(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021396
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】非水電解液及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20250205BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20250205BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20250205BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20250205BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023215094
(22)【出願日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】202310955694.3
(32)【優先日】2023-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522492196
【氏名又は名称】遠景動力技術(江蘇)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology(Jiangsu)Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.66 Shentai Road,Shengang Street,Jiangyin City,Wuxi City,Jiangsu Province,214443 China
(71)【出願人】
【識別番号】523454843
【氏名又は名称】遠景動力技術(湖北)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Hubei) Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】523454854
【氏名又は名称】遠景動力技術(鄂爾多斯市)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Ordos) Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】523454865
【氏名又は名称】遠景動力技術(河北)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Hebei) Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】522492200
【氏名又は名称】遠景睿泰動力技術(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Intelligent Innovation Dynamics Technology (Shanghai) Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 101,Building No.2,No.2555 Xiupu Road,Kangqiao Town,Pudong New District,Shanghai,201315 China
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】余 樂
(72)【発明者】
【氏名】王 子▲ユエン▼
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ01
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温下でのリチウムイオン電池のガス発生問題を改善するための非水電解液及びリチウムイオン電池を提供する。
【解決手段】非水電解液は、非水有機溶媒と、リチウム塩と添加剤とを含む。添加剤は、クロロエチレンカーボネート、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを含む。添加剤の組み合わせにより、負極表面にLiCl-LiF無機塩とビニレンカーボネートオリゴマーとを有する二重層構造を形成することができ、負極との界面で良好なコーティング効果を有する。LiFの剛性と無機塩へのLiClの溶解度の低さにより、配合後の負極保護層の安定性が確保され、高温における電池の性能が向上する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性有機溶媒と、リチウム塩と、添加剤と、を含み、前記添加剤は、クロロエチレンカーボネート及びジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを含み、前記クロロエチレンカーボネートは下記構造式で表される化合物を含む、非水電解液。
【化1】
式中、R基は、Cl基又はCCl
3基から選択される。
【請求項2】
前記クロロエチレンカーボネートの前記非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%~5%である、
請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
前記クロロエチレンカーボネートの前記非水電解液中における含有量は、質量百分率で1%~2.5%である、
請求項2に記載の非水電解液。
【請求項4】
前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの前記非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%~2%である。
請求項1に記載の非水電解液。
【請求項5】
前記ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの前記非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%~1%である。
請求項4に記載の非水電解液。
【請求項6】
前記非水電解液の導電率は、7.0mS/cm~12.5mS/cmである、
請求項1に記載の非水電解液。
【請求項7】
前記クロロエチレンカーボネートの構造式は下記の通りである、
請求項1に記載の非水電解液。
【化2】
【請求項8】
前記リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム及び/又はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含み、前記リチウム塩の前記非水電解液中における含有量は、質量百分率で8%~20%である、
