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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025002143
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】補強部材、及び、天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
E04B9/18 B
E04B9/18 D
E04B9/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102091
(22)【出願日】2023-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397028360
【氏名又は名称】関包スチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】武佐 サライデン
(72)【発明者】
【氏名】中川 学
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】細川 俊治
(72)【発明者】
【氏名】有馬 冬樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 征志
(72)【発明者】
【氏名】北村 幸則
(72)【発明者】
【氏名】本田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 克典
(57)【要約】
【課題】吊り部材の耐力を向上させることが可能な補強部材を提供する。
【解決手段】天井材を支持する吊り部材10を補強する補強部材100であって、前記吊り部材10が固定される底面部110と、デッキプレート3に形成された第一凹部3aに沿うように前記底面部110から立ち上がる側面部120と、を具備した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井材を支持する吊り部材を補強する補強部材であって、
前記吊り部材が固定される底面部と、
デッキプレートに形成された第一凹部に沿うように前記底面部から立ち上がる側面部と、
を具備する補強部材。
【請求項2】
前記側面部は、
前記第一凹部と係合可能な第一係合部を具備する、
請求項1に記載の補強部材。
【請求項3】
前記底面部は、
前記吊り部材が挿通される長孔を具備し、
前記長孔に挿通された前記吊り部材の移動を規制可能な規制部をさらに具備する、
請求項1に記載の補強部材。
【請求項4】
前記規制部は、
前記吊り部材に設けられると共に、前記底面部と係合することで、前記吊り部材の移動を規制可能である、
請求項3に記載の補強部材。
【請求項5】
前記デッキプレートに形成された前記第一凹部とは異なる第二凹部と係合可能な第二係合部を具備する、
請求項1に記載の補強部材。
【請求項6】
前記底面部は、
前記吊り部材とは異なる第二の吊り部材を固定可能である、
請求項1に記載の補強部材。
【請求項7】
前記底面部は、
当該底面部から立設するように形成された補強部を具備する、
請求項1に記載の補強部材。
【請求項8】
デッキプレートに形成された凹部に取り付けられる補強部材と、
上端がスラブに固定されると共に、中途部が前記補強部材に固定される吊り部材と、
前記補強部材の下方において前記吊り部材に連結されるブレースと、
を具備する天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り部材を補強する補強部材、及び、補強部材を用いた天井構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吊り部材が設けられた天井構造に関する技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、上部構造体から天井部材を吊り下げて支持する吊りボルトと、接続金具を介して吊りボルトの上端部に連結されるブレース材と、を具備する天井構造が記載されている。
【0004】
ここで、吊りボルトが設けられる上部構造体(例えば、デッキプレート)には、凹部を有するものがある。このような凹部内に吊りボルトを吊り下げる必要がある場合、天井のふところ寸法が小さくなると、ブレースの角度が緩やかになり、ブレースの上端がデッキプレートの凹部に掛かるおそれがある。そこで、ブレースが凹部と干渉するのを避けるために、吊りボルトの上端部からやや下に下がった位置にブレースを連結する必要がある。
【0005】
