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特開2025-21413フッ素含有組成物、このフッ素含有組成物を含むワニス及び絶縁電線
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  • 特開-フッ素含有組成物、このフッ素含有組成物を含むワニス及び絶縁電線 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021413
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】フッ素含有組成物、このフッ素含有組成物を含むワニス及び絶縁電線
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/34 20060101AFI20250205BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20250205BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
C08F212/34
C08F290/06
H01B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064618
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2023124367
(32)【優先日】2023-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000174851
【氏名又は名称】三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 修
(72)【発明者】
【氏名】関村 諭
【テーマコード(参考)】
4J100
4J127
5G309
【Fターム(参考)】
4J100AB15P
4J100AE76Q
4J100AL08Q
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA08Q
4J100BA42Q
4J100BB07P
4J100BC04P
4J100BC04Q
4J100BC43P
4J100CA04
4J100DA47
4J100DA57
4J100JA44
4J127AA03
4J127BA051
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB151
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD231
4J127BG041
4J127BG051
4J127BG071
4J127BG121
4J127CB221
4J127CC021
4J127CC031
4J127EA05
4J127FA37
4J127FA41
5G309RA09
(57)【要約】
【課題】高い可とう性と低誘電率を両立したフッ素含有組成物を提供する。
【解決手段】フッ素含有化合物と、二官能性架橋剤とを含むフッ素含有組成物であって、前記フッ素含有化合物は、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位A、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及びオレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位C、を含み、前記構成単位A乃至Cが、前記構成単位Cを末端として結合して成ることを特徴とするフッ素含有化合物であり、前記フッ素含有化合物及び前記二官能性架橋剤の合計を100質量%としたとき、前記二官能性架橋剤を30質量%を超え70質量%未満含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有化合物と、二官能性架橋剤とを含むフッ素含有組成物であって、
前記フッ素含有化合物は、
主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位A、
主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及び
オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位C、
を含み、
前記構成単位A乃至Cが、
C-B-(A-B)n-C 又は C-A-(B-A)n-C
(但し、nは1より大きく30未満)の順で結合して成ることを特徴とするフッ素含有化合物であり、
前記フッ素含有化合物及び前記二官能性架橋剤の合計を100質量%としたとき、前記二官能性架橋剤を30質量%を超え70質量%未満含有することを特徴とするフッ素含有組成物。
【請求項2】
前記フッ素含有化合物が、下記式(I)の構造を有する請求項1記載のフッ素含有組成物。
【化1】
式中、Lは、下記式(II)又は(III)の構造であり、
【化2】
及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、C1~C10のアルキル基、C1~C10のハロアルキル基、C6~C10のアリール基からなる群から選択される基であるか、またはR及びRが一緒になって置換基を有してもよい環構造を形成する基であり、
及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、フッ素原子、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC1~C10の飽和または不飽和炭化水素基、及び、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC6~C10のアリール基からなる群から選択される基であり、
nは1より大きく30未満であり、
Xは、オレフィン性炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を含む基である。
【請求項3】
前記Xが少なくとも1個のフッ素原子を含み、