請求項1に記載の非水電解液。
【請求項9】
前記非水性有機溶媒は、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含み、前記環状カーボネートは、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの一方又は両方を含み、前記鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートのうちの1種以上を含む、
請求項1に記載の非水電解液。
【請求項10】
正極シートと、負極シートと、セパレータと、請求項1~9のいずれか1項に記載の非水電解液と、を含むリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の技術分野に関し、特に、非水電解液及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ、携帯電話、時計、ラップトップ、電気自動車などの普及に伴い、リチウムイオン電池の用途に対する要求が高まっている。そのため、小型化、軽量化、エネルギー密度の増加、耐用年数の延長などが電池製品業界の開発トレンドとなっている。
【0003】
電解液はリチウムイオン電池の重要な成分である。電解液は、正極と負極の間でリチウムイオンを輸送する機能を果たす。電池の安全性、充放電サイクル性能、レート性能、電池の充放電容量はすべて、電解液の電気化学的特性と密接に関係している。現在、リチウムイオン電池に広く使用されている電解液は、電解液塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、有機溶媒として環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合物を用いた電解液が一般的である。しかしながら、このような電解液には多くの欠陥がある。特に、リチウムイオン電池の負極界面保護層(SEI膜)は、高電圧下では破断及び修復が起こりやすく、電解液溶媒と他の添加成分との間の電気化学反応は避けられず、ガス発生の問題がある。
【0004】
上記を考慮して、上記の課題を解決するための新しいリチウムイオン電池電解液の開発が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の上記欠点を考慮して、本発明は、高温下でのリチウムイオン電池のガス発生問題を改善するための非水電解液及びリチウムイオン電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的及び他の関連目的を達成するために、本発明は、非水性有機溶媒と、リチウム塩と、添加剤と、を含む非水電解液を提供する。添加剤は、クロロエチレンカーボネート及びジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを含み、クロロエチレンカーボネートは、以下の構造式で表される化合物を含む。
【化1】
【0007】
式中、R基は、Cl基又はCCl3基から選択される。
【0008】
本発明の一実施形態において、クロロエチレンカーボネートの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%~5%である。
【0009】
本発明の一実施形態において、クロロエチレンカーボネートの非水電解液中における含有量は、質量百分率で1~2.5%である。
【0010】
本発明の一実施形態において、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%~2%である。
【0011】
本発明の一実施形態において、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%~1%である。
【0012】
本発明の一実施形態において、非水電解液の導電率は、7.0mS/cm~12.5mS/cmである。
【0013】
本発明の一実施形態において、クロロエチレンカーボネートの構造式は下記の通りである。
【化2】
【0014】
本発明の一実施形態において、リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム及び/又はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む。
【0015】
本発明の一実施形態において、リチウム塩の非水電解液中における含有量は、質量百分率で8~20%である。
【0016】
本発明の一実施形態において、非水有機溶媒は、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含む。環状カーボネートは、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの一方又は両方を含む。鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートのうちの1つ以上を含む。
【0017】
本発明の別の態様は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、上記非水電解液と、を含むリチウムイオン電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、クロロエチレンカーボネート(ClEC)及びジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)である塩素含有有機添加剤を非水電解液に導入する。導入過程において、クロロエチレンカーボネート及びジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムは、負極表面にLiCl-LiF無機塩及びビニレンカーボネートオリゴマーとを有する二重層構造を形成することができる。ビニレンカーボネートオリゴマーの一部は有機化合物であるため、柔軟性が高く、負極との界面でのコーティング効果がより好ましい。LiFの剛性と無機塩へのLiClの溶解度の低さにより、配合後の負極保護層(SEI膜)の安定性が確保され、これにより高温における電池の性能が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体例を挙げて本発明の実施について説明する。当業者であれば、本明細書に開示される内容から、本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本発明は、他の異なる特定の実装を通じて実装又は適用することもできる。本明細書の様々な詳細も、本発明の精神から逸脱することなく、異なる観点及び用途に基づいて様々な方法で修正又は変更することができる。なお、各実施の形態間に矛盾がない限り、以下の実施の形態及び各実施の形態における特徴部分を組み合わせてもよい。また、本発明の実施形態で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではないことも理解されたい。以下の実施例で特定の条件を指定しない試験方法は、通常、従来の条件又は各製造行者が推奨する条件を採用する。