しかしながら、このように吊りボルトの上端部から離れた位置にブレースを連結すると、吊りボルトの上端部付近(例えば、上部構造体に連結するためのインサート等)の耐力が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-9450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、吊り部材の耐力を向上させることが可能な補強部材、及び、天井構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、天井材を支持する吊り部材を補強する補強部材であって、前記吊り部材が固定される底面部と、デッキプレートに形成された第一凹部に沿うように前記底面部から立ち上がる側面部と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記側面部は、前記第一凹部と係合可能な第一係合部を具備するものである。
【0011】
請求項3においては、前記底面部は、前記吊り部材が挿通される長孔を具備し、前記長孔に挿通された前記吊り部材の移動を規制可能な規制部をさらに具備するものである。
【0012】
請求項4においては、前記規制部は、前記吊り部材に設けられると共に、前記底面部と係合することで、前記吊り部材の移動を規制可能であるものである。
【0013】
請求項5においては、前記デッキプレートに形成された前記第一凹部とは異なる第二凹部と係合可能な第二係合部を具備するものである。
【0014】
請求項6においては、前記底面部は、前記吊り部材とは異なる第二の吊り部材を固定可能であるものである。
【0015】
請求項7においては、前記底面部は、当該底面部から立設するように形成された補強部を具備するものである。
【0016】
請求項8においては、デッキプレートに形成された凹部に取り付けられる補強部材と、上端がスラブに固定されると共に、中途部が前記補強部材に固定される吊り部材と、前記補強部材の下方において前記吊り部材に連結されるブレースと、を具備するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
本発明においては、吊り部材の耐力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一実施形態に係る補強部材を具備する天井構造を示した正面断面図。
図2】(a)第一実施形態に係る補強部材を示した平面図。(b)同じく、正面図。
図3】本発明の第二実施形態に係る補強部材を具備する天井構造を示した正面断面図。
図4】(a)第二実施形態に係る補強部材を示した平面図。(b)同じく、正面図。
図5】本発明の第三実施形態に係る補強部材を具備する天井構造を示した正面断面図。
図6】(a)第三実施形態に係る補強部材を示した平面図。(b)同じく、正面図。
図7】第一変形例に係る補強部材を具備する天井構造を示した正面断面図。
図8】(a)第二変形例に係る補強部材を示した平面図。(b)同じく、正面図。
図9】(a)第三変形例に係る補強部材を示した正面図。(b)第四変形例に係る補強部材を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明においては、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0021】
以下では、図1を用いて、第一実施形態に係る天井構造1について説明する。
【0022】
天井構造1は、建物における天井の構造である。天井構造1においては、建物の躯体(構造体)であるスラブ2から、後述する吊り部材10を介して、天井材(不図示)が支持される。図1では、天井構造1の一部(吊り部材10の上端部の周辺)を示している。
【0023】
スラブ2は、当該スラブ2の下面を構成するデッキプレート3の上に、コンクリート4を打設して形成される。本実施形態のデッキプレート3は、第一凹部3a及び第二凹部3bを具備する。
【0024】
第一凹部3aは、デッキプレート3を上方に向かって凸となるような山状に形成することで、デッキプレート3の下面が上方に向かって凹むように形成された部分である。第一凹部3aは前後方向(紙面に垂直な方向)に直線状に延びるように形成される。本実施形態において、第一凹部3aは、互いに間隔をあけて左右に複数並ぶように形成される。
【0025】
第一凹部3aは、略水平に形成された上端面3cと、上端面3cの左右両端部から下方に向かって形成される左右一対の側面3dと、を具備する。左右一対の側面3dは、左右対称な形状に形成される。左右一対の側面3dは、下方に向かって左右に広がるように形成される。左右一対の側面3dの上下中途部には、左右内側に向かって突出する凸部3eが形成される。
【0026】