前記Lが、置換基を有してもよいシクロペンチリデン基、置換基を有してもよいシクロヘキシリデン基、および、置換基を有してもよいシクロドデシリデン基からなる群から選択される請求項2記載のフッ素含有組成物。
【請求項4】
前記フッ素含有化合物が、下記式の構造を有する請求項3記載のフッ素含有組成物。
【化3】
式中、nは1より大きく30未満である。
【請求項5】
前記二官能性架橋剤がフッ素原子を含まない、請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素含有組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素含有組成物及び溶剤を含むことを特徴とするワニス。
【請求項7】
前記二官能性架橋剤がフッ素原子を含まない、請求項6記載のワニス。
【請求項8】
導体と絶縁被膜とからなる絶縁電線であって、前記絶縁被膜が、請求項1~4のいずれか一項に記載のフッ素含有組成物からなることを特徴とする絶縁電線。
【請求項9】
前記二官能性架橋剤がフッ素原子を含まない、請求項8記載の絶縁電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有組成物に関する。より具体的には、絶縁被膜やフレキシブル銅張積層板に有用なフッ素含有組成物、このフッ素含有組成物を含むワニス及び絶縁被膜を有する絶縁電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速スイッチング素子、インバータモーター、変圧器等の電気・電子機器用コイルには、線状金属導体の外周面に樹脂製の絶縁被膜を備えた絶縁電線が用いられている。絶縁被膜は、熱可塑性樹脂を押出被覆する方法、熱硬化性樹脂ワニスを塗布した後に焼付けする方法、あるいはこれらを組み合わせる方法等により製造されている。
このような絶縁被膜には、高度な絶縁性、金属導体への高い密着性、曲げや伸びなどの加工に耐えうる可とう性が求められる。
【0003】
押出被覆により絶縁被膜を形成する材料としては、例えば特許文献1には、ポリアリーレンスルフィド樹脂とフッ素樹脂を含む組成物が開示されており、また特許文献2では、特定の比誘電率を有する樹脂とフッ素樹脂を含む組成物が開示されている。
樹脂ワニスにより絶縁被膜を形成する材料としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等が知られているが、フッ素原子を含む例としては、フッ素化ポリイミドが開示されている(特許文献3)。
【0004】
また、可とう性と絶縁性が求められる他の用途として、フレキシブル銅張積層板が挙げられる。フレキシブル銅張積層板は、可とう性のある絶縁性フィルムの片面又は両面に接着剤層を介して銅箔を貼り合わせた構造であり、絶縁性フィルムの基材としては、ポリイミド樹脂がよく用いられている。
【0005】
一方、本出願人は、低い誘電率及び低い誘電損失を示す材料として、特定の構造を有するフッ素樹脂を提案している(特許文献4、5)。これらは優れた物性を示すものであるが、その硬化物の可とう性については検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2023-64193号公報
【特許文献2】国際公開第2014/112405号
【特許文献3】国際公開第2015/002278号
【特許文献4】特開2022-89150号公報
【特許文献5】特開2023-65203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
絶縁被膜や銅張積層板への高い可とう性と低誘電率に対する要求は年々高まっており、さらなる向上が求められている。
本発明は、高い可とう性と低誘電率を両立したフッ素含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のフッ素含有化合物に対し、特定の架橋剤を特定の量添加することにより、低誘電率を有しながら優れた可とう性をも併せ持つ硬化物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明によれば、フッ素含有化合物と、二官能性架橋剤とを含むフッ素含有組成物であり、前記フッ素含有化合物は、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位A、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及びオレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位C、を含み、前記構成単位A乃至Cが、C-B-(A-B)n-C 又は C-A-(B-A)n-C(但し、nは1より大きく30未満)の順で結合して成ることを特徴とするフッ素含有化合物であり、前記フッ素含有化合物及び前記二官能性架橋剤の合計を100質量%としたとき、前記二官能性架橋剤を30質量%を超え70質量%未満含有するフッ素含有組成物が提供される。
【0010】
本発明のフッ素含有組成物においては、
[1]前記フッ素含有化合物が、下記式(I)の構造を有することが好適である。
【化1】
式中、Lは、下記式(II)又は(III)の構造であり、
【化2】
及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、C1~C10のアルキル基、C1~C10のハロアルキル基、C6~C10のアリール基からなる群から選択される基であるか、またはR及びRが一緒になって置換基を有してもよい環構造を形成する基であり、
及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、フッ素原子、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC1~C10の飽和または不飽和炭化水素基、及び、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC6~C10のアリール基からなる群から選択される基であり、
nは1より大きく30未満の範囲内であり、
