(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021409
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20250205BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20250205BHJP
B60K 35/40 20240101ALI20250205BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
B60K35/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044299
(22)【出願日】2024-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2023124053
(32)【優先日】2023-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 椋一
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA15
2H199DA18
2H199DA29
2H199DA42
2H199DA43
2H199DA44
3D344AA21
3D344AA27
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】表示品位の低下を抑制することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ヘッドアップディスプレイ装置は、表示光Lを放射する表示面21、及び表示面21を囲む外周枠状に形成されるベゼル22bを有する表示パネル22と、表示面21に接着層27aを介して間接的に接着され、表示光Lが透過するプリズム40と、を備える。プリズム40は、表示面21に直交するZ方向から見て、ベゼル22bの一部に重なるように形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を放射する表示面、及び前記表示面を囲む枠状に形成されるベゼルを有する表示パネルと、
前記表示面に直接的又は間接的に接着され、前記表示光が透過する透光部材と、を備え、
前記透光部材は、前記表示面に直交する方向から見て、前記ベゼルの少なくとも一部に重なるように形成されている、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記透光部材は、前記透光部材の前記ベゼルに対向する背面と前記透光部材の側面との少なくとも何れか一方に形成される遮光部を備える、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記透光部材は、
前記表示光が入射する光入射面と、
入射した前記表示光が出射する光出射面と、を備え、
前記透光部材の側面は、前記光入射面又は前記光出射面よりも表面粗さが粗い粗面として形成されている、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、前記表示光を被投射部材に投射することにより虚像を表示し、
前記透光部材は、
前記表示光が入射し、前記表示面に平行をなし、前記表示面に直接的又は間接的に接着される光入射面と、
入射した前記表示光が出射し、前記光入射面に対して傾斜する光出射面と、を備え、
前記光出射面の前記光入射面に対する傾斜角度により、視認者から見た前記虚像の倒れ角度が調整される、
請求項1から3の何れか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
表示光を放射する表示面を有する表示パネルと、
前記表示面に直接的又は間接的に接着され、前記表示光が透過する透光部材と、を備え、
前記透光部材は、前記透光部材の前記表示パネルに対向する背面と前記透光部材の側面との少なくとも何れか一方に形成される遮光部を備える、
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記透光部材は、
前記表示光が入射する光入射面と、
入射した前記表示光が出射する光出射面と、を備え、
前記透光部材の側面は、前記光入射面又は前記光出射面よりも表面粗さが粗い粗面として形成されている、
請求項5に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記表示光を通過する光通過孔を形成する枠部を更に備え、
前記遮光部は、前記表示パネルの外周部から前記光通過孔へ向かって反射される不要光を遮る位置に形成される
請求項5に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、前記表示光を被投射部材に投射することにより虚像を表示し、
