(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025021424
(43)【公開日】2025-02-13
(54)【発明の名称】培養システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20250205BHJP
C12M 1/04 20060101ALI20250205BHJP
C12M 1/38 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12M1/04
C12M1/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103719
(22)【出願日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2023124578
(32)【優先日】2023-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳志
(72)【発明者】
【氏名】前田 義人
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 正幸
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA13
4B029BB04
4B029CC01
4B029DB14
4B029DF01
4B029GB07
(57)【要約】
【課題】培養槽の培養液を効率的に加熱することができる培養システムを提供する。
【解決手段】培養システムは、外部装置から排出され、外気よりも高温である高温ガスGを利用して光合成微生物を培養する培養システムであって、光合成微生物を培養するための培養液を収容する培養槽34と、培養槽34との間に空隙Vを形成する空隙形成部71と、を備え、空隙形成部71は、高温ガスGが吹き込まれる第1開口部を有し、高温ガスGは、第1開口部を介して空隙Vに吹き込まれる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から排出され、外気よりも高温であるガスを利用して光合成微生物を培養する培養システムであって、
前記光合成微生物を培養するための培養液を収容する培養槽と、
前記培養槽との間に空隙を形成する空隙形成部と、を備え、
前記空隙形成部は、前記ガスが吹き込まれる第1開口部を有し、
前記ガスは、前記第1開口部を介して前記空隙に吹き込まれる、
培養システム。
【請求項2】
前記空隙形成部は、袋状の形状を有し、
前記培養槽は、前記空隙形成部の内側に設けられている、
請求項1に記載の培養システム。
【請求項3】
前記空隙は、前記培養槽の外面に沿った第1方向に延び、
前記第1開口部は、前記空隙形成部の前記第1方向における一端に設けられ、
前記空隙形成部は、前記空隙形成部の前記第1方向における他端に設けられると共に前記ガスが流出する第2開口部と、前記第1方向と交差する第2方向において前記外面と向かい合う第1表面と、前記第1表面の裏側に位置する第2表面と、を更に有し、
前記培養システムは、前記第2開口部から流出した前記ガスを前記第2表面に沿って流す導風部を更に備え、
前記導風部は、前記第1方向において前記第2開口部と向かい合う導風面を有し、
前記導風面は、前記第1方向から見て前記第2開口部の内側から外側まで延びると共に、前記第2開口部の外側において前記第2表面に沿って延びる、
請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項4】
前記外面は、凸部及び凹部を含む波形形状を有する、
請求項3に記載の培養システム。
【請求項5】
前記培養槽は、
前記培養槽内を複数のセルに区画する仕切壁と、
前記複数のセル内にそれぞれ配置された複数の隔壁と、を更に有し、
前記複数の隔壁のそれぞれは、前記セル内を、ガスが供給される散気室と前記光合成微生物を培養するための培養室とに区画し、
前記凹部は、前記仕切壁及び前記隔壁により構成され、
前記凸部は、前記散気室及び前記培養室により構成されている、
請求項4に記載の培養システム。
【請求項6】
前記培養槽及び前記空隙形成部は、光透過性を有する、
請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項7】
前記第1開口部に吹き込まれる前記ガスを供給する送風機と、
前記培養液の温度に基づいて、前記送風機の動作を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記培養液の温度が所定値以下となった場合、前記ガスの供給を前記送風機に開始させる、
請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項8】
前記外部装置から前記空隙に前記ガスを供給する配管に設けられ、前記ガスに混合される外気の量を調整可能な流量調整部と、
前記外気が混合された前記ガスの温度に基づいて、前記流量調整部を制御する制御部と、を更に備える、
請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項9】
前記外部装置から前記空隙に前記ガスを供給する配管に設けられ、前記ガスを前記培養システムの外部に放出する開放状態と、前記ガスを前記空隙に供給する供給状態と、の間で切り替え可能な三方弁を更に備え、
前記外部装置は、集塵フィルタと、前記集塵フィルタに捕集されている粉塵を払い落とす払落機構と、を備える集塵機であって、
前記三方弁は、前記払落機構による払い落とし動作が行われている間、前記開放状態に設定される、請求項1又は請求項2に記載の培養システム。
【請求項10】
前記三方弁は、払い落とし条件が満たされたことに応じて、前記供給状態から前記開放状態に切り替えられ、
前記払落機構は、前記払い落とし条件が満たされてから遅延時間が経過したことに応じて、前記払い落とし動作を行い、
前記遅延時間は、前記三方弁が前記供給状態から前記開放状態に切り替えられるのに要する時間以上に設定される、請求項9に記載の培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光合成によって増殖する光合成微生物が注目されている。光合成微生物の一種である藻類は、栄養素を含む液体中で細胞分裂を繰り返すことで増殖する微細な植物プランクトンである。藻類は、成長が早く、培養しやすいので、様々な産業で利用可能な有機性資源として有効活用が期待されている。例えば、藻類は、食品、薬品、吸着材又は油の原料として利用される。
【0003】
このような光合成微生物を培養する技術として、特許文献1には、バイオガス発電装置の排ガスの熱(廃熱)によって昇温された液体を用いて藻類を培養する藻類培養装置が記載されている。藻類培養装置は、培養液が貯留された藻類培養槽を含む。藻類培養槽は、廃熱を利用して昇温された液体が循環し、培養液の加温に利用するための温水循環路を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光合成微生物を培養する培養システムとしては、廃熱を用いて培養槽の培養液を加熱する培養システムが知られている。このような培養システムでは、培養槽の培養液を効率的に加熱することが求められる。
【0006】
本開示は、培養槽の培養液を効率的に加熱することができる培養システムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る培養システムは、外部装置から排出され、外気よりも高温であるガスを利用して光合成微生物を培養する培養システムであって、光合成微生物を培養するための培養液を収容する培養槽と、培養槽との間に空隙を形成する空隙形成部と、を備える。空隙形成部は、ガスが吹き込まれる第1開口部を有する。ガスは、第1開口部を介して空隙に吹き込まれる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の各側面及び各実施形態によれば、培養槽の培養液を効率的に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る培養システムを概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される培養部を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示される培養装置を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図2に示される培養装置を概略的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る培養システムの動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、変形例に係る培養システムの一部を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、