【0020】
簡単にするために、本発明は、いくつかの数値範囲のみを明示的に開示し、範囲の端点間のすべての点又は個々の値は、その範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の値は、他の点又は単一の値と組み合わせて、又は他の下限又は上限と組み合わせて、それ自体の下限又は上限として機能し、明示的に記載されていない範囲を形成することができる。
【0021】
本発明は、非水電解液及びリチウムイオン電池を提供する。リチウムイオン電池は、本発明の非水電解液を含む。クロロエチレンカーボネートとジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを非水電解液に導入しているため、負極表面にLiCl-LiF無機塩とビニレンカーボネートオリゴマーとを有する二重層構造を形成することができ、これにより負極界面被膜のコーティング効果と安定性が向上し、高温におけるリチウムイオン電池の性能が向上する。
【0022】
上記非水電解液は、非水有機溶媒と、リチウム塩と、添加剤と、を含む。リチウム塩及び添加剤は、非水性有機溶媒に溶解される。添加剤は、塩素含有有機添加剤及びジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを含む。塩素含有有機添加剤は、クロロエチレンカーボネートを含み、クロロエチレンカーボネートの構造式は下記の通りである。
【化3】
【0023】
式中、R基は、Cl基又はCCl
3基から選択される。つまり、クロロエチレンカーボネートは、構造式(1)で表される化合物であって良く、構造式(2)で表される化合物であって良く、又は構造式(1)と構造式(2)で表される化合物を任意の割合で混合した組成物であって良い。
【化4】
【0024】
構造式(1)、構造式(2)ともにビニレンカーボネート基と塩素含有基を含むため、電池の動作中に、構造式(1)及び構造式(2)とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムとを混合することにより、負極表面にLiCl-LiF無機塩とビニレンカーボネートオリゴマーとを有する二重層構造を形成することができ、ここで、ビニレンカーボネートオリゴマー層は、柔軟性が高く、負極との界面でのコーティング効果が良好な有機化合物層である。LiFの剛性とLiClの溶解度の低さにより、配合後の負極保護層(SEI膜)の安定性を確保することができる。
【0025】
クロロエチレンカーボネートは、構造式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化5】
【0026】
研究の結果、構造式(1)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムとの組み合わせは、構造式(2)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムとの組み合わせと比べて、LiCl-LiF複合無機塩及びビニレンカーボネートオリゴマーの生成効率が高いことが判明した。したがって、クロロエチレンカーボネートは、構造式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0027】
いくつかの実施形態において、クロロエチレンカーボネート添加剤の非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%~5%、例えば0.5%、1%、3%、5%などを占める。ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%~2%、例えば0.5%、1.5%、2%などを占める。さらに、クロロエチレンカーボネートの非水電解液中における含有量は、質量百分率で1%~2.5%、例えば1.5%、2%、2.5%などを占める。ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%~1%、例えば0.5%、0.8%、1.0%などを占める。クロロエチレンカーボネートとジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムとの比率を調整することにより、電解液の導電率を7.0mS/cm~12.5mS/cmに調整することができる。ここで、電解液の導電率は限定されず、7.0mS/cm、10mS/cm、12mS/cmなど、上記範囲内で調整することができる。
【0028】
なお、本発明のクロロエチレンカーボネート及びジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムはいずれも、一般的な商業ルートを通じて購入することができ、又はこの分野の従来の調製方法を使用して作製することができる。
【0029】
非水電解液中のリチウム塩は、電解液塩として機能する。リチウム塩が非水溶媒に溶解すると、大量の活性リチウムイオンが放出され、電解液の導電性が向上する。より良い電解液を得るために、リチウム塩には通常、低い解離エネルギーと高い溶解度という特性を持つ物質が採用される。低い解離エネルギーにより、リチウム塩が溶解した後に形成される電解液は高い導電性を有し、これにより高い電池速度が達成される。高い溶解度により、輸送に必要な十分なリチウムイオンが電解液中に存在し、安定性が向上する。そのため、電池が高電圧及び高温で動作するときに、リチウム塩が他の成分と反応しない。優れたSEI膜形成性能により、後続のサイクル中に電解液が継続的に消費されなくなる。また、アルミニウム集電体に対して優れた不動態化効果(passivation effect)を有し、高電圧下でのアルミニウム箔の腐食を防止することができる。このような電解液はコスト効率が高く、毒性や汚染がない。
【0030】