Xは、オレフィン性炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を含む基である。
【0011】
また本発明のフッ素含有組成物においては、
[2]前記Xが少なくとも1個のフッ素原子を含み、前記Lが、置換基を有してもよいシクロペンチリデン基、置換基を有してもよいシクロヘキシリデン基、および、置換基を有してもよいシクロドデシリデン基からなる群から選択されること、
[3]前記フッ素含有化合物が、下記式の構造を有すること、
【化3】
式中、nは1より大きく30未満である。
[4]前記二官能性架橋剤がフッ素原子を含まないこと、
が好適である。
【0012】
本発明によればまた、上記フッ素含有組成物及び溶剤を含むワニスが提供される。
【0013】
本発明によれば更に、導体と絶縁被膜とからなる絶縁電線であって、前記絶縁被膜が、上記フッ素含有組成物からなることを特徴とする絶縁電線が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可とう性に優れ、且つ誘電率の低い硬化物を得ることができる。また本発明によれば、上記硬化物による被覆を容易に行うためのワニスを得ることができる。さらに本発明によれば、可とう性に優れ、且つ誘電率が低い絶縁被膜を有する絶縁電線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例における鋼棒を用いた可とう性評価を示す模式図である。
図2】実施例における鋼棒を取り除いた可とう性評価を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(フッ素含有組成物)
本発明のフッ素含有組成物は、後述するフッ素含有化合物と二官能性架橋剤とを含む組成物であることが第一の重要な特徴であり、二官能性架橋剤の含有量が、フッ素含有化合物及び二官能性架橋剤の合計を100質量%としたとき、30質量%を超え、70質量%未満であることが第二の重要な特徴である。
すなわち、後述する実施例の結果からも明らかなように、本発明の組成物においては優れた可とう性が発現されるのに対して、二官能性架橋剤に代えて三官能性又は四官能性の架橋剤を用いた場合や、二官能性架橋剤を用いた場合であっても含有量が上記範囲を外れる場合には、優れた可とう性を有する硬化物を得ることができない。
二官能性架橋剤の含有量は、35質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
[フッ素含有化合物]
本発明のフッ素含有組成物を構成するフッ素含有化合物は、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位Aと、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及びオレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位Cから成ることにより、上記構成単位A乃至Cが有するそれぞれの機能をフッ素含有化合物が備えることが可能となる。
すなわち上記構成単位Aが有する優れた電気特性(低い誘電率)及び難燃性、上記構成単位Bが有する優れた溶剤可溶性や高いガラス転移温度を備えると共に、上記構成単位Cが化合物の末端に位置することにより、構成単位Cが有する優れた反応性により優れた熱硬化性を備えることが可能となる。
【0018】
また本発明のフッ素含有組成物を構成するフッ素含有化合物においては、前記構成単位A乃至Cが、
C-B-(A-B)n-C・・・(i)又はC-A-(B-A)n-C・・・(ii)の順で結合していることが好適である。これにより、ゲル分率(架橋密度)の高い硬化物を得ることが可能となる。
上記式(i)及び(ii)において、nの値は1より大きく30未満であることが好ましく、2以上20以下であることがより好ましく、5以上10以下であることがさらに好ましい。
上記フッ素含有化合物において、nは平均重合度を表す。平均重合度は、モノマーの化学量論比から予想できるほか、核磁気共鳴スペクトルなど従来公知の方法で測定することができる。本発明において「nが1である」とは、その化合物の平均重合度が0.5~1.4であることを意味する。本発明において、nを整数で表すことがあるが、同様に分布があるものを含む。
【0019】
<構成単位A>
上記フッ素含有化合物を構成する構成単位Aは、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する。構成単位Aの環状構造における水素原子の50%以上、好適には100%がフッ素原子に置換されていることによって、フッ素が有する優れた電気特性及び難燃性をフッ素含有化合物に付与することが可能となる。
構成単位Aにおいて、3~12員環の環状構造は、主骨格中に3個以上有することも可能であるが、好適には主骨格中に1又は2個であり、側鎖も含めて1~3個の環状構造を有することが好適である。環状構造を構成する元素としては特に限定されず、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
【0020】
構成単位Aとして具体的には、それぞれ置換基を有していても良いシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、シクロノナジエン、シクロデカジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエン、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、インダン、アセナフチレン、フルオレン、スピロフルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ヘキサセン、ペンタセン、ルビセン、コロネン、オバレン、ピロール、チオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、イソインドリン、インドリン、インダゾリン、プリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ガルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、イソベンゾオキサゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、トリアジン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ベンゾカルバゾール、ジベンゾカルバゾール、チアジアゾール、イミダゾピリジン等が挙げられる。