第二凹部3bは、第一凹部3aと同様に、デッキプレート3を上方に向かって凸となるような山状に形成することで、デッキプレート3の下面が上方に向かって凹むように形成された部分である。第二凹部3bは前後方向(紙面に垂直な方向)に直線状に延びるように形成される。第二凹部3bは、左右方向において隣り合う第一凹部3aの間に形成される。すなわち、第一凹部3a及び第二凹部3bは、左右方向に交互に並ぶように形成される。第二凹部3bは、略水平に形成された上端面と、上端面の左右両端部から下方に向かって形成される左右一対の側面と、を具備する。第二凹部3bの左右一対の側面は、下方に向かって左右に狭まるように形成される。
【0027】
天井構造1は、吊り部材10、固定金具20、ナット30、ブレース40及び補強部材100を具備する。
【0028】
吊り部材10は、スラブ2から吊り下げられ、天井材(不図示)を支持するものである。吊り部材10は、水平方向に所定間隔を開けて複数配置される。なお、図例では1つの吊り部材10を示している。吊り部材10は、インサート11及び吊りボルト12を具備する。
【0029】
インサート11は、スラブ2に固定されるものである。インサート11は、下端部を除く部分がスラブ2に埋め込まれる。具体的には、インサート11は、コンクリート4が打設される前のデッキプレート3(より詳細には、第一凹部3aの上端面3c)を上下に貫通するように設けられる。この状態では、インサート11の下端部がデッキプレート3から下方に突出する。その後、デッキプレート3の上面にコンクリート4が打設されることで、インサート11は、スラブ2に埋め込まれる。本実施形態に係るインサート11は、後述する吊りボルト12を固定可能な雌ねじが下端部に形成された、雌型のインサートである。
【0030】
吊りボルト12は、天井材(不図示)を支持するものである。吊りボルト12は、上下に長尺な形状に形成されると共に、全体に亘って雄ねじが形成されている。吊りボルト12は、上端部がインサート11の雌ねじに嵌合することで、インサート11に対して固定される。また、吊りボルト12の下端部は、ハンガー(不図示)等を介して天井材の下地材(例えば野縁受け等)に固定される。
【0031】
固定金具20は、吊りボルト12と、後述するブレース40と、を連結するものである。固定金具20は、適宜折り曲げられた金属の板形状の部材により形成される。本実施形態では、前後一対の板形状の部材を組み合わせて固定金具20を形成している。固定金具20を構成する一対の部材で吊りボルト12を前後から挟み込むことで、吊りボルト12に対して固定金具20が取り付けられる。
【0032】
ナット30は、吊りボルト12に対して嵌合するものである。ナット30は、固定金具20の下方に設けられる。本実施形態では、吊りボルト12に対してナット30を嵌合することで、吊りボルト12に固定金具20を固定している。
【0033】
本実施形態では、後述するブレース40が第一凹部3aと干渉するのを避けるために、ブレース40の上端が連結される固定金具20を、吊りボルト12の上端部(スラブ2)からやや下方に離れた位置に配置している。具体的には、固定金具20は、第一凹部3aの外側(第一凹部3aの側面3dよりも低い位置)に配置されている。
【0034】
ブレース40は、固定金具20と、天井材(野縁)側の部材と、の間に架設されるものである。ブレース40は、長尺状に形成され、長手方向を鉛直方向に対して傾斜した姿勢で(斜め方向に延びるように)配置される。図例では、ブレース40を、上端側に向かうに従い、右方に傾斜するように配置している。ブレース40の上端部は、固定金具20に固定される。また、ブレース40の下端部(不図示)は、適宜の部材を介して、天井材の下地材(例えば野縁受け等)に固定される。
【0035】
上述の如き天井構造1において、例えば地震発生時に天井材が水平方向に揺れた場合、揺れにより生じる力(水平力や鉛直力)が、ブレース40や吊り部材10等を介してスラブ2側に伝達される。
【0036】
ここで本実施形態では、前述のように、ブレース40が第一凹部3aと干渉するのを避けるために、スラブ2と、ブレース40の上端部(固定金具20)と、の間に一定の間隔が設けられている。この場合、ブレース40の引き付け点(ブレース40の軸芯と吊りボルト12の軸芯との交点)と、インサート11(支持部)とに、上下方向のずれ(距離)が生じ、負荷曲げが作用するため、吊りボルト12の上端部(インサート11付近)の耐力が低下するおそれがある。
【0037】
このため本実施形態においては、第一凹部3aに補強部材100を配置することで、吊り部材10を補強している。以下では、補強部材100の詳細について説明する。
【0038】
図1及び図2に示す補強部材100は、吊り部材10を補強するためのものである。補強部材100は、主として底面部110、側面部120及び規制ナット130を具備する。
【0039】