一例において、リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)及び/又はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)から選択されて良い。つまり、リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム単独から選択されても良く、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド単独から選択されても良く、あるいは六フッ化リン酸リチウムとリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドとの組成物から選択されても良い。他の例において、リチウム塩は、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウムビス(オキサラート)ホウ酸(LiBOB)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSI)、又はジフルオロリン酸リチウム(LiPF2O2)から選択されて良い。リチウム塩は、より優れた総合的性能を有する六フッ化リン酸リチウムから選択されるか、又は六フッ化リン酸リチウムが主成分として機能し、適切な量で添加される他のリチウム塩と組み合わせて、その組み合わせを利用して組成を通じて電解液の性能を向上させることが好ましい。リチウム塩の濃度は、この分野における従来の選択に従って設定することができる。一例において、リチウム塩の非水電解液中における含有量は、質量百分率で8%~20%、例えば8%、12.5%、15%、又は20%などを占める。
【0031】
非水性有機溶媒は、本分野における溶媒の従来の組み合わせから選択することができる。本発明において、非水有機溶媒には、環状カーボネート及び鎖状カーボネートが含まれる。環状カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)及びプロピレンカーボネート(PC)の一方又は両方を含む。例えば、環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、又はエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとを任意の比率で混合した混合物であって良い。鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、及びエチルメチルカーボネート(EMC)のうちの1つ以上を含む。つまり、鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、又はエチルメチルカーボネートなど、上記に挙げたもののいずれであっても良い。鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネートとジエチルカーボネートの組み合わせ、又はジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートの組み合わせ、又はジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートの組み合わせなど、上に挙げたものの任意の2つ又は3つの組み合わせであっても良い。なお、鎖状カーボネートが組成物である場合、組成物中の各成分の割合は特に限定されず、任意の割合で混合して良い。
【0032】
本発明の非水電解液は、従来の製造方法に従って製造することができる。例えば、まず、グローブボックス内で非水有機溶媒を混合、撹拌し、次にリチウム塩を加え、リチウム塩が完全に溶解するまで撹拌を続け、最後にクロロエチレンカーボネートとジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを加えてよく撹拌する。グローブボックス内の窒素含有量は99.999%であり、グローブボックス内の実際の酸素含有量は0.1ppmであり、水分含有量は0.1ppmである。
【0033】
本発明の第2の態様は、リチウムイオン電池を提供する。電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータと、電解液と、を含む。電池の充放電工程中に、リチウムイオンが正極シートと負極シートの間に吸蔵及び放出される。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に配置され、分離機能を有する。電解液は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝播する機能を有する。電解液は、本発明において上述した非水電解液である。非水電解液は、クロロエチレンカーボネートとジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを含むため、両者の混合物は、負極表面にLiCl-LiF無機塩とビニレンカーボネートオリゴマーを有する二重層構造を形成することができ、これにより負極保護層(SEI膜)の安定性を確保し、したがって、高温及び低温での性能を兼ね備える。
【0034】
具体的には、正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一面に配置された正極活物質層とを含み、正極集電体は、アルミニウム箔など、良好な導電性及び機械的強度を有する材料からなって良い。正極集電体は、自身の厚さ方向に対向する2つの面を有し、正極活物質層は、正極集電体の2つの対向する面の一方又は両方に配置される。正極活物質層は、正極材料と、正極導電剤と、正極バインダーとを含む。正極材料、正極導電剤及び正極バインダーの具体的な種類は特に限定されず、実際の必要性に応じて当業者が選択することができる。
【0035】
一例として、正極材料は、三元材料及びリチウム含有リン酸塩から選択することができる。具体的には、三元材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及び金属イオンがドープされたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を含むが、これらに限定されない。ドーピング元素は、例えば、Zr、Ti、Mo、Al、Sr、W、Y、Ta、Nb、Mg、及びBaから選択されるいずれか1つ以上である。リチウム含有リン酸塩は、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウムなどを含むが、これらに限定されない。正極バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などから選択される。正極導電剤は、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどから選択される1つ、又は2つ以上を任意の比率で混合したものである。
【0036】