構成単位Aにおいて、3~12員環の環状構造を複数含むとき、それらは同一の構造でもよく、異なった構造でも良い。
【0021】
置換基としては、下記の任意の置換基を例示できる。
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、C1-C60アルキル基、C2-C60アルケニル基、C2-C60アルキニル基、及びC1-C60アルコキシ基;
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、及びイミダゾピリミジニル基、からなる群より選択された少なくとも一つで置換された、C1-C60アルキル基、C2-C60アルケニル基、C2-C60アルキニル基及びC1-C60アルコキシ基;
【0022】
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基及びイミダゾピリミジニル基;
【0023】
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、C1-C60アルキル基、C2-C60アルケニル基、C2-C60アルキニル基、C1-C60アルコキシ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、及びイミダゾピリミジニル基からなる群より選択された少なくとも一つで置換された、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基及びイミダゾピリミジニル基;等。
置換基は複数有していても良く、そのとき、当該置換基は同一でも良く、それぞれ異なっていても良い。
【0024】
構成単位Aは、ベンゼン環又はシクロペンテニルを含むことが好ましい。より好ましくは、置換基を有していても良いベンゼン;置換基を有していても良いシクロペンテニル;置換基を有していても良いビフェニルやターフェニル等のベンゼン環と他の芳香環が結合した化合物;置換基を有していても良いナフタレン等のベンゼン環と他の芳香環が縮合した化合物が挙げられる。特に好ましくは、以下の構造式(A-1’)~(A-5’)で表される化合物である。
【0025】
【化4】
(式中、mはそれぞれ独立的に0~6の整数を表す。)
【0026】
上記構造式において、Rとしてはそれぞれ独立的に、前述した置換基が挙げられる。
前述のように、構成単位Aとしては、主骨格の環状構造における水素原子の100%がフッ素原子に置換されている構造がより好適である。すなわち、最も好適な構造として、以下の構造式(A-1)~(A-5)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化5】
【0028】
構成単位Aを形成可能な化合物として、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロビフェニル、パーフルオロナフタレン、4,4-ジフルオロベンゾフェノン,1,1’-(1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロ-1,6-ヘキサンジイル)ビス4-フルオロベンゼン等のベンゼン環を有するモノマー由来の構成単位、又はオクタフルオロシクロペンテン等のシクロペンテニルを有するモノマー由来の構成単位を例示できる。中でも、上記式(A-1)~(A-5)で表したように、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロビフェニル、パーフルオロナフタレン、オクタフルオロシクロペンテン由来であることが好適である。
【0029】
<構成単位B>
上記フッ素含有化合物を構成する構成単位Bは、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する。構成単位Bにおいてはフッ素原子を有していないことが好適であり、フッ素原子を有する場合でも構成単位B中の原子数の30%以下であることが重要である。これにより、フッ素含有化合物における優れた溶剤可溶性が得られると共にフッ素含有化合物が確実に合成される。
構成単位Bにおいては、ベンゼン環は、主骨格中に4個以上有することも可能であるが、好適には主骨格中に2又は3個であり、側鎖も含めて1~4個の環構造とすることが好適である。
【0030】
構成単位Bは、置換基を有していても良いベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、インデン、ナフタレン、インダン、アセナフチレン、フルオレン、スピロフルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ヘキサセン、ペンタセン、ルビセン、コロネン、オバレン、イソインドリン、インドリン、インダゾリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ガルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、イソベンゾオキサゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ベンゾカルバゾール、ジベンゾカルバゾール等が挙げられる。
ここで置換基としては、前記構成単位Aにて例示した置換基が挙げられる。
【0031】
このような構成単位Bとしては、下記式(B)で示されるビスフェノール類由来の構成単位であることが好適である。
【0032】
【化6】
【0033】
式中、Lは、下記式(b-1)又は(b-2)の構造であり、
【0034】
【化7】
【0035】