図7に示される培養システムの動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。各図には、XYZ座標系が示される場合がある。Y軸方向は、X軸方向及びZ軸方向と交差(例えば、直交)する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向と交差(例えば、直交)する方向である。本明細書では、特に断らない限り、X軸方向とは、X軸正方向を意味し、Y軸方向とは、Y軸正方向を意味し、Z軸方向とは、Z軸正方向を意味する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る培養システム1を概略的に示す図である。
図1に示される培養システム1は、光合成微生物P(
図2参照)を培養する。培養システム1は、閉鎖型の培養システムである。培養システム1は、後述する培養装置33の外部に設けられた装置(以下、「外部装置」と称する。)から排出された高温ガスG(ガス)を利用して光合成微生物Pを培養する。高温ガスGは、外気よりも高温である。本実施形態では、外部装置は、集塵機100である。集塵機100は、例えば、ショット処理によって発生した粉塵を捕集するために設けられている。外部装置は、外気よりも高温である高温ガスGを排出する装置であればよく、集塵機100に限定されない。高温ガスGは、外部装置において生じた廃熱により加熱されたガスであってもよい。
【0012】
本実施形態では、光合成微生物Pは藻類である。藻類は、培養液中で光合成を行って細胞分裂を繰り返すことで増殖する微細な植物プランクトンである。このような藻類としては、緑藻(クロレラ、クラミドモナス、ヘマトコッカス、ボトリオコッカス及びドナリエラ)、トレボキシア藻(パラクロレラ)、プラシノ藻、シアノバクテリア(スピルリナ、アルスロステラ、シネココッカス、シネコキスティス及びノストック)、ハプト藻(プレウロクリシス)、珪藻(キートケロス)、真眼点藻鋼(ナンノクロロプシス)、及びユーグレナが例示される。例えば、スピルリナは、500μm~600μmの長さを有する微細藻類であり、豊富な栄養素を含む食品の原料となり得る。光合成微生物Pの種類は特に限定されない。
【0013】
培養システム1は、ガス供給部2と、培養部3と、制御部4と、を備える。ガス供給部2は、集塵機100から排出された高温ガスGを培養部3に供給する。ガス供給部2は、送風機21と、ダクト22(配管)と、流量調整部23と、ダクト24(配管)と、温度センサ(不図示)と、を含む。
【0014】
送風機21は、後述する開口部73(第1開口部)に吹き込まれる高温ガスGを供給する。送風機21は、例えばファンの回転により送風を行う。送風機21は、制御部4からの指令に基づき、高温ガスGの供給を開始又は停止する。ダクト22は、集塵機100から空隙V(後述)に高温ガスGを供給する配管の一つである。ダクト22は、集塵機100から供給された高温ガスGを送風機21に送るための部分である。ダクト22の一端は、集塵機100の排気ダクト101に接続されている。ダクト22の他端は、送風機21に接続されている。
【0015】
流量調整部23は、集塵機100から供給された高温ガスGに混合される外気の量を調整する。本実施形態では、流量調整部23は、ダクト22に設けられている。流量調整部23は、集塵機100からダクト22を介して送風機21に供給される高温ガスGに混合される外気の量を調整する。流量調整部23は、風調ダンパである。風調ダンパは、ダクト22内に導入される外気の量を調整可能な弁体である。
【0016】
ダクト24は、集塵機100から空隙Vに高温ガスGを供給する配管の一つである。ダクト24は、送風機21により供給された高温ガスGを培養部3に導くための部分である。ダクト24は、開口部73に接続される枝管25を含む。本実施形態では、ダクト24は、複数の枝管25を含む。ダクト24は、培養装置33(開口部73)と同数の枝管25を含む。
【0017】
集塵機100からダクト22に供給される高温ガスG(すなわち、外気が混合される前の高温ガスG)の温度は、例えば70℃~120℃(一例として100℃)である。流量調整部23により当該高温ガスGに外気が混合され、外気が混合される前の高温ガスGよりも低温となった高温ガスGが培養部3に供給される。当該外気の温度は、例えば10℃~30℃(一例として20℃)である。培養部3に供給される高温ガスGの温度は、例えば40℃~70℃(一例として60℃)である。
【0018】
温度センサは、流量調整部23により外気が混合された高温ガスGの温度を計測する。温度センサは、例えば、ダクト24に設けられている。温度センサは、有線又は無線により、制御部4と通信可能である。温度センサは、外気が混合された後の高温ガスGの温度の計測値を制御部4に送信する。
【0019】
培養部3は、ガス供給部2により供給された高温ガスGを利用して、光合成微生物Pの培養を行う部分である。本実施形態では、培養部3は、集塵機100の上部に配置されている。
【0020】
次に、
図2及び
図3を参照して、培養部3を詳細に説明する。
図2は、
図1に示される培養部3を概略的に示す図である。
図3は、
図2に示される培養装置33を概略的に示す図である。
図2では、後述する空隙形成部71及び導風部72の図示が省略されている。光合成微生物Pに光合成を行わせるべく、培養部3は、屋外に配置されている。培養部3は、太陽光により光合成微生物Pに光合成を行わせて、光合成微生物Pを培養する。
図2に示されるように、培養部3は、支柱31と、ビーム32と、培養装置33と、を含む。
【0021】
支柱31は、Z軸方向(上下方向)に延びている。本実施形態では、培養部3は、一対の支柱31を含む。一対の支柱31は、互いにX軸方向(第1方向)に離隔している。ビーム32は、X軸方向に延びている。ビーム32は、一対の支柱31間に架け渡されている。ビーム32は、培養装置33を支持するための部材である。本実施形態では、培養部3は、複数(一例として3つ)のビーム32を含む。ビーム32は、培養装置33ごとに設けられている。複数のビーム32は、互いにZ軸方向に離隔している。一のビーム32と、当該一のビーム32とZ軸方向に隣り合う他のビーム32との距離は、培養槽34のZ軸方向における長さよりも長い。支柱31及びビーム32の材料の一例として、金属が挙げられる。
【0022】
培養装置33は、光合成微生物Pを培養する装置である。本実施形態では、培養部3は、複数(一例として3つ)の培養装置33を含む。培養部3は、1つの培養装置33のみを含んでもよい。各培養装置33は、当該培養装置33と対応するビーム32に取り付けられている。これにより、複数の培養装置33は、Z軸方向に配列されている。
図2及び
図3に示されるように、培養装置33は、培養槽34と、排出管35と、供給管36と、散気装置37と、温度センサ38と、を含む。
【0023】
培養槽34は、光合成微生物Pを培養するための培養液Cを収容する。培養槽34は、光合成微生物Pを含む培養液Cを閉鎖的に収容する。培養槽34は、X軸方向に延びる袋状の形状を有する。培養槽34は、光透過性を有する。培養槽34は、例えば樹脂シートにより構成される。光透過性を有する樹脂シートとしては、例えばポリエチレン、ナイロン又はウレタン等により構成された透明シートが利用される。
【0024】
培養槽34は、ビーム32に取り付けられている。培養槽34は、ビーム32から吊り下げられている。培養槽34は、ダクト24の枝管25とX軸方向において向かい合っている。培養槽34は、培養槽34をビーム32に取り付けるための取付部41と、光合成微生物Pを培養するための空間を画成する本体部42と、X軸方向に延びると共に取付部41及び本体部42をZ軸方向に仕切る上壁部43と、を含む。