正極シートは、当技術分野で公知の方法に従って製造することができる。一例として、正極材料、正極導電剤及び正極バインダーを溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、略してNMP)中に分散させて、均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥、冷間プレスなどの工程を経て、正極シートが得られる。正極スラリーにおける各成分の比率は、従来の比率を参考にして設定することができ、本発明はこれに限定されない。
【0037】
負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一面に配置された負極活物質層とを含む。負極集電体は、銅箔などの良好な導電性及び機械的強度を有する材料からなって良い。負極集電体は、自身の厚さ方向に対向する2つの面を有し、負極活物質層は、負極集電体の2つの対向する面の一方又は両方に配置される。負極活物質層は、負極材料、負極導電剤、負極バインダー及び増粘剤を含む。負極材料、負極導電剤、負極バインダーの具体的な種類は特に限定されない。リチウムイオン電池に使用できる当技術分野で公知の材料を採用することができ、実際の必要性に応じて当業者が選択することができる。
【0038】
好ましくは、負極材料は、元素シリコン、シリコン酸素化合物、シリコン炭素化合物などのシリコン含有負極材料であり、クロロエチレンカーボネート(ClEC)とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムが、シリコン負極表面にLiCl-LiF複合無機塩とビニレンカーボネートオリゴマーを有する二重層構造を形成するため、シリコン負極との界面でより優れたコーティング効果を得ることができる。LiFの剛性とLiClの溶解度の低さにより、配合後のシリコン負極保護層の安定性を確保することができる。負極導電剤は、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどから選択される1つ、又は2つ以上を任意の比率で組み合わせたものが用いられる。負極バインダーは、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレンブタジエンゴム(SBR)のいずれか1つ、又は複数の組成物を任意の割合で混合したものから選択される。増粘剤は、カルボキシメチルセルロース(CMC)から選択される。
【0039】
負極シートは、当技術分野で公知の方法に従って製造することができる。例えば、負極材料、負極バインダー、増粘剤及び負極導電剤を脱イオン水に分散させて、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥、冷間プレス及びその他の工程を経て、負極シートを得る。負極スラリーにおける各成分の比率は、従来の比率を参考にして設定することができ、本発明はこれに限定されない。
【0040】
セパレータとしては、多孔質PEフィルム等の当該分野で採用されている従来のものを選択する。セパレータの厚さは、9μm~18μmであり、透気度は、180s/100mL~380s/100mLであり、空孔率は、30%~50%である。
【0041】
電池の組み立ては従来の方法に従って行われる。準備が完了したら、負極シート、セパレータ、正極シートを順に積層し、これをアルミニウム-ラミネートフィルムに入れて殻セルとし、殻セルを80℃で焼成して水分を除去する。調製した電解液を殻セルに注入し、封止して、リチウムイオン電池製品を得る。
【0042】
本発明の技術案を、いくつかの具体的な実施例及び比較例を通じて以下に詳細に説明する。以下の実施例で使用した原料及び試薬は、特に断りのない限り、市販品であるか、又は当該分野の慣用の方法により調製することができ、実施例で使用した機器はいずれも市販品である。
【0043】
実施例1
【0044】
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:5:2の質量比で均一に混合しての質量比で均一に混合して、非水有機溶媒を調製した。乾燥させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を非水有機溶媒に加えて均一に混合し、次に、構造式(1)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)を加えて均一に混合し、非水電解液を調製した。六フッ化リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で12.5%であり、構造式(1)で表される化合物の非水電解液中における含有量は、質量百分率で1%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.7%である。
【0045】
実施例2
【0046】
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:5:2の質量比で均一に混合して、非水有機溶媒を調製した。乾燥させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を非水有機溶媒に加えて均一に混合し、次に、構造式(2)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)を加えて均一に混合し、非水電解液を調製した。六フッ化リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で12.5%であり、構造式(2)で表される化合物の非水電解液中における含有量は、質量百分率で 1.5%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で2%である。
【0047】
実施例3
【0048】
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:5:2の質量比で均一に混合して、非水有機溶媒を調製した。乾燥させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を非水有機溶媒に加えて均一に混合し、次に、構造式(1)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)を加えて均一に混合し、非水電解液を調製した。六フッ化リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で12.5%であり、構造式(1)で表される化合物の非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.7%である。
【0049】
実施例4
【0050】