上記式(b-1)及び(b-2)におけるR及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、C1~C10のアルキル基、C1~C10のハロアルキル基、C6~C10のアリール基からなる群から選択される基であるか、またはR及びRが一緒になって置換基を有してもよい環構造を形成する基である。
C1~C10のアルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基(イソブチル基)、ブチル基、ペンチル基などを含む。C1~C10のハロアルキル基の例は、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基などを含む。C6~C10のアリール基の例は、フェニル基、ナフチル基(1-異性体及び2-異性体を含む)を含む。
【0036】
あるいはまた、R及びRが一緒になって、置換基を有してもよい環構造を形成する基であってもよい。環構造を形成する基の例は、テトラメチレン基(シクロペンタン環を形成する)、ペンタメチレン基(シクロヘキサン環を形成する)、ウンデカメチレン基(シクロドデカン環を形成する)、2-メチル-ペンタメチレン基(メチルシクロヘキサン環を形成する)、2,2,4-トリメチル-ペンタメチレン基(トリメチルシクロヘキサン環を形成する)、ビフェニル-2,2’-ジイル基(フルオレン環を形成する)などを含む。
【0037】
上記式(B)において、R及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、フッ素原子、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC1~C10の飽和または不飽和炭化水素基、または、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC6~C10のアリール基であってもよい。一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC1~C10の飽和または不飽和炭化水素基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基(イソブチル基)、ブチル基、ペンチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ビニル基、アリル基、1-メチルビニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基などを含む。一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC6~C10のアリール基の例は、フェニル基、ナフチル基(1-異性体及び2-異性体を含む)、ペルフルオロフェニル基などを含む。
【0038】
好適な構成単位Bとしては、ビスフェノールAF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールZ(1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)、ビスフェノールA(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールC(2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、4-ヒドロキシフェニルブタン、4,4’-(1,3-ジメチルブチリデン)ジフェノール、ビスフェノールP(1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン)、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン等を由来とする構成単位を例示でき、中でもビスフェノールAF、ビスフェノールZを由来とする構成単位が好適である。
【0039】
<構成単位C>
上記フッ素含有化合物を構成する構成単位Cは、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物に由来する構造を有し、これにより架橋剤を用いない場合でも高いゲル分率の硬化物を成形可能な優れた熱硬化性(架橋性)を付与することが可能となる。また構成単位Cは少なくとも1個のフッ素原子を含んでいることが好適であり、具体的には、構成単位中の原子数の50%以下のフッ素原子を含んでいることが好適である。これにより構成単位Aのフッ素原子と相俟って優れた電気特性や難燃性を付与することができる。
更に構成単位Cはベンゼン環を有することが好適である。
好適な構成単位Cは、以下の(C-1)~(C-10)の構造を含む。
【0040】
【化8】
【0041】
式中、pは、0~4の整数であり、いくつかの態様において、pは4である。別の態様において、pは0である。Rは、C1~C10のアルキル基、及びC6~C10のアリール基からなる群から選択される基を表す。R’は、水素原子またはC1~C10のアルキル基を表す。
【0042】
構成単位Cは、特に好ましくは以下の(C-11)~(C-15)の構造を有する。
【0043】
【化9】
【0044】
<その他>
本発明のフッ素含有組成物を構成するフッ素含有化合物は、上記構成単位A乃至Cにより得られる上述した種々の機能を損なわない範囲において、構成単位A乃至C以外の他の構成単位を少量含むことを除外するものではない。
例えば、電気特性を向上するものとして、ベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂肪族ジオール化合物又はベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂環式ジオール化合物由来の構成単位を、フッ素含有化合物を構成する全構成単位の20モル%以下の量で含有させることができる。
【0045】
このようなベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂肪族ジオール化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどが挙げられる。
【0046】
またベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂環式ジオール化合物としては、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールなどのシクロヘキサンジオール類、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサンジメタノール類、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールなどのノルボルナンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1,3-アダマンタンジオール、2,2-アダマンタンジオール、デカリンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、イソソルビド、3,9-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジエチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジプロピルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが挙げられる。
【0047】
[好適態様]
本発明に好適に用いられるフッ素含有化合物としては、これに限定されるものではないが、下記の構造を有する化合物を例示できる(式中、「(*)」は結合位置を示す)。
尚、下記式(1)~(10)におけるnの値は、前述した通り、1より大きく30未満であることが好ましく、2以上20以下であることがより好ましく、5以上10以下であることがさらに好ましい。
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
本発明において、フッ素含有化合物は溶剤に可溶であることが好ましい。フッ素含有化合物が「溶剤に可溶」であるとは、所与の溶剤から得られる溶液100gあたり、1g以上、好ましくは10g以上のフッ素含有化合物が溶解していることを意味する。本実施形態のフッ素含有化合物は、後述する炭化水素類に可溶であることが好ましい。また、本実施形態のフッ素含有化合物は、コストの観点からトルエンに可溶であることが特に好ましい。
本発明のフッ素含有組成物において、フッ素含有化合物は、前述した各構成単位A乃至Cで規定したフッ素原子含有率を満足する限りこれに限定されるものではないが、フッ素含有化合物の全質量に対して20~40質量%のフッ素含有量であることが望ましい。これにより優れた電気特性と共に、優れた溶剤可溶性及び難燃性を有している。
【0051】
[二官能性架橋剤]
本発明のフッ素含有組成物を構成する二官能性架橋剤は、分子中に2個のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有する化合物を含む。このような架橋剤の例は、メタクリレート化合物、アクリレート化合物、アリル化合物、ビニル化合物等を含む。架橋反応性が高いことから、メタクリレート化合物又はアクリレート化合物が好ましく、アクリレート化合物が特に好ましい。
これらの架橋剤の例としては、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDVE)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEGDVE)、トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル(TEGDVE)、ブタンジオールジビニルエーテル(BDVE)等が挙げられる。これらは市販品を用いることもでき、例えば、株式会社レゾナック製カレンズ(登録商標)MOI-EG(2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート)、ダイセル・オルネクス株式会社製Ebecryl(登録商標)8402(二官能脂肪族ウレタンアクリレート)、Ebecryl(登録商標)150(EO変性ビスフェノールAジアクリレート)等が挙げられる。
本発明に用いる二官能性架橋剤としては、フッ素原子を含まないことが好ましい。フッ素原子を含まないことにより、組成物と導体や他の樹脂層との密着性が高くなる。
また、本発明の二官能性架橋剤は、その主骨格に環状構造を有するとき、得られる硬化物の可とう性が高くなる傾向がある。従って、より高い可とう性が求められるとき、主骨格に環状構造を有する二官能性架橋剤を用いることが好ましい。
【0052】
[その他の添加剤]
本発明のフッ素含有組成物は、任意選択的成分として、反応開始剤、充填材、消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤(染料または顔料)、難燃剤、滑剤、分散剤などの、当該技術において知られている任意の添加剤をさらに含んでもよい。
【0053】
[組成物の調製]
本発明のフッ素含有組成物は、フッ素含有化合物と、二官能性架橋剤と、上述したその他の任意選択的成分とを混合させることによって調製することができる。混合時に加熱を行ってもよい。また、混合は、各種の撹拌機、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミルなどの、当該技術において知られている任意の混合装置を用いて実施することができる。
【0054】
(ワニス)
本発明の別の実施態様は、上述した本発明のフッ素含有組成物と、溶剤とを含むワニスである。
溶剤としては、種々の溶剤を用いることができるが、溶剤可溶性の観点から、本発明においては非プロトン性溶剤を用いることが好ましい。このような非プロトン性溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ミネラルスピリットなどの炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)などのケトン類;シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノンなどの環式ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキソランなどの環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-シクロヘキシルピロリドンなどのアミド類;スルホラン、ジメチルスルホンなどのスルホン類;及びジメチルスルホキシド(DMSO)のようなスルホキシド類を含む。本発明において好ましい溶剤は炭化水素類であり、特に好ましくは芳香族炭化水素類である。