底面部110は、平板状に形成された部分である。底面部110は、板面を上下に向けて配置される。底面部110は、長手方向を左右に向けた平面視略矩形状に形成される。底面部110の左右方向幅は、第一凹部3aの左右方向幅と略同一となるように形成される。底面部110には、長孔111が形成される。
【0040】
長孔111は、底面部110の前後中央部において、左右に延びるように形成される。長孔111の前後幅は、吊りボルト12の直径よりもやや大きめに形成される。
【0041】
側面部120は、底面部110の左右両端部からそれぞれ上方に向かって立ち上がるように形成された部分である。左右一対の側面部120は、左右対称な形状に形成される。側面部120は、底面部110と一体的に形成された板材(例えば、金属板)を適宜屈曲させることで形成される。左右一対の側面部120は、底面部110から上方に向かって左右に狭まるように形成される。当該側面部120の傾斜角度は、第一凹部3aの側面3dの傾斜角度と概ね平行となるように形成される。側面部120には、第一係合部121が形成される。
【0042】
第一係合部121は、第一凹部3aと係合可能な部分である。第一係合部121は、側面部120の上端部を、左右外側に屈曲させることで形成される。
【0043】
規制ナット130は、長孔111に挿通された吊りボルト12の、補強部材100に対する相対移動(特に、左右方向への相対移動)を規制するためのナットである。本実施形態においては、規制ナット130は、上下一対設けられる。規制ナット130は、底面部110の上下にそれぞれ配置される。
【0044】
このように構成された補強部材100は、図1に示すように、デッキプレート3の第一凹部3aに設けられる。具体的には、補強部材100は、第一凹部3aに下方から嵌め込まれる。これによって、補強部材100の側面部120が、第一凹部3aの側面3dに沿うように配置される。また、補強部材100の第一係合部121が、第一凹部3aの凸部3eの上側に係合されることで、補強部材100が第一凹部3aに固定される。
【0045】
補強部材100は、底面部110の長孔111の前後位置と、インサート11の前後位置が一致するように、補強部材100の前後位置が調整される。この状態で、下方から吊りボルト12が長孔111に挿通され、インサート11に固定される。この際、底面部110に長孔111を形成したことにより、インサート11の左右位置を問わずに、吊りボルト12を長孔111に挿通することができる。
【0046】
また、吊りボルト12には、底面部110の上下において規制ナット130が設けられ、当該規制ナット130が底面部110を挟み込むように締結される。これによって、吊りボルト12が長孔111内を左右に移動するのを規制することができる。なお、規制ナット130と底面部110との間には、適宜ワッシャを設けることも可能である。
【0047】
本実施形態では、補強部材100が第一凹部3aに設けられた状態で、底面部110の上下位置が、デッキプレート3の最下面(側面3dの最下端)の上下位置と略一致するように形成されている。
【0048】
このように設けられた補強部材100によって、例えば地震発生時に天井材が左右方向に揺れた場合、揺れにより生じる左右への水平力が、吊り部材10及び補強部材100を介してスラブ2側に伝達される。このように、補強部材100によって水平力を伝達することで、吊り部材10の上端部(インサート11付近)の耐力の低下を抑制することができる。
【0049】
以下では、図3及び図4を用いて、第二実施形態に係る補強部材200について説明する。なお、第二実施形態に係る補強部材200が、第一実施形態に係る補強部材100と主に異なる点は、延設部240を具備する点である。よって以下では、主に延設部240について説明し、その他の第一実施形態と概ね同様な部分については、第一実施形態と同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0050】
延設部240は、底面部110から左右に延びるように形成される部分である。延設部240は、側面部120の前後両側から、左右外側に向かって延びるように形成される。延設部240は、底面部110と一体的に形成された板材により形成される。延設部240には、第二係合部241が形成される。
【0051】
第二係合部241は、第二凹部3bと係合可能な部分である。第二係合部241は、延設部240の左右外側端部を、上方に(より詳細には、やや左右内側に向かうように)屈曲させることで形成される。
【0052】
このように構成された補強部材200は、図3に示すように、第一実施形態と同様、第一凹部3aに下方から嵌め込まれると共に、各第二係合部241が第一凹部3aの左右に形成された第二凹部3bに係合される。このように、第二係合部241を第二凹部3bに係合させることで、補強部材200をデッキプレート3に、より強固に固定することができ、ひいては吊り部材10の上端部(インサート11付近)の耐力の低下を効果的に抑制することができる。