前記透光部材は、
前記表示光が入射し、前記表示面に平行をなし、前記表示面に直接的又は間接的に接着される光入射面と、
入射した前記表示光が出射し、前記光入射面に対して傾斜する光出射面と、を備え、
前記光出射面の前記光入射面に対する傾斜角度により、視認者から見た前記虚像の倒れ角度が調整される、
請求項5から7の何れか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、液晶層を透過した光が表示面に対してチルト角だけ傾くように、液晶層を透過した光を屈折させるプリズムを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構成では、例えば、アイボックスの縁部に視点が位置する場合には、表示光がこの視点に到達するまでの光の一部がプリズムの側面を通過してしまい、虚像の表示品位が低下するおそれがある。
【0005】
本開示は、上記実状を鑑みてなされたものであり、表示品位の低下を抑制することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
表示光を放射する表示面、及び前記表示面を囲む枠状に形成されるベゼルを有する表示パネルと、
前記表示面に直接的又は間接的に接着され、前記表示光が透過する透光部材と、を備え、
前記透光部材は、前記表示面に直交する方向から見て、前記ベゼルの少なくとも一部に重なるように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、表示品位の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の概略図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係るプリズム及び表示パネルの斜視図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係るプリズム及び表示パネルの分解斜視図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る表示装置の概略断面図である。
【
図5】本開示の第2実施形態に係るプリズムの斜視図である。
【
図6】本開示の第3実施形態に係るプリズムの斜視図である。
【
図7】本開示の第1実施形態の変形例に係る表示装置の概略断面図である。
【
図8】本開示の第1実施形態の変形例に係る表示装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置100は、移動体の一例である車両200のダッシュボードに搭載されている。ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示光Lを被投射部材の一例であるウインドシールド201に投射することにより、車両情報を含む虚像V1(表示像
)を表示する。視認者1の視点EPが可視領域R(いわゆる、アイボックス)内にあるときに、視認者1が虚像V1を視認可能となる。虚像V1は虚像表示仮想領域K1内に表示される。虚像表示仮想領域K1は、実体のない平面または曲面で形成される。可視領域Rは、視認者1の左右方向に長い長方形に仮想的に形成される。視点EPが可視領域R内から外へ移動すると、視認者1が視認する虚像V1の輝度が顕著に低下する。
【0010】
虚像表示仮想領域K1は路面に沿って延びる。ここで、路面に沿うとは、虚像表示仮想領域K1が水平方向に対して±45°未満であることを指す。本例では、虚像表示仮想領域K1は、視認者1から離れるにつれて上方向に向かうように傾斜する。
【0011】
虚像V1は、視認者1から見て実風景である路面に沿うように表示される。虚像V1には、路面に関連付けられた情報、例えば、経路案内矢印等の記号情報が含まれている。虚像V1には、加えて車速等の文字情報又は標識情報が含まれている。文字とは、数字、アルファベット、ひらがな、カタカナ、漢字等である。その他にも、虚像V1には、建物又は樹木等の地面に立設する構造物を示すアイコンが含まれていてもよい。
【0012】
次に、ヘッドアップディスプレイ装置100の構成について説明する。
ヘッドアップディスプレイ装置100は、光学リレーである凹面ミラー12と、表示装置20と、照明装置25と、制御部26と、筐体30と、を備える。
【0013】
筐体30は遮光性の樹脂又は金属により箱状に形成されている。筐体30内には、凹面ミラー12、表示装置20及び照明装置25が収容されている。筐体30は、筐体30の内部空間で生成される表示光Lをウインドシールド201に向けて透過する光透過性部材からなる窓部31を備える。
【0014】
照明装置25は、複数のLED(Light Emitting Diode)を有し、照明光を照射する。 表示装置20は、照明装置25からの照明光を受けて表示光Lを放射する。表示装置20の具体的な構成については後述する。