ワニスの濃度としては、フッ素含有化合物及び二官能性架橋剤が均一に分散する濃度であればよく、特に制限されないが、固形分濃度として40~70質量%、好ましくは45~65質量%、さらに好ましくは50~60質量%であることが望ましい。
【0055】
より緩和な条件でより効率的な架橋・硬化が可能となるため、反応開始剤を用いることが好適である。用いることができる反応開始剤は、たとえば、過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ジクミル、クミルヒドロペルオキシド、α,α’-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン(日油株式会社製パーブチル(登録商標)P)、ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)ペルオキシド(日油株式会社製パークミル(登録商標)D)、t-ブチルα,α-ジメチルベンジルペルオキシド(日油株式会社製パーブチル(登録商標)C)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどを含む。
【0056】
本発明において、充填材は、有機充填材であってもよいし、無機充填材であってもよい。用いることができる有機充填材は、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのエンジニアリングプラスチック;及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)などの溶剤不溶性フッ素樹脂を含む。用いることができる無機充填材は、金属;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンなどの金属酸化物;金属水酸化物;チタン酸金属塩;ホウ酸亜鉛;スズ酸亜鉛;ベーマイト;シリカ;ガラス;酸化ケイ素;炭化ケイ素;窒化ホウ素;フッ化カルシウム;カーボンブラック;マイカ;タルク;硫酸バリウム;二硫化モリブデンなどを含む。溶剤不溶性フッ素樹脂は、フッ素含有組成物の硬化物の電気特性(誘電率、誘電損失など)の改善の点から好ましい。また、シリカは、フッ素含有組成物の硬化物の電気特性(誘電率、誘電損失など)を損なうことなしに、熱膨張係数を減少させることができる点で好ましい。
【0057】
(絶縁電線)
本発明の別の実施態様は、導体と絶縁被膜とからなる絶縁電線であり、前記絶縁被膜が上述した本発明のフッ素含有組成物から成る絶縁電線である。
絶縁電線としては、絶縁被膜が導体の外周に形成され、導体と絶縁被膜が接するものであっても良く、導体と絶縁被膜との間に他の樹脂層などを介していても良い。
【0058】
本発明に用いる導体としては、従来、絶縁電線で用いられているものを使用することができ、銅、銅合金、銅クラッドアルミニウム、アルミニウム、銀、金、亜鉛メッキ鉄等の金属導体が挙げられる。
本発明に用いる導体の長手方向と直交する断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、円形または長方形(平角形状)の断面形状の導体が挙げられる。中でも、巻線時に占積率が高くなることから、平角導体が好適に用いられる。本発明の絶縁被膜は優れた可とう性を有することから、狭い空間に多くの絶縁電線を組み込むような用途、すなわちより多く曲げ加工される用途においても好適に用いることができる。
導体の大きさは、特に限定されないが、平角導体の場合、長方形の断面形状において、幅(長辺)は1.0~10.0mmが好ましく、1.0~5.0mmがより好ましく、1.4~4.0mmがさらに好ましく、厚み(短辺)は0.4~3.0mmが好ましく、0.5~2.5mmがより好ましい。幅(長辺)と厚み(短辺)の長さの比(厚み:幅)は、1:1~1:20が好ましく、1:1~1:4がより好ましい。一方、断面形状が円形の導体の場合、直径は0.3~3.0mmが好ましく、0.4~2.7mmがより好ましい。
【0059】
本発明の絶縁電線における絶縁被膜は、本発明のワニスを導体上に直接または他の層を介して塗布し、焼付けすることにより形成される。ワニスを塗布する方法としては、導体又はあらかじめ他の層を形成した導体をワニスに浸漬させる方法、ワニス塗布用ダイスを用いる方法等、従来公知の方法を用いることができる。
焼付けする方法は特に制限されず、例えば焼付炉を用い、100~600℃にて10秒~12時間加熱する方法を用いることができる。
絶縁被膜の膜厚としては、例えば1~300μmであり、好ましくは10~150μmである。
塗布及び/又は焼付けは、所望の絶縁被膜が得られるまで繰り返し行われても良い。
【0060】
上記他の層としては、絶縁被膜とは異なる層である。例えば、芳香族ポリエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン及びポリフェニレンスルフィドからなる層などが挙げられる。
【実施例0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0062】
本実施例及び比較例で使用した架橋剤は、以下の通りである。
・シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDVE):日本カーバイド工業株式会社製、ジビニル化合物(二官能性架橋剤)
・トリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル(TEGDVE):日本カーバイド工業株式会社製、ジビニル化合物(二官能性架橋剤)