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:5:2の質量比で均一に混合して、非水有機溶媒を調製した。乾燥させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を非水有機溶媒に加えて均一に混合し、次に、構造式(1)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)を加えて均一に混合し、非水電解液を調製した。六フッ化リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で12.5%であり、構造式(1)で表される化合物の非水電解液中における含有量は、質量百分率で2.5%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.7%である。
【0051】
実施例5
【0052】
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:5:2の質量比で均一に混合して、非水有機溶媒を調製した。乾燥させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を非水有機溶媒に加えて均一に混合し、次に、構造式(1)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)を加えて均一に混合し、非水電解液を調製した。六フッ化リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で12.5%であり、構造式(1)で表される化合物の非水電解液中における含有量は、質量百分率で5%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.7%である。
【0053】
実施例6
【0054】
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:5:2の質量比で均一に混合して、非水有機溶媒を調製した。乾燥させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を非水有機溶媒に加えて均一に混合し、次に、構造式(1)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)を加えて均一に混合し、非水電解液を調製した。六フッ化リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で12.5%であり、構造式(1)で表される化合物の非水電解液中における含有量は、質量百分率で1%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で0.5%である。
【0055】
実施例7
【0056】
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:5:2の質量比で均一に混合して、非水有機溶媒を調製した。乾燥させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を非水有機溶媒に加えて均一に混合し、次に、構造式(1)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)を加えて均一に混合し、非水電解液を調製した。六フッ化リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で12.5%であり、構造式(1)で表される化合物の非水電解液中における含有量は、質量百分率で1%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で1.2%である。
【0057】
実施例8
【0058】
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を3:5:2の質量比で均一に混合して、非水有機溶媒を調製した。乾燥させた六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を非水有機溶媒に加えて均一に混合し、次に、構造式(1)で表される化合物とジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)を加えて均一に混合し、非水電解液を調製した。六フッ化リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で12.5%であり、構造式(1)で表される化合物の非水電解液中における含有量は、質量百分率で1%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの非水電解液中における含有量は、質量百分率で2%である。
【0059】
比較例1
【0060】
本比較例と実施例1との相違点は、本比較例では、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)が添加されないことである。
【0061】
比較例2
【0062】
本比較例と実施例1との相違点は、本比較例では、構造式(1)で表される化合物が添加されないことである。
【0063】
比較例3
【0064】
本比較例と実施例1との相違点は、本比較例では、構造式(1)で表される化合物及びジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)が添加されないことである。
【0065】
比較例4
【0066】
本比較例と実施例1との相違点は、本比較例では、構造式(1)で表される化合物の添加量が7%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)の添加量が5%であることである。
【0067】
比較例5
【0068】
本比較例と実施例1との相違点は、本比較例では、構造式(1)で表される化合物の添加量が7%であり、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)が添加されないことである。
【0069】
比較例6
【0070】
本比較例と実施例1との相違点は、本比較例では、構造式(1)で表される化合物が添加されず、本比較例では、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiODFP)の添加量が5%であることである。
【0071】
実施例1~8及び比較例1~6で調製した電解液をそれぞれリチウムイオン電池に使用して、クロロエチレンカーボネート及びジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムの有効性を検証した。