【0015】
凹面ミラー12は、車両の高さ方向及び幅方向に沿って凹状に湾曲する反射面12aを有する。凹面ミラー12は、表示装置20の後述するプリズム40を透過した表示光Lをウインドシールド201に向けて反射する。凹面ミラー12は、表示面21からの表示光Lを拡大するようにウインドシールド201に向けて反射する。凹面ミラー12の反射面12aは、車両200の後方上側を向いている。凹面ミラー12は、ウインドシールド201での反射による虚像の歪みを抑制する機能を有する。
【0016】
制御部26は、CPU(Central Processing Unit)、GDC(Graphics Display Controller)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有する。制御部26は、外部から車速及び経路案内等の情報を取得し、これらの情報に基づき、表示装置20に表示する画像を生成する。
【0017】
図4に示すように、表示装置20は、表示パネル22と、プリズム40と、表示器ケース23と、透光部材24と、接着層27a,27bと、を備える。
【0018】
図2及び
図3に示すように、表示パネル22は、TFT(Thin Film Transistor)型の液晶パネルである。表示パネル22は、長方形板状に形成されている。以下の説明では、表示パネル22の長手方向及び車幅方向をX方向と規定し、表示パネル22の短手方向をY方向と規定し、表示パネル22の厚さ方向をZ方向と規定する。X方向は視認者1から見て虚像V1の左右方向に対応しており、Y方向は視認者1から見て虚像V1の高さ方向に対応している。
表示パネル22は、照明装置25からの照明光を受けて画像を表す表示光Lを放射する。表示パネル22の光出射面は、画像を表す表示面21である。すなわち、表示面21は、表示パネル22の所定の面の全体ではなく、少なくとも実際に画像が表示される面のことを意味する。表示面21は、アクティブエリアとも呼ばれる。
図1に示すように、表示面21は、車両200の前方下側を向いている。表示面21に表示される画像には、視認者1が視認する虚像V1の歪みを補正する歪み補正(ワーピング)が施されている。
表示面21は、表示光Lの光軸中心La(表示面21の中心と可視領域Rの中心とを結ぶ光線)に対して非垂直に傾斜している。光軸中心Laは、表示光Lの横断面の中心に位置する。
【0019】
図3及び
図4に示すように、表示パネル22は、液晶部22aと、ベゼル22bと、を備える。液晶部22aは、長方形板状をなす。ベゼル22bは、金属製であり、液晶部22aの周囲を囲む枠状をなす。ベゼル22bは、液晶部22aの外周縁部を抱え込むように断面コの字状をなす。
ベゼル22bは、全体として長方形枠状に連結される4つの辺部22b1~22b4を備える。2つの辺部22b1,22b2は、ベゼル22bのX方向の両側に位置し、Y方向に平行に延びる。残りの2つの辺部22b3,22b4は、ベゼル22bのY方向の両側に位置し、X方向に平行に延びる。
【0020】
透光部材24は、接着層27bを介して表示パネル22(液晶部22a)の光入射面に接着されている。透光部材24は、表示パネル22の光入射面を覆う長方形板状をなす。透光部材24は、光透過部材、例えば、ガラス又は透明光学樹脂により形成されている。透光部材24は、表示器ケース23内での隙間を埋めるスペーサ、及び/又は表示パネル22から熱を受け取る蓄熱部材として機能する。
【0021】
プリズム40は、表示面21の上に位置し、表示面21から出射された表示光Lが透過する透光部材である。プリズム40は、接着層27aを介して表示パネル22の表示面21に接着されている。
接着層27a,27bは、光学接着剤、いわゆるOCR(Optical Clear Resin)であ
る。
【0022】
プリズム40は、屈折率nが空気(n=1)よりも大きい材質、例えば、ガラス又は透明光学樹脂により形成されている。透明光学樹脂には、例えばアクリル樹脂や、環状オレフィン系樹脂などが含まれる。プリズム40は、ウェッジプリズムであり、表示面21を覆う楔状で形成されている。
【0023】
図1に示すように、プリズム40は、内部に仮想ディスプレイ平面48Aを形成する。仮想ディスプレイ平面48Aとは、本来のディスプレイ平面である表示面21の見かけ上の位置である。というのも、視点EPではプリズム40を経由した表示光Lを受けて間接的に表示面21を視認するが、この際、プリズム40の屈折率nの影響により、視認者にとっては表示面21があたかも仮想ディスプレイ平面48Aに存在するように見える。例えば、本実施形態では、表示面21は、プリズム40の作用によって、仮想ディスプレイ平面48Aに存在するように見える。仮想ディスプレイ平面48Aは、表示光Lの光軸中心Laに対して表示面21よりも大きい角度で傾く。よって、表示面21の光軸中心Laに対する傾斜角度を過度に大きくすることなく、視認者1から見た虚像V1の倒れ角度αを大きくすることができる。倒れ角度αは、車両高さ方向に対して虚像V1が倒れる角度であり、倒れ角度αが90°となると虚像V1が水平な路面に平行となる。倒れ角度αを大きくすることにより、視認者1は虚像V1と路面の一体感を感じやすく、視認性に優れる。