・1,4-ブタンジオールジビニルエーテル(BDVE):日本カーバイド工業株式会社製、ジビニル化合物(二官能性架橋剤)
・2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート:株式会社レゾナック製カレンズ(登録商標)MOI-EG、メタクリレート基とイソシアナート基をそれぞれ有する二官能性架橋剤
・二官能ウレタンアクリレート:ダイセル・オルネクス株式会社製Ebecryl(登録商標)8402、脂肪族ウレタンアクリレート化合物(二官能性架橋剤)
・EO変性ビスフェノールAジアクリレート:ダイセル・オルネクス株式会社製Ebecryl(登録商標)150、ジアクリレート化合物(二官能性架橋剤)
・トリアリルイソシアヌレート:株式会社新菱製、TAIC(登録商標)、トリアリル化合物(三官能性架橋剤)
・三官能ウレタンアクリレート:ダイセル・オルネクス株式会社製KRM8667、脂肪族ウレタンアクリレート化合物(三官能性架橋剤)
・1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン:株式会社レゾナック製、カレンズMT(登録商標)NR1、トリチオール化合物(三官能性架橋剤)
・ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート):株式会社レゾナック製、カレンズMT(登録商標)PE1、テトラチオール化合物(四官能性架橋剤)
【0063】
(実施例1)
下記式で表されるフッ素含有化合物0.400gをメチルエチルケトン(MEK)0.600gに投入し、60℃にて20分間撹拌し溶解させた。室温まで放冷し、二官能性架橋剤としてシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(CHDVE)0.267g、及び反応開始剤としてビス(1-メチル-1-フェニルエチル)ペルオキシド(日油株式会社製パークミル(登録商標)D)0.013gを添加してさらに室温で10分間撹拌し、組成物を得た。フッ素含有化合物及び二官能性架橋剤の合計を100質量%としたとき、二官能性架橋剤の含有割合は40質量%となる。
【0064】
【化12】
(n=7である。)
【0065】
100mm×100mm×0.1mm厚さのアルミニウム製金属板へ、上記組成物をアプリケーター(ウェットフィルムコーター「Jieoto」(登録商標)No.5)を用いて、ギャップサイズ400μmにて塗布した。210℃に設定した恒温槽(エスペック株式会社製STPH-202M)に10分間入れて予備乾燥を行い、さらに500℃に設定した恒温槽に2分間入れて焼付けを行い、試験片を得た。焼付け後の塗膜厚さは70μmであった。
【0066】
(実施例2~9、比較例1~12)
実施例1と同様に、下記表1に示す架橋剤及び架橋剤含有割合となるように組成物を作製し、試験片を得た。
【0067】
(比較例13)
下記式で表されるフッ素含有化合物を用いた以外、実施例2と同様に試験片を得た。
【0068】
【化13】
(n=1である。)
【0069】
(比較例14)
下記式で表されるフッ素含有化合物を用いた以外、実施例2と同様に試験片を得た。
【0070】
【化14】
(n=36である。)
【0071】
(参考例)
実施例1のフッ素含有化合物に代えて、市販のポリイミド樹脂前駆体ワニスをアルミニウム製金属板へ塗布した。150℃に設定した恒温槽に10分間入れて予備乾燥を行い、さらに500℃に設定した恒温槽に2分間入れて焼付けイミド化反応を行うことで、ポリイミド樹脂で被覆された金属板(試験片)を得た。
【0072】
(可とう性評価)
実施例、比較例及び参考例で得られた試験片を用い、被膜面を外側にして直径4mmの鋼棒に金属面をあて、180度(U字状)に曲げた(図1参照)。曲げ部の辺の被膜の割れを確認し、割れが認められなかったものを〇、割れが認められたものを×とした。〇と評価された試験片について、鋼棒を取り除いて金属板同士が密着するまでさらに折り曲げ、曲げ部の辺にて割れが認められないものを◎と評価した(図2参照)。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1の結果より、二官能性架橋剤を使用した実施例1~9が優れた可とう性を示したのに対し、三官能性架橋剤を使用した比較例6~11及び四官能性架橋剤を使用した比較例12では可とう性が認められなかった。また、実施例1及び2に対し、同じ二官能性架橋剤を使用したが架橋剤の添加割合が小さい比較例2及び3、または添加割合が大きい比較例4では可とう性が認められなかった。さらに、実施例2に対してフッ素含有化合物の重合度のみ異なる比較例13及び14においても、可とう性が認められなかった。
【0075】
(誘電率評価)
実施例2、7~9及び参考例の組成物を、幅3mm、長さ40mm、高さ7mmの舟形アルミニウム箔パンに滴下した。ホットプレートを用いて150℃で40分間加熱してMEKを除去した。さらにホットプレートを用いて昇温速度10℃/分で250℃まで加熱した。その後250℃を80分間保持し、硬化物を得た。室温まで冷却した後に硬化物をアルミニウム製パンから剥離した。硬化物を長さ30mm±0.1mmとなるように研磨紙にて削り、棒状のサンプルを得た。
得られたサンプルについて、空洞共振器1GHz(キーコム株式会社製DPS18)を用い、ASTMD2520に準拠して比誘電率を測定した。比誘電率の測定は、温度23℃±1℃、湿度50%RH±5%RH環境下で実施した。得られた結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2の結果より、実施例の組成物はいずれも、従来使用されているポリイミド樹脂(参考例)よりさらに優れた誘電率を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、優れた可とう性と低い誘電率を併せ持つ硬化物を得ることができる。当該硬化物は、絶縁電線のための絶縁被膜として有用に用いられるほか、フレキシブル基板材料等、可とう性と絶縁性の両立が求められる分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 試験片
2 鋼棒
図1
図2