【0025】
取付部41は、培養槽34の上端部に位置し、上壁部43よりも上方に位置する。本実施形態では、取付部41は、X軸方向に延び、X軸方向における両端が開放された筒状の形状を有する。筒状の取付部41には、ビーム32が挿通されている。上壁部43は、例えば、Y軸方向(第2方向)に向かい合う培養槽34の壁部同士を互いに溶着することで形成されている。
【0026】
本体部42は、上壁部43よりも下方に位置する。本体部42は、本体部42の下端を構成する底部44と、上壁部43と底部44とをつなぐ側壁部45と、を含む。
【0027】
本実施形態では、底部44には、培養槽34内の培養液Cを排出するための排出口46が設けられている。排出口46には、例えばバルブが設けられていてもよい。本実施形態では、側壁部45には、培養槽34内に培養液Cを供給するための供給口47(
図2参照)が設けられている。側壁部45は、後述する空隙形成部71と向かい合う外面45aを含む。
【0028】
図3に示されるように、本体部42は、仕切壁51と、隔壁52と、を更に含む。仕切壁51は、培養槽34における本体部42内を複数のセルLに区画する。本実施形態では、本体部42は、複数の仕切壁51を含む。各仕切壁51は、本体部42の内部においてZ軸方向に延びている。複数の仕切壁51は、X軸方向に互いに間隔を空けて設けられている。仕切壁51は、例えば、Y軸方向に向かい合う側壁部45同士を溶着することにより形成されている。仕切壁51は、例えばヒートシールにより形成されてもよい。
【0029】
本実施形態では、各仕切壁51の上端と上壁部43との間には、空気抜き用のスリット51aが形成されている。各仕切壁51の下端と底部44との間には、水抜き用のスリット51bが形成されている。各セルLは、スリット51a,51bを介して互いに連通している。各セルLにおける培養液Cの水位は、互いに等しい。
【0030】
本実施形態では、本体部42は、複数の隔壁52を含む。各セルL内には、2つの隔壁52が設けられている。隔壁52は、本体部42の内部においてZ軸方向に延びている。隔壁52の下端は、底部44よりも上方に位置している。隔壁52の下端と底部44との間には、下部連通口52aが設けられている。隔壁52の上端は、上壁部43よりも下方に位置している。隔壁52の上端と上壁部43との間には、上部連通口52bが設けられている。隔壁52は、例えば、Y軸方向に向かい合う側壁部45同士を溶着することにより形成されている。隔壁52は、例えばヒートシールにより形成されてもよい。
【0031】
各セルL内において、2つの隔壁52は、セルL内を散気室54と一対の培養室55とに区画する。散気室54は、セルLに設けられた2つの隔壁52の間に設けられている。散気室54には、底部44に設けられた散気孔56を介してガスが供給される。散気孔56は、散気室54ごとに設けられている。散気孔56は、対応する散気室54の下方に設けられている。各散気孔56には、ガスを吐出するスパウトが取り付けられている。散気室54にガスが供給されることで、散気室54内に培養液Cの上昇流が形成される。培養室55は、光合成微生物Pを培養するための部分である。培養室55は、セルLを区画する仕切壁51と隔壁52との間に形成されている。一対の培養室55は、X軸方向において散気室54を挟んでいる。
【0032】
散気室54及び培養室55は、隔壁52に沿ってZ軸方向に延びている。散気室54及び培養室55は、隔壁52の下方において下部連通口52aを介して互いに連通している。散気室54及び培養室55は、隔壁52の上方において上部連通口52bを介して互いに連通している。散気室54及び培養室55は、培養槽34における本体部42内で循環する培養液Cの流路を提供する。
【0033】
本実施形態では、培養槽34は、本体部42の内部から空気を抜くための空気抜き管57を更に含む。空気抜き管57は、上壁部43に挿通されている。空気抜き管57は、本体部42の内外を互いに連通している。
【0034】
排出管35は、培養槽34から光合成微生物Pを含む培養液Cを排出するための管である。排出管35の一端は、排出口46に接続されている。排出管35の他端は、例えば、培養液Cを貯留する受槽(不図示)に接続されている。例えば、排出口46に設けられたバルブが開けられることで、培養槽34内の培養液Cが排出管35を介して受槽に流れる。
【0035】
供給管36は、培養槽34の外部から培養槽34内に培養液Cを供給するための管である。供給管36の一端は、例えば、受槽に接続されている。供給管36の他端は、供給口47に接続されている。本実施形態では、供給管36には、ポンプ(不図示)が設けられている。ポンプの駆動により、受槽内の培養液Cが供給管36を介して培養槽34に流れる。
【0036】
散気装置37は、散気室54にガスを供給する装置である。散気装置37は、ブロア61及び管62を含む。管62は、上記のスパウトを介して散気孔56に接続されている。ブロア61は、管62を介して散気室54にガスを供給する。ブロア61によって供給されるガスは、例えば空気である。ブロア61は、散気孔56から散気室54にガスを供給する。ブロア61は、光合成微生物Pの光合成を促進するために、二酸化炭素を含む排ガスを散気室54に供給してもよい。
【0037】
温度センサ38は、培養槽34内の培養液Cの温度を計測する。本実施形態では、温度センサ38は、本体部42の内部に設けられている。温度センサ38は、有線又は無線により制御部4と通信可能である。温度センサ38は、培養液Cの温度の計測値を制御部4に送信する。
【0038】
培養装置33を用いて光合成微生物Pを培養する場合には、まず培養槽34の外部から供給管36を介して培養槽34内に培養液Cが供給される。このとき、培養室55内の培養液Cの水位が、隔壁52の上端から例えば10mm~30mm下方となるように培養液Cが供給される。次に、ブロア61から複数の散気孔56を介して複数の散気室54内の培養液Cにガスが供給される。
【0039】
複数の散気孔56から複数の散気室54内にガスが供給されると、エアリフト効果により、各セルLの散気室54内の培養液Cに上昇流が形成され、散気室54内の培養液Cの水位が上昇する。隔壁52の上端の高さを越えた散気室54内の培養液Cは、上部連通口52bを通って一対の培養室55に流入する。一対の培養室55に流入した培養液Cは、当該一対の培養室55内の培養液Cに底部44へ向かう下降流を形成する。
【0040】
一対の培養室55内を下方に移動し、底部44に達した培養液Cは、下部連通口52aを通って散気室54に戻される。このようにして、各セルLにおいて、培養槽34内の培養液Cが散気室54と一対の培養室55との間で循環する。
【0041】
続いて、
図4及び
図5を用いて培養装置33をより詳細に説明する。
図4は、
図2に示される培養装置33を概略的に示す斜視図である。
図5は、
図4におけるV-V線断面図である。
図4及び
図5に示されるように、培養装置33は、空隙形成部71と、導風部72と、を更に含む。
【0042】
空隙形成部71は、培養槽34との間に空隙Vを形成する。本実施形態では、空隙形成部71は、X軸方向に延び、X軸方向における一端の一部が閉塞され、他端が開放された袋状の形状を有する。空隙形成部71の内側には、培養槽34が設けられている。言い換えると、空隙形成部71は、培養槽34を包んでいる。空隙形成部71は、培養槽34の周囲に空隙Vを形成する。空隙Vは、培養槽34の外面45aに沿ってX軸方向に延びている。
【0043】
空隙形成部71は、ビーム32に取り付けられている。具体的には、空隙形成部71にビーム32が挿通され、空隙形成部71の上端がビーム32に支持されることによって、空隙形成部71は、ビーム32から吊り下げられている。空隙形成部71は、培養槽34からY軸方向において離隔している。空隙形成部71は、培養槽34の外面45aから所定距離だけ離隔している。当該所定距離は、例えば10mm~100mm(一例として50mm)である。
【0044】
空隙形成部71は、光透過性を有する。例えば、空隙形成部71は、光合成微生物Pに光合成を行わせるために十分な光が透過する程度の光透過性を有する。空隙形成部71は、透明な材料により構成されている。空隙形成部71は、光合成微生物Pを培養するために必要な光量が得られれば、強光度による光阻害及び水温上昇を防ぐために、一定の遮光性を有してもよい。空隙形成部71の材料は、培養槽34の材料と同一であってもよく、培養槽34の材料と異なっていてもよい。