ここで、表示面21の傾斜角度を過度に大きくしすぎると、表示パネル22の表示光Lの光透過率が落ちてしまい、虚像V1の輝度やコントラストが低下する。この点、本実施形態では、プリズム40の作用によって表示面21の傾斜角度が過度に大きくならずに済むため、虚像V1の輝度やコントラストを維持することができる。
【0024】
図2及び
図3に示すように、プリズム40は、表示面21に対向して位置し、表示面21からの表示光を入射する光入射面41iと、光入射面41iの反対側に位置し、入射した表示光Lを出射する光出射面41oと、を備える。光入射面41iは矩形平面状に形成されている。プリズム40の光入射面41iは、接着層27aにより表示面21に対面した状態で固定されている。
【0025】
プリズム40は、全体として長方形枠状に連結される4つの辺部22b1~22b4を備える。2つの辺部22b1,22b2は、ベゼル22bのX方向の両側に位置し、Y方向に平行に延びる。残りの2つの辺部22b3,22b4は、ベゼル22bのY方向の両側に位置し、X方向に平行に延びる。
【0026】
プリズム40の光入射面41iは、X方向において表示面21の全域とベゼル22bの辺部22b1,22b2の上面に対向するように位置する。また、プリズム40の光入射面41iは、Y方向において表示面21内に位置し、ベゼル22bの辺部22b3,22b4に到達せずに辺部22b3,22b4から離れている。
【0027】
光出射面41oは、Y方向の上側に向かうにつれてプリズム40の厚みが増すように、光入射面41iに対して傾斜して形成されている。光出射面41oの傾斜角度により、上述した仮想ディスプレイ平面48Aの光軸中心Laに対する傾斜角度が定まる。
【0028】
プリズム40は、複数の側面40A~40Fを有する。側面40A,40Bは、光入射面41iに直交し、プリズム40のX方向の両側に位置し、Y方向に平行に延びる。
図4に示すように、2つの側面40A,40Bは、ベゼル22bの2つの辺部22b1,22b2のY方向に延びる側面にZ方向(表示光Lの出射方向)に一致する。すなわち、プリズム40のX方向の全長は、表示パネル22のX方向の全長と略同一の長さである。プリズム40と表示パネル22は、X方向にずれないようにZ方向から見て重なっている。
【0029】
なお、本例に限らず、
図7に示すように、プリズム40の2つの側面40A,40Bは、プリズム40の2つの辺部22b1,22b2の上面にZ方向(表示光Lの出射方向)に対向して位置してもよい。
また、
図8に示すように、2つの側面40A,40Bは、ベゼル22bの2つの辺部22b1,22b2のY方向に延びる側面よりもX方向の外側に位置していてもよい。すなわち、プリズム40は、X方向において、表示パネル22よりも大きいサイズであり、Z方向から見て表示パネル22を含む範囲に設定されてもよい。
【0030】
図2及び
図3に示すように、側面40Cは、光入射面41iに直交し、プリズム40のY方向の側面40D~40Fの反対側に位置し、X方向に延びる。側面40D~40Fは、それぞれX方向に延び、互いに異なる向きにY方向に並べられている。側面40Dは、光入射面41iに対して鈍角をなすように交わる。側面40Eは、側面40Dと40Fの間に位置し、光入射面41iに対して直交する。側面40Fは、側面40Eと光出射面41oとの間に位置し、側面40Eと光出射面41oに対して鈍角をなす角度に延びる。
【0031】
図4に示すように、表示器ケース23は、表示パネル22に接着層27a,27bを介してプリズム40と透光部材24が接着された一体物を収容する。表示器ケース23は、遮光性樹脂又は金属により形成されている。表示器ケース23は、プリズム40の光出射面41oの外周側を囲む枠部23aを備える。枠部23aは、X方向に長い長方形の枠板状をなす。枠部23aの矩形状の光通過孔内は、プリズム40の光出射面41oから放射される表示光Lが通過する。
【0032】
枠部23aの光通過孔のサイズは、視野角に対応する角度範囲θを基準に設定されている。この視野角とは、視認者1の視点EPを左右方向に動かしたときに虚像V1が視認可能な角度範囲であり、具体的には、虚像表示仮想領域K1の中心から可視領域R内の左端部を結ぶ直線と虚像表示仮想領域K1の中心から可視領域R内の右端部を結ぶ直線とがなす角度である。視野角に対応する角度範囲θは、視野角を所望値に設定するための表示装置20での表示光Lの拡散角度に設定される。枠部23aの光通過孔の内周縁部と角度範囲θとの間にはクリアランスCLが設定されている。クリアランスCLが設定されることにより、枠部23aが角度範囲θで拡散する表示光Lを遮ることがない。
