導し、ステップ114へ移行する。屋内用の撮影距離は例えば11cmである。なお、屋内用の撮影距離は、予め記憶部32に記憶されており、誘導部38は例えばタッチパネルディスプレイ20にこれらの値をタッチパネルディスプレイ20に表示させる。
【0081】
ステップ104で撮影場所が屋外であると判定された場合に移行するステップ110では、誘導部38が屋外用の画像表示の設定を行う。屋内用の画像表示は、例えば、タッチパネルディスプレイ20の左上を拡大表示する処理である。
【0082】
次のステップ116では、屋外用の撮影距離の調整を行うように誘導部38が操作者を誘導し、ステップ114へ移行する。屋外用の撮影距離は例えば6cmである。なお、屋外用の撮影距離は、予め記憶部32に記憶されており、誘導部38は例えば、これらの値をタッチパネルディスプレイ20に表示させる。
【0083】
ステップ114では、QRコード認識部34がトライアル数nを1に設定する。
【0084】
次のステップ116では、カメラ22で撮影された画像からQRコード認識部34が透明QRコード10の認識処理を行う。
【0085】
次のステップ118では、透明QRコード10の認識処理が成功したか否かをQRコード認識部34が判定し、肯定判定の場合は透明QRコード読取処理を終了する。否定判定の場合はステップ120へ移行する。
【0086】
ステップ120では、トライアル数nがトライアル回数N未満であるか否かをQRコード認識部34が判定し、肯定判定の場合はステップ124へ移行する。一方で、否定判定の場合はステップ122へ移行する。
【0087】
ステップ122では、QRコード認識部34がトライアル数nを1つ加算した後にステップ116へ移行し、QRコード認識部34が認識処理を繰り返す。
【0088】
ステップ124では、カメラ22で撮影されている透明QRコード10の歪みをQRコード認識部34が判定し、歪みが小さい場合にはステップ126へ移行する。一方で、歪みが大きい場合にはステップ128へ移行する。
【0089】
ステップ126では、撮影角度を大きくするように誘導部38が誘導し、ステップ114へ戻る。誘導部38は、例えば操作者に撮影角度を大きさせるためのメッセージをタッチパネルディスプレイ20に表示させる、又はメッセージを音声出力する。
【0090】
ステップ128では、撮影角度を小さくするように誘導部38が誘導し、ステップ114へ戻る。誘導部38は例えば、操作者に撮影角度を小さくさせるためのメッセージをタッチパネルディスプレイ20に表示させる、又はメッセージを音声出力する。
【0091】
なお、透明QRコード10の認識に失敗した場合には、撮影角度の調整に限らず、撮影距離の調整等、他の調整を行うように誘導部38が操作者を誘導してもよい。
【0092】
他の調整の例として、誘導部38が実行する誘導処理は、透明QRコード10の撮影場所が屋外であり、透明QRコード10を撮影しているものの透明QRコード10が認識されない場合には、太陽光が透明QRコード10を照らさないように撮影者の撮影向きを誘導する。屋外で透明QRコード10を撮影する場合には、上記のように、太陽光に含まれる赤外線の影響を受ける。このため、屋外での撮影において透明QRコード10が認識されない場合には、太陽光の影響が大きい可能性がある。そこで、太陽光に含まれる赤外光の影響を緩和するように操作者の撮影向きが誘導される。
【0093】
図6は、上記誘導処理の流れを示す。まず、
図5に示されるステップ120の後にステップ200へ移行する。
【0094】
次のステップ200では、ステップ102で測定した照度に基づいて、透明QRコード10の撮影場所が屋内又は屋外であるかの判定を撮影場所判定部36が行う。ステップ200によって撮影場所が屋内と判定された場合にはステップ114へ戻り、撮影場所が屋外と判定された場合にはステップ202へ移行する。
【0095】
ステップ202では、撮影者に対して撮影向きを変更するように誘導部38が誘導し、ステップ114へ戻る。誘導部38は例えば、操作者に太陽に対する向きを変更させるためのメッセージをタッチパネルディスプレイ20に表示させたり、音声出力する。この向きは、例えば、GPS情報や緯度経度情報及び時刻情報に基づいて、太陽光の影響を小さくするために適切な撮影者の体の向きが算出され、タッチパネルディスプレイ20に表示される。また、これに限らず、適切な撮影者の体の向きを算出することなく、「太陽に対する体の向きを変更してください。」とのようなメッセージが表示又は音声出力されてもよい。
【0096】
以上説明したように、本実施形態の携帯端末装置14は、可視光では視認できない透明QRコード10を可視光以外の所定波長の光で照らすことによって読み取るQRコード読取装置である。そして、携帯端末装置14は、赤外光による影響を緩和する撮影を行うように誘導部38が操作者の撮影操作を誘導し、赤外光照射部24によって赤外光を照射しながら、透明QRコード10をカメラ22が撮影して透明QRコード10を読み取る。これにより、本実施形態の携帯端末装置14は透明QRコード10を読み取ることができる。
【0097】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0098】
上記実施形態では、携帯端末装置14が赤外光を照射する赤外光照射部24を備える形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。赤外光照射部24は、携帯端末装置14に直接備えられず、携帯端末装置14とは異なる構成とされてもよい。
【0099】
上記実施形態では、透明QRコード10が赤外光によって読み取られる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。透明QRコード10は可視光以外の波長の光で読み取ることができれば、赤外光以外の光、例えば紫外線領域の波長の光(紫外光)によって読み取られてもよい。紫外光は、太陽光にも含まれる光であり、赤外光と同様の課題が生じる。
【符号の説明】
【0100】
10・・・透明QRコード,14・・・携帯端末装置,20・・・タッチパネルディスプレイ,
22・・・カメラ,24・・・赤外線照射部,36・・・撮影場所判定部,38・・・誘導部