【0045】
空隙形成部71は、第1表面71a(第1表面)と、第2表面71b(第2表面)と、を含む。第1表面71aは、Y軸方向において培養槽34の外面45aと向かい合う面である。第2表面71bは、第1表面71aの裏側に位置する面である。本実施形態では、空隙形成部71は、1枚のシート状の部材を2つ折りにして、培養槽34をY軸方向において挟むようにビーム32に掛け、培養槽34を挟む2つの部分の下端部同士を溶着することにより形成されている。各部分は、第1表面71a及び第2表面71bを有する。
【0046】
空隙形成部71は、開口部73と、開口部74と、を更に含む。開口部73には、集塵機100(
図1参照)から排出された高温ガスGが吹き込まれる。開口部73は、空隙形成部71のX軸方向における一端に設けられている。開口部73は、枝管25(
図2参照)に向かって開口している。開口部73には、枝管25が差し込まれている。開口部73の内周面と枝管25の外周面との間に隙間が生じないように、開口部73に枝管25が接続されていてもよい。空隙形成部71の上記一端は、開口部73が形成されている部分、及びビーム32が挿通されている部分を除いて塞がれている。
【0047】
開口部74は、空隙Vを流通した高温ガスGが流出する部分である。開口部74は、空隙形成部71のX軸方向における他端に設けられている。開口部74は、導風部72に向かって開口している。開口部74は、培養槽34のX軸方向における両端のうちの空隙形成部71の上記他端に近い端よりも導風部72の近くに位置している。
【0048】
高温ガスGは、開口部73を介して空隙Vに吹き込まれる。より具体的には、枝管25から開口部73に吹き込まれた高温ガスGは、培養槽34の外面45aと空隙形成部71の第1表面71aとの間に形成された空隙Vに流入する。空隙Vに流入した高温ガスGは、培養槽34内の培養液Cを加熱しながら外面45aに沿ってX軸方向に流れ、開口部74から流出する。
【0049】
導風部72は、開口部74から流出した高温ガスGを第2表面71bに沿って流すための部材である。導風部72は、開口部74とX軸方向において向かい合っている。本実施形態では、導風部72は、X軸方向において開口部74から離隔している。導風部72は、開口部74又は培養槽34と接していてもよい。
【0050】
本実施形態では、導風部72の上端は、ビーム32に取り付けられている。例えば、導風部72は、ビーム32から吊り下げられている。本実施形態では、導風部72は、一対の湾曲部75を含む。
【0051】
一対の湾曲部75は、Y軸方向に並んでいる。各湾曲部75は、Z軸方向から見て開口部74から離れる方向(X軸方向)に突出するように湾曲している。具体的には、湾曲部75は、Z軸方向から見て半円形の形状を有する。X軸方向から見て、各湾曲部75のY軸方向における一端は、開口部74の内側に位置し、各湾曲部75のY軸方向における他端は、開口部74の外側に位置している。
【0052】
一対の湾曲部75同士は、X軸方向から見て開口部74のY軸方向の中央において互いに連結されている。具体的には、一対の湾曲部75の一端同士が連結されている。各湾曲部75は、X軸方向において開口部74と向かい合う導風面75aを有する。
【0053】
導風面75aは、開口部74から流出した高温ガスGが突き当たる面である。導風面75aは、開口部74から流出した高温ガスGが第2表面71bに沿って流れるように高温ガスGを導く。導風面75aは、X軸方向から見て開口部74の内側から外側まで延びると共に、開口部74の外側において第2表面71bに沿って延びている。本実施形態では、導風面75aは、X軸方向から見て開口部74の外側に位置する外端部を含む。導風面75aの外端部は、第2表面71bと実質的に平行に延びている。
【0054】
図5に示されるように、培養槽34の外面45aは、凹部81及び凸部82を含む波形形状を有する。凹部81は、仕切壁51及び隔壁52により構成されている。凸部82は、凹部81よりもY軸方向に突出する部分である。凸部82は、曲線状に湾曲した形状を有する。波形形状は、三角波状であってもよい。凸部82は、散気室54及び培養室55により構成されている。散気室54により構成された凸部82の突出高さは、例えば15mm~50mm(一例として20mm)である。培養室55により構成された凸部82の突出高さは、例えば40mm~100mm(一例として50mm)である。
【0055】
制御部4(
図1参照)は、培養システム1を統括制御するコントローラである。制御部4は、PLC(Programmable Logic Controller)であってもよい。制御部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリと、タッチパネル、マウス及びキーボードなどの入力装置と、ディスプレイなどの出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置と、を含むコンピュータとして構成されている。メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御部4の機能が実現される。
【0056】
制御部4は、培養システム1の各部の動作を制御する。制御部4は、培養槽34に設けられた温度センサ38から、培養液Cの温度の計測値を取得する。本実施形態では、制御部4は、予め設定された時間間隔で培養液Cの温度の計測値を繰り返し取得する。制御部4は、培養液Cの温度に基づいて、送風機21の動作を制御する。例えば、制御部4は、培養液Cの温度が開始閾値(所定値)以下である場合、高温ガスGの供給を送風機21に開始させる。開始閾値は、予め設定されている。開始閾値の一例としては、30℃が挙げられる。制御部4は、送風機21が動作している状態で、培養液Cの温度が停止閾値以上である場合、送風機21を停止することで高温ガスGの供給を停止させる。停止閾値は、開始閾値よりも大きく、予め設定されている。停止閾値の一例としては、35℃が挙げられる。
【0057】
制御部4は、ダクト24に設けられた温度センサから、外気が混合された高温ガスGの温度の計測値を取得する。制御部4は、外気が混合された高温ガスGの温度に基づいて、流量調整部23を制御する。具体的には、制御部4は、外気が混合された高温ガスGの温度に基づいて、流量調整部23において高温ガスGに混合される外気の流量を調整する。例えば、制御部4は、PID(Proportional Integral Derivative)制御を実行することで流量調整部23を制御する。具体的には、制御部4は、予め設定された目標温度と、高温ガスGの温度の計測値との差分に基づいて、流量調整部23である風調ダンパの開度を当該差分に対応した開度となるように調整することで高温ガスGの温度を目標温度に近づける。
【0058】
制御部4は、供給管36に設けられたポンプの動作を制御する。制御部4は、当該ポンプを駆動させ、受槽内の培養液Cを、供給管36を介して培養槽34に供給する。制御部4は、ブロア61の動作を制御する。制御部4は、ブロア61を駆動させ、管62を介して散気室54にガスを供給する。
【0059】
続いて、
図6を用いて、培養システム1の動作を説明する。
図6は、一実施形態に係る培養システム1の動作を示すフローチャートである。培養システム1が稼働している間、温度センサ38は、培養槽34における培養液Cの温度を計測して、培養液Cの温度の計測値を定期的に制御部4に送信する。制御部4は、ブロア61を駆動することによって、散気室54にガスを供給している。
図6に示される一連の処理は、高温ガスGが空隙Vに供給されていないときに、制御部4が培養液Cの温度の計測値を受信することによって開始される。
【0060】
まず、制御部4は、培養液Cの温度の計測値を開始閾値と比較し、当該計測値が開始閾値以下であるか否かを判定する(ステップS1)。培養液Cの温度の計測値が開始閾値よりも大きいと判定された場合(ステップS1:NO)、制御部4は、当該計測値が開始閾値以下となるまでステップS1を繰り返す。一方、ステップS1において、培養液Cの温度の計測値が開始閾値以下であると判定された場合(ステップS1:YES)、制御部4は、送風機21を稼働させることにより、空隙Vへの高温ガスGの供給を開始する(ステップS2)。
【0061】