【0033】
ここで、可視領域R内での視認者1の視点EPの位置によって、表示光Lのうち視点EPに到達する光線の角度が変わってくる。例えば、視認者1の視点EPが可視領域Rの左端部又は右端部に位置しているときには、角度範囲θの光軸中心Laから最も遠い角度に沿う表示光Lの光線L1,L2が視点EPに到達する。上述のように、プリズム40がベゼル22bにZ方向に対向するサイズ以上に設定されることにより、光線L1,L2は、プリズム40をその厚さ方向に通過して、プリズム40の側面40A,40Bを通過しない。よって、視点EPが可視領域Rの左端部又は右端部に位置する際の虚像V1の表示品位が低下しない。
一方、比較例としては、
図9に示すように、プリズム140の側面140A,140Bが表示パネル22の液晶部22aにZ方向に対向するように、プリズム140のX方向のサイズが本実施形態のプリズム40よりも小さく構成される。この場合、視点EPが可視領域Rの左端部又は右端部に位置する際の表示光Lの光線L1,L2がプリズム140の側面140A,140Bや角部を通過してしまい、虚像の表示品位が低下する。
以上のように、本実施形態では、プリズム40のX方向のサイズを、プリズム40の側面40A,40BがZ方向にベゼル22bに対向するサイズ以上に設定することにより、虚像V1の表示品位の低下を抑制することができる。
【0034】
(効果)
以上、説明した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示光Lを放射する表示面21を有する表示パネル22と、表示面21に接着層27aを介して間接的に接着され、表示光Lが透過する透光部材の一例であるプリズム40と、を備える。プリズム40は、表示面21に直交するZ方向から見て、ベゼル22bの一部に重なるように形成されている。
この構成によれば、視認者1の視点EPの移動に関わらず、表示光Lの光線L1,L2は、プリズム40をその厚さ方向に通過して、プリズム40の側面40A,40Bを通過しない。よって、虚像V1の表示品位の低下を抑制することができる。
【0035】
(2)ヘッドアップディスプレイ装置100は、表示光Lを被投射部材の一例であるウインドシールド201に投射することにより虚像V1を表示する。プリズム40は、表示光Lが入射し、表示面21に平行をなし、表示面21に接着層27aを介して間接的に接着される光入射面41iと、表示光Lが出射し、光入射面41iに対して傾斜する光出射面41oと、を備える。光出射面41oの光入射面41iに対する傾斜角度により、視認者1から見た虚像V1の倒れ角度αが調整される。
プリズム40が表示面21に接着される構成であっても、虚像V1の表示品位の低下を抑制することができる。
特に、虚像V1の倒れ角度αを調整するためにプリズム40には厚みが必要となるため、自ずと、プリズム40の側面40A,40Bが視認者により間接的に視認されやすい構造となってしまう。このような構造において、上記のようにプリズム40がベゼル22bに重なるサイズに形成されることで、虚像V1の表示品位の低下を抑制することができる。
【0036】
(第2実施形態)
本開示の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について、図面を参照して説明する。本実施形態では、プリズムに部分的に遮光部が形成されている点が上記第1実施形態と相違する。以下、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0037】
図5に示すように、プリズム40には、光を通さない層からなる遮光部43C~43F,43iが部分的に形成されている。遮光部43C~43F,43iは、黒系色の印刷層からなり、ベゼル22bに反射した光が視認者に到達することを遮る。
遮光部43Cは、プリズム40の側面40Cの全域にわたって形成されている。遮光部43Dは、プリズム40の側面40Dの全域にわたって形成されている。遮光部43Eは、プリズム40の側面40Eの全域にわたって形成されている。遮光部43Fは、プリズム40の側面40Fの全域にわたって形成されている。
遮光部43iは、プリズム40の光入射面41iの外周側に枠状に形成されている。遮光部43iは、遮光部43C,43Dに連続して形成されている。
【0038】
本実施形態において、プリズム40の遮光部が形成される領域は変更可能である。例えば、遮光部43C~43Fと43iとの何れか一方が省略されてもよい。また、遮光部43Cと43D~43Fとの何れか一方が省略されてもよい。さらに、側面40Aと40Bの少なくとも何れか一方にも遮光部が形成されてもよい。また、プリズム40の光出射面41oの外周側に枠状の遮光部が形成されていてもよい。