【0053】
以下では、図5及び図6を用いて、第三実施形態に係る補強部材300について説明する。なお、第三実施形態に係る補強部材300が、第一実施形態に係る補強部材100と主に異なる点は、規制ワッシャ350を具備する点、及び、底面部110が規制ワッシャ350と係合可能な形状に形成されている点である。よって以下では、主に規制ワッシャ350及び底面部110について説明し、その他の第一実施形態と概ね同様な部分については、第一実施形態と同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0054】
底面部110の前後両端面には、複数の切欠部312が形成される。切欠部312は、底面部110の前後両端面を前後内側に切り欠くようにして形成される。切欠部312は、底面部110の左端部近傍から右端部近傍にわたって複数形成される。切欠部312は、左右に一定の間隔で並ぶように形成される。底面部110の前側の切欠部312と後側の切欠部312は、前後対称な位置に形成される。
【0055】
規制ワッシャ350は、底面部110に形成された切欠部312と係合可能なワッシャである。規制ワッシャ350は、板面を上下に向けた矩形板状に形成される。規制ワッシャ350の前後幅は、底面部110の前後幅と略同一となるように形成される。規制ワッシャ350の中央には、吊りボルト12を挿通可能な貫通孔(不図示)が形成される。規制ワッシャ350には、凸部351が形成される。
【0056】
凸部351は、規制ワッシャ350の四隅から下方に向かって突出するように形成される部分である。凸部351は、底面部110に規制ワッシャ350が載置された際に、底面部110に形成された切欠部312とそれぞれ係合可能となるような形状及び寸法で形成される。
【0057】
このように構成された補強部材300は、図5に示すように、第一実施形態と同様、第一凹部3aに下方から嵌め込まれる。また、吊りボルト12には、底面部110の上側において規制ワッシャ350が設けられ、規制ワッシャ350の凸部351が底面部110の切欠部312に係合される。この状態で、規制ワッシャ350及び底面部110を挟み込むように、上下一対の規制ナット130が締結される。
【0058】
このように吊りボルト12が挿通された規制ワッシャ350と底面部110とを係合させることで、吊りボルト12が長孔111内を左右に移動するのをより効果的に規制することができる。
【0059】
以上の如く、第一実施形態から第三実施形態に係る補強部材100・200・300は、
天井材を支持する吊り部材10を補強する補強部材100・200・300であって、
前記吊り部材10が固定される底面部110と、
デッキプレート3に形成された第一凹部3aに沿うように前記底面部110から立ち上がる側面部120と、
を具備するものである。
このように構成することにより、吊り部材10の耐力を向上させることができる。すなわち、第一凹部3aに沿うように補強部材100を配置することで、吊り部材10に加わる水平力を補強部材100を介してデッキプレート3へと伝達することができる。これによって、本実施形態のように第一凹部3aとブレース40との干渉を避けるために、スラブ2と固定金具20(ブレース40の上端部)との間に一定の間隔が設けられた場合であっても、吊り部材10(特に、吊り部材10の上端部)の耐力を向上させることができる。
【0060】
また、前記側面部120は、
前記第一凹部3aと係合可能な第一係合部121を具備するものである。
このように構成することにより、補強部材100・200・300を第一凹部3a(デッキプレート3)に容易に取り付けることができる。
【0061】
また、前記底面部110は、
前記吊り部材10が挿通される長孔111を具備し、
前記長孔111に挿通された前記吊り部材10の移動を規制可能な規制部(規制ナット130、規制ワッシャ350)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、規制部(規制ナット130及び規制ワッシャ350)により、底面部110の面外剛性が増強し、ブレース40から吊りボルト12を介して補強部材100・200・300に地震力がより確実に伝達されるため、吊り部材10の耐力を効果的に向上させることができる。
【0062】
また、前記規制部(規制ワッシャ350)は、
前記吊り部材10に設けられると共に、前記底面部110と係合することで、前記吊り部材10の移動を規制可能であるものである。