続いて、制御部4は、高温ガスGの温度を調整する(ステップS3)。ステップS3では、制御部4は、ダクト24に設けられた温度センサによって計測された、外気が混合された高温ガスGの温度の計測値を取得し、当該計測値に基づいて、高温ガスGの温度を調整する。具体的には、制御部4は、上記計測値が目標温度に近づくように、流量調整部23において高温ガスGに混合される外気の量を調整する。流量調整部23が風調ダンパである場合には、目標温度と上記計測値との差分に基づいて、流量調整部23の開度を当該差分に対応した開度に調整することで、高温ガスGの温度を調整する。
【0062】
続いて、制御部4は、培養液Cの温度の計測値を停止閾値と比較し、当該計測値が停止閾値以上であるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4では、制御部4は、温度センサ38によって計測された、培養液Cの温度の計測値を取得する。そして、培養液Cの温度の計測値が停止閾値よりも小さいと判定された場合(ステップS4:NO)、制御部4は、培養液Cの温度の計測値が停止閾値以上となるまで、ステップS3及びステップS4を繰り返す。一方、ステップS4において、培養液Cの温度の計測値が停止閾値以上であると判定された場合(ステップS4:YES)、制御部4は、送風機21を停止させることにより、高温ガスGの供給を停止する。以上の工程を経て、培養システム1は、一連の処理を完了する。
【0063】
以上説明した培養システム1では、培養槽34と空隙形成部71との間に空隙Vが形成される。集塵機100から排出され、外気よりも高温である高温ガスGが空隙形成部71の開口部73から吹き込まれて空隙V内を流れる結果、培養槽34に収容されている培養液Cが加熱される。この構成においては、空隙形成部71により、高温ガスGが拡散することが妨げられる。その結果、高温ガスGは培養槽34の周辺を流れるので、培養槽34内の培養液Cを効率的に加熱できる。
【0064】
培養システム1においては、培養装置33は導風部72を含む。導風部72の導風面75aは、X軸方向において開口部74と向かい合っており、X軸方向から見て開口部74の内側から外側まで延びると共に、開口部74の外側において第2表面71bに沿って延びている。この構成によれば、開口部74から流出した高温ガスGは、導風面75aに突き当たり、導風面75aに沿って開口部74の内側から外側まで導かれ、さらに導風面75aに沿って第2表面71bまで導かれる。よって、開口部74から流出した高温ガスGは空隙形成部71の第2表面71bに沿って流通するので、高温ガスGの層が第2表面71bに沿って形成される。高温ガスGは外気の温度よりも高温であるので、外気によって培養槽34内の培養液Cが冷却される可能性を低減することができる。したがって、培養槽34の保温性を確保できる。
【0065】
培養システム1において、空隙形成部71は、袋状の形状を有し、培養槽34は、空隙形成部71の内側に設けられている。この構成によれば、培養槽34と空隙形成部71との間に培養槽34を囲むように空隙Vが形成される。したがって、空隙Vに吹き込まれた高温ガスGにより、培養槽34を一層効率的に加熱でき、保温性を一層確実に確保できる。空隙形成部71が袋状の形状を有するので、例えば市販の透明袋により、空隙形成部71を容易に作製できる。
【0066】
培養システム1において、外面45aが凹部81及び凸部82を含む波形形状を有するので、例えば培養槽34の外面が平坦面である場合と比較して培養槽34の表面積が大きい。これにより、外面45aが高温ガスGと接触する面積が大きくなるので、培養槽34の培養液Cを一層効率的に加熱することができる。
【0067】
培養システム1において、仕切壁51により培養槽34内が複数のセルLに区画されており、隔壁52により、高温ガスGが供給される散気室54及び光合成微生物Pを培養するための培養室55が、各セルLに形成されている。これにより、セルL内で培養液Cを効率的に循環させることができる。さらに、散気室54及び培養室55によって、培養槽34の外面45aにおける凸部82が構成され、仕切壁51及び隔壁52によって、培養槽34の外面45aにおける凹部81が構成される。したがって、散気室54及び培養室55を仕切壁51及び隔壁52により形成しつつ、培養槽34の外面45aを波形形状とすることができる。
【0068】
培養システム1において、空隙形成部71は、光透過性を有する。この構成によれば、空隙形成部71を透過した光により培養液C中の光合成微生物Pに光合成を行わせることができる。したがって、受光率の低下を抑えながら、培養槽34の培養液Cを効率的に加熱できる。
【0069】
制御部4は、培養液Cの温度(計測値)が開始閾値以下となったことに応じて、高温ガスGの供給を送風機21に開始させる。この構成によれば、培養液Cの温度が開始閾値以下となったときに開口部73に高温ガスGが吹き込まれるので、培養液Cの温度が過剰に低下することを抑制できる。
【0070】
制御部4は、送風機21が動作している場合に、培養液Cの温度が停止閾値以上となったことに応じて、高温ガスGの供給を送風機21に停止させる。この構成によれば、培養液Cの温度が停止閾値以上となったときに空隙Vへの高温ガスGの供給が停止され、培養液Cの加熱が停止されるので、培養液Cの温度が過剰に上昇することを抑制できる。
【0071】
制御部4は、外気が混合された高温ガスGの温度に基づいて、流量調整部23を制御する。この構成によれば、外気が混合された高温ガスGの温度に基づいて、当該高温ガスGに混合される外気の量が調整され、空隙Vに供給される高温ガスGの温度が調整される。集塵機100から供給された高温ガスGに、当該高温ガスGよりも低温な外気が混合されることで、当該高温ガスGの温度を低下させることができる。これにより、過剰に高温な高温ガスGが空隙Vに吹き込まれることを抑制できるので、培養液Cの温度が過剰に上昇することを抑制できる。
【0072】
本実施形態では、培養部3が集塵機100の上部に配置されている。これにより、培養部3を設置するためのスペースを別途設ける必要がないので、設備コストを削減できる。培養部3を集塵機100の近傍に配置することができるので、集塵機100から排出された高温ガスGを培養部3に供給する際のエネルギーロスを減少させることができる。さらに、培養部3が高所に配置されるので、培養槽34に太陽光を効率的に当てることができ、光合成微生物Pに一層効率的に光合成を行わせることができる。
【0073】
次に、
図7を参照しながら、変形例に係る培養システム1Aを説明する。
図7は、変形例に係る培養システム1Aの一部を概略的に示す図である。培養システム1Aは、ガス供給部2に代えてガス供給部2Aを含む点、高温ガスGの供給制御を行う点において、培養システム1と主に相違する。まず、培養システム1Aに高温ガスGを供給する集塵機100の構成を説明する。
【0074】
図7に示されるように、集塵機100は、筐体10と、仕切板11と、集塵フィルタ13と、を含む。筐体10は、不図示の支持部材によって地面に設置される。筐体10は、吸気口10aを介して外気を内部に導入する。吸気口10aには、吸気ダクト102が設けられる。吸気ダクト102の先端には不図示の集塵フードが設けられ、対象となる空間の外気(含塵空気)が効率的に吸引される。筐体10は、粉塵を取り除いた空気を、排気口10bを介して装置外へ排気する。排気口10bには、排気ダクト101が設けられる。
【0075】
仕切板11は、筐体10の内部空間をダーティールームR1とクリーンルームR2とに区分する板状の部材である。ダーティールームR1は、集塵フィルタ13よりも上流に位置し、集塵フィルタ13により集塵されていない(粉塵を含む)空間である。ダーティールームR1は、吸気口10aを介して装置外と連通する。クリーンルームR2は、集塵フィルタ13よりも下流に位置し、集塵フィルタ13により集塵された後のクリーンエアーを含む空間である。クリーンルームR2は、排気口10bを介して装置外と連通する。仕切板11の周縁は、筐体10の内壁面と気密状態に接続される。
【0076】
集塵フィルタ13は、仕切板11に設けられ、仕切板11からダーティールームR1内に向かって延びている。集塵フィルタ13の内部には、集塵フィルタ13の形状を保つために図示しない筒状のケージが収容されている。集塵フィルタ13は、織布又は不織布などの材料により構成された筒状の本体を有する。集塵フィルタ13は、吸気口10aから吸入された外気に含まれる粉塵を捕集する。集塵フィルタ13の上端は、仕切板11に形成された導入口11aに気密に接続される。集塵フィルタ13は、本体の外周面がダーティールームR1に面し、本体の内部空間がクリーンルームR2に連通するように、配置されている。