リチウムイオン電池の作製工程は次の通りである。
【0072】
(1)正極シート:LiNi0.9Co0.05Mn0.05O2から選択される正極活物質、アセチレンブラックから選択される導電剤、ポリフッ化ビニリデンから選択されるバインダーを、N-メチルピロリドン(NMP)に95:3:2の質量比で溶解し、均一に混合したスラリーをアルミニウム箔上に塗布し、乾燥、圧延、切断して、正極シートを得た。
【0073】
(2)負極シート:シリコーン化合物から選択される負極活物質、アセチレンブラックから選択される導電剤、CMC-Liから選択される増粘剤、SBRから選択されるバインダーを、96.4:1:1.2:1.4の質量比で混合し、次に、脱イオン水を加えて均一かつ十分に混合して、負極スラリーを得た。次に、負極スラリーに脱イオン水を加えて均一に混合し、銅箔上に塗布し、乾燥、圧延、切断して、負極シートを得た。
【0074】
(3)セパレータ:セパレータには、厚さ11umの多孔質PEフィルムを選択した。
【0075】
(4) 電池アセンブリ:セパレータが正極シートと負極シートの間に配置されて、絶縁の機能を果たすように、作製した正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層した。積層された材料をアルミニウムプラスチックフィルムの中に入れて、乾電池セルを得た。乾電池セルを80℃で焼成して水分を除去した。調製した電解液を乾電池セルに注入し、封止して、リチウムイオン電池を得た。
【0076】
実施例1~8及び比較例1~6の電解液を用いて組み立てられたリチウムイオン電池の性能試験を行った。試験結果を表1に示す。試験方法は以下の通りである。
【0077】
(1) 25°Cにおける初期インピーダンスDCR:
【0078】
サーモスタットの温度を25℃に設定し、10分間静置した。0.33Cの定電流で4.25Vまで充電し、次に、4.25Vの定電流で0.05Vまで充電し、30分間静置した。次に、0.33Cの定電流で2.5Vまで放電した。充電と放電を0.33Cで2サイクル実行し、最後の放電容量をC0として記録した。30分間静置した後、0.33Cで50%C0まで放電し、電池セルのSOCを50%に調整し、1時間静置した後、静置端子電圧をV1として記録した。4C0の定電流で30分間放電し、端子電圧をV2、電流をIとして記録し、DCR=(V1-V2)/Iを算出した。
【0079】
(2) 60℃の高温で30日間保存後の体積膨張率:
【0080】
25°Cで、リチウムイオン電池を1Cの定電流で4.25Vまで充電し、次に定電圧で0.05Cの電流まで充電した。リチウムイオン電池の体積を試験し、X0として記録した。次に、完全に充電された電池を60°Cのオーブンに30日間保管した。保管後のボリュームを試験し、X1として記録した。保管前のリチウムイオン電池に対する体積膨張率を以下の式により算出した。
【0081】
体積膨張率(%)=(X1-X0)/X0×100%。
【0082】
【0083】
実施例1と実施例2を比較すると、構造式(1)で表される化合物とLiODFPとの組み合わせは、構造式(2)で表される化合物とLiODFPとの組み合わせよりも、初期インピーダンス及びガス貯蔵性能に関して顕著により優れた効果を達成することができることが分かる。これは、構造式(1)で表される化合物が、LiCl-LiF複合無機塩及びビニレンカーボネートオリゴマーの形成効率により優れていることを示している。
【0084】
実施例1、3~5を比較すると、LiODFPを一定量添加した場合、構造式(1)で表される化合物の添加量が増加するにつれて、初期インピーダンスは最初に減少し、その後増加し、高温におけるガス貯蔵量は減少し、その後増加することから、構造式(1)で表される化合物の最適添加量は、約1%であることが分かる。このようにして、形成されるSEIの均一性と適切な厚さを確保することができる。構造式(1)で表される化合物の量が少なすぎると、SEI膜の形成量が少なくなり、負極界面を完全に被覆することができない。比較例4、5を併せて参照すると、構造式(1)で表される化合物の添加量が多すぎると、形成されるSEI膜は厚くなり、リチウムイオンの輸送と高温における安定性にとって好ましくない。
【0085】
実施例1、6~8を比較すると、構造式(1)で表される化合物の添加量を一定とした場合、LiODFPの添加量が増加するにつれて、初期インピーダンスは最初に減少し、その後同様に増加し、高温におけるガス貯蔵量は最初に減少し、その後増加することが分かる。これは、LiODFPの最適量が約0.7%であることを示している。LiODFPの添加量が多すぎたり(比較例4及び6を参照)、あるいは少なすぎたりすると、SEI膜の安定性が低下し、電池セルの性能に悪影響を及ぼす。
【0086】
実施例1、比較例1、比較例2を比較すると、構造式(1)で表される化合物とLiODFPを同時に電解液に添加すると、添加剤を1つだけ添加した場合と比較して、初期インピーダンスと高温におけるガス貯蔵量の両方が低くななる。これは、2つの添加剤が同時に存在する場合にのみ、LiCl-LiF無機塩とビニレンカーボネートオリゴマーを有する二重層構造で負極表面を被覆することができ、1つの添加剤だけでは対応する構造を形成することができないため、効果が乏しいことを示している。
【0087】
本発明は、クロロエチレンカーボネートとジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウムを非水電解液に導入して、負極表面にLiCl-LiF無機塩とビニレンカーボネートオリゴマーとを有する二重層構造を形成し、これにより負極界面被膜のコーティング効果と安定性を向上させ、高温におけるリチウムイオン電池の性能を向上させることができる。したがって、本発明は、従来技術におけるいくつかの実用上の問題を効果的に克服し、利用価値が高く、使用上の意義が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
さらに、本発明により提供される非水電解液及びそれを含むリチウムイオン電池は、電子工学の分野で利用することができ、産業上の利用可能性が高い。
【0089】
上記実施形態は、本発明の原理及び効果を例示するものであり、本発明を限定するものではない。この技術に精通している人なら誰でも、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上記の実施形態を修正又は変更することができる。したがって、本発明に開示される精神及び技術的思想から逸脱することなく、技術分野の通常の知識を有する者によって行われるすべての同等の修正又は変更は、やはり本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【外国語明細書】