このように構成することにより、吊り部材10を補強部材300により強固に固定することができ、ひいては吊り部材10の耐力を効果的に向上させることができる。
【0063】
また、補強部材200は、
前記デッキプレート3に形成された前記第一凹部3aとは異なる第二凹部3bと係合可能な第二係合部241を具備するものである。
このように構成することにより、補強部材200をデッキプレート3に、より強固に固定することができ、ひいては吊り部材10の耐力を効果的に向上させることができる。
【0064】
また、第一実施形態から第三実施形態に係る天井構造1は、
デッキプレート3に形成された凹部(第一凹部3a)に取り付けられる補強部材100・200・300と、
上端がスラブ2に固定されると共に、中途部(規制ナット130が締結された部分)が前記補強部材100・200・300に固定される吊り部材10と、
前記補強部材100・200・300の下方において前記吊り部材10に連結されるブレース40と、
を具備するものである。
このように構成することにより、吊り部材10の耐力を向上させることができる。すなわち、第一凹部3aに補強部材100を配置することで、吊り部材10に加わる水平力を補強部材100を介してデッキプレート3へと伝達することができる。これによって、本実施形態のように第一凹部3aとブレース40との干渉を避けるために、スラブ2と固定金具20(ブレース40の上端部)との間に一定の間隔が設けられた場合であっても、吊り部材10(特に、吊り部材10の上端部)の耐力を向上させることができる。
【0065】
なお、上記実施形態に係る規制ナット130及び規制ワッシャ350は、本発明に係る規制部の実施の一形態である。
また、上記実施形態に係る第一凹部3aは、本発明に係る凹部の実施の一形態である。
【0066】
以上、各実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、上記第一実施形態から第三実施形態で例示した構成は、任意に組み合わせることが可能である。一例として、第二実施形態のように延設部240(第二係合部241)を有する補強部材200に、第三実施形態のような規制ワッシャ350を設けることも可能である。
【0068】
また、上記実施形態で例示した補強部材100・200・300の構成(形状等)は一例であり、具体的な構成は任意に変更することが可能である。例えば、第一係合部121及び第二係合部241の屈曲角度は、デッキプレート3の形状や組み付け易さ等を考慮して、任意に変更することが可能である。
【0069】
また、上記実施形態で例示した側面部120の形状(傾斜角度等)は任意に変更することが可能である。但し、水平力をデッキプレート3に効率的に伝達する観点から、側面部120はデッキプレート3の第一凹部3aの側面3dに対応した形状(例えば、側面3dと平行)に形成することが望ましい。
【0070】
また、上記実施形態では、底面部110の上下位置が、第一凹部3aの側面3dの最下端の上下位置と略一致する例を示したが、底面部110の上下位置はこれに限るものではなく、任意に変更することが可能である。但し、水平力をデッキプレート3に効率的に伝達する観点から、底面部110の上下位置は、側面3dの最下端の上下位置と略一致するか、側面3dの最下端の上下位置よりも上側に位置するように構成することが望ましい。
【0071】
また、上記実施形態で例示した第一係合部121及び第二係合部241は必ずしも設ける必要はない。例えば、第一係合部121等を設けず、規制ナット130を介して、補強部材100・200・300を吊り部材10に固定することも可能である。
【0072】
また、上記実施形態では、規制ナット130や規制ワッシャ350を用いて吊りボルト12が長孔111内を移動するのを規制したが、吊りボルト12の移動を規制する方法はこれに限るものではない。例えば、一般的なナットよりも摩擦の大きいナットを吊りボルト12に設け、上下から底面部110を挟み込むことで、吊りボルト12の移動を効果的に規制することも可能である。
【0073】
以下では、上記実施形態の変形例について説明する。
【0074】
図7には、第一実施形態に係る補強部材100(天井構造)の変形例(第一変形例)を示している。第一変形例において、補強部材100の底面部110は、吊りボルト12とは別に設けられた吊りボルト12bが固定可能に構成されている。
【0075】
具体的には、第一変形例においては、吊りボルト12よりも短く形成された吊りボルト12bが、スラブ2に埋め込まれたインサート11bに固定される。吊りボルト12bの下端は、補強部材100の底面部110から若干下方へと突出するように配置される。吊りボルト12bの下端部は、底面部110に形成された長孔111(図2等参照)に挿通され、上下一対の規制ナット130bによって補強部材100の底面部110に固定される。図7には、吊りボルト12bが、補強部材100の中央を挟んで、吊りボルト12と左右略対称な位置に設けられた例を示している。