【0077】
集塵機100は、差圧計14と、払落機構15と、排出機構16と、制御部17と、を更に含む。差圧計14は、ダーティールームR1とクリーンルームR2との間の圧力差(差圧)を計測する機器である。差圧計14は、ダーティールームR1内及びクリーンルームR2内のそれぞれに検出端子を配置し、ダーティールームR1とクリーンルームR2との間の差圧を計測する。差圧計14は、例えば、筐体10の外面に取り付けられる。差圧計14は、差圧の計測値を制御部17に出力する。
【0078】
払落機構15は、集塵フィルタ13の集塵機能を維持するために、集塵フィルタ13に捕集されている粉塵を払い落とす機構である。払落機構15は、パルスジェット式の払落機構であり、集塵フィルタ13の主に外周面に付着した粉塵を、集塵フィルタ13の内部に圧縮エアをパルス状に吹き込むことで払い落とす。払落機構15は、制御部17からの払い落とし指令に基づき、払い落とし動作を開始する。
【0079】
筐体10の下部はホッパ部10cを構成しており、ホッパ部10cは下方に向かうにつれて縮径される。ホッパ部10cは、払い落とされた粉塵を収容する。ホッパ部10cの下端には、排出機構16が設けられる。排出機構16の下方には、図示しない廃棄用の容器が配置され、ホッパ部10cから容器に向けて粉塵が排出される。
【0080】
制御部17は、集塵機100を統括制御するコントローラである。制御部17は、PLCであってもよい。制御部17は、例えば、CPUなどのプロセッサと、RAM及びROMなどのメモリと、タッチパネル、マウス及びキーボードなどの入力装置と、ディスプレイなどの出力装置と、ネットワークカードなどの通信装置と、を含むコンピュータとして構成されている。メモリに記憶されているコンピュータプログラムに基づくプロセッサの制御のもとで各ハードウェアを動作させることにより、制御部17の機能が実現される。制御部17は、制御部4と通信可能である。
【0081】
排気ダクト101には、送風機103が接続されている。送風機103は、例えばブロアである。送風機103は、制御部17からの指令に基づき、動作を開始又は停止する。送風機103は、排気ダクト101の出口に向けて気流を発生させる。これにより、クリーンルームR2内において排気口10bに向かう気流が発生し、ダーティールームR1が負圧となり、外気はダーティールームR1の吸気口10aからダーティールームR1に送り込まれる。
【0082】
つまり、送風機103が稼働すると、粉塵を含む外気が吸気口10aを介してダーティールームR1に導入される。粉塵を含む空気が集塵フィルタ13の外周面から集塵フィルタ13の内周面に向かって集塵フィルタ13を通過することにより、粉塵が集塵フィルタ13に捕集される。そして、粉塵が除去された空気(清浄な空気)は、クリーンルームR2に送り込まれ、排気口10b及び排気ダクト101を通って、集塵機100の外部へ排出される。
【0083】
ガス供給部2Aは、三方弁26及びアクチュエータ27を更に含む点においてガス供給部2と主に相違する。上述のように、排気ダクト101には、ダクト22、送風機21、及びダクト24が接続されている。培養システム1Aでは、ダクト24に三方弁26が設けられている。ダクト24は、配管部24aと、配管部24bと、を含む。配管部24aは、送風機21と三方弁26とを接続する配管である。配管部24bは、三方弁26と枝管25とを接続する配管である。
【0084】
三方弁26は、高温ガスGを培養システム1Aの外部に放出する開放状態と、高温ガスGを空隙Vに供給する供給状態と、の間で切り替え可能に構成されている。言い換えると、供給状態は、配管部24aと配管部24bとを連通する状態であり、開放状態は、配管部24aと装置外(大気)とを連通する状態である。三方弁26は、後述の払い落とし条件が満たされたことに応じて、供給状態から開放状態に切り替えられる。三方弁26は、払落機構15による払い落とし動作が行われている間、開放状態に設定される。
【0085】
アクチュエータ27は、三方弁26の状態を供給状態と開放状態との間で切り替える駆動機器である。アクチュエータ27は、例えば、電動式又は空圧式のアクチュエータである。アクチュエータ27は、制御部4からの切替信号に基づき、三方弁26の状態を供給状態と開放状態との間で切り替える。
【0086】
次に、
図8を参照しながら、高温ガスGの供給制御を説明する。
図8は、培養システム1Aの動作を示すフローチャートである。
図8に示される一連の処理は、制御部17が送風機103の動作を開始させ、集塵が開始されることによって開始される。
【0087】
まず、制御部17は、払い落とし条件が満たされたか否かを判定する(ステップS11)。ここでは、払い落とし条件として、ダーティールームR1とクリーンルームR2との間の差圧が払落閾値を超えることが用いられる。払落閾値は、集塵フィルタ13に目詰まりが発生していると判定可能な値に設定される。払落閾値は、粉塵の種類、及び集塵機100の周辺の環境などに応じて予め設定されている。制御部17は、差圧計14から取得した上記差圧の計測値を払落閾値と比較し、当該計測値が払落閾値よりも大きいか否かを判定する。制御部17は、上記差圧の計測値が払落閾値よりも大きい場合には、払い落とし条件が満たされたと判定し、上記差圧の計測値が払落閾値以下である場合には、払い落とし条件が満たされていないと判定する。
【0088】
払い落とし条件として、前回の払い落とし動作から所定時間が経過したことが用いられてもよい。所定時間は、払い落とし動作を行ってから、集塵フィルタ13に目詰まりが発生し得るまでに要する時間に基づいて設定される。所定時間は、粉塵の種類、及び集塵機100の周辺の環境などに応じて予め設定されている。この場合、制御部17は、前回の払い落とし動作から所定時間が経過している場合に、払い落とし条件が満たされたと判定し、前回の払い落とし動作から所定時間が経過していない場合には、払い落とし条件が満たされていないと判定する。
【0089】
ステップS11において、払い落とし条件が満たされていないと判定された場合(ステップS11:NO)、制御部17は、払い落とし条件が満たされるまでステップS11を繰り返す。一方、ステップS11において、払い落とし条件が満たされたと判定された場合(ステップS11:YES)、制御部17は、払い落とし条件が満たされたことを示す条件充足信号を制御部4に出力するとともに、計時を開始する(ステップS12)。制御部4は、制御部17から条件充足信号を受け取ると、アクチュエータ27に切替信号を出力し、三方弁26を供給状態から開放状態に切り替える。
【0090】
続いて、制御部17は、払い落とし条件が満たされてから遅延時間T1が経過したか否かを判定する(ステップS13)。遅延時間T1は、三方弁26が供給状態から開放状態に切り替えられるのに要する時間以上に設定される。ステップS13において、遅延時間T1が経過していないと判定された場合(ステップS13:NO)、制御部17は、遅延時間T1が経過するまでステップS13を繰り返す。一方、ステップS13において、遅延時間T1が経過したと判定された場合(ステップS13:YES)、制御部17は、払い落とし指令を払落機構15に出力するとともに、計時を開始する(ステップS14)。
【0091】
払落機構15は、制御部17から払い落とし指令を受け取ると、払い落とし動作を開始する。言い換えると、払落機構15は、払い落とし条件が満たされてから遅延時間T1が経過したことに応じて、払い落とし動作を行う。そして、払落機構15は、払い落とし指令を受け取ってから、払い落とし時間T2が経過するまでの間、払い落とし動作を行う。払い落とし時間T2は、粉塵の種類、及び払落機構15から噴出される圧縮エアの圧力などに応じて予め設定されている。制御部17が、払い落とし指令を払落機構15に出力してから払い落とし時間T2が経過したことに応じて、停止指令を払落機構15に出力してもよい。
【0092】