【0039】
(効果)
以上、説明した第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
プリズム40は、プリズム40のベゼル22bに対向する背面である光入射面41iの外周とプリズム40の側面40A~40Fに形成される遮光部43C~43F,43iを備える。
この構成によれば、遮光部43C~43F,43iによりベゼル22bに反射した光が視認者に到達することが遮られ、虚像V1の表示品位の低下を抑制することができる。
特に、プリズム40が存在することにより、構造上、ベゼル22bに反射した光が間接的に視認者に到達しやすいため、遮光部43C~43F,43iを設けることが好ましい。
【0040】
(第3実施形態)
本開示の第3実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について、図面を参照して説明する。本実施形態では、プリズムに部分的に遮光部として粗面が形成されている点が上記第2実施形態と相違する。以下、上記第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0041】
図6に示すように、プリズム40の側面40A~40Fは、光入射面41iと光出射面41oに比べて表面粗さが荒い粗面として形成されている。側面40A~40Fには微細な凹凸が形成されている。側面40A~40Fでは、光入射面41iと光出射面41oに比べて光が透過しづらい。
【0042】
本実施形態に係るプリズム40の製造方法について説明する。
まず、表面全域が粗いプリズム素材を用意する。そして、このプリズム素材のうち、光入射面41iと光出射面41oに対応する面を鏡面加工する。これにより、本実施形態に係るプリズム40が完成となる。
この製造方法では、側面40A~40Fの表面を荒らす加工が不要となる。
なお、プリズム40の製造方法は、これに限らず、側面40A~40Fの表面を荒らす工程を含んでいてもよい。
【0043】
本実施形態において、光入射面41iと光出射面41oの少なくとも何れか一方の外周側の枠状部が粗面として形成されてもよい。さらに、側面40A~40Fのうち何れかが粗面でなくてもよい。
【0044】
(効果)
以上、説明した第3実施形態によれば、以下の効果を奏する。
プリズム40は、表示光Lが入射する光入射面41iと、表示光Lが出射する光出射面41oと、を備える。プリズム40の側面40A~40Fは、光入射面41iと光出射面41oよりも表面粗さが粗い粗面として形成されている。
この構成によれば、側面40A~40Fが粗面であるため、迷光が側面40A~40Fを通過しても光強度が弱まって視認者に視認されづらくなり、虚像V1の表示品位の低下を抑制することができる。
【0045】
(第4実施形態)
本開示の第4実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置について、説明する。本実施形態では、上記第2実施形態と比較して、表示パネルにベゼルが形成されない点が相違する。以下、上記第2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0046】
プリズム40には、ベゼル22bに反射した光が視認者に到達することを遮るために、遮光部43C~43F,43iを部分的に形成される構成が示されたが、本実施形態でのプリズムの遮光部は、表示パネルの外周部(外周端部)に反射した光が視認者に到達することを遮るように設けられる。
【0047】
具体的には、このヘッドアップディスプレイ装置では、
図4の構成と比較して、表示パネル22のベゼル22b1,22b2は排除されており、プリズム40は表示パネル22の外周部(表示面22aを囲むように位置する縁部や端部)が枠部23の光通過孔を介して視認できないように形成された遮光部を有する。
【0048】
表示パネル22がベゼルを有さない場合、ベゼルに起因する不要光は無くなる。その一方、表示パネル22の液晶部22aの最表面には、ガラス(封止ガラスや保護ガラス)や保護プレート(例えば合成樹脂製)などの透明板が位置し、従来ベゼルで覆われていた透明板(表示パネル22)の外周部が視認されやすくなる。
【0049】
ここで、外周部に不要光が到達すると、枠部23の光通過孔を介して視認者に視認される虞がある。この場合、視認者は不要光を煌めく枠状の像などとして視認される。
【0050】
そこで、表示パネル22がベゼルを有さない場合にも、プリズム40は表示パネル22の外周を覆う程度の遮光部を形成することで、不要光に因る表示品位の低下を抑制できる。
したがって、この構成によっても、表示装置20がベゼル22bを有さない場合などでも好適に虚像の表示品位が低下を抑制できる。