【0076】
このように、吊りボルト12とは別途設けられた吊りボルト12bを、補強部材100の底面部110に固定することにより、底面部110の面外剛性の増強を図ると共に、地震時における補強部材100の脱落を抑制することができる。
【0077】
以上のように、第一変形例に係る補強部材100において、
前記底面部110は、
前記吊り部材10とは異なる第二の吊り部材(吊りボルト12b)を固定可能であるものである。
このように構成することにより、底面部110の面外剛性の増強を図ると共に、地震時における補強部材100の脱落を抑制することができる。
【0078】
図8には、第一実施形態に係る補強部材100の変形例(第二変形例)を示している。第二変形例において、補強部材100の底面部110には、リブ112が形成されている。
【0079】
具体的には、第二変形例においては、底面部110の前後両端部が下方に向かって屈曲されることで、前後一対のリブ112が当該底面部110から立設するように形成される。リブ112は、底面部110の長手方向(左右方向)に沿って、一方の側面部120付近から他方の側面部120付近まで延びるように形成される。
【0080】
このように、底面部110にリブ112を形成することにより、底面部110の面外剛性の増強を図ることができる。なお、リブ112の上下幅が小さくても底面部110の面外剛性の向上を図ることができるため、リブ112の上下幅は任意に設定することが可能である。
【0081】
以上のように、第二変形例に係る補強部材100において、
前記底面部110は、
当該底面部110から立設するように形成されたリブ112(補強部)を具備するものである。
このように構成することにより、底面部110の面外剛性の増強を図ることができる。
【0082】
図9(a)には、第二実施形態に係る補強部材200(図3及び図4参照)の変形例(第三変形例)を示している。第三変形例において、延設部240には、第二実施形態に係る第二係合部241とは形状の異なる第二係合部242が形成される。
【0083】
第二係合部242は、左右の延設部240の左右外側端部にそれぞれ形成される。左右の第二係合部242の形状は左右対称であるため、以下では、左側の第二係合部242に着目して説明する。
【0084】
第二係合部242は、延設部240の左右外側端部を概ね上方に屈曲させることで形成される。具体的には、第二係合部242は、延設部240の端部から左右内側に向かう第一部分242aと、第一部分242aの上端部から左右外側に向かう第二部分242bと、を具備する。これによって、第一部分242aと第二部分242bとが接続する部分には、正面視において曲線状(円形状)に屈曲された部分が形成される。
【0085】
このような第二係合部242を形成することにより、補強部材200をデッキプレート3に容易に取り付けることができる。具体的には、補強部材200を下方からデッキプレート3に押し当てると、第二凹部3bの角部が第二部分242bの上面(右上方を向く面)と当接する。この状態からさらに補強部材200を押し上げることによって、第二部分242bが外側へと押し広げられ、第一部分242aの下面(右下方を向く面)を第二凹部3bに係合させることができる。このように、補強部材200を下方から押し上げることで、当該補強部材200をデッキプレート3に容易に取り付けることができる。
【0086】
また、図9(a)では第二係合部242を左右の延設部240の左右外側端部にそれぞれ形成した例を示したが、例えば図9(b)に示す変形例(第四変形例)のように、左右の延設部240の一方(図例では、左側)にのみ第二係合部242を形成し、他方(右側)には第二実施形態(図3及び図4参照)と同様の第二係合部241を形成することも可能である。
【0087】
第四変形例に係る補強部材200をデッキプレート3に取り付ける場合、まず右側の第二係合部241をデッキプレート3の第二凹部3bに係合させる。その後、補強部材200の左側部分をデッキプレート3に向かって押し上げることで、左側の第二係合部242を第二凹部3bに係合させることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 天井構造
2 スラブ
3 デッキプレート
3a 第一凹部
3b 第二凹部
10 吊り部材
40 ブレース
100 補強部材
110 底面部
111 長孔
120 側面部
121 第一係合部
130 規制ナット
200 補強部材
300 補強部材
350 規制ワッシャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9