続いて、制御部17は、払い落とし指令を払落機構15に出力してから払い落とし時間T2が経過したか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15において、払い落とし時間T2が経過していないと判定された場合(ステップS15:NO)、制御部17は、払い落とし時間T2が経過するまでステップS15を繰り返す。一方、ステップS15において、払い落とし時間T2が経過したと判定された場合(ステップS15:YES)、制御部17は、払い落とし動作が終了したことを示す終了信号を制御部4に出力する(ステップS16)。制御部4は、制御部17から終了信号を受信すると、アクチュエータ27に切替信号を出力し、三方弁26を開放状態から供給状態に切り替える。
【0093】
以上の工程を経て、培養システム1Aは、一連の処理を完了する。なお、制御部4が制御部17から条件充足信号を受け取ったことに応じて、アクチュエータ27に切替信号を出力して三方弁26を供給状態から開放状態に切り替えるとともに、計時を開始してもよい。この場合、ステップS14において、制御部17は、計時を開始しなくてもよく、ステップS15,S16は省略されてもよい。具体的には、制御部4は、制御部4が制御部17から条件充足信号を受け取ってから、遅延時間T1と払い落とし時間T2との合計時間が経過したか否かを判定し、当該合計時間が経過したと判定された場合に、アクチュエータ27に切替信号を出力し、三方弁26を開放状態から供給状態に切り替える。
【0094】
以上説明した培養システム1Aにおいても、培養システム1と共通の構成においては、培養システム1と同様の効果が奏される。集塵機100では、集塵フィルタ13による集塵機能を維持するために、払い落とし条件が満たされた場合に、集塵フィルタ13に捕集されている粉塵が払落機構15によって払い落とされる。大部分の期間において、集塵機100から排出される高温ガスGに含まれる粉塵の濃度は低いが、払落機構15が動作している間に集塵機100から排出される高温ガスGには、払い落とされた粉塵の一部が含まれ、高温ガスGに含まれる粉塵の濃度が高くなることがある。高濃度の粉塵を含む高温ガスGが空隙形成部71の開口部73から繰り返し吹き込まれると、培養槽34の外面45a及び空隙形成部71の第1表面71aに粉塵が煤状に付着して、太陽光が遮られ、光合成効率が低下するおそれがある。
【0095】
この問題に対し、培養システム1Aでは、集塵機100において払い落とし動作が行われている間、集塵機100から排出された高温ガスGは、培養槽34と空隙形成部71との間の空隙Vに吹き込まれることなく、培養システム1Aの外部に放出される。つまり、高濃度の粉塵を含む高温ガスGが選択的に排除される。これにより、高濃度の粉塵を含む高温ガスGが空隙Vに吹き込まれることが抑制されるので、培養槽34の外面45a及び空隙形成部71の第1表面71aに粉塵が付着することが抑制される。したがって、光合成効率の低下を抑制することが可能となる。集塵機100とガス供給部2との間に別の集塵機を設ける必要がないので、別の集塵機の設置及び管理に要するコストを削減することが可能となる。
【0096】
三方弁26を供給状態から開放状態に切り替えるのに時間が掛かることがある。培養システム1Aでは、払落機構15は、払い落とし条件が満たされてから遅延時間T1が経過したことに応じて、払い落とし動作を行う(開始する)。このため、三方弁26が開放状態に切り替えられた後に払い落とし動作が行われる。これにより、高濃度の粉塵を含む高温ガスGが空隙Vに吹き込まれることが更に抑制されるので、培養槽34の外面45a及び空隙形成部71の第1表面71aに粉塵が付着することが更に抑制される。したがって、光合成効率の低下を更に抑制することが可能となる。
【0097】
なお、本開示に係る培養システムは、上記実施形態に限定されない。
【0098】
上記実施形態では、培養システム1は、集塵機100から排出された高温ガスGを培養槽34の培養液Cの昇温に用いているが、集塵機100から排出された高温ガスGを光合成微生物Pの乾燥に用いてもよい。この場合、例えば、培養システム1は、ろ過装置と、脱水装置と、乾燥装置と、を更に備えてもよい。
【0099】
ろ過装置は、培養液Cをろ過することにより光合成微生物Pを回収する。ろ過装置は、例えば、受槽から管を介して培養液Cを回収する。このとき、ろ過装置は、管に設けられたポンプの駆動により、培養液Cを回収してもよい。ろ過装置は、例えばスクリーンを含んでもよい。
【0100】
脱水装置は、ろ過装置により回収された光合成微生物Pを脱水する。脱水装置は、光合成微生物Pを脱水することにより光合成微生物Pの含水率を低下させる。脱水装置は、例えばフィルタープレス式の装置であってもよい。
【0101】
乾燥装置は、集塵機100から排出された高温ガスGを用いて、脱水装置により脱水された光合成微生物Pを乾燥させる。乾燥装置は、例えば高温ガスGを引き込むためのファンを含んでもよい。乾燥装置は、例えば引き込んだ高温ガスGを脱水装置から回収された光合成微生物Pに当てることで、光合成微生物Pを乾燥させてもよい。乾燥装置により乾燥された光合成微生物Pは、例えば製品として包装されて出荷される。
【0102】
例えば、培養システム1は、集塵フィルタと、熱交換器と、を更に備えてもよい。集塵フィルタは、高温ガスGに含まれる塵を捕捉する。集塵フィルタには、例えばダクト24から分岐する別のダクトを介してダクト24から供給された高温ガスGが通過する。集塵フィルタは、例えばHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタである。
【0103】
熱交換器は、集塵フィルタを通過した高温ガスGを所定の温度に昇温させる。当該所定の温度は、適宜変更可能である。熱交換器により昇温された高温ガスGは、上記乾燥装置に供給される。乾燥装置に供給された高温ガスGは、光合成微生物Pの乾燥に供される。
【0104】
上記実施形態では、流量調整部23はダクト22に設けられているが、例えばダクト24に設けられてもよい。温度センサは、流量調整部23よりも高温ガスGの流れの下流に設けられてもよい。この場合、流量調整部23は、送風機21により送られた高温ガスGに外気を混合させる。
【0105】
上記実施形態では、導風部72の上端がビーム32に取り付けられているが、例えば一対の支柱31(
図2参照)のうち、開口部74に近い支柱31に取り付けられていてもよい。導風部72は、開口部74に取り付けられていてもよい。
【0106】
上記実施形態では、導風部72は、一対の湾曲部75により構成されている。しかし、導風部72は、開口部74から流出した高温ガスGを空隙形成部71の第2表面71bに導くことができればよく、導風部72の構成は特に限定されない。
【0107】
上記実施形態では、停止閾値は、開始閾値よりも高い値に設定されている。しかし、開始閾値及び停止閾値は、互いに等しくてもよい。
【0108】
上記実施形態では、空隙形成部71が袋状の形状を有している。しかし、空隙形成部71は、培養槽34との間に空隙Vを形成すればよく、空隙形成部71の形状は特に限定されない。空隙形成部71の形状は、例えばシート状であってもよい。この場合、空隙形成部71は、培養槽34の一方の外面45aから所定間隔を空けて配置されてもよい。
【0109】
上記実施形態では、開口部73が空隙形成部71のX軸方向における一端に設けられ、開口部74が空隙形成部71のX軸方向における他端に設けられている。しかし、開口部74は、設けられなくてもよい。この場合、培養装置33は、導風部72を含んでいなくてもよい。
【0110】
上記実施形態では、培養槽34の外面45aは、凹部81及び凸部82を含む波形形状を有している。しかし、培養槽34の外面45aは、例えば平坦面であってもよい。
【0111】
上記実施形態では、培養槽34は、仕切壁51及び隔壁52を有しているが、仕切壁51及び隔壁52の少なくとも一方を有していなくてもよい。
【0112】
外部装置から供給される高温ガスGの温度が高温でなければ、高温ガスGに外気を混合する必要は無い。この場合、培養システム1は、流量調整部23を備えていなくてもよい。
【0113】
三方弁26の切替動作にそれほど時間が掛からないことがある。このような場合、制御部17は、払い落とし条件が満たされたと判定された場合、払い落とし条件が満たされたことを示す条件充足信号を制御部4に出力するとともに、払い落とし指令を払落機構15に出力してもよい。言い換えると、払落機構15は、払い落とし条件が満たされたことに応じて、払い落とし動作を行ってもよい。
【0114】