【0051】
なお、表示装置が液晶表示装置や有機EL表示装置のような電子ディスプレイ装置である場合には、透明板は上記の例示の構成となる。表示装置がプロジェクション表示装置(DMDやLCOS(Liquid Crystal On Silicone)、TFTなどを備える構成)である場合には、透明板は、スクリーンなどで構成される。
【0052】
(効果)
以上、説明した第4実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(2-1)ヘッドアップディスプレイ装置は、表示光Lを放射する表示面21、及び表示面21を囲む外周枠状に形成されるベゼル22bを有する表示パネル22と、表示面21に接着層27aを介して間接的に接着され、表示光Lが透過する透光部材の一例であるプリズム40と、を備える。プリズム40は、表示パネル22に対向する背面である光入射面41iの外周とプリズム40の側面40A~40Fに形成される遮光部43C~43F,43iを備える。
【0053】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に、変形の一例を説明する。
【0054】
(変形例)
上記第2実施形態において、遮光部43C~43F,43iは、印刷により形成される印刷層であったが、これに限らず、プリズム40とは別体で遮光性樹脂又は金属により形成される別部材であってもよい。
上記第2実施形態と第3実施形態とが組み合わされて、プリズム40の一部に遮光部が形成され、プリズム40の他部に粗面が形成されてもよいし、さらに、粗面上に遮光部が形成されてもよい。
【0055】
上記各実施形態において、プリズム40のY方向のサイズも同様に大きくしてもよい。具体的には、プリズム40の光入射面41iは、ベゼル22bの2つの辺部22b3,22b4の少なくとも一部に重なるサイズに形成されてもよい。これにより、視点EPを上下方向に動かしたときに表示光Lの光線が側面40C~40Fの何れかを通過して視点EPに到達することが抑制され、虚像V1の表示品位の低下が抑制される。
【0056】
上記各実施形態においては、プリズム40の側面40A,40Bの両方が、ベゼル22bの辺部22b1,22b2の側面にZ方向に一致するか、辺部22b1,22b2の上面に対向していたが、側面40A,40Bのうち何れか一方が辺部22b1,22b2の側面にZ方向に一致するか、辺部22b1,22b2の上面に対向し、側面40A,40Bのうち何れか他方が表示面21に対向していてもよい。
【0057】
上記各実施形態において、プリズム40の形状は適宜変更可能である。例えば、プリズム40の側面40D~40Fは、光入射面41iに直交する1つの平面として形成されてもよい。
上記各実施形態において、プリズム40は、虚像V1の向きを調整する透光部材であったが、これ以外を目的とした表示光Lを調整する透光部材であってもよい。
上記各実施形態においては、表示パネル22には接着層27a,27bを介してプリズム40と透光部材24が接着されていたが、接着層27a,27bが省略され、表示パネル22、プリズム40及び透光部材24は、それぞれ、表示器ケース23内に保持されていてもよい。
【0058】
上記各実施形態において、表示装置20は、液晶表示パネルを備える構成に限らず、有機EL(Electro Luminescence)、DMD(Digital Micro mirror Device)又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを備えた構成であってもよい。
上記各実施形態においては、ヘッドアップディスプレイ装置100が車載されていたが、これに限らず、飛行機、船等の乗り物に搭載されてもよい。また、被投射部材はウインドシールド201に限られず、専用のコンバイナであってもよい。
また、表示装置20は、ヘッドアップディスプレイ装置100以外の装置に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 視認者
12 凹面ミラー
12a 反射面
20 表示装置
21 表示面
22 表示パネル
22a 液晶部
22b ベゼル
22b1~22b4 辺部
23 表示器ケース
23a 枠部
24 透光部材
25 照明装置
26 制御部
27a,27b 接着層
30 筐体
31 窓部
40,140 プリズム
40A~40F,140A,140B 側面
41i 光入射面
41o 光出射面
43C~43F,43i 遮光部
48A 仮想ディスプレイ平面
100 ヘッドアップディスプレイ装置
200 車両
201 ウインドシールド
θ 角度範囲
α 倒れ角度
L 表示光
La 光軸中心
K1 虚像表示仮想領域
L1,L2 光線
R 可視領域
V1 虚像
CL クリアランス
EP 視点