最後に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0115】
(条項1)
外部装置から排出され、外気よりも高温であるガスを利用して光合成微生物を培養する培養システムであって、
前記光合成微生物を培養するための培養液を収容する培養槽と、
前記培養槽との間に空隙を形成する空隙形成部と、を備え、
前記空隙形成部は、前記ガスが吹き込まれる第1開口部を有し、
前記ガスは、前記第1開口部を介して前記空隙に吹き込まれる、
培養システム。
【0116】
この培養システムでは、培養槽と空隙形成部との間に空隙が形成される。外部装置から排出され、外気よりも高温であるガスが空隙形成部の第1開口部から吹き込まれて空隙内を流れる結果、培養槽に収容されている培養液が加熱される。この構成においては、空隙形成部により、ガスが拡散することが妨げられる。その結果、ガスは培養槽の周辺を流れるので、培養槽内の培養液を効率的に加熱できる。
【0117】
(条項2)
前記空隙形成部は、袋状の形状を有し、
前記培養槽は、前記空隙形成部の内側に設けられている、
条項1に記載の培養システム。
【0118】
この構成によれば、培養槽と空隙形成部との間に培養槽を囲むように空隙が形成される。したがって、空隙に吹き込まれたガスにより、培養槽を一層効率的に加熱でき、保温性を一層確実に確保できる。
【0119】
(条項3)
前記空隙は、前記培養槽の外面に沿った第1方向に延び、
前記第1開口部は、前記空隙形成部の前記第1方向における一端に設けられ、
前記空隙形成部は、前記空隙形成部の前記第1方向における他端に設けられると共に前記ガスが流出する第2開口部と、前記第1方向と交差する第2方向において前記外面と向かい合う第1表面と、前記第1表面の裏側に位置する第2表面と、を更に有し、
前記培養システムは、前記第2開口部から流出した前記ガスを前記第2表面に沿って流す導風部を更に備え、
前記導風部は、前記第1方向において前記第2開口部と向かい合う導風面を有し、
前記導風面は、前記第1方向から見て前記第2開口部の内側から外側まで延びると共に、前記第2開口部の外側において前記第2表面に沿って延びる、
条項1又は条項2に記載の培養システム。
【0120】
この構成によれば、第2開口部から流出したガスは、導風面に突き当たり、導風面に沿って第2開口部の内側から外側まで導かれ、さらに導風面に沿って第2表面まで導かれる。よって、第2開口部から流出したガスは空隙形成部の第2表面に沿って流通するので、ガスの層が第2表面に沿って形成される。ガスは外気の温度よりも高温であるので、外気によって培養槽内の培養液が冷却される可能性を低減することができる。したがって、培養槽の保温性を確保できる。
【0121】
(条項4)
前記外面は、凸部及び凹部を含む波形形状を有する、
条項3に記載の培養システム。
【0122】
この構成によれば、外面が凹部及び凸部を含む波形形状を有するので、例えば培養槽の外面が平坦面である場合と比較して培養槽の表面積が大きい。これにより、外面がガスと接触する面積が大きくなるので、培養槽の培養液を一層効率的に加熱することができる。
【0123】
(条項5)
前記培養槽は、
前記培養槽内を複数のセルに区画する仕切壁と、
前記複数のセル内にそれぞれ配置された複数の隔壁と、を更に有し、
前記複数の隔壁のそれぞれは、前記セル内を、ガスが供給される散気室と前記光合成微生物を培養するための培養室とに区画し、
前記凹部は、前記仕切壁及び前記隔壁により構成され、
前記凸部は、前記散気室及び前記培養室により構成されている、
条項4に記載の培養システム。
【0124】
この構成によれば、セル内で培養液を効率的に循環させることができる。さらに、散気室及び培養室によって、培養槽の外面における凸部が構成され、仕切壁及び隔壁によって、培養槽の外面における凹部が構成される。したがって、散気室及び培養室を仕切壁及び隔壁により形成しつつ、培養槽の外面を波形形状とすることができる。
【0125】
(条項6)
前記培養槽及び前記空隙形成部は、光透過性を有する、
条項1~条項5のいずれか一項に記載の培養システム。
【0126】
この構成によれば、空隙形成部及び培養槽を透過した光により培養液中の光合成微生物に光合成を行わせることができる。したがって、受光率の低下を抑えながら、培養槽の培養液を効率的に加熱できる。
【0127】
(条項7)
前記第1開口部に吹き込まれる前記ガスを供給する送風機と、
前記培養液の温度に基づいて、前記送風機の動作を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記培養液の温度が所定値以下となった場合、前記ガスの供給を前記送風機に開始させる、
条項1~条項6のいずれか一項に記載の培養システム。
【0128】
この構成によれば、培養液の温度が所定値以下となったときに開口部にガスが吹き込まれるので、培養液の温度が過剰に低下することを抑制できる。
【0129】
(条項8)
前記外部装置から前記空隙に前記ガスを供給する配管に設けられ、前記ガスに混合される外気の量を調整可能な流量調整部と、
前記外気が混合された前記ガスの温度に基づいて、前記流量調整部を制御する制御部と、を更に備える、
条項1~条項7のいずれか一項に記載の培養システム。
【0130】
この構成によれば、外気が混合されたガスの温度に基づいて、当該ガスに混合される外気の量が調整され、空隙に供給されるガスの温度が調整される。外部装置から供給されたガスに、当該ガスよりも低温な外気が混合されることで、当該ガスの温度を低下させることができる。これにより、過剰に高温なガスが空隙に吹き込まれることを抑制できるので、培養液の温度が過剰に上昇することを抑制できる。
【0131】
(条項9)
前記外部装置から前記空隙に前記ガスを供給する配管に設けられ、前記ガスを前記培養システムの外部に放出する開放状態と、前記ガスを前記空隙に供給する供給状態と、の間で切り替え可能な三方弁を更に備え、
前記外部装置は、集塵フィルタと、前記集塵フィルタに捕集されている粉塵を払い落とす払落機構と、を備える集塵機であって、
前記三方弁は、前記払落機構による払い落とし動作が行われている間、前記開放状態に設定される、条項1~条項8のいずれか一項に記載の培養システム。
【0132】
払い落とし機構が動作している間に集塵機から排出されるガスには、払い落とされた粉塵の一部が含まれ、ガスに含まれる粉塵の濃度が高くなることがある。上記構成によれば、集塵機において払い落とし動作が行われている間、集塵機から排出されたガスは、培養槽と空隙形成部との間の空隙に吹き込まれることなく、外部に放出される。これにより、高濃度の粉塵を含むガスが上記空隙に吹き込まれることが抑制されるので、培養槽の外面及び空隙形成部の第1表面に粉塵が付着することが抑制される。したがって、光合成効率の低下を抑制することが可能となる。
【0133】
(条項10)
前記三方弁は、払い落とし条件が満たされたことに応じて、前記供給状態から前記開放状態に切り替えられ、
前記払落機構は、前記払い落とし条件が満たされてから遅延時間が経過したことに応じて、前記払い落とし動作を行い、
前記遅延時間は、前記三方弁が前記供給状態から前記開放状態に切り替えられるのに要する時間以上に設定される、条項9に記載の培養システム。
【0134】
三方弁を供給状態から開放状態に切り替えるのに時間が掛かることがある。上記構成によれば、三方弁が開放状態に切り替えられた後に払い落とし動作が行われる。これにより、高濃度の粉塵を含むガスが上記空隙に吹き込まれることが更に抑制されるので、培養槽の外面及び空隙形成部の第1表面に粉塵が付着することが更に抑制される。したがって、光合成効率の低下を更に抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0135】
1,1A…培養システム、4…制御部、13…集塵フィルタ、15…払落機構、17…制御部、21…送風機、22…ダクト(配管)、23…流量調整部、24…ダクト(配管)、26…三方弁、34…培養槽、45a…外面、51…仕切壁、52…隔壁、54…散気室、55…培養室、71…空隙形成部、71a…第1表面、71b…第2表面、72…導風部、73…開口部(第1開口部)、74…開口部(第2開口部)、75a…導風面、81…凹部、82…凸部、100…集塵機(外部装置)、C…培養液、G…高温ガス(ガス)、L…セル、P…光合成微生物、V